9 君の笑顔は、俺を救ってくれる

次の日。

家を出る前、ちょっと作戦会議をした。

作戦と言っても、というか、作戦と言えないだろうけど、会議と言うと、そんなたいそうなものに聞こえないだろうから。

同じ方向に同じ時間帯に行ったら、誰もがまた俺のことを嫌だと思うだろ?

だから、時間帯を変えた。

俺が昼休みが始まってすぐに行く。

その10分後に美咲が来る、ってことになってる。

で、俺は今屋上にいる。

ここは誰にも知られてないから、静かで、でも名スポットみたいな感じで、俺にとってはお気に入りの場所。美咲が兄妹になる前もここで、一人で弁当食べてた。

先生が来たこともないし、ホントにここはいいんだ。

ガチャ

屋上のドアが開いた。

気配とかで分かった。

「達哉、お待たせ」

パタパタと走ってくる。

こう見えても、美咲もちゃんとバスケ部だから、走るのは余裕で人並み以上に速い。

「待ってねえよ」

「じゃあ、何してたの?」

「え?校庭見下ろしてた」

「それ待ってるじゃん!」

「そうか?」

「うん。ごめんね」

「謝んなくていい」

エヘヘ、と美咲が笑う。

やっぱりキラキラ女子の笑顔は、その辺の地味な女子とは全っ然違うわ。

すげえ。

そこだけスポットライトが当たってる感じ?

今まで何度も見てきたけど。

これは、俺独り占めの美咲の笑顔。

他には、誰も知らない。

そう思うと、美咲の笑顔が俺を救ってくれた気がした。

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