第41話 もう一体のSランク
「ヴォオオオオオ!!」
巨人の咆哮は衝撃となって辺りに広がる。エウリスとオルガルは堪らず、両耳を塞ぐ。
「なんなんだ。一体!?」
顔をしかめるオルガルだが、巨人の足が迫ってくることに気づいた。
「まずい!」
エウリスと二人で城壁から飛び降りる。彼らがいた場所は粉砕され、砕けた岩が空を舞っていた。
巨人が正面の城壁を蹴り上げていたのだ。
なんとか地面に着地した二人は、すぐに巨人を見上げる。土煙が広がり視界を遮るが、巨人の頭はしっかりと見て取れる。
下から見上げたことで、改めて巨人の大きさを実感した。
「無茶苦茶だ! 本当に‶巨神タイタン″なのか!? 神話級の怪物だぞ!!」
エウリスは怒りに満ちた表情で吐き捨てる。オルガルも巨人を見て顔を歪めた。
こんな怪物を召喚できる者などいるのだろうか?
それこそ800年前にいたと言われる大賢者ベザレルでもない限り……そこまで考えて、オルガルは首を横に振る。
例え大賢者ベザレルがいたとしても、巨神タイタンなどという規格外のモンスターを召喚できるとは思えない。
それだけに、オルガルは目の前の光景が信じられなかった。
そんな時、王城に通じる道を誰かが歩いていることに気づく。
オルガルは眉を寄せた。革命軍の兵士かとも思ったが、たった一人で正面から向かってくることが不自然だ。
オルガルは近づいてくる人影に目を凝らす。
黒い外套に白いマスク、こめかみから伸びた赤黒い角。一目で模造品と分かる姿は人づてに聞いた‶召喚士″ダークの姿そのもの。
「エウリス! ヤツだ! ヤツが来たぞ!!」
オルガルの絶叫に、混乱していたエウリスはハッと我に返る。
「あれが……ダーク!?」
エウリスは驚いた様子だったが、すぐに歯を噛みしめ怒りの表情を浮かべる。
「おのれ、なめやがって! 殺してやる!!」
頭上ではまた一機、騎兵が撃墜されていた。炎を上げながら残骸が落ちてくる。
エウリスは持っていた槍を握りしめ、ダークに向かって駆け出した。
◇◇◇
「さて……と」
取りあえずタイタンの召喚は成功した。初手で
政府を倒した場合、彼らに政治を立て直してもらわなければ、国が立ち行かなくなるという話だ。だとすれば殺す訳にはいかない。
ダニエルは王城に向かって歩きながら、ぶつぶつと一人で呟いていた。
――タイタンで城門を破壊し、敵を混乱させる計画はうまくいった。あとは王城内にモンスターを放って制圧すれば……。
そんなことを考えていると、前から二人の兵士が走ってくる。
もう気づかれたのか、と少々焦ったダニエルだが「まあ、丁度いいか」と腰から本型ホルダーを取り出し、一枚のカードを抜き取った。
「このカード、普通に召喚すると文句が多いからな」
ダニエルはそう言ってから、カードを前に放つ。
カードからは眩い光が溢れ、空に立ち昇る巨大な柱となる。走ってきた二人の兵士はその場で止まり、驚いた様子で光の柱を見上げた。
光りの中から出てきたのは、‶魔王サタン″だ。
黒い髪に赤黒い角。黒い手足と黒い翼を持つ、魔族の王。持っている黒い槍の柄をガンッと地面に叩きつける。
不機嫌そうな目でダニエルを睨みつけた。
「また貴様か! 俺様を気安く呼び出しやがって! どうやら礼儀ってのを教えてやらんといかんようだ」
サタンはペロリと唇をなめる。
手に持った黒い槍の切っ先をダニエルに向けた。その時、後ろからゴツンと衝撃が走った。
「ああ!?」
男がサタンの頭に槍を突き立てていた。突然攻撃されたことに、サタンは怒りが込み上げくる。
「テメー……なにやってんだ!?」
「だ、黙れ! こざかしい反乱軍が、この場で皆殺しに――」
エウリスが声を発した瞬間、サタンが黒い槍で薙ぎ払った。左肩に直撃したエウリスは、あまりの力に抵抗できず、そのまま吹っ飛んでいった。
「あああああああ!?」
地面に激突し、転がりながら木々の生い茂る森まで飛ばされていく。エウリスは木を二、三本へし折った所でやっと止まった。
血を吐きながら体を起こすエウリスは、なにが起きたのか分からなかった。
「貴様!!」
今度はオルガルが斧を振り上げ、向かって行く。突然現れた黒い魔族。
これもダークの召喚獣なのか? と思いながら、斧で斬りかかった。ガンッと鳴る衝撃音。見れば槍で防がれている。
「くそ!」
オルガルは斧で槍を弾き、後ろに飛び退く。
もう一度斬りかかろうとした時、目の前の敵を見てオルガルは動きを止めた。その魔族は左手に、黒い炎を灯していたからだ。
「それは……伝説の火魔法‶
「ああ? 伝説の火魔法だあ? 俺様にとっちゃ基本の魔法だぞ!」
サタンが左手を振ると、黒い炎は渦を巻いてオルガルに向かっていく。まるで
オルガルが慌ててかわすと、炎は地面にぶつかり爆発。辺りに黒い火の粉が飛び散った。
「くっ! この魔族は!?」
驚愕したオルガルの目の前に槍の切っ先が迫る。サタンが突きを放っていた。
斧を使い必死で防御するが、相手の攻撃の勢いを止めることができず、オルガルは城門前まで吹っ飛ばされた。
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