俺は、この『勇者の世界』で“勇者神”として転生する。

あずま悠紀

【1】

「異世界転生だと…?」

「ええ……あなたは選ばれたのですよ」

突如、女神が現れ、非現実的な空間で飛び起きた。燦々と、眩い光と美しい青々とした空が広がりながら、俺は白い石で出来た地中海風の建物で話を聞いた。

「ふふ……驚くのも無理ありませんわ」

「どういうことだ……俺は死んだのか…」俺は女神と名乗る金髪美女に尋ねたが……。女神様から語られた話は俺を震わせた……。

俺こと【佐藤太郎】は元々普通の人間だったが、事故で死んでしまい、この世界の女神様である『アリア』によって異次元の世界へ転生したのだという。つまり、これはいわゆるファンタジー系のネット小説とかでお馴染みの展開だった。

(異世界転移ものかよ!)

そう思った瞬間だった……。

「いいや違います」……どうも心の声を読み取る能力を持っているらしい。

「異世界への転送ではないのです」……じゃあ何だ?と聞くと……『神界へ連れてきたのは私達の世界の秩序を守るためです。実は、ここ最近……とある理由で人間界では凶悪な存在が増えておりましてね……その者達を始末して貰いたくて……勇者召喚という形であなたの力を借りようと思いました』……。

そして女神曰く、現在この地球は混沌とした世界で悪の存在が増えてしまっており、それを倒すために勇者の力が必要だったのだそうだ……。しかし……。

(うさんくせぇ……絶対何か裏があるはずだ)……と思った瞬間にまた読み取られたらしく女神は笑った……。すると、いきなり俺の周りに光の柱が発生し、気が付くと見たことのない格好をした奴等が立っていた。よく見ると皆日本人ぽい顔つきだが黒髪ではなく、全員が茶髪をしていて、背も高いのばかりである。しかも皆武器を持っている。

(何だよコイツ等?)

戸惑っている間に女神達は姿を消し、俺達だけが残された。そこで、俺を含めた5人の男女が話をしている。一人は明らかにオタクっぽい感じの男、そいつの名前は【田中亮介】といい……話を聞く限り、オタク趣味のある同級生なのだという……年齢は17歳だという事だった。ちなみにこっちは26歳のフリーターらしい。もう一人の男は【山田俊輔】といって……身長180cm位で筋肉質の体型をしていたのだが……見た目に反して性格は非常に穏やかであり、趣味はアニメを見ることだと言っていた……。

「とりあえず名前を名乗っておこうぜ……まず、俺は佐藤太一郎だ……」俺は自分の名前を言った後、「あんたは……」とオタク野郎に話しかける。そしたら……。

「ああ僕?……僕は【高橋亮平】っていうんだけど……君たちこそ名前は?」そう言って俺達を見た。それから自己紹介が終わると……全員のスマホから突然変な着信音が聞こえてきて驚いたものの……それはゲームかアプリの通知で、この世界に来たら使えるようになると言われていたらしい……なので早速試してみるとちゃん使えたのであった。しかし、ここで女神が言っていた事が現実となり……。俺達はそれぞれ、ステータスウインドウが表示される。俺にはステータスの数値が表示されていたが……他の連中にはこんな画面が出ていたようだ……。

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氏名:鈴木太郎

年齢:20代前半位(精神体)

種族

:人間族

レベル1 称号 :異世界人(勇者)・異世界からの転生者

職業 :戦士 HP 1080/1080

/1000 +100/100 +0/100 攻撃力 :1200+300

魔法力 :400

+50 +500 *+500 防御力 :800

*+300 +200 *+250 +100 敏捷性 :700

-150 幸運度 :300000+12000 =3503600

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+100=340960

(何じゃこりゃ!)と、心の中で思った時、隣にいたオタク男も同じ事を思ってしまったらしく、声を上げて騒いだ。そんな俺たちの様子を見て残りの2人も近寄ってきた。

俺と同じ名前の男の名は【田中太郎】と言い……外見はかなりの長身の体格をしており……見た目はスポーツ刈りの髪型をしたイケメン男子だったが……どうやらオタクで、特に好きなのは格闘ゲームだとか言っていたのが印象的だった……。もう一人は女性で【田村優子】という名前で……容姿としては長い黒髪が特徴の美女であり、モデルの様なスタイルの良さをしていた。この女性はかなりの巨乳で、正直目を奪われたほど美しかった。しかし彼女もやはりオタク気質のようで、一番興味があったのはRPG系やアクションゲーム等のファンタジー要素の有る物だったようだ。

3人目の女性は、茶髪でロングヘアーの少女で、顔は可愛い感じの顔つきをしているが……どうも大人しい雰囲気があり……見た目通り内向的な性格の様であまり喋ろうとしなかった……。ちなみに胸の方も小さいのである……。最後に俺と同年代くらいの男の人で【佐々木一樹】といい……。中肉中背で平凡な感じではあるが、どうやらオタクらしい……彼はファンタジー系の小説を好んでいるのだそうだ……。ちなみに彼も異世界に召喚されたのだが、なぜか服装だけ変わっており、まるでファンタジー映画に出てくるような冒険者の格好になっていた。武器の方は普通の長剣だったようである。

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****名前:

性別:

レベル 体力:

力 :

魔力 :

防御:

魔防:

敏捷力 命中力 運 技能 : 特殊能力 剣術5

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魔法 炎4・風6 生活術3

(何だよこのスキル)と思わず俺は思ってしまっていたが、他のメンバーも同様にステータスに表示されていた内容に対して困惑していた。そんな中女神が現れて、この世界の説明をするのだった。この異世界『アース』と呼ばれる世界では、魔王率いる邪悪なる軍勢によって、魔物の侵攻と支配を受け、人々が苦しめられているのだという。そこで、神界にいる神が地上界に存在する異世界人召喚して力を与えたのである……。それがこのメンバーであり……。彼らはその力でこの世界を平和にするべく戦わねばならないという……。女神アリアは彼らに説明を終えると……それぞれ、自分のステータスを確認し、この世界に来る前にあったスマホの画面に表示されたメニューを開くことが出来た……。

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アイテム:

ステータス :*

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***……というわけで、この世界に召喚されたのは、異世界に転移した勇者であると……。ステータスに表示されていたのはこういう事だったのだ……。

ステータスウインドウを閉じた俺達に、アリアが改めて挨拶をした。それによると……。ここは、神々の世界の神殿であるらしく……。ここに居る俺達以外は、神様が居座って見守っているというのである……。しかも、俺達は異世界から勇者を呼び寄せたという役割を与えらており……。

この世界のどこかに封印されているという邪悪な闇の魔神達の復活を阻止するため、その元凶となっている闇の化身を倒し、それに伴って現れるであろう闇の力を持った存在達と戦うための力を与える使命が与えられているのだという。

しかし、そのためにはまず最初に、神の力を借りるためには、女神である彼女の『神眼の水晶球』に触れなければならず……。それをすることで神力を使えるようになるというのだ……。つまり、まずはこの女神と会うために、そして彼女が住む城に向かう必要があるのだ……。しかし俺達が女神と会えた場所というのは……巨大な石造の遺跡であり、そこからさらに地下へ進むことが出来る通路が有ったのであるが……。それは既に崩れ落ちていたのだ……。

(おいおい!ここから出られねぇのかよ……それにしても……さっきまで一緒に居た連中の様子が変だぞ……?)俺の不安そうな顔を察してくれたのだろうか……。アリアはすぐに行動を起こした。俺達に向かって女神の奇跡を行使したのである……。

気が付くと、女神アリアに付き添われて歩いていた俺達は、先ほどの遺跡の近くの草原へ戻っていた。そこで、女神から告げられたのは、勇者としての役目を果たし、闇の力を持つ者達を倒すまでは帰れない事と、それぞれの能力を生かすには職業を決める必要があり……。その能力に応じて、転職が可能になるという事で……女神はその場から姿を消してしまうのであった……。

(えぇぇぇ!?マジかよ……)

それから、残された俺達5人だが……全員ステータスの確認を行い……それぞれがどのような職になる事が出来るかを話し合いながら相談する事になった。


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氏名:佐藤太郎(職業)

性別:男性

年齢:25

レベル 1 称号 :異世界からの転生者

職業 :戦士 HP 1800/18100 MP 100/120 攻撃力 800+300 魔法力 0 防御力 780+300 魔防 400 敏捷性 440+100 幸運度 353 所持固有技能: 言語翻訳(習得済)

獲得経験値倍増 全武器使用可能 超成長促進

(おおぉぉ!俺の能力かなり上がってないか?)

(確かにな……レベルが上がる度にステータスが上っている気がする……)

(俺なんて、攻撃にバフ掛かっているんだぜ……これ凄くね?)

そんな風に言い合ってる中だが、俺の視線はずっと田村さんに向いてしまっていた……。だって、彼女、俺達の会話に参加しようとせずに一人ぼっちになっているからだ。彼女は俺の目線に気付くことなく黙り込んだままだった。

俺達は一旦、神殿のあった場所に戻ってくることにした。というのも女神によれば……この場所で転職が可能らしい……。しかし女神は、転職可能な条件は各自で異なるという事らしく、何を選ぶべきなのかは自分自身で探さなければならないのだ。しかも選んだ職種によっては能力が大きく変わり得るらしく、場合によっては他の職種には就けない可能性すらあるらしい……。そこで俺は女神から聞いた話を思い出すと……。

【まずは各個人でステータス画面を確認することでしょう】そう言われたのだが……ここで一つ問題がある事に気が付いた。俺は今、このメンバーの誰とも話せないでいる……。そういえばさっきは普通に会話をしていたし、何よりも俺の名前と年齢は表示されているのだから……相手にも見えているのは確かだと思われるが……なぜか、向こうの声だけが聞こえず姿も見えなかった。試してみたが、スマホの機能でも相手の姿を見れないようになっていた……。そうこうしてるうちに俺達は女神の言っていた『転職可能エリア』に到着。俺と山田と田村はスマホで確認すると……ステータスがこんな感じで表示された……。

(おっ!何だこりゃ?俺だけ何かおかしくね??)俺は心の中で叫んでしまった……。なぜなら俺が選べるのは『盗賊』だったからだ……。しかし……。他の連中にはまだ何も表示されていなかったようだ……。とりあえずスマホで検索をして調べてみると、こんな事が書かれていた……。

職業:戦士 →盗賊

・職業選択後……戦士としての戦闘経験を積んだ状態でなければ他の職業には変更できない……。

職業:僧侶

・職業選択後は他の職種にチェンジできる……。ただし他の職種に変更した場合、戦闘職の場合は、元の職業には復帰できない……。

職業:魔法使い

・職業を選択しても魔法の才能や適性が無ければ魔法が使えないのは変わらない……。

職業:神官

・職業を選択しなくても、聖魔法を習得できるようになる。また職業を選択すると【神聖魔法】を取得出来る……。

職業:盗賊 →【戦士】【魔術師】【魔導士】【武道家】【僧侶】【錬金術師】【忍者】【踊り子】【狩人】のいずれかの職業に変更可能。なお各職種はレベル1の時点からのスタートとなる……。

(なるほど……。どうやら、俺は『戦士系・剣士・槍使い・棒術使い・弓兵・銃士・格闘家・格闘僧・魔術闘士・暗殺者』のうち、どれかにジョブチェンジ出来るらしい……。しかし……。このメンバーでは俺以外、みんなが戦士系なんだが……俺のだけおかしい……。しかもこの『職業』っていうのは何なんだろうなぁ……。『戦士』とか、そういう名前が付いている奴の事だよ……きっと……。しかし……よく考えたら、別にそんな細かいこと気にすることじゃないのかもしれない……。それにしてもよく分からないけど……。とにかく俺は、この異世界で生き残るために必要な事を必死になって覚えないといけないってわけだ……。

それに、今はもっと大事なことを確認しておくべきだよな……。どうやら、俺以外の連中もこの世界に飛ばされてきたわけだし……。これからどうやって生きていくかを話し合う必要がある……。この女神の話を信じて本当に良いのかどうかもまだ分からねえ。ただ、あいつらからは邪悪な気配を感じないし……。嘘を吐いているようにも思えない……。俺が考え込んでいる中……。

俺の前にいる女三人の表情を見て驚いた……。三人とも目を大きく開け、口を半開きにして驚いている……。何に驚くことがあるのかと思ってステータス画面を確認した俺は思わず絶句した。

(おいおい……何だよこれは……。)

俺は呆れてしまった……。俺の前にあるステータスウインドウには……とんでもない数値が記載されていたのだ……。

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職業:盗賊

攻撃力 :1200

+100/100 魔法力 :0

防御力 :780

魔防 :400

敏捷性 :570

命中力 :630

回避力 :600

幸運度 :200

状態 :

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氏名;山田次郎(職業)

性別;男性

年齢:27歳

レベル 2 称号:異世界からの転生者

(あれっ!?いつの間にかステータスの職業欄が変わってないか!?)俺と同様に、山田も自分のステータスを確認していたのである……。しかし俺と違って自分のステータスをちゃんと理解していた……。彼はステータスウインドウを閉じると……すぐに口を開いた。

「太郎君、さっきステータスを確認させた時に、職業が変わっているはずだ。僕の場合、職業は盗賊だけど、ステータスの数字はさっきのままだったよ」

(う~ん。何となく、分かるような気もするけど……)

俺と彼の言葉を聞いて残りの二人は困惑している様子である……。俺が二人の様子を見て声を掛けた時だった。いきなり女神アリアが現れ……。彼女の隣にもう一人の女の子が居た。

(ああっ!?こいつか!?女神と一緒に居た女の子!!何だか、俺達に対して敵意むき出しのような顔で見てくるんだが何でだろ??)

その女の子は見た目から察する限りだと中学生くらいに見える。黒髪ショートヘアで……可愛い顔をしていて肌の色は白くてキメ細やかな感じの美人だった。しかし、何故か彼女は俺の方を睨みつけていたのだ!そして俺の方に向かって歩き出すとその腕を掴んだ!その途端だった!

(なっ、なんじゃこりゃぁああああー!!!!俺の手が……体が動かねええ!!!!それに意識も段々遠くなっていって……くそぉ……ダメだ……。もう意識が……。ちくしょう……。目が……開かな……)そこで俺は……完全に意識を失ってしまったのであった……。……

「ちょっとぉ……聞いてるんですか!あなた!」誰かの声が耳に響いた瞬間、意識を取り戻した。俺は気付くと真っ暗な場所で椅子に座っていて目の前に若い男が立っている事に気付く……。男の年齢は恐らく二十代前半で……かなり整った顔をしているイケメン野郎だった……。俺は彼に話し掛けようとしたが声が出せなかった……。まるで金縛りにあったかのように……体の自由を奪われていて全く身動きが出来ない状態だったのだ……。しかも……なぜか全身裸で何も身につけていなかった。

男の顔を見た俺は驚愕するしかなかった……。なぜなら俺の記憶の中の人物とそっくりだからだ……。男は俺を見ながら笑顔を見せた。すると……急に視界が変化して俺と男の身体全体がアップになる。さらに次の瞬間、突然映像のようなものが浮かんできた。それは俺と……俺に似ているあの男……それと田村の思い出の映像だった。そう!俺達は過去に何度も出会っていたのだから!俺と俺に似ていた男が知り合いだったことは確かだ……。俺達は高校生の時に出会い、友人関係になる。そこから俺達はお互いの人生の岐路で出会うことになり……最終的に恋人になる! それから数年が経ち……大学生になった俺達は同棲する事になり……。ある日、彼女は不治の病に掛かっている事が判明して彼女は余命宣告を受ける。彼女は泣きながら謝ってきたが、そんな事はお構いなしだった。彼女は病気の影響で、激しい運動ができない事や妊娠しづらくなっていた。俺はそんな彼女でも幸せになれるよう結婚を決意する。しかし結婚式前夜に彼女は息を引き取り……俺の悲しみにくれた。

(そうだ……確かに俺達は高校時代の友人で……俺の名前は鈴木太郎。あいつは田上和正だ……。俺の彼女と同姓同名で……高校の頃、俺はずっと彼女に惹かれて片思いを続けていた……。そして告白したが断られ……。結局、俺は彼女に振られたのだ。そして俺は大学に入り……彼女が入院していることは知っていたのだが、彼女には会う事が出来なかった。そう!それが彼女への最後の想い出となって……それ以降俺は、彼女のことを完全に忘れ去ってしまったのだ。それなのに……どうして俺の前に……俺が高校時代に付き合っていた彼女の姿をして……しかも……同じ名前が……現れたんだ!?まさか!?俺の目の前に居るのは俺の知っている『佐藤美鈴』じゃ……)

「そう……私はあなたの知ってる佐藤美鈴よ。ただし今は『田村理恵』と名乗っているわ。この世界に召喚された私達の肉体は女神の力で強化されていて、本来持っている身体能力以上の力を出せるようになったのよ。でも、この姿の私を見るのは初めてでしょ?ふふっ、この世界で生まれ変わった時の容姿が今の私の本当姿なのよ」

(やっぱり俺の思っていた通りなのか……。というか今の言葉はどういう意味だ……?それに、俺の考えてる事を読んでるのか……?それにこの人は何を言っているんだろう……?俺は……俺は死んだはずなのに……なんで?それに何で俺はこんな場所に居るんだよ……?もしかして俺は……異世界に来たっていうのか?でもここは……どこなんだ?)

俺は必死に頭を動かして考えていた。俺は死んでこの世界に飛ばされてきたということなのだろうか?だが……もしそうなら、なんで最初に女神の所に呼ばれなかったんだ……。それに他の皆も同じようになっているならともかく……俺以外は普通に女神と話しているみたいだし……。

(とにかく、この状況を整理して考えるしかなさそうだ。まずは女神の言っていたステータスを確認することから始めよう。俺はステータスと念じてみたが、画面は出てこないようだ……。しかし……どうすれば良いのだろう。何か方法があるはずだ……。俺はとりあえず周りの様子を観察しながら考えたが、答えは見つからず時間だけが過ぎていった)


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氏名;鈴木太郎 性別;男性 年齢;27歳 職業;盗賊

・・・・ レベル;1

・・・・

体力 :800

+50 魔力 :0防御力

:1000

+100/100 魔防 :300

+100 敏捷性 :600

+100 幸運度 :200

状態 :

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・・・・・ 職業;なし 氏名;山田次郎 性別;男性 年齢;27歳 職業;戦士(盗賊)


***

レベル;1

体力 :600

+100/100 魔力 :50/10

攻撃力 ;700 +100/100 魔法力:

0 防御力:820

魔防:400

敏捷性:400

命中力:560

回避力:500

命中率:690

状態:

***

職業:戦士

氏名;佐藤美鈴 性別;女性 年齢;27歳 職業;勇者 体力:1800+100/100

魔力:1200

攻撃力:2000

魔法力:1300

防御力:1500

魔防:1400

敏捷性:900魔導:2500

命中:1600

回避:1200 職業;勇者 *********

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職業;盗賊(勇者)

氏名;田中一平(性別)

性別;男性 年齢;28歳 職業;盗賊(勇者)

・・・

レベル;2 体力 :600+150 魔力:0

攻撃力 :750

+200 +250 +400 魔法力:

0 防御 :850

+200 +250 +400 魔防 :450

+200 +250 +400 敏捷性:680

+150 命中 :1100

+400 +650 +950 回避 :830 +160 命中率:1000 +530 +550 +670 職業;戦士(盗賊)

・・・

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* * *

職業:錬金術師

・・・

レベル:5

体力 :350

魔防 :320

魔力 :25/15

+35 +55 +75 攻撃力 :15

/3+1 +1 3 2 4 5 6 7 8 9 10 12 14 15 職業:魔術師

体力 :45

魔攻 :85

魔力 :110

魔力効率 :120

+50+10 合計 220+45 +105 攻撃力:65

攻撃範囲:184 職業;武道家 体力:170 攻撃範囲 180+100 筋力 130+150 物理防御 116 魔法効果 20 職業;聖騎士 体力 100 魔法範囲 125+150 魔術耐性 175+25 スキル

・鑑定眼(詳細確認可)

→鑑定(アイテム、魔物等)

(他人の詳細確認不可)

※鑑定(生物魔物人間)の三つの内の一つが使用可能となる。

(詳細は確認できないが恐らくステータス確認が可能と思われる。しかし詳細確認には条件が必要なのかもしれない)

・身体向上

(HP、MPを除く能力値を倍化)

・身体加速

(敏捷性の能力を1.5倍に)

称号 女神から恩恵を受けし者 女神の祝福受けし者 幸運の女神の加護

(幸運度の上昇値アップ)

・経験値増加(レベルアップ時に取得する成長ポイントが増加し、また獲得した経験により獲得するボーナスも上昇する。さらに通常ではありえない量の経験値を獲得する事が可能になるらしい。ただしレベルが上がった時には全ての技能が消えるため戦闘中などは注意が必要。なお、この称号を外した場合、成長に悪影響が生じる)

・スキル取得数倍増

・剣術適性

(剣の扱いに長ける。レベルが上がる事で斬撃による威力の上昇、斬撃系の武器の能力が上昇する)

装備;なし 氏名;高橋一平(男女不明(外見年齢は高校生)、名前は不明)、性別;不明(おそらく男)

年齢;不明(おそらく17歳くらいに見えるが実年齢はもっと高いかも……)

体力:600 +200/200 攻撃力 600 +400/400 魔法力200

▲ 防御力;500 +100/150 +400/200 魔防:500+100

+400/150 +200 ▲ 敏捷性;400/1000 幸運:400/9999 状態 健康、女神からのギフト 【佐藤美鈴の身体データ及び容姿データ】


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氏名;田村理恵、年齢;21、性別;女、性別;田村理恵、身長;165cm

バスト :88Dカップ

ウエスト :56、ヒップ

:81、スリーサイズ

:B89W58H87、血液型;O型 職業;賢者 氏名;田中次郎(性別、本名、性別、偽名共に不明)、性別、性別;不明(多分男)、職業;勇者、性別、性別;男(性別;性別)

レベル:2(現在表示されません。しばらくお待ちください)

▲ 体力;300/200 ▲ 攻撃力;200 ▲ 魔力;1500 ▲ 防御力;100 ▲ 魔防;100 ▲

(()の中は補正前の数値です。)

(鈴木太郎はステータスを確認した。そして女神の言葉が事実であると確信した。ステータスウインドウの数字は間違いなく真実だと物語っていたからである……。それにしてもこの世界に来る前に聞いていた話とは全然違うな……ステータスの表示の仕方が変わっていたり……。ステータスが倍とかあり得ないよな……。それに職業のところと、性別の項目が……。この世界に召喚されてすぐにこの世界の常識とやらを聞かされて……。確かにこの異世界に来た人は、元の世界の記憶を忘れていくと説明されていたが……。でも俺は記憶を失わなかったぞ!それどころか元の世界に居る時よりも強くなっている気さえしているのだ!これはどういうことなんだ?俺は本当に異世界に来たってのか?だがこの女神の言うことが嘘だって可能性もまだあるよな……。それにこの女神はどうして俺達の事を詳しく知っているのだろうか……。いや……まずはこの人達とコミュニケーションを取る事から始めるか……。俺はとりあえずこの人たちと話すために、勇気を振り絞ることにした。だが、俺はこの時はまだ知らなかった……。この人達がとんでもない人物たちだという事に……。それに俺はこの後……想像を超える程の地獄を見てしまう事になるのだ……。)

俺は目の前にいるこの人達と話し合う為に、話しかける事にした。「えっと……。その……。君達の名前を聞いても良いかな?それから色々と聞きたい事があるんだけど……」

俺は恐る恐る話しかけた。

俺の質問を聞いた少女は少し戸惑った表情をしていたが、「私は佐藤理江といいます。今は女神様より与えられた力によってこの様な姿になっていますが、元々の姿は今のあなたの知ってる私ですよ。」と言ってきた。俺はその答えを聞くと……どう反応して良いかわからず、困惑した顔になってしまった……。

(俺は佐藤さんを見たが、やっぱりどこかで見たことがある気がしていた……。どこで見かけたかは思い出せないのだが……。ただ……。俺はなんでここに呼ばれたんだろうか……。それに皆は女神の力で姿を変えてるみたいだけど……なんなんだ……?)

そんな疑問を抱いていると今度は茶髪の少女が自己紹介してきた。

彼女は俺に近づいてくると、「わたしの名前は田中一平だ!」と言った後、「なぁお前は何の為にここに来たんだ?」と尋ねてきた。俺は返答に困り黙っていると、「あーそっか……。そうだった……。ごめんね!あなたの名前をまだ聞いていなかったわよね……。教えてくれるかしら?」と言われてしまったのであった。俺は戸惑いながらも自分の名前を言おうとしたその時……。なぜか頭の中で変なものが見え始めた。

(ステータス画面みたいなものが表示されていて文字が動いているような……?まさか!?)


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名称;勇者

(田中太郎)

体力;600 魔力;150

攻撃力;400 魔法力;100 防御力;200 魔防;100 敏捷性;100魔導:200

+200 +100 +100 +10 +10 +20 +40 +30 命中:1100

+500 +700 +200 +300 +100 +100 +100 回避:1200

+600 +600 +200 +500 +400 +100 命中率:1300 +800 +900 +400 +600 +1000 +500 幸運度;1000+10 ▲ 装備;

スキル;(女神の力により封印)


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(うぅ……気持ち悪い……。)俺は突然現れた奇妙な文字列を見て、気分が悪くなっていた。

(いったいなんだよこれ……ステータス画面みたいに数字が出てきているけど……よく分からないな。それより田中一平っていうのが名前なのかな……。まあいいか……。とにかく話を聞かないと……いけないよな……。というか……何のためにここに呼ばれているのだろう。何か目的があるはずだよな。もしかしたらそれは、俺達が元居た世界で経験したあのゲームと同じ状況かもしれないな……。ということはこの人もあのゲームの関係者なのだろうか……。)

「どうかしたんですか?」俺の様子が変わったことに気づいた理江ちゃんが不思議そうな顔をしながらこちらの様子をうかがってきたが、田中さんの声ですぐに現実に戻された。「ところで君は一体だれなんだ?」

彼は興味深げに俺の事を観察してくる。すると今度は理恵ちゃんも一緒に見つめてきたため非常に気まずかった。

(うっ……この感じはまずい……。この場から早く逃げ出さなくては……。そうだ!!この人達はおそらくこの世界に来てから間もない。なら……きっと元の世界での事は知らない筈だ……ここは話題を逸らすに限る!!!)「あの……貴方は確か……田村理恵さんですよね……?どうしてそのような格好をなさってるのですか……?それに他のお二人方も同様ですね……。僕が以前プレイさせて頂いたゲームにも似たような事があったのですが……そちらの世界ではそういう服装の方が一般的なのでしょうか?」と俺は話の流れを変えようと思い尋ねたが、理江ちゃんは「はい、私の着ているのはセーラー服というものなんですよ!ちなみに田中くんも同じ服を着ていますし、高橋さんもその服に似てるものを着てます。鈴木くんのはスーツと言いまして……」と何故か俺の問いを無視して説明を始めたのだ……。俺はその光景を見て(駄目だよこの人、話を変えるのに失敗しちゃったよ……。それになんの話をしているんだろう。この人の喋っている意味がよくわからない……。それに理恵ちゃんの見た目もかなり変わっている……。この世界の人間はもしかして全員がこういう姿になってしまうのか……。もしかして田中さんは俺の知る人間とは違う人間じゃないのか?もしかしてこの世界は……。いや……これ以上考えても仕方ない。とりあえず田中さんが話し終わるまで待つしかないようだ……。田中さんの話はまだまだ続いているがもう聞く気は起きなかった。

俺は仕方なく黙って彼女の言葉を聞き続けた。

理江ちゃんが話し始めて暫く経った頃……ようやく話が落ち着いたのか、彼女が口を開いた。

「私は先程女神様に助けていただき、女神さまから特別な力を与えて貰いましたので……こんな風になったんですよ。」と言って理恵ちゃんは嬉しそうに笑いながら微笑んでいたが……

(俺は彼女を見ていて、どこか違和感を覚えていた……。

それは理恵ちゃんが時々見せていた笑顔が、以前の俺が好きだった女の子のそれと全く同じものだったからだ……。)

俺は彼女にどんな声をかければよいのかわからず、戸惑っていた……するとまたもや、今度は鈴木と呼ばれた男性が近づいてきて俺に話かけてきた。鈴木の表情はどことなく悲しげで、今にも消えてしまいそうな雰囲気が感じられる。

俺はそんな鈴木に対してどう接すればいいのかわからず……無言のまま彼を見ていたが、鈴木の次の言葉で我に帰ることになる……。

彼はこう言ったのだ……。

「すまない……お前が田中一平であることは既に気がついている……。だが俺はお前と会うのはこれが初めてなんだ……。本当にすまない……。俺は今までお前のことを忘れてしまっていたんだ……。本当に……すまねぇ……。」と……。そして彼の頬にはいつの間にか大粒の水滴が流れていたのだ……。俺はそれを見た時、鈴木が何者でどういう立場の人間だったかがすぐに分かった……。鈴木の正体は『主人公』なのだ。

(俺が忘れてしまったと思っていた親友だったんだ……。それに鈴木とは幼馴染みだった……。俺はこの鈴木の顔を知っている。だが俺はどうして覚えていないのだろうか。)俺は必死になって思い出そうとしたが思い出すことは出来なかった。

鈴木は更に続けて、「俺はこの世界に来る前に……田中……いや、鈴木太郎の身体に入って生活する事になってしまった……。俺は本当は佐藤太郎だったんだが……。この世界にくる直前に……なぜか知らんが佐藤太郎としての記憶を全て失ったまま佐藤太郎として生きてきてしまった。

俺は田中太郎と出会ってしまったせいで……俺の人生は完全に変わってしまった。でもな……それでも良いと思えたんだよ……。俺は……。あいつのそばで生きていたい……。

だから……。頼む……。俺はこのまま……あいつの中にいさせて欲しい……。俺は田中太郎になる覚悟をしたんだ……。だから……許してくれ……。」と言った後……頭を下げた。

それを見た俺は思わず……「いや……。そんなことは……別に良いですけど……。どうして急にそんなことを?」と返事をしていた。

(どうして俺はこの人に同情しているんだ?どうして……?)と疑問に思った俺は自分自身が理解できずにいた。俺はその事に戸惑いつつも……なぜ自分がこのような行動を取ったのかが分からず……黙りこんで俯いていた。

(だが俺はどうしても納得がいかなかった……。この鈴木という人物はどうして俺の知り合いなのだろうか……。それに……こいつは俺の事を「田中」と呼び捨てにした。なのにこの人は「田中」という苗字しか名乗っていない。しかもこいつも……田中太郎という名前を名乗っている。この二人の関係はどうなっているのだろうか。俺はこの人が言う「佐藤太郎」という奴のことをよく知らなかったが……この人の話を聞けば分かるかも知れない。)俺は目の前にいる人物に興味を抱いていた。

「ちょっといいですか……。質問してもいいでしょうか……。」「ん……?ああ……いいぜ……。俺はあんたの質問に応えようと思う……。なんでも聞いてくれ。」と言ってきた。

(なんか俺より偉そうだなぁ。)と俺は少しだけムッとした。俺は目の前にいる男を見つめていたが……

(田中太郎は佐藤に何と呼ばれていたのだろうか……。田中……太郎。た……田中……たろう。)俺はその名前を口にしてみたが……何故か心の奥がざわつくような気がして嫌な気分になり、胸が痛くなって気分が悪くなった。「あ……頭が……。あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」俺は頭を押さえてうずくまりながら叫び声をあげた。

そんな俺を見た3人組はとても驚いていたが、特に田中だけは俺の様子が心配になったようで近寄ってきた。「おい!大丈夫か!?俺の声聞こえるか!?しっかりしろ!!」

(あ……れ……?おかしいぞ……。この人って俺の親友じゃなかったか? 違う!!絶対に違うはずだ……。こんなに性格が違うのに……。いや……もしかしたら……。俺がこの人の中身になっているのではないだろうか。いや……。それはない……。もしそうだとすると俺という人間が消滅してしまったことになる……。なら……。)

俺は頭の中で考えていたことが、次第に恐ろしい考えに変わり始めていた……。


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俺は混乱していた。

(いったいなんで……。どうして俺は自分のことがわからなくなったのだろう。)

俺は、ふらつきながらも立ち上がろうとしたその時……。理江ちゃんがこちらを見て「あの……大丈夫ですか? 私……治癒魔法とか使えますので……それでなんとかできるかも知れませんよ……。」といって、手を伸ばしてくれたのである。

(なんて優しい女性なんだろう。やはり女性は癒しの力を持っていなければいけないよ……。俺は彼女の手の温もりを全身で感じていた……。まるで母親に抱かれた時のようだった。俺は彼女の優しさに甘えてしまいたい気分になったのだが……。

ここで彼女に弱味を見せるわけにはいかないと思いなおし、気持ちを強く持ち直そうと頑張っていた……。)

理江ちゃんの手を取りながら、俺は立ち上がり「ありがとうございます。もう平気ですので気にしないで下さい……。」と、礼を言って歩き出したが……。鈴木が俺について来ようとしなかったので……。

「あれ……君は行かないんですか?」と言うと彼は申し訳なさそうな顔をした後「悪いけど俺は先に行かせてもらうよ。俺がこの世界でやるべきことを見つけないとな……。田中と鈴木も俺と一緒に行くか……?」と言い、鈴木と田中の二人をつれて歩いていってしまった……。


***

暫く歩いたあと俺はあることに気づく……。

(俺は……何をしようとしていたのだろう……。

俺はあの二人を……田中と鈴木を追いかけようとしていたのか……。どうしてだ??? どうして追いかけようとしたんだろう……。そもそも……あいつらは……本当に親友と呼べる相手だったのか?……分からない……。)俺は困惑していたが……理江ちゃんに手を繋がれたまま歩いているのに気づいていた。「あっ!あの!すみません!あの……俺……」俺は恥ずかしくなり赤面しそうになっていたが、何とか堪えていた。彼女は俺の様子を見て微笑んでいた。俺はそれを見て、顔がさらに熱くなるのを感じた。

「あら……もしかして……。私の事を覚えていてくれてますよね……?」と彼女は微笑みながら話しかけてきた。俺はその言葉で、心臓の鼓動が大きく鳴り響くのを感じていた。

(この人の微笑みは美しいな。この人は天使のように可愛いのに、聖母様のような母性溢れる笑顔をする。この人にはずっと俺の隣で笑っていて欲しいと願ってしまう。)俺は彼女に対して好意を抱きつつあった。

そして俺達は街へとたどり着いたのであった……。

女神は、勇者召喚された者達を連れて、神界に戻っていったのだった……。

(これから、彼らの旅が始まるのだ……。この世界の未来はどうなるのかはわからないが、彼らは魔王を倒して世界を平和にする事ができるのであろうか……。

彼らがこの世界を救う事ができれば……きっと元の世界に戻れるのだろう。

私は彼らの旅の無事を願って見守る事にした……。

この世界に生きるすべての人々よ……どうか彼らを支えてあげてほしい……。

女神として、彼らに力を与えた私が言える言葉ではないのかもしれない……。それでも私は祈らずには居られなかったのだ……。)

こうして……女神アリアによって召喚されし、8名の勇者の旅が始まったのだった。

女神の祈りが天に届くことを祈るばかりである……。

【あとがき】

1話:田中は勇者となる 田中一平→佐藤太郎→鈴木太郎→佐藤一郎(佐藤次郎)→田中一太 2話は田中視点でお送りします 俺は田中。今年で40歳を迎える。俺が高校生だった頃はまだ平成の元号で令和ではなかった。俺が高校を卒業した直後に「令和の時代」という時代になった。その当時は20代だった俺にとっては、「昭和が終わったのか。平成も終わるのか」ぐらいにしか思っていなかった。そして、平成30年の4月に新天皇による即位パレードが行われた。そのニュースで「改元ブーム」というものが起こったらしく、俺もその「改元」という現象を知ったのだ。俺にとって改元とは……テレビの中での話であり、自分の生活が変わるものだとは思ってはいなかった。それから数年後、俺は「リーマンショック」という世界経済の崩壊を経験してしまう。俺はその頃、大学を卒業して就職した会社の倒産により、転職を繰り返していたのだ。だが俺の会社は、その後数年の間に次々と潰れていき、「ブラック会社」が乱立するようになっていったのである。俺はそんな社会の流れに巻き込まれ、心身共に疲労困絶していったのだった。だが俺はそんな生活の中で、妻と息子に恵まれた事で立ち直ることが出来た。そして、今まで働いて貯めた貯金を使い、家族旅行を楽しむことができたのだった。

そんなある日、仕事帰りの電車の中に居る時、スマホでネット小説を読むのが好きだった俺が、「小説家になる為に必要なスキルを身に付けることができるゲームがあります。あなたも是非参加してみて下さい。」と書かれた広告バナーをクリックしてしまい、「転生オンライン」のサイトに辿り着くことになる。俺はそれを読んでみると、面白そうだと思って登録する事にした。俺はこのゲームを始めたのだが、俺はゲーム内で『佐藤太郎』と名乗る人物と出会ったのである。最初は、ただ単に名前が似ているだけだと思っていたが、ゲームの進め方やプレイスタイルなどが似通っていて、お互いに同じゲームをやっていたことが分かったのだ。

佐藤太郎は俺よりも1年前にこの異世界「アース」に召喚されていたようだが、彼はなぜか、自分の名前を「鈴木」と名乗っていた。そして彼によると「自分は元の世界に戻ることが出来ない。このまま鈴木という人間になって生きていくことを受け入れるしかなかったのだ。この『アース』では田中という名前の人が自分だと気づいてもらえたが、この鈴木は自分が元々いた世界での名前なんだがな。まあ、もうこの世界での田中としての人生が終わっているんだから、どうでも良かったんだけどね。」と言ってきた。俺も同じようなことを考えていたし、自分自身が田中太郎ではなく「佐藤太郎」になっていることに違和感を感じていたので……鈴木と意気投合することができたのだ。そんなこんながあって鈴木は「鈴木太郎」と名乗っているようだが、本当は田中太郎が鈴木になっているだけなのだが……。

(佐藤太郎って名前が鈴木になっているって事は、俺達って「佐藤太郎」って名乗った方がいいのか?なんか田中って苗字の俺達が鈴木を名乗るのは不自然だと思ったけど、別に鈴木だっていいじゃないか!よし!!決めた!!田中太郎じゃなくって佐藤太郎って名乗ろう!! そういえば「鈴木太郎」っていう名前は、鈴木太郎と同姓同名の漫画家が昔いたなぁ……。なんか、この人は漫画描いていたみたいだけど、確かこの人の作品はアニメにもなったはず……。)と俺が思い悩んでいると……。

俺は田中の言葉を思い出して少し疑問を抱く。「鈴木太郎は元いた世界での名前は佐藤じゃなかったって言っていたよな……。鈴木と佐藤は同じ読み方をしていて紛らわしいんだよな。」

(鈴木って言う名前の人間は結構いるはずだよな……。俺の元の世界では、鈴木の苗字のやつは何人も会ったことがある。この「アース」にも何人もいるかも知れないな……。そうだな……。)俺はそう考えて納得することにしたのであった。


***

**

* * *

そんな感じで俺は鈴木と仲良しになりつつ、この世界で生きていくために色々と情報を集めていたのだった。


***

この世界の通貨について話をしようと思う。俺達の住んでいるこの国、つまりアースは、大陸の一番東にある王国らしい。俺達は、王都から西に進んで来たのだが……この世界で一番西に位置する大国があるとのことだった。

そんなこんなで俺は今日もギルドに向かう為に冒険者になったのだが……実は俺はこの世界の事をまだあまり分かっていない……。

なので、これから向かう先の冒険者組合で受付嬢の人に詳しいことを聞くつもりだ。それにしても……どうして俺達は一緒に行動しているのだろうか……。

(俺は一人で行動した方が、目立たないだろうに……なぜだろうか……。田中と一緒にいたら……俺が変に思われないか……心配だ。俺は一応「鈴木一郎(男見た目は佐藤田中)

」(以下 佐藤)としてこの世界にやって来た。俺が知っている知識は鈴木が持っている。田中のステータスを俺は確認したが、レベルが1の状態で職業が「勇者」という状態だった。この勇者というのはこの世界の魔王を倒す存在として選ばれてしまった人のことだ。鈴木もレベルが1の状態だが、この勇者がどんな状態かまでは分からなかった……。勇者がどういう状態でこの世界にやって来るか分からないし、俺は自分の職業が何なのかも知らない……。そもそも俺は鈴木の記憶を全部思い出せたわけじゃない。断片的にしか鈴木のことを知らないのだ……。だが……この鈴木は、自分の記憶の欠落部分について何も思っていないようだった。

俺は田中と出会って、この世界にやって来た時のことやこの世界に来る前の事、鈴木と会って話をした時に感じた事などを振り返っていたが……、今はこれからの冒険に気持ちを切り替えることにしたのだった……。

「あれ?田中君! どうしてここに??」と後ろの方から声が聞こえてきた。俺の聞き覚えのある女の子の声が……。俺は驚いて振り向く。そこには、俺と一緒にこの世界にやってきたはずの理江ちゃんがいたのだった……。


***

佐藤太郎は理江に話しかけた! 理江ちゃんがそこに立っていた。どうして……理江ちゃんがこの世界に来ているんだ!?俺は理江ちゃんに声をかけてみるが、返事がない……。俺はもう一度彼女に問いかけてみようとした時、田中が俺に向かって小声で話しかけてきた。

「おい……お前の彼女の名前なんだっけ……?」

俺は「高橋……」と言いかけて止める……。

「佐藤だよ。なんでここで立ち止まっているんだ??」と聞くと……。「ちょっと待ってくれ……」と言ってから「えっと……この子は……。高橋……。高橋……。佐藤……。あっ!!この子が佐藤さんの言っていた……」とか言っている。俺は不思議に思ったが……それよりも先に……俺は「理恵ちゃーん!!」と呼びかけた……。すると彼女はビクッとして俺を見て「田中くん……。どうしたのですか……急に呼び捨てなんて……。」と言っていた。

(俺達はこの子に会うために来たんじゃないか……どうして俺のことを覚えてないんだ?)俺は困惑していた。俺は彼女がこの世界に来ているのかを確認した。彼女はこの世界に召喚されてしまっているのか、いないのか、俺は気になったのである。

「理江ちゃん……もしかして……。君は異世界に召喚されし、勇者召喚に巻き込まれたのかな……?」と聞いた。

俺は彼女からの返事を待つ……。そして……。「田中さんは何を仰ってるんですかね……。」

と言った。

田中はその会話を聞いて俺に耳打ちをしてきた。「もしかしたら、勇者以外の人はこの世界に飛ばされると元の世界の事は忘れてしまうようになっているんじゃないのか?だから田中一郎という名前の人物の事も忘れられてるのかもな……。」俺は確かにそういう可能性は十分あると思った。

俺は試してみる事にした。「理江、君の名前なんだが、田中が間違えてしまったみたいなので、田中の代わりに俺の名前を呼んでくれないかい……?そうしてくれればきっと分かるはずだよ……。お願いできないかな……? 」俺はそう言ってみたのだ。そして、理江は俺の目を見てくる。しばらく見つめ合うと……。「ごめんなさい……分かりません……。本当に私達って初対面ですよね……?」と言われたのだ。田中の言っていた事が事実だという可能性が出て来たな。俺は、もしかすると田中もこのパターンかも知れないと考えて質問をしてみる。

「佐藤さん……あなたも……異世界召喚されたんですよね……。そして、田中一平と名前を変えられていますよね……。田中一平があなたが元いた世界での名前でしょう。あなたの元いた世界での名前は何と言うのです?」と聞いてみる。すると……。

「鈴木一平です……。田中って人と鈴木って人に知り合いはいないんだけど……。私の方から名乗らせてもらっていいでしょうか……? 私は高橋莉江といいます。田中君のことは知りません……。私が佐藤って言いましたけど、それがどうかしましたか……?」

やはり田中と同じだった……。俺は少し混乱しながらも、まずは状況を把握したかったので、「高橋さ……。いえ、佐藤さん……。あなたは元の世界に帰ろうとかはしないんですか……?元の世界では、あなたにはお付き合いをしている人がいるみたいだし、俺達が帰れる方法があるなら……俺は帰りたいと思いますけど……。」

と俺が話すと……。「帰れる方法を探す為に冒険者として頑張ろうと思っていた所だったんですよ……。それなのに田中くんにいきなり声をかけられてびっくりしてしまいました。田中くんに用があるのでしたら、また今度話してあげてください。失礼します……。」

と言って去っていった……。

俺は呆然とする。

(まさか……田中と佐藤までが俺の知っている人間ではなくなっていたとは……。いや、まだ理江だけは大丈夫だ!! 理江だけが元の世界にいた人間である可能性が高い……。

そう考えれば、まだ希望はある……。)そう思いながら、田中を待っていた……。

しばらくして田中は戻ってくると俺に言った。

「悪いな、待たせてしまって……。どうやら田中は異世界に召喚されると記憶を失ってしまうようなんだよ。佐藤さんのことも全然分からなかった。それに佐藤さんって俺達とは違う場所に飛ばされたんだと思うんだよな……。この世界で同じ時間に召喚されるとは限らないし、異世界に行くタイミングだって、時間や場所によって違ってくる可能性があると思うんだ。佐藤はいつ異世界に行ったのか分からないし……。佐藤がこの世界に戻ってきたのが1年後で俺達が出会った時は10年前だったって可能性も十分に考えられるだろう。」

俺は田中の話を聞いていると、とても信じられなかった……。

(異世界に来て記憶を失わない人だっていないわけじゃない。現に理江がその一人かもしれないだろ!!)俺はそう思っていたのだが……。

田中が俺に話しかけて来る……。

「とりあえず、今日のところは宿屋を探しに行こうか……。俺と田中の二人部屋を取っておくのが一番安全だろうな……。それから佐藤さんに手紙を書くべきだ。佐藤さんに俺達が異世界にいるということを伝えられないと困ってしまうからな……。

佐藤さんは冒険者になる為に、今日ここに着いたんだよな……。

田中太郎という名前は使えないぞ……。

この世界での偽名を考えておいた方がいいかも知れないな……。

佐藤さんは佐藤太郎という名前になっているからな。この世界に本名を知られてしまうと何かと危険かも知れない。佐藤太郎という名前が田中の知っている人物と同名だとすれば……同姓同名の人間がこの世界に存在しているというだけで、この世界はおかしくなる。田中も鈴木という名を使っているし……。俺の場合は高橋一郎って名前でこの世界に転生した。田中も恐らくそうだと思える……。この世界に高橋という人間は沢山いるし、佐藤がこの世界に来る前に田中が俺に教えた内容からしても……同一人物というわけじゃないようだし……。」

俺は田中の話を聞いていた。

(田中はこの世界に召喚されてすぐに色々と気が付いたらしい。でも、俺は何も分かってないんだ……。俺は一体誰なんだ……。鈴木一郎なのか……佐藤なのか……それとも……田中なのか……。俺はこの世界で何をやっていけばいいんだろう……。)

俺がそんなことを考えているうちに宿は見つかり、そこで田中と一緒に食事をすることになったのだが……。食事中に田中は俺に質問をしてくる。「なぁ、鈴木……。」

俺はドキッとしたのだが……なんとか普通を装う。

「なんだい?」

「俺は鈴木……なのか?それとも田中……。」

と俺に問いかけて来くる。田中は自分の名前が分からなくなってしまったようだった。田中も佐藤も名前を忘れているのだ……鈴木も田中も佐藤も同じ状態に陥ってしまっているという事なんだろうか……。田中の問いに対して、俺も正直分からないが……答えた。

「俺が知っている鈴木は君で間違いないが、佐藤の事は良く知らないんだ……。すまない。俺の方こそ教えて欲しいんだ……。俺は鈴木なのか……?それとも佐藤か……?」と聞くと……。

田中から返ってきたのは以下の返事だった。「お前の名前は……高橋……。」

(鈴木って言ってくれなかったんだ……。)俺は内心ショックだった……が俺は表情には出さなかったが……、田中の言葉にショックを受けて黙ってしまった……。俺は佐藤であって佐藤ではないから佐藤と呼ぶように言われてしまったのか……、それなら仕方がない。鈴木って呼ばれたかったが……。まあ、仕方ない。俺の名前は佐藤なのだ……。佐藤と呼ばれるよりはマシな気がしたので、我慢する事にした。そして……田中に俺が異世界に来た時の事を説明していった……。俺がどうして田中のことを忘れてしまったのか、そして俺達がどうしてこの世界に来ているのか、そして理江ちゃんに会っても思い出せなかったのはなぜか、そういった事についての説明を行った。


***

高橋は佐藤から自分がどういう状況にあるのかを聞かされた。そして……この世界に来てから自分の記憶が無いことに衝撃を受けた……。この世界で高橋に出来る事は、佐藤を田中の代わりに助けることだけだったのだ。

***俺は田中に今までの経緯を説明していった。俺は理江ちゃんのことについて、田中には聞かなかった。理江ちゃんのことを俺に聞かれるとまずいとでも考えたんだろう……。俺は佐藤の記憶があまり無いことを伝えた……。そして俺は佐藤から聞き出して、俺達がこの世界にやって来た時にあった出来事や、これからこの世界においてどう行動すべきかを話し合いながら夜を過ごしていくのだった……。

朝になった。俺達はこの宿屋で一泊することにした。俺はこの世界に転移させられてからの佐藤の行動を説明したりして、俺がこの世界にやって来たときの状況を田中に説明したりした。

「じゃあそろそろ……ギルドに登録してこようかな。お金は田中くんが持っていてくれていいからさ。」と俺は言う。すると田中は「いや、ここは割り勘でいいんじゃないかな?俺も冒険者に早くなって稼ぎたいし、この世界の金についても、もっと知る必要があるだろ。」と言った。

「田中くん、この世界の金をちゃんと認識してるのか……?」俺は少し驚いていた。田中が「もちろんだよ!!」と言うので……「ちょっと待ってな。」と言い、鑑定で田中が認識している硬貨を確認させて貰った。俺はこの世界の通貨については殆ど把握していなかったからだ。俺は鑑定で分かった範囲のお金の価値について説明する。

この世界の通貨単位である「ギル」、「シル」のそれぞれの価値は……

「ギル」1円 ⇒ こちらの世界で10万円相当。

「シル」1億円 ⇒ 約100億円 俺は田中に、その価値を伝え、日本にいた頃、田中が使っていた「シル」を田中が所持していたのを確認する。「シル」の方は、田中が持っていたもので間違はなかったようだ。そして「田中くんが今持っている「金貨10枚=100,000 シル = 10万 ギル 」が「ギル」換算するといくらになると思う?」と田中に質問する。田中は、「えーっと……」と言って考えていたが……「分かんねぇよ!!俺、あんまりお金持ってないし……この世界にも慣れてないんだからさ!!こういうときは佐藤に聞いてくれよ……。佐藤なら分かるだろ……。」と言ってきたので……俺がこの世界で流通している「シル」はどれくらいの貨幣価値があるのかを確認してみると……田中は答えてくれたのだが……、やはり俺にはよく分からない。俺と田中はこの世界の共通言語を覚える必要があったのかもしれない。この世界に飛ばされて、異世界の言語を理解し話せるというのは、かなりチート能力だ。

田中にこの世界の「シル」は、「銅貨1枚 = 1シル」、銀貨1枚は「1000シル」で「大銅貨」と「銅貨」が存在していて「大銅貨10枚が小銅貨1枚と同じだけの価値がある。」と説明され、そして俺は田中がどの硬貨を持っているかを確認していく。

まず最初に俺が確認した「金貨」は、田中が俺にくれたもので間違っていなかったようで良かった。次に田中が俺に渡してきたのは「銀貨」のようだ。この世界の硬貨を田中から受け取り確認を済ませる。田中からは……他に、田中が今持っていると思われる硬貨も見せてもらったが、田中が持っている「銅銭10枚=10シル 」が「ギル ≒ 千円 シル ≒ 1,000 ギル }との事なので、合計が「10,00ギル

(= 10,00円)」になるらしい。そして「銀貨10枚は小銅貨一枚と同じ価値だからね。それで田中くんの手持ちは、今の時点で50,001~52,00シルぐらいじゃないかな?」と俺は田中に伝えた。すると……田中は驚いた顔になって……

「すげぇ!!本当に佐藤って何でも知ってるな!!お前、凄いな!!この世界のことを何も知らないのに……どうやってそこまでの知識を手に入れたんだ!?俺の予想では佐藤って記憶喪失だろ……?なのになんでそんなに詳しいんだ?」と興奮気味だったのだが、俺に記憶が無いと伝えて、落ち着かせようとしたのだろう。田中は冷静な声で、質問してきた。だが俺は記憶を失っていないのだ……。それに……佐藤と田中の記憶を失っている俺が違う人物なのは間違いなさそうだが……。

「田中、落ち着いて欲しいんだけど、俺のステータスは、君達と比べて低いだろう? レベルが低いせいもあるんだ。」

「でも、俺はレベルが2だけど、佐藤のレベルは9あるじゃん……。それどころか、この世界の誰よりも高いし……。」田中が俺の言い分に突っ込んでくる。「いやいや、そういう問題じゃないんだよ……。この世界の人間に比べて俺は弱いのは間違いないんだよ……。それに俺は君が佐藤だって言ってくれなかったから……君の名前すら忘れているような状態なんだよ。俺は自分が誰で、どんな職業に就いていて……、どうして君と一緒に冒険者になったのか……。何一つ分からない状態なんだ……。」と俺は伝えた。田中は何か考えているようだ。

「じゃあ、お前は、自分が勇者だなんて言わないだろうな……。お前が佐藤って名前じゃないと分かってても……、俺は佐藤が勇者だとしか思えないんだよなぁ……。」と真剣な顔をして田中が言ってくる。「俺は、佐藤であって佐藤じゃないんだ……。ごめんな……。田中。君は何か思い当たることがあるのか……? 例えば俺以外のクラスメイト達が全員この世界に転生していて、一緒に冒険者になっているって可能性はあるんだろうか……。」と俺が質問をする。田中が答える。

「俺もこの世界に飛ばされた時、クラスの半分と、それから先生までいなくなってた……。ただ、この世界は元の世界よりも広いみたいなんだよな……。」と、この世界が広すぎるという話をして、田中が悩んでいる……。この世界の広さの問題か……。

「そういえば、佐藤が召喚されたときの状況もおかしいけど……この世界の人達が使う魔法もおかしなものなんだ……。佐藤、お前は覚えていないかも知れないが、俺が使える魔法の説明も聞いたし……俺も教えようか……。俺が使える『水』『風』の初級スキルの説明と、お前が使えそうな中級以上の説明もしようか……。」田中が俺に言ってきたので俺は了承して、田中から「水」や「風」などの魔法を実演してもらうことにした。

***田中は説明を始めた。俺は、その田中の説明を聞いて驚愕する。この世界に存在している魔法の種類には、初級・中級、上級、最上級が存在するという事なのだ。そして田中は実際に「水」と「風の呪文を唱えて実演してくれたが……それはまさに……「水」の魔法だった。この世界で「水」といえば生活に使われる水を出す事だったり、飲料水に使ったりなど、その用途は多岐にわたり、「水の魔法」は誰でも使うことができるらしい……。この世界に存在する魔法の種類は全部で7種類存在する。火を起こすことが出来る「火の呪文」、回復を行う「治癒の呪文」などが代表的なものだと言う。この世界で生活している人達は「火の術」「水の術」を習得しており、「治癒の呪文」を使える人はあまり多くない。

そして、この世界のほとんどの人々が習得していると言われている「治癒」は「体力回復」の効果が有る「光」の属性の「癒し」と呼ばれる「光の力」を使用する事で可能になるもので、他にも「毒」の浄化や「麻痺」の状態異常を回復させたり、「傷口の治療」もできる「闇」や「雷」の魔力を使用して行えるようだ……。そしてその「光」、「闇の力」の両方を同時に使いこなすことで、「死者蘇生」や「時を巻き戻す」、「時を遡る」などの効果を持つと言われる究極の「神の奇跡」である神域に属するとされる伝説の「時空の門」をくぐりぬけて、「過去」、「未来」、「異世界」に行くことも出来てしまうとされている。

ちなみに、「闇」の属性は邪悪で不浄なものとされており、「神聖さ」・「正しさ」・「善良さ」の属する「光」の対極に位置しているようだ。

「田中くん!!俺も「水の魔法」を覚えられるかな!?」

俺は「水の術」を覚えることに前向きだった。俺も冒険者に早くなりたいし、自分の身を守るために「護りたい」人がこの世界にいるなら尚更早く強くなりたいと思っていたからだ。しかし、俺が思っていた以上に、この世界の常識はぶっ飛んでいたのだ……。

俺は今、「田中」に案内されて、冒険者ギルドにきていた。俺と田中はギルドの受付にきて、冒険者になるために登録をしにきた。登録料は二人で50万ギルだった。俺は田中と二人分の登録料を払って、ギルドに登録をした。ギルドに登録をすることによって受けられる恩恵として、『依頼斡旋サービス』・『ギルド銀行システム』、『ランクアップボーナス金・アイテム購入資金贈与』・『パーティ結成補助』・『情報共有・報告サポート・連絡相談機能』・『クエスト掲示板・各種ショップの利用権付与』の6つの特権が与えられるという事を田中に説明され……俺達はその特典を利用させて貰う事になった。

俺達のギルドカードが出来上がるまでの待ち時間を利用して、俺と田中は冒険者として活動する上で必要となる最低限のルールについて確認をしていた。まず冒険者は魔物を討伐する為の戦闘行為をしなければならない。

そして戦闘中に負傷したら「回復」系の魔法を使う事で負傷部位の回復が行えて、「HP」の数値も減ることはあるが、自然回復するそうだ。

ただし、これはあくまでも基本中の基本の話であり例外的なケースもあるそうだ。そしてこの世界の全ての街で、共通認識とされているのは、街の外で発生する「モンスター退治の仕事は基本的に、街中で発生し得る「盗賊の捕縛及び殲滅」と同じルールが適用される事だという点だ。

つまり……冒険者が街中の依頼をこなしていても、他の冒険者や一般人などに危害を加えるような行為が発覚した場合は、厳罰の対象となるようだ。

それから冒険者の規則違反に対するペナルティは厳しく、「1回目は不敬罪・2回以降は軽犯罪による投獄」となっているらしい。

俺は田中の説明を受けながら、この世界の冒険者としてのルールや仕組みを把握していく……。冒険者には大きく分けて3種類のタイプがいるという。

一つ目が…… 一攫千金を夢見て「危険度が非常に高いが、実入りが多い仕事」や、いわゆる……「冒険者しか達成できない難易なミッションの攻略」に挑戦するタイプ。

二つ目が…… 安定した生活を求めるために、「街の安全を脅かすモンスターの駆逐」と「街の治安の維持」に全力を傾けるタイプ。

三つ目は……「危険な場所に赴いても問題のないレベルの高い戦闘力」と「強力なスキル・魔術などの戦闘能力に裏打ちされた技術力」を持って、一般的な冒険者とは一線を画す、特殊な「冒険者しか遂行することの出来ないミッションを遂行する冒険者」

田中は……「佐藤は、まだ駆け出しだし……無理しない範囲で仕事をこなせば良いんじゃないかな? まぁ俺としてはお前とずっと行動を共にしていきたいと考えてるから……、お前さえ良かったらこれから毎日、依頼を受けに行こうと思うんだが……。どうする?」と提案してくる。俺は田中にお願いして、俺と一緒にパーティーを組んで貰うことにしていたのだ……。

そんな話を田中としていると、俺達の冒険者カードを発行してくれていた、若い女性の受付嬢さんが俺達に話しかけてきた。彼女は、田中とは以前から面識があるようで仲の良い関係みたいだ……。そして……彼女によると「レベルが上がることによって得られる能力向上や成長率は凄まじい」そうで、この世界でもかなり優秀な人材で……ギルド内でも、冒険者の中で一目置かれている存在なのだとか……。

(あれっ? なんとなく見たことがある顔のような気がするが……。俺の勘違いだろうか……。俺の知っているこの世界の人達とはかなり容姿や体型が異なるからな……。それにこの世界の人達の見た目が地球上の人達のそれに近いのかどうかも……よく分からないし……。それにこの世界の人達は俺の知らないような知識を当たり前のように知ってたりするから……この世界の人にとっては当たり前のことでも、俺が知るわけないんだけどな……。)俺はそんなことを考えながら女性職員と田中が話す様子を見つめる。

「それで……お二人はどんな依頼をご希望でしょうか……? ただ、田中様のレベルでは……あまり難易度が高くない方が良いかと思いますよ。」女性は俺と田中に聞いてくる。

俺は女性の話を聞き、田中と相談しながら「冒険者」としての活動をするために必要な手続きと、受けることのできる依頼の説明を受けた……。俺のステータスは

名前;佐藤博志 性別;男性 年齢;28歳 職業;盗賊 ▲ 防御力;500+100 魔防:400 武器;短剣 ▲ 攻撃力;1200 +0 防具;盗賊シリーズ一式 と表示されている。俺はギルド職員の女性と、田中と一緒に、いくつかの依頼の中から、初心者にもできそうな依頼を探すことにした……。

***俺がギルドの職員の人から教えてもらった依頼を、簡単に説明する……。

*街の近隣に発生した「オーク」という二足歩行の「人型の亜人」を討伐する。

*街に接近中の大型の肉食獣を討伐して肉や素材を入手する。

*街の周囲に生息する薬草を採取する *ダンジョン内で出現した魔物を駆除する。

*特定の洞窟の周辺に出現するゴブリンなどを掃討する。

*スライムなどの比較的安全なモンスターを狩る。などなど…… *これらの討伐や採取などは比較的簡単な依頼らしく、俺と田中はこの依頼を受けることにした。俺達がギルドを出た後にも何人も冒険者らしき者達が現れてギルドに登録をしていた。やはりこの街の住人達は、ギルドに登録するメリットを知っているようだった。俺が田中とギルドを出る時に振り返ると、俺達のギルドカードを見ていた他の客から……「お前らのその冒険者カードはなんだ!?」「ふざけるんじゃねぇぞ!」など……罵声が浴びせられていた。そして、俺と田中のギルドカードが発行した瞬間を見ていたらしい数人の集団からは……

「あいつら……本当に『勇者』じゃなかったようだぜ……。あの女……『鑑定のギフト持ち』のようだったが、嘘をつくなんて、とんでもない『悪人』に違いない!!俺達の大事な仲間にあんな酷いことを言ってくるんだ!!『悪』だ!!」と、叫んでいる男がいたが、その男は冒険者の格好をしているのだが、装備のグレードも低くて、体つきも弱々しい感じの男で……俺はこの男を見ていて非常に不快になった……。この男はおそらく「勇者の一行」ではなく……「元・勇者のパーティメンバー候補」というところだろう……。俺は「勇者の一行」として選ばれたのは……鈴木と、もう1人の若い男だけで、その二人は「元の世界の地球」という世界から来たようだが……残りの2人はこの異世界の人間なのではないだろうか……。そしてこの3人が「勇者」の称号を与えられていて、他の3人がこの異世界での「称号を貰えなかった理由」というのは……単純に考えて「レベル不足」ではないだろうか……。

「佐藤君……大丈夫かい?」

田中は先ほどまで騒いでいた冒険者を一喝して落ち着かせたようだ。俺も「うん。俺は全然大丈夫だよ。

田中はどうだい?」と返事をして田中と共にギルドを出ようとした。しかし俺達は後ろの方で騒ぎになっている事に気づき……振り向いてみると、先ほどの「冒険者風の若者」が……冒険者のリーダー格の青年に対して怒鳴り散らしていた。そして「勇者の野郎共め!! 絶対に許さねえからな!!!」と言って去っていった。リーダーの青年は「何があったのか……。俺にはさっぱり分からないが……この世界では何か大変なことが起き始めているかもしれない……。俺の仲間たちがこの世界に召喚されたのは偶然じゃないのかも知れない……。早く皆を見つけなければ……」などと意味不明な事を言っていて……ギルドの中の冒険者たちに「何を言っているんだこいつは?」と気味の悪い目で見られていた。

(鈴木達は一体どこに行ったんだろうか…… 早くみんなと合流したいが……今の俺の力で果たしてみんなの力になれるだろうか…… それに…… 鈴木はどうして急に俺のことを見捨ててしまったのだろうか…… 俺は鈴木を信用していたが……鈴木は俺を裏切った……。

くそぉ~

田中がいなかったら……俺も殺されてしまっていた可能性が高い…… なんとかしないとな……)俺はギルドを出て街の門に向かうと田中が話しかけてきた。

「佐藤君はやっぱり『鑑定』とかのスキルを持っているのかい?」

「えっ? いやまだ持ってないよ。でも多分持っていると思う。」

俺は田中の質問に答える。

「佐藤君。この世界の人族はね。基本的に「自分より下の存在」だと認識した相手には基本的に無関心で接するんだ。例えば佐藤君の事を助けてくれた人達がそうだよね……。彼らは君の事を完全に無視していたでしょ?」

「あっ……そういえば確かに。

田中はどうしてそんな事を知ってるんだ?」

俺は疑問をぶつけた。

田中は俺の言葉を聞いて「実は僕も昔……そういう風に思っていた時期があって……。今は違うけど……。」と答えてきた。そして続けて「この世界で冒険者として生活をするなら、そういった考え方は危険だから……これからは止めた方がいいと思うよ。」と忠告してきた。俺は田中の話を聞く中で、田中の過去が少し垣間見えたような気がした……。

*

「アース」というこの異世界に存在する国家は全部で3つあり、1つ目は俺や鈴木が現在住んでいる「エルンラント王国」で、ここは「アース」で唯一の「人間の治める国家」であり、この世界で最も大きな領土を持つ大国だ。2つ目の「オーレンライト帝国」という国だが……「オーレンライト」というのは「オーレンス=レイ=ライン」という人物の故郷の地名のようだが、彼の故郷の場所がオーレンライト帝国の国土の南部にあるらしく、この国は別名を「南の帝国」と呼ばれている。ちなみに俺の生まれ故郷でもある「日本」という国の事は……こちらの世界の人間は「極東の国」と呼んでいるらしい……。3つめは俺達がいた「ラ・トレムの街」が属する「ルミネス領」である。

*

「佐藤君は……自分のいた世界に帰れるとしたら……今すぐ帰りたい?」

田中は俺を見つめて尋ねてきた……。

俺は田中がどういう気持ちで俺の返答を待つのか知りたくて、しばらく田中と見つめ合っていたが…… 田中の目を見る限りでは、彼は俺に悪意を抱いているわけではないと判断することができた。

俺は正直に「俺は帰らないつもりだ……。ここで暮らすことに決めたんだ……。」と答えた。田中はそれを聞くと俺の手を握ってきた……。俺はその行動の意味が分からなかったが……田中に握られている手から温もりを感じて嬉しかった。

*俺はこの異世界で生きると決めた……。

*俺はこの異世界で初めての仲間を得た。

*俺には守るべき者がいる。

そして俺はこの異世界に飛ばされてきて、初めて心を開くことができたのだ。

*俺はこの異世界に来て……俺なりに頑張っていこうと思っている。俺の本当の実力はまだ未知数で誰にも分からないが…… 俺は……これから頑張ろうと思うのだ……。

「なぁ…… 理江ちゃん……。なんとなく思い出せたんだけど…… あの時、俺が見た夢の中で……君の声を聞いた気がするんだよ……。確か「私はあなたの味方ですよ……。助けに来たんですよ……」と言っていた気がするんだけど……。俺の記憶違いかな?それとも本当に幻聴だったのだろうか……。」

俺は記憶が曖昧になってしまっていて……。それが事実かどうか自信がないのだ。ただ俺の目の前にいる少女は間違いなく「この異世界」にいたはずの女の子なのだ。俺は彼女に聞いてみる事にした。

理江が佐藤に語りかけた!「私……そんな事を言っていたかもしれません。」

彼女は俯きながら呟いていた。

佐藤が驚いた表情で聞き返した「本当に!?本当にそうなのかい?」

佐藤は驚きながらも必死に理江に訴えかけている。俺はそんな様子を黙って見ている事しかできない……。

(なんだか俺だけが蚊帳の外に置かれている気分なんだが……まあ仕方ないか……。それよりも……俺としたことが、理江と出会ってからは……理恵にばかり意識が行ってしまうから……他の人の事が疎かになっているようだな……。反省しなければな…… もっとしっかりしないと……。)

**

***


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佐藤は混乱しながらも理江を抱きしめ、泣き崩れた……。理江も静かに涙を流していた……。俺と田中はその光景を見ながら、しばらくの間二人の様子を眺めていた……。

そして、少し時間が経った後……落ち着いた佐藤が俺に声をかけてきた。

「すまない。俺とした事が……。みっともない姿を見せてしまったな……。俺としたことが落ち着かないものだ……。俺はもう大丈夫だよ……。君の名前は『里中さん』と言ったよね?それで間違いはないんだよね?」

俺は田中の顔を見て確認して、佐藤が大丈夫そうなのを確認すると、佐藤に対して返事をした。

「ああ、名前は『里中理絵』で間違いないよ。それと俺の名前も覚えていてくれたみたいだけど、自己紹介しておくよ。俺は『鈴木勇人』。君が言う通り『地球』の出身で、今は……この世界で『賢者』として暮らしているんだ。そして、こっちは俺のパートナーで一緒にこの世界にやってきた『田中直樹』君。彼もまた俺と同じように『地球の人間』なんだが、彼がこの世界に来る際に、『勇者』の素質が開花していて、今では『聖戦士』なんだ。俺たち2人で、この世界の脅威となる存在を討伐しまくったもんさ。そして……最終的には魔王を倒すまでに至ったんだぜ!!いやーあれは大変だったが、とても楽しい旅路でもあったな!!俺は今でも、その時の楽しかった日々を思い出して、たまに感傷に浸ったりしているぜ!!」

「おい!!勇者!!お前の武勇伝を聞かせるのはいいが……この世界の人たちのことも少しは考えて話せよな!!この世界の人々はお前らの都合なんか知るわけないだろう!!この世界に生きているすべての人々がお前たちみたいな人間じゃねえんだよ!! 」と、俺は思わず叫んでしまった……。田中が慌てて俺を抑えようと近づいて来たが……。俺はそれでも止まらなかった……。

(くそ……。俺はなんて馬鹿なことをしてるんだ……。落ち着けよ俺。俺のせいで2人に嫌な思いをさせてしまったじゃないか。)

佐藤と、田中は呆気にとられたような顔で俺を見ていた。俺は我に帰ると……申し訳ない気持ちになり……その場から逃げ出したくなった……。すると佐藤は突然立ち上がり、俺の腕を引っ張って、どこかに向かって走り出した……。

* * *

俺は今、先ほどまで居た街の中央付近から離れていくと、街の端の方に来ていた。そこは街の中心地よりも活気に溢れていて、たくさんの人が賑わっているようであった。どうやらここは商業区画になっているらしく、食べ物を売る屋台などが所狭しと並び立ち、買い物をする人々の熱気や呼び込みをしている人達で賑わいを見せているようである。

(ここは、俺がいた元の世界にあった商店街のようだ。それにしてもこの活気溢れる感じ……まるで日本のような感覚を覚えるよな。やっぱり同じ国だったのか?それなら田中にも俺と同じことを聞けばよかったよな……。失敗したな…… くそぉ〜……。こんなところで何をやってるんだ……。情けない…… 田中のやつに偉そうに注意したくせに……)


* * *

俺は、さっき自分がやってしまったことについて考えていた……。しかし田中は「気にしないでいいよ。それより君は『理恵』という女の子のことが心配じゃないのか?もしかすると……彼女はこの街の中をうろついているかもしれないだろ?もしそうだとすれば早く見つけ出してあげた方がいいんじゃないのかい?」と言ってきた。

「そう言えば……理江とはぐたんままだったんだ……。」俺は改めてその事に気付いた……。そして佐藤の「俺達と一緒に行こう!」という一言により、田中と俺は佐藤と共に理江を探す事になった。

(佐藤達は今更何を探しているんだろう……。

田中と理江は何か心当たりがあるのか?まあ……それは今は置いておこう……。)


* * *

そして暫く歩いていると、「奴隷市場」という場所が目に入ってきて、そこに1人の女性を発見した。そして女性は首輪をしており、その首には黒い首輪が付いている事から「奴隷商人」に買われてしまいそうになった女性だと言うことにすぐに気がつき、俺達は彼女を助ける為に動き出そうとした……。

だが……。その前に…… 俺は…… 田中から思いっきり頬っぺたを殴られて……俺はそのまま尻餅をついてしまう……。その衝撃で少し頭がくらっとなった俺は倒れ込むと地面に手を当てて頭を上げる……。そして田中の顔を見上げると、彼は真剣な眼差しで……

「少し……頭を冷やしたらどうだい?」と言われて、田中の言っていることは間違っていないと思った……。確かに俺は……少し興奮していたのかも知れない。冷静さを欠いていたように思う……。俺は恥ずかしくて……田中の目を見ることができなかった……。


* * *


* * *


* * *

佐藤が「ちょっと、あんたら何してんの?」と言いながら割って入ってきた。そして佐藤は理江の首についた「隷属の証」について調べたいようで、田中に対して色々と質問を繰り返していた。その結果……理江はどうも最近まで生きていたらしく(死んではいるが、魂だけの存在になっているようだ……。

これは田中の説明によるものだ)、佐藤が持っている「神の目」の力で見れるらしく……。俺は、理江の肉体はまだこの世界に存在する可能性があるという話だったのだが……俺は何故かそれが嘘のように思えた……。理江に話しかけても反応が無いからだ。佐藤の話を聞いている限りでは「まだ生き返る事ができるかも」と言っていることから「この世界のどこかに理江の遺体が存在する可能性が高い」との事だ。だから俺も……「俺もその意見には賛成するよ……。理江は……多分生きていると思う……」と答えたのだ。田中は……

「理江が生きているだと!?本当か!?どうして君には分かるんだ?」と驚いた表情で俺に迫ってきた。

俺は「理江と約束を交わしたんだよ……。また……絶対に会いに来るってね……。まあ俺は、あいつとの約束を破るわけにはいかないんだよ……。あいつが待ってるはずなんだよ……。きっと俺を待ってくれてるはずだ……」と答えていた。そして佐藤は「そうかい……。でもあんたが言ってることが事実なら良かったぜ……。」と言って、俺に対して「私からも頼む!この子を探してくれないかい?」と懇願された。

俺も「わかった……。必ず理江を見つけ出そう……。

あと田中…… 悪い……。殴ったりして悪かったな…… ごめんよ……。」

と謝罪をして田中に頭を下げた。田中が許してくれたことで、俺の心に残っていた重たいものが無くなって……すっと軽くなった気分だった。俺が謝ると、佐藤が理江の「鑑定」をしたいと言っていたので、「それじゃ俺も理江を見てみるか……。田中に聞くより自分の方が確実だしな……。ついでだから俺の能力についても説明しておくか。俺の『職業』は『賢者』なんだ。魔法力がとても高く、攻撃から支援まで幅広く活躍することができるぞ。まあ俺の攻撃方法は物理なんだけどな……ハハハ……まあとにかく…… 俺に任してくれれば大丈夫さ!! 俺は『鑑定』ができるからな!!」

田中と佐藤に説明すると2人は納得した様子だったので、俺が理江のことを『看破』した時に出た能力も全て伝えておいた。田中と佐藤も「了解したぜ!!頼んだぜ!!」と言って、田中は佐藤の事を抱きしめていた……。田中と佐藤のやり取りをみて、羨ましくなった俺は……佐藤に近寄り……抱きついた……そして……

「俺にも、抱かせてくれないか?ダメかな?」と佐藤にお願いすると、彼女は「フッ」と笑って

「良いけど……私の胸は揉み応えはないよ。それに私も君にお返ししても良いかい?」と俺に対して尋ねて来たので「ああ。いいぜ。君に俺が触れられるかどうかはわからないが、俺の体を好きなようにしていいよ」と佐藤に対して言った。

佐藤は俺に対して

「ありがとう。遠慮なくいくよ。」と言った後、俺に対して

「えいっ!」

といって…… 佐藤は俺の頬をビンタした……

「痛ってーーーなぁ……。」と、俺は佐藤に向かって文句を言うと、彼女は

「ふふん。そんなもんよ。君がさっきやった事はね……。

でも今ので君と私は対等になったんだから……。もう君は私を叩けないでしょ?分かったらもう二度と変なこと言わないでよね!」

佐藤がそう言うのを聞いた田中が……俺に向かって…… 田中は俺に近づき……「おい。お前の『スキル』ってやつを俺に教えろ!!そして俺の事も教えるからよ!!俺たちの力を比べてみたくなったんだ。いいだろ? 俺たちだって負けてはいられないぜ!! さあ、見せてくれよ。お前の本当の能力をさ!!」と言ってきた。田中の言葉を聞き、俺たち4人は互いに向き合い「じゃあやるか」と言うことになり、まず最初に俺から……「ステータスオープン」と唱え、みんなに見えるように「表示設定」の「開示モード」を選択をして、「職業」のところをタップすると……。

俺は……『勇者』に『偽装』されている状態の俺自身の『真の職業』を表示する為に……タップするとそこには……

『魔人』『大魔王サタン』『闇の帝王・ルシファー』『悪魔公爵ベルゼバブ』などが表示されていて……それを見た俺は……思わず笑ってしまったのだ……。そしてそれを覗きこんでいた佐藤と田中は

「うわっ……なんなのよこれ……。意味わかんないし、何よ……この厨二病っぽい名前と、そのネーミングのギャップ感……ウケルわw」

と、腹を抱えながら笑い転げている……。佐藤に釣られて俺達3人も大爆笑している……。

「田中…… 本当に……これが君が求めている力だったりするのか? これはいくらなんでも凄すぎるよ……。正直言ってドン引きだよ。田中の言っていることは間違っていたんじゃないかな?」

佐藤はそう言いながらも、どこか面白そうな顔で田中に話しかけた。すると田中も、佐藤と同様に俺の目の前でニヤけていた。田中が何かブツブツ言っていたので耳を澄ませて聞こうとしていると……

(やべえ……。こんなの聞いたことねぇし……、ヤバイだろ……マジでやべぇ……。こんなに面白いことが、世の中にあるなんて……。最高だぜ。田中次郎は、とんでもない奴だ……。

それにこいつは俺よりも強いかもしれない……)と呟いている声が聞こえてきた……。そして俺は田中が佐藤と話している間にこっそり『闇』を発動させた……そして田中と佐藤がこちらを向いてない隙を狙って田中の背中に向けて発動させた……。俺は田中に気付かれないように『隠蔽(ハイド)』と小声で唱え、佐藤の目を盗んで……「魔力」を込めた指先で、そっと田中の身体に触れる……。そして俺は、その時に念じると……。俺と、田中の全身が漆黒のオーラで覆われていく……。

俺は田中に「何をやってんだ?田中。佐藤と話し込んでいるんじゃないのか?どうしたんだ?急に黙りこんで……、それに変なものが見えるとか、なんか様子がおかしいぞ……。どうしたんだよ?」と言うと、田中は何も無い虚空を見つめて何か考え事を始めたようだ。そして田中は自分の両手をジッと見た後で、突然、地面に崩れ落ち、頭を押さえて苦しみ始めた。そして……俺は……田中に触れていない方の手を上げて、田中に「鑑定」と「スキル強奪」、「アイテム強奪」(対象の持っている物を自分の物とする事が出来る)を使ってみた……。

田中の『ステータス』を確認してみると、「田中一平」の欄には『佐藤美鈴の恋人の田中太郎の偽者』(田中一平氏本人)という項目が増えており、『鈴木三郎』と名前が変わっていたが、その他の能力等は以前のままだったのだ。さらに俺は、田中の持ち物であるスマートフォンを奪い取ることに成功したのであった。そして「佐藤美鈴」の名前の部分を『鈴木三郎』に変え、田中の「職業」は『奴隷商人』(田中一平の「真の姿」)に変えた後に、『隷属契約(隷属関係を結ぶ事ができる)』という項目が田中の画面に出てきたのだが……俺がこの画面を見ている事に気が付いたようで、田中の口からは……

「ぐぎゃぁー!くぅ……。俺は……お前たち……を許さない……。」

という断末魔のような叫びが上がり、その直後、田中が…… 田中が黒い霧に包まれたかと思うと……徐々に田中の体が大きくなり始め、その姿は、まさに悪魔そのものになり始めていた……。しかもこの悪魔……今まで見た中でも最強の強さを持っていると思われるのだ。だが田中の魂は、未だに残っているようなのだ。つまりまだ死んでいない状態であり……田中には「呪い(呪縛)」がかかっていて魂を肉体に縛りつけてしまっているらしいのだ。そして肉体を支配しているのは「田中一平氏自身」なのだ。これは非常に面倒な相手なので、俺は『死王』と「死神」「悪魔公爵サタン・デヴィルロード」を呼び出して、2人で戦うことに決めて2人の戦闘態勢を整えたのだ。

『死王』に命令を出し「この悪魔の魂を肉体から切り離して封印して消滅させてほしい」と頼むと、「わかりました」と言い『死神』と共に行動を開始する。一方『大魔王サタン』は、そのまま『堕天使ルシファー』と合体してもらい、俺が『勇者』であるかのように見せかける作戦を実行することにした。そして2人の戦いが始まると……。一瞬で勝負がつくと思っていたのだが……。やはり俺達の想像以上に強くなっていたようだったが……。まあ問題はないと判断したので戦いを続行する事にした。しかしその時に「理江」が現れ…… 俺に対して攻撃を仕掛けようとしたため、「田中は俺が押さえておくから、早く佐藤さんを連れて逃げるんだ!!早く!!早く逃げろ!!」と叫ぶと……。田中の体が変化し始めて……俺が知っている人間の姿を保っていない「佐藤美鈴の本当の姿」に変化したのだった。その光景を見ていた『佐藤』は「田中……。一体、何があったの? 私よ。あなたの彼女の佐藤理江よ!!田中……。お願い……目を覚まして……。」と言って泣き叫んでいるが、その願いが田中に届くことはないのだった。

田中は俺に向かって攻撃してくるが、俺は攻撃を全て回避しながら……。『勇者の職業』の力を使用して……『勇者の能力(全ての能力値+10倍。能力補正値2倍になる。スキル『鑑定』と『解析』『分析』を取得することができる。『隠蔽』の上位能力。自分の能力を相手に誤認させることが出来るようになる。また他人のステータスを改竄できる。他人に能力値を譲渡する事が出来る。相手の能力を封印することが可能。他人の能力を奪うことが可能。』を発動させると……「大魔王サタン・デスサイス」の『固有特殊能力』として、「ステータス隠蔽」「ステータス改竄」「ステータス偽装」「職業偽造」「職業操作」と表示されている『大魔王』が使えるすべての能力を使うことができるようになった。

「サタン・デウスエクスマキナ」が「大魔王サタン・デストピア・ヘルマスター」になった。

「悪魔公爵」は「悪魔公侯爵」に変化した。

「堕天使」は「天使長ルシフェル」に変わった。

「悪魔公将軍」も

「魔帝侯悪魔公爵ジェネラル」に

「悪魔公爵将候」も「大悪魔公爵」に 変化していった。

その後で『田中』は俺に

「なんで、なんで、あんたが……田中なのよ!!私に告白してきた時のあの真面目そうな感じはどこに行ったのよ!?私はこんな田中知らないわ!!ふざけんな!!!田中を返しなさいよぉー!!」と言ってきた。俺に襲いかかってきたが……。『佐藤』が必死に俺を助けようと、田中に向かって「田中!!しっかりしてよ!!あなたが本当に好きになったのは私の筈でしょうが!!なんで……どうして、田中のことを……殺そうと……ううん。そんなことよりも……。田中に……田中に、なんて酷いことを……許さないんだからねっ!!」と言うのを聞いた田中は、「佐藤か……」と言うと、少し落ち着きを取り戻したようだったが……。

『佐藤』の事を抱きしめると……「愛しているんだ。佐藤の事だけが好きなんだ。ごめん……。俺のせいで佐藤を傷つけてしまう事になるなんて……。すまない……。佐藤、もう……俺から離れてくれ……。俺が俺でいられる内にここから離れて……。俺が佐藤を愛していると言う気持ちに変わりはないから……。」と囁きながら、涙を流した後に佐藤を抱き抱えた状態で俺に攻撃をしてきたが……。佐藤に当たらない様に配慮しているせいなのか?動きが悪くなっており……。簡単に避けることが出来たのだ……。そして俺は田中の攻撃を回避した後……。『大賢者』『死鬼』と「悪魔公爵」の「魔法融合」を使い……俺の持つ最強の魔法を発動した。それは、『超究極神災』と名付けた俺のオリジナル魔法の最上位版の呪文だ……。そして発動された直後……。世界そのものが消滅し……時間が停止してしまったかのような静寂の世界が訪れる……。そして何も無い無の世界に俺は立っている……。その目の前には…… 俺自身がいた。その自分自身が話しかけてきたのだ……。

俺は、自分から話しかけて来たのが驚きすぎて言葉が出ないでいた……。すると……。俺自身から説明を受けた。そしてその内容があまりにも非現実的すぎる内容であったために俺は……。「信じられるか!!馬鹿にするな!!お前なんか消えちまえ!!」と叫ぶと、その自分自身の体が徐々に薄れていって、最後は光となり消えたのだ。しかしその時の自分の行動に疑問を感じて……冷静に考え直そうとした瞬間に俺の意識は途絶えたのであった。(俺は……。夢でも見てんのか?)と思ったら……。

(俺は今、『闇』の中に入っている状態だ……。『大勇者の職業』の職業スキルの中に、『闇』や、『夜』や、『闇』といった名前の物は無かったが……。どういう事なんだ? 俺がこの世界のルールで動けないはずじゃなかったのか? それなのになぜこんな場所に来れるんだよ。

意味がわかんねぇぞ……。)という声が再び聞こえてきた……。俺はどうすればいいのかわからず、困惑しながらも辺りの様子を探っていると……。「お前……誰だよ?」という質問をされてしまったので……。正直に答えたところで信用されないような気がしたので、誤魔化そうと考えた結果……。

自分が『異世界から来た者』であると言う嘘をつく事にした……。そして……。この世界に転生する前にあった出来事を思い出していくと…… 確か、田中は『女神リゼ』という奴から、チート能力を与えられるという話になっていたのだが……『田中一平』の時は、どうだったのだろうか……。あいつの話だと……「田中君……。」と呼ばれて、白い空間に連れていかれて……。そこで『女神の使徒』(天使の羽がある少女)が……「田中一平くん、これから私が君の力になってあげますので……。私の指示通りに動いて下さいね……。ではまず最初に……あなたの能力値を表示させてください……。あ……。」と言うと、「佐藤美鈴」という女性が突然、現れて「ちょっと待ちなさい!勝手に話を進めるんじゃないわよ!」と言って、俺の方に近づいてきて、いきなり「田中……いえ……太郎。私は、貴方のことを信じていますから。」と言って抱きついてきて、「だからさっきの言葉は取り消して欲しいんだけど……。お願いしてもいいかな?」と言われたのだが……。

その時……突然現れた「佐藤美鈴」の容姿が、俺が高校の時に惚れていた「田中美鈴」にそっくりだったため……俺はドキっとしてしまったのだが……。その直後、彼女が「あれ?……田中……太郎……。じゃないわよね……。だって……身長が高いし、筋肉もあるし、胸板と腕にも厚みがあって、肩幅も広いし……それに髪の色と髪型が違うし……。違う人だったのかなぁ……やっぱり……。」と残念そうな顔で言った。

俺は慌てて、「田中です。俺が田中一平の本当の姿で……。」と言ったが……「あー、やっぱり……。えぇ!?本当に!! 嘘でしょう?……まさか私達と同じ名前とか偶然過ぎるし……。もしかして同姓同名で……双子の兄弟なのかもしれないわ。ねえ、教えてくれる?あなたの名前は? どこに住んでいたの?兄弟は居るの?……私には双子は居ないし……。兄弟は姉がいるだけだけど……。あー、そっか……。そういうことなら納得できるけど……。」と色々と話を聞かれたのだったが……『田中一平』は、「すみません。佐藤さん、僕は田中なんですが、実は……記憶喪失になっていて……覚えているのは『勇者の職業』を手に入れた事と、レベルが上がった事で得た能力くらいしか……。」と言いかけたが……「えっ……。うぅ……。ごめんなさい。疑ったみたいで……、謝るね。ごめんなさい。」と言って頭を下げた。

彼女は俺から手を離すと「それで君はこれからどうするの? もし良かったら……私と一緒に行かない? 行くあてがないなら……。私は、これから旅を続けながら色々な国を見て回る予定でいるから……どうかしら?」と聞いてきた。

俺は彼女の事が好きなので「もちろんOKです!!僕を是非仲間に加えてください!!お願いします。」と言って、頭を下げると……。「ふふっ。私達はもう……友達だし仲間よ!!そんなにかしこまる事もないわよ!!じゃあさっそく自己紹介をしないとね。私の名は佐藤美鈴、職業は大勇者、種族は人族の『聖族』の17歳で独身。今は旅の途中で『ロナリア王国』に向かう途中だったの。よろしくね!!」と言われ、俺は彼女に手を差し伸べられたので握手をしながら……。「僕の名前は田中一平、職業は大勇者、年齢は15歳、独身。現在は旅の途中に寄った町を出て、次の目的地を目指して旅をしている最中。これからは宜しくお願い致します。佐藤さん。」と言うと……。「う〜ん……。なんで『大魔王サタン・デスサイズ』って言わないのかしら?まぁいいわ。ところでどうして、私の名前を知っていたの?もしかして……。私と過去に会った事があるのかしら?それとも、誰かに聞いていたとか?」と言われ、俺は少し悩んだ後に、誤魔化すことをやめにして……。『大魔王サタン・デスサイス』が『悪魔公爵将候』に『堕天使ルシフェル』と『悪魔公将軍』になった時に……全ての能力が統合されたことで……新しい能力が使えるようになり……。その中に相手のステータスを見ることができるスキルがあった為……。佐藤さんのステータスを確認することができるようになっていました。そして……ステータスを見てしまい、名前を知ることができました。本当に申し訳ありません。」

と、言って土下座をして、謝罪をすることに決めた。そして……。佐藤さんの返答次第では殺される覚悟を決めることにした……。

俺は『闇』の中で……

『闇の女神(神格)』と名乗る女と会話をした。(なんなんだ。この空間は……俺の想像の遥か上を行っているんだが……。それにしても……この世界って一体どういうところなんだろうな。この世界で死んだ後、別の世界に移動するって……、なんか……まるで小説みたいな展開だよな。まぁ俺の場合は……。この世界で生き返らせられたから……。あの『闇の女神(神格)』とかいうクソ女は許せないが……。でも、その前に……。

俺の事を救ってくれたのは確かだよな……。

この俺に対しての仕打ちが酷すぎるが……。俺を助けてくれたことは事実だからな……。感謝しなければいけないのかもしれないな……。

でも……。どうして俺は……。

この俺の目の前にいるのは誰なんだ?)と思うと目の前に現れた存在を見た。

すると……。「お前……誰だよ?」という言葉が出てしまう。すると……。

目の前にいた存在が話しかけてきたのだ。

「お前……俺のこと忘れたのか?」

目の前に立っているのは『田中』ではなく『田中太郎』の方であった。

田中は自分の目の前にいる『俺』のことを「太郎兄貴!!」と呼んできたのだ。そして彼は続けて「おい!!太郎は無事なのか?お前に何が起きたんだ!? 頼む!!俺の兄貴がこの世界に来たって聞いたんだ。だから助けてくれ!!」と言うと頭を深く下げたのだった……。俺は、彼の言っていることが信じられなくて、「いやいやいや……。どういう事?意味わかんねぇぞ……。どういう事か説明してくれないか? とりあえず……落ち着いて話しをしようじゃないか。」と話すと、俺はこの異世界に来るまでの出来事を思い出してみることにした。

(確か……。田中がこの異世界に来てから1か月くらい経った頃だな……。確か……あいつと連絡を取る方法が無かったんだよな……。それにしても……俺も最初はあいつも混乱しているのかと思ったが……。あいつってあんな感じじゃなかったから……何か隠してそうな気がするな。)と思いながらも俺は田中に話を聞いてみたのだが……。どうやら俺の予想通りだったらしく……。

田中が言うには……

『女神の使徒』に言われた事を実行した後に意識が飛んで……次に意識を取り戻したら……『大魔王サタン』という職業を手に入れていて、しかも俺によく似た人物になっている事に気がついたらしい。そして俺と瓜二つの容姿に驚いたそうだが……「これは俺の願望が見せている幻覚に違いない……。だってこんな都合の良いことがあるわけがないし……。」と考えて……。この世界から脱出するために色々と試そうとしたものの……。何も出来ないことに絶望し……自分の置かれている状況を理解するために情報を得ようと考えても……『ステータス画面』を見ても見ることが出来なくなっているという。そして、田中の現在の『状態』を確認しても……。この異世界では「勇者」以外の職業が選べないようになっているので「勇者田中一平」となっている上に、職業スキルの中には俺の『大勇者の職業』は入っていないようだったので……さらに落胆したらしい……。

しかし……。田中はある可能性を思いつき、田中は「もしかしたら……」と思い……俺と同じで女神リゼの力で召喚された異世界転移者なのではないかと思い、同じ立場である『田中太郎』(田中が変身させられた俺の姿)ならば話がわかるのではないかと考え、「なぁ、太郎がこっちの世界に来ていたのなら……。太郎も同じことをして俺に会いに来るはずだろ?」と言った。それに対して田中が、「あー、そういえば……『女神リザ』っていう名前だったっけ……。さっきの話を聞く限りだと……その『大魔王サタン・デスサイズ』ってのは、『田中一平』の時に俺が使っていた職業だよ。つまり、田中は俺の事を呼び捨てで呼び、タメ口で言うくらい親しい関係のようだから……多分……『勇者の職業』を手に入れたときに一緒に俺も手に入れたんじゃないか?」というと、「そうなると……。『大魔王サタン・デスサイス』も『田中一平』も『佐藤美鈴』もみんな同一人物ということか……。」と言いながら顎に手を当てて考えているので……、俺も「そういうことみたいだな。しかし……まさか……。お前と同じ名前で呼ばれるなんて……。マジかよ……。そんな偶然があるとは思わなかったぜ……。それよりも……この異世界ってどんな場所なんだよ。ここは本当に『ゲームの中』なわけないよな……。」と田中と同じ意見であることを確認するように問いかける。田中は、俺の問いかけに対して少し間を置いて「それは……わからないけど……。でも少なくとも俺は……自分が知っているのはここが『異世界』だということだけかな……。まぁ色々とやってみれば分かるかもな……。でも……俺はまず、元の場所に戻りたいけどな。あー、それにしても……俺は……本当に元の世界に戻れるのだろうか……。まぁいいや……。太郎には悪いけど、この世界を脱出する方法を探させてもらうしかないか……。でも……今はとりあえず腹が減ったな……。」と田中は呟いた。そこで俺は「それなら飯を食わないとな……。でも……この世界の通貨が分からんぞ。まぁ最悪モンスターを倒して得た『魂の核石』を売るなりなんなりしてどうにかすれば大丈夫だろう……。とにかく金が無いと食事すらままならないしな。よし、まずはこの世界から抜け出す為に『情報収集』をしてみるか……。」と言うと田中が俺の顔を見て……「確かにその方が良いかもしれんな……。じゃあさ……。この世界で死んだ時の為に、お互いにステータスを見せ合っておいた方がいいだろう。『ステータスオープン』」と言いながら『ステータス』を表示させたので……、俺も同じように「ステータス」と言ってみると……。そこには「勇者太郎」(本名不明、職業『大勇者』)と表記されており……。レベル:10/20

+5/100 +50/100 +200+400 HP:2500

/ 5000 +100 MP:2500/3000

攻撃力:500000(2000+40)

+2(1000スキル補正込み)

+4500(1500)

+6600(2000)

+9900(3800)

+12900(6000)

防御力:45999(1500+45)

+25

魔防:4499(450)

運:120

魅力:80

* * *

所持スキル*

『大魔王』

・大魔王の威圧

(相手よりも数値が低い場合に相手の精神力を削り、行動不可能にすることが出来る)

・闇魔法LVMAX

・黒魔術Lv7

(『闇属性』『闇空間』に収納できるアイテムボックスの容量拡大 魔力を消費して空間を歪められる 生物を除くものを空間移動させる 自分を中心とした空間にある物を鑑定できる 空間に存在している全てのスキルの効果を使用または解除できる 自分の視界内にある物と自分の手で掴める物の情報を共有出来る 自分が所有している物に任意で付与効果を付けられる 対象を指定した上で自分の手元に引き寄せることが出来る)

【限定条件発動】

●この能力は1日の使用回数制限がある ●この能力を一度使うごとに次の使用時間まで能力を使用する事が出来ない《特殊系》 1・『全耐性無効』

2・『自動回復LV8』

3・『超高速思考 Lv9』

4・『完全言語能力』

5・『限界突破』

6・『無限収納』

7・『闇魔法LV11』

8・『暗黒術LV13』

9・『重力制御LV9』

10・『時空跳躍』

・『物理ダメージ半減』

:『全攻撃能力無効』

・『状態異常無効』

『称号』

「神の使徒」、「異界の訪問者」

と書かれていた。ちなみに俺は、田中のことを「お前……」と呼んでいたのに……何故か、俺の事を「太郎兄貴!!」と呼んでいて……、俺は違和感を感じていたのだった。そして……お互いの『固有スキル』がどうなったのかを確認した。

『大勇者の職業』

→『神の大勇者』

「田中一郎」「田中太郎」

→『勇者神田中太郎』

「佐藤雄介」

→『神の聖者 神 聖』

「田中一郎」

『大勇者の職業』→

「勇者の神」

となっていたのだ。そして……『職業名変更不可』、『種族変更不可』、『スキル追加・削除不可』、『転職』

が不可能になっていて……

『勇者』と表示されているが……俺と全く違うものになっているようだった。しかし…… 田中の目の前にいる『俺』には田中の『大勇者』が反映されているのだろうか……。俺は田中の方を見てみると……田中の『職業』が「大勇者」から『勇者神田中太郎』に変化していて……「え?どういう事?俺は大魔王なのに……どうして俺が大魔王になっているんだ?意味がわからねぇぞ。もしかして……俺は勇者になってるのか?じゃあ、俺の兄貴は?俺の兄貴はどこにいるんだ?俺は太郎兄貴がここにいないことにショックを受けていたのだが……。もしかして……兄貴の方は無事なのか?」と言っていたので、俺は、 田中が変身させられた俺のことを兄貴と呼んでいるのを聞いて、田中が言っていた事を思い出し、ある事に気がついた。俺達は『大魔王』として召喚されている事だ。なので……。『勇者』と『大魔王』は表裏一体の存在で……『大魔王』の力が弱まることで、召喚された『勇者』の力が失われていき……やがては『召喚した女神リザ』ですら力を取り戻すことが出来なくなるのではないだろうか……。それに田中に聞いたら……。どうやら……俺はこの世界に来る時に、『大魔王サタン・デスサイズ』に強制的に変身させられていて……さらに俺自身が持っていたスキルが全てなくなっているようだったので……田中もそうではないかと思ったのである。そして……俺と田中は同じ結論に達した。それは……。「俺達二人が……元の世界に戻る方法を探し出せば、この世界から抜け出す方法がわかるんじゃね!?」と言うことになったのである。俺達が色々と話し合いをしていたところで、急に女神リゼが現れて「二人ともお疲れ様でした!!これからも頑張ってくださいね。では、私と話をしましょう。では行きますよ。」と言いながら、また意識を失ったのであった。…………。目を覚ました時……。女神リゼが「あら……。田中さん……目が覚めたのですね……。では……。あなたにも『女神リザ』の加護をあげちゃいます。それと……あなたのお友達は『田中太郎』さんの職業を『大勇者』から『勇者神』に変更しています。」と言って、再び女神リザが姿を消していった。そこで俺は「ちょっと待ってくれ……。俺は田中一平のままだぞ……。って……何だよ……。あの『勇者神田中』って職業……。」と言いながらも……田中の顔を見ると……やはり田中も同じことを思っていたらしく……。「おい、俺……。俺ってば、『神の御業』を使えているじゃねえか……。しかも……田中の奴も『勇者神の職業』に変わっているし……。これは凄いな……。まぁでも俺って『大勇者』じゃなくなったし……俺も元の職業に戻した方が良いかもな……。俺って大剣豪ってのをやってみたいと思ってたんだよな。よし……そうするか。『職業変更』っと……。よし……出来たな……。後は俺が『勇者神』になったことでどんなことが出来るかの確認もしておかないとな……。まぁ後々やっていくとするか……。」と言いながら俺の方を見たので、

「なぁ……。この世界で生きていく上で必要なことは、俺達のこの世界の常識だろ。俺達はこっちの世界に来てすぐに気絶してたみたいだし……。だからまずはこの世界についての情報を集めていこうぜ。」と言った。

そこで田中が「そうだな……。まずはこの世界についての情報が欲しいな。よし、俺がまずこの世界の『地図』を作ろう。それから『魔物』を倒して……。情報を収集しようか……。じゃあさっそく『創造魔法』を使ってみるか。『創世』」と言いながら田中が何かを作り出す。そして出来上がったのはこの『世界』の『地図』で……。『異世界 地球の形 地球儀』と書かれているものだった。すると、田中が、

「太郎、とりあえずこれでいいと思うが……、この世界で生活していっても問題ないくらいの規模のものを作っておいた方が良いだろうな……。太郎……悪いけど……これから俺達は旅をするわけだから……。食料の問題が発生するよな……。ということで……俺が作るものについては……お前のスキルが反映されないみたいなんだわ。だからさ……俺は食べ物に関しては一切何も出来ないんだよ……。俺が『勇者神田中太郎』になっていないせいかもしれないけど……俺は今まで料理なんか一度もやったことがないんだ。それで……『大賢者 料理人 農家 酪農家 錬金術師』とか……そういう系の職業をやっていきたいとは思うんだけど……お前の方はどうする?」と言われ、俺が、「ああ、確かにそれだと俺は食材の心配はいらないが……そうなると、田中が一人になってしまうことになるな。俺の方こそ悪かったな。俺は別にお前に頼んでないんだが……どうしても気になるようなら俺も田中の作った料理を食わせてくれよ。お前の言うとおりに『創世 スキル追加 職業 勇者神のスキルを追加 創世のスキルを消滅させる』。で……『創世の能力 食物の創造作成』

『能力発動 食物を生み出す。』で良いか?これなら問題はないはずだ。」と言ってから「田中……。悪い……、あとお前が言った通り、俺の方が圧倒的に強いらしい。お前を守るのが俺の役割になりそうだな。」

俺と田中の話が落ち着いた所で今度はリゼが話しかけてきた。リゼいわく、ここから少し離れたところに村があり、その村の名前は「アベルタ王国」と呼ばれている場所のようで、その村に一番近い町に『転移門』を設置するように頼まれたのだ。俺はその依頼を受けることにしたのだが……リゼによると、その場所には、この世界を侵略している存在がいなくなっているので……普通に町として利用できるとのことなのだ。リゼは俺達に町の人に気付かれないよう隠密行動をして欲しいということと……出来るだけ多くの『勇者の武器』と『勇者の神器』を持って来て欲しいと言っていた。

リーゼの話が終わった後……。

「じゃあ、さっき俺が作った『勇者神 職業 大賢者のスキル』と『勇者神 スキル追加 職業(大)

スキル一覧 職業(勇者)の職業名追加 ステータス』に表示されている勇者の武器と勇者の神器の能力を試すか……。

勇者の能力は勇者に関係のある全ての能力が上昇するってことなのか。まぁ……そんなところだよな……。俺も大剣使いの能力が上昇できるから嬉しいけど、俺も大勇者の職業から勇者神に職業を変更しちまったし、田中の方も職業は『勇者神 職業 大賢者』に変わったし、大勇者より上の立場になってしまったな。で、俺の職業である大賢者と勇者神の職業の違いが分からなかったし、調べたら分かったが……職業が違っているので大魔王の時の能力は全て無くなっていた。

まぁ……俺達は『勇者神』になっているわけだし、職業が『大勇者』の時は勇者の武器と防具を装備することは出来なかったのだが……職業が『勇者神』になった事で……『勇者神装備 全種類使用可能』というスキルが追加で追加されていることが分かったのである。

それと大賢神も同じように追加されていて……職業名を変更すると使えるスキルが変化することがわかったのである。そして……勇者神と大勇者の違いは、『レベル』と『経験値』があるか無いかで……。レベルを上げるには経験値が必要だから、職業のレベルを上げた方が手っ取り早いという結論に至った。

そして勇者神の場合は、経験値ではなくて、俺達が持っている能力の熟練度によって職業の強さが決まるようだった。俺は『剣術の天才 勇者神の恩恵により全ての剣技を使用可 勇者の神技の使用も可能』と書かれていて…… 田中の方は……『勇者神の剣 攻撃力増加』『勇者神の盾 防御力増加』

田中曰く……この剣は『エクスカリバー・ゼロ・レプリカ(偽物だけど……)』で『エクスカリバー』(伝説の聖剣の模造品。伝説では、光り輝く黄金の刀身を持った長剣と言われている。ちなみに本物のエクスカリバーは折れたり、ヒビ割れてたりするので現在は存在しない剣で……)『アーサー王の円卓の騎士の証であるマントの着用が可能(田中談 本当はマントじゃなくて、フード付きローブなんだけどな……。マントに見えるから、俺も着ていたんだよ。俺的にはこっちの方がしっくりくるんだが……今は、ただのコスプレになってしまっているが……この服……気に入っていたんだがな……。)

』だそうだ……。

あと勇者神専用の勇者の装備を纏うことも出来るようだが……今の状態じゃ使えないからな……。」と言うことで……。田中と俺はこれから旅に出る準備をするのであった。そしてリゼに貰ったアイテムボックスを二人にプレゼントしてもらったので……そこに食料や衣類などを収納していったのであった。

そこで田中は『勇者の杖』で『結界 障壁 魔法障壁 空間壁』などの結界の魔法や防御系の魔法を発動させながら、「よし……。こんなもんかな……。後は、この世界での通貨を稼いでいくためにギルドに登録する必要があるよな……。俺達二人は『女神の使徒 職業は女神リザ』様からの『祝福受けし者』という設定で行くことにしたからな。それに、勇者がこの世界で活動するためにも、俺達の職業が『勇者神』だとバレるとマズイだろうからな。この辺りは田中に任せるぜ。」

と言って、この世界について色々と教えてもらっていた。

それから俺達は、町に行って宿屋に泊まり、食事をした。そこで、この町の人達に話を聞いたりして情報収集をした。するとこの世界のことについても分かってきた。この世界のお金の単位は……『金貨』、『銀貨』、『銅貨』の3種類あり……。それぞれ100枚で1つの価値になるらしい。そして……俺が倒した盗賊達の所持していた金については没収されてしまったのだが……それは田中が回収して……。「これはお前らが俺から盗んだものだろ!この俺から奪ったんだ……。だから俺のものでもあるはずだ!」と言って全て自分のものにしたみたいで…… それから俺達は、この町に2~3ヶ月ほど留まって色々な情報を集めることにしたのである。そしてその間に俺が手に入れた勇者の装備を身に着けながら旅の準備をしたりして過ごしていた。勇者の装備を身につけながら過ごす日々……。正直言って、凄く恥ずかしかったのだが……。『大魔導士』に変身したりして過ごしていくうちにだんだん慣れていった。しかし……。

そして、俺と田中がリゼの依頼を達成するために必要な物資を手に入れるための冒険が始まったのである。

俺と田中がこの世界に転移する少し前……。俺の会社の同僚で親友だった佐藤美鈴ちゃんのことが気になっていたのだが……彼女のことを忘れるため、必死で転職活動をして……そして無事に希望の仕事に就くことが出来たのだが……。その矢先に突然……。彼女がこの世に現れなくなり……それから俺は美鈴ちゃんが居なくなってからは、抜け殻のようになっていたのだった。仕事でミスを繰り返すようになって……先輩からも怒られるようになり……上司からの信頼も失っていった。でも俺の心の中にはいつも美鈴ちゃんの姿があったのだ……。そんなある日、突然『異世界』に転移させられてしまい……俺達は……『勇者』にされてしまったのである。

俺達は、まず最初に『冒険者ギルド』に訪れると……。リゼから聞いていた話通り『勇者神』だとは思われていないようだったので一安心した。俺は、受付嬢に話しかけてみることにした。「あの……。」俺が話そうとすると、横にいる田中がいきなり大声で「俺達は、『勇者神 職業は大賢者 職業名変更 スキル 大賢者の職業名を勇者神に変更する 大勇者 職業も勇者神に変更してください』と叫んだ。いきなりの出来事なので、周りの人がビックリしてしまい……。皆んながこちらを見てきた。

そして受付の女の子に、「あのぅ……どうかしましたか?」と聞かれた田中だったが……。田中が「あぁ……。すみません……。驚かせてしまって。ちょっと確認したいことがあるんですが……。いいですか?」と言った後で「実は……。僕たち、こことは別の世界から来たんですよ。」と言ってみた。そう言われた受付嬢は困惑していたが「一応ですが……。別の世界の人間だっていう証拠はあるのでしょうか?」と聞いてきたので……「えっと……。」俺は困ってしまったのだが……「はい!あります!ほら!」と田中が言ったので……。田中の方を見ると田中は『スキル』を使おうとしていたのである。田中の職業は『勇者神』だから、使える能力が増えていたのだ。

それで田中が『鑑定』のスキルを発動させると、この世界の人間の情報が見えたのだ。そしてその情報を見た田中が……『鑑定』で見た情報を俺に伝えてきた。その内容とは……「彼女は、人間じゃないですよ。」「何?マジで…… そうなの!?俺……彼女を見る目が変わっちゃったかもしれない……。」(嘘つけ……。本当は嬉しかったんだろうが……。素直になれない奴だな。)

そして俺も『勇者神の剣』を使って、スキルを発動させることに成功したので、同じように伝えたのである。「これ……。『ステータス』って言えば見れますよ。見てみて下さい。」(まぁ……どう見ても普通の女の子だし……。本当に神様なのか……。何か……ちょっとだけ残念かもな……。まぁ……。俺も人のことは言えないけど……。だって俺も田中と同じことを考えているし……。)俺が、彼女にそう言うと……。

彼女は恐る恐る俺達に近づいてきてくれて……田中が持っている『勇者の杖』を手に取ったのである。

それから、しばらく沈黙の時間が流れ……彼女が喋り始めた。

「おぉ〜。やっぱり本物の勇者さんと大賢者さんのようですね。疑ったりしちゃて、申し訳ございませんでした。」

そう言い終わると……。彼女は、深々と頭を下げたのであった。俺達が勇者神になったことを知られるのはまだ早いと思った俺は、「ああっ……。気にしないでください……。」と言うのであった。

*ギルドの窓口のお姉さんの名前と種族

種族 :

獣人種 狼族 ランク: 青

(※ギルドの職員の中では一番下の階級になります。)*名前 ミライ(23歳 女性)

容姿は銀髪ロングヘアでスタイル抜群。見た目年齢15歳から18歳の中くらいの背丈をしているが、実際は30代のベテラン職員で、この若さと外見を保っているが……実年齢は不明 俺達が勇者神になってしまったことには驚いたようだ。俺は『大勇者 職業 大魔導士 勇者神の職業を『大勇者』に変更。スキル 大賢者は『大勇者 魔法は、魔法力減少』と書き変えて……。『魔法は、全ての魔法使用可能』に書き換えて……。俺は『剣術の天才 魔法は全ての属性使用可能』にした。田中は『勇者神の剣 全ての魔法使用可能』に書き変えると……受付嬢の方に渡したのである。

そして俺が……この世界について聞くことにした。「あのぅ……。ここはどこなんでしょう?」と尋ねると……「はい。この国は『エルシア帝国』といいまして、今から約200年ほど前に、一人の王様がいて……。この世界には魔王も存在していたので……。その王様は『神の力を得た英雄』だったのです。その王様の名前は『ジークハルト=アルター』と言いました。

そして『神界』で修行を終えた後、この『地球』に降臨してきて……その力を人々に授けたという伝説が残っている国なのですよ。」

そして俺が、「その王様のその後は……。」と質問をしようとしたら……。

その時だった!突如……「キャー!!誰か助けてください!この人達に襲われています!」という悲鳴が聞こえてきた。その方向を振り向くと……。そこに……リゼの眷属で……元リゼの側近であった『聖女マリア』の姿があり……リゼの部下である4人の幹部の一人『四天王』の一人で『リゼの腹心であった』ので……。かなり強かったはずなのに……。なぜかリゼの手下に捕まり、リゼの元まで連れていかれようとしていたのだ。そして俺は……。リゼと会った時に、彼女のことを思いっきり抱きしめてしまい……。そのまま殺されてしまうのが嫌で、思わず逃げ出して……。今に至っているのだ。そんなことがあったのだが……このタイミングで『リゼの眷属の1人が、リゼのところに連れ戻される』という出来事に遭遇してしまったのである。

俺達は急いでその場所に駆けつけたのだが……そこには、リゼの部下で、かつて俺達を襲ったこともある……『四天王』の2人である『聖闘士 職業 拳神』と『暗黒戦士 職業 魔神』が……勇者神として覚醒したばかりの……俺達より少し強い程度にまで弱くなってしまっている『女神の加護を受けし者達 勇者の職業を与えられた存在』達に向かって……暴力を振るっている姿があった。そして俺達のことを見て「お前ら!よくノコノコ戻ってこれたな!」とか言っていたので……俺は……「何やってんだ!早くそいつらを解放してやれよ!」と大声で叫ぶと…… その瞬間に……。リゼの側近である『聖闘士』が突然苦しみ出して倒れたのである。俺は『勇者神になったから……俺に攻撃してきたら、あいつが死んでしまうんじゃないか』と思いながらも、つい咄嵯に手を出してしまったので……慌てて駆け寄ったのである。そして『鑑定』で相手のステータスを確認してみると……俺の思った通りになっていたので……「大丈夫ですか!?」と言ってみると……。「はぁ……。何とかな……。助かったぜ……。俺は……。『暗黒神ラデス』から、呪いを受けたみたいだ。だから……このままだと……。この先、戦えなくなってしまうかもしれねぇ……。」と言ってきた。その言葉を聞いて「どうしてですか?」と聞いてみたのだが……「俺は……この世界を滅ぼそうとしていた邪悪の存在で……今はこの世界で生きていくために仕方なく従っていたが……。もう……限界だ。俺達は『女神様とリゼちゃんのためにこの世界を守ろうとしただけなんだ!』俺は……『勇者神に倒されることで消滅することを望んでいる』だから頼む!せめて最後は華々しく散らせてくれ!」と懇願されたのだ。それを聞いた俺は……。「それはダメだ!俺は……君のことを救いたい!『勇者神大賢者 職業を大勇者に変更する』そしてスキル 大勇者の職業名を変更する 大勇者の職業名を勇者神に変更する」と叫んでから『勇者神の剣 職業は大勇者 スキル 勇者神 全属性の魔法使用可能 大賢者の職業名変更 スキル 勇者神の職業名変更 全ステータス増加』と念じてから…… 田中が大賢者の職業名を変更したのと同じスキルを使ったのである。それで、俺は……リゼの部下の彼の職業を全て大勇者に変更したのであった。それから彼は「おいっ……。いいのか?俺が……勇者神の力を奪っちゃって……。それに……さっき俺が言ってた『リゼとラデスのことを信じていたのに裏切られた。だから、世界を滅ぼしたくなる』っていうのは本気なんだけどな……。」と困惑した表情で俺を見てきた。そこで俺も……

「うん……。分かってるよ……。だけどね……。俺は……俺の仲間を……。『リゼさんと仲間だった人を救わないといけない』と思って……。」と言うと……彼は、真剣な顔つきになって「あんたも大変な状況にいるんだよな……。『大勇者』だもんな。だから俺も協力してやる。」と言ってきたので、「えっ!?いいの?」「当たり前だろうが!俺たちは友達だからな!」「分かった!じゃあよろしくお願いします!」と言うやり取りの後で握手を交わしたのであった。

俺と田中が、大勇者の『リゼさんの部下だった人物』と手を繋いだ瞬間……。大魔王『リゼル』が……『勇者神大賢者』の能力である『大賢者の目で相手を見る 相手が何を考えているかが分かるようになる能力』を使用して、今の会話の内容を把握してきたようなので……『田中と一緒に俺達が『この世界を平和にしたい みんな仲良く暮らして欲しい 勇者と女神の使命は……。』と伝えたら、協力してくれないか?』と考えた俺が田中に伝えると……。「了解しました!」と言った田中はすぐに実行してくれたのである。

俺と田中が……『大勇者のスキルを発動させて、俺達が『この世界の人のためにできること』を考えた。そして……。この世界の人を守るために『勇者神』になった。だから俺は……自分の意思に従って行動しようと思ったんだ。そう決めた俺と田中は……この『エルシア帝国』の人々を守り抜く決意を固めたのである。

*

***

俺と田中は……リゼさんとその配下が捕らわれている場所にたどり着いた。そして俺と田中が……「今すぐここから出て行けよ!!」「この子達を開放してあげろよ!!そして……今すぐに立ち去れよ!」と叫ぶと……「はぁ!?いきなり現れて……私の部下を解放して……何様なのよ!」と俺達に対して、物凄い敵意を向けながら怒ってきた。

そして……。『聖闘士』だった男は……「俺の名前は……。そうだなぁ……。『暗黒騎士 職業 暗黒戦士 魔神の眷属』だった奴だ。」と名乗り出したので、俺は「暗黒神を信じる者達はどうなったんですかね?」と尋ねてみた。すると……。「あっ……。俺はこの世界を憎んで……『魔神』の力を授かり……。暗黒神の使徒となりました。なので、『暗黒騎士』から『魔神』にジョブチェンジしたのです。『聖魔』という力を使って……。『魔神 職業 魔神の使徒』になりました。この力をくれた方に感謝しないとですね……。『魔神』は良い存在ですよ……。俺は今の生活の方が幸せです……。『勇者様 リゼの眷属の人達が苦しんでいる』と伝えてくれた貴方たちに感謝します。」と言い残してから……。消え去った。俺と田中が「どういうことだ……。」と呆然としながら呟くと……リゼは部下たちに「早くこいつらを始末しなさい!」と叫んだ。

しかし、部下達は俺達の姿を見て……。怯えて……「リゼさま……。この人達……『女神の加護を受けし者』では無いですか!?それに……あの時の人達も……。ここは……引くしかないですよ……。『聖闘士 種族 聖闘士』である私が負けた相手に勝てるわけないじゃないですか……。」と言ったのである。

その話を聞いた俺が……「あのさぁ……俺の『勇者神』の力で君たちは『レベルダウン』していて……しかも俺達から見れば、かなり弱いんだからね!そんなことで俺達に勝てると思うなら来ればいいじゃないか。でも、そんなことよりも……早くリゼの配下の子たちを全員解放してくれないか?『魔王を倒したら、もうお前たちの命令には従わない。俺は元のいた世界に戻らせて貰う』と約束したよな?だからお前らは……俺とお前らが戦う理由はないだろう?俺は……これ以上戦いたくないんだよ……。だから頼むから早く……」と言ってみたのだが……。「うるさい!!私の部下になっといて、リゼ様や私に逆らうなんて……。絶対に許さない!!早くこいつらを皆殺しにしちゃいましょう!そしてリゼ様に褒めてもらうの!」と俺の話を聞こうとしなかったのだ。それを見た俺は……「もういいよ……。お前らの話を聞いていても無駄だからな……。俺は……俺なりのやり方でやっていくだけだ。」と静かに怒り始めたのだ。そんな様子を見て……リゼは俺が激怒していることにようやく気がついたようで……「えっ!?あんたが怒っても……全然怖く無いから……。」と小馬鹿にするように言い放った。その言葉に俺は……。さらに激怒していった。

そして俺は「俺は……。俺と同じような境遇にあった人の気持ちを理解できる人間だと思っている。だから……俺は俺のためにこの世界を平和にしていくつもりだ。俺は……。俺自身のためにこの世界を……守りたいだけなんだ……。俺のような経験をした人に『勇者の職業』を……与えたくないだけなんだよ。お前らみたいな……。俺達を都合の良い道具として利用しようとする存在にだけは……。」と吐き捨てるように言ってから……田中に目で合図を送った。すると田中は…… 田中は……。大勇者になった時に獲得したスキルである『全知全能』の力を使って、大魔王リゼルを解析していったのである。

リゼが大勇者田中の目の前に突然現れた!リゼは、突然現れた!そしてリゼが大勇者のステータスを見て……ニヤッとしたのを見て、俺は『何かを仕掛けてくるな』と思いながらも、俺は……。『勇者神大賢者 職業は大勇者 スキル 勇者神 全属性の魔法使用可能 大賢者の職業名変更 スキル 勇者神のスキル名変更』

と唱えてから……。『リゼル レベル1』となっていたのを確認できた瞬間に……。「俺のスキルが……。全て封じられたぁ!?」と言うリゼの声を聞いた俺は、咄嵯にリゼに向かって…… 俺は「俺は大賢者田中

『職業は大勇者職業を勇者神にする』スキル『職業の変更』を使用する!」と叫びながらリゼのステータスを確認した。リゼは、自分のステータスが書き換えられていくのに驚き、「私は……リゼではない……。女神の眷属の一人に過ぎない……。リゼルだ……。『魔王 魔王 リゼル』は……。『女神』様と『勇者神』様の力を……この世界の人たちに……渡さないために存在している。だから……。勇者神様……『あなたが私と戦えば……この世界が……滅びます』……お願いだから……止めてください……。私の命と引き換えに……。」と言うリゼの言葉に、俺は「この世界でのリゼルの目的は、女神の力が宿ったアイテムと、女神とリゼルとラデスが作り出す空間にある女神と邪神の世界を破壊しつくすことだと分かった以上……。お前を倒す必要があるな!」と答えたのである。

俺がそう答えた直後に……。

俺は……。大勇者となった影響で習得していた新しいスキル 大賢者の目と大賢者の耳を発動させていった。すると……。この世界には……。大勇者になった影響か……。女神の加護を受けし者や大賢者 職業の人間が存在する事が分かった。その者たちと手を組むことができれば……。リゼルを倒すことができるかもしれないと思った俺は、まず……。女神の加護を受けた人間を探す為に『女神の瞳』を発動したのであった。

俺は、女神の加護を受けし者のスキルである『聖魔の目 相手のステータスを見破る』を使用しようとしたところ、なぜか……相手の名前が分からない事に違和感を感じた俺は……「リゼさん……。どうして俺が……君たちの名前を覚えてないと思ったんだ?」と質問してみた。そしてリゼが「はぁ!?名前を覚えるのは基本中の基本的なことでしょ!!だから、あんたも私達の名前を忘れているんだろうと思ったの!」と言った後に「あっ……そういえば……。リゼ様は記憶を失っているんだったわね……。」と言っていた。

それを聞いた俺は「なるほど……そういうことか……」と、納得したように言うとリゼが……「どういう事よ!?」と聞いてきたので俺は、リゼに説明を始めたのである。

+500+700 +200 +300 +100 +100 +50

* * *

+400

「この世界に生きるすべての人々よ……どうか彼らを支えてあげてほしい……。」という声が聞こえてきた。その言葉を聞いていた俺は……この世界に俺達を転移させた奴の正体と目的は何なのかを考えていたのである。しかし……この声の持ち主については、いくら考えようと、結局分からずじまいだった。そして……リゼの部下たちは全員『リゼ』と名乗っていた。

しかし……俺が、リゼと最初に戦った時は『暗黒戦士 職業は暗黒騎士』で、暗黒騎士の時のレベルは20前後だったはずだ……。それから俺と田中が、女神の加護を受けし者に転職できるように『レベルをリセット』させる前に『勇者の職業』を与えてしまい、勇者の『聖魔の職業』の効果によってレベルを初期化させていた。その結果……勇者だった頃のリゼルはレベル25だったはずなので、リゼは……。少なくともレベル30以下ということになるのだ。それなら俺の敵では無いだろうと思っていたのである。

俺と田中はリゼに話しかけた。

「この世界に生きている全ての人々の為とか、自分達だけが良ければ良いって思っている奴らがいて……。そんな奴らを見ていると……俺は無性に腹立ってきて、怒りたくなってしまう。だけど……怒りの感情のままに行動するのは駄目なんだよな……。そんなことをしたら……。俺達がやるべきことが見えなくなってくるような気がする。俺はそんなことを考えるようになったよ。リゼだって同じだと思うけど……。でも……俺は……。俺は、そんな風に考えるようになった俺に誇りを感じているよ。」

と俺が言い切ると……。「田中様……私は貴方のことを尊敬しています……。貴方のおかげで……私は……。貴方は本当に強いお方ですね……。」と言い出したのだ。その話に対して俺は……。

「俺は……。そんなに強い人間じゃないさ……。俺にできるのは、田中と……リゼ……君のように誰かを守りたいと強く願う人達の力になることだけだと思っているよ。だから田中と俺が戦う事になった時も、田中を全力で守ろうとしていた。まあ……その田中は今……大勇者に進化しているみたいだがな……。それはともかく……君はどうなんだ?今の話の流れから察すると、君はこの世界に復讐しようと思っているんじゃないのか?」

と聞くと……。「私は……。正直に申し上げるなら……確かに私は……この世界を恨んでいました。私を召喚してくれたこの世界を……。だから、あの子たちに『大魔王リゼルになってこの世界を侵略してくれないか?』と誘われても、そんなのは御免だと思ってました。だから……私はあの子たちが大嫌いです……。私と同じように、女神の加護を受けてしまったばかりに、理不尽な目にあい続けた可哀想な人たちだと思っていたのに……。私の思い違いだったんですかね……。私が知らないうちに……。『魔王 魔王 リゼル』は、『大勇者田中とリゼ 二人の戦いの勝者に従おう。この世界で生きて行く上での手助けもしよう』と約束をしました。それで、私は『大勇者とリゼ』と決着をつけなければならないと考えました……。」と答えたので俺は「そうなると……やっぱり……。リゼルが、俺達の世界のどこかに存在する女神と邪神の世界を破壊した後に……。この世界を女神と邪神が支配する世界にするつもりなのかもしれないな……。この世界を滅ぼさないために戦うつもりのようだが、この世界の女神や、リゼルの仲間にされてしまった人達のことも考えて、どうにかしなければと考えているが……。」と話した。

「大勇者田中さん……。貴方のスキルである『勇者神のスキル名変更』の能力を使って……私の新しい名前を『大魔王リゼル スキル』から『リゼル 魔王』に切り替えてもらえませんか?」とリゼルが言った。

「わかった……。『大勇者 スキル 職業の変更 魔王の職業名変更』を使う。これでいいか?」と俺が話すと……

「ありがとうございます。この『リゼル』は、魔王として……貴方と戦います。貴方を倒して、貴方の力で……。私と同じような境遇にあった人たちを救ってほしいんです……。」と言ってリゼルが剣を構えてきた。

俺もそれに応えるように構えをとったのだが……。

俺はリゼルに向かって、大勇者のスキルを発動させた!そして『勇者神のスキル 全知全能』と『大賢者の神のスキル 全知全能』と併用することで、リゼルの力の解析を始めたのである。リゼルは俺に斬られながら倒れ込んだ……。

+1000

+2000 +500 +1500 +300 +300 +200 回避:2800 大勇者田中とリゼルとの戦いを見守っていた佐藤美鈴は、「勇者神田中 あなたに倒される運命だったようね……。リゼルちゃん……。」と言うと、俺は、「俺と田中が倒した後……。リゼルの事は俺が面倒を見る。だから安心してほしい。君たちは元の世界の元の時間軸に戻ってほしい。君たちは俺が必ず守り抜いてみせる!」

と伝えたのである。

その直後だった……。

俺達を異世界に転移した張本人だと思われる『暗黒王』が現れたのは……。

『大魔王リゼル』が、俺に倒されてからしばらく経過したが……。未だに俺は……。リゼルの死体の前に立ち尽くしていた。そして、田中が……。「そろそろ……。帰ろうか……。みんな心配していると思うし……。それに……この空間での戦いで消費したHPも回復しなきゃいけないからな……。」と言うので俺は……。

「分かった。帰るとするか……。」

と答えた後に……。

俺は田中と一緒に元の時間に帰還することにしたのである。

俺たちが戻ると、そこは見慣れた風景が広がっており、時間的には夕方になっていた。

しかし……俺たちは気になることがあった。それは、田中が持っていたスマホである。

田中の所持していたスマホが、まるで、時間が巻き戻ったかのように壊れていなかったのだ。そして田中に確認したところ……。「俺は大賢者のスキルによって時間の進みが早くなっているので、時間経過で発生する故障が発生しなかったのではないでしょうか?ちなみに……。大賢者が習得していた『時間を巻き戻すスキル タイムスリップ・リスタート』を使おうとしても発動しませんでした。恐らく……。俺達は時間を遡ったのではないと思います……。」と言ったのであった。

+500+700 +200 +300 +100 +100 +50 俺と田中が女神の加護を受けし者の称号を持つ者達との邂逅を果たすために旅をしていた頃、俺は……。女神の加護を受けし者の能力である『勇者のスキル名変更 田中 職業は勇者』を使用し続けていた。その結果……。『聖魔の大勇者 田中 職業は聖魔大勇者』へと変化させた。

+300+200 +200 俺は『聖女の聖魔法と邪女の闇の魔法の混合スキルである「ダークマジック 」と『大魔王の魔王のスキルと邪王の闇と魔族の魔法の複合スキルである「デモンズワード 」のスキルが使えそうだ。この二つのスキルを田中は習得していないため、俺だけが使う事が可能になるだろう。』

俺はそう思った直後に……

『リゼと魔王リゼル 職業は魔王と大魔人 レベルが30で固定されているため、このままでは、レベル上げが間に合わない。なので、俺と鈴木と山田の3人で『女神リリス 職業は大神官 レベルは30で、ステータスは固定されているものの、レベル30になった時点で、職業が『大勇者 レベル20』に変化させられるはずだ。』

俺は田中と山田の2人にその事を伝えると……。「リゼとリゼルのレベルを初期化して、職業だけを変更するという事ですか? それは凄く便利そうなんですが……。」

と俺が話した後すぐに、田中が口を開いた。「その前に、試したい事があるんですよ……。」と田中が言い出す。なので俺は……

「どんな事がやりたいんだ?」と聞き返した。それに対して、田中は俺に「俺の固有技能で、職業を初期化させたいんです。実は……リーゼから聞いていた情報を元にして考えたんですが……『聖女と大勇者と大魔人は勇者と同じ職業なので、聖女の勇者のジョブに戻れば、大魔王であるリゼルも、魔王ではなく大魔人になれるのではないかと考えたんです。

もし大魔人が大魔王になれたなら、大魔人を討伐するために召喚された勇者たちも、本来の役目を放棄して大魔王に協力して、他の魔物たちを蹂躙してくれるかもって思ったんですよ……。だから、女神の加護を受けた者の称号を持っていても、女神や大魔王や勇者が倒されない限り、絶対に死ぬことはない。この称号のデメリットを逆手に取った俺が、女神と邪神と大魔王を倒す事で、世界中を平和にできるかもしれないって思ったんですよ。俺って頭が良いでしょう?」と田中が言った。そして俺が田中の話に乗っかって話を続ける。「確かに……それは一理あるな……。確かに……俺達が倒した後に、大勇者に進化させてもらえば、女神の加護を受けし者を全員倒すことも可能になるかもしれない……。」と俺が言うと……。田中は、「だから俺は……俺達の世界を滅ぼそうとする大魔人や大魔王を……倒さなければならないと思ったわけです。俺は俺自身の手でこの世界を救う事に決めましたよ。俺の願いはそれだけなんですよ。大勇者になって……。勇者が倒した後に大魔王が大魔王を倒してくれたなら、もう……勇者なんてどうでもいいやって思っています。俺も鈴木さんと同じように……。『大魔王を倒した後は、リゼルに世界を征服させてあげたいと思ってます。』それが……。今の俺の考えですよ。」と話し始めた。俺が、「大勇者の職業は勇者よりも上位の職業になっているから、もしかすると職業の書き換えができない可能性があるぞ。だから……お前たち二人で大魔王リゼルを倒してやってくれよ。大魔王リゼルは俺が倒さなくても大丈夫だと思う。大勇者のジョブを手に入れてからでも……。時間は十分にあるからな……。それなら田中に頼むしかないだろう。」と言うと、田中が、リゼルの死体に触りながら、スキルを発動させると……。

田中は……。「俺が大勇者になったことで、大勇者に職業を変えられなくなりましたね……。これは困りました。」と口に出した。

俺と鈴木が……。

俺達三人は……。大神殿の中で話し合うことにした。

そこで……俺は、リゼルの亡骸に触れながら……。

大賢者に進化した際に、手に入れた大賢者の固有スキルである

『時戻し 時間移動による破損を無かったことにできる。また破損箇所は復元可能』を使用した後に、リゼルにスキルを使用。

俺達は、田中がリゼルを蘇生させたことを大神殿にいた神官たちに説明し……。俺が田中と佐藤に「大魔王リゼルが復活した時に、女神からもらったこの力を使って、リゼルを復活させてほしいんだ……。頼めるか?」とお願いする。

二人は「「わかりました。」」と返事をしたのだった。

*田中と鈴木と俺はリゼルを復活させるために準備を開始したのである。まず、田中はリゼルに使った回復薬と回復スキルを使用してリゼルを蘇らせることになった。そして俺が田中に対して……「田中……。リゼルが復活するまでは、大勇者として、リゼルが倒された後に現れる女神に力を授けられないように、リゼルの肉体を守ってくれ!」と指示を出すと……。

田中は俺の指示に答えて……。俺にスキルを伝授してきたのだった。

+500+500 +500 +500 +1000 +2000 +1000 +1500 +2000 +1000 +1000 +1500 +1500 +1500 +500 田中がリゼルにスキルを発動させる。すると……。大勇者田中の体に異変が生じた。田中の体が大きくなっていくのだった。その大きさは5メートルくらいに大きくなったのだった。俺はその田中を見上げている。そして俺の隣に居た鈴木と佐藤も同様に見上げていた。リゼルを蘇生しているはずの田中の体は……。リゼルの大きさを超えており、俺達三人はリゼルの体が復活していく様子を静かに見守っていた。そして……。俺達の目の前に居る田中が突然喋りだしたのだった。「リゼルちゃん。久しぶりだね。俺は今から……君を復活させたいんだけどいいかな?」と田中は言い始める。

しかし、女神が田中に告げる。

『残念ですが、それは無理なようですね。あなたは私によって、魔王を倒せるスキルを貰えなかったため、あなたはただの雑魚キャラにすぎません。なので、この世界の神が生み出した『聖剣使い』の称号を私が与える事によって、私の管理している世界に転移させたのです。なので、リゼルちゃんが復活するには、あなたが『勇者』にクラスチェンジした後に、私の許可を得る必要が有ります。それまでは……。永遠にリゼルが生き返ることはできません。リゼルが生きていたのならば私はあなたにリゼルが生きているうちに、スキルを与えて勇者にしてあげられたのでしょうが……。今は無理みたいです。なので……。あなたが勇者になったら教えてください。』

リゼルは、田中に向かって……「リゼルは……勇者になるつもりはないわ。」とはっきりと言い切った。

田中はそれを聞いて……。「そっそうなのか……。じゃあ俺は……。大魔人のままなのか……。せっかく『聖魔の大勇者』になったのに……大魔人だと意味が無い気が……。俺としては、勇者になった方が……何かと良いと思うんだよ。だって……。勇者になると……職業に『聖騎士 レベル20』が選べるんだ。聖魔の大勇者に転職すれば、勇者になられるのに……。どうしてなんだい?」と聞き返す。すると……。リゼはこう話す。

「私は勇者にならないとダメなの。」と……。

俺はリゼルに聞いてみる。「リゼル。勇者になってくれないのか?」と……。

リゼルは俺を見て……。「リゼルは魔王だけど、勇者になりたいとは思わないのよ……。」

田中がリゼルに対して質問を始める。「リゼル。リゼルはなんで勇者を目指さないんだい?魔王のスキルでレベルを上げて強くなるよりは……ずっと強くなれるはずだよ?」と言うと、リゼルが答える。

「リゼルが強くなりすぎると、この世界で、魔王に勝てる者がいなくなるでしょ?魔王が弱いのは、人間たちが弱すぎるからで……。リゼルが勇者になれない理由はそんな事じゃないの。リゼルはこの世界に平和をもたらす勇者になりたかっただけなの……。リゼルがなりたいのは、勇者なんかじゃない……。大魔人だよ。」と…… そして……田中が俺にリゼルの言葉を通訳してくれていたのであった。

俺が田中と会話をした後……鈴木が俺に声をかけてくる。

「大賢者さん。」と話しかけてきたのである。

俺が鈴木の顔を見ながら、

「ん?どうしたんだ?」と聞く。

「この世界を救えるとしたら……リゼルの言う通りなのでしょうか?勇者になってしまえば……この世界を守れないような気がするんですけど……。」と、鈴木は俺の目をしっかりと見て真剣に話し出した。なので、俺は鈴木に、「それはわからない……。俺にも……。勇者になれば魔王に対抗できるという事が、何となくわかっただけだからな……。だから……この世界を救えなくなったら……この世界が滅ぼされたなら……。俺達はこの世界を救うために行動を始めればいいだけの話だろう。」と答えたのだった。そして……鈴木と佐藤が……「わかりました。」と言って……自分の作業に戻っていったのである。

*田中が俺達にリゼルの復活をしてくれた事を話してくれる。リゼルは「田中くん。ありがとう!」と口にしていた。そして田中も嬉しそうな顔をして……「いえ……。リゼルちゃんのためにやっていることだから。全然気にしないでください。俺は……。リゼルちゃんのことが……。好きなので……それで……少しでも役に立てれば……。」と言っていた。俺は田中の話を聞いて、この田中と鈴木と佐藤と大神殿にいる神官達や巫女達は、女神やリゼルが田中たちにスキルを与えてくれた時からの付き合いなのかもしれないと思っていたのだった。

それからしばらく経った後……大勇者になった田中とリゼルが復活したのだった。リゼルの体の大きさは元に戻ったが……なぜか、鈴木も佐藤もリゼルよりも大きいままだった。そして田中は鈴木と佐藤の体を羨ましそうに見ながら……。リゼルに「リゼルちゃん。俺も二人みたいに大きくなってみたいなぁ。」と言う。リゼルは少し困った顔をしながら、「あのね……。リゼルは女神さまから……勇者になれるってお言葉を貰ったから……。リゼルは大魔人のスキルを貰っちゃったのよね。だから、このスキルは田中にあげちゃいけないスキルに変わっちゃったのよ。」と言ったのだった。

そして、鈴木が「リゼル。勇者になるのは嫌だったんじゃないのかい?」と質問をした。するとリゼルは……。「うん。本当は……勇者になりたくなかった……。でも……。リゼルはね。田中が大好きだったの。それに、勇者になれば田中と結婚ができるんでしょう。リゼルは……。勇者になるしかないの。だから……。田中にお願いしたい事があるの。いいかな?」と口にする。

鈴木は……。リゼルが田中の婚約者になることを受け入れて勇者を目指すと聞いた瞬間に涙を流していたのだった。

そして鈴木が泣き出したので……。俺が鈴木を抱きしめながら、落ち着くように声かける。田中もリゼルが勇者になると聞いて嬉し涙を流す。俺はその様子を見ていたのである。

そして俺は……。

田中とリゼルと鈴木と佐藤と一緒にリゼルの部屋に行き、話し合いを行うことにした。俺達は全員席に座り、俺がリゼルと田中とリゼルの隣に座っている鈴木に俺達がこれからどのような行動をとるべきなのかを話し始めた。まず……。

「大勇者様と大魔人にスキルを渡してくださり、ありがとうございます。私達はこれから魔王城に向かい、私と佐藤はリゼルと共に魔王を倒します。リゼルは……。魔王を倒すためにレベルを上げるつもりだそうです。そして、私達の目的としては、魔王を倒した後に……。この世界のどこかにあると言われている【異世界への門】を見つけ出すことが当面の目的です。そして見つけたら……この世界に帰ってくるつもりです。その門は……この世界のどこに出るのかが不明なんですよ。その時にこの世界にいたとしても、また別の世界に転生している可能性もあります。ただ、私が持っている転移能力では、行った事のある世界にしか転移する事ができませんので……。もしもこの世界に転移してきた時は連絡を入れます。その時に……私がここに帰ってきていれば、一緒にこの世界に戻ってくることになると思います。まあ……その前に死ぬ可能性は大いに有り得るわけですが……、その場合はこの世界に来た時のように誰かの記憶を引き継いで現れる事になるでしょう。そして私はこの世界に残します。もし私の身に何かが起きたら……。田中に転移してもらうかもしれません。その点は、田中と鈴木と佐藤にも相談をして、理解を得た上での作戦になります。私は……鈴木と佐藤に、私のスキルの『複製コピースキル』を使いたいと考えています。このスキルがあれば、この世界で手に入れた全ての物を、元の世界で使う事ができるようになるスキルなのですが、私はこの世界で手に入れた『聖魔の大勇者』の称号を使ってみようと考えています。」と俺はみんなに話すと、鈴木が……。

「じゃっじゃあ……。僕達のアイテムボックスの中に有るものは全て……」と不安を口にしたので、俺が鈴木の手を握り……。「ああ……大丈夫だ。安心しろ……。アイテムボックスの中の物は……俺が絶対に守るからな。このスキルを使えば、お前たちはこの世界で生き続けることができるぞ。そして……リゼルもこの世界で生き続けて欲しい……。リゼル。勇者にさえなっちまえば、もう……死ななくても良いんだよな?田中と結婚することもできるんだよな?田中と幸せに暮らす事もできるんだろ?」と言うと……。リゼルは俺の目を見て……。「うっうん……。勇者になった後は……大魔人になった田中と結婚しても、この世界の他の人と愛し合っても構わないよ。」と言ってくれたのである。

俺は鈴木と佐藤の方を向くと、二人にこう話す。

「俺は鈴木と佐藤の気持ちが一番大切なんだよ。鈴木も佐藤もいいか?鈴木も佐藤もまだ高校生じゃないか……。俺はな……俺は……。こんな事を言えた立場じゃないのは知っているが……。」

鈴木が……「い……いえ……。」とだけ言った。そして……。

「大賢者さんが俺に何を言おうとしているかわかっているつもりだよ。大賢者さん。あなたが言いたいのは……勇者が嫌いなんだよね。だって、大賢者さんも大魔王になったことがあるらしいけど、結局、人間には負けたんだよな?俺は勇者が嫌いだし、この世界でも……人間たちが勇者なんて職業を選ぶ奴らに滅ぼされるんじゃないかって……思ってたんだ。俺は勇者にはならないけど……。大賢者さんがこの世界を魔王に負けないように助けてくれるなら、勇者じゃなくったって良いよ!だって……俺はこの世界を救いたいんだ。だって……。俺達はこの世界を好きになったからね。俺達が今生きているこの世界をね……。」と……。鈴木と佐藤が同時に、「はい。」と言って俺に向かって微笑んでくれるのであった。

俺達はそれからリゼルと話し始める。リゼルは、俺がこの世界に残る事にすると決めたと聞いた時、かなり嬉しそうな表情をしていた。田中は俺を見て……。

「俺が大魔人でいたらダメなのかな?」と言ってきたので……俺が……。「いや……。俺が大魔人になったのは、リゼルを助けたかったからであって……この世界に残りたかったからではない……。大魔人の田中がいればこの世界に残っていたいと思うが……俺にとっては……。リゼルの方が大事だ……。」とだけ言うと……鈴木も……佐藤も、笑顔を見せながら「うん。大魔人は田中さんがやって!」と言った。すると……田中は「大賢者さんが俺の代わりにやってくれると助かるんだけど……。俺……この世界でリゼルちゃんと幸せに暮らしていく自信が無いんだよ……。だからさ……リゼルちゃん。俺と……。結婚してくれますか?俺と付き合ってくれませんか?俺は……俺は……あなたのことが好きなんだぁー!!!」と大きな声でリゼルに言う。すると……鈴木が……。

「ちょっとぉー!!田中。いきなりプロポーズは失礼だろうがぁぁ!!」と怒り出すと、佐藤が笑い出し、田中と鈴木がお互いに睨み合いを始めてしまう……。そんな二人の姿を見て、リゼルは笑っているのだった。

俺達はその後……今後の予定を決めるため話し合った。そして、俺は鈴木と佐藤を……リゼルはこの世界に残ることを選んでくれたので……リゼルは女神が言っていた転職の条件の【大神殿】に向かうように話を進める。

俺達は、大神殿にいる神官や巫女達に……俺と大神殿に居る人達と、女神と女神の加護を受けた巫女だけが使える【通信魔法陣スキル】を鈴木と佐藤とリゼルと田中とリゼルの婚約者となった田中に渡して、鈴木と佐藤は、この世界に残っている仲間に伝言を伝えるように頼んだのだった。

*俺達は大勇者になった田中が用意してくれた乗り物に全員が乗り込んだのだった。そして、リゼルも一緒に大勇者が操る乗り物に乗って、一緒に旅をする。

**大勇者一行は、大賢者以外の四人を魔王城に送り込み、残りの二人は、魔王城に行く途中で出会うモンスターを倒す為に残ってもらうことになったのだった……

※大勇者一行は、魔王城に向けて出発する。

そして俺は田中に、「魔王城の近くの村に着いた時に、魔王城に一番近い場所にいる魔王軍の幹部を倒しに行きたいと思っているから……その時だけは、俺を魔王城に飛ばして欲しい。」と言ったのだ。

すると、大勇者が……。「了解した。」と言い、俺達を乗せて移動してくれる。そして……リゼルは田中の隣に乗り、楽しそうに話している。その光景を眺めていたら……。リゼルの体が光を放ち、突然……リゼルの体の大きさが変わる……。身長180cmの俺より頭二つ分位小さいくらいに体のサイズが小さくなり……胸も控えめになってしまっていた。しかし……。リゼルの体は相変わらず綺麗で可愛く、肌もとても美しいままだったのである。リゼルは……田中の方を向いて……。

「えへへ。どう?驚いた?でもね……。リゼルはね……。大魔人のスキルを貰った時、リゼルの容姿が少し変わっちゃったのよね……。それで大賢者がリゼルのために新しいスキルを作ってくれて、リゼルの体にかけたら……元通りの姿に戻る事ができたのよ。だから今は、田中と一緒に居られるように、姿が変わったままだけど、気にしないでいて。」

そして……リゼルが俺に抱き着いて来ると、頭を俺の肩に乗せてくる。俺はその行為が嬉しくなって、俺が抱きしめ返すと……。リゼルは……。「ありがとう。リゼルがこんなに強くなったのは……田中のおかげでもあるの……。本当にありがとう。」と、田中に対しての感謝の気持ちを口にしたのである。その光景を見ていた鈴木は、「なあなあ、鈴木さん……。大魔王になった俺のスキルで……。二人っきりになれるスキルを作ったんだけど、二人にあげるから使っていいかな?」と聞く。すると……。大勇者が鈴木の言葉を聞いて、「おいっ!そのスキルがあれば、この世界の魔王軍を壊滅するよりも簡単な方法で世界を手に入れる事が出来るんだぞ?それをどうして使わないんだ?」と言う。鈴木は……。

「うん……。俺もそのスキルを使えば世界を救えると思って作ったんだよ。大勇者さんの言っている事はもっともだと思うよ。」

「そうだろ?なら……。なぜその二人だけの空間を作るための能力を使わないんだ?」

鈴木は大勇者に答える。

「うん……。そのスキルを使うと、俺と佐藤君以外は……その二人きりになる事ができなくなってしまうのが問題なんだよ。そのスキルは……。田中のステータスの【スキルコピー】という項目を使ってコピーしたもので……佐藤君の能力もコピーしてあるから、佐藤君はコピー能力の『複製』の能力を持ってないから使う事ができない……。俺と佐藤君だけで、田中達のところに行ったとしても、鈴木君が作ったこの二人だけになれなくなるスキルは、使えないから……。俺と鈴木と二人でこの世界に残ろうかと考えているんだ……。それに……俺には田中みたいにこの世界で手に入れた物を大量に持っているわけじゃないから、アイテムボックスの中のアイテムを使えば何とかなるけど……アイテムボックスの中の物は全部俺の所有物としてアイテムボックスに保管されているから、俺と鈴木が死んだ後に、アイテムボックスの中に有った物は消滅してしまうんだよ……。」

「ふっ……ん?鈴木?俺の名前を呼ぶ時は大勇者と呼ぶべきだろ?何度言ったらわかるんだ?」

鈴木は……

「あっごめん。大勇者様。鈴木って呼びやすい名前で呼んじゃうとさ……。佐藤君とか大勇者のことも呼びやすい名前の方で呼びたいなと思ったら……。鈴木って呼び方がすごくしっくり来ちゃうんだよな……。」

大勇者は鈴木をしばらく見た後で「まっ……まあいいだろう……。」と答えた。俺は大勇者に……。

「大魔人……お前は田中に惚れてるのか?それとも佐藤か?」

大魔人は、恥ずかしがることなく……「ああ……好きだぜぇ~!!愛しているといってもいいかもなぁ!!」と言ってしまう……。そして大勇者は……。「俺には妻が沢山いるからな。お前がいくら佐藤を愛しても……俺の勝ちだ!」と、何故か勝負になっている……。そんなやり取りを見て……俺は、こんなに仲良くなれたのは嬉しいのだが、こんな事で喧嘩を始める大勇者達に呆れてしまう……。そして……俺達は大勇者と大勇者の乗る乗り物に乗った大勇者の妻達に見送られながら魔王城の近くに向かうのであった。


* * *

魔王城近くの村の近くにあるダンジョンの入り口付近では……。

「おい!田中!!俺達の目的はこの世界から魔王軍とかいうふざけた奴らを消し去るためにここにいるはずだよな!?このダンジョンの奥にいるはずの魔王を倒して俺達はこの世界を救う為にいるよな?なぁ田中?」と大勇者は鈴木に聞いている……。すると鈴木が……。

「大魔王……大勇者!!そんなにカリカリするなよ。」と……。大勇者の機嫌が悪くなっている理由を全くわかってなかった。すると……大賢者が「田中と佐藤は恋人同士なんだから、佐藤を他の男に取られたくないんだと思うよ……。鈴木がリゼルを取られたくないように……。それと、リゼルも田中を誰にも渡したくなくて、田中を独占したがってるんだよ……。そんな気持ちも汲んでやらないとね……。」と言う。大賢者の話を聞きながら大魔人が「鈴木さんは……。田中のことになると感情的になりすぎる気がするんだ……。だから田中と佐藤を引き離したらどうだろう……。俺は田中にも、リゼルにも幸せになって欲しいんだ……。鈴木だって……田中のことが好きなんだろ?鈴木さんは……本当は田中のことを独占したいはずじゃないか……。鈴木と田中と佐藤とリゼルの4人で幸せになってもらいたいんだ。」と言った。鈴木は大勇者に言う。

「田中はリゼルちゃんにゾッコンだし……佐藤も鈴木の事を大切に思っているから……二人が一緒にいても問題は起きないんじゃないかなぁ……。」

そして、大勇者は鈴木に言う。

「じゃあ……田中と佐藤はお互いに思いやって好き合ってれば良いんじゃねぇのかなぁ……。リゼルがそれでいいっていうのなら、それでいいとは思うんだ。」と……。

「鈴木さんはリゼルと田中を会わせた方がいいと俺は思ってる。二人は、佐藤も田中もお互いの気持ちを大事にしながらうまくやっていくと思うんだ。佐藤と田中も一緒に旅をしている間はとても仲が良かったし……。リゼルと佐藤が結婚して、この先ずっと夫婦として生活しても大丈夫だと俺は思っているんだよ。それに……俺達三人で一緒に暮らせば……きっと楽しい日々を過ごすことができるようになるかもしれないしさ。俺は田中のことを信頼しているし、リゼルが大勇者のことを好きになった時、一番近くで二人のことを見守ることができたら最高なんだよな。リゼルが大勇者のことを大好きになっても、それはそれで構わないと思っているよ。俺にとっては……リゼルも大事な仲間の一人でもあるから、できれば……田中とリゼルには結ばれて欲しいと俺は心から願ってる。リゼルは本当に優しくて……素敵な女性だよ。」と鈴木が言い終わると、大賢者が鈴木に向かって「そうそう。俺も鈴木さんとリゼルには……幸せな家庭を築いてほしいと思っています。」

大勇者が「そうなると……。魔王を倒した後に、みんなで俺達の家に来るのもいいかもしれねぇな。リゼルを嫁に出すのは少し寂しい気はするが……。」と言い出した。鈴木が……「うん。俺も同じ意見だ。俺のスキルをコピーさせてくれよ!俺も田中を見習ってハーレムでも作っちゃおうかな?」

と鈴木が言って笑う。大賢者は「そうだね。」と言い……。

「じゃあ……。この世界に居る魔王軍の幹部をぶっ飛ばして、早く家に帰って……リゼルが喜ぶような……温かい食事を皆で食べようよ。」と笑顔で言う。

鈴木は大賢者の頭を撫でて……「ああ……リゼルは可愛いし、いい子だからね。リゼルのためにも……。この世界に魔王軍を居させないようにしないとな……。リゼルも喜んでくれるはずだ。」と真剣な表情になった。

俺達は魔王城の手前までやってきたのだ。そこには……リゼルと同じ髪の色をした長いストレートヘアーの少女がいたのだ。少女を見た俺は「なぁ鈴木……。あの子のことなんだけどさ……俺の知ってる子があんなに大人っぽくなるとは思えないんだけど……リゼルの妹じゃないの?」と鈴木に聞くと、鈴木は少し考えてから答えてくれた。

「佐藤……。残念だけど……違うよ……。リゼルがこの世界に転移した時……確か13歳だったと思うから……彼女はリゼルより年上だと思うよ……。」

「そっかぁ……。」

「ところで……。リゼルに妹なんていたの?」

「あぁ……俺の知る限りではいないけど……実はリゼルが魔王の魂の一部で……その力を手に入れた時にできた娘なのかな?」

「なるほど……。魔王軍の幹部の娘なら納得だな……。」と鈴木が言った。

大勇者と大勇者の妻と大賢者は……この世界の魔王が封印されている場所を目指して、俺達が倒した魔物がたくさんいた方向とは違う方角にある道に進むのである。大勇者は大魔王と一緒に行きたがったが……大賢者と鈴木が止めたのだった。大魔王と大勇者を別々にすると何かしらの問題が起きるのではないかと考えていたからだ……。俺は鈴木と大賢者と俺の三人組で行動することにしたのである……。大賢者と俺は鈴木に『魔法』や『剣』の扱い方のスキルの使い方を聞いたりしていた。鈴木は丁寧に説明してくれた……。

・魔法の扱い方は……イメージする……。自分の体の中に魔力がある事をイメージして……そこから……魔力を放出するようにすればできるらしい。

・スキルを使うのは簡単だが……使う人のセンスによるところが大きいみたいだ……。鈴木は『聖魔導士』『光魔法使い』、『回復系魔法職』の全ての能力を持っていて……。この能力を使って戦うとすごく強いみたいだ……。鈴木が『勇者神 固有 固有 固有職業の【全武器使い】を使えるようにしてくれるのであれば、【スキルコピー】という能力を使えたら鈴木の持っている能力を俺に【コピー】することができるけど……。【コピー】は……俺と大勇者と大勇者の妻の三名限定になってしまうから、使えない……。」と言う。

「う~ん……。鈴木に能力を付与してもらえれば……。俺は鈴木みたいに色々な系統のスキルを使いこなせるから……。俺が鈴木に【コピー】の能力を使えれば……この世界で手に入る物はコピー能力を使って、この世界で手に入れなくても良い物が手に入るという事になるんだよな……。」

「うん。確かに……。佐藤君の言う通りかもしれない。佐藤君には、俺の能力の【超鑑定】の【能力 共有化(使用許可 佐藤太郎)付きバージョン】を渡しておくことにするね。あと、リゼルから俺に送られてきたメールで、佐藤君は大勇者よりも強くなれるって書いてあったんだ。俺が、大勇者のスキルを佐藤君に渡してあげたら……。大勇者は大魔人に勝てるの?」と言うのであった。俺は鈴木に質問する。

「大勇者はさ……。鈴木の言う通りだ。俺が大勇者の技を使えば……リゼルがこの前、俺と戦った時に使った……時間を止めることができるようになるから……。」と答える。

鈴木は大魔王に言う。「俺にできることがもし、リゼルと佐藤が結婚するときに……二人に少しでも役に立てば……。そう思うんだ……。だから俺にも大魔王のステータスを見させてくれないか?」と鈴木は大魔王に頼む。

「ああ……。いいぞ!俺の力はお前の物でもあるからな!」と……。

大魔王は自分の手を鈴木の前に突き出すと、大魔王の手から赤い光の粒子が発生し……。大魔王と鈴木に絡みつくと……、大魔王と鈴木に『魔王の神』と文字が現れて、大魔王は赤色に、鈴木は青色に変化していったのだった。大魔王は「おお!これはすげぇなぁ!!」と言って……嬉しそうに自分の腕を動かしている……。

大賢者も「おぉ……!!これまた凄いですね。」と言っていた。大賢者は「これで、私達三人は仲間として繋がりを持つことができたんだ。」と言った。鈴木も「そうだね……。佐藤君とリゼルの幸せのために俺達は頑張ろう。俺の事は……これからは気軽に名前で呼んでくれよ!!よろしくね!!佐藤さん!!俺は……あなた達の味方だよ!!俺達は、この世界に来た時からの友達みたいなものだから、佐藤さんが困ったときには、すぐに駆け付けるから。」と笑顔で言ったのである。俺達は魔王城を目指すのであった。俺はリゼルのことを考えると胸が苦しくなるくらい、恋しくて……愛しかった……。俺は今頃、リゼルは何をしているのだろう?俺の事を思い出して、一人で泣いているのか?それとも他の男と結婚して、子供も産んで、家族団らんをしているのだろうか?そう考えるだけで……とても苦しいのだ……。そんな気持ちを振り払おうとしたとき…… 俺の心の声を聞き、心を読んだ鈴木が、「俺も同じ経験をしてるよ……。」と言って……優しく俺を抱き締めてくれる。鈴木の腕の中で安心しながら目を閉じていると、急に大賢者が「ちょっとだけ、リゼルちゃんのことで思い出して、しんみりするのは仕方ないけれど……今は目の前に集中しないとね。この先の道に魔王軍の幹部が待ち構えていて、倒さないと通れないようになっているみたいだから……、佐藤くんも大魔王様も大勇者様もみんなで力を合わせて頑張っていきましょう。」と笑顔で言う。俺は……鈴木から離れ……剣を抜いて構えた。俺は大魔王と大勇者が一緒に居る姿を見て、本当に二人が親友なんだと感じながら、俺は大魔王と大勇者の後を追うように走り出したのだった。


* * *

俺は走る……。この先で俺の大好きな大勇者と、リゼルが再会することになるんだ。俺達三人で……、魔王の幹部を討伐すると決めたのだが……。俺達の行く手に待ち受けていたのは……黒い肌をした、身長は3メートル程ある大きな鬼だったのだ。鈴木は言う。

「あの黒いのが……。多分、魔王軍の四天王だと思う……。俺達のことを見据えてるようだけど……。どうしようか?」と……。大魔王は、鈴木の方を見てから言った。

「俺に任せてくれないか?」と。

大魔王は魔王軍に「この世界を我が魔王軍の領土とする。逆らう者は全て滅ぼしてくれよう……。そして……。我が配下になれ!!」と言った。すると……「ははぁー」と魔王軍の兵士が大魔王に対して土下座したのだった。その光景を見ていた鈴木は……

「なぁ……。俺は……今までに何度も大魔王の姿を見たことがあるけど……大魔王の本気を見たことがないんだけど……どんな感じなんだろうな……。」

と少し怖そうな表情をしていた。俺は……鈴木に説明をしたのだ。「鈴木……。実はさ……リゼルの話では、大魔王の魔力が膨大過ぎて……普通の人が対峙したら、一瞬にして気絶してしまうらしい。だから……普通に戦うんじゃなくて……。まずはリゼルをここに呼ぶよ……。それから……」

「なるほど……。」と鈴木は言って、納得したような顔をしていた。リゼルが魔王城に召喚されてから、俺達は転移してこの場所に来ていたので……大魔王の圧倒的な存在感は俺達に伝わっていなかったので……。鈴木や俺と大魔王の強さは比べものにならない……。大魔王は魔王軍の兵士全員と大勇者に、リゼルを連れてくるように命じたのである。俺は……『転移』の能力を使って……リゼルが待つ魔王城の近くの街まで転移したのだった。リゼルに会った時のように……リゼルの『スキル』である『精神共有』を使い……俺は『大勇者のスキル』を『リゼル』に譲渡したのである。譲渡が終わる前に……リゼルは転移してくる。その転移してきた時の容姿は銀髪ロングヘアーでスタイル抜群、見た目年齢15歳から18歳の中ぐらいの背丈をした、美少女に変貌する。その姿はまさに女神のような美しい姿なのである。

「あっ……。」とリゼルが言いかけた瞬間……。俺はキスをする……。しばらくすると…… リゼルが……「太郎兄貴!久しぶりだねぇ。会いたかったぁ!!」と言う。大魔王も……「リゼル!!会えて嬉しいよ。俺は……。俺のせいで君には辛い思いをさせたようだな……。許して欲しい……。本当にごめんなさい……。でも……俺は君の事を愛しています。君を必ず幸せにします!!どうか……。君を俺にください!!絶対に大事にします。一生かけて守り抜きますから!!」と言い……リゼルを力強く抱き締めたのである。

「ちょっ……!太郎兄貴……。いきなり何を言うんだよ……。恥ずかしいじゃないか!!それにさ……リゼルにはもう旦那がいるんだぞ……。リゼルはさ……。本当は優しい女の子なのにさ……。酷いことばかりするんだよ……。それでリゼルを泣かせるんだよ……。リゼルはね……。本当は泣き虫で甘えん坊なんだ。リゼルは……。私なんかより、太郎兄の方が好きみたいなんだ。だから……私よりも……、私に辛く当たらなければ良いって思っているんだよ……。きっと……。だからさ……リゼルは、この世界の誰かに守られて欲しいと思うんだよ……。だって……。私はさ……。私にとって一番大切な存在だから……。」

大魔王は……涙を流す……。大魔王が流している大粒の涙には悲しみが混じっていた。

「そっか……。太郎君……。」

「うん。太郎君って言うなよ……。俺はリゼルの本当のお義兄さんになりたいと思っているから……俺の事はこれからは大勇者じゃなくって……『真一君!!』って呼んでくれるかい?俺は君が……リゼルの本当のお義姉さんになってもいいからね。」

「ううん。違うんだ……。私ね……。真一君のことは昔から大好きだったよ!!でも……お付き合いするのは結婚してからじゃないと嫌だったんだ。でもね……。太郎君は本当に凄いよ。私の事を守ってくれたでしょ?私が、勇者パーティにいるときにさ……太郎君は、ずっと一緒にいてくれたよね……。」

リゼルは微笑んでいた。そんなとき……大魔王が言った。俺達は今……俺がリゼルと初めて出会った……あの白い建物の中で話をしていて、俺は大魔王の力を借りて、『超鑑定 能力共有版(使用者限定解除)付きバージョン』を発動したのだ。

俺の視界が歪み、真っ白な部屋の中に飛ばされて……大魔王が現れたのだった。そして……俺と大魔王はお互いのことを紹介しあって……握手を交わして自己紹介が終わった。俺達が大魔王の部屋に転移された直後に、田中一平と佐藤太郎は俺の目の前に現れると、突然、大魔王が俺に向かって、「おい……。大勇者の奴、また、お前さんの彼女に手を出して、泣かせただろう?まったく……。しょうがない野郎だよな。だから……俺が代わりにお前を守るよ。リゼルは俺がお前と結婚しても、俺が守っていくから……。」と言ったのである。リゼルは……嬉しそうに笑顔になっていた。

「ありがとう!!私達三人は親友だもんね。私も……大魔王が居てくれれば、凄く心強いし安心できるし……。これからもよろしくね。」とリゼルが言うと……大魔王が……「おおぅ!!よろしくな!!俺はなぁ……実はお前の事が好きで好きでたまらないんだ。だからさ……。リゼルの事が本気で好きなんだよ!!こんなにも……人の事を好きになったのは初めてかもしれないんだ!!俺の嫁さんになってくれないか!?俺達はお互いに……リゼルと結ばれることを心の底から願っていた仲だろ?俺と結婚すれば……リゼルも幸せなはずなんだ。俺達はこれからも永遠に……仲良く一緒に人生を謳歌したい。だから……。俺とリゼルは……結婚しよう。俺はリゼルと家族になれることが、本当に……すごく嬉しいし楽しみだよ。俺達は友達以上恋人未満なんだから……。俺はリゼルと結婚したいんだが……。リゼルは……どう思う?」と真剣な眼差しで言うと、リゼルは、「えへぇ~♪もちろん喜んで結婚させていただきます。」と言って…… 二人は熱い口づけを交わす。そんな二人を見て、田中と佐藤は感動して、泣いている。リゼルと大魔王の婚約成立と同時に……大勇者のスキル『リゼル・インストール』によって、俺はリゼルのステータスを覗き見たのだった。すると……。俺は衝撃の事実を目にしたのだった……。

▲ リゼル 職業;魔法使い

レベル 1000000/1000000 種族:ハーフエルフ HP 100000/100000

(∞

状態:妊娠2ヶ月目。現在妊娠中。妊娠期間;99日

体重増加値 :0キロ→1キログラム増量 身長 168センチ バスト

85.5(Cカップ)

ウエスト

57.5 ヒップ

94.5(Eカップ)

スリーサイズ;B80W56H84 特殊能力;魔法 全属性適正。無詠唱。魔防強化 MP消費量減少。MP自然回復力強化。魔力自動調整機能付き 固有魔法;

『魔力探知』、『魔力変換』、転移『魔力操作』など多数習得 スキル『鑑定』『解析』、気配遮断『隠密』、『危機察知』など多数習得済み。

『精神完全耐性』『魔力操作LV1000』を習得。『魔法制御』を獲得 特殊技一覧。

【スキル付与】

●スキル付与(1)発動条件:スキル名を唱えてください(2)使用回数:無制限です(3)効果:対象物に任意で選んだスキルを付与します(4)熟練度上昇速度倍化5万倍の速さで熟練度が成長します※スキルの同時行使不可 【物理無効】攻撃無効化50%【打撃吸収】打撃を半減させてしまう。ダメージ100%カットする。さらにダメージを受けた時に、自動的に回復する。この能力は物理攻撃力と、防御力に依存します。

【神龍眼】あらゆる物の真偽を見極める。神のごとき眼力と洞察力で、物事の真意を読み解く。

【未来予知】未来を先読みする。確率90%以上で、回避不可能な攻撃を未然に防御することが可能。

【運命干渉系】自分の意志により、運命の改変ができる。この力は、自分以外の他人に対しても使用可能。他人の運気を上げたり下げたり、幸運を与えたり、逆に不運を与えることもできる。また、自分自身に不幸を呼び寄せる事も可能。

称号 《神速の女神》移動速度が常人を凌駕している為の称号。通常の人間よりも3倍以上速い速度で動くことができる。また、その状態で戦闘することも可能となる。

【時空転移者】時を遡り過去に戻った際、肉体ごと過去に転移した者の証。時間跳躍が可能になる。

その他スキルも多数獲得。』

(何だ……これ……。俺のスキルよりも全然……強過ぎるぞ……。それにこの子は……リゼルは本当に凄い女の子だったんだな……。この子と一緒に戦って……守れるくらいの……そんな強さを身につけたい。それにしても……俺はとんでもない子に惚れられてしまったようだな……。リゼルに守られるだけじゃなくて……俺もこの子を絶対に守り通すんだ。俺の事を好きと言ってくれた……。そして、俺の彼女になってくれた……。それなのに……俺は彼女の気持ちを蔑ろにして酷い態度を取ってきたんだよな……。許して欲しい。リゼル……。)と田中はリゼルに対して……心の中で謝罪をする。しかし……。この時はまだ知らなかった……。リゼルの強さは、この世界の理すら変えてしまいそうなほど圧倒的なものであることを……。そして……大魔王の力もまた桁外れのものであり、そんなリゼルと大魔王が愛し合うようになってから、さらに凄まじい勢いで成長を遂げていくことに……。

リゼルとの結婚式が近づいてきているある日……。俺はいつも通り学校に行って、帰りにスーパーによって買い物をして、家に帰るとリゼルが迎えてくれた。「おかえりなさい。太郎兄貴。今日は何を買ったのかな?私は、毎日のように食材を買いに来てくれて本当にありがとうって思ってるんだよ。だって……私のお店の売り上げに貢献してくれてるんだもん。本当に感謝しています。」「ああ……。ただいま……。そう言ってもらえると俺もすごく助かるよ。それに俺は、この世界ではまだまだ弱いからさ……。だから、リゼルや大魔王の二人の助けを借りてでも生きていけるようになりたいと、そう思っているんだ。俺が元いた世界のみんなも俺の事を探していたり、心配していたりするのかな?俺は、この異世界に飛ばされてきて、色々とあったから、もう二度と会えないと思っていた。」俺は寂しそうな顔をして言うと……「太郎君……。大丈夫!!太郎君には、私達がついているから!!ねっ!!そうだよね?太郎君!!」リゼルが優しく微笑みながら言うと、大魔王は笑顔でうなずいて、「おおぅ!!リゼルが俺達の力になってくれる限りは俺達はお前のそばにいるよ。」と俺の目を見ながら大魔王は言い放つと、「おおぅ……。ありがとう。俺……二人が友達で本当によかったと思うよ。本当に……ありが……」俺は大魔王とリゼルに感謝の言葉を伝えようとしたときだった……。俺は何かを感じたのである。

すると突然……リゼルが俺の頭を撫で始めたのだ。リゼルの温かい手が俺の頭に触れたときに、なぜか、心の中に安らぎが広がっていったのだ。リゼルは俺の頭の上に手を乗せるとそのまま……俺を抱き寄せるようにしながら俺の耳たぶにそっと息を吹きかける。「リゼル!?一体何を?俺はどうしたらいいんだよ……。いきなり抱き寄せられて……リゼルはどうしてこんな事を?」俺は恥ずかしそうにもがき始めるが……全く動けない……。

そして……大魔王を見ると目をつむって笑っていたのだ。リゼルは俺のことを抱きしめながら俺の唇にキスをしようとしてくるが、リゼルの綺麗な手と俺の指が絡まり合い……リゼルは手を引っ込めようとしたが……俺がリゼルの腕を掴んで……強引に引き寄せたのでリゼルの唇と俺の口がくっついた……。俺の顔は赤く染まっていた。それはリゼルも同じだ……。リゼルの柔らかい感触……。甘い香りの吐息が感じられる。リゼルから伝ってくる温もりと優しさが伝わってくるような気がした。大魔王は、リゼルの胸を鷲掴みにすると揉んでいた……。俺は驚いてしまったが、俺はリゼルのおっぱいだし仕方ないと自分に無理やり納得させたが、リゼルがとても嬉しそうに俺にしがみついて来ると、俺は幸せだった……。俺はリゼルの事を愛しいと本気で思ったんだ。

俺達はしばらく見つめ合ったあとで……お互いに手を離した……。

俺は……今自分がしてしまった事に驚きながらも、「あのさ……リゼル……。こんな事があった後に聞く話ではないかもしれないんだけどさ……。リゼルはなんであんなにも俺を……こんなにも好きになってしまったのか分からないけどさ……。それでも……俺と付き合いたいと言ってくれた事は、本当にうれしかった。俺なんかと、そんなふうに思ってくれた事が嬉しい。本当にありがとう。」と素直に伝えることができたのだった。すると、リゼルは涙を浮かべながら、俺のことを見上げるようにして…… すると、突然、家のドアが激しくノックされる。リゼルは慌てて、ドアを開くとそこには、リゼルの友達の田中が立っていて……。

リゼルはその友人に向かって叫んだ。

リゼル

「ちょっと!!いきなり入ってこられたら困るんですけれど!!」

すると田中君は「あっ……。悪い。俺は別に、お前らが恋人関係になる邪魔をするつもりはなかったんだ……。ごめん。ただ……。この世界に召喚されてしまってからずっと不安でしょうがなかったんだ。家族とかに無事だと連絡したいんだ……。スマホの電波は届かなくてメールの返信とかもできなくなってたしさ……。

この世界に転移された直後、俺は友達の家で泊めてもらってたんだ。だけど、俺だけ家に帰って来てたからさ……。

それで、もし家族に電話したり、メールを送っていたりしたなら……すぐにでも確認した方がいいんじゃないかと思って……その、なんだ……ごめん。」「ああっ!!そういうことか……。うん。分かった。じゃあさ……。とりあえず、一緒にリビングに行ってみよう。」

そして、リビングに移動する俺たち三人。俺達はリゼルと俺のお母さんで夕食を作っていたのだが、田中君の話を詳しく聞くことになった。まず最初に、俺の家族に電話をかけた田中君はお父さんの会社と母親の職場に電話をかけたが……二人とも行方不明だという答えだった。しかし、その後、弟の悠斗にかけた時に、悠斗が自宅待機をしていると言うことが分かったのだ。俺は、リゼルが、この家に来た時のリゼルの様子を思い出すと、なぜリゼルの両親や兄弟は、この世界で生きているという確信を持っているんだろうと不思議に思っていたんだ。

(俺はリゼルの家に来たときに感じていた違和感を思い出した。)

リゼル

「そういえば……私がこの世界の神様になった後、私はみんなが死なないように……みんなを元の世界に戻してから……元の場所に戻したのに……太郎さんのお父様とお母様の気配を感じなかった……。そして、その気配を感じた方向に行こうとした時には、その痕跡すら消えていて……その……。」「なるほど……。じゃあ……。リゼルは……その、元いた世界を行き来できるわけ? リゼル

「私は太郎さんが元いた場所にしか行けないし、行く必要もなかった……。」

リゼル

「私の力を使えば、他の世界に移動して、移動した場所の様子を覗くことは出来るんだよ。

ただし、移動するのは私自身だけなのです。」「えっ……。つまり、どういうことだ……。よく分からなくなってきたな……。まぁ……いいや……。

それより、この世界の人じゃなくても……リゼルのスキルがあれば元の世界でも自由に動けるって事なのか?リゼル?」

リゼル

「そうだよ。だから太郎さんのご家族の様子を見る事が出来るの。」

田中

「それ……凄いな……。俺も行ってみたいな。」「それは無理だと思う……。田中くんは、私達の世界のルールでは……多分……。」リゼルが言葉を濁して答えると……。大魔王は、リゼルが言い淀んでいるのを察する。そして、リゼルの言葉を代弁するように言った。「俺とリゼルは田中を俺の作った異空間の中に招待することができる。だが、そこに行ったとしても……。この世界の人間が、田中のような異世界の存在を見た場合……この世界の人間は異世界の者に殺される可能性が高い。この世界の者はこの世界の者の魂を食すために存在しているからだ。異世界の存在は、自分の種族以外はすべて餌なのだからな……。」「そっか……。」

リゼル

「太郎君にお願いすれば……。太郎君の力で元の世界とこの世界の行き来が出来るから大丈夫だよ。

太郎君……。」

大魔王

「そうだぞ。俺の力とお前の力は相乗効果で、お前が思っているよりも大きな力がある。リゼルがいれば問題ないと思うが……。

それに、リゼルの奴が……この世界にいる間は、大魔王の力も使えるようだ。リゼルは俺と一緒の部屋に居る時限定だけど……。」

大魔王

「俺とリゼルが一緒にいる間限定で大魔王の力も使えてしまう。リゼルは俺達の力も全て使う事ができるんだから。

俺がお前にこの世界に来て欲しいと思った理由の一つはそこにある。」

(俺はこの世界で、リゼルにプロポーズをして結婚したんだが……。

俺はこの先どうなっていくんだろうな……。俺達が住んでいる家は、異世界から俺達を召喚した人達によって作られた家だ。その人たちはもうこの世にいないが……。でもその人たちが、この異世界を救い、俺達に平和をもたらしてくれたんだ。だから俺と大魔王がこうして生きながらえることが出来たんだよ。その恩は忘れないで生きていこうと思う。俺は今この世界には居られない。リゼルは俺のそばにいてくれると言ったけど……俺は今この世界にはいてはいけない存在になってしまったのだろう。俺は、元の世界に戻ってしまったほうがいいのかもしれない。でも……。それでも……。俺には守りたい人が沢山出来たから……。みんなと約束してしまったんだよな……。必ず帰ってくると……。)俺はそんなことを考えていたが、田中君は、「あの……。俺にも協力できることがあります。俺にできる事ならなんでもやりますから、どうか……この世界を救ってくれませんか!?」「……田中……。そうだね。この世界で生きる意味が俺には無くなってしまっていたけど……。俺はこれからはこの世界を守って行きたいと思っているよ。もちろん、俺に何ができるのか分からないけどさ……。それでも俺がこの世界にいる理由が一つ増えたよ。俺もこの世界に残って……戦うことにする。リゼル。」リゼルは涙を流しながらも、笑顔で答えてくれた。

俺はリゼルが好きだ。俺は、リゼルが俺のことを好きなのかどうか正直わからない……。

でも、きっと……リゼルは俺のことが好きなんじゃないだろうか。俺はそんなことをふと考えながらリゼルの顔を見つめていた。すると大魔王がニヤリと笑って俺に問いかけてくる。「そうか……。それで、太郎……。

俺はこの世界で大魔王として、リゼルがこの世界に残したこの世界を守り続けていかなければならない……。

そこでだ……。俺はお前の願いをかなえてやれる。お前は何を望む?俺は何でも叶えてやることができる。

俺が願ったことは二つあったが……そのうちのもう一つのお前との約束は、既に守れている。俺の目的は達成できたのだ。俺はもうこの世界に何も求めない。お前さえ望むのならば……。お前の望みを言ってくれ。お前が何を願うのか聞かせて欲しいんだ。」「俺の望みか……。俺のこの先の人生の目標は……リゼルと結婚すること。

でも……俺と付き合う前から……俺の事を愛してくれていたみたいだし……。俺と結婚したいという気持ちもあったみたいなんだけど……、結局、結婚までは出来ていないし……そもそも俺に告白される前の段階で、俺はリゼルにフラれてたんだから……、やっぱり俺じゃダメなんだろうか?俺の事が好きかどうかは……正直分からないんだけどさ……。でも、もし本当に、俺のことが好きで好きでたまらないんだとしたら……。俺は絶対にあきらめたりはしない……。俺と一緒に人生を歩みたいと言ってくれるまで……。たとえ……リゼルに振られたって、ずっと一緒にいるよ。リゼルが幸せになってくれれば、俺はそれでいいと思えるようになったんだよ。だから……。」

俺は少し考えてから、答えを出した。

俺は……この世界を守る勇者になりたい。俺は田中君の方を向いて、 田中君はこの世界を救った救世主の一人で、田中君の力は凄く魅力的だったし、今やこの世界にとって欠かせない重要な人物になっているのだ。だから……田中君は俺達と一緒にこの世界のために戦って欲しい。「そうだな……。この世界の人々を魔物の脅威から守る為…… 俺たちと一緒に世界を旅して欲しいんだ……。

リゼル。田中は元の世界に戻った時に……元の世界と行き来できるように出来るかな?」

リゼル

「うん。私の力がもう少し強ければ、できるはず……。」……大魔王の魔法によって作られた空間で、元々はリゼルの両親が生きていたらしいのだが、今はその気配がないと言う話を聞いていた。その話を聞いた俺は嫌な予感しかしなかったが……しかし……)

(俺は……まだリゼルから聞かされていなかったが、俺達が今暮らしているこの場所は

「なあ……大魔王。」

「どうした?お前の考えそうなことは、おおよそ分かる。お前は田中を連れて元の世界に帰りたいと考えているのではないか?」

(大魔王の言葉に俺は驚くしかなかった。なぜ……。そこまで……。大魔王は心を読む能力もあるのかもしれなかった。

俺は大魔王に驚きつつ、質問を続ける。)

「どうして分かったんだよ……。」「お前の心は分かりやすいんだよ……。俺はお前が考えそうな事はだいたい想像つくからな。俺のスキルを使えば簡単に分かるんだぞ。」「まあ……。それはいいや……。それよりも……。

大魔王の魔法で作った異空間の中でリゼルの両親の気配を感じたことは一度もないと言っていたよな。それについて、何か知ってることはない?」

「ああ……。俺がこの世界で死んだときに……俺が最後に居たこの空間を封印することにしたんだ。この空間が解放されればこの世界の人間は、この異空間に取り込まれ、その異空間の魔物に喰われてしまう。この世界の生物はこの世界の生物の魂しか食べることができないからな……。だが……。そのせいなのか……。それとは関係なく……。元々俺の作り出している魔法の異空間のはずだから……。おそらく……お前たちの世界とつながっているこの異空間の入り口がどこかにあるはずだ……。そして……その異空間と元の空間をつなぐ扉のようなものが存在するんじゃないかと思う。」「なるほどね……。」

大魔王

「つまり……、田中は俺の作った空間に田中の居場所を作ってやればいいという事か……。

そして、リゼルの作ったあの世界とも行き来できる場所があれば、問題ないか。」

リゼル

「そういう事だね。

私が田中くんの居場所を作るよ。」「ありがとうございます。リゼル様。お願いします!」

(こうして、大魔王の作った空間はリゼルの力で閉じられて行った。

リゼルは田中君に「田中くん……。私は、あなたのおかげでこの世界にもう一度戻ってくることができました。私は太郎さんが大好きだから……私も太郎さんの役に立ちたいと思ってるの。田中君も私を好きになるといいよ。そうすれば……私たちの仲間になれるから……。でも……無理強いは……しないから……。私達はこの世界の人達とは考え方も違ってるし……、人間を食べないと生きていけない生き物でもあるんだよ。太郎さんのことが……どうしても好きで、他の人に取られるくらいなら食べちゃいたい!なんて思ったり、思わないこともあるかもだけど……。

それでも良かったらいつか……。」と話を続けた。)

俺は田中に向かって話す。「えっと……俺は元の世界に戻ると決めたわけじゃないけど、元の世界に戻る方法があるっていうんなら行ってみたいと俺は思っている。

だから……元の世界とこの世界を行き来できるようにするのに、協力してもらってもいいかな。」俺は田中君に頼んでみた。

*リゼルと大魔王の作り出した異空間が消え去ったあと……、大魔王の力で作られた家の中にあった部屋の一つが、異世界への出入り口になっていたようだ。

そこには異世界とつながる扉が存在していて、そこから田中君は元の異世界へ帰ることができるようになってしまった。そして……田中君は、元の世界に帰ってしまったのだった。(俺と大魔王は田中に元の場所とこちらの世界を繋げることができるのかを聞いてみることにした。「大魔王はどうやってその力を手に入れたんだい?俺はどうやればその力を自分のものにすることが出来るの?」「俺の手に入れた力は、女神によって与えられたものだ。この力はもともと俺に備わっていたものじゃなくて、俺が元の世界から呼び出された後に、この世界で俺が得たスキルなんだ。」……大魔王が持っているこの世界と俺の世界を繋ぐための力は女神から授かったものらしい。俺はそのことを知り少し驚いてしまう。)

俺はそんなことを考えていると……突然、田中が姿を現して、俺たちのところに歩いてきた。俺は驚いてしまって、思わず声を上げてしまったが……、リゼルは平然としているように見える……。リゼルはこの田中をみて、「この人誰なの?私の知っている人は鈴木くんだけなんだけど……。」

俺はリゼルの反応を見て違和感を感じながら田中の顔を見ていた。田中はリゼルに対して「ごめんなさい……。」と頭を下げてきたのだ。俺は驚いたのだが、田中がどういうつもりなのか分からないが、とにかく謝ってくるなら話は別だ。

「なんで謝る必要があるんだ?」と聞くことにした。「俺は田中ではないんです。俺は、佐藤です。」と田中が答える。俺はリゼルの方を向き、リゼルは少し悲しそうな表情をしながら、首を横に振っていた。俺は「どうして嘘をつくんだ?」と言ってしまった。

リゼルが俺の手を取り……、「この人の言ってることは本当だよ……。」と言うのだ。俺は混乱してしまった。リゼルの話によると……、リゼルが死んでしまっているとき、この佐藤君はリゼルの魂を探し出して助けてくれたらしい……。リゼルはこの世界での肉体を失う代わりに、生き返ることができたらしく、俺はこの世界の田中君が死んだ理由を思い出した。俺は大魔王に説明を求めたが、リゼルと田中君の二人は黙って話を聞いていたのであった。

田中君が「俺はリゼルを死なせたくはなかった。でも、俺の力が足らなかったから……。俺が弱いから……。俺には何の力もなかった。俺は何もできなかった。俺は……悔しかった。俺だって……リゼルを助けられたはずなのに……俺の体だったらきっと……。だから……リゼルは俺がこの世界に来るきっかけになった女の子なんだ……。

それで俺はリゼルを助けるためにリゼルに命を捧げたんだよ……。

俺が……もっと強ければ……リゼルを守れたはずなんだよ……。

俺はリゼルと一緒に居たかった。でも……。

でも……リゼルに俺は必要なかったんだ……。リゼルはもうすぐ死ぬはずだったから……。」

リゼルは俺の顔を見上げて、「違うよ……。太郎ちゃんは……私にとって、必要な存在だよ……。でも……私にとっては太郎ちゃんよりも、鈴木君の方が大切なんだ。」と言った……。田中は涙を流していたが……「俺はリゼルを助けたいんだ。」と呟き続ける。リゼルは泣き始めてしまうが、大魔王は冷静に「それは……できない……。リゼルは既に……一度死んだ。」と冷たく言い放つ。「じゃあ……リゼルだけでも、救ってくれ……。」「無理だ……。既に死んだ人間の魂は戻らないし、戻す方法もない。それにリゼルは……。魂の状態でここに来ることが出来たのだ……。」「なんだよそれ……。意味がわかんねえ……。俺のせいで、リゼルは……。

でも……リゼルに会えたのはうれしいな……。」

田中君はリゼルに近づいていき……、田中は涙を流すと……、俺の方を向いたのだ。俺は……、こんな状況でどう対応していいか分からずに、戸惑うばかりなのだ。俺は田中から目をそらすことしか出来なかった。

俺は、リゼルの方を見るが、「私も嬉しいよ。」「太郎ちゃん……。」などと二人が仲良く話しているが、 大魔王の方を見ると、無言のままこちらの様子を窺っていた。

「俺さ……元の世界で待ってるよ。」「……うん。そうだね……。早く……帰ろうよ……。」リゼルと田中は抱き合い、そしてキスをしていた……。「えっと……田中くんは元の姿に戻れないのかい?俺達と一緒なら元の世界に帰れるとかないかな……。」

田中

「俺は、元の世界の時間の流れとは切り離されてるんだ……。こっちの時間の流れに合わせて時間が流れてしまう……。つまり、ここでの一秒があちらの一年ということになるんだ……。そして、あっちに戻った時に、俺の魂は消滅してしまうんだ。」「それなら……リゼルと二人で暮らしてくれないか?」

田中

「リゼルとは結婚しているんだよ……。」……

「それじゃあ……仕方がないよな。

でも……俺があっちに帰ったらどうする?」

「田中君は……私の魂の半分を持っているから……。あっちの世界にも一緒に来られると思うよ。」

「そうだったんだ。」俺は驚いてしまう。

(大魔王は、リゼルと何か話していたが……俺はそれを聞かなかったことにする。)「俺は田中じゃないけど、元の世界に戻ることしか出来ないから……。

そして……元の世界に帰ること以外俺には出来ない。

俺は元の世界に帰ってやる事をやるまでだ……。」

(田中は少し寂しそうな顔をしながら、「分かった。またいつか会おうね……。リゼルも元気でね……。」「田中くん……本当にありがとう……。」「ああ……、じゃあそろそろ……。」俺は二人に手をかざすと、リゼルの身体が徐々に消えていくのが分かるのだった。

そして、完全に消えてしまう前にリゼルと田中はお互いに手を振るのだった。)「行っちゃったか……。なんか変な気分だ……。

でも……まあいいか……。俺はこれから元の世界に戻って……。」

(田中は俺に向かって「ありがとうございました。」と深々とお辞儀をすると……そのまま消えていったのだった。そして、リゼルも消えてしまい俺達は大魔王の家に移動することになったのである。俺は家に着くとすぐにベットに横になることにした。しかし、眠れない……。

しばらく考えた後、寝ているみんなを起こしに行くことにした。まずは、田中に話し掛けることにしたのだが……。俺の部屋に入ると……田中はいなかった。次に、鈴木の部屋に入ってきたのだが、鈴木もいなかった……。それから俺は次々と起こしていった。最後に理江を起こしたが……「理江……。起きてくれ!」と俺は大きな声で呼びかけた。理恵は目を覚ますと、キョロキョロしていた。「理奈さんと、大魔王はいるのか!?」と俺は問いかけてみたが、いないとのことだった。俺は焦ってしまい、「大魔王と、リゼルさんを呼んでくれ!」と言い出したが……理紗は不思議そうな顔をしていて、なかなか動こうとしない。俺は大魔王を急いで探さないと……、大魔王とリゼルがいないことに気がついたのであった。そして、リゼルに電話をかけてみたが出ないのだ。

そして、リゼルが俺のところに来るように、メールを送ったのだが、反応がなかったのだ。そこで俺はリゼルの携帯の電話番号を知っている佐藤を探すため、電話を掛けてみることにした。俺が佐藤を探しに行こうと思った時、「ちょっと待ってくれ。俺が行ってこようか?」と鈴木君が声を掛けてきたのだった。俺は迷わず、「鈴木君!お願いしたいんだけど、今どこにいる?」「今ですか?家の近くを散歩中ですよ……。どうしたんです?」

「鈴木君は、大魔王とリゼルさんを探せるよね?」

「はい、多分……。というより大体の場所は分かってるんですよ。」

「それじゃあ、お願いします……。」

「分かりました。」

俺は田中君のことを思いだしたが、俺が動くことで解決することは何もないと思えてきていたのであった。


* * *

リゼルは田中が居なくなったあと、リゼルは自分の部屋の窓から、空を見上げながら……、「太郎ちゃん……。私のことを思い出してくれるよね……。」と言っていたのであった。

リゼルは太郎のことを思い出し……、「あの人は私が知っている人だ……。私は覚えているんだよ……。でも、私の中の太郎はどんどん小さくなっていくの……。私の心の中から少しずつ記憶が抜け落ちていっている……。

きっと……。」

田中

「この異空間に長くいたせいだな……。

佐藤が元いた場所では時間は経っていないはずなのに……。俺はリゼルの記憶の片隅に残ることも許されないのか……。佐藤……、俺の気持ちを……俺の願いを理解して欲しいなんて言う資格は無いよな……。ごめん……。」

田中君は佐藤君と会話した後、「この異空間から出るしかない。」と考え始めるのであった。田中君は外に出た時に自分がどういう状態になるのか分からないのにも関わらず……、「この世界の時間の流れに合わせなければ……。大丈夫……。俺にはその覚悟があるんだ。俺の魂を消しても構わない。」

「俺はリゼルを助けたい。それだけなんだよ……。

そのために俺は、自分を犠牲にすることを躊躇わないよ。」と呟くのだった。

田中君は自分の中にリゼルがいるという事実を受け止め始めていたのだ。彼はリゼルと一緒に生活し始めてから……、「俺の心の隙間が埋められていくのが分かるんだ……。でもね……。この世界に来てからリゼルを抱きしめたいと思っても……、俺の腕の中には何も無いんだよ……。だから……。だから……リゼルをもう一度抱きしめることが出来たらなあ……。

俺はその望みさえあれば……。

それで満足なんだよ……。だから……。

この世界にいる間だけはリゼルと一緒にいさせてほしい……。俺には何もないからさ……。」と言うと、涙を浮かべながらも笑顔を見せていた。

リゼルは「私もね……。太郎ちゃんにもう一度会うまでは死ぬわけにはいかないの……。太郎ちゃんに会いたい……。」と涙を流した。

二人は抱き合い、キスをするがお互いの身体に触れているにもかかわらず、何も感じることが出来ない。

二人はただひたすら泣き続けた。「もうすぐ……夜が明けるんだね……。」

田中君は朝まで一緒に居たいと言おうとするが……

「そうだね……。もう行かなきゃだね……。

じゃあ……。」

と言って離れてしまう。

田中君が転移の呪文を使う。しかし、田中君の身体は光り輝いているものの……消えることはなく……

「あれっ?おかしいな……。なんでだよ?どうしてなんだよ?」と慌て始めてしまう。

田中君は、佐藤の所に駆け寄るが……。

田中君は、魔法を使ってみては、何度も試すが……。やはり結果は同じで……消えることができないでいた。「俺にはまだ……、やり残したことがあるって言いたかったのかな……。

俺は……。でもまだ……もう少し……もう少しだけでいいから一緒にいさせてくれよ……。」と言った瞬間、田中君の目から涙がこぼれ落ちた。田中君がリゼルに別れの言葉を告げようとしたその時、 突然現れた白い服を着た男が「私の名前はミカエル。神の命により、お前たちを元いた場所に戻さなければならない。これは命令だ。逆らうことは許されぬぞ……。大人しく従え。」と強い口調で話すのだった。「ふざけんな!」と田中君は叫んだが……、抵抗できずに、田中とリゼルの姿が消えたのであった。

そして田中とリゼルの姿は消えてしまうのだった。田中の姿も消えていくと……、田中とリゼルがいた場所の上に光が差し込み、やがて真っ白な光に包まれると、佐藤達や、大魔王や、田中やリゼルなどの姿が見えた。

「良かった……。」俺は田中のことが心配になって思わず言葉に出してしまう。

「田中君……どこに行ったんだろう……。」

「そういえば、あいつの携帯ってどうなってんだろうな……。

リゼルは知らないか?」

リゼルは少し考えてから、何か思い出したような表情を見せると、田中に電話をかけ始めた。しかし、「繋がりません。どうなっているんでしょう?」と言いながらリゼルは不思議そうな顔をする。

俺は大魔王に、田中がどこに行ったか見当がつくかどうか聞くことにした。

大魔王

「うむ。恐らくは、あの世ではないだろうか……。」

「あの世……。」

「それでは、田中くんには会えないのかい?」

「はい……。あっちの時間の流れに沿っていないので……。

田中さんの時間はこちら側では止まっていたんですよ……。

それに田中さんは、元々死んでいましたから……。」

俺は、理恵ちゃんと大魔王の話を聞いていて…… 理恵ちゃんの笑顔が以前のそれとは変わってしまっていることに気づいたのだった。

俺は大天使ガブリエルを呼び出し、リゼルを連れて、元の世界に帰る準備を始めたのである。

(俺が異世界召喚された部屋は、今は元の部屋に繋がっていたが、俺達はこの世界に飛ばされる前に居た家に帰ることにしているのだ。)

そして、リゼルが転移の術を唱えようとすると、「リゼル……。それは止めなさい……。」と大魔王が話し始めた。

「何故ですか?」とリゼルは問いかけるが……「私はこの世界に残ることにします。そして、田中くんが生きていると分かった以上、リゼルをこの世界に残す訳にはいかなくなりました……。リゼル……あなたの力は強すぎます。」と言うのだった。リゼルは黙ったままうつ向いていた。

俺も……この場にいたいが……俺の力のせいで大魔王に迷惑をかけるかもしれないと考えた。俺と大魔王は大魔城に向かうことにした。

「じゃあ、俺と大魔王はちょっと用事があるんで……。また来るね……。理恵ちゃん……。元気出して……。じゃあ……。行こう。大魔王!」と大魔王に声をかけたのだが……

「鈴木さん。すみませんが……。私は残らせていただきたいのです……。お願いできますでしょうか?私がいれば田中さんは戻ってくる可能性がありますから……。鈴木さん。どうかお願い致します……。」と大魔王に言われて……、俺が断れるわけもなく、俺は了承することにしたのであった。

「分かった……。

じゃあ、みんなに挨拶してくるから……先に家に帰っておいてくれよ。」と言い俺は家に戻ったのだった。俺達が家の玄関を開け、中に入ると……理恵が俺達の方を見て驚いた顔をしていた。俺はそんな様子に違和感を覚えつつも、「今帰ったぞー!みんなに紹介するよ。

この子は俺の妻の……。」と言いかけたが……、 理江ちゃんと、大魔女様は、いきなりリゼルの所に向かっていった。そして、「お姉さま!会いたかったです。本当に会いたかったです……。ずっとずっと……。」

「理江!私もですよ……。」と抱き合うのだった。

俺は……?状況が全く分からず、ポカーンとしていたのだが……。リゼルの涙ぐんでいる姿を見ると、俺は心の中に温かいものが広がってくるのを感じた。俺の心の中には田中との日々が浮かんできた。俺にとってリゼルとの出会いは……田中と出会ったことのきっかけになっていると思うのだ。田中とは、あの世界で出会う前から、お互いに気になり始めていた気がする。田中は理江ちゃんに似ているところがいくつもあったのだ。俺と田中との関係は、理恵ちゃんと俺との関係に似ていたのだと俺は思ったのだ。俺はリゼルの姿を見て…… リゼルが泣いているのを見るのは初めてだったが……リゼルの美しい涙はとても美しく感じられた。

「俺もリゼルのことを大切に思っているからさ。リゼルの気持ちがよくわかるんだよ……。田中のことを好きになるなんて、俺も同じ気持ちだからさ。田中のことを好きな女の子が増えるのは嬉しいことだろ?」

「はい。太郎さんには感謝しています……。

そして太郎さんの大切な人のことは……大切に思ってくれていますよね。」

「ああ……。勿論だ。田中には色々と世話になったからな……。

まあ……俺がこんな事を言うのは似合わないけど……。」リゼルが微笑んだ後、「あなたがそう言ってくれて嬉しかった……。私もリゼルも田中さんのことが大好きだったんですよ……。」と呟くのだった。俺は心の中で「やっぱりね。」と思っていた。

「リゼルも田中に会いたいんだね。

早く帰らないとな……。」

俺はリゼルと一緒に帰ることを約束したのであった。

「そうだ。大魔王がさ……。リゼルがこの世界に留まると決めたらしいんだよ。だから……俺はリゼルを連れて元いた世界に帰ることにしたよ。大魔王に聞いたらリゼルがこの世界に留まっていたら危険だって言うんだよ。だからリゼルと一緒に元いた世界に戻るよ。」と俺が話し始めると、大魔女様と理沙ちゃんも話し出した。

大魔女様「理沙と相談して決めていたのだけど、私と、リゼルはしばらくここに居ることになったわ。」

理紗ちゃん「私達も残るよ!」

俺「いいのか?」と聞き返すと、理江ちゃんが、「はい!」と言ってくれるので俺はすごくうれしくなった。

そして大魔女様に話しかけた。

「それで……。大魔女さんにも一緒に来てもらってもいいかな?リゼルをよろしく頼みたいんだ。リゼルはいい子なんだ……。それに優しいんだよ……。俺はリゼルが好きだよ。」と言ったのだが……、「残念だが、私はお前たちの世界に同行することは許されていない。私はここで見届けさせてもらう。」と言われた。そして俺はリゼルを連れて元の世界の家に帰った。

俺は家に戻り自分の部屋にリゼルを連れてきた。リゼルと二人で話しているうちに……、俺はあることに気づくのであった。

「ねぇ……。大魔王にリゼルが元いた世界にいると危ないって言われたんだけど……。リゼルと田中はどこで出会えるんだったっけ?」

リゼルは考え込んだ後「分かりません。でもきっと大丈夫でしょう。私達が元の場所に帰れたら田中くんに会うことが出来ますよ。でも私はリゼルですからね……。リゼルが元の世界に戻れたとしても……。多分……。リゼルの魂はこの世界に残り続けると思います。」と言ったので俺は少し驚いていた。「それってどうゆう意味だ?」

「私が大天使ミカエルに元いた場所に連れ戻してもらった時、リゼルとしての記憶はなくなるはずでした。でも……。私の意識は消える前に大天使ミカエルに私の存在を伝えようとしたのです。でもその時は伝えることはできませんでした。でも……。今は伝えようと思えば伝えられそうな気がするんです。」と言うと、リゼルは真剣な表情をして何か念じ始めたのだった。

「何をしようとしているの?大天使ミカエルとか……。田中のこととか……。」

「はい……。」

俺「何ができるの?俺にもできることかな?」

「はい。この世界にまだ存在していて、強い想いを持っていて……。その人がいれば……。田中君を助けられるかもしれません。田中君に会えたら教えますよ。

リゼルはそう言ってから、リゼルの姿はだんだん薄れていき……最後には光になって消えてしまった。俺は田中を救いたいというリゼルの気持ちが嬉しくて…… 俺は涙を流しながら……リゼルが残した言葉を心に刻みつけた。

(田中……。リゼルの思いが届くといいね……。)と心から願った。

(リゼル……。田中は絶対に助けるから待ってろ!)俺はリゼルの言葉を信じ、田中を助ける方法を探しながら、異世界での日々を送ることにしたのだった。俺は、理恵と田中を救える方法を必ず見つけてみせると決心した。

リゼルは……どこかの世界でリゼルの意識と混ざり合っているようだった。リゼルと大天使ミカエルの間で会話が行われていたのだが……途中で大天使ミカエルの様子が変わっていくのを、リゼルは見ていた。それは……今までのような、人間に対する慈愛に満ちた感情ではないようだ。

(大天使様? どうしてそのような恐ろしい顔をされているのですか?)

リゼルの問いに答えずに大天使は言った「お前には失望したぞ……。まさかあのような者に……。我を騙していたのだな。この世界の理を歪めるとは……お前も堕ちるところまで堕ちたものだ……」と言い放つのであった。「違います!誤解なんですよ。信じてください。私は……私は、あの娘が幸せになるようにと……。」とリゼルが言っている最中に……大天使の剣はリゼルを一閃し、リゼルの体に大きな風穴が開いたのである。リゼルの体は光となって消えた……。(そんな……。私は大神様の為に頑張っていたのに……。)と思いながらも……。大魔王と理恵のことも気になるリゼルは……。大魔王に力を貸してあげて欲しかったのだ……。しかし……。今のリゼルの力では、大魔王と連絡をとることすらできないのであった……。そして…… 大魔王も自分の世界に帰ってきた。

俺は理恵や田中のことについて……アリアに相談したのだが……。「あなたはリゼルの気持ちが分かっていなかったのですね……。私は大魔王にあなたの手助けをしてはいけないと言われているのです……。ですから……これ以上私に関わらないようにして頂きたいのです。私がこの世界で出来るのはここまでです。後はあなたとリゼルが決めて、二人で解決していくしかないのですよ……。さようなら……もう会いたくないのです。さようなら……二度と私の前に現れないでください。お願いします!」と泣きそうな顔をしたと思った次の瞬間に……。

アリアは俺の部屋を出ていった。

俺は……何もできずに……立ち尽くしていた。そして俺の頭の中を……理恵の顔が浮かんでは消えていく……。理恵が俺のことを好きなのを知っている俺は、田中がいなくなった後に……理江ちゃんに振られた時に感じているはずの痛みを思い出していた……。あの時の胸の痛みよりもずっと痛い……。そんな風に感じる俺は馬鹿だ……。俺は田中を救うことが出来なかったのだから……理恵ちゃんと……付き合おうだなんて……。俺は最低の男だ。

俺と理江ちゃんが一緒に歩いていると、田中は後ろから俺と理江ちゃんの手を取り……引っ張って行くのだ……。そして……振り返ると田中は笑って…… 田中「ほーん。二人とも仲良さそうだね……。俺がお邪魔じゃないなら、3人でデートしようぜ……。俺もさぁ……。たまには理江ちゃんと仲良く遊びたいんだよな……。理沙とはさ……。いつも遊んでばっかりだったからさ……。俺がこの世界での一番の親友だって言えるくらいのさ……俺達の絆を深めたいんだよ……。だから……。理沙とはさ……。これからも変わらずにいて欲しいんだよね……。頼むよ……。」

理江ちゃん「えっ……あっ……。う……。うん。いいよ……。」と恥ずかしげに返事をした。

「ああ。田中がそう言ってくれてるしな。一緒に遊ぶか!」俺と理江ちゃんは顔を見合わせて笑っていた。

田中が「なにニヤついてんだよ?」と茶化すのであった。そして……田中が「じゃあさ……。理沙の家に遊びに行こうよ!今日から毎日、夜中に俺と二人で勉強会を開こうよ。理沙に勉強を教えてあげるんだ。俺はね……。高校を卒業出来なかったんだ……。でも……。俺達も高校生になったら、同じ学年に友達が出来たり、放課後は部活とかやって青春を謳歌するんだよな……? 理沙もさ……きっと素敵な女の子と恋をしたりさ……。理沙のことは俺が絶対に守って見せるからさ……。だからさ……。俺と一緒に楽しい思い出を作っていこうぜ!」と言ってくれたことが……俺はとてもうれしかった。俺達は……それからも……田中と色々な場所に行って……本当に充実した時間を過ごしたんだ……。理沙が「こんなに楽しい夏休みってあったかな?って思うほど幸せなの!でも……。この時間が永遠に続けばいいな……。理沙はね……今、すごくドキドキしてるの……。でもね……。これが恋っていうものなんだなって……。田中くんと出会えてよかったって思ってるの。私達もさ……このまま恋人になれるのかな?」と照れくさそうに言ってくれたことを覚えている。俺は……この先も……田中と理江ちゃんと……この世界にいたいと思ってしまうのだった。田中は、リゼルの記憶を見たことによって……この世界に来たときのことを思いだし……。俺が異世界に来てしまった時にあった事を思い出すのだった。そして、この世界にきて初めてできた俺の親友であるリゼルが、自分の親友の魂が宿っているというのを知り、自分の運命を受け入れて、自分が死んだ後の未来のために行動を起こすことにした。

(田中は……この世界で死ぬのか……?)

俺は……自分の部屋に戻り……机の上に置いたままだった……田中との写真を見ていた。田中は死んではいないと思うのだが……。田中を助ける方法は分からないままである……。

(もし……。田中が死んでいるとしたらどうするべきなんだろう?)と自問するのだが……俺は田中を救いたいと強く願うことしかできなかった。そして俺はリゼルのことを考えていた。俺は大魔王とアリアの話を思い返していた。俺は…… 俺は田中を救うために何をすべきなのかを考え込んでいた……。俺は……大魔女さんに会いに行くために立ち上がったのであった。

(田中が助かる方法があるかもしれない。それにしても……。大魔王が大天使ミカエルだったのか……。

だとすると……大魔王と大天使ミカエルって……。

なんか変だ……。俺は……田中のところへ行く前に……もう一度……アリアと話そうと決心した。アリアの所へ向かうことにしたのだが……

「どこに行っていたのよ!あなたは私の物なのよ!勝手なことをしないで欲しいわ!私がどんな気持ちであなたを待ってたか分かっているの?私から逃げたりしちゃダメよ。もう絶対に逃げられないんだから……。

分かったら返事をしなさい!」と言うと……リゼルの姿はまた霞むようにして消えてしまうのだった。リゼルは…… 田中を元の世界に戻すための魔法を試そうとしているのであったが……その前に……リゼルが自分の存在を……大天使に伝えることが出来ればいいのだけれど……と考えていた。

そして……大天使がリゼルを始末するために……リゼルにとどめを刺そうとした瞬間に……大天使の背後に移動していると、そこに大天使がいた場所には大きな光輪が出現していて……そこには光の女神が現れることになるのだが……。まだ誰もそれを知らない……。

(田中を助けてやりたい!俺が田中に会ったら……。俺は一体何が出来るんだろう……。)と考えていると……突然、田中の家の前に俺はいた。

田中は部屋に居たのだが……。俺を見て驚いているようだった。

俺はとりあえず「久しぶり。ちょっといいかな?」と言い、田中と話すことになった。田中は何か用事があるような雰囲気ではなかったが……。俺のことをジーッと見つめているのだ。

そして……。「お前さ……。

もしかして……高橋か?お前は俺と同じクラスにいるんだよ。だけど……俺は……。クラスの奴らとはあんまり関わり合いたくなくて……ずっと一人でいるんだけどさ。高橋は、俺にも普通に話しかけてくるだろ? そんな高橋のことを少し気にしていて……。」と言ったのだ。「ああ。やっぱり……。覚えていてくれたのか……。良かった。実はさ……。」と田中と話してみようとしたら…… 大天使が現れて、「お前には……もう用は無いのだ。さようなら……。

そして……。リゼル……貴様はなぜここに来たのだ……。我はもう……リゼルには興味がない……。」と大天使は言うのであった。そして……。

田中に止めを刺そうとする大天使に向かって俺は……

「やめてくれ!俺がリゼルに憑依されていたとしても……。俺は田中のことを見殺しにするつもりはなかった。田中は、理恵ちゃんと仲直りしたくて必死になっていただけなんだよ!だから許して欲しい。リゼルも大神様の為に頑張っていたんだ!俺は田中を救うことが出来るように頑張るから……どうか頼む!田中は理恵ちゃんともうまくやっていけるように頑張っているんだ。理恵ちゃんもさ……田中のことを認めてるみたいだしさ……。俺は……。田中を救う方法を考えるから……。もう少し待っていてくれよ。」と言って、俺は理恵ちゃんと田中を連れてくるのであった。

そして俺は、理恵ちゃんを田中の家に連れてきて、田中と三人になることが出来たのである。俺は田中が理恵ちゃんをデートに誘った時の話をしてあげたら、理恵ちゃんが喜んでくれるのではないかと田中に言ったのであった。そして俺は理恵ちゃんに「俺と理恵ちゃんも二人でどこかに遊びに行かないか?」と誘うと、田中が横やりを入れて来たので……。理恵ちゃんに田中が告白しようとしていた時のエピソードなどを理恵ちゃんが嫌がっているのに、田中は理江ちゃんの彼氏面をしながら、しつこく話していたんだぜ!!とか言い出したりして盛り上がっていったのだった。そんな風に、俺達二人が盛り上がっている時に、大魔女が現れたのだ!大魔導士は……「理奈さん……。いいわね……。あなたの恋を応援するわよ……。

でもね……。今の私は……あなたの味方じゃないから……。

私の名前は……。そうね……アリアと呼んで頂戴ね。これからよろしくね!」とアリアは笑顔を見せるのだった。

アリアから田中を救う方法を聞いた俺は、俺なりに色々と考えたのだ……。俺なりには……大魔王が田中を殺そうとするのは仕方が無いと思うのだ……。でも……それでも俺は田中の命を救う方法がないか考えていたのである。だが結局……良い案は出ないまま……時間だけが過ぎていき……ついに田中の死期が近づきつつあった……。

その時……。アリアの目の前に光の塊のようなものが現れたのだった。

大天使は、その塊に対して「おぬしは誰だ……。」と問いかけたのだったが、何も答えることが出来ないようで……。

俺は……その様子を眺めているだけだった……。すると、アリアがその声の主に話しかけると、それは人の姿をしていた。そう……。田中の身体を借りて行動してきたあの少年であるのだ。

俺は……どうしていいかわからずにいた。

リゼルが……自分の命を代償に使ったことによって出来た光球を見ていた俺と田中はお互いに顔を見合わせていたが、お互いが黙ってしまい言葉を交わすことが出来なかった。田中も俺も……。この世界に来る前のことを思い出すだけで胸が締め付けられる思いをして……涙がこぼれ落ちるほどだった。リゼルは俺を庇ってくれたのである。田中の友達になってくれた。田中は理沙と仲良くなった。俺は、リゼルのおかげで楽しい高校生活を送ることができたんだ。俺は……本当に心の底から……リゼルのことを感謝している。でも……。俺は……。どうしても田中を助けたいと思っていたのである。田中と一緒にこの世界に来てしまったことで、理沙を傷つけてしまったという責任を感じて……。そして田中を助けるために……俺も何かをしなければと思い悩んでいたのだ。そして……大魔王と戦う覚悟を決めるのであった。俺はアリアの方を見ると、「アリア。俺は戦うことにする。アリアの気持ちを踏みにじるようなことはしないから安心してくれ……。」と言うと……。アリアの顔色が青ざめたのである。

(あれ?俺……何か変なこと言っちゃたのか?なんかヤバそうだな……。なんか怒られるのかも?)

すると……アリアが口を開いた。

「違うの……。そうじゃないの……。私のためにそこまでしなくても大丈夫だって言いたかっただけよ……。ありがとう……。私のことを想ってくれて嬉しかったわ。ただ……私が……私の力が及ばす……。あなたが傷つくことがないようにしたいと思ったけど……。

でもね……もうどうしようもないの。ごめんなさい。

それと……。お願いがあるの!もしもの時は田中君を元の世界に戻して欲しいの!それだけは……。頼んでもいいかしら?田中君の身体を守ってほしいっていうのは無理かもしれないけれど……。」と言ったのだ。アリアの目からは一筋の涙を流していたのであった。俺は……その姿を見て……思わず泣いてしまった。俺は泣きながら、

「わかった。必ず助ける。約束する!」と言った。

俺は大魔女であるアリアが、大魔王に勝てないことは知っている。そして……田中が死ぬことだけはなんとか回避しようと心に決めている。だが、田中が死ぬということは……リゼルとリゼルが憑依した田中は……どうなるんだろうか?そして俺はアリアが言うように、リゼルが死んでしまうという可能性があることに恐怖を覚えたのである。

田中の運命が決まっているのかも分からない。

そして田中に救いはあるのかも分からない……。

(アリアが死ぬということにはならないはずだ……。アリアの寿命はまだ残っているし……。それに……アリアが死んだらアリアの力が無くなってしまうのかもしれないしな……。それにアリアが死ぬ可能性は少ないと思う……。

なぜなら……大魔女のアリアよりも力を持っている存在がいるとは思えないからだ……。アリアは……今のままでは勝つことができないと言っているのだと思う……。俺の考えは甘すぎるのか?俺はもっと考えるべきだ!田中を救う方法を見つける必要がある!俺が出来るのは…… アリアの願い通り、田中を元の世界に帰らせるくらいしかないのか……。)と俺は考えていると…… 突然、田中の家の中から光が溢れ出してきていたのだ!そうなのだ!田中は……リゼルによって救えるチャンスを与えられようとしていたのだ!俺とアリアとリゼルの三人は、光に包まれて消えてしまうのであった……。

気がつくと……俺達は、白い建物の中にある広間に立っていた。そしてそこには、リゼルと大魔導士の姿もあった。大魔導士は田中のことをジッと見つめていた。そして……。田中は……大魔導士の姿を確認すると「えっ!?ここは一体どこなんだ?」と言っていた。

(田中がここにいるって事は……。やっぱりリゼルが田中を救えたんだな……。)俺は、大魔王に殺されてしまう田中を救う方法を、ずっと考えてたんだけど……俺には何も思いつかなくて……。俺のせいで田中が殺されてしまうと分かっていただけに……ずっと辛かったのだ……。そして……田中の運命は変えられないのだと勝手に思ってしまっていたんだ……。だから俺は、自分が情けなかった……。俺は……。俺は田中のことを守れないんだなって思っていたのだ。だけど……リゼルなら田中を死なせずにすむと期待していたんだ。

だから……俺は田中を大魔王から守り抜くために戦いたかったんだけどなぁ……。

俺が考え事をして落ち込んでいると田中が……「俺を元の世界に戻そうとしてくたのか?ありがとう! それで……なんでこんなところにいるんだよ!理恵とは連絡が取れなくて心配だ。早く帰らないと……。」

と大魔導士に詰め寄っていた。

田中に言われて大魔女アリアが大天使の前に立つ。

「私の名前はアリアです。この子は田中優斗くんよ。田中君……。よく聞いてね。この人は……田中君が知っている人に似ているんだけど……別人なの。私は……。リゼルとこの大天使様を見ていると……凄い違和感を感じたの……。」

大魔女の話を聞いた田中は……。「そんなわけあるか!大魔女様は俺の大切な仲間だ!!ふざけるんじゃねぇぞ!!」と言ってアリアに飛びかかって行ったのである。俺は、田中を羽交い絞めにしたのであった。俺は……アリアに向かって叫んだ!!「俺の名前は高橋だよ!!お前も知ってるだろ!!俺のことを覚えていないなんてことはないよな!!俺はお前の為に戦ったこともあるんだ!!忘れたのか?」と言うと、リゼルが俺の側にきて俺の服を引っ張る。そして……俺にしか聞こえないように小さな声で……「お兄ちゃんのことは覚えてるから……」と言ってきたのである。「えっ!!どういう事?どうして俺のことだけ思い出せないんだよ!」とリゼルに問い詰めたのだが……。リゼルが答えてくれないので困ってしまったのであった。俺は、アリアに向かって……「俺は高橋勇也だ。そして俺には、理恵ちゃんと付き合っているんだ……。

俺は……リゼルの身体の中に理恵ちゃんの魂を感じるから……。リゼルが生きていることも知っているんだ……。俺が……。俺達が、理奈ちゃんを幸せにしてやるんだ!だから理恵ちゃんを返してくれよ!!理奈ちゃんがいなくなったことで、俺がどれだけ悲しんでいると思ってんだ!!俺達にはリゼルが必要なんだ!! リゼルを返せ!!」

と叫んでいたのだった。

俺の言葉を聞いたアリアが、「理奈は……あなた達を元の世界に戻してあげた方がいいみたいね……。でもね……。私にも譲れないものがあるの……。私にだって理奈が必要だもの……。」と言い出した。するとリゼルが、

「理奈は……アリアに必要かもしれないけど……リゼルには……田中君がいれば大丈夫だから……。リゼルには……理香がいるし……それに理沙や彩華もいるから……みんなが家族みたいなものだし……それに……。リゼルの居場所は……きっとこの世界ではないと思う……。リゼルも……そう思っているはずよ……。リゼルのことは、リゼル自身が決めることであって、アリアにどうこういう権利はないよ。それに……私とリゼルとリゼルのお姉さんは……あなたが知らないような長い時間を過ごしているから……アリアより強いから……。」

と言った。

(この女……さっきからリゼルに対して生意気なことを言いすぎじゃないか?いくらリゼルの姉だって言ったとしても許さないからな……。)

俺は、アリアとリゼルのやり取りを見ていて……だんだん腹が立ってきたのだ。俺が怒ろうとしているのが分かった田中は、 俺がキレないように……必死に俺を抑えようとしていた。俺は田中に対して「おい!離せよ……。俺があの二人と話をつけるんだよ……。」と言ったら、アリアが「わかったわ……。あなた達の望み通りにするわ。」

と言うと同時に……目の前にいたリゼルの姿は消えてしまい、リゼルが持っていた大魔女の杖だけが残っていたのである。アリアはその大魔女の杖に近づいて、その大魔女の杖に話しかけていた。俺は、 そのアリアの様子を黙って見ていたのであった。しばらくアリアと大魔女の会話が続いていった。俺はアリアと大魔女の会話の内容が全然分からなかったので……何も言わずに見ていただけだったのだ。

(大魔女は……大魔王と戦うことを決断したらしい。アリアと俺達は、大魔女に召喚される形でここにやってきたようだ。だが……。リゼルに聞いたところによると……リゼルとリゼルの姉がこの世界にやって来て、この世界を創ったという話を聞いてたし、それに……。大魔女がこの世界のことを詳しく説明してくれたんだから……。今の状況も理解できているはずだ……。なのに大魔女がなぜ、大魔王と戦うことを決めたんだ?それに大魔女が……大魔女以外の勇者を異世界から呼び出せるっていうことを初めて知ったけど……。アリアは……大魔女を信用してないのかもしれないな……。俺の予想だけど……勇者を呼び出して戦わせることで、魔王を倒してもらおうというのかな……。それだと大魔王と魔王と大魔人の力がわからないと、戦う前に負けちゃうよな……。まぁアリアの考えそうなことだ。でもアリアとリゼルの姉妹は……魔王と大魔人を軽くあしらっていたしな……。大魔人がどのくらいの力を持っているか分からないが……リゼルは、リゼルが憑依していたら絶対に負けないと言いきっていたから……。リゼルは……本当に強かったのかもしれないな……。

それと……アリアの言うとおりなら、アリアは大魔王に勝てない可能性が高い。そしてリゼルが……この世界の創造者なら……リゼルの方が、この世界で長く生きている分有利なのか?そして……田中を元の世界に戻してくれたことを考えたら……リゼルはいいヤツなのかもしれない。俺は、田中を救う方法が思い浮かばなかったし、大魔女も大魔王には勝てないと思っているから……田中を元の世界に戻すという方法をとったのかもしれないな……。大魔王を倒すことができるかもしれない唯一の存在っていえば……田中だけなのか……。俺にはどうしたら大魔人と戦っているアリアを手助けできるのか分からないけど……。

俺には何も出来ないのかもしれ……あっ!!)

俺がそう考えていたときに……アリアは何かの呪文を唱える準備を始めていて……アリアの手からは白い波動が出て、それが……大魔導士の姿になったのだ。そう……アリアの使ったスキルは、大魔導士の姿をコピーする能力を持っていたのだ。しかも……。アリアがこの能力を使うことによって、大魔導士の力の一部を受け継ぐことが出来るようになったのだ。そうなのだ…… そして……アリアは……この力で大魔導士の技を使ってみることにしたのであった。

(リゼルは……この能力を知らなかっただろう。俺が初めて見たときよりもアリアは成長しているのか……。この力は、おそらくリゼルにも使えるはずだ……。そして……俺と田中も……。リゼルが、この姿に変われる力を手に入れた時に……。アリアと同じような経験をしていたから、すぐに使えるようになるかも……。リゼルは俺達を救ってくれるために自分の力を授けてくれたんだろう。そして俺にリゼルを助けるように願ってたし……。俺に託された想いってこれの事なのだろうか?)と思った。

アリアは大魔導士になりすましていたので……大魔王と互角の戦いを繰り広げていたのだ。アリアの圧倒的な強さの前に、徐々に追い込まれていた。そして……。とうとうアリアが追い詰めたその時だった。大魔女が突然大魔王の中に入り込んでいき、完全に支配してしまったのだ。大魔王は自分の意識を失いかけていた。俺は……リゼルとリゼルの姉の話を思い出した。そう……大魔人もリゼルの身体に乗り移ることでしか、リゼルに干渉できないと言っていたのである。大魔王に乗っ取られた瞬間に……アリアの魔法は全てかき消されてしまったのだ。そうして……俺達は大魔人に操られるような形で……アリアと戦うことになってしまったのであった。そして、リゼルの身体に乗っていたときのリゼルの記憶を、俺達が見ることになったのである。

リゼルに憑いていた時の大魔人は……。アリアとの戦いが終わってから、アリアが大魔王と入れ替わった後で……大魔人になって……理恵を襲おうとしていたのであった。しかし……リゼルの身体には田中が入っていて……田中が必死に抵抗するために……田中とリゼルの意思が完全に融合してしまう。その結果、大魔人の身体にリゼルが乗り移り……俺達に話しかけてきた。リゼルは、田中の人格を完全に飲み込んだままで……アリアに戦いを挑んだのである。

リゼルはアリアの攻撃を全て吸収していき、リゼルは、アリアを追いつめていく……。そして……リゼルがアリアを押し切ろうとしたその時だった。リゼルの動きが急に止まり、大魔女に体の支配を奪われたのだ。そして大魔女は、理奈ちゃんが持っていた杖と……理香ちゃんの持っていた盾を使い始めたのであった。そして……。理香ちゃんの身体と一体化することで、リゼルから完全に独立した状態となってしまい……。俺達の攻撃が全て通用しない状態になったのだ。

リゼルは絶望していたが……アリアとリゼルの姉妹だけは……なんとかしようとしていて…… リゼルは理奈ちゃんが使っていた槍を取り出そうとしたが……理奈ちゃんの姿に変化しようとしたところで、 理香ちゃんの持っている武器に全て打ち砕かれてしまった。リゼルはリゼルの姉の所まで行き、アリアとリゼルの姉に頼み込みに行ったのであった。リゼルの姉はリゼルに向かって……「もう……この子には私の力は宿らないのよ……。だから私はアリアと一緒に戦っていくことにしたのよ……。」と言った。

(リゼルが俺に言っていたことを思い出す……。アリアはリゼルが憑依していない状態で、 大魔人と渡り合うことが出来た……。アリアには……リゼルが与えた大魔女の杖とリゼルから受け継いだ能力があったからだ。リゼルがアリアに憑依していたら……アリアに勝ち目は無かったということだ……。アリアにはまだリゼルの魂が残っているから、俺に憑依させても、リゼルは死なずに済んだんだ……。でも今は……俺の中には……理奈ちゃんもいない……。俺はアリアを救い出す方法を考えなければ……。俺の頭の中で、田中が俺の代わりにいろいろと考えてくれているみたいだが…… 何も思いつかないな……。俺は……何をやればいいんだろうか……。)

俺は田中と二人で考え続けていたのであったが……良い案はなかなか思いつかなかったのであった……。

(リゼルの姉が言っていたことは本当なのか……リゼルが俺達の方に近寄ってきて、「ごめんなさい……。あなたに負担をかけてばかりで……。私達はもうすぐ消えてしまうわ……。私とリリスと理菜さんに、この世界での役目が残ってるの……。

あなた達は元の世界に戻って……。」と言うと俺と田中は気を失ったのであった。目が覚めると俺達は元の世界に戻ることになって……なぜか元の世界の自宅に戻ってきた。そこで、俺達はアリアと大魔人が戦う光景を見たのだ。アリアはすぐに……大魔人を追い出し、アリアと大魔人の一騎討ちとなった。そして決着がついた……。

俺が目を覚ましたときにはアリアの姿はなかった……。

俺が目覚めた時には……田中は目覚めていて、田中にアリアはどこにいるかを聞いたら、「お前も見てたんじゃないか?俺とアリアが大魔王と戦ったところを見てたじゃないか?」と言われた。俺は思い出したのだ……。アリアがリゼルと入れ替わった場面を見ていたが、その後どうなったのか知らないので……俺はアリアを探しに行くことを決意したのであった。俺はすぐに家を出たのだが……なぜか田中も一緒に俺を追いかけてきたのであった。俺達はしばらく歩き続けて、ある建物の前にたどり着くと……。そこにアリアがいたので声をかけた。俺が話しかけた後で……田中はアリアに近づいて、何かを話していた……。俺には二人の会話の内容が聞こえないくらい小さな声で喋っていたのだ。

しばらくすると田中とアリアは俺に向き合って、俺が今まで見ていたものは……アリアが作り出した映像だということを説明してくれた。

俺とアリアと田中の三人は、理奈ちゃんの実家に行って、理奈ちゃんの部屋に入り込んだのである。そして俺達は部屋にある物を調べてみたのだ。そしたら、俺達が最初にこの世界にやってきた時に着ていた服が見つかったのだ。

俺は試しにこの服を着ると……俺の身体に異変が起きたのである。それはこの世界に飛ばされたときのように、 自分のステータスが確認出来るようになったのだ。そのステータスウインドウに……俺達が初めて異世界に来たときに、 見たようなウインドウが開いていて……そこにはこう表示されていた。

名前 佐藤一平 職業 なし レベル 100 経験値 0/1000 体力 1200+10+200+125+500 攻撃力 1250 +205++220++440+100 耐久力 1280 +10+180 速さ 570 +45+90+55+150 知力 900 +30+130+400 精神力 1300幸運 200 魅力 2000 所有 山田太郎(所有者 アリア)

(アリア!?俺はアリアの所有物にされているのか……。そして……なんで俺の運の値が跳ね上がっているんだ……。俺のレベルが上がってるし……。しかも……。アリアのレベルは……99になっていた。アリアは……どうやってこの世界に来る前のレベルになったのかな……。それと、田中のレベルは……。まだ上がってないのか……。田中に何が起こっているのだろう……。そして……。アリアは、なぜ急に自分のスキル・能力が増えたのだろう……。アリアは……。この世界にきたときは……俺と同じように普通の学生だと思っていたけど……。そうじゃなくて……。もしかしたら、田中と同じ存在だったんじゃ……。

そういえば……。アリアは元々、リゼルから与えられた大魔女の力があるはずだけど……。

どうして、あの力は使えなかったんだろう……。そして……俺達は……アリアの転移の力によって元の世界に戻ったんだよな……。そして、大魔人の支配から逃れて、俺とアリアは大魔王と戦い始めたんだけど……。俺がアリアから貰った杖と、リゼルの武器と、理奈ちゃんが持ってた槍を使ったのに、結局大魔王に勝てなかったという事なのだろうか……?)

俺は、俺の考えを口にして……それを聞いていた田中が……。田中はアリアの転移の力で元の世界に戻りながら考えていたのである。

(俺が考えたことを、俺が口に出していたらしいが……。俺は……。俺じゃないのに、俺の記憶が頭に入ってきたりして……不思議な感じだよな……。俺には俺なりの記憶がしっかりと存在する。

そして俺が覚えていないことも、鈴木の記憶が俺の記憶を補完してくれてるから……問題はないよ。ただ……アリアが俺に憑依してた時は、鈴木の記憶がなかったから……俺が、俺の身体で話したことしか覚えていない。アリアが、理奈さんの槍を使って……俺の頭の中に記憶を送り込んできていたから……。だから、理奈さんの記憶とかが俺にもある。理奈さんから、俺の記憶を奪ったわけではないんだ……。でも……理奈ちゃんの持っている杖を使えるようになるなんて……。)

アリアは自分の部屋に飾ってあった、理奈ちゃんが持っている武器の所へ俺を連れて行ったのである。

「ねぇ、一平君……。理奈さんが使ってる槍……私のお姉ちゃんが作ってくれたものだけど……私では扱えなかったのよ……。理奈さんが、この槍を持ってる時だけは……。理奈さんは私なんかよりも強かったの……。この槍は理奈さん専用だから……。私や大魔人のような存在なら……この武器は使いこなせると思う……。大魔王を倒すための唯一の手段かもしれないわね……。この武器を使うことが出来る人がこの世界で現れるかどうか……わからないけど……。

この杖と、大魔人が作った杖……それから、この槍が有れば……きっと大魔王に勝てるよ。私はもう大魔王に乗っ取られることもないはず……。

そして……もう私は大魔人の支配から完全に抜け出すことに成功しているのよ。私はもうリゼルと入れ替わることはないわ……。だから、これからは……私が表に出る機会も減ってくるかもしれないわ……。」

(大魔女が使っていた杖は……リゼルが俺に憑依していた時のアリアとリゼル姉妹の話を思い出すと……。田中とアリアと理奈ちゃんが……リゼルから受け継いでいたんだな……。

そして、理奈ちゃんから理恵ちゃんへと引き継がれていった……。)

俺は、田中の事を考えて、少しだけ嬉しくなっていたのであった。

その後……アリアの両親や妹の美菜ちゃんと話し合った。その結果、この家で、しばらく俺達が生活することに決まったのである。

俺達は理沙ちゃんの家に荷物を置くために一度帰ることに決めて、理香さんと一緒に家に帰った。理沙ちゃんが出迎えてくれた後、 俺と田中は理香さんの作った晩御飯を食べた後、また元の世界に戻ってくるようにとお願いされたので……田中は、アリアに憑依されて……俺と田中の身体は消えてしまったのであった。

(俺はアリアの意識が途切れた瞬間に気を失ってしまったようだ……。目が覚めたら……そこは理香ちゃんの家で、 田中がアリアをおんぶしていたのであった。

そして……田中が俺を揺すっていた。俺と田中が目覚めると……。俺は田中と目を合わせ、二人ともアリアがいないことに気づき……。

そして俺は……俺の中にあった田中という記憶が消えていたことに気付いたのであった。

俺と田中はアリアを探すことにしたのであった……。

俺は田中と二人で探しているときに……田中が自分のことを隠していることを知ったのだ……。)

(僕は今、鈴木の家に住んでいるんだ……。そして……鈴木の家族として受け入れられているんだ……。

ただ……。僕も最初は混乱していたけど……今は受け入れてくれているんだよね。

でも……。家族なのに……みんなは僕の本名を呼ばないんだ……。まぁ、いいや。とりあえず……この世界の人達は優しいし……。僕はこのままここで過ごしていけばいいんだ……。もうすぐアリア様も元に戻るだろうし……。)

俺は、田中の事が気がかりだったが……田中に聞くわけにもいかず、田中とはぐれた場所に戻ろうとしたのだが……。

なぜか、その場所には誰もおらず……仕方なく田中を探す事にした。だが、どこにも田中の姿はなかった。田中は……どこか遠くまで歩いて行ってしまったようであった。俺は、田中を探しに行ったのだが……途中で、理香に出会ってしまい、俺は事情を説明して家に連れて帰ってもらう事にしたのであった。

田中の行方がわからず……困っていると、突然スマホが鳴ったので電話に出たら……相手の声を聞いたときに違和感があった。そして、相手から名前を呼ばれたときにも……。)

俺「もしもし??」

俺(この人は誰なんだ……?俺はその人のことを何も知らないぞ??)?「お前の名前は高橋一平っていうんだよな??」

俺「ああそうですけど?」?「じゃあ……アリアとリゼルの友達か……。俺のこと……わかるか?」

俺「あなたは一体何者ですか??」

(俺はこの声の主を知っているはずだが……まったく思い出せないのだ……。俺は……この声の主のことを忘れてしまっているみたいだ……。この声の持ち主のことを考えると胸が苦しくなる。

そして、頭が痛くなって気持ち悪くなってしまう……。

そして、この人と喋るときは……なぜか恐怖を感じてしまうのだ……。いったい何が起きているんだ……?)?「わからないのか……?本当にわからないのか……。俺だよ……俺だよ!!田中だよ!!一平……お前がアリアと呼んでいた少女は……。俺なんだよ!!」

俺は……頭の中が真っ白になってしまった……。俺はどうしたら良いかわからなくなり立ち尽くしてしてしまった……。そんな時に俺のスマホから田中の笑い声が聞こえてきた……。俺は慌てて、田中に電話をかけたら……田中が俺の隣に現れて…… 俺「どういうことだよ……なんで俺の名前を知っていたんだ……。」田中「俺は、佐藤太郎って名乗ってたけど……本当は田中太郎だったんだ……。この世界に来て、アリアが俺の目の前に現れたときに……俺はアリアと入れ替わることでアリアの力を得た……。それで……大魔人に乗っ取られた理奈を助けることが出来たんだけど……アリアから俺に力が戻ってきたときに、理奈の武器を使って……俺の頭をリゼルが抑えつけて、俺の脳にリゼルの記憶を無理やり送り込んだ。そのおかげで……俺は、自分の記憶を取り戻せたんだ。だから……俺はリゼルの記憶を持っているんだ……。俺の本名は田中太郎で間違いないんだ……。ただ、リゼルが……自分の本当の名前を名乗りたくないと言い出して……

『リゼル』と名乗るようになったんだ……。俺の本来の姿に……。俺に憑依されていた時のアリアと田中と山田の記憶があるだろ?それは、アリアに渡される前の状態に戻しただけの話だ。だから、アリアもリゼルに憑依されなければ……。山田と同じ状況になってると思う。だから……。俺が憑依された時のように……お前達もアリアが元に戻れば記憶を共有できるはずなんだよ……。でも……理奈の槍だけは特別だ……。槍の能力のおかげで……理奈と俺とアリアの記憶は消されなかったんだよ……。理奈ちゃんは槍を使えるようにはならなかったがな……。」

俺「リゼル……。そうだったのか……。それじゃあ……あのアリアは何者なんだよ……!?アリアは……俺と田中の身体に宿ってたから……。俺と田中の身体にアリアの記憶はあるはずなんだけど……。」

俺が田中に対して疑問をぶつけてみると…… 田中「アリアは元々、リゼルの記憶も持っていたはずだ……。だけど……。アリアがアリア自身と入れ替わった事で……。リゼルのアリアに対する想いもアリアの中に流れ込んできて……俺と理奈を救おうと必死になっているアリアを見ているうちに……俺達はアリアのことを好きになっていった。アリアはリゼルの記憶とアリアの記憶の両方を持った存在で……。アリアがアリア自身をリゼルだと認識していたから……。俺は理奈ちゃんを助けられたと思ったんだけど……。まさかこんなことになるなんて……。」

その時俺は……俺の中にアリアの事を思い出そうとしなかった理由を思い出してしまった。そして……俺の目からは涙が止まらなかったのである。そして俺は泣いているところを見られないように下を向いて黙り込んでしまった。田中は……アリアの事も俺達のこともすべてわかっていたような口ぶりで話しかけてきてくれた。

田中「俺は、アリアと理奈ちゃんのことは、理奈ちゃんから聞いた話くらいでしか知らなかった。でも、アリアとリゼルの二人とも、お前たち三人を大切に思っていたのは事実だし……。お前達が幸せな人生を歩むことが出来るように協力してくれていた。お前たちがお互いのことが大切だという事をちゃんと自覚すれば、お互いに手を取り合う事が出来ると思っていたんだが……それが……裏目に出てしまったようだ。それに、アリアに俺の身体を使って行動させていたとき、理奈ちゃんとアリアは二人で話をしてたよな。あの時に何かきっかけでもあったんじゃないか?俺が理奈に憑依したときの事は俺自身もあまり覚えていないし……。詳しい話は理奈に聞いてみてくれ。そして……。リゼルと俺の身体にお前たちを戻すために、俺がアリアにもう一度乗り移る必要があるようだから……。また連絡するよ……。あと、田中太郎っていう名前は……もうやめておくか……俺達は田中一郎だから……今後は、リゼルとアリアの名前を名乗って生活することにしたほうが良さそうだし……。」

俺が返事をせずに、下を向いていると田中が心配そうに声をかけてきた 田中「大丈夫か……?」

俺は何も言わずにうなずいて答えるだけだった。すると田中は俺を抱き寄せてくれた 田中「もうちょっと我慢しろ……」

と言って抱きしめながら慰めてくれた 田中の温もりは……心地よくて俺は少しだけ安心することができた。しばらくした後……田中の方から離れていくと田中が微笑んでくれたのだ 俺は田中の表情を見て少し恥ずかしくなって顔を下げた 俺「悪い。助かったよ……。田中はこれからどうするんだ……?俺は、理香ちゃんに会わないと行けないんだ。俺は理香ちゃんと一緒に居たいんだ……。だから……。俺は、この世界にずっと居るわけにはいかないんだ……。俺は元の世界に帰らなくちゃいけない。理奈ちゃんにまた会いたいから。でも……。元の世界に戻ったら……。俺は……またアリアと入れ替わるんだろう……?」

俺は悲しそうな目で質問した。だが田中も辛そうだった。

田中「ああ。アリアが再び目を覚ますためにはそうしなければならない。だが。理奈ちゃんは槍を使えない。アリアが理奈ちゃんの代わりにアリアに乗り移り……理奈ちゃんの記憶を封印する事になるが……。アリアも記憶が無くなるかもしれない。お前も……元に戻るかもしれないし……。お前たちのどちらかが残るかもしれない……。俺は、また二人に別れてほしくないと思っているし……。元に戻るのが嫌だったら、このままアリアとこの世界で暮らしてもいいと思っているが……?」

俺「アリアの事を一番大切に思っているのは田中だって分かっていたはずだ……。なのに……なぜアリアに乗り移り続けているんだよ……。俺は元の世界の家族の元に戻れるなら、アリアやリゼルや理沙ともお別れをしないと行けないし……アリアをこの世界に置き去りにすることは出来ないんだ……。俺は……もう覚悟を決めないと駄目なのか……? このままだと俺だけが元の生活に戻ることになりそうだな……。理香ちゃんと一緒の時間を過ごすことが出来なくなるんだな……。俺は、このままアリアとリゼルとこの世界で暮らせないかと思ってしまう自分が怖い……。でも……。アリアやリゼルや田中には辛い思いをさせてしまうと思うから……これ以上わがままを言うつもりはないよ……。」

(アリアもリゼルもこの世界の人達には愛されていたからな……。そんな人達を苦しめるような選択をさせるのが申し訳なくなってしまい……俺は……自分の本心を押し殺してしまうのであった……。)

田中「ごめんな……。こんな事になるなんて思いもしなかったんだ……。

俺とアリアが一緒にこの世界にいるには……。一平……いや……高橋の体を借りるしかなかったんだ……。俺もリゼルの事をアリアに任せきりにしてしまったからな……。俺はアリアがリゼルと高橋を愛しているのは知っているし……高橋とリゼルの二人のことを想っているのは知っているからな……。

高橋が元に戻ってこの世界を去らないと決めた時は、アリアとリゼルとこの世界で三人で暮らすつもりでいる……。高橋が元の世界に戻れなくても、この世界にとどまる選択肢もあるという事を、アリアに伝えてくれるか?この世界にとどまったとしてもアリアが不幸になることはないから……。ただ、高橋が元の世界に帰りたいと強く思うのであれば……。それは、それで構わないと伝えてほしいんだ……。アリアは俺の記憶を持っているはずだから、リゼルは高橋とこの世界でも上手くやって行けるはずなんだ……。リゼルはアリアの記憶があるんだから……。きっとリゼルにも幸せにしてくれる人が現れると思うんだ……。だから……お前もアリアのことは気にせず自由に過ごして良いと思うから……。俺からもアリアに伝えるけど、リゼルの気持ちを代弁しておくぞ……。

それと……俺がリゼルに成り代わっても……今まで通りにアリアと俺達三人の関係は続けよう……。アリアにはまだリゼルの気持ちを伝える必要はないけど……。リゼルがもし自分の身体を手に入れたときは……。アリアとの時間を大切にしてほしいとは言っておくけどな……。それから、俺はアリアから聞かないかぎり……リゼルが田中太郎だったことは知らない事にしておくよ。田中太郎が生きているって言う事を伝えただけでも……。

俺はリゼルとアリアと三人で過ごしたいという願望はあるから……。リゼルの事は頼んだ。俺は、理奈に会いに行ってくるよ。俺に出来ることがあれば何でも協力するよ。リゼルと二人で相談して決めれば良いさ。じゃあまた後で電話をするよ……。俺もアリアに会ったときの為に色々準備をしておいた方が良いかな?じゃあな……。俺はリゼルとして理奈の所に一旦戻るよ……。」

田中はそういうと田中の姿がだんだん薄くなっていき消えていってしまった。田中がいなくなってしまうと俺は寂しいと感じながらも、俺は俺で、理奈に俺の素直な気持ちを伝えようと決意して、田中の言っていた通り……まずは理恵に連絡をしたのであった……。

俺は理江との電話で、俺は俺自身の素直な気持ちを理恵に伝えたのである……。俺は理奈が俺の前から去って行った後の事を覚えている。そして……理奈の事を本当に愛しているのだという事も伝えたのだ。俺は理香の事は今でも大好きだし理香が亡くなってからは恋すらしていなかったのだと正直に話した。俺が話終えると理奈は涙ぐんでいた。そして俺の目からは……涙が流れていた。俺が涙を流さずにはいられなかった理由は一つしかない。理奈の優しさと温かさに改めて感動してしまっていたからだ。俺は……この世界にきてから……本当の自分を見失ってしまっていて……理奈を守れなかった事が悔やんでも悔しみ切れなかったのも理由の一つではあるのだが……。

俺は……「理奈が今、どこに居るのか教えてくれ……」と言って、理奈の住所を聞いた後、すぐに理奈のマンションに向かう事にしたのである。俺と理奈は理奈の家に着くと、俺達は玄関前で立ち尽くしお互いに見つめ合ったのである。

俺達は……お互いに見つめ合っていたが、どちらともなく自然に抱きしめ合っていて……。俺の頬には、涙が流れ続けていた……。

「俺は……本当は、ずっと……ずっと……君と一緒に居たかったんだ……俺のことを嫌いにならないでくれ……」と言うと、理奈が「バカね……。私だって、あなたと別れた後は、いつも……ずっと泣いてばかりだったわよ。私はあなたのことが好き。これからも……一生かけて、私のことを幸せにしてくださいね。お願いします。私と……結婚して……」と言うのであった。俺は、「理奈さん……。俺は絶対に君の事を幸せにする。だから……もう一度だけチャンスが欲しいんだ……。俺と結婚して下さい!!」と真剣な眼差しで言った。すると理奈は笑顔になり、再びキスをしてきて、お互いに見つめ合い笑いあうのだった。俺が理奈の家にあがりたいと言い理奈の部屋に行くと、俺はベッドの上で抱き合い理奈が満足するまでずっと抱いてあげると……何度も求めてくるのだった。

そして俺と理奈はそのまま眠りにつく。朝起きると……既に理奈は目を覚ましていて「おはよう」と言って微笑んでくれる。その瞬間俺は幸せな気分になって理奈の頭を撫でて「ありがとう」と言った。すると理奈が「昨日は……ごめんなさい……。あの時は、あんな別れ方をしてしまったけど……。もう、あの時の事を、いつまでも責め続けるような真似はしないし……私が謝るのは違う気もするんだけど……、あの時は……酷い事をしてしまい……申し訳ありません……」と言うのだった。俺は少しだけ困った顔をしながら「大丈夫だ。今は……理奈の事を愛してるから。それに……理奈とこうして過ごせるのが嬉しくてたまらないんだ。もうすぐお別れになるんだと思うと辛いが……。理奈と会えて良かったと思っているんだ。俺は君と一緒に過ごした時間が何よりも大切なんだ。」と言うと理奈が「私も……。またこうして会えると思っていなかったの。でも……。まさかこの世界に来られるとは思っていなかったから、すごく嬉しいの。この世界での時間を、たくさん一緒に過ごそう。それから……元の世界に戻ってからのことも……前向きに考えるようにするから……、その時が来たら……。また考えましょう。私には……まだよくわからないから……。ごめんなさい。頼りないかもしれないけど……こんな感じでいいかな?よろしくお願いいたします。」というのだった。

俺は理奈の言っていることが、俺に対する気持ちなのだと分かったので嬉しかったし……。何よりも、理奈に愛されていることを再確認する事ができたので、本当によかったと思うのであった。

理沙も……理奈と同じ気持ちなのではないかと思ってしまう……。俺は……。そんな事を考えている内に……だんだん心が痛くなってしまって……。理菜に対して罪悪感を感じ始めてしまう。俺は、理沙に「会いに行きます」とメールを送ったのであった。

理奈との甘い時間は、もう終わってしまったが……。俺は、もう少し理紗と過ごす事にする。朝食を二人で食べることにする。食事を終えた後に……。俺は、この世界を去ろうと心に決めたのであった……。理恵からもらった指輪は、俺と理香の形見のようなものだった為、持って行こうかとも思ったのだが……。持っていっても仕方がないと思い返送することにした。俺と理奈は二人っきりで過ごす時間が長かったので、二人共離れるのを寂しいと思っているのだろう。

しばらく二人で過ごしていたら理恵から電話がかかってきたので俺は出ると、「お久しぶりです……。」と言う声が聞こえると……。

理恵「お久しぶりですね……。」と言われて、理奈と同じような口調なので……思わず「あれ!?」というと、俺が戸惑っている様子を見ていたのか、クスっと笑われる。俺が「どうしたんですか?」と聞くと「理奈ちゃんから聞いてるんですよ……。今日は……私からあなたに用事があるから、電話したのですが……、ご都合が悪いのですか?もしかしてデート中とかでしたでしょうか?なら……すみません。」というのである。俺が「えーと……。用事というのは……。なんでしょう?」と聞くと理江が言う。

理江「単刀直入に聞きますが……。今……この世界のどこにいるのでしょうか?あなた達が元に戻る方法を見つけてあげても良いと言っているのですよ。

もちろん条件はありますが……。私もリゼルの気持ちはよくわかるから……。リゼルが可哀想に思えて……。私の力でも出来る事はしたいと思ったので、協力は惜しまないつもりなの……。

私にできることと言えば……『理奈』と入れ替わるように、『田中太郎さん』、『佐藤美鈴さん』、『高橋一平さん』と入れ替わらせることくらいなんだけど……。」

俺は驚いてしまい何も言えなかった。俺は理奈と目が合うと……。お互いに無言になってしまった……。そして、お互いが見つめ合っている……。

理奈が先に口を開いた。

理奈「私も……同じ事を考えていたのよ……。」と理奈が言うと、理恵は黙って聞いていた。そして、俺達の返事を待たずに続けて言う。

理江「田中さん……あなたの気持ちもよくわかりました。この世界にとどまると決めたあなたの意思を尊重しますよ。ただし……田中太郎と佐藤美鈴と高橋一平が、このまま元の身体に戻らない場合は……女神に頼んで三人を強制的に入れ替えてもらい、あなたと田中さんの入れ替わりの事実は消させていただきます。」と淡々と話す。俺と理亜は……「はい……」と答える。すると「じゃあね……」といって理恵との通話は終わったのである。

俺とリゼルが入れ替わったのは、俺が異世界に転移して来た時だから、俺の身体と田中の肉体は入れ替わっているはずなのだが……田中達には、どうやって連絡すれば良いのかと、俺は途方に暮れてしまうのだった……。リゼルが俺の腕に自分の腕を絡めてきて、上目遣いで俺のことを見つめている。俺もリゼルの事を、そっと抱きしめてキスをして「俺……これから理奈に会ってくるけど……。何かして欲しい事はあるかな?なんでも言ってくれ……。俺はお前の彼氏であり婚約者だからな……。俺ができる事はしてやるよ。遠慮せずに言えよ。まぁ……俺に出来る事があればだがな……。ハハ……。俺はいつでも、お前の味方だから……。」と言うとリゼルが笑顔で答えてくれる。

リゼル「ありがとう。私はあなたとずっと一緒でいられたらそれで十分よ……。本当にあなたが愛しく思えるから……。本当に……。私は幸せ……。あなたが……もしこの世界で生きる事を決めたとしても私はあなたに着いていく覚悟はあるよ……。あなたのそばにいたいから……」と言って俺を優しく見つめながら抱きついてきたのだった。

俺はその言葉を聞いたときに……俺は涙が流れてしまい……しばらく涙を止める事が出来なかった……。

理奈の家の前で、理奈が来るのを待つ。しばらくして……理奈は現れると俺のところまで駆け足でやってきてくれたので俺は抱き締めると……お互いに抱きしめ合って……。俺の胸の中で、しばらく動かず……涙を流し続けた……。

理奈が俺の顔を見て……「やっぱり……ここにいたのね……。私が知っている佐藤くんが行きそうな場所といえば、私の所くらいしか思いつかなかったのよ。私に会いに来たんだよね?私は……大丈夫だから……。もう泣かないで……。私……もう、怒ってないし、悲しんでなんかいないよ。だって……この世界の私は幸せそうだから……。それにね……。あなたが私のために一生懸命、動いてくれていることも分かってるから……。私は大丈夫だよ。」と笑顔で言う。俺は少し安心したが、まだ少し納得いかない部分もあったので……、どうしても言わないといけないことがあると伝えたら、少し真剣な表情になる。俺は、「俺さ……まだ少し納得してないことがあって……、それは……あの女のことなんだ……。理恵に言われた通り、元に戻すには俺か……あの三人の子供しかいない。それを考えると……やはり、子供には元に戻せる可能性があると思う。」と言うと……

「そうよね……。あの子たちはどうなるんだろうか……って思うと、本当にかわいそうになってくるわ……。」と言ってくれるので……「ああ……。確かに、その可能性もあると思う。」と俺がいうと、理奈は少し不安げに「うん……。あの子たちがどうするべきかを……真剣に考えたほうがいいと思う。あの子が言ったように、この世界にとどまりたいと思うのなら……それも一つの選択肢だとは思うんだけど……。あの子は元に戻った場合、記憶も失っているはずだと言っていたので……私達の事はもちろん覚えていないと思う。あの子は、私が……『リゼリア』としての記憶を失ってしまう事を、一番気にしていたみたいだし……。でも……あの子ともう一度話せるチャンスがあるならば……一度話し合いをしたいと思う。あなたが、元に戻りたいと望むのであれば、この世界で生きるという選択もありだと思うの。私もそのつもりでいるから……。元に戻ってしまえば、二度と会うことは叶わないから……。それでも構わないの……。だから……まずはその前に……、理奈には、理奈のお母さんと話をして欲しいと思って来たのだけど……どうかな?」と言うと、理奈はうなずいて「わかったわ。私も……お母様と話してみないとダメなような気がしているから……。」と言うと俺はホッとした。そして…… 理奈に、理奈の母親の住所を教えてもらった。俺が家を出て帰ろうとすると……。俺を呼び止めて……「ねぇ……。私と初めて会ったとき、私のどこを気に入ってくれたのかを、聞かせてくれない?ちょっと興味があって……。私のどこが好きなのか知りたかったの。私の事……好きなのでしょう?」と聞かれたので、俺は…… 俺「俺がお前を初めて見たときは……最初は、かわいいなって思っていたけど……。そのうちに好きになっていたよ。」と言うと、理奈が恥ずかしそうに顔を赤らめている……。俺は……「でも、今は……それだけじゃないから……。理奈といるのが楽しくて、いつも笑っている姿が可愛くて、たまに怒る姿もかわいく見えてしまって……。そんな理奈がとても好きだ。もちろん顔だけじゃないぞ……。心も含めて全てだ……。だから……。今、こうして二人でいることが嬉しい。一緒に過ごせて良かったと思っている……。」と言うと理奈は、「フフ……。ありがと……。すごくうれしい……。」と言いながら、嬉し泣きをしているのであった。俺はそんな彼女のことを優しく抱き寄せたのであった。

(※作者です。理香さんのキャラデザ公開!です。ちなみに田中君はイメージイラストです。)

【作者のつぶやき】

今日も読んで下さりありがとうございます。

昨日更新できなかったので本日は早めの更新です。(2/1212:00時点 フォロワー100名達成しました!!感謝感激です!!本当に皆さんありがとうございます。引き続き応援お願いしますm(__)m

★★

佐藤理香:理奈の母親。39歳 見た目;黒髪でセミロング 身長165cm B90W60H88、血液型;O型 職業;会社員、旧姓;高橋理恵(女神の使徒、性別;男、氏名、高橋一郎 職業 盗賊)、性別、男性 ▲ ステータス;Aランク、体力C+、魔力B 防御力D 魔防D 敏捷性E 攻撃力D 精神力Fスキル 鑑定C、収納B 魔法属性 無属性、風・土 武器 ダガー×2 防具 ミスリルアーマー(銀製ではない普通の銀色の金属でできたフル装備一式。ただし、鎧だけは特注品で軽い。)

アイテム オリハルコンの指輪、ミスリスの短剣、シルバースピア、プラチナソード 理奈の家に入ると、理奈の母と姉は出迎えてくれた。姉の理沙は「いらっしゃいませー。」と言ってくれるが、妹の理佳は「お邪魔してます……。」と言うだけである。この二人は性格は全然違うが……、似ているところもある……。そして俺が…… 俺「急に来てしまいすみません……。理亜さんの事で……、俺もリゼルと一緒に……理奈さんのお宅に来ていまして……。少し、理亜さんとお話しさせてもらえないでしょうか?あと理江さんとも、もう少し詳しくお話をさせて下さい……。それと俺が元の世界に戻る事について……その件で少し話し合いができればと思いまして……」と話すと……。理奈母は俺の事をまじまじと見てくると…… 母「貴方……確か、リゼルの彼氏で婚約者だった方よね?理奈とどういう関係かしら?私は……理亜さんとは友達だったのよ……。あの子は優しい子だったし……明るく笑う素敵な女の子だったわよ……。それがなぜ……どうしてこうなったのよ!!」と言ってきて、俺は……理奈に聞いていた通りの人だと思い、その怒りは正当なものだと思った。しかし……理奈は俺の前に立ちふさがり、俺の代わりに…… 理奈「それは違います。彼は、理江さんがリゼ……リゼルちゃんの事を好きになりすぎてしまったために……自分の物にしたかっただけです。だから……リーゼの事を殺したのです。でも結局、自分の手に入らないことがわかり、逆上して殺そうとしたところでリゼルの魂と入れ替わったために元の身体に戻れなくなりました。この人は私の恋人です。だから私が責任を取りたいと思っています。だから、彼のやった事を許して欲しいとは言いませんが……、リゼルの為にもどうか協力してほしいと思います……。私はもう迷ってはいません。彼が元に戻れないと言うならばこの世界にとどまる事も考えてもいいとさえ思っているんです……。私にとって大事なものはこの世界の人たちよりも……彼でありこの世界のものではないですから……。」と言い切ったのだった。

その理奈の発言を聞いて、理奈の母の怒りも徐々に落ち着いていき、少し落ち着きを取り戻すのだった。

俺達は……理香に促されて客間に入るのだが、その途中……廊下を歩く途中で理恵と出会うのだった。

俺「あれ?理恵は仕事中だったんじゃないのか?」というと……彼女は「うん。今日は有給休暇をとって、佐藤君がどうなっているのか確認するため、この世界にやって来たのですよ。」と言った。俺は、彼女にも今回の経緯を説明するために連れていくことにした。理恵も納得してくれたようだったので……皆で、部屋に入ったのである。俺は、先程あったことを順番に説明するのだった。

俺は……この世界の事をあまり知らなかったので説明してもらう。まず最初に驚いたのは……この異世界では一夫多妻制が普通なようで、この国にも複数の領主が存在している。ただ……リリアナ姫の場合は国王とリリアナ女王の二人と結婚していおり、俺達の世界でも有名なのが3人でハーレム状態になっているらしい。この国は5人の公爵がおり……それぞれ領地をもっているようだ。その中の一つの領の領主を勤める女性が理香と親友のようだったが……。

俺は少し不思議に思い、そのことを聞くと理香の話では、理恵の父親は男爵だが優秀な騎士であったために出世して現在は公爵になったのだという。それで、元々住んでいた町を離れて、王都で生活していた。その後に理奈が生まれたそうで……。

理奈が産まれた後は……しばらく母親の実家にいたが……その母が亡くなり……父親に連れられてこの町に来たそうだ。理奈の母親は理恵が小さい頃に亡くなったらしく……その後はずっと一人だったという。そんな感じで俺が質問を繰り返していると……だんだんと……みんなが疲れ始めてしまい、話が進まなくなったのだった。

【作者のつぶやき】

2月12日13:00時点フォロワー300人突破です!!皆さん応援してくれてありがとうございます。感謝しております。今後ともよろしくお願いします。

★★★ 理沙「う~ん……。私も気になっていたのよ……。確かにリリアナ姫のお父さんと理恵ちゃんのパパとお母さんは同じパーティー仲間だったし……昔は仲良かったわね……。今はお互いに忙しくてあんまり会っていないけど……。理奈と理江も小さい頃からの幼馴染だしね……。そんな三人を見ていると複雑な気持ちになるけど……。それでも私にできるのは理奈を応援する事だけだから、応援しているの……。」と言ってくれた。

そして俺は「俺が聞きたいことはだいたいわかったから……。理奈、これからの事を話し合うぞ。俺はこの世界には残れないと思うけど、理奈には迷惑かけてしまうけど……頼む。一緒に元の世界に戻って欲しいと思っている。」と言うと、理奈もそれに同意するように「もちろんだよ!!私だって……この世界で暮らして行くのが大変なことも理解できているつもり……。」と言うと……リゼルが口を開く。

リゼル「じゃあ、私も……。リーゼとして、理奈ちゃんに協力すればいいかな?私としては、理奈さんにこの世界に一緒に残るように説得するのが一番だと思っていたけれど……。私は理奈ちゃんに協力するのが一番だと思っているわ。」と笑顔で言う。その顔はとても生き生きしていて……楽しそうであった。理香が、「リリスがそれでいいと言うなら良いのではないかしら? 私としても……。理奈ちゃんには理亜さんの事をなんとかしたい気持ちはあるんだけど……。正直、難しい話だからどうしたらよいか悩んでいるところだったから助かるし……。」と言いながら……少し安心そうな顔をする。

リーゼが俺の方を向いて言う。

理奈は嬉しそうな顔をするが、少し心配そうな顔をする。

俺はそんな理奈に対して……。「もちろん……お前の事を大事にしているし、お前の幸せのために頑張ろうとは思っているが……お前は理奈だからな……。俺はやっぱりお前が好きだけど……お前のためを考えると、このまま理亜さんの所に行く方が、幸せになってくれそうな気がしているんだよ。だから理香と相談して、リゼルとリゼルの母とで決めようとは思っていたんだ……。理奈は……まだ子供を産むような年齢じゃないが、リゼルは、今すぐにも子供が作れる歳だから……リゼルが、この世界に留まる選択を選ぶ可能性もあるかもしれないから……。でも……俺の勝手すぎる願いでしかない事はわかっているから……嫌だと思ったら言ってくれよ。俺が間違っている事なんだから……」

リーゼが俺の話を静かに聞いていたが……理奈に問いかけるように話し出す。

リゼル「リナは本当に、この世界に残るの?あなたはこの世界にいるべき人間だと思うの……。私の勘では、理奈とあなたの二人で元の世界に行けばきっと大丈夫……。私が保障します。だから……お願いします。私も……リリスちゃんと一緒で……あなたに生きていて欲しいのよ。だから……協力してください。お願いします……。」と頭を下げたのだった。それを見て俺達全員……驚いてしまう。理香と理恵の二人も同じ反応で、理奈に話しかけるタイミングを失ったようで戸惑っていた。

理奈は……リーゼの言葉に心を動かされていた……。「私……リリスちゃんのように強い覚悟はないの……。だから……この場では返事できない……。ごめんなさい……。でも……必ず結論はだすから……。」

俺も……リーゼと理奈の意見に反対ではない。俺の事を思ってくれての事だとは思うが、俺自身がこの世界に留まることを望んではいないのだ。俺は……リゼルに近寄り小声で話し出す……。

俺「俺はこの世界の事をほとんど知らない……。この世界の人が困っているのは理解できる。理奈もこの世界で暮らしているし、俺自身……理奈を一人で元の世界に残すことに不安を覚えないと言えば嘘になるが、俺のわがままだけで理奈を振り回すわけにはいかない。俺はこの世界では死んだ身なのだ。元の世界に戻れなくても……この世界を救ってみせるさ。」と言って笑うと、リゼルも笑みを見せる。

リゼ「そうよね。私も自分の事しか考えてなかったわ。リリスはね……この世界でずっと辛い思いをして、この世界の人たちに利用され続けてきたから、元の世界に帰りたがっていて、だから私もその手伝いをしたかったの……。リリスは優しい子なの。だからこの世界を救う為に協力はするけれど、自分の望みを押し通すつもりもないみたい……。でも、私は、リゼルさんも理奈も……両方助けたい。だから……今は……どちらとも答えられない……。ごめんね……。もう少しだけ考えさせて。」と言った。リゼルは……悲しげな顔で「そっかぁ……リリスはリゼと同じなのですね。私達は姉妹ですものね。でも……この世界の人の為に何かしてあげたいの。この世界の人達も好きで悪い人たちじゃないの。だからこの世界の為にできることはしたいの……。私もリリスとリゼルさんと一緒だから……。リリは私が守ります。この世界を救おうね……。リリはリゼと一緒にいてくれればいいのです。この世界の人は私が絶対に守りますから……。」と言うとリゼルは、涙をためて、理奈にすがりつくのだった。俺は、その様子を見ると少し寂しい気持ちになってしまうのだった。そんな様子を見たのか……リーゼが理奈に声をかけてくれる。

リリアナ姫「お兄様……。」リリアナが俺の方を見てきたので……俺は「俺のせいだからな……。リリアナが悪いんじゃない。この世界では、力がない者が淘汰される厳しい環境なのは知っている。理奈や俺をこの世界に呼び寄せるくらいの強力な魔道具を作った技術を持っているなら、他にも色々と出来るはずだから、それを試せばよかっただけだよ。この世界の人間は、この世界のルールがあるだろうが、俺やリリアナ達は、この国の民でもなければ……この世界の住人ですらないしな……。」と言うとリリアナは申し訳なさそうな顔を見せた。

俺は、理奈をこの部屋から連れ出して話すことにした。理奈が「あの……田中君……。私は、少しこの部屋から離れているね。その方がいいんでしょ?」と気をつかってきた。

俺は、「あぁ……ありがとう。少し頭を冷やしてくる……。」と言って理奈を連れて部屋を出た。

俺達が客間を出て行く時にリリアナが呼び止めようとするが……田中が止めた。俺は理沙達に、この部屋で待っているように伝え、理奈と共に少し離れた木陰のベンチで話した。

【作者のつぶやき】

2月12日14:20時点フォロワー300人突破です!!皆様応援してくれてありがとうございます。感謝しております。今後ともよろしくお願いします。

俺は……田中の顔を見る。すると田中が言う。「お前さ、なんつーかさ……。リリアナは……お前の親友だったんだろ?なのに……お前はどうしてあいつが傷つく事ばかりを言うんだよ……。もっと……こう優しく……言えないのかね……。リリアナの事を思っての言葉なんだろうが……あれは……あまりにも酷すぎじゃないかね……。リリアナも、泣きそうな顔していたよ……。お前の優しさは……残酷なのか?わからないけど……。俺は……そういうやり方は嫌いだ……。」と俺に文句を言い出したのだった。俺は「まあな……。」と言って……少し沈黙した後、「俺はね……親友だからこそだよ……。俺にだってね……言いたい事はあるけどね……。だけどね……今の俺はこの世界の勇者じゃなくなっちゃったからな……。」と苦笑いをしながら答えると……。「お前……バカだな。お前の事は俺が守るし……理香も理恵も守っているぞ……。それに……俺の彼女達もみんなお前が好きだぞ……。」と言って俺の胸を叩いてくる。

そして「それに……俺がこの世界に残った方がリゼは喜ぶと思うんだ……。俺がいなくなる事で理沙ちゃんと理香ちゃんが、この世界に残りやすくなると思っているから……きっと……。」と言う。

俺は……「そんな事はないと思うが……。」と言うと……。「俺が、もし元の世界に残れたとしても……リゼルもリゼルの母さんもいるし、この世界の事を何とかしてくれるんじゃないか?それに……俺には……この世界でやりたい事とか、叶えたいと願う事はないんだ。俺がこの世界に来る前の生活に何の不満もなかった。理紗と理奈がそばにいて……それで満足していたんだよ。俺にとってこの異世界での目的は……。理奈が元の世界に戻るために頑張ることだったし……。リゼルが言った通り……理亜さんをどうすれば良いかだ……。俺はこの世界に留まっても役に立たないし、何もしてあげられないと自分では思っている……。」

俺がこの世界に居続けることに対して否定的な発言をした事がショックだったのか……少し暗い表情になってしまった。俺の言い方に怒っているのかと思い……フォローするように言う。「お前の言ってくれたことに関しては、とても嬉しかったんだよ。この世界に俺が必要だというのなら残ることも選択肢の一つになるからね……。」

俺の言葉を聞いた後、俺の手を握ってきて、自分の方に寄せて俺の目を見て言う。「そうやって……無理するな……。俺はお前の味方だし……。俺は理亜さんにも会いに行ったことがあるから知ってる。理亜さんの事を思えば、リゼの母であるリーゼに協力してもらうことが正解だとわかるんだ……。でもな……それは……この世界を救いたいという気持ちからではなくて……自分の大切な者を守りたいっていう理由なだけだよ……。俺は、この世界を良くしようだなんて、思ったこともないんだ……。ただ、俺に好意を持ってくれている人がいる。俺のために行動してくれたりしているんだ……。そんな人たちを見捨てる事はできないし……。だから、この世界の為に何かをしようと考えても……それができない自分が嫌だったから、だから俺が元の世界に帰れるように理沙ちゃん達と、この世界の為に頑張りたいと考えていたんだ。この世界の人に、迷惑をかけてでも……この世界にいたいって考えたことは一度たりともないよ……。だから……理沙ちゃん達には悪いけれど……理沙ちゃん達の為にも、リゼルに協力してもらえないだろうか……。リゼに協力して、理沙ちゃん達と一緒に、この世界から脱出できる方法を見つけてくれないか?」と頼むと田中は納得したのか……笑顔になって……。「そうだな……。俺はリゼルに協力する事にするよ。俺は……リゼの母親の事はよく知っているつもりなんだ……。リゼルに協力してあげて欲しい。リゼの事を任せて欲しい。理香も、理奈も……そして俺自身も……。理奈の件は任せてくれ。リゼの事を頼んだ。」と言って握手してきた。

*

***

リゼルは……客間でリリスと二人きりになり……リリスの話を聞いたのだが、リリスは泣いていた。「お姉さま……ごめんなさい……。私が弱かったばっかりに……ごめんなさい……。私ね……。私……やっぱり、リリがお兄様の側にいる方が良いと思ったの……。私は……私にできることを探しながら……この世界の人達に尽くしたい……。リリにばかり苦労をかけるのも申し訳ないから……。

でも、ごめんね。リリがお兄様のことを好きでいてくれるって事も分かっているけれど、それでも……私にとっては、大事な家族だから……一緒にリリを支えていきたかったけれど……。もう……遅いよね……。」

リゼルが……リリスに近づいて……抱きしめた後に頭をなでて言う。

リゼル「リリスは優しい子ですね。私の心配をしてくれているんですよね。大丈夫です。リリは、これから先も、私の妹ですからね。ずっとずっと大事なお友達で姉妹ですからね。私に何かあった時には……リリに頼りますね。リリスが私を守ってくれるんですから……。」と言うと…… リリスは、また涙を流し始めて……

「うん……。私……私……。私……この世界に来てからずっと不安で……寂しくて……。」と言うとリゼルが、「リリスは強い子ですね。私がこの世界で一人になっても……一人で頑張っていましたもんね。」と言うと、リリスは首を横に振った。リゼルは不思議そうな顔をすると……

「私は……強くありません。リリの方が辛い思いをしてると思って……。リリが寂しい思いをしているのを分かっていても……。私はリリが大好きなのです。リリの幸せがリリがお兄様と一緒にいることが、お兄様がリリの側にいて下さることがリリの一番幸せなのです。だから、だから……。私はお兄様の為にリリとリリアナさんを、助けようと思うのです!」と言った。リゼルは驚いた様子で……リリを見る。リリスは、涙が止まらなくなり、しゃくり上げて……声を上げて泣いたのだった。

【作者のつぶやき】

2月12日14:30時点フォロワー500人突破です!! ありがとうございます!!今後ともよろしくお願いします!! 2人は泣き止むまで待ち……泣き終わったところで、今後の話をすることにした。

俺は、田中との話し合いを終え部屋に戻り……理奈を抱きしめて、頭をなでてあげたのだった。理奈は、嬉しそうにしていたので、少し安心したが……俺の心の中には、やはり、田中の言葉が突き刺さっていた。

(俺は、理奈達が無事に元の世界に帰れるように……協力する事を最優先にしている……。だが……俺は、本当にそれでいいのか?理奈が望む事を俺はしてあげることができるのだろうか……。)と考えながら……俺は眠りについたのであった。

翌日、俺は理奈を連れて『リリアナの家』に行く。理奈が「ねえ?昨日のあの人、リリアナちゃんって名前だったんだね?リリアナちゃんは元気にしてるかなぁ……。理亜ちゃんも……。きっと今頃泣いてると……思うの。私達を助けてくれたんだもの……。絶対に、絶対に、死んじゃだめなの!!」と言い出したのだった。俺も「きっとリリアナのやつは元気だよ……。きっと理奈や俺達の事を心配してると思うけどな……。それに、リリに聞けばいいだろ?」と笑いかけたのだった。

理恵や田中が迎えに来てくれた。田中が「なんだよ!二人で来てくれればいいじゃないか!!なんなんだよ……。」と言っていたのだが、田中の方を見ると少し嬉しそうにしていて顔がニヤけていたのでスルーした。俺は「おはようございます。今日は、どうしましたか?」とリリアナに聞くとリリアナは笑顔で……「あははっは……。ちょっと、お母様に頼まれてね。君たちの面倒を見てほしいと言われたんだけど……。」と言う。理恵が「そうだったんだ。私達は特に用事がないから良いよ?ね?理香ちゃん。」と同意を求めると理香も、うなずいた。リリは、うなずくと俺の耳元で言う。「この子は理奈さん?可愛いじゃない。あんたがロリコンだと知ったときは引いたわ。でも……この子があんたにとって特別な人って言うのは理解したわ。それにあんたの事が心配だから見張ってくれとも言われてね……。でもね……あんたが、この子に惚れているみたいだから応援するって言っちゃったからね……。でも、私達には、まだチャンスがあるわけだし……。諦めちゃ駄目よ……。」と俺に言い放ったのだ。

俺が、困った顔をしていると、理恵が……「あら?理亜ちゃんのお世話をしてくれるなら助かるし……一緒に暮らしてもらった方がいいと思うんだけど……。だって……もしこのまま帰して理亜ちゃんが殺されたりしたら嫌でしょ?」と言ってきた。

俺は……「確かに……そうですね。それじゃあ……俺の家で暮らしませんか?」と言うとリリは「いいのかい?こんな綺麗どころに囲まれて生活できるなんて、男冥利に尽きるねぇ……。」と言っている。俺とリリの話が終わったところで、田中が割り込んできた。

田中はリゼルの事を思い出したのか……真剣な顔になり、俺に向かって「なぁ……。お前、この世界に来る前に、自分の両親に手紙を書いていないだろうな……。この世界は、お前の想像しているより危険なところだぞ……。」と忠告されたのだった。俺が驚いていると……理沙が言う。

理沙が……俺の手を握って言う。「太郎くん。私のために、お母さんとお姉ちゃん達を生き返らせてくれたのに……今度は私のためにリゼちゃんを救おうとしているの……。私の我ままだけれど……でもね……。太郎くん……私の事は気にしないで……もっと自分を大切にしてよ……。私の事で太郎くんに辛い思いをして欲しくないから……だから……お願いだから……。自分を犠牲みたいな考えをし過ぎだよ……。私もね……お姉ちゃん達の為にこの世界に来たんだよ。お兄ちゃんがお姉ちゃん達に言った言葉と同じだよ……。私もお兄ちゃんの為だったらなんだってしたい……。お兄ちゃんが辛い思いをしている姿なんて見たくはないから……。お兄ちゃんは、私と会えたことが奇跡的なことだと思うから……そんな事を言っているんだと思うけど……違うの……。私にとっては……お姉ちゃんや、妹、理沙に……お父さん、お母さんと会わせてくれているから……。その恩返しをさせて欲しいの……。」と必死に訴えてきたので俺は、涙が出そうになったが、グッとこらえて……俺も……俺の思ってる事を二人に言うことにした。「なぁ……。俺はさ……皆が幸せなのが一番良いことだと思ってた……。そしてそれは……親父が……俺の母さんと……お袋が死んだ時に……誓ったんだ。俺は、母さんと……お袋の分まで家族を守る……。家族は絶対に守って見せる……。でも……今は理紗が側にいるだけで幸せだけど……もしもの時は……この世界に未練はないだろう……。俺は、自分が一番大切だと思わないから……。」と言って……俺は、二人を抱き寄せてキスをする。そして、俺は、2人の頭をなでて、もう一度強く抱き寄せるのであった。


* * *

******

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【次回予告】

リゼルとリリアナと一緒に暮らすことになったのだが……。

リゼルに……「リリアナに聞いたのだが……勇者は……他の世界で恋人を作れないようにされているんだろ?お前が、元の世界で彼女を作っていたら問題になってるかもしれない……。まぁ、私はそういうことは気にならないけどね。ただ……勇者が元の世界で女を作るという事はそれだけリスクを伴う行為だということを忘れてはいけない。」と言われる。

そして、理恵と理香もリリスと仲良くなる。

2月13日12:10時点フォロワー800人突破です!! フォロワーさんが増えて本当に嬉しいです!!ありがとうございます!! 田中は、少し複雑そうな表情をしていた。

理恵と理香とリリスの3人は、この世界の事を知らない俺にいろいろとこの世界について説明をしてくれている。理恵と理沙はリリに色々と聞いているようだった。俺はリリスに、この世界での生活のアドバイスを受ける事にした。この世界で生きていく為の知識がないので当然のことではあるが……。俺の事をリリスとリリアナが見ていると……。理恵と理香は、なぜか顔を赤くしている。何かあったんだろうか?リリスとリリアナが楽しそうに喋っていると……。理紗が、二人の会話を割って入って来て……リリに話しかける。「ねえねえ、リリアナちゃんって何で『聖魔剣』とか使えるんですか?」と言うと……「あぁー。これかい?私が、『魔王討伐軍』に入ったのは、君たちと会う1年前になるんだけどね……その時は私は16歳だったんだよ……。私が『魔剣 黒影』を使いこなすようになったら『闇神ラピスの加護』を得たんだ。それからは、私に攻撃してくるものは誰もいなくなったね。『勇者殺しの悪魔』と言われてるけどね……」と言うと話し終わる頃にはみんなの顔色が曇り始めたのだ……。俺は話の内容がよくわからなかったが、リリカが、「そっかぁ……やっぱり私たちの世界でも『魔獣人』だったんだぁ……。私は、お姉ちゃんと、理香の三人姉妹なの……。でも……私たちは……理香以外は、理奈と理恵のように、特殊なスキルを持って生まれたんだ。それが、お父様の趣味ってのもあって、私たちは毎日、実験されていたの……。でも、リリアナちゃんも理奈も無事でよかった……。理奈、これから大変だとは思うんだけど……お願いします。リリアナちゃんの友達でいてくれるかな?」と理奈に向かって頭を下げて頼んでいた。

理奈は……「リリアナちゃん……大丈夫?理奈だよ。私ね……。実はね……。」と理亜に自分の事情を説明し始めるのだった。するとリリアナが理奈の頭をなでて……「いいよ。そんなの……。私だって、みんなとは仲良くしたいと思っているし……。私も、理奈に助けてもらったんだ。理奈が居なかったら、私はここに来れなかったと思う。きっと、私だけじゃなくて、理奈も理沙も……理奈のお姉ちゃんの理恵も理彩もこの世界にはいなかったと思うの……。

私と友達になろうよ……。ね?」と言ったのだった。俺もリリナの横に座り……理奈に「リリナやリリアナと出会って……この世界に来て……本当に良かったと思ってる。リリアナやリリナに、出会えていなかったら、俺はまだあのダンジョンで戦っていただろうから……リリアナは、俺の命の恩人だ。俺からも……リリアナと、理沙を助けてくれてありがとうな……。」と言うと、理奈は「ううん。お礼を言いたいのは私の方……。理奈と、理香に……会えただけでも、嬉しかったんだから……ね。」と言って俺に笑顔を見せたのだった。

田中が、俺の方を見ていたが、無視をした。

俺は「リリアナさん、質問をしてもいいですか?どうしてこの国には『魔族』、『人間』『亜人種(魔物)』、『獣人』、『妖精』などいろいろな種族がいて、差別もされていないのですか?普通に生活しているようなのですが……。それに、俺には信じられない事が起きているんですよ。ステータス画面を開いて、見てください。レベル99になっているみたいなんですよね……。俺のレベル上限って999だったはずなのですが……どう思いますか?」と聞くとリリアナは、「あぁー。お前は、この世界に来たときにこの世界の住人じゃないから、ステータス画面を開くことができないみたいだな。まぁ、私も開いたことが無いが、ステータスは確認できないだろう?それと同じさ……。私の場合は自分の力を確認する為にステータス画面を何度も開いて見ていたから、覚えていただけだ。ちなみにだが、私の称号にも『元の世界からの来訪者 異世界から来た者の救世主 魔王の盟友』って表示されているからな。」と言っていたので俺は驚いた。

(俺は……リリの言葉を聞いて……この世界ではステータスを見ることができても表示はできないようになっているのではないかと思ったのだった。もしかしたら俺は、自分の力でステータスを見る方法を見つけるしかないのか……?それとも俺が……「勇者」だから……俺に特別な事ができるようになるのか……分からない……。)

俺が、考え事をしている間に、田中と理沙と理姫と美姫と里姫と理紗は仲良くなったようだ。「そういえば、お姉ちゃん、お腹空かない?何か食べるものを探さない?」と言う理紗に対して、田中が、理紗に話しかけた。「その必要はないよ。理紗……。さっき理香から話を聞いたよ。君のお兄さんが……食べ物を召喚できるみたいなんだ。」というと、理紗が俺をジト目で見て来るので、俺は……『アイテムボックスからおにぎりとカップラーメンを出して、みんなに配った。

俺が「さてと……。俺は少し、やることがあるので……また後で……。」と言うとリリナが「おい!私も手伝わせてくれ!」と言って来たが……

「ダメだよ……。リリ……。この国は……俺達『魔族』の国なんだ。俺達がリリと一緒に行動するのは、問題が起きる可能性もある。俺に任せて欲しい。」と言うと俺はリリをリリアナ達の所に連れて行き、「理紗。君なら分かるよね……。この国の王様の所に行こうと思う。俺の知り合いで、俺の仲間がいる。まずは、この国のトップに会いに行く。」と言って……俺はリリに念話を繋いだ。

俺は「今から行く。着いたよ……。開けるね。」とリリス達に話しかけて門を開けた。

「「え!?なんで??」」「リリアナちゃんとリゼルさんの魔法で……。」「さっきまで私がいた場所は、どこにもなかったのに……。」「リゼル……。君が言ってたのは……この事だったんだね……。すごいなぁ……。」と言うリリサと理紗とリリスの声を聞きながら……俺は門を開けると……リゼルとリリアナとリリシアが歩いてやって来た。

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***

リゼッタは、リリが連れてきた男を見て……「リリ……あんたが、ここに来たって事はそういう事かい?」と呟くと……「そうだよ。こいつは私を負かして私を救ったんだよ。こいつが居なかったら……私も理沙も理香も死んでたんだからな。だから、これからは、私達はこいつと一緒にいることにしたからな。」と言い出した。

するとリリシアが……リリを指差して……

「リリさん……貴方ねぇ……。もうちょっと言いかたがあるでしょうが!!全く!!それで……あなた達は誰なの?私は、リリスです!!この子は私の妹のリリシア!!」と大声で自己紹介を始めたのだった。俺はリリに……「俺は、高橋 亮太郎。よろしくね……。」と握手をしようとしたのだが……「あぁ……。それは必要ないな。私はリリでいい。リリアナとは、リリアナが赤ん坊の時に出会っている。私はリリアナの母親でもある。」と言うのだった。

俺が、リリの手を握ると……。突然リリが光り出して……。俺は眩しくて目を閉じたのだったが……気がつくと目の前に俺が知らない女の子が現れたのだ。見た目的には10歳ぐらいの銀髪の少女だった。

そして、彼女はこう言うのだった。

「我が名は『闇神の加護』を持つ『魔王』のリリ。リリシアは『闇神ラピス』が与えし『魔剣』だ……。私には『魔剣 黒影』と言う名があるが、好きに呼ぶといい……。」

と言うと俺に抱きついて来たのだ。俺は「あ……あのー。離してくれるかな……。」と言ったのだけど、一向に離れないので困っているとその少女は「すまない。お前がリリナに私を助けてくれた人なのか?」と俺に問いかけるのだった。俺は……(この子……まさか?いや……確かに俺の魔力に反応して……現れたよな?リリは……)と思いつつ……

「リリはリリアナさんのお母様なんですね。お会いできまして嬉しく思います。」と言うとリリシアが、「お母さんじゃないですよ……。私の本当のママじゃなくて義理の母親です。リリの本当の名前は、リーア・アルスフォーニ。『魔王』としてのリリの名前はリリアナと同じリリ・アルストロメリアだよ。ちなみに、この国にいるリリアナちゃんも私の娘だよ。この二人は双子なんだ。」

「リリスちゃん……ごめんなさい。私はリリアナちゃんの友達の理沙と理香と理姫と里姫よ。私達も、理沙のお兄ちゃんのお嫁さん候補の一人になるの。この人は理沙のお兄ちゃんで……。理奈のお父さんの……理人よ。」と4人もそれぞれ自己紹介したのだった。

(この子……。俺の事を気に入ったの?俺に抱きついているから俺に話しているみたいだな。)

するとリリは、リリスに近寄って行って小声で話し始めたので……俺には全く聞こえなくなってしまったのである。俺が「俺……何か気に触る事をしたの?」と思っているとリリが、俺の元に近づいて来て、俺の腕にしがみついたまま……

「大丈夫だ。私が側に居るから心配するな……。」と言ってきた。

俺は「分かった。」と言うしかなかった。

俺の横に立っているリリシアも何故か俺の横に立っていたのだった。

俺が「君は俺の味方になってくれるのか?『勇者』と戦う事になるぞ……。」と聞くと、リリシアが、ニヤっと笑みを見せて俺の頬にキスをしてきたので俺はドキッとして顔を赤くしていたら……。リリスが、俺の顔を見ていたので俺は慌ててリリスの頭を優しく撫でると……「むぅーーー。私には、あまりしないでください。恥ずかしくて死にそうなの……。でも嬉しい……。理奈と理紗にもお兄さんを取られないようにしないと……。理紗はライバルが多いから……。」と小さい声でボソッと言っていたので、俺は「うん?何??良く聞えなかったんだけど……。」と聞いてみたけど、「なんでもないです。独り言なので、忘れてください。それより……。これからどこに行くつもりですか?リリが、ここに来たと言う事は……何かあったのですよね。」と質問をしてきたので俺は、「あぁ……。そうだな……。とりあえず、王様のところに行かないと……。リリがここまで来た理由を説明して、協力をしてもらわないとならないからね。俺の仲間のところに行って、これからの方針を話し合うから、君達も一緒においで。俺は、リリ達をリリアナ達の所に案内したらすぐに戻るからさ……。」と言うと、リリは「仕方が無いな……。リリ達を連れてきてしまったからな……。」と言っていたのであった。

俺がリリに、この世界の状況を説明した後でリゼルが復活した事を伝えた。そして俺は……。この世界の住人でないからレベルが2なのに……ステータス画面を見ることが出来ないことを説明して、「田中が勇者召喚をされた時に、ステータス画面に表示されていたらしいが、俺の時はステータス画面に何も表示されなかったから……。ステータスを見る方法があると思うんだが……何か知らないか?」と言うと、リリが……「そう言えば……さっき理沙から聞いたんだが、お兄さん……君の世界は、君が死んだ後に女神様に、生き返らせてもらえたんだってね……。それでさっき……私も見たよ……。」と言うので俺はリリに確認してみた。

俺が「その事なんだけど……リリも……俺と同じように、この世界に転生したんだよな……もしかして……『魔族』の国にいたのも……それが関係あるのかな……。それにしてもよく生きていられたよね……。」と言うと、リリアナが「多分だけど……。リリアナ達が君に会った時のように私達もこの世界で蘇ったんだと思うよ。君と理奈と理紗の場合は違うみたいだけど……。」と言うので俺は、「なるほど……。リリが、『魔人王』、『吸血鬼王』で理香が『鬼神 紅蓮』だったのは偶然ではないのか……。」と思っていたら……理紗が……「あのね……。お姉ちゃんから聞いた話だと……『魔神の呪いを受けし者 理沙の生まれ変わり』っていう称号があったんだって。それのせいで私は、前世の記憶が少しだけ残っていてね……。理紗も……お義母さんの話をすると懐かしがるんだ。あと……私達って、みんな理沙の妹だったんでしょ。」と教えてくれたのだった。

俺達は理沙の言う『理香』が理沙の前世であることを思い出しながら話をして、それから、理沙の実家に向かうことにした。

**

***

私の名前は、里姫と言います。私達は『里村 彩夏』と言います。私達は理姫さんが居なくなった後にこの『アルスフォーニ王国』の王城の地下にある宝物庫の中で倒れていたところを保護されて……その後、この王国の第一王女様であるリリシアに救われて……今はリリスと言う少女と一緒にリリアナの侍女をして過ごしています。リリシアがこの国の王女なのは、私達に魔法で調べてもらったときに判明した事だったので驚きましたが、私も……理紗ちゃんも……理奈さんも理人くんと結婚したら自動的に王女になれると言われていて、私はリリシアの事を信用出来る人だから、私達は喜んで受け入れることにしたんです。私達は、リリスさんに、私の知っている限りのことを話してあげて……。理紗ちゃんの事も、私の前世の記憶の事を……。そして、理奈さんは……。私が、理奈さんのお母さまと姉妹だった事がとても嬉しかったみたいなんです。私は理香ですが……実は私の実のお父さまも、理沙お母さまの実のお父さまだったらしくて……。それで、お二人の本当のお母さんが……私に会わせてくれた時に……。私の事を知っていてビックリしていたんですよ。私が……

「貴方が……もしかして……私の……?」

「えぇ……そうなのよ……。理香ちゃんは……本当に……理沙ちゃんそっくりで驚いたわ……。あの頃は、この子の事を娘にしたいと思ったけど……理沙ちゃんには……旦那さんがいて……。そして私にはこの国があるから……。」

と涙ぐんでいたのを見て、この人は……きっと良い人なんだと分かったので私は、

「私は……私と血が繋がっている人を自分の両親以外には知らなかったから、今日、貴女と初めて会えて凄く嬉しく思っています。これからは……よろしくお願いします。お母様。」と言ったらお母様は、大粒の涙を流し始めてしまって……泣き止まないので……お母様の頭を優しく撫でてあげたの。そしたらお母様は、急に大声を上げて大泣きしながら……。

「うぅっ……。理沙ちゃんの優しい所や笑顔や仕草や優しさは全部……。全て、私が大好きだった……。私の本当の娘の理菜ちゃんにそっくりよ。」と言ってきたので、私が「理菜も……理沙も理香と同じ名前の人だったんですか?」と聞くと……「理沙ちゃんがこの国に来る少し前の話で、まだこの国には……私と理沙さんの姉妹は二人しかいない頃に……一人の女の子が生まれたのよ。その子が……今の……あなた達ぐらいの歳だったと思うわ。」と言ってくれたの。

「私達と同じくらいの子なんですね……。」と私と理紗が同時に同じことを言うと……。

お母様が私達の顔を見ながら……。

「あら?もしかして……今の話の流れで……この子が理沙ちゃんなのかしら?? それともこの子は……理沙の……生まれ変わりなの……?まさかね……。」と驚いていたので、理奈が……。

「あの……。その……。私は……理奈といいまして……。理紗のお姉ちゃんなんです。」と慌てて話すと……。お母様は……「理奈ちゃんって、もしかして……。私とリリが、リリアナを救いに行くためにこの城を出発した時に……。リリが助けて来てくれって頼まれた男の子の名前じゃない?」と言うので私が「その話……。詳しく聞かせてください。その話……。知りたいのです……。お願いします。」と言うと、お姉ちゃんは、「あっ!!そうだった。忘れるところだったよ。理香が理沙と双子だなんて、今まで全く分からなかったもん。それに……。私が話したリリは『魔人王』って言ってね。本当は魔人じゃなくて、『魔王』なんだけど……この国は……元々『魔族』が住んでいた国だから、昔は、『魔族』の国って呼ばれていたの。で、リリが言うには、私は、『魔神の呪いを受けし者 里村の生まれ変わり リリの生まれ変わり』だって。それで私達を助けてほしいって言われて来たの。でも……お義母さんとお義父さんも……。リリに頼まれて助けに行ったけど……結局……死んじゃったの。それで……リリも行方不明になったんだよね……。理奈と……この子ならリリもきっと喜ぶだろうね……。」と言うと……。私はリリが行方不明だったことを初めて聞いて、私に何か隠してるんだと思っていたから、お姉ちゃんの話を聞いたら、私にも……少しは何か隠している事があったんだろうなって思った。

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* * *


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俺達は『アルスフォーニ王国』の王都にあるリリアナ達の家に向かって歩いている最中だった。俺と田中とリリアナが一緒にいる。そして……俺は、田中に鑑定をかけていたのだが……。どう考えても俺よりも強いステータスだったのだ。田中の持っている『勇者神の剣』は……

『勇者神 職業 大勇者』となっているのを確認した後、田中を改めて鑑定をすると……

名前:田中

勇太 レベル:50(+3)

種族:人間(魔族・エルフ族とハーフの可能性有り。

年齢:20歳

性別:男

生命力:15/150

(1050アップ 能力上昇 全属性耐性強化付与)

魔力

:250

/750 攻撃力:255

俊敏力:200

運:120

知力:100

技能 :『勇者神の盾』

スキル 言語変換機能 経験値増加機能付き 自動体力回復魔法 自動状態異常回復魔法 アイテムボックス

『女神の加護』

***この数値を見る限りだと、俺がこの世界に来てから、俺は、自分のスキルを一度も使ったことはないが……俺の方が確実に強いのは確かだと思う。それにしても……俺が『創造の魔眼』を使った時には、魔素とかそういう類のものが感じられたのだが……今は全然そんなことはなくて、むしろ空気が澄んでいるような気がした。この世界の環境は地球上のものとはかなり違っていると思うが……。

俺はリリアナの方を向くと、

「リリアナ……。お前さ……。魔素が無くなったように感じるんだけど……。気のせいかな……。それとも……やっぱり俺が魔素を使って、この辺りの大気の状態を変えてしまったんだろうか?」と質問をする。するとリリが、「いや……違うと思うよ。リリはずっと魔素が無くなっていく感覚を感じているんだ……。でも……。君がこの世界で色々やり始めると……もっとひどくなりそうなんだけど……。君ってば、『創世』でなんでも作ってしまうから、どんどん、魔素が少なくなってきているんだよ。」と言っていたので、俺は、田中の方に視線を移すと、田中は不思議そうな顔をしていたので……「なぁ……あんたは一体何者なんだ?ただの冒険者ってわけじゃないだろう?それに……」と言ってリリの方を見ると、リリは俺の言葉を引き継ぐかのように話し始めた。「そうだね……。まあ……簡単に言えば君は……。こっちの世界ではありえないレベルの魔力量と、攻撃系の全ての能力を持ち合わせていて、おまけにレベルまで上がっていて、さらには技能のレベルが上がっている。それに……。君の持っているスキルもおかしいよ!僕達でも、こんなスキルは見たことが無いし……。」と話してきた。

リリに指摘されて俺は考えた……。

確かにこの世界には俺のような人間は今までいなかったみたいだから驚くのも無理はないと思った。それに、もしかしたら……異世界転生ものなんかにはよくあるけど……前世の世界の記憶を持っているのは普通に居るのかも知れないと思ったのだ。リリの話では、俺の能力は普通の人の比にならないほど凄いらしい……。特にこの『勇者神 魔法剣士の鎧』はとんでもないらしくて……。なんと『魔剣グラム』並みの性能で、しかも……『英雄王』の称号持ちが持つような武具に匹敵する強さを持つと言われているらしい。さらに……『魔法の矢』のスキルもあるので……かなりチート装備なのである。しかし……この世界での「常識」を知らないと……とんでもないことをしでかしてしまう可能性もあるので、これからの行動を慎重にしないとダメだと自分に言い聞かせる。

そして……田中が……リリアナに何かを話していた。俺はその二人の話を立ち止まって聞いていることにした。田中がリリアナに対して話したことには衝撃的な内容がたくさん含まれていたので、俺としては聞き逃せない情報が多かった。そして、その会話の内容を要点を纏めると…… リリアナは『魔神の呪いを受けし者の1人』であることと、魔族と呼ばれる一族で、『魔神の呪いを受けし者は、本来なら死ぬ運命だったのを、魔族の祖先である初代魔王に救われ、子孫を残すために生まれた』という話をしていた。

そして田中も元々は……『魔族の奴隷にされていた一族の出』だそうで、今現在……田中の父親が生きているかどうかは不明だが……『魔人族の長』として君臨していることは確実だった。それに田中は……『魔族とのクォーター』ということだったが、田中の話によると……『魔王の一族は……代々、髪の色が変わる』らしく……魔人族は黒と紫なのだという。つまり……魔王は『闇落ち』した存在だということなのであろう。しかしリリアナが言う『魔王』と……この世界に召喚された「勇者」とは同一人物なのだろうか……?その辺はまだ分からないが……。田中の話から察するに……リリアナも『魔王の娘』なのは間違いないだろうと思う……。しかし俺は……まだ、田中の話を全て信じることは出来なかった……。田中には申し訳ないが……この世界の事を詳しく知っているわけではないし……。もし仮に田中の話が事実だとしたら、なぜ『田中が魔人族のクォーター』だという情報が『この国の人間』の中に知られていないのか? その疑問が残っていたからだ。もしかして……リリアナかリリのどちらかが……。もしくは両方が……。意図的にその事を隠していた可能性もあった。

リリアナの見た目が、人間そのものなので……リリアナを見れば分かるのだが……この国の人々は皆、髪の毛の色が黒に近い色のようだ……。もしかして……リリアナ達魔族とこの国の人々の間での差別みたいなのがあるのかもしれないと俺は思う。俺の考えが合っているのなら、魔族と人間のハーフの俺と……魔族と獣人が結婚した時に生まれる子供がどんな風に扱われるのかが気になるところだった。

そして田中とリリアナが俺達の方へ歩いてくる。そして俺に話かけてくる。

「勇太。この人は……魔人王だぞ!」と言うと俺はリリアナを見て驚いた。俺はリリアナが魔族だなんて思いもしなかったからである。しかしよく考えてみると、俺がリリアナに初めて会ったときに、リリアナがリリの『お姉ちゃん』って言ってたから……『魔人族』が人間社会で暮らすためには、『姉と妹の振りをしている』と考える方が自然な気がした……。でも、それでも、魔族が……『この世界』にいるってことにビックリした。俺はリリに……魔族がいるのは知っていたが……まさか『リゼ』の故郷にいた魔族の生き残りの子孫だとは思わなかったと話すと……「ごめんね……。私がこの世界を混乱させてしまっているんだ……。」と謝ってきた。すると……。「ううん。私達が『魔王』を復活させてしまったんだから……私達は魔族を束ねて……もう一度、この世界が平和になるまで戦い続けなければいけないと思っているんだ。だから……。君にも手伝ってほしいんだ……。」とリリが俺達に言ってくる。すると……田中が「いや……。僕は君に負けたよ……。この国に……リリアナを倒せる人間はいなかったし……。僕じゃ君に勝てなかった……。僕の命は……。もう君のものだ……。だから……。この国がどうなろうと……。リリアナの好きにしてくれていいよ……。」と言う。そして田中は……自分の胸に右手を近づけると……。田中の手が光り輝き、田中はリリアナの方に向きなおすと……田中の左手は胸に当てられていて……田中は自分の胸の中から……銀色の輝く剣を抜き出した。

俺はこの剣に見覚えがあった……。なぜなら……田中が自分の心臓を突き刺したあの剣と同じものだったからである。田中はその剣の刃をリリに向けていた。俺には何が起きているのかわからず呆然としていたが……。俺はハッとすると……田中に飛びかかり、強引に剣を引き抜いた……。剣を抜かれた途端……田中が苦しそうな表情をした。田中から剣を奪うことに成功した俺は、すぐに、田中の傷口を回復してあげた。田中はすぐに元気になり立ち上がる。

俺は……自分の『固有スキル』の『創造の魔眼』でこの『魔剣』を調べることにする。すると……

名前:勇者神の盾(真)

所有者:勇者

詳細 :使用者の魔力に応じて防御力が上昇する『盾の魔道具』。魔力量が強ければ強いほど……その盾の持つ力が強くなる『勇者の盾』の真の姿であり、勇者の魔力によって、あらゆる攻撃を跳ね除けることができる『最強の盾』である。

この盾には、俺の持っていた、俺にしか使うことのできない魔道弓「アルテミス」と同等の能力があるようで……。俺は、リリの方を見る……。リリが持っている剣も同じ『魔剣グラム』に匹敵する能力を持つ『伝説の魔剣』であるらしい……。そして……。『剣の魔剣』と、『盾の魔剣』はお互いに呼応するように共鳴していて……お互いの武器の能力を高め合うことが出来るようである……。これは……。この世界で最強の『勇者と魔王』の組み合わせのような気がした……。

それに……田中の話では、この魔剣の『鞘』は、俺の持っている剣「アルテミシア」の刀身を入れることができる大きさらしい……。ということは……俺は……この世界の魔族の救世主になってしまったのかもしれないと……ちょっと嬉しい気持ちになった。でもこの魔剣は『魔素を吸収する性質』があるので、この辺りの大気の状態を変えるくらいの威力がある俺の力を吸収してしまうのでは……?と思い俺は心配していた。

「ねぇ……。リリ。君がこの世界に召喚されたのは……いつ?」とリリに向かって質問をする。すると……。「私のお父さんが殺された時に、私もこの世界に呼ばれたよ……。私は……勇者として……」と言いかけた時、田中が……。リリアナの肩に手を乗せて、「もう……そんなことは忘れなよ。君のお父さんが死んだときもそうだけど……。君の両親が殺されたときのことだって……。君は魔王の娘だったとしても、今は、リリだよ。だから……過去の事は忘れなよ……。」と言った瞬間……。突然リリの目から大粒の涙が溢れ出してきて……俺の服に顔を埋める……。

俺は……リリのことをギュッと抱きしめてあげると……。リリスは少し落ち着いてきたのか……。

「あり……がとう……。ありがとう……。私も……。貴方の事を信じているから……これからよろしくお願いします。勇者様……。リリです。本当に、リリと呼んでください。勇太さん。」と言ってきた。俺がリリと呼ぶと、とても喜んでくれていた。俺は……『鑑定の職業石』を使って、リリがこの世界にきた時の年齢を確認すると……やはり……。リリはこの世界で10才のときに……リリの両親と一緒に殺されていたようだ。しかも……『魔王の一族である』という理由から……リリ以外の家族も皆殺しになっていたみたいだ……。

リリが、この世界に来たときに、田中一平はリリを助けたらしい。そのあと、一緒に行動をしていたようだが……魔王の一族ということでリリを狙う魔族が現れてしまい……そのせいでリリと別れ離れになってしまっていたそうだ。それからずっと一人っきりで戦っていたという事なのだろう……。リリも田中には恩を感じていたようだった。

「さてと……じゃあ……。とりあえず……宿屋に戻るか!」と言うとリリも田中も笑顔で答えてくれた。

俺と田中は、『女神と邪神』が作り出す『空間』について、何かわかることがあるかもしれないので、リリに付いて行くことにした。田中の話しによると、この国には今現在、勇者神はいないようだ。勇者神がいることで魔王の一族が、人間を滅ぼそうとしたりすることはなくなるらしい……。なので……。俺は、リリの願いを聞き届ける条件として、勇者神になることを受け入れることにする。田中も了承してくれた。俺は、ステータスをチェックして……勇者神専用の装備が使用可能になっていることを確認し、リリと共にリリの住む町へと向かうのであった。

俺は、リリの暮らす町の入口までやってきたのだが……。門の前には2人の屈強な戦士が立っていた。どうやら、その二人が番兵のようで……町に入ろうとする者を確認しているようだった。

俺は、まず最初に勇者であることを告げ、入らせてほしいと言ってみたが、二人はなかなか納得しない様子だったので……「勇者神様だ! 開けろ!」と言ってくれたリリのお陰でようやく中に入ることができて……。俺達3人は、この町の冒険者ギルドに向かう。道中、リリと田中に話を聞いてみたところ、この国の人たちは、基本的に魔族や亜人に対しては、敵対心を持っているのかもしれないとのことだった。魔族は人族にとっては『悪』とされていて、特に魔族の王は魔族の王らしく……魔族の中では最強の力を持った存在であるために……人間からすると恐怖の対象らしい。魔族も、自分たちこそが『この世界の秩序』だと勝手に勘違いしていて、自分達より弱い魔族を奴隷のように扱っている種族も多いので……この世界において『正義』とされるのは『人間』だけだと思っている魔族が多く存在しているとのことである。しかし……魔族が、人間に戦いを挑むことはないらしい。その理由が、人間には到底かなわないからであると、田中が話してくれた。

この世界に来る前に……田中から聞いた情報だが……魔族の中には、『魔神』、『龍人族』『吸血鬼貴族族』などの特殊な種族が存在するが……それらの者は……それぞれ独自の領土を持つ種族で……それぞれの領域を治める為に活動しているらしい……。しかし……魔族の中で最強と言われる存在と言われている『魔族将候』が支配している領域は他の魔王が支配する領に比べると小さく、その魔王が支配している領地も『獣人』と呼ばれる亜人達の国が多いのだと言う。この世界には『竜人族』と『巨人族』もいるが、どちらも他の領域を統治し、魔王と呼ばれているような存在である。そして最後に……魔王は……『勇者神』が倒してくれないとこの世に存在し続けることが出来るらしい。魔王が死ねば魔王軍は解散され……『魔王軍』のいない平和が訪れると、田中が教えてくれていたが……俺には理解できない世界だとその時思っていた。

リリと田中に先導される形で、俺は、この『エルシア帝国』の町を歩いていた。この町は……『アルフ』という名前の町らしいが……『冒険者の街』と呼ばれているようである。なぜ『冒険者の街』なのかと言えば、この世界のほとんどの場所が……人間の国々の領地となっていて……『人間』しかいないからなのだと言う。人間以外の存在は、この『エルシア帝国』の周辺に生息している魔物ぐらいしか存在しないらしい……。つまり『魔素』がない為、『魔素溜まりのダンジョン』から出現するはずの魔物も存在していないとのことである。『エルフ族』が暮らしている地域はあるが……その数も少ないと田中が説明してくれる。

そして……田中は、勇者になってから……様々な依頼を受けて生活していたというが……『勇者の力』を使ってしまうと、『魔素』を大量に吸い取ってしまうことになり、普通の人が普通の生活を送っているだけなら……何の問題もないが……大量に『魔素』を消費すると、すぐに、魔素欠乏症状に陥り、体が衰弱していくらしい……。それを防ぐためには、『勇者の力』を使用しないようにしながら行動しなければいけなかったらしい……。そのせいもあってか……依頼を達成するのにも時間がかかるらしく……常に金欠状態だったという……。でも『勇者の力』を使わなければ、依頼を達成できるほどの力が手に入ることもなく……。ただ単に、自分の無力を噛み締めながら、地道に稼いでいくだけの日々が続いていたようだ……。

そんな時だった……俺が現れたことで状況が変わったというのである。勇者として召喚されると職業として必ず、俺の持っていた剣「アルテミシア」と同じ名前の『魔剣アルテミシア』が手に入るようで……しかも俺の場合は職業スキルとして、『剣の職業スキル・大賢者』を手に入れることが出来たらしい。これは……勇者の剣の固有スキルであり、『剣聖の職業スキル・大剣豪』・『剣姫の職業スキル・剣帝』とセットになるスキルだ。つまり、この剣を装備するだけで『大賢者』の効果を得ることができるわけだ。つまり俺は……。剣技系の全ての攻撃が使えるようになり、かつ、大賢者の職業効果による魔法の習得が可能になるということだ。俺は田中からそのことを教えられた瞬間、思わず、「えっ!?」っと驚いて声をあげてしまった。なぜなら……田中は……この世界で俺だけが使えると思っていた『剣の職業』の固有能力である職業スキルを……俺がすでに手に入れているというのだから……。でも考えてみれば当然だ……。だって俺も……この世界で『田中太郎』になっていたんだから……。でも俺は、まだ一度もこの世界で、その剣を使ったことがないはずだ……。でも田中は確かに俺の剣の固有能力を教えてくれた。どういうことなんだ?

「勇太兄貴は……。『大賢者』の能力ってのは知ってるか?」と田中は俺に対して質問をしてきた。俺は、「あぁ……それはもちろん……。知っているぞ。でも……あれ?俺も田中と同じように『勇者神』になっているんだよな?どうしてだ?」と聞いてみると……「あ〜……。それは多分だけど……。この世界に来たときに……『女神の加護石』とかいう石を拾わなかったかい?」と言ってくる……。そういえば……俺は……この世界にきて……あの石みたいなものに頭をぶつけていたな……と俺は思い出す。俺は田中に言われて初めて気付いたが……。

俺がそのことを言うと田中はすぐに納得した表情になった。どうやらその女神の加護石の所持者が勇者として選ばれた場合に限り……勇者は勇者神の祝福を受けることが出来て、勇者としての職業能力も得ることが出来るようになるようだ。それで田中は、『勇者神』の称号を持っていたから俺もそうなったのではないかと考えていたようだ。まあ実際、俺は勇者神になっているし……。そう考える方が自然なのかもしれないが……。そうなると田中の持っているこの魔刀『魔刃・鬼神』も、俺が持つ『魔銃王神』と同じく、特別な魔剣だという事になる……。

田中がこの魔刀『魔刃・鬼神』を手に入れた経緯は次のような感じである。田中は、魔王一族が暮らす魔族の国『ダークネス』で修行していたのだが……魔王の一族は人間にとっては脅威の存在なので……魔族は、勇者の存在を非常に恐れているのである。そのため田中は……勇者であることがばれて殺されてしまう前に魔族国から逃亡し……この国にたどり着いたのだった。田中はこの国の国境で門兵をしていた戦士と戦いに破れてしまい、そのまま捕まって……。奴隷として売られてしまっていたのだという。

そして俺が助け出された後は、リリと共に、リリが暮らして居たという村に向かい、そこでしばらく滞在していたが、この『冒険者の街』に戻って来てからというもの……。毎日のように依頼を受けまくっていたそうだ……。ちなみにこの世界の通貨単位は『ギル』といい……。『金貨』、『銀貨』、『銅貨』の3種類が存在しているようだ。『ギルダー貨幣(硬貨)』と『小銭』の呼び方で分かれていて、1枚ずつ、上から順番に、金貨、 銀貨、銅貨となるようだ。日本円の価値で言えば、 金貨=100万円 銀貨=10万、5千、千円 銅貨=5000円 と言ったところらしい。

「勇者様、私達はギルドに着いたんですが……一緒に入ってもいいんでしょうか?」とリリが言ってきた。俺は……「問題ないよ。入ろう!」と言ってリリと田中と一緒にギルドの中に入って行く……。そして中を見渡すと……そこには沢山の冒険者と思われる人達が集まっていて……。ギルドマスターが「おい……。そいつらが勇者様か……?なんでお前達が一緒の場所に入ってきたんだ!勇者様は別室にいるんだから……。さっさと出て行け!ここは神聖な場所だ!汚い奴らは入ってくるな!今すぐ帰れ!!」と怒鳴りつける。すると……他の者達が……、「そうだ!早く消えろ!ここは俺たちが使っているんだ!お前らの場所じゃない!さっさとここから去れ!」と言い出す。俺は慌てて、受付のカウンターに行き、「すいません。この依頼を受けたいのですが……お願いします。」といって依頼を受けようと思ったら……「お前は……誰に言っているのか分かっているのか!! ここをどこだと……」と言われそうになったので……「うるさい!!! いいから黙れーーーー!!! 」

いきなりのことに俺以外の全員が驚いていたが……。「いいから早く仕事をしろ!」

俺は怒りを抑えながらそう言ってみたが……。相手は怯む様子もなく……「いい加減なことを言うな!!勇者様にそんな口をきけるわけがないじゃないか……。いいから、勇者を呼んでこい!勇者は特別待遇なんだ……。勇者を怒らせたくはない……。早く誰か行ってこいっ!!」と言うと……。

●『魔剣使いの大剣士』と……『炎龍の槍士』のパーティーリーダーが俺の前に進み出た。そして……。2人は、俺達と話をする為にテーブルについてくれと申し出てきた。リリと田中は、ギルド内で俺の護衛の為に俺の隣に座っていたのだ。俺としては別にここで話をしても良いかなと思っていたのであるが……。「分かりました。じゃあ行きましょう。」と言って席を立つと……。

俺は、この『エルシア帝国』に来てからの一連の出来事を話した。

「ふっ……。そんな与太話で……俺を騙せると思っているのか……。ふざけるんじゃねぇぞ……。そんな嘘を信じて……『エルシア帝国皇帝陛下 勇者様 』を侮辱したらどうなると思ってる!? 」……「……。」

「勇者殿。あなたを勇者と認めた以上……我々はあなたを守らなければならない義務がある。そのあなたの言葉が真実であれば問題ありませんが……。もしそうでないならば……。その話は、我々にとって迷惑極まりないことです。申し訳ございませんでした。失礼させていただきます。お許しください。そしてもう二度と、こちらには足をお運びにならないようにして頂ければと思います。本当に……申し訳ありませんでした……。」と……。

彼らは深々と頭を下げた後に……この場を去って行ってしまった。その様子を見ていたリリは俺の顔を見ながら……涙目になって……。田中に至っては、拳を強く握りしめ、震えている……。

このあと俺は……リリの知り合いらしい、『魔剣使いの大剣士』の人達とも話をする機会があった。でも俺は、この『大魔城』に居る間に起きた全ての出来事を話すことにした……。

まず……この城に居座っている『暗黒竜』が……『暗黒騎士』だった男が、勇者神の力を得たことで……その能力を得て『魔神』となった存在であることと、今現在は、この城の地下に封印されていて……『聖剣・デュランダル』を持つことで……封印を一時的に解くことが出来ることを説明した。さらに、勇者の力を得ている俺も……その勇者の力を使うことで、同じことが可能になるということも伝えた。

『魔剣使いの大剣士』は俺の説明を聞いて驚いていたが……それでも俺に対して「信じろという方が難しい話です。」と苦笑いをしながら言ってくる……。俺は……この人達のことを疑う気持ちはなかった……。この人達は俺に対して、敵意や殺意を感じさせないばかりか、すごく丁寧な口調で接してくれている……。それどころか、まるで俺のことを守ってあげようと言わんばかりに……この俺の話を真剣に受け止めてくれているような態度をとっているからだ。だから俺は……。

俺が『エルシア帝国王都・大宮殿』の謁見の間にいる時のことだった。俺は『聖杖王神』からもらったスキルの一つに、『神の声を聞くことができる。』というのがあって、『大魔城』の様子を聞いていたのである。そしてその時、あの『魔剣・妖刀 村正』が動き出したことを知ったのであった。俺はすぐに、その『大魔城』に向かうことを決めた。

しかし……。俺の話の中で……田中だけは……なぜか……俺の言葉を素直に受け入れてくれた……。そして……俺の側にいて……俺をずっと支えると約束してくれたのだった。俺は……田中のことが……すごく気になり始めた……。

「勇太兄貴は……この世界に来る前に、女神に会って……加護石を受け取ったんだよな?」

俺は……リリに『勇者の神』から貰った『加護石』を見せてほしいと頼まれていたので……リリとリリが暮らす村の人達の前で、それをかざした……。リリは……目をキラキラと輝かせて、それを見たが……。他の村人達の反応はあまり良くないみたいだった……。どうも『加護石』とはそういうものらしい……。勇者の証であるその加護石を、村人達はみんな嫌っていたみたいだ……。なんでも……その『勇者』は、魔王軍と戦う時に多くの命を奪ってしまうので、女神の敵として憎まれている存在なのだとか……。そんな感じなので……。リリが暮らしていた村に……勇者として召喚されてしまった勇者『勇者・田中一平』も、勇者としての使命を果たしてからも……人々に疎まれていたのだという……。リリは……『勇者・田中一平』は優しい心を持った青年で、自分を犠牲にしても他人のために尽くすことをいとわない人物だったという事を力説していたが……それでも村人は、頑ななまでに勇者を拒んでいた。結局のところは、この世界の人達にとっても勇者というのは、それだけ忌み嫌われている存在であったようだ。

しかし……。なぜ……『田中一平』ではなくて……『大魔王サタン・デスサイス』だったのかが俺にはまったく分からない……。まぁ……それは今はいい……。問題は……。これから『大魔王サタン』に化けて『エルシア帝国 帝都』に乗り込み、そしてこの世界を滅ぼそうと計画している田中の事である。このままでは間違いなくこの世界の人達が大勢犠牲になることになるだろう……。この世界を守るために……何としても阻止しなければ……と思うが……。いったいどうやって止めるべきなのかが分からずに悩んでいた。すると……。田中が……。

「大丈夫だ。俺に任せておいて。」

そう言った後……。「この国の王様に頼んでみてくれないか?」と言ってきた。俺はもちろん快諾したが……「え?俺達が頼みに行くの?どうして?俺達が行かなくても……」と言うと……「いいから任せてよ。絶対に何とかするからさ……。」

自信ありげに言うので……。俺達は、ひとまずは言われた通りにしてみる事にした。俺はリリ達と一緒に王城に向うと…… 門番の人が……いきなり攻撃を仕掛けてきたので、とりあえずは全員気絶させてみた。そして、門の中に入るためにリリ達には少しだけ待っていてもらい、門の外にある小屋に隠れてもらうと、俺は一人で中に入っていった。中には……兵士が沢山いて……「侵入者だ!捕まえろ!」と言われたが俺は、「お前達に用がある!話をさせろ!」と叫んで兵士を殴り倒しながら進んだ……。

俺は玉座の間に向かった。そこには、この『エルシア帝国 国王陛下』のエルザさんがいた。俺は、エルシア帝国が勇者召喚を行っている事、それに関係のある者を抹殺するためにこの国に潜入したという事、そして俺の本来の姿を晒す覚悟を決めたことなどを伝えた上で……。「どうか、私達の話を……信じて頂けないでしょうか? お願いします。」と言うと……。エルザさんは……俺を見て驚いた顔をして……。しばらく沈黙した後……。エルシア帝国の現国王としての権限を発動し……

『エルシア王国 第一王女 アリス姫 と 第2皇子 カイン皇太子殿下 並びにその御家族の方々がご無事であることを証明する権限を行使する!』と言ったのだ。すると……。部屋の中に……6歳くらいの小さな女の子とその両親が現れて……こちらに向かって駆けてきた。「ママ!!パパ!!」と叫ぶ少女は俺に抱きついてきて……泣いていた……。

そのあと……。エルシア帝国国王であるエルザさんの話を聞いたが……俺にはとても信じられない話だった。そもそも、勇者が魔神になってしまうという話すら知らなかったからだ……。

俺が……勇者の力を持っているという事実は……。

田中の話によると……勇者の力を得ることが出来る加護石の効力によって、田中は勇者の力を得ていたらしい……。しかし、勇者は女神を信仰しない人間を勇者の力をもって殺めてしまったりするので、その行為自体が女神に対する背信だとされていた……。それで勇者の力を得た後も……勇者の力を使うことを許されない状況が続いていたのだという……。しかしある時……勇者の力で人を助けることにやりがいを感じ始めた『勇者・田中一平』は自分の意志で女神様にお伺いしてみると、自分の考えが正しいという返答を頂いたのだそうだ……。それからというもの、その力で多くの人達を救ってきたのだという。そして……そんな勇者の力を得た勇者に対して……。『暗黒騎士』、『聖剣使い』などの強力な加護石の所持者たちも……女神様に認められた者達であり、この『聖都 グランパレス』において勇者と同様に大切にされている存在であるというのだ。そのせいもあってか……勇者と加護石の所持者との間には大きな身分の差が生じてしまい、勇者とそれ以外の加護持ちとの間に大きな壁ができてしまっているという。そんな状況に憤った田中が、『聖都 グランパレス』を出て行った後に……『大魔城』で暮らし始めるようになるまでの経緯を田中から聞いた俺は……なんて悲しいんだろうと思っていた……。田中の話では……彼はもともと……この世界の住人で……勇者としてこの世界に召喚されてやってきたということだったが……。しかし……。この話は田中の話を信じなかったこの世界の一部の人々にとっての嘘でしかないのではないかと思っている。だって俺は、勇者の加護石をもらった時に聞こえた声の主が……『女神の声』ではないと思うから……。『女神の声』とは、俺の加護石が俺の身体から抜け落ちた時に聞こえたあの『声』のような気がするからだ……。その事は俺にとって……『魔神・サタン』となってしまった田中を止めたいという想いよりも強い決意に変わっていった……。田中の言っていることが真実なのかどうか分からない以上は……。

俺は……今現在、俺を庇って怪我をしているエルサという女性が、勇者を毛嫌いしているこの世界の考え方について疑問を投げかけた……。俺の言葉を聞いたエルザは、その俺に対してこう言って来た。「勇者の力が本当に正しいものだとしたら……この『聖都 グランパレス』も変わると思います。勇者の力に守られている『聖騎士隊』という精鋭部隊がいますが……彼らは……この国の人達を守るための存在で、他国からの脅威を退けるために存在しています。」エルザが言うには……聖騎士隊は、聖女が祈りと魔法で呼び出して戦わせる事が出来る存在であるらしい。そのため、普段は聖都で生活していて……いざ戦いになれば、すぐに駆けつけてくるので……『聖都 グランパレス』の人々は安心して過ごすことが出来るようになっているので、国民からは絶大な信頼を得ているというのだ。

さらにエルザは、勇者に助けてもらったという感謝を込めて、勇者は、勇者の力を使わずに、他の誰かを手助けすることを望むのだという……。その言葉を聞いて俺は、その考え方に賛同したが……それと同時に俺は、『勇者の力を使うことなく勇者を救う方法』を考えた方がいいんじゃないかと考えたのである。

しかし……。

勇者である俺がこの世界で何かしようにも、それは許されていないようだった……。

田中は……俺に『大魔城』で暮らしてもいいと言っていたのだが……。田中には勇者としての使命があって、『エルシア帝国』に帰らないといけないので、俺はリリ達を連れて、ひとまず『大魔城』を旅立つことに決めた。田中は、「リリや村のみんなを頼むよ。」とリリ達に声をかけた後……俺に近づいてくると……。

「俺と約束して欲しい……。絶対に死なないでくれ……。生きていて欲しいんだ……。だから、これからは気をつけてくれ……。勇太兄貴が……もし……死んでしまったりしたなら……俺はもう二度とこの世界を……そして……勇太兄貴に生きてほしいって願う自分自身を赦せないと思う。俺の命に代えても勇太兄貴を守ってみせるからさ……。約束してくれ。」と言ってきたのだった。……俺達は……『魔王領』に向うことにし、まずは近くの『聖樹国』に寄ることにした。

俺は……田中との別れ際に……彼の目をじっと見つめていた。すると田中は……「何?勇太兄貴?もしかして俺に見惚れちゃった?いかんぞ〜!俺達は血を分けた実の兄弟なんだから、そういう気持ちはいけないんだよ!俺にそっち系の趣味はないけどさ……。でも、勇太兄貴に頼まれたら……俺にできることだったら……何だってくれてやるから……何でも言えよ!」

相変わらずの調子だった。

「わかった。ありがとう……。これから……大変だと思うが……俺達のために……頑張ってくれ……。田中……お前にあえて……よかったよ。」

「おい、どうしたんだよ……。何だか……勇太の兄ちゃんらしくねぇじゃんか……。どうしたんだ?大丈夫か?」

田中は心配そうな顔をしていたが……俺はこれ以上何も言わずに、

「田中……。リリ達を頼んだ……。絶対に死ぬんじゃねえぜ……。じゃあ……元気でやれよ。」と言うと……。俺は田中に背を向けて歩き出した。

「あっ!ちょっと待てよ。勇者の兄貴!!どこに行くんだよ!?まさか……。」

俺は後ろを振り向き……。

「田中……。悪い……。俺は行かなきゃならない所があるからよ……。」と言うと……俺は走り出す……。……。…………

「ちくしょう……。くそったれ!!どうしてこんなことになったんだよ!!」

泣き叫ぶ田中に、俺の背を見送っているリリ達……。

俺とリリ達が王城を出る時にエルシア帝国の人達が総出で見送りに来ていたが……その中にはエルザさんもいた……。

俺は、田中達と一緒にこの世界から脱出する方法を見つけるために動き出すことを決意した。

エルザさんの話が真実なのか確かめる必要もあるし、それにこの世界からの脱出方法を一緒に探すことを約束したのだ。

田中の話を聞く限りでは、この世界の勇者の力は『暗黒神の力』と変わらない。ならば『聖騎士』と呼ばれる存在を『勇者の力を使わず』に倒す事が出来れば、魔神化してしまった田中を元に戻す事が可能になるかもしれない……。そのために俺は、勇者が勇者を討伐するというこの理不尽な仕組みを変えるために奔走しなければいけないだろう……。それが俺がこの世界で成すべき使命だと感じるからだ。それに……。『魔神の力』を消し去る事に成功した暁には、今度は女神の声を聞こえるようにしてもらって……この世界に真の平和をもたらしてもらいたいと思ったからだ……。……それから数日が経った……。

俺達は再び、『聖国グランパレス』の近くまでやって来た……。俺達に付いて来ているリリとサーヤも一緒にいるのである……。今回はサーヤもいるからな……もしかしたら何か新しい情報を持っているかもしれないと思って連れてきたんだ……。ただ……『エルビア王国』の王都『シルダリア』に戻ろうと思っていたんだけど……この前エルシア帝国の人達と話していて思ったことがある……。

田中が……俺に話してくれた『大魔城』がこの近くに存在するという情報が俺の頭から離れないのだ……。俺の中で……この『大魔城』で田中と会えたことが奇跡だったと思っている……。田中は俺がこの世界に来て出会った人間の中で唯一、魔神化しそうになっているのを止められた相手だからな……。その田中を助けられそうな手がかりがこの『大魔城』にあるのではないかと思ってしまった……。田中の話だとこの近くにあったらしいし……。だから……まずはこの近辺を探してみようかと思っている……。

ただ、前回と違って今回は人数も多いから、二手に分かれて行動する事にしようと思う……。俺を含めた3人で動くか……。それとも2人と1人に分けて、別行動して探すことにするか……。俺はリリに話しかけてみる……。「なぁ……俺達全員でこの付近を探し回って、もしこの『聖国グランパレス』の人に出くわしたりしたら……厄介なことにならないだろうか……?」

「ご主人様の懸念もわかりますが……ここは以前来た時とは違う場所になりました。あの時は、この辺りはまだ聖都の一部だったのですが……。今、この辺りには『聖騎士国』が存在していますからね……。この聖都と聖騎士国の『聖騎士の国』との間に、この世界の中心と言われている大陸があります。私もそこまでしか知りませんが……。ですから、ここより北に向かうとなると……。おそらく、聖国の外に出る事になると思いますが……、そこはもう、聖国に敵対する勢力が集結しつつある場所になると思われます。」「なるほどな……。まあ、この『大魔城』ってのを見つけて調べてから、その先の事をまた考えるしかないのか……。よし、リリ、俺はこの周辺を探すつもりだが、お前たちはどうする?」「私は、まだこの世界に詳しくありませんので、もう少しここに留まってこの世界を見て回ろうと思います。」リリは、少し考えた後で答えてくれた。

「じゃあさ、勇太はアタシ達と組むって事でいいよね!」綾香が提案してきた。

「ああ、もちろん構わない。リリも一緒で良いか?あと……エルシア帝国にいる間もずっと世話になってばかりだったし、お礼を兼ねてみんなにも報酬を出すぞ。」と俺が言ったら……。「本当!?やった〜!!アタシさ〜……。勇太が買ってくれた洋服とっても気に入っちゃったから、もう一着欲しいんだ!今度勇太のお小遣いで買いに行ってくれるならそれでいいからさ。よろしくお願いします〜!」……綾香に続けて……

「あのっ!あの……その……。勇太さんに選んでいただきたくて……同じ服を一着いただけないでしょうか……宜しく御願いします。」と言ってきた。沙奈良ちゃんの表情はどこか暗い……。きっと自分のせいだと思っているのであろう……。俺は彼女の頭を優しく撫でてやりながら、「そんなに自分を責めなくてもいいんだ。あれは、俺が自分勝手でやっていたことだ。だから気にしないで欲しい。俺は……沙奈良ちゃんを悲しませてばっかりだったと思うから……。本当にすまない……。」と言うと……

「いえ……。勇太さんが悪いわけじゃないんです……。全部私が弱いせいで……。」とうつ向いてしまった……。

「わかった。とにかく……今日中に見つけて見せるよ。だから、俺を信じてここで待っていてくれ!」と言うと……沙奈良ちゃんの顔が輝いて、「はいっ!頑張りましょう!私……精一杯手伝いをさせて頂きます!」と笑顔を見せてくれる。……俺達は早速、この『大魔城』を目指して歩き始めた……。この『聖魔大山脈』を登ることになるけど……みんなが一緒なら怖くない!……それにしても、『エルシア』と名前が似ているけど……。まさかこの山脈の中とかじゃ無いだろうな……。まさかねぇ……。

俺達が『大魔城』目指して歩き始めてから、だいぶ時間が経った……。俺達が移動している間は、基本的に戦闘は行わず、気配察知のスキルで周りの様子をうかがいながらも、たまに遭遇する魔物を倒すだけで、ひたすら歩いている……。リゼとの戦いがあったばかりなので、体力やスタミナは万全ではない。

「そろそろ、日が暮れるぞ。一度、夜営に適したところに移動してもいいんじゃないか?」と俺が提案すると……「はい!勇太さんの言われる通り、この辺にしておいた方が良さそうですね。」とリリが答える。そして、この近くに『野宿に最適の洞窟があるみたいです!』とサーヤの情報で、俺たちは、洞窟に移動する事になった。

サーヤは、相変わらず凄い能力を持っている……。どんな場所にいようとも周囲の状況をすぐに確認してくれるのだ。しかもこの世界に来たばかりの俺達よりも、地理に詳しいくらいである。

『この洞窟は、この世界の中心部と繋がっているようです……。多分、そこからこの世界の外側に移動できるんだと思いますよ……。』サーヤの話によると、この世界でのこの位置から反対側は『魔王領』と呼ばれる地域らしい。リリも『エルシア』が魔王領との境目付近にあると教えてくれた。

『この『大魔城』は、ここから更に東の方角に移動して行くとありましたよ。』という事らしい。

この世界の端っこが『魔境』と呼ばれていて……『魔王』と呼ばれる強大な力を持つ魔族が存在しているようだ。この世界の勇者が、勇者の力で魔族の王を倒すと……その力が次の世代の勇者へと引き継がれていくのだとか……。その勇者が『勇者の力』を使って、次代の勇者を倒してしまうと……その力を取り込んだ新しい勇者が誕生するという理不尽な仕組みがあるようだ……。ちなみに、歴代の『聖騎士国』の勇者の中で、最も強かった者は……『初代勇者 グラン・ウォーカー』だそうだ……。グランというのはこの『大魔城』のある地域の名から来ているんだって。ただ、その勇者の力は……この『大魔城』に眠っているようで、『大魔城』が存在する限り、『グラン勇者』が誕生してしまう事は無いようだ。それに、歴代最強の『グラン・勇者(神)』が誕生した時に現れる『魔神神』というものが『大魔城』(別名グラン勇者の玉座の間と言われているようだ……この魔神神とは、魔神化した『初代グラン・勇者(神)』を討伐することで手に入る力の事らしい。

それと、『大魔城に辿り着くためには、魔王領の真ん中にある魔王城から行かないといけないらしい』とも言っていたが……『聖騎士国』の人達には、どうやってそこまで行って魔王を倒して、また魔王領を突っ切ってここまで戻って来たのだろうか……俺には全く理解できないが……。『魔王城から『大魔城』に行くには『魔王』を倒して通る必要がある』ということだけはわかっているようなのである。……でも、何でわざわざ『魔王』を倒して通らないといけなくなったんだろうな……。普通に『大魔城を護る魔王』を倒して通ればいい話じゃないか……。

俺は、サーヤと会話しながら歩いていたが、その時にふと思ったことがあった……。サーヤも『魔神化』したんだよな……。その時の記憶が無いのか……もしくは忘れてるだけなのか……。俺は少し気になったのでサーヤに聞いてみた。

『あの……サーヤに質問したいことがあるんだけど……』『なんでしょう?何でも聞いて下さい。答えられる範囲内でお話しできますから。』……サーヤは俺に信頼を寄せてくれているようだ。『実は俺と、サーヤが一緒に魔神化した時の記憶はあるのかなって……』俺が聞くと……『え!?』と驚きの声をあげた後で、しばらく考え込んでから、何か思い出そうとするように顔をしかめていた……。やっぱり何か覚えていないんだろうか?……少し間を空けて、

『申し訳ございません……。全く思い当たる節がないのです。』と言う返事であった。……俺は、サーヤの話を聞きながら歩いていた。……すると、リリとサーヤで『大魔城の場所が違う』との話になっているらしい……。俺は二人の間に割って入り、俺が思うに……この世界のこの位置にあるので……『聖国グランパレス』の北の方ではないかなぁ〜と言った。リリもサーヤも『グランパレス』の人間だし……。

この話は平行線のままで、これ以上、俺の考えで話すことも難しいかなと思い……話題を変えることにした。……俺は、『女神リザ』の加護を得たことで出来ることを試してみることにしようと思っている。それは、『魔力吸収』の技の『マナイーター改』を使ったときに、魔力を吸収した相手の状態を見れることが分かった。『大魔城』を探し出して、その内部にいるかもしれない敵の魔力を奪い取りながら進む事が出来るので、探索を効率的に行えるのではないかと考えたのだ。そこで俺は早速やってみる事にした。『マナ・イーター!』と唱えて、自分の体に纏わせてみる……。そして『気配感知』、『視力上昇』を同時に行うと……体から光が放出されて辺りを包み込む。……これでいいはず……。俺が光に包まれたままの状態で辺りを探ってみると……リリやサーヤも俺と同じように光の膜のようなものが包んでいた。そして、俺の感じたことだが……今俺達がいる辺り一面に広がっている……大地……これは全て大地ではなく……岩や石で出来ており……土など無いことがわかった。

俺がリリやサーヤの方に振り向くと、二人がキョトンとした表情をしている……。俺が二人のところに行き「どうやらここは、『大魔城』があるはずの場所ではないみたいなんだ。だからこの周辺を探してみないか?」と伝えると……「そうですか……。確かにこの場所にはあまり生物を感じられないですね……。」リリが呟いた。

俺達は手分けして探すことにして……俺は広範囲に渡って『マナ・イータァー』を発動して、周囲の状況を確認した。俺はある違和感を感じていた……。ここにある全ての物質やエネルギーは生きているわけではないようだ……。

俺達がそんなやり取りをしていて、どれくらい経っただろう……。リリと俺は、お互いに見つけ出し合って、再会できたのだが……リリは、一人で俺以外の誰かと戦っているように見えた。俺はリリが戦っている相手の姿を確認すると……。……なんだあれは……。俺はその姿に驚いた……。……リリと戦闘を行っている者……それは、頭から2本の角を生やし……口から鋭い牙が生えていて……背中には大きな羽を3枚付けている。見た目は人型に近いが……全身は毛むくじゃらの姿で……まるでゴリラのような姿の怪物だ……。そしてその化け物は……。リリと格闘しているが、俺にはわかる……。あの化け物のパワーの方が、今のリリを上回っていて……もうすぐ倒されてしまうだろうと……そして……その時が来た。俺が思った通り、リリは、この化け物に組み付かれて動きを封じられた……。リリは必死になって逃れようとしているようだったが……抜け出せないようである……。俺が、急いで駆け寄ろうとした瞬間……突然……リリの足元の地面が盛り上がった!……しまった!と思った時には遅かった。リリは地面に出来た穴に落ちて姿を消した。そして、リリを捕まえていた奴もそのタイミングで地面に沈んで消えてしまった……。

「リリ!どこにいった!」と叫ぶが……返事はない……。俺はリリを助けられなかったショックで頭が真っ白になりそうだった……。……俺達がこんな目に合っているのは、リゼルの両親の件があったからだ……。

俺達がここに来るまでにも、魔物の軍団に遭遇して、何度か交戦している……。魔物たちは……明らかに俺達の事を警戒している……。……おそらくは『勇者の加護』を受けた俺が『勇者の力』を使って『魔王の力』を吸収すると想定しているんだと思う。

俺はサーヤの『スキルコピー』の能力でスキルを覚えれば『大魔城』を見つけ出せると思ったのでサーヤと田中君にスキル習得を任せることにした。その間の魔物の撃退は鈴木と佐藤の役目だ。鈴木は『聖剣エクイップ』を振り回し、佐藤の魔法も炸裂する。さすが『大魔騎士爵家 嫡男 鈴木正孝』と『大魔道師家 次男 佐藤信二』だ。二人は凄い戦いを見せていた。しかし、敵がどんどん現れて数も増えていく。このままでは俺とリリとサーヤが合流できない。……仕方ない……俺はこの『魔王領』を抜けるために使うつもりだったけど……この状況で使わずにこの世界で生き残るのは難しいか……。

俺は意を決して……『勇者の指輪』の力を使うことを決意した。俺は『ステータスオープン』と念じて、自分を中心に円を描くように移動して、皆のステータスが確認できるように設定を変更する。俺はリゼとサーヤの位置を確認した上で、リゼルの加護の力で、勇者としての力を解放するイメージをしながら、『勇者の力解放 勇者の神器開放 神眼(ゴッドアイ)発動』と心の中で叫びながら『勇者の力』を解放した……。その瞬間に『大魔城』のある方向に向かっているサーヤが目に入ったので……俺は『勇者の力 身体強化 視力強化』『聖騎士 大魔槍術 大魔剣術』『聖戦士 大盾防御』を使い……一瞬で、その場を離れた……。そして、すぐにサーヤが落ちたと思われる穴の近くに到着した。……良かった……間に合ったみたいだ……。そして……そこには、先ほど消えたと思われた『大魔獣王バルバロス・ジャイアントホーン』のリリもいた……。……俺はリリを抱きかかえて、安全なところに下ろして、様子を確認する。……傷ついているが意識もあるようだ。ただ、魔力を奪われ続けている影響で……体力が減っていっている。……回復薬を渡してみたけれど、効果が薄い……。……まずいな……。俺は『勇者の力 アイテム生成 聖水』を作成してから……『聖水』を飲みやすいようにしてから、サーヤの口に少しだけ入れさせてあげる。サーヤも苦しそうな表情をして、少し飲めただけでも楽になるようなので、俺は何度も作ってから少しずつ口に入れてあげた。すると……サーヤは顔色が良くなってきたようだ。サーヤが回復したら、『マナ・イーター改』の技を使えば、なんとかなるかな?でも、早くしないと……。俺は、自分の力を確認していた……。……やはり……俺が今使っている能力は……。以前、女神リザが俺に伝えた内容にあった能力だ……。そして、この世界に来てしまった時に与えられたという能力の事もわかった……。俺が持っている全ての力を使うことができるということだけは分かったが……。『大魔城』を見つけることができない……。そして、俺が考えている時間も無い……。リリもサーヤも、俺の大事な人達だから、俺は、自分が死ぬ覚悟を決めた……俺は『魔王城』の方を見て、

『転移 大魔城の中庭』

と叫んでいた……。すると俺とリリの体が光に包まれて視界が真っ暗になってしまった。……そして光が収まったので、周りを確認すると……。……目の前に大きな建物が見えた……。

俺は、リゼルに言われた通りに、この城の中に侵入することにした。中に入り、奥の方に向かうと階段があり……俺は登っていった……。この階には、リリとサーヤがいるはずだが……気配が感じ取れない。俺は、この階の一番上に辿り着くと……そこには、巨大な空間が広がっていて……その中央に豪華な玉座があった……。そして……玉座の後ろ側に、人型の何かが立っている……。よく見るとそれは……。『魔王 種族 魔神』だった……。

『ふっ……。ここまで来たのか……。まさか、貴様のような者が『聖騎士』だと?笑わせてくれるな。』……俺は、魔神に問いかける。

『俺を知っているんだな?』

『もちろん知っている。なぜならば……我の眷属の一人だからな。それに……。その力は……。お前を見ているだけで気分が悪くなりそうだ。だが……。まだ、我を倒すことは出来まい……。だが……その力が我がものになるまで待つつもりはない……。だが……。その前に我を倒して、この城を出ようとするなら……。その瞬間から……。我が全戦力をもって相手しよう。どうする?……戦うか!?逃げるか?』……と聞いてきた。俺は『戦わない。逃げさせてもらう!』と言ってみたのだが……。……すると……。魔神が笑い出した……。『クフッハッハ!アハハハ!』と……。そして……魔神から殺気が溢れ出てきた……。『ほう……。面白い……。いい度胸だ。気に入ったぞ。その命……貰うとするか……。……死ね!人間!』と叫ぶと同時に魔神から衝撃波のようなものが発生した。……それを喰らった俺だったが……。『自動復活』の力と……田中君から貰った装備のおかげでダメージを受けることはなかった……。

しかし……。今の衝撃で部屋中に煙が立ち込めて、何も見えなくなってしまった……。そして……次第に霧が晴れていき……魔神のいる方向に視線を向けると……。

俺は……魔神の姿を確認して驚愕した……。何故ならば……そこには、一人の女性が佇んでいたのだ……。しかも……。彼女は……あの『女神』の姿そのままだったからである……。

俺には、目の前にいる人物が誰なのかが分からなかった。ただ……『あの時の女性』に似ているとは思う……。俺は動揺しつつも……『鑑定 大賢者 職業 大賢人』を使用してみることにした。

名前

:『リリス・シー・アーテルナイト

種族 魔神』……レベル:『∞』

HP

:150000

MP 105000 攻撃力:10000

防御力:50500

魔力値 100 精神力 50100 敏捷性:8000 幸運値 7010 状態 良好……これは……。俺のスキルは、『リゼル』が『リゼルの勇者 田中』と『女神リザ 職業 勇者 リゼの加護者』と融合している影響だと思っている。そして俺は、ステータスを再度チェックするが、やっぱり数値が変わっているのは……。田中君が使っていた装備の影響だろうと思う……。それなのにどうして……。俺は『あの女性』と似ていると思ったのだろうかと疑問を抱いた……。

俺はとりあえず相手の様子を見ることにした。……彼女はなぜか涙を流している。なぜだ!?と一瞬思ったが……俺は彼女の気持ちを理解した……。俺の『勇者の加護』が彼女に与えたスキルが影響しているのだと思う……。

彼女は涙をぬぐいながら俺に語り掛けてきた。「久しぶりですね……。『正人』さん。」……え!……俺の事がわかるのか!?俺は驚きつつも冷静に「君は……。一体……。何者なんだ?」と聞いてみた。

すると……。「私は……貴方の……。『勇者神』の本当の姿です……。あの時に……貴方が助けてくれたのは私なのです。そして……その後、この世界を救う為に行動してくれたことを感謝しています。私は『女神リゼル』です。私も貴方のように……この世界の人たちを助けようと思いましたが……。もう無理みたいで……。私の意識は、消えると思います。だから最後に……。正人さんの事を……。教えてくれませんか?」と……。

そして……『リリス・シー・アーテルナイト』と名乗った女性は俺に近づいてくる。そして……。俺は……。自然体になり……リリスに言った。

「俺の名前は、佐藤太郎……。年齢は30歳……。身長178センチで体重62キロだ。趣味は読書やゲームで好きなものは、アニメにラノベだ。特に異世界転生モノが好きだな。あと、好きな食べ物はハンバーグとカレーだ。それと……。君の事だけど……実は……。俺は君のことを忘れていない。覚えていたよ。君の声を聞いた時もすぐに君だってわかった。でも……。君に話せない理由があって……。俺は、自分の正体を隠して、リリの従者をやりながら『勇者』の力を使って、みんなを助けようとした。君のことも……。本当は助けたかった。でもできなかった……。俺はこの世界で、勇者の力を手に入れたけど……。俺一人じゃ、できることが限られている。そんなとき……リリの『勇者』としての力を知って……俺はリリに協力することにしたんだ。」

俺は正直に伝えた。リリが『勇者神』である『勇者神リゼル』だという事は……『秘密にしておいた方がいい』と、サーヤが言っていたからだ。俺がそう言うとリリスは微笑んで、「そっか……。ありがとうございます。嬉しいです……。」と言ってから続けて話す。「では……もう一つだけ……お聞きしたいことがあります……。正人さん……。もし、私と同じように……。他の勇者がこちらの世界に来た場合……この世界は救えるでしょうか?私たちの時は……間に合いませんでした……。私たちは……自分たちの力だけで何とかしようとしましたが……。結局、大魔人に世界を滅ぼされてしまうことになりました。だから……。私も、もう一度、頑張ってみるつもりですが……。今度はもっと酷い結果になってしまうかもしれないんです……。お願いします。私がいなくなった後……せめてもの償いの為にも、どうか……。皆さんの事を助けて欲しいのです!」と懇願してきた。……俺は答えられなかった……。この世界に来てから、『俺一人でどうにかしなければ』と思っていた。でも、実際は違う……。この世界にも多くの仲間がいたんだ……。この世界が危機に瀕していたなら、俺たちの力を集結させればなんとかなるのではないだろうか……。でも……『魔王』を倒した時、リゼルが俺の耳元で『この世界も救いたいの……。』と囁いていた。リゼルは、リリスのことが気になっていたのかもしれないなぁ……。

リリはリリスの事が心配だったに違いないと俺は思う。俺が返答しないで困っているのを見たリリスがさらに言葉を続けてきた。「あ、ごめんなさい。困らせるような質問をして。気にせずに答えてくださいね……。」と言ったが……俺は、どうしても気になってしまって「なぁ……本当にこの世界に『リゼルの勇者』が来ているのかな?もしいるんだったら、協力してほしいんだが……。」と答えてしまった……。するとリリスは悲しげな顔つきになる……。

そして、しばらくしてから……。彼女は少し考え始めた。「リゼルと話をしていたのよね?リゼルは、今どこにいるの?」と聞かれたので俺は、さっきの出来事についてリリスに説明した。俺がリゼルから頼まれた内容は『魔王城に忍び込んでほしい』という内容で、その目的についてはリリスに教えることができなかったが、俺は彼女に『俺のスキルで見た情報で、何かわからないことはないか?』という確認だけはしておくべきだろうと……考えた。そして……リリスが答える前に『リリスのステータスを見せてほしい』と伝えてみると……。『はい、わかりました。』と言ってくれてから、俺の頭の中にリリスの情報が表示された。

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種族

:『魔神』……レベル:『∞』

HP

:250000

MP 155000 攻撃力:30000

防御力:50500

魔力値 100 精神力 50100 敏捷性:8000

幸運値 7010 称号 :なし……固有スキル:『魔神化』、『女神降臨』『ステータス共有』・『スキル共有』……その他……(特殊スキル):全魔法習得

(特殊技能 神界通信、アイテムボックス、完全言語理解)……(特殊能力 女神降臨・リザレス・アスティリア・女神・聖闘・暗黒騎士・全職業適正・全能力向上・全属性耐性 自動修復・再生・限界突破・状態異常無効化・成長促進・獲得経験値増大・スキル習熟・状態変化無効・HP回復速度上昇・状態変化解除 他……多数)…… ----

えーっと……。『勇者神リゼル』よりレベルが高すぎる!これだとリリスの方が、格上ってことになるんじゃないのか!?と思ったが……リゼルは俺に対して嘘をつくはずがないので信じるしかないと思う。そして、俺は『ステータスの共有』があるかどうかを聞いてみた。あると分かったので俺はステータスを共有してもらった。俺がステータスを確認した後で……。俺は……俺と同じようなスキル構成をしていることに驚いていた……。そして……『ステータス』の欄を確認していくと……。

『スキル』に俺が今まで使ったことのないものが記載されていた。それは……。『大賢者の杖・スキル 勇者神の加護』というものだった……。え!これは……。『女神リゼル』が言っていた……。リゼルの力じゃないのか!?俺は『リリス・シー・アーテルナイト』の方を見るとその瞬間、体が輝き始める。俺達は目を見開き……驚く。俺はリリスに話しかけようとすると……。「勇者様!お願いです。私に力を貸して下さい!」という言葉が聞こえてくると同時に彼女の手が伸びてきて……。そのまま彼女の方に引き寄せられた。「うわっ!」俺と彼女は抱き合ってそのまま床に押し倒された状態になった。そして俺は彼女から顔を離して、お互い見つめ合う形になった。彼女は泣いていて……俺の手を握る力がどんどん強くなっていく。

すると……彼女が急に「お願いします!私は……。もうすぐ消えてしまいそうなんです……。貴方と離れるのがいやです。だから……。だから……私を助けてください……。私に……。力を分け与えてください。貴方は私の恩人なのです……。貴方だけが私の希望なんです。どうか助けて下さい……」と言ってきた。俺は、「ちょ……ちょっと待ってくれ……。いきなりすぎて、俺も混乱しているんだよ……。でも、助けてほしいと言うのであれば……。とりあえず落ち着こう……。君の話も聞きたいし……。俺は君を助けたいと思っているよ。それに……。君を助けることで……この世界を救いたいというのが本当の気持ちだよ。だから……安心してくれていいよ。俺は……絶対に君の事を守って見せる。」と言ってから、彼女を起き上がるようにしてから……。ゆっくりと立ち上がって、彼女の肩に手を置いてみたのだが……。「ご……御免なさい……。」といって俺に抱きついてきたのだ。どうしたら良いかわからなくなったが……彼女の頭を撫でることにした。彼女は、「私は、リゼルと融合してから、私の存在が徐々に消えかかっています。私は、自分の記憶を頼りに、リゼルの知識も借りながら、私の存在を保とうとしていますが……やはり、限界があるのです……。そして……。もう私の存在を保つことができなくなりました……。私を救おうとして下さり……本当に感謝しております。貴方には……申し訳ないことばかり言っていますが……。貴方にしかできないのです……。」

そう言った後に……。彼女を抱きかかえながら、立ち上がる。そして……。「わかった……。君を救う方法を考える……。それまでに……少しだけ時間をもらってもいいか?」と聞くと……。リリスは微笑みながら……「はい、構いません。ありがとうございます。」と言ってくれた。そして……リリスは俺から離れようとしたが、俺の手を掴んできたので俺は彼女の方を向いた。そして……「貴方の名前を教えて頂けますか?」と言われて……俺は……自分の名前を告げてから名乗ったのである。

「俺の名前は佐藤太郎だ。30歳で身長178センチで体重62キロ。趣味と好きな食べ物、飲み物、好きな本、アニメなどだ。特技は……パソコンのプログラミングとかだな。あとはゲームでレベルを上げてモンスターを倒すのが好きなんだけど……。ゲームをやる時間がなくてなぁ……。今度やりたいゲームがあって、それを楽しみにしてるんだ。」と自己紹介をした。リリスが俺をじっと見つめた後で、「ありがとうございます。これからもよろしくお願いしますね……。タロー……。」と言いながら……微笑んでから……「あの……すみません。」といってから……。リリスは自分の右手で……目をこすり始めて、俺の顔を見ながら……。涙を浮かべていて、今にも泣き出しそうになっている。

俺は……そんな彼女にハンカチを差し出すと……「本当に……ありがとうございます……。本当にごめんなさい……。」と言ったのだった。そんな風に会話をしているうちに……少しずつ落ち着いてきたようで……リリスの目から大粒の涙が流れ落ちるのが見えた。そして……。「そろそろ落ち着いたかい?」と俺が聞くと……小さくコクンと首を振る。「大丈夫そう?」と聞いたら……またもや小さくコクンと首を振る。その行動を繰り返して……5分程経ってからようやく話し始めたのであった。俺は……『スキルの勇者神』の話を聞いていた。そして……。『スキル』と『勇者神の加護』の関係性についても聞いてみたのである。

俺が聞きたかった内容の一つ目は……。リゼルと融合したのはいつ頃なのかという事で……。その答えは『2年前』ということだった。リゼルとリリスは、『女神』という共通点があり、リゼルと『合体した女神リリスはリゼルの一部だった』と、リゼルが説明した通りだったらしい。そして、リゼルは俺と同じように、【未来予知】で自分が『女神に倒される』ことが見えてしまったそうだ。

そして……『勇者神リゼル』が持っていた固有スキルが……『勇者神の力』だということなのだが……。俺は、それを聞いて疑問に思ったことを質問することにした。まずは、この『スキル』は一体なんなのだろう?リゼルの話によると……『女神は、人間族に勇者神を生み出す為に、人間達に与えた能力であり、スキルを与えた女神によって能力の強さは異なるし、同じ女神が勇者に与える場合でも異なるスキルになることもあるみたい。そして……女神の力を持っている者が『勇者神』となるのでは無く、この『勇者神の力』を持って生まれる者がいるので、それが真の勇者神だと教えてくれた。』と言っていたからだ。

その話の内容で……。俺には1つ気になったことがあったので、リゼルに確認した。リゼルは、スキルや称号などを俺が『奪う』事ができるという説明をしていたので、俺が奪ったスキルと称号を『スキル強奪』の力で奪い取ることができたのかという事を……。しかし……『スキルの勇者神の力』というのは特別な力らしく……。リゼルの言う通りで『全ての勇者神が持つ力ではないが……一部の勇者神の持つ力』だと言われたので……残念だが無理という事が分かったのである。

それからリゼルの話を聞いた時に……『スキル強奪』がレベルMAXになったことを伝えようと思っていたのを忘れていたので、リゼルにそのことを伝えた。

『ステータス』を見てくれと言われて……俺はステータスを確認してみると……。確かに、レベルの上限である999を超えて、さらに上がっていた。俺のレベル上限値である999が1000を超えた時は……ステータスの値が上昇していたし、スキルのレベルも上昇していたが、ステータスの数値だけは99が上限値で変わっていなかった。

俺はリゼルに……。俺と同じような方法でスキルを手に入れた奴らがこの世界に存在している可能性はあるのか?もし存在していたとしたら、そいつらも魔王に滅ぼされているのかを聞いてみると……『それはわからない。私はその人物を感知することができない。』と答えてきたので、俺はその人物がどこにいるのかを聞いたが……。

「わかりません。私とリゼルが分離したのが2年前なのですが、その時に『勇者神様が、他の勇者神様を倒しに行くと言って消えてしまいました。』ということをリリスは言い残していなくなりました。」と寂しそうな顔をしていたので……。

『スキルの勇者神の加護』の効果に『女神の降臨・女神との絆』があるので、女神と何かしら関係があるのではないかと思うから、リゼルは消えたのではなく……。俺に力を与えに来ただけだと思っているよ。」と言うと……リゼルは驚いた顔をした後……俺に向かって頭を下げたのであった。

『リリス』が、急に苦しみ出して、俺に助けを求めてきたのだが……彼女の手が伸びてきて……「お願いします。私を救って下さい!」と言われてから、急に彼女が光始めた。そして……。彼女を見ると、俺の腕の中にスッポリと収まるくらいの小さな少女になっていた。俺に体を預けるようにして寄りかかってきていたが……。「もう……大丈夫です……。ありがとうございました。もう貴方からもらった力をお返ししますね。私は消えてしまう前に貴方に会いたいと思って、ここに来てしまいました……。貴方に私の力が宿るはずだったんですが……。なぜか、私の力が貴方の中に入った後に……消えかけてしまいました……。でも……。貴方のおかげなんです……。貴方のおかげで……私が消えずにすんだんです……。本当にありがとうございました。そして……。私は……貴方と離れたくないんです……。貴方と一緒にいたい……。貴方のことが好きです……。私も一緒にいて良いですか?」と上目遣いで見つめながら言われてしまったのだ。俺はそんな彼女のことを見つめ返して、「ああ、これからずっと俺と一緒にいてほしい……。」と答えると……「えへっ♪やったー!嬉しい!これから宜しくお願い致しますね。」と言ってくれたのである。俺は……『大賢者の杖・魔法石 スキルの勇者神の加護』と『魔導士神の祝福』と……『聖女神の癒し』と『女神の祈り』という4つの『大賢王の装備一式』と『大勇者の装備一式』と『勇者王の指輪』と『剣豪将軍の刀』『妖術師のローブ』『精霊使いの女帝の靴』を譲渡してくれたのだが……。俺は……「こんな高価な物を俺なんかがもらって良いのだろうか?」と言ったところ……「はい、貴方の為に作ったのですから……。私はもう貴方と別れるのは嫌なのです……。だから私を幸せにしてください……。貴方は私の命を助けてくれました……。

今度は……私の幸せを……助けてくれる番じゃないでしょうか……。私には……もう貴方しか……いないのです……。貴方とならきっと……。」と言ったので……。俺は……「ありがとう……。必ず幸せにする……。」と答えたのだった。そして……『リゼル』が……。「これで、この子は完全に消滅しちゃいます……。貴方と融合すれば……。」と言ったところで……彼女は……。意識を失って倒れてしまったのだった。俺と融合すると死んでしまうらしい。そんな話をしているうちにリリスは目覚めて……

『リゼッタ』と『リリリナ』と『リカリカ』が俺に抱きついてくる……。俺は、みんなを引き剥がしてから……

『俺の妻』である……『女神リリス』のことを『女神リリス』と名前で呼ぶことにした。そして……今の状態だと、女神リリスは消滅してしまうが、融合した状態で俺が『スキル強奪』を使えば、リリスを女神に戻すことができるはずだという事を説明した。そして……今すぐにやってくれないか?と言われてしまったが……まだ、やらなければならないことがあるので、少し待ってほしいと告げると…… 女神が……「わかったよ。じゃあね。早く迎えに来てね。」と言いながら微笑んでから消えていった……。その後……。俺の胸の中にはリゼルがいたはずなのに、今俺の腕の中ではリリスが微笑んでいたのである。俺と融合したことで、女神が復活できたようで…… 俺は……「君の名前は……。リーゼと呼ぼうかな……。」と言うと、「はいっ!」と返事をした後に……「よろしくお願いします。ご主人様。これからはリゼルではなく、リーゼとして接してくれますか?」と言われて……。俺は笑顔で「勿論だよ。」と答えたのだった。

俺がそんな風に考えていると……突然、部屋のドアが開いて……鈴木が入ってきて……リゼルだった存在に気づいたようだ。

俺が「大丈夫だから心配しないでくれ……。これから俺の嫁になる女性なんだ。」と答えると…… 鈴木も俺の言葉を信じてくれたようで……リゼルが……「これから、この世界で一緒に過ごしていきましょうね。真一さんも私達の仲間になって下さいますか?」と聞いてきたので……。俺は「当たり前だろ……。それに……俺の方こそ仲間に入れてもらえたら嬉しい。こちらこそ宜しく頼むよ。リリス、俺には今まで色々とあったけど……それでも、これから一緒に頑張っていけると信じているから……俺達を支えてくれるかい?」と言うと……

「うん!絶対に真一様と、お姉さまと、美紀さん、そして……。リゼルを大事にしてくれるなら……信じてあげるわ。」

こうして、俺はリゼルだった存在を受け入れることが出来たのである。俺達は、田中と佐藤とも挨拶をしたが、田中には「良かったな。」と言われただけだったが、俺達がこの世界に転生する前に世話になった、あの『勇者神リゼル』だったことを話したら……。

とても喜ばれて、俺と握手をして泣いていたのだった。

それから、リゼルに、リゼルと融合することで、俺に新しい固有スキルが生えていた事を告げたあと……「俺のステータスを見てくれ……。俺に何か変化が起きてるんじゃないかと思うんだけど……」と伝えると……リゼルが驚いて……。

リゼルのステータスを確認すると……。やはり、俺と同じ固有スキルを持っていたので、リゼルのステータスにも影響があったみたいだ。そして……リゼルが「私と真一様のスキルは……。融合して、お互いが相手の固有スキルを吸収する事が出来るみたいなんです……。これは……夫婦にならないと発動しないようです……。私は嬉しいです。」と言って俺の手を掴んできたので、俺はその手を握った。

リゼルは……「リゼルでいいんですよ……。私のこともリリスと呼んで下さい。それと……。私に変なことをしようなんて考えないでくださいね? 」と言われたので…… 俺は苦笑いしながら「もちろんだ。約束するよ。リゼルのことはこれから大切にするつもりだ。リゼルとは仲良くやっていきたいと思っている。」

リゼルは「はい、そうして下さい。それで良いです。」と微笑みながら言ってきたのである。そして……俺は自分のスキルの確認を行ったのだが……どう考えても、『大賢王』『大賢者』の称号に違和感を感じたのだ。そして俺は……【神眼】で鑑定を行ってみることにすると……

『ステータス』を見てみると、 称号のところに『大賢王』というのが表示されていた。そして……俺のスキルを確認していくと…… まず……『大賢者』に関しては……スキル一覧で確認してみると……スキルが増えていた。その増えていたスキルというのが……『スキル複製』というスキルだったので……

「なぁ……この『スキル複製』というのは、このスキルを持つ者が触れたものであれば、どんなものでもコピーすることができるスキルってことなのか?」と質問してみたが……リゼルは首を傾げていた……。俺は「『ステータス』の『スキル』を開いて、スキルの一覧を確認して見てくれ。その中に『スキルコピー』というスキルがあればそれだと思うからさ。」と言うと……「わかりました。『スキルオープン』!」とリゼルが叫ぶと……

「ありました!『勇者神の加護・大賢者・大勇者』に『スキル複写』が付いています!」

俺は……「それが『スキルコピー』っていう名前の能力だ。

スキルの熟練度を上げていけば、自分以外の人に使うことも出来ると思うから……。頑張ってほしい。俺は……多分使えないんだと思う……。」「はい……。でも……。頑張ります!」と笑顔を見せてくれたのであった。俺は『大賢者の杖・魔法石 大賢王の装備一式』を彼女に渡して、「これは、俺が君の為に作ってプレゼントしたものだから受け取ってほしい……。それと……俺のアイテムボックスの中に入っている、俺が作った魔法の指輪や首飾りなんかも好きなだけ持っていってくれ……。俺は使わないものだから……。」と言うと、彼女は喜んでくれたのだ。そして、「私は……真一様の妻になれるなら嬉しいですよ。これからも一緒にいさせてくださいね。私の事は……これからもずっと一緒にいると思ってくれて構いません。私は貴方と一緒にいることが一番幸せなのです。私は……これからずっと貴方と一緒にいて良いんですね?」と言ってきたのだ。

俺は「ああ、勿論だ。これからもずっと一緒だよ。」と答えると、「嬉しい!ありがとう!じゃあね……。おやすみなさい♪」と言って……俺の腕の中に収まった。俺は彼女をベッドまで連れていき、お姫様抱っこをしながら寝かせた。

「ありがとう……。嬉しい……。ずっと……一緒にいてね。大好き!チュッ!」と最後にキスして俺の唇を奪ってから眠ってしまったのである。俺は……彼女の額に口づけをしてから……部屋を出ていったのだった。リゼルと話が出来たことだけでも嬉しかったのだが、これから一緒に暮らせることになったし、俺は彼女と出会えたことをとても感謝したのだった。そして俺はリゼルと話が出来たこと、そして、リゼルを女神に戻すことが出来そうな事に心から喜んだのだった。

私は……。『女神の癒しの力』『女帝』『女神の祈りの力』『精霊王の祝福』『妖術師の力』『妖術師』『精霊使いの女帝の靴』『精霊使いの女帝の指輪』『女神の聖女の服』『聖女神の神剣』など……『精霊王の杖』『女神の聖魔のローブ』『女神の女帝の鎧』と『女神の女帝の靴』は……。全て田中様に献上致しました。

田中様には本当によくして頂き、私はとても助かりました……。田中様は……真一様のお仲間になってくださるので……きっと真一様は幸せになるはずです……。そして、私は真一様のことを想い続けて、これからもずっと愛していきます。そして、私には真一様がいれば何も怖いものはありません。

真一様が私のことを好きだと……結婚して欲しいと……おっしゃってくださいました。だから……真一様が目覚めるまで待っていました。これからの日々に希望が持てるように、真一様を起こさないように、優しくお話しをしていたら……。気がつけば……私も寝てしまっていたようですね……。

田中様にお話をしてからすぐに、鈴木様と理紗さんが起きられまして、みんながリビングルームで話し合いを始めることになりました。私が……「真一様が目を覚まされるかもしれませんので、寝室にいても宜しいでしょうか?」と鈴木様に言うと、鈴木様は「構わないわ。それに……。貴女が、これから先……この世界にいる限り……その男は、貴女がいないと生きていけないのよ。その男が目覚めたとき……一番近くに居るべきは……間違いなく……その貴女よ……。」と言われてしまい、田中様も佐藤様も「「そうだな……。その男の傍にいたい気持ちはよくわかるぞ……。だが、俺たちの邪魔をするなら許せないけど……。お前達は俺達に危害を加えなかった……。それに……。この男が起きたときには……既にお前達も仲間になっているかもしれないからな……。」」と仰ってくれたのでありがたかったです。そして……私はまた眠りにつきます……。そして……。これから起きるだろう素晴らしい未来に胸を踊らせているのであります。私はこの方達の優しさに触れられてとても嬉しいです。真一様が目覚められる日が待ち遠しくてたまりません。私は、早く真一様に再会して、真一様に尽くしたいと本気で思うようになり、この世界の人達が幸せに生きていける世界を私は作りたいと思うようになりました。

私は今までにこんなに人を好きになった事はないのです。だから……絶対に真一様と結婚をしたいと思います。

田中様、真一様に変なことをしたくせに調子に乗らないでください。私達は、真一様が起きるまでに田中様を鍛えなおすことを決定しています。その点を踏まえておいて下さいね。そして……田中様には覚悟してもらいますからそのつもりで。

この人は今までの人生が上手くいかなさすぎておかしくなっています。でも……真一が救ってあげないといけないのです。私は真ちゃんに惚れてしまったので……。

そして、私は……。真一を必ず助け出します。もう二度と離れることなんてないでしょう。私の運命の相手は必ずこの人だと確信したのだから。真一様に何かがあったとしたならば……真一様の魂を見つけて、私が助けてあげるつもりなので安心してください。

そして……これから真一が暮らすことになる世界について色々と聞き出したのである。この異世界には、『聖国リゼル』と呼ばれる大きな宗教国家があるらしい。その国の教皇には代々女神である『アルティナ・シルフィード』という女性が即位しているらしく、リゼルが住んでいる国にはリゼル教という教団が存在していて、国民全員が信者だということがわかった。

そして、その教団は……女神であるリゼルが初代の大勇者である太郎とリゼルとの間に産まれた娘だと言い伝えており、リゼルの事を神のように崇めているということだ。

リゼルは『神』ではなく、『大魔王の娘』で、リゼルの父親は『大賢者』のスキルを持った人間だということも判明したので……。俺が知っている大賢者とは全然違ったので少しびっくりしてしまった。それと……この世界での勇者は、『リゼルがリゼルの使徒を召喚したから、大魔王を倒せる力を持った勇者が現れない』ということにしてあるようだ。それと、リゼルの加護を受けている人間は、『大神官』『大司祭』『司教』『司祭』『神父』『修道士』『シスター』『修道女』『巫女』『シスター』などと言われているようで……。加護を受けた者は、ステータスの補正を受けることができるので……普通の一般人よりもステータスが高く、特別な加護が与えられることが多いのだということもわかった。

それと……俺がこの世界に飛ばされた時、俺が『大魔剣士(仮)』の称号を得ていたのだが、称号の内容を見てみると、

称号:『魔剣術』スキル所有者専用特殊職・『魔騎士』が取得可能となる と表示されていた。これは……『大魔剣士』から転職が可能になるということだろうか?と思ったので確認したら、やはりそうであった。

俺の職業は……『大魔導士』になっていた。これも俺の予想どおりだった。称号欄を見ると……。

『魔導を極めん者』が追加されていたのだった。これは、多分だが、俺が新たに手に入れた『大賢王』というスキルの影響ではないかと思っている。大賢王は魔法を極めた者が得る称号だと思うから……。『スキルコピー』の能力も使えるようになったはずだから……俺が魔法スキルを持っている人たちの持っているスキルをコピーできると思う。試してみたいが……。今は我慢して、今晩の『リゼル』の復活の儀式の時にでも使ってみようかと思う。あとは……リゼルからもらったスキルは、スキル名が表示されずに、効果だけが頭に浮かんでくるようになっている。

そして……俺はスキルを確認していく。スキルの熟練度も上がっているようなので嬉しい。『スキル複写』のスキルは熟練度を上げないと使えないらしいのだが、熟練度はどうやったら上げることが出来るのかわからなかったので放置するしかなかったのだ。熟練度が上がることで、能力の効果が強くなるのかとかも分からないのであった。

それと……『女神の祈り』と『精霊王の祈り』という能力が増えているのだが……。どういう能力なのかよくわからなかった。俺は……。女神の癒しの力で傷口を治すと、精霊王が傷口を修復するという能力を想像して使ったところ……。

《スキルの効果を発動します。対象を指定してください》 という音声案内が流れてきたのだ!そして……その言葉通りにすると……目の前の田中くんの腕にあった小さな擦り傷を負っている部分に手をかざして……「女神の癒し!」と唱えると……みるみるうちに、彼の腕にできていたすりむいた跡がなくなり綺麗になったのだった。そして、念の為にと……俺は田中君の顔や身体にある擦り傷も全て直した。

そして……田中君は、痛みが消えた自分の手を見つめて、「おおー!」と言って喜び始めたのである。それを見ていた他の人も「すごいな……」と驚いていたが……俺が一番驚いたのである。俺は田中君の擦り傷を負ったところに触っていたので……「これって……俺もできるんじゃないか?」と疑問が浮かんできたのでやってみたのである。そして……俺が「女神の祈り!」と言うと……。

「スキルが使えますよ?」という声が脳内に流れ込んできた。そして、田中君と同じように……目の前にいた田中君の顔にも同じように……擦り傷が出来ていた。「女神の癒し!!」と言うと……一瞬で……田中君の顔の擦り傷がなくなったのだった。「すげぇ~。」と思ってしまった。俺の予想では……。

「女神の祈りは、女神に祈る事で発動し、対象を治癒することが出来る。」

「精霊王の祈りは、精霊に祈る事によって、対象に治癒の力を宿す事が出来る」のではないかと考えていたが……俺の考え通り、2つとも……『女神』に関係するものだったのである。

俺は田中君の顔の擦り傷も治療したので……彼が持っていたスマホを返すように言うと、彼は素直にスマホを渡してくれたので、このスマホも、この場で使わせてもらうことにした。

俺はこの『女神』の二つの力を使って……。田中君のスマホで動画を撮影し、それをネット上に公開することで、多くの人の役に立ちたいと思った。

そして……田中君のスマホを使い、撮影した動画を編集しながら考えていた……。『田中 健司』、『田中 真一』、『佐藤 優香』という本名で投稿した場合……身バレしないだろうか?と……。特に……俺と田中くんの実名を出すのはリスクが大きすぎるのではないだろうか?と不安になってしまったので……。俺が考えた案はこうだ。

1 まず最初に俺が『鈴木 亮介』という名前で撮影を始める。

2 次に佐藤さんを鈴木の名前で呼ぶ 3 最後に田中君を『高橋 誠』という名前に変える 4 最後に鈴木が「佐藤さんが呼んでいた田中って名前に変えて欲しいんだよね。」と話す。

この動画は俺のSNSのアカウントで公開しよう。そして……この動画を見た人の中で、『田中 健太』→『田中 健二』→『鈴木 健二』→『鈴木 誠』に変えた人がいれば、それはその人に問題がないならそのままにしておくが……もしかしたら……。『田中 健司』『田中 真一』『鈴木 優子』などの実名を使っている人たちも変えるかもしれなかった。この世界にいる人たちにとってみれば……。自分が使っている名前が偽名に思えてくる可能性もある。だから……。『鈴木 健一』『鈴木 優斗』『高橋 誠』のように、この世界の苗字に『田中』がつく可能性はあると思ったので、そういうことも考慮に入れて、動画の編集をしていくことにする。ちなみに……。この世界での名前は漢字でもOKで、『高橋 一也』でも『山田 一也』でも『伊藤 一哉』でも良いようだ。この世界では『真一』という名を持つ人は多いらしいので……その人たちを特定されることはほぼないらしいので安心している。それと……『一弥』と呼ばれる場合もあるそうなので……俺の芸名『鈴木 一也』は少し違和感があったので、変えたほうがいいかもしれないと思ったが、そのへんは考えながら決めようと思う。それにしても……『真一』と呼ばれる人が多くて、逆によかったと思っている。『一也』と呼ばれると、どうしても自分と同じ『一也』がいるのではないかと疑心暗鬼になりそうだから。

それと……動画に映っている場所がこの世界のどこかである可能性が高い。俺達は『大魔王リゼルの封印されている神殿』がある国に向かっているわけだし……。その国が『リゼル』という国名だったからね。そして……俺が撮影したのが、『勇者』の国の王都だからね。

まぁ、王都内で撮影をしてしまえば良いのだろうが……さすがに王城の中まで撮影するのはマズいと思ったから、俺は別の場所で撮ったので、俺達が『リゼル』の国に入るのは、もうしばらく後のことになる。『勇者』達と会う時にも『リゼル』と会えた方が都合が良さそうなので……。

あと……この世界での名前は本名ではなく別の名字にした方が良いかと思うが……正直、この世界で田中姓がどれくらいあるのかは分からなかったが……俺の予想でしかないけど、『田中』姓はそこまで多くないのではと思う。『鈴木』と、『田中』は意外と多いと思うから、『鈴木』を田中にしてもいいかなと思う。田中君は……多分だが……本名のはずだから……もし違うのならば……この世界の誰かが彼につけた名前のはずだから……。それと……もしかしてだけど……。俺の『コピー&貼り付け』の能力を使えば……。『佐藤』や『田中』という姓の人を、この世界に存在する田中くんと同じような感じで名前を変えられるのではないか?と思い……。

とりあえず……試してみるとしよう……。ということで、俺は自分のSNSで自分の『アカウント名 亮介』の名前を変えるために……『スキル コピー&貼付』を発動してみたのである……。『コピー』の方は既に持っているが……。今回は……。スキルコピーと貼付けを同時に使ってみる。俺は『スキルコピー』のスキルを持っているが、これは1日3回までしか発動できないスキルだ……。つまり……既に俺は1回スキルを使用している状態なのである。そして……。俺は『スキルコピー』と呟く。すると……目の前には……スキル名が表示され、詳細画面が表示される……。そこに……俺が知っているスキルの詳細が記載されていた。これは『大魔導士(職業)専用スキル』のようで……俺は、自分の職業を確認するが職業欄には大魔導士と記載されていて……。俺はまだ『大魔導士専用スキル』を持っていないからか職業欄の表示が変わることは無かった。

スキル名:

『大魔導士』スキル内容:『大魔導士(職業)専用スキル』・スキル熟練度が100%になるか、スキル名を変更することにより取得可能となる。熟練度を上げることでスキル効果が強化されていく。レベルはスキル熟練度×0.1である。スキル名を変えることで効果を変化させることが可能。熟練度が50%の状態で、熟練度100になるまで上げることで効果が変化し……スキル名が変わり、効果が上昇される。スキル名を変えられるのはスキル熟練度が100%になった時と変更可能になってから24時間が経過したときのみとする。熟練度を上げる方法は、熟練度が上がった状態の対象者に接触することである。スキルを使用する際に、熟練度が80%未満の場合、熟練度を80%まで上げることが可能である。熟練度を最大に上げることで効果が強まると同時に……。効果を任意で調整することができるようになる。スキル名は一度変えると元に戻すことは出来ないので注意が必要です。スキルは複数習得することが可能。ただし……。同じ系統のスキルを習得する場合、同じものを選ぶ必要があります。異なるスキルの場合はスキルレベルの合計値が20を超えないように注意して選んでください。『コピー&貼付(能力コピー不可、対象物限定)』の効果は、対象物の能力や特性などを全て記憶していなければならないため、『複写』、『転写』とは併用できません。

俺は説明文を読んだ上で考えた……。そして……『スキルコピー』を使ってみたのだ……。『大賢者』と表示されるように……。そして……スキルを起動させたら……俺のステータス画面に表示されていた俺のスキルが全て消えた……。

そして……『コピー&貼付』をクリックして……。自分のスマホに……俺が今見たスキルの説明文をコピペして貼り付けるイメージをしながら『スキル貼り付け!』と念じると……。『スキル 大賢人』スキルの使い方と説明が書かれた画面が表示されたのである。

『スキル』の使用方法で一番最初に出てきた項目は……『熟練度の確認方法』であった。そこには……以下の文章が記載されており……『※この世界の魔法は、MPを使用することで使用します。魔力を体に巡らせれば、身体能力が強化し、攻撃力が上がります。』と書かれていたのである。その次のページを捲ると……『大賢者専用の機能について』と記載された説明があったので読んでみると……。『スキルの使い方』という機能が使えて……それは俺が元々知っていたが……俺が持っていた全てのスキルを使うことができるというものだった。さらに、その『大賢者』の『オリジナル技能』を使えるようになり……それを使用することができるというものも記載されており……それを使用して使用すると……熟練度が上がっていき……新しい機能が増えていくようだった。『この世界の魔術とスキルの関係性については……。こちらの世界では、『スキル』として存在しています。そして……。あなたも気がついているでしょう。あなたの世界の言葉で……。スキルというのは『才能』、『技術』、『経験』などの総称を指し示す言葉であると……私も気がついていました。『この世界の言葉で言うと』、私の『コピー』という技能は、『技』や『才能』の集合体という意味ですね。『大賢人』という職業に付く事で使えるこの『固有技能』も同じ言葉を使うことができましたね。私は、あなたが使うこの世界を超越したこの『固有能力』は『超神業』・『超絶技巧』もしくは『極神業』・『極絶技巧』などの呼び方の方が分かりやすいと思っています。この技能の能力は、『コピーする』、『貼り付ける』という言葉のイメージ通りのことを実現する力です。その人の技能や才能といったものを丸ごと奪うようなことは出来ませんが……。あなたの持つスキルは、その人が長年努力して手に入れた『その人だけが持つ特別な才能』なのです。それが……簡単に手に入るということは……ズルみたいなものですよね……。そういうことを防ぐために、この『大賢人はその『固有技能』にロックをかけてあります。

それは、私が『大魔導士』(職業)の技能に施しているのと同じものです。ただ、私の場合、この『コピー&貼付』のような使い方ではなく、例えば『剣聖』『拳聖』『槍使い』『魔法使い』のように複数のジョブについている人たちの熟練度を上げていきながら……それらの上級職を一気に取得した時に得られる『複合上位職』の『勇者』になれるとか……。そういうことを想定していまして……。まぁ、まだその段階ではないから使えないだけで……。将来的にはできるようになるかもしれないけどね……。

それでね。『コピー&貼付』の技能を悪用しようとする者が現れないようにと、『この世界の理に反する行動を取った場合、使用者の魂が消滅する』と制限を設けたんだ。でも、それだけだとつまらないから、『大魔導師(職業)専用技能』『超神業』に関しては『コピーする』、『貼り付ける』ことができるのは、自分の所持していない技能のみに制限を加えたのである。その方が、自分の技量に合わせてコピーできるものが選べるからね……。でも……。これなら……。田中くんにもできると思うから使ってもいいよ!というか、もう既に使っているのかな?』

というメッセージがあった。俺は……『この世界にはそんな名前の職種は無いぞ』と思いつつ……その文章を読んでいると…… 【スキルコピー レベル2を取得しました】

という音声が流れて来て……その瞬間から……スキルコピーの技能に新たに3つの機能が加わっていた……。

まず一つ目が……。俺のステータス画面から……その3つが消えて、『コピー&貼付』の機能だけ残った状態になったのである。

次に……その3つに追加された機能が……。

・『熟練度』を最大まで上げておくと……新しくコピーできるようになった時に通知が出る。

・コピーできた時に、コピー元の技能名とコピー先の名前が同時に表示されるようになる。

このようになった。そして……。

俺と鈴木のスマホにメールが届いたのである。俺は、田中君のくれた能力で……『コピー&貼付』の『コピー元の名前と貼り付け先の名前の両方』を表示するように念じてみると……。俺の持っている全ての『コピー&貼り付け』という技能の熟練度がそれぞれ120%になっていた。つまり、俺が熟練度120%になっているという事は……。この世界のどこかに俺と同じような存在がいる可能性があるということなのか? それにしても……俺達には時間がない……。俺と鈴木の二人だけではリゼルと魔王を倒す事はできない……。どうしたものか? と俺が悩んでいるところに……スマホが鳴る……。相手を見ると……それは理恵だった。とりあえず電話に出ることにしたのであった。

俺は今朝、起きた出来事を思い出したのだ……。確か……異世界転移してから……今日で三日目だな……。俺は昨日のうちに理恵に電話をして、今まで起こった事を説明してあるので、彼女は信じてくれていた……。だが、彼女からは……。「明日、学校終わったら家に行くからさ……。話したいことがあるんだよ。」と言われたのである。俺は彼女の家に行けば何か変わるんじゃないかと思い、「分かった。俺の家に来てくれ。」と言った。それから……俺は寝ることにして……今に至る。俺は起きて……支度をすると家を出たのである。俺が家から出ようとすると……。俺の母親が俺を呼び止めてきて……。

「ねぇ亮介、なんか顔色悪くない?」

そう言った母親の額に手を当てたのだが……。俺の手は冷たかったようだ……。

母さん……少し熱があるみたいだけど大丈夫だよ……。心配してくれてありがとう……。

俺は母の言葉を流しつつ、俺は家を飛び出したのである。母は……「無理はしないでよ!」と言って……俺を玄関の外で見送ってくれていた。いつもよりも早く学校に着き教室に入る……。そして、みんなに声をかける……。「おはよう。」と……。みんなは元気よく挨拶を返してくれた……。

田中は……。リゼルと別れたばかりで辛いだろうが……。田中にだけは事情を説明しなければならない……。なぜなら……彼はこの世界に迷い込んだ日本人なのだ。この世界に来るまでの記憶は曖昧のようで、この世界での記憶しかないと言っていた。俺と大勇者と佐藤の三人はこの世界にやってきた時のことしか覚えていないが……田中はそのあとの出来事を断片的に記憶していて……。その記憶が、彼が日本に帰るために必要なものとなるからだ。俺達はその情報を彼のために集めている最中だったのである。だから、彼に協力して欲しいのが本音である。しかし……彼は記憶を失っており……その情報が本当に正しいものかどうかも判断できないのである。俺は……彼の記憶が戻ることを祈ってはいたが……今は……。彼の力を借りたいと思っている。

田中は俺を見て驚いていた……。俺が体調悪そうなのをすぐに感じ取っていたのだろう。そして……自分の席に着く前に……自分の席に鞄を置いてきて……。俺のところへやってきた。

そして……。俺に話しかけてきたのだ。

「お前の顔色は確かに悪い……。俺の気のせいかもしれないけど……。ちょっと待っていろ。」

と俺に言うと……自分の席に戻っていった……。

しばらくすると……田中が手に袋を持って戻ってきた……。

田中は俺に差し出す……。中身を見ろと……。中に入っていたものはスポーツドリンクや冷却シートなどが入っていた。

それを見て俺は田中の目を見る。田中は俺をまっすぐ見て言う。

「こんなもので良かったら持っていけよ。今から必要になるかもしれんだろう。俺のお古で申し訳ないが……。汗を拭く用のタオルや制汗剤もある。それと……俺の母さんが作ってくれた弁当を一緒に入れておく。ちゃんと食えよ。じゃあな!!」

と田中は言って……。走って教室から出ていってしまったのである。俺は……渡された物を見ていた……。この世界にないものがたくさんあるし……。これは間違いなく『田中』が作ったものだと確信して……。『スキル』を使ったのか分からないが……。田中にはこの世界に来たときの記憶はあるのだろう。でなければこんなに俺のことを気にかけてくれないだろう。そして……『この世界の人間じゃない田中』だからこそ出来る事がある。『田中』にしか出来ない事が……この世界に存在しているはずだと俺も思うのだった。

放課後になり……俺の所に一人の生徒が近寄ってくる。その生徒は俺の幼馴染の『高梨理恵』だ。俺の大事な友人の一人である。

彼女がなぜこの場にいるかというと……。それは、彼女から説明してもらおうと思ったのである。実は……今日の昼休みの時に彼女と会っているのだ。俺は自分の家の場所を教えていて……。そこに来て欲しいという連絡を受けていて、俺は今朝の件もあって少し不安を覚えながらも、彼女に電話をかけたのである。その時に……俺は『田中君』の話をしたのだ。その話を聞いた後に……。彼女は「私にできることなら何でもやるよ!絶対に助けてあげるから!待っていてね。すぐに向かうから。」と言ってくれたのだった。

その後すぐにチャイムが鳴ると……俺は担任の先生と一緒に保健室に向かったのである。保健室で、俺達のことを知っている養護教諭が出迎えてくれた。その人に案内された部屋にはベッドが並んであり、そのうちの一つに横になって……布団を被っている人物が俺のクラスメイトだということが分かり……。俺達はその人物の側に行って様子を確認することにした。

「先生、俺は教室に残ります。」と担任の山田先生に言うと……。俺の様子を見てから……、俺と山田先生を残して他の人は外に出ていった。しばらくしてから、俺に山田が言ってきたのである。

私は山田です。よろしくお願いします。この子の親御さんの知り合いです。今日は私が保護者代理として付き添います。安心して下さいね。何かあった時は私の指示に従ってください。もし、私の知らないことが起きた場合は……。私が対応させていただきます。それで、良いですか? はい。

「分かりました。お任せします。ただ、その子は少し体調が悪いみたいなんです。無理をさせないでやって欲しいのですが、それでも構いませんか?」と言うと……。俺は少し考え込んでしまった。『この子のためになら、何ができるんだろう?と』と。でも……答えは出たんだ……。

もちろんです。私はその覚悟の上でここに来たので問題ありません。では、こちらの方に付いてきてください。と言い、その子の部屋まで移動すると、その女の子が出てきて……。「あなたが田中亮介さんですか?」と言ったのだ。そして、俺に自己紹介してきたんだ。

私は……『高坂優美』と言います。この子は私の義理の娘になるはずなのですが……。なぜか記憶喪失になっていて……『自分』という人格だけが残っていた状態なんですね。私はこの子が産まれてからずっと面倒を見ていましたから……。実の娘のように思っていました。

その話を聞いて俺は驚いた。その話を信じるには十分な根拠があると思ったからである。

俺は田中のスマホに電話をかけた。

「おい田中!!どういう事なんだ!?」と俺は怒鳴りながら言った。すると…… 俺は田中の家に行ったんだよ……。お前の母親さんが料理を作るっていうんでな。お前の母さんがお前のことを心配していたので、お前の家に電話をかけたんだけど、留守で……。で、田中の母さんに連絡をとったんだよ。そしたら……「うちの亮介が……どうやら体調悪いみたいで……心配だから見てきてあげてくれないかしら?」と言われて、田中の家で待機していたわけだよ……。で、様子を見ていたら急に倒れて、意識を失って……気が付いたらここに居たみたいでさぁ。俺が目覚めたときにはもうこうなっていたんだ……。ごめんな。

「そういう事だったのか……」

と言って……俺達は少しだけ話をすると……お互いの現状を話し合ったのであった。

俺と高橋は教室の椅子に座って待っていたのだが……。高坂が帰ってきた。どうやら、これから話し合いをするらしい……。高橋は俺達に向かって…… 私は高坂優美と言います。この度は本当に申し訳ないことをしました。田中くんが大変なお仕事をされていて……忙しいのにもかかわらず、お時間を取って頂いたようで、感謝の言葉しかありません。本当に申し訳ありませんでした。この償いは必ずさせてもらいます。

と頭を下げていた……。どうやら……高坂がこの教室に入ってきた時から俺達がどんな関係なのかを分かっていたようだ……。彼女は、俺と大勇者がリゼルと大神様から頼まれたことに対して協力してくれるとの事だった。俺達は大魔城に向かい、まずは魔王様に説明をしに行くことにして、リゼルに貰った地図を見ながら歩いていたのだが……なかなか辿りつけないでいたのだ……。そこで……俺が「なぁ……この道であってるよな?」と聞くと……大勇者と佐藤は同時に「う~ん……。分からなくなった。迷ったみたいだ。すまない……。」と言っていた。そんなとき……高坂は……。

「もしかして、道に迷いました?」と言ってきたので……。俺が「そうだけど……どうして?」と聞いたのだが……彼女は……、少し困った顔をしてから、少し笑みを見せて言うのだった。

「私が連れて行って差し上げましょうか?」と……。

俺は高坂のステータスを見たので、彼女の強さを知っていたが、念の為に確認してみた。そして……俺は思った。やっぱりレベルが高い……。俺やリゼルよりは弱いだろうけど……普通の高校生が敵わないのは確かだ……。しかも……『勇者』の称号を持っているので……俺やリゼルが持っていないスキルがたくさん使えるので、この世界に来て間もないのにも関わらず強い……。それに……。彼女は俺がこの世界で見たことのない職業に就いている。だから……もしかしたら……。

と思いながらも聞いてみると、予想通りだった。『剣豪』と書かれていた。大賢者に聞いてみると、『剣士の上位互換』だという事が分かったのだった。俺は高坂の実力を確認した上で……彼女に「頼むよ。」とお願いすることにした。佐藤は「俺がついて行こう!」と言ってくれたのだった。そして……俺たちは高坂についていくのである。そして……歩き出して10分ほど経った時だろうか……?大勇者と佐藤が立ち止まっていた。

俺達は不思議に思いながら佐藤に近寄る……。

そして……俺も気づいていたが、大勇者が小声で佐藤と高坂に話し掛けた。

俺達は耳を澄ませる。そして……佐藤は「俺が囮になる。その隙に逃げろ。」と小さな声で言うのが聞こえてきたのだ。俺が「何言ってんだ?」と言うと……大魔王が言うのである。

僕は……あの女を知っている……。おそらく……元の世界の住人だと推測するが……。君は、知っているはずだ……。と俺に言って来たのである。俺のスキルの中に【大賢者の千里眼】があるので、スキルを発動させて……。俺達はその女性の姿を見るのだった。

俺が「この女性は……」と思っているときに……佐藤と目が合って……。俺は「俺に任せてくれ。俺なら何とかできるかもしれない。」と言うと……二人は驚く……。俺は続けて話す……。俺の固有能力は……この世界の人なら知らないはずだ……。そして……この世界と俺の元居た世界の人達なら知っていてもおかしくないことだった。俺は、高坂に「少し離れてもらえるかな?ここからは危険な領域なんだ……。」と伝えた。そして……俺達のやりとりを聞いていたのか……高坂は黙って離れていったのである。俺は……俺の持つ能力の中で……一番威力の強い魔法を使うことに決めると、佐藤とアイコンタクトをとって……

『爆裂閃光』

俺が放った一撃必殺の大技は見事に決まり、辺り一面の地形を変えたのであった。俺の固有スキルは、魔力が半分近く消費するかわりに……。広範囲にわたる爆発を発生させる事が出来るのだ。そして……佐藤も俺に続いて攻撃した。

『天変地異』……この大魔法によって地面から炎が上がり、巨大な渦を巻き始める……。

『灼熱の炎』

俺達二人が協力して放つこの合体攻撃で……。相手は完全に消し去ったはずだったのである。そして……その瞬間だった……。俺は自分の身体に違和感を感じたのである。俺は咄嵯の判断で、俺達の近くに居た高坂の腕を掴み、後ろに下がらせていた。そして……俺は、自分の腹部を見て……『やばい』と直感したのである。なぜなら……そこには……。大きな槍が突き刺さっていて、俺の身体を貫き、地面に縫い付けている状態だからである。俺は自分の腹に目線を落とすと……、大量の血が溢れ出している事に気づく。

俺は慌てて回復魔法の発動を行う為に……。俺は高坂に向かって言う。

俺は今から回復する……。だから、君はこの二人を連れて、俺から離れて欲しいんだ。いいかな?俺は死ぬつもりは無いんだ……。君がもしこの世界に転移したばかりであれば、俺は、君を助けたいと思うし……。この二人の仲間なら尚更助けたい。そう思って、俺は行動するんだ。だから……。俺を信じて……、この場は任せて貰えないか? 俺はそう言った後に……

『大治癒』……この呪文を唱える。俺が発動させたのは、リゼルの持っている固有技能の一つの回復系の最強呪文であり、どんな傷でも一瞬で完治させる事が出来るという優れものなのだが……。俺は、その呪文を使ってしまった為、俺自身が『不死者』という特性を持つ事になり、俺は、この異世界で生きていく事になるわけだ。

そして……佐藤の目の前には、俺が居て……。佐藤と話をしている。もちろん、大賢者の力で姿を偽っているわけだが……。俺の能力にこんな使い方があるとは思わなかったよ……。

『大天使』の力は、相手のステータスを全て見破ることが出来る力だと思っていたんだが、この力は……。俺の本当の姿を見せることができるみたいだ……。これは……。本当に凄いな。この能力に気づいたときは本当に嬉しかったな……。だって……これで……リゼルの事を……。いや……やめておこう……。とにかく、この力で、俺は、今まで以上にリゼルを守りやすくなるのが嬉しい。だから……佐藤には、この姿を見せることにする。

俺は大天使の姿で、俺を貫いている武器に手を触れた。俺を刺しているのは、『神器:神龍の聖剣』という名前の神が作り出した最強の武器の一つである。

俺は大魔王の方に視線を移すと、大魔王は驚いたような表情をしていた……。どうやら……俺のスキルの事を思い出してくれたようだ。リゼルのスキルが俺にも使えたので……リゼルと共有化させてもらう。俺の身体はリゼルの物と同じになったわけなので……。俺は……俺自身の能力を使うことができるようになったわけで……。つまり……この世界で……大魔王に次ぐ力を手に入れたわけだ。

佐藤も驚いた顔をしていたが、冷静さを取り戻したようで……。「ありがとうな……」と言ってくれた。

「礼はいらないよ。佐藤、後は任せたぞ。俺は少し休んでくるからな……。」と俺は言って、その場を離れようとした。

佐藤に背中を向けると……。

「真一君、待ってくれ!!どうしてお前は……いつも一人でなんでも背負うんだよ!!」と泣きそうな顔をしていた……。俺はそんな顔をしていた佐藤の顔を見て「俺を誰だと思ってるんだ?」と言って笑う。俺はリゼルの側に寄り添ったのであった。

リゼルの側で座っていた俺は……少しの間だけ眠っていたようである。俺の意識が覚醒するとリゼルは俺の手を握っていた。俺が目覚めたのを確認すると、「おはよう」と言った。俺はリゼルに向かって微笑みかけて「あぁ、起きたよ」と返事をするのだった。するとリゼルが俺に言うのだった。「私はね……真ちゃんのことを絶対に守るから……。私も強くなるわ! 真ちゃんと一緒なら……私は強くなれるような気がするの。これからは二人で……強くなりましょうね!」

俺は「そうだな」と言って、お互いの唇を重ね合わせる。それから、しばらくして俺とリゼルのスマホが鳴る。どうやらメールが来たようだ。俺とリゼルのスマートフォンに届いた内容を確認してみると……『田中と大魔女様達がこっちに来た。あと5分で着くと思うが……田中の様子が変わったらしい……。』というものだった。俺達は、俺の固有能力の1つである……。

《大魔王の加護》を使用して……田中と連絡を取ることにしたのだった。そして……田中がこちらに到着する。リゼルの結界魔法のおかげで、俺たちがここにいると気付かれることはなかったのだが……。

俺はリゼルと共に……。『大魔王城』に戻る。リゼルが大魔女様に話を聞くと……。大魔女さんに頼んで田中を元の状態に戻す事は可能だという事が分かり……。『大勇者召喚』で『大魔王』の称号を持っている俺と、『勇者』の称号を持っているリゼルは、大魔女様の指示に従い、儀式を行った。その結果……無事に成功して、田中の洗脳が解けたようだった。

俺と大魔王は、勇者の称号を持っている佐藤と一緒に……『大魔国』に戻っていく。大勇者である佐藤もレベルがカンストして上限に達しているし、俺達のパーティでは……勇者と大賢者と大魔術師のコンビは無敵と言っても過言ではないのだ。俺達は『勇者』の称号を持っている佐藤を中心に、大勇者の称号を佐藤に与えることにして……。佐藤が勇者と大賢者を仲間にした時にも思ったが……佐藤の職業欄にある勇者の上に書かれている称号の『大勇者』ってなんなのだろうか……。

佐藤が大勇者になったときにも聞いたが……。佐藤が言うには……。大勇者は、他の職業と比べても圧倒的に上位互換になるらしくて……。職業スキルも2倍になるし、大魔王に進化しても、勇者として扱ってくれるらしい……。それに、職業補正が通常の3倍以上になるというチート級の性能になっているということだ。ちなみに……職業スキルとは、普通の人は持っているもので……持っているスキルのレベルを上げて行くことにより習得していくものであるのに対して……。大魔王の俺達みたいな特別な存在は……最初から持っているものだから、普通とは違うのである。

『剣豪』『拳闘士』『魔法使い』の上位互換が大勇者になるんだけど……。大勇者は特殊で……固有技能というものがある。その固有技能というのは……大魔王の固有技能が使えるようになってしまうのである。大賢者とリゼルも持っている技能で、全ての属性魔法の適性を得る事が可能になるという超強力な固有技能だ。佐藤の持っている固有技能である『光』の大天使の力を借りて……『浄化の閃光』を放つ事が出来たりする。また、固有能力の方でも、『聖女の盾』、『光の鎧』などを使用する事が可能なのでかなり反則級の装備となるのだった。

この大賢者と大魔王の力があれば……。

『暗黒世界』のラスボスは楽勝だろと思ったが……。油断禁物である。なぜなら……。

大魔王の世界を乗っ取ろうとしている大魔女は……。大魔王の力を超える力を既に持っているのだから。

俺と大魔導師と大悪魔は、勇者の称号を手に入れた大魔王と一緒に『暗黒世界』に行くために、魔王城を出発したのであった。『大魔女』を倒しに向かうのだ。俺はリゼルの身体に憑依していて……。大魔族と『大悪魔』と大魔獣が同行している。そして……。このメンバーの中で最強の『大魔王』は俺であるわけで……。俺と『勇者』と『大賢者』の佐藤がいるわけで……。『大魔女』を倒すこと自体は簡単なはずだ……。

『魔王城』を出発してから、すぐに俺達は、暗黒世界を抜けたわけなのだが……。

大魔女の領域に入った俺達はすぐに気がつくことになる……。

この空間は異質だと言う事に……。この世界自体が、何かの意思を持った生物の身体のような感じだ。

俺達が立っている場所が、この世界に存在している生物の一部だと言う事を理解するのに時間はかからなかった。しかし……。この場所には……。俺が想像していたような……。強者のオーラのようなものを感じることが出来ない……。

「真一様……ここからは……慎重に進みましょう。大魔王殿と大賢者と私のスキルを合わせて……『大魔結界』を発動させますので……、お任せくださいませ。」

と俺に向かって大魔導師のロズ・デミナが話しかけてきたので、「ああ……。頼んだ……。」と言った後……。俺はリゼルの中に自分の精神体を移動させる。

俺がリゼルの中に移動したのを確認した大魔導師ロズは、俺の固有技能の1つである……。

《魔人の血脈》を使って、この領域に居る者達全員を大魔王の支配下に置くのであった。この《悪魔の囁き》の固有技能は、俺が『悪魔公』のジョブを取得することによって使用可能になった。《大魔王》と《悪魔の囁き》の力は、凄まじく……『魔人』と『大天使』以外の全てのモンスターが……『悪魔公』に支配されたのだった。この支配は永続的なものであり……。

俺は……リゼルから外に出て、大魔女が支配するこの空間に、新たに作り出す『大迷宮』を支配下に置いて……、この領域の攻略を始める。この領域を支配している『大魔王』と『勇者』の佐藤は……それぞれ…… 佐藤 真一は……この世界の『大魔王』と、 田中 龍は……この世界で最強の力を持つ存在である……。

2人はお互いに向き合って、「始めよう……」と一言発したのであった。この場に居る誰もが……この領域の支配者である『大魔王』の田中と『勇者』佐藤が勝負を始めようとしているとしか思わなかったのだが……。

俺は……佐藤の目の前に転移をした……。

佐藤の剣と俺の剣は、甲高い音を立ててぶつかったが……。

俺が佐藤を斬ろうとした時……、佐藤の背後から『大勇者』の称号を持つ男が現れて……剣を振り下す。佐藤が俺の攻撃を防いでいると……。佐藤は、背後に現れた男の剣に気づくことなく背中を切りつけられてしまった。

俺は、大魔導士と大悪魔の二人に命令を出して……佐藤に止めをさすように言ったのだった。俺は佐藤から距離を取って様子を確認することにしたのだが……。

佐藤は傷つきながら、俺に斬りかかってくる。佐藤が放った渾身の一撃は俺に届くことはなかったのだが……。俺は大魔王の固有能力の一つの……。

《覇王の闘志》を発動させて……佐藤を吹き飛ばす。俺は……『大魔王』の力で、佐藤に語りかける。「お前……今誰を切ったのか分かってるよな? お前が倒した奴は……この『異世界勇者召喚プロジェクト』によって召喚された元地球人だぞ。お前は、俺に何をしようっていうんだ?」俺はそう言うと……。佐藤は自分のしたことを自覚して……。俺に対して謝ってきた。「お前……何やってるんだよ……。お前のせいで……俺は元の世界に戻れなくされてしまったんだからな! お前をぶっ殺す!絶対に許さないからな!!」俺は大魔導士に指示を出しつつ……。大魔王の力を最大限に引き出すことにする……。

「おい……。リゼル……聞こえてるよな?」

「あぁ……、聞こえるわよ……。私だってあんたを許さないわ!!田中君を殺したこともそうだし……、私と真ちゃんにしてきたことを忘れたとは言わせないわ!」と俺の言葉に反応したのは……『大魔女』と呼ばれる存在のリゼルだ。俺は、そんなリゼルを見て微笑んでしまった。俺に笑われたのが嫌だったようで、少し不機嫌になったリゼルだが……俺のことを睨みつけていた。それから……。大魔女は、佐藤に話しだす……。リゼルは、佐藤と田中の会話を全て知っているようだ。そして、田中を洗脳したのは大魔女自身だということ。

佐藤の固有能力である……、俺の持っている大賢者や大魔族の能力が使用できる。

田中の固有能力である……。大魔王の力が扱えるようになっているようだ。

俺は、佐藤と田中の様子を見ながら考えていた。大魔王の力を佐藤が使えるという事は……佐藤が俺よりも強い可能性があるということだろう。しかし……俺は田中の固有能力である……。『光』の魔法を佐藤が使える事が分かった時に……すでに勝利への方程式を考えていたのだ。俺はリゼルに確認すると、リゼルはすぐに俺の考えを読み取ってくれたのである。

「佐藤。さっき俺を攻撃した事を謝罪するなら……殺さずに済ませてやる。だけど、もう一度だけだけ言う。俺達を元に戻せるのは大魔王の力だけだと理解しろ。」俺は佐藤を見つめると……。「本当に申し訳ない。僕が愚かだったよ。こんな事になってごめんなさい。」と言って頭を下げてくるのだった。俺は……。佐藤を殺さずに済みそうなことに安堵していたのだが……。次の瞬間に……。リゼルは俺が予想していない行動を取った。

それは、佐藤を助けるための行動をリゼルがとったと言うわけではないのだが……。リゼルも田中が生きていたことに驚き……。嬉しかったのかもしれない……。

リゼルの固有技能の1つである《悪魔の囁き》を発動させたのである。

これは……。『大魔女』の固有スキルでもある《大魔王》と対をなす力だと言えるのである。俺と大魔王と佐藤が戦っていた時の話だが……。『大魔魔女』が《悪魔の囁き》を使用していて……『勇者』と『勇者』が仲間にした『聖女』と、その『聖女』が使役している『大精霊』を仲間にしていた事を思い返す。

『勇者』と『大勇者』の称号を持った二人の少年の魂は、《悪魔の囁き》の力に取り込まれてしまい……。

『大勇者』の固有技能を使うことが出来るようになっていた。『聖騎士』の称号を持つ少女の魂も同様で……。

その2人が……俺の仲間だった3人なのだから。

俺は、この大魔女の力の発動を阻止することが出来なかった。いや、しなかったというのが正しいと思う。なぜならば……、俺の心の中にいるもう一人の俺は……俺にこの『暗黒世界』の支配を任せてくれたからだ。『暗黒世界』を支配した後に俺の心に入ってきたのは、《暗黒魔王》と呼ばれている俺の本当の人格だ。

《暗黒魔王》には、《悪魔公》のジョブがある俺が使う《悪魔の囁き》は効かないはずなのに……。なぜだか《暗黒魔王》には《悪魔の囁き》が通用した。この空間に居れば……俺はこの世界で最強の存在なのだ。俺に負ける道理がない。だから……大魔王である俺のスキルを封じたつもりになっていた《大魔女》のリゼルが、油断した一瞬の隙を突いて……。俺の大魔王のスキルを発動させることに成功する。俺の身体を纏っている魔力の量が急激に増大していくのを感じたのだ。そして……《大魔結界》と《悪魔公の魔導師》の効果を最大限まで引き上げる。大魔族以外の全てのモンスターの能力を限界以上に引き上げていく……。大魔王の力が解放されたので……。俺は、この世界に存在していた全てのモンスターと全てのモンスターの上位種の魔物に命令を下すのだった。

(この空間に居るモンスターは全て、大魔王の支配下にある。

俺の身体から溢れるこの禍々しい黒い魔素に触れろ!触れ続けていれば…… 俺の力の影響を受け続けていれば……。俺に忠誠を誓いたくなる。

従えば……お前達の願いを聞き入れよう。

逆らうならば……。)と念じていると……、モンスター達が動き出したのだ。モンスター達は大魔王の支配下に入った。俺は……佐藤と田中を自分の配下に加える為に……。二人の元に転移したのだった。俺の配下に加わった者達は……。俺の《悪魔の誘惑》の固有技能の能力を受ける。《悪魔の誘惑》は……相手の意識に潜り込み、相手が俺に忠誠を尽くしたくなるような気持ちを抱くように精神を支配するのだが……。俺はあえて《大魔王》の力を最大限に発揮することで《悪魔の囁き》を無効化することが出来るのである。俺が田中に向かって……。

俺に攻撃を加えたことを許すと言ったのだが……。《悪魔の囁き》の影響で、自分のしたことを全く覚えていなかったのだが……俺の命令に従ったことは覚えていたので……俺は田中を許してあげることにする。田中にこれからどうするつもりなのかを聞いた。

田中が元の世界に戻りたいと言ったら、俺が送ってやろうと……。俺と一緒にリゼルの作った迷宮を攻略すると……。

俺に攻撃を仕掛けた理由を聞くと……田中と佐藤が、リゼルから田中に乗り移るように命じられたと聞いた……。そして田中がこの世界で生きることを望むようになれば、リゼルがこの世界を創造した本来の役割に戻すために動くだろうと聞かされていたようだ。

大魔王の固有能力の一つに……。『魔人の血脈』というものが存在する。これは俺と俺が眷属と認めたモンスターが、俺に服従する。また俺を害することが無い限りにおいて……、俺は配下の能力値を飛躍的に上昇させることができる。

大魔王は……配下のステータスを大幅にアップさせたり……配下に特殊能力を与える。

『大魔結界』と『大魔公の魔導師』の効果が上乗せされる為だと思われる。『大魔魔獣』と呼ばれる存在がいるが……『魔人の血脈』の影響によって、進化したモンスターの事を言うらしい。俺は、『大魔魔鳥』から『魔大魔獣』へと進化させた。

『大勇者』と『勇者』の佐藤は……大魔王と大魔女と大精霊の力で、この世界の『勇者』の佐藤よりも遥かに強くなっているはずだから……。

田中と佐藤を俺の配下に加えて……大魔王としての責務を果たすべく……。

『勇者』の佐藤から『魔王』の称号を取り戻そうと……。

そして……俺が本来存在するべきこの世界に、この世界を破滅に導くはずだった佐藤と田中を帰らせることにしたのだった。

田中は俺の目の前に現れた……。そして俺の前にひざまずいて頭を深く下げてきたのである。

田中は……大賢者と大魔導士を従えていた。大賢者の固有能力は、大魔族以外の全ての魔法の属性の適正を得る。

『光』『闇』『火』

大魔導士の固有能力は…… 魔法攻撃力+10 魔法防御力 +10 魔法回避率 +10 全魔法適正 の4つの能力だ。俺の固有能力と非常に似ていて……。田中も俺と同じく……。魔法に関する固有技能がとても優秀である。大賢者と大魔導士の力を得たことで、佐藤は田中と同じような固有能力を手に入れたということになるだろう。『光魔法耐性』や『魔法強化(大)』などは佐藤の方が強いかもしれないな。俺はそう思いながら……『勇者召喚システム』で呼ばれた『異世界勇者』を送還する方法について田中に相談することにした。田中の答えでは……『勇者』の称号を取り戻した佐藤を倒すしか方法はないと言うことなのである。

田中によると……。俺の『魔王』の称号を奪い返せば、自動的に称号を取り戻してしまう。田中のように『勇者』の固有能力を得てしまうというわけである。だから……。『勇者』の佐藤を倒して、元の世界に帰還できる可能性は低いと言うことだった。それに、俺は『大魔王』の称号を取り戻さなければならないし……。俺は『魔王』の佐藤と決着をつけることにして……。

『大勇者』の佐藤と大魔導士である田中と『大魔王』である俺との勝負となったのだ。

俺は田中と佐藤に、自分が佐藤より弱いとは思っていないと言い切ったのだ。

大魔女の力を俺に取り込んでしまった以上……。リゼルは大魔王の力を使うことが出来ないからだ。大魔王の力は……。大魔王が持つ力の中で最大のものだと思う。その力を使えば……リゼルは俺に勝てなかっただろうと思うからだ。しかし……リゼルの固有技能の中に『悪魔の囁き』というものがある。この固有技能が俺には効かないことを……。俺の人格が入れ替わった瞬間にリゼルに説明をしたのだが……リゼルも大魔王がこの世界を支配していた時の記憶を失っている。大魔王が持っていたスキルの固有技能の事は知らなかった。俺の説明を聞いて……。リゼルはすぐに理解してくれた。リゼルが理解できたと言うことは……俺と大魔王の力は互角ということなのだ……。だが、大魔女の力を使いこなしたリゼルの力は想像を絶するほどに強大なはずなので……。大魔王になったばかりの今の俺はリゼルには勝てないだろうと思っているのだ。

大魔王としてこの世界に君臨すると決めたのだから……。大魔王の力を全て扱えるようになるまでは……。リゼルにも大魔王の力は絶対に使うつもりはない……。だからと言って……俺は、俺の固有技能やジョブの能力まで失うわけではないので……。『大魔王の力』に頼らない方法でリゼルと大魔王の称号を取り戻すしかないと考えているのだが……。俺に何か良いアイデアがあれば……教えて欲しいんだ。俺にアドバイスが欲しいんだよ……。頼むよ……、田中さん……。」

田中は俺に……元の世界に戻る方法が2つ存在していると言った。1つ目は……。この迷宮を攻略して……『悪魔公の魔城』の最下層にある『魔神の祭壇』から、俺の魔力を注いで……元の世界に帰ることが出来るそうだ。ただ、元の世界に帰ったら……。俺達は二度とこの世界に戻って来ることは出来ないらしい。

2つ目の方法は……俺がこの『魔大魔獣の森の守護者』になっているリゼルが作り出した迷宮をクリアすれば……。元いた世界にリゼルが転移させてくれるというものだった。この方法だと……。リゼルの眷属となっている大賢者と大魔導士を連れて行けるみたいだから…… 大魔女と大魔王であるリゼルの力が及ぶ範囲でなら、自由に移動することが出来るようだ。

そして……俺達がこの世界に召喚されてから約50年の時が流れて……。俺達がこの世界に迷い込んだ日からちょうど50年目を迎えた日を迎えることになった。俺は……元の世界に戻った時に、俺が佐藤に成り代わられている事を知っている人がいるのか?俺と大親友だった理沙に会ってみようと決めて……この世界のリゼルが生み出した迷宮を攻略する決意をするのだった。

(リゼルの迷宮を攻略することに決めたが……。俺は元の世界に戻ると……。理沙に成り代わり大魔王になった佐藤に俺の存在がバレる可能性があるのではないだろうか……?大魔女の力が封印されているとはいえ……大魔王の力の全てを解き放たれている状態だ。

もしも……。俺が……俺の存在を知っていた人間に接触したら……。)

そんなことを考えていたが……。俺は、大魔女と大魔王の力で大魔王と大魔王の固有能力は全て使える。俺は……。『暗黒空間』に自分の魂の一部を保管することも出来る。俺は……。大魔導士の固有能力『アイテムボックス(次元収納)』を発動させた。大魔王の俺に出来ないことはない。大魔族がこの世界で生き抜く為に、様々な恩恵をこの世界に与えたのが大魔王の力の一つだったのだから……。

そして……俺は自分の肉体と大魔王の力で作り出せる武器・防具を……。俺は自分のステータスを確認する……。

俺は『勇者』の称号を取り戻したばかりの佐藤と戦うことになる。

ステータスの数値では、俺の方が断然に高いのだが……。俺は……佐藤との戦いで敗北している。だから……この迷宮を攻略しても……。俺が大魔王の称号を取り戻しても……。

佐藤を殺せるとは限らないが……。俺は俺を慕う仲間を引き連れて……。大魔女がこの世界の本来の姿に戻してしまおうとしている『魔大魔獣』達と戦いながら……大魔王の俺に倒されれば……、大魔女の呪縛からも解放されると……。俺が俺の体を使って大魔王になれば……。

佐藤を元の世界に送り返して……、この世界の本来あるべき形に戻そうと思っていた。

俺の身体に乗り移っている『勇者』の佐藤を元の世界に返すには……俺を殺させるのが一番早い。俺は……。『大魔導士』と『大勇者』がいれば……。大魔女の力が封じられていても……大魔王の称号を取り戻せば何とかなるかもしれない……。そう思ったのだ。それに、俺に万が一のことが起きたとしても…… 俺は……大魔王の称号と大魔族の固有能力である『不死身』を持っているのだから……。死なないのだ。俺に何があろうとも……俺の仲間たちが佐藤を倒して……。

俺の大魔王の称号を奪い返してくれさえすればいいと考えていた。

大魔導士の固有技能は、『大魔導士』になると習得できる『魔力感知』で敵の魔力の強弱を知ることができる。『大魔導師』は、敵の持つ固有の特殊能力を見ることのできる固有技能である『透視眼』を習得できるようになる。そして、『大賢者』は、『大魔導士』の上位互換で……。魔法攻撃と魔法防御と回避力と物理攻撃力と物理防御力とHPのステータスを大幅に上昇することができる。大魔女は……。この世界に生きるあらゆる生物をこの世界の生き物と別の存在に変える事ができる固有技能『魔道への誘惑』と大魔王がこの世界の創造主から与えられた全ての力を使うことができる大魔女の固有技能『大魔王の呪い』が使える。この『魔道への誘惑』と『大魔王の呪い』は……。『勇者』の称号をこの世界の佐藤が手に入れてしまったせいで……、今は発動できない。大魔王の称号を手に入れることができなければ…… この『勇者召喚システム』で呼び出された『異世界勇者』は元の世界に戻すことが出来ない。

佐藤はこの迷宮の最深部に到達しているはずなので……。俺が元いた世界に帰るためには……、俺が佐藤を倒して、大魔王になる必要があるのだ! 田中と俺は……。田中が『魔王』の称号を佐藤から取り戻す方法を話し合った結果……。田中の持っている『魔王』のスキルを全て奪ってしまうという結論を出した。佐藤は俺と田中との戦いに敗れて『大勇者』の称号を失ったはずだ。『大勇者』の力の殆どを失っているはずの佐藤から……。『魔王』のスキルの全てを根こそぎ奪うことで……。俺は……『勇者』の佐藤から大魔王の称号を奪うことに成功する。『勇者』の称号を取り戻したばかりだが……

『勇者』の称号を奪われた佐藤は、もう……。『大勇者』の称号を得る事は出来なくなるのだから……。佐藤の『魔王』の固有能力は失われて、俺は……佐藤から称号を一つ取り戻すことに成功をしたのだ。

そして……。俺が元の世界に帰り着くまでの時間制限は……。約5ヶ月ぐらいしかないが……。俺にはこの世界で生き抜いてきた経験があるので……。なんとか出来るのではないかと考えている。この迷宮の最下層にある魔城にいるリゼルにお願いをしておけば…… この世界のどこかに転移させてもらえるのではないかと思うからだ……。リゼルならきっとわかってくれるだろう……。

ただ、田中の話によると……リゼルにお願いしても……転移先によっては帰れなくなってしまう可能性が高いのである。転移先の場所によって転移の成功率が変わってしまうらしいからだ。この迷宮の最下層であるリゼルの居城まで辿り着ける冒険者が現れる可能性は低いらしいのである。この世界に来たばかりで何も知らない人間が、迷宮を攻略してしまう可能性もあるというわけである。田中が言っていた。リゼルもリゼルの眷属も大魔王の俺の命令に従うだろうから……問題はないのであるが……。転移に失敗したら……。またやり直しになるから……。慎重に考えなくてはならない。

「私達は、リゼルちゃんに会いに行こうと思います。太郎君……本当にありがとうございました。この世界に来てくれて、私達はとても感謝しています。」

「ああ……。リゼルは絶対に大丈夫だと思うが……。転移先でリゼルが危険な目に合わないように……。俺も協力しようと思っている。それと……。この世界を元に戻してやるんだぞ。俺は……。リゼルと理奈の幸せの為に頑張ったけど……。この世界の人間はみんな不幸になっているんだよ。」と言うと、俺は『悪魔公の魔城』の最深部に転送されるのであった。

(『魔大魔獣』と戦わずに最深部に到達したが……。この扉の向こうが『魔大魔獣』達の王であるリゼルがいる部屋のようだ。田中がこの部屋の中に足を踏み入れた瞬間……俺は……、俺の魂の半分がこの世界に転移してきたのを感じた。リゼルの迷宮を攻略して……リゼルの部屋に転移したみたいだ。

大魔導士が転移してすぐに……田中の『悪魔騎士』の固有能力を封じてしまってから……『勇者』の称号を奪ったみたいだ。田中の奴が……。俺の体から追い出されるように……俺の意識だけが転移させられたようだ……。大魔導士と大魔女が……リゼルの部屋で話をしているのを俺も聞いていたのだが……。)

俺は……。田中がこの世界で生き抜くために使っていた固有能力である『アイテムボックス(次元収納)』を自分の体にも作ることが出来たようだ。この『アイテムボックス(次元収納)』を使えば……。どんなに大きいものでも……。亜空間に収納することが出来る。収納したものは劣化しない上に、この世界の時が進まないので、食料などの備蓄庫に最適だったりする。収納してあるものを好きな時に取り出すことも出来る便利なものだったのだ。俺が大魔王の器を手に入れれば……大魔族が自由に異空間を作ることが出来るのである。

リゼルの固有技能は『不死身の魔王』と言って、リゼルの迷宮を攻略して……リゼルに認められた者がリゼルにお願いすると、何でも願いを叶えてくれる固有技能なのである。その固有技能の発動条件の一つとして、大魔王になった者は……、大魔王になった後に、自分が支配している国の中を自由に歩き回る事が可能になるらしい。俺の配下の魔物達にこの固有能力を発動すれば、いつでも『大魔王軍』として『勇者召喚システム』の召喚陣を破壊することができるのである。

俺は……。俺がこの世界で手に入れた仲間と共に……『勇者召喚システム』で呼び出された異世界勇者が元の世界に帰る為に……。この世界で召喚された俺が元の世界に戻る為に……。この世界で生き抜く為に使った『大魔導士』の固有能力を発動する為に……。この世界のリゼルを仲間にしたのだ。

大魔王である俺の仲間になるには……。この世界で『大魔王』の力を得て……。大魔王の俺に認めてもらえば……それで良かったのだ。だから……俺は……。『大勇者』の称号を失ったこの世界の『勇者』をこの世界から追放することだけを考えてきた。『大勇者』の力を全て失った佐藤に勝てる見込みはほとんどないが……。この世界の『勇者』が元の世界でもこの世界でも、この世界に存在する全ての人間に対して行った行為は許されない事である。俺は、俺に敵意を向ける者達は誰であろうと容赦をすることはないと心に決めているのだ!それに……。『勇者』の佐藤がこの世界にやってくるまでは……。俺は元の世界で……普通の高校生をしていたのだから……俺は佐藤を恨みきれないのだ。

俺は……。大魔王になりたくないわけではない。むしろ……。俺は早く大魔王になって元の世界に帰りたかった。ただ……。俺は……俺がいなくなったことで悲しむ人達の事が気になってしまうから……。なかなか大魔王になる決心が出来なかった。

俺をこの世界に送り込んできたのが……神であると田中に言われてからは……。俺も神様に一度くらい会ってみたいなと思っていたのは事実である。そして、田中の話だと……俺は大魔王になる事で……。田中を『勇者』にする事も出来るような事を言っていたから……。俺は少し悩んでしまったのだ。

でも……。今は……俺が……田中を勇者にすることで、俺が大魔王になることが確定事項となっているようだったので……、今は、そんなことを考えている余裕がないと思い直したのである。俺の大切な人たちのためにも……。俺は全力で戦うことを決める。

(俺は……田中の身体に意識を移してみた。どうやら……転移に失敗しても……リゼルの眷属であるこの城の『守護魔獣』は転移させることが出来ないらしくて……。俺は……、転移先の魔城に辿り着いてすぐに……。『悪魔騎士』と『悪魔公』を召喚する。この『魔大魔境』の魔王達が従える『守護魔獣』と『魔王』達は……。全て倒されているようで……魔城はもぬけの殻となっていた。大魔導士が大魔王から貰った力の殆どを使っているのか、この『魔大魔境』で最強の存在であるはずのリゼルとその側近達は……既にいなかった。大魔導士にこの城にいた『魔王』達を倒してもらったのはいいけど……。これからは……『勇者』の佐藤との戦いでこの城を利用出来るか確認したいと思っている。俺も『勇者』の称号を持っているから……。佐藤と戦っていた時は……俺もこの城を使うことができたんだけど……。今の状態ではこの魔城の中でしか活動できないだろうと思う。まぁ……、今は……俺と大魔導士と大魔女の三人でこの魔城内を捜索してみることにした。大魔女が……この城にいる『大魔導師』の気配を感じることができると言っていたのだ。大魔女によると……この城にいる大魔女の眷属達は、『大魔道士』とリゼルがこの世界から姿を消してから、リゼルの命令で……。リゼルの側近である大魔女が眷属に命じて作った新しい『迷宮』に籠ってしまったみたいである。大魔女の話では……この『大魔道師の迷宮』は……。迷宮の中の魔物が外に出てしまわないようにする為に作られたものだそうだ。『勇者』の称号を持たない者が、迷宮の中に入る事はできないはずなのだ。迷宮は……この迷宮が生きているかぎり永遠に続くと言われているらしい……。

そして……リゼルが大魔道士の力を封印していた魔法具の箱がこの部屋のどこにあるのか分からないらしい……。俺は……この城から出るための手段を探すことにする。俺は……田中が持っている『聖剣』の能力を使うことに決めた。この城にある転移系の魔法が封じられた部屋を探し出して……。転移系の鍵を使って転移先から転移元に戻ってこれるのではないかと考えているからだ。俺も田中と一緒に行動することにした。田中が大魔導士の魔法を使えば……、この世界のどの場所からでも転移が可能だと説明してくれたので……。とりあえず田中が転移先に設定できるであろう場所に移動することにする。)

「太郎さん。大魔女がこの迷宮の中にいるみたいです。さっき、大魔女が、私の眷属達が作ったらしい『迷宮』を見つけたそうですよ。そこに大魔女がいるようですね。」

(田中の言葉に、俺は「ああ。」と言うが……。『迷宮』という言葉を聞いて不安を感じていた。

俺は……、大魔王に転移させられた後にすぐに、大魔王の固有能力の一つである転移の固有技能で……。『魔大魔境』の大迷宮の中に放り込まれたのだ。そして、すぐにリゼルがこの世界の時間を止めて、この世界の支配者になっちゃったけど……。この大魔王の力で転移する事が出来るようになった『大魔道師の工房』という場所は俺も知っていた。リゼルの居城である魔城に一番近い場所に位置しているからである。その『大魔道師の工房』という場所の近くに、この城とリゼルが支配している『魔大魔境』の他の迷宮とは違った雰囲気の場所が存在していたのを思い出したのだ。俺もその迷宮の攻略は諦めたけど……迷宮の中に存在している魔物達のレベルが高くなってきて、俺が単独で迷宮を攻略し続ける事が難しくなった為でもあるのだが……。迷宮を攻略しなくても、その場所に行くことが出来る方法があるかもしれないと考えていたのだ。田中が言うには、リゼルの支配する領域である『大魔道師』の領地内にあるその特殊な空間の中にある扉を開かないことには入れない空間が存在している可能性があるということらしい。

しかし……俺は、この場所に来てしまった。田中は転移の固有技能を発動させれば戻れると教えてくれたが……。俺は田中が大魔王の称号を失っていないので……転移の固有技能を発動させて、転移させる事ができない可能性が高いと思った。大魔女が大魔女が見つけた転移用の魔法陣は俺を転移させるためのものではない可能性もある。転移の固有技能が発動したとしても……俺は田中と共に、田中が知っている『勇者』として転移できる可能性は低いと思う。それにもし……俺を『大魔王』にする準備が出来ていなかった場合は、田中が大魔王になってしまった時と同じ様に……俺をこの世界に戻してしまう危険性があるからね。俺は、まずはこの迷宮から抜け出す為に……『魔大魔道師の迷宮』の探索を行うことにしたのだ。俺とリゼルの関係が、この迷宮とリゼルとの関係に似ていると感じる。リゼルの迷宮の難易度はかなり高いが……。この迷宮の攻略の方法は……。リゼルから聞いていた通りなら問題ないはずである。リゼルは、迷宮の最深部まで辿り着いた者を必ず殺せるように、ダンジョン内に生息する強力なモンスターのレベル調整も行っていた。だから、最下層に到達する前に殺されないように気をつけながら進んで行けば……。この世界でも通用するはずだと思っている。

この世界でリゼルを倒す事はできなかったけれど……。俺は……。元の世界で理沙とアリアの友達になった時に感じた気持ちを忘れる事は出来なかった。だから……元の世界で俺を慕ってくれた人達のために……。そして……元の世界に戻ったら……田中を『勇者』にできるように全力で戦うことを決意したのだ。

そして……この『大魔王』の固有能力の一つ『魔王』の技能によって得た技能を使えるかどうか試してみる事にしたのである。『大魔王』の能力は、俺を召喚するために使った大魔導士の力よりも遥かに強大な力を持つ大魔王の魔力を使用する能力であるようだ。大魔導士の力は……。大魔王の力に遠く及ばないのは間違いなかった。俺が大魔王の能力を少し使ってみた限りは……大魔王の力は、大魔導士の力と互角程度のように思えたのだ。

そして……俺が使う大魔王の能力は…… この世界に存在する『勇者』とこの世界に存在していない『勇者』のどちらが本物の『勇者』であるかを見抜くことができるようになる能力だった。『勇者』とは本来……俺達のような人間がなれるようなものではなく……神が異世界から呼び寄せたものだから……この世界で召喚される『勇者』は全て偽物である可能性がかなり高かったのだ。

俺は……『大魔王』の能力を使おうとしたが……。俺は『勇者』と『大勇者』の称号を持っていた時の俺のステータスを表示させようと思った。俺は田中と『聖魔剣士』である大魔導士の協力をえて……田中のステータスウインドウを確認する事ができるようになった。そして……俺は田中の持っている勇者の称号を見て……。俺は少し驚いていた。田中は……勇者の称号を既に手に入れていたようであった。そして俺は……。この世界では『魔王』の固有能力が使えなかったが……。『魔王』の力は使用できそうなことが分かった。

田中が持っているのは……この世界にいる『勇者』が元々所有しているはずの称号ではなくて……。別の世界から呼び込んだ者に与えられた称号だと思われる。ただ……この称号も元々はこの世界にあったものなので……リゼルが何らかの目的でこの世界に送り込んできたものだと考えられるだろう。

「私にも見せてくれませんか?」と、田中は興味津々な表情で言うので、仕方なく田中に俺の能力を使う事を許可しようかと思っていたら……。急に目の前の景色が変化した。転移の固有技能を発動させたようで、俺達は『大魔道師』の工房のような場所に転移していた。俺は急いで田中の手を握る。すると……俺と田中が触れ合っている部分を中心に、俺達二人は一瞬光に包まれて……『大魔道師』の工房のような場所に転移してきたのがわかった。田中を見ると田中の服装も変わったみたいである。『大魔導師の法衣』のようになっているローブを着ていたからだ。田中と目が合うと、お互い笑い合ったのである。

(この『魔大魔境』の管理者の一人である『魔大魔道師』は……、『大魔導師』を裏切って、『大魔王』側に付いたと言われている『大魔道士』の妹であるらしい。

大魔道士は、この『大魔道師の迷宮』で『魔大魔境』を管理していて……。『大魔道師の迷宮』は……。『大魔道師の迷宮』で生活している魔物達が外に出て行かないようにするための特殊な結界で守られていたらしい。

この『大魔道師の迷宮』は、この迷宮の中に入る事が出来ない者が、他の『大魔道師の迷宮』に侵入する事を防ぐための迷宮でもあったみたいである。

大魔女によると……、大魔女もリゼルの命令でこの迷宮を守る為に迷宮の中でずっと暮らしていたみたいである。

そして、大魔道士は……大魔女をこの『魔大魔境』の管理人として、この『魔大魔道師の迷宮』の中に残したみたいである。

大魔道士と大魔女がこの『魔大魔境』を管理する前は、他の迷宮と同じように……他の場所と繋がっていたが……。リゼルが大魔道師を裏切り……。大魔道士がこの世界の時間を止めてしまったことで……。『大魔道師の迷宮』は他の場所に繋がるための魔法が封印されてしまった。

そのため……。リゼルは『魔大魔境』を支配する際に、他の迷宮への侵入を防ぐために、この迷宮内に特別な魔法を施した。それが……。今現在『魔大魔道師の迷宮』と呼ばれている迷宮の成り立ちになっているらしい。)

田中「太郎さん……。私は……これからどうすればいいですか?大魔女は『聖剣』を持っていますし……。この『魔大魔道師の工房』の中には……この世界では存在しないはずの『勇者』が封印されている宝箱がありますよ。おそらく……。あの中に入っているものは……私が『大魔王の勇者』として存在していたときの力を引き継げているかもしれませんね。」

「ああ。俺達の目的は一つだからな。田中が知っている『勇者』の力が手に入る可能性があるなら行ってみたいところだが……、まずはこの場をどうにかして脱出する必要があるかもしれないね……。大魔導士がいる可能性がある以上……。慎重に行動しないと……危険かもしれないからね。俺としてはまずは大魔道士を探したいけど……。」

俺は『魔大魔道師の工房』の奥にある巨大な扉を開くことにした。その奥には……広大な空間が広がっていたのだ。そこには、様々な武器や鎧が置かれていた。その部屋には大量の本棚があって……膨大な量の魔法書が存在していたのだ。その中には、見たこともない文字が書かれた本が大量にあったけど……何故か理解できるようになっていた。その部屋に存在している全ての物に強力な呪いが付与されていたので、下手に触れれば呪われてしまいそうである。そんな空間である。俺は……その部屋の一番端っこに置かれている大きな黒い木で作られた箱を発見したのだ。その箱には鍵がかかっていなかった。田中と一緒に開けると……その箱の中からは……『魔道士のローブ』が出てきたのだ。その服は黒色で……。『聖魔剣士』が着用していた『魔道戦士』の防具に似た感じのものだった。そして……。その『魔道士のローブ』には特殊な効果がついていて……。その効果は、この世界の法則を変える効果と……あらゆる状態異常を無効化する効果があるみたいであった。そして……この『魔道士のローブ』に装備する事が出来る指輪があったので……。俺はこのアイテムを装備してみる事にしたのである。指輪の効果を確認すると…… 【『魔道王の指輪』……レベル100】という指輪であった。俺は試着をしてみる事にした。俺は『魔道士のローブ』を着用してから『魔道王の指輪』を装着すると……。俺のレベルと体力と攻撃力が大幅に上昇した。

田中「この部屋から脱出する方法は、魔法を使って、壁を破壊した方がいいかも知れませんね。私の知っている魔法の力で破壊できると思います。」

俺「分かった。じゃあ……。俺が魔法を発動させよう。この部屋全体に攻撃がいくような大規模な攻撃を放とうと思っている。ただ……。田中……。この『迷宮の壁』は普通の物質じゃないみたいだ。この『迷宮の壁』は『大魔王』である俺でも……。完全には破壊する事ができないと思う。それに……魔法を吸収する効果もあるみたいなんだ。魔法を放つ時は十分に注意してほしい。俺の推測では、大魔王の力を持っている田中が使った場合は吸収されずに、大魔女や大魔導師なら、魔法は効く可能性が高いと思うんだよ。」

田中「わかりました。太郎さんが私を守ってくれるんですよね?」

俺は微笑みながら言った。

俺「もちろんだ。俺を信じてほしい。田中にもしもの事があれば、俺の命をかけてでも助けるつもりだから……。田中にもし俺が死んだ場合のことを話しておかないといけないと思った。俺の職業は……『聖魔剣士』、『賢者』、『聖魔術師』の三つの上位職の技能を全て習得している『万能者』なんだ。それで……この能力を発動している間のみ使える技能がいくつも存在しているんだけど……。そのうちの一つに蘇生系の技が存在するみたいだ。もし田中に俺が死にかけの状態の時に出会って、回復してもらう必要がある場合に使って欲しい。ただし……。一度しか使うことが出来ないから気をつけて欲しい……。田中に万が一何かが起きたら……。この呪文で蘇らせる事ができるはずだから……」

俺の持っているスキルの中でもかなり強力そうな『勇者専用特殊回復呪文』を使用すると、一度だけ復活させることが出来る。この術式は『聖勇者の加護』の技能の一つで……俺がまだ生きている間は使う事が出来なさそうだが……。俺が死亡した時に自動的に発動する仕組みらしい。そして、俺は田中に俺が覚えている中でもかなり強い方だと思う最強クラスの強化系魔術をかけることにした。そして俺は……田中を抱き寄せて……。俺の全力強化の魔力を込めて……。俺の唇を田中に押し当てたのだった。

すると……。田中の体が青白く輝き出したのである。俺は驚いていると……田中の体に変化が現れた。

田中は急に大きくなって大人になったのだ。髪は銀髪のロングヘアーになっていたのだ。顔は美人なままなのである。胸も大きくなっているが……、スタイルは変わらずである。身長は170センチぐらいだろうか?年齢は……20歳前後になっているみたいだ。田中のステータスを確認すると……。名前と性別だけ変更されて、『田中真理奈』という名前になって……職業も『聖女見習い』になっているようであった。そして田中は……。俺に抱きついてきて……。涙を流しているみたいである。

(俺が今使用しているのは……『万能者』の能力の一つである『能力共有の法』である。

これは、『聖魔王の使徒』の固有能力であるのだが……。この固有能力は、自分が死んだ後に自動で使用出来る能力であり、自分の魂がこの世界に残っていて、尚且つ自分が愛する者の心に強く残っている場合に、肉体も共にこの世に呼び戻す事ができるようになる能力なのだ。つまり……。『勇者専用特殊能力・死亡再臨召喚の法』と『聖勇者の奇跡・女神の救済(極小)』と『勇者限定特殊能力:女神転生の法』を組み合わせたような能力と言えるだろう。『聖魔王』の称号を持つ者が死亡したときに、一度だけ復活することが出来る。この能力を使えば、『聖魔剣』などの装備品以外のものも一緒に復活するらしいので……。この能力は本当に便利だといえる。田中は、今はこの『聖魔王の迷宮』の外に存在する『勇者の世界』と呼ばれる場所に、魂が移動して存在しているらしい。この『聖魔王の迷宮』は、特殊な迷宮なので……。『勇者の帰還』で戻ってくることができるようである。俺の愛弟子の一人でもあるこの子を助けに来てよかったよ。田中……。君は……間違いなく……。この世界の未来に必要な人間だよ。だから必ず無事に元の体に戻そう。俺の大切な存在が君である以上……。どんな困難だって絶対に乗り越えて見せるから……。)

俺は涙を浮かべながら……。俺を見つめている……。美しくてかわいい女性を抱きしめたのである。

(さて……。大魔女はどこにいるんだろうか?)

俺はこの『魔大魔道師の工房』を探索するのであった。

俺はこの『魔大魔道師の工房』の奥の方を調べていた。すると……。

リゼル「よくここまで来たね……。流石は私が見込んだ勇者だ……。まさかこの私が……大魔王と戦うことになるなんて……。しかも、その前にお前が来てしまうなんて……。全く……予想外だわ……。私の負けね……。でも……。まだ……私は負けたわけではない。私の計画通りならば……大魔道士と大魔女はまだ生き返る可能性がある。大魔女はこの世界での『大魔王討伐作戦』の要となっている人物だから……。大魔導士は私達の計画を邪魔していた『聖魔剣士』を殺してくれたようだし……。あとは……時間の問題でしょう。私はこの迷宮の最下層にいるから、早く私を倒した方が……。あなたにとって有利になるんじゃないのかしら?大魔導士は私の身体を使って、この世界の時間を止める方法を探している最中だけど……。もう時間の問題なはずよ……。『勇者の聖剣』を手に入れた大魔王様と私で……この世界を壊すことは簡単なことよ……。」と言うと、リゼルはこの『迷宮の壁』に向かって手を向けると、この『迷宮の壁』が砕け散ったのであった。しかし…… 俺「確かに、俺一人だと難しいかもしれないが……田中の力を借りれば簡単に突破できると思うけどな。俺も協力するから……。この俺と大魔王を舐めると大変な事になるよ!」

俺が言うと……

「フフ……。いいえ。いくら、大魔王と言っても大魔導士に勝てるわけがない……。この『大魔王討伐計画』は完璧よ!それに、この『魔大魔道師の工房』の結界を破壊しないと、ここからは逃げられないから、この結界を破壊するのに膨大な時間がかかる……。お前達が脱出することは絶対に不可能ね……。この結界の効力によってお前達は、この迷宮の中で朽ち果てていくのを待つだけよ……。」

と余裕綽々な態度のリゼルに対して……俺は、田中と一緒に力を合わせて戦う事を宣言すると……。俺と田中の目の前に……『迷宮の壁』が出現する。俺達の前に突如出現した壁は……とても頑丈そうな『魔法壁』であった。

俺「まぁ、確かにこの迷宮を突破するのは難しいかも知れないが……俺は諦めが悪いんでな……。なんとかするさ。だから……リゼルは俺の事を侮りすぎているよ……。田中……。俺の指示通りに動いてくれるか?」

田中「分かりました。私は、貴方を信じます。貴方の為に戦います。貴方のためなら死んでもいいです……。貴方になら何をされようと許します……。」と田中は俺を抱きしめながら耳元でささやいた。そして、リゼルも何かを感じたようで、「私の『空間転移魔法』が効かない……。」と動揺しているようであった。そして田中も「あれ?ここはどこ?どうして……?」と状況を飲み込めないようであったが……。

俺は「田中。まずは落ち着くんだ。大丈夫。俺がついてるから……。」と言い田中を抱きしめると、少し落ち着きを取り戻したようなので、田中にはこれから行う攻撃について説明をする事にした。

俺「落ち着いて聞けるかな?実は……。俺は……この世界では最強の存在では無いらしいんだ。俺は……その事に気がついて、自分なりにこの世界に通用する技を身につけてきたつもりだ。そして……。今の俺のレベルは1万超えをしているんだよ。それに、スキルも色々と増えていてね……。今現在で俺が持っている技は……。『魔法付与』、『全耐性』、『状態異常解除』、『蘇生』と、田中が使う事が出来る『超聖魔法』だな。田中にもこの四つの技を教えてあげる。ただ……。蘇生に関しては……。蘇生出来るのは一度だけみたいだ……。蘇生の効果は、死んだ直後の時間に戻せるという感じだな。ただ……。蘇生された方は……。蘇生した側の者と同じ時間を過ごす事は出来ずに、違う時代、異なる国などに行って生活をしなくてはならないようだけどな……。」

田中に説明している間に……。リゼルが攻撃を仕掛けてきたようだったが……俺は全ての攻撃をかわして……田中に伝えた。

俺がリゼルの攻撃をかわし続けているうちに……俺の頭の中にメッセージが表示された。『リゼルーティアから、特殊スキル【共有者】を譲渡されました。』

(共有者とは、俺と俺の愛する者達との記憶を共有する事ができる。

この能力で俺は、仲間達に自分の体験談を話すことで……俺と仲間たちとの絆を深めて来たが……。共有出来る情報の範囲は限定的で……、俺と関わりのない記憶まで共有することはできないので……俺は田中と理恵ちゃんの仲直りする為に頑張っていることを話していないのである。共有出来るのはあくまで、俺に関係する人達のことだけで……例えば俺と妻達との関係は共有出来るけど……娘である杏奈と母親である結衣さんは……共有出来ないのだ。)

俺はそのメッセージを確認してから、リゼルの攻撃を全て避けて、逆にリゼルを攻撃し始めた。そして田中には…… 俺が覚えている中でも最強クラスの攻撃系の『強化魔術』をかけると……俺は田中に抱きついたのだ。そして俺は……。『超聖魔術・究極女神転生の法・発動』を発動させたのである。

すると……。田中は青白く輝き出し……。その姿が変化したのだった。

田中の姿が変わったのを見て…… 俺の頭に……再びメッセージが流れ込んで来た。

俺はその内容を確認してみた。

(俺が田中にかける『超聖魔術・極女神転生の法』は、田中に『聖女神・アリア=レイシア』として転生させて、田中に強力な力を授からせる為に使う術式である。この能力の恐ろしいところは……この能力は田中を『神界』から呼び出して、『勇者の世界』に送り込むだけでなく……。『勇者の世界』にいる者を、田中がいる『勇者の世界』へと送り込むことが可能なので……非常に危険と言える。しかし……。リゼルもこの能力を悪用しようと考えているはずだから……。この能力だけは奪わせない!!)

俺がそんなことを考えていると……。目の前にいたはずの……美しい女性の顔つきをした女性が……、銀髪で長髪をなびかせ……、胸が大きく膨らみ、スタイル抜群の絶世の美女に変身したのである。

そう……。田中が『聖女神 聖女神 アリア=レイシア』に『超聖勇者の奇跡』で変化したのである。田中は自分の姿を確かめていると、俺は「大丈夫だよ。田中が望めば……いつでも、元に戻れるようにしておくから安心してくれ。それより……。今から……。大魔王討伐作戦の最終段階に突入するけど……。準備はいいかい?」と聞くと……。田中が「はい!勿論です。私が全力でサポートいたします!!」と言ってくれたので、田中にお願いをして、俺の身体と田中の身体が入れ替わることにした。

田中は大魔王との戦いに備えるために……。俺は田中のサポートを行う為に、俺は田中の体に乗り移って、田中の身体の主導権を完全に掌握したのである。

そうして……。田中は、リゼルが放った魔法を無効化しながら……リゼルの懐に入り込んだのであった。そして、田中は、大魔女を倒すためにリゼルに攻撃を行ったのである。

「私達の邪魔をするのは許さないわよ。この化け物!!!」

リゼルは田中に言い放つが……。次の瞬間……。突然、大魔女の声を聞いたリゼルが、動揺する様子を見せた。どうやら……『聖女魔導士』も一緒に復活したようだ。リゼルは大魔女が生きていたことに驚いたようであったけど……。

俺は『大魔王討伐作戦』の計画を大魔道士から聞いているので……。俺は、大魔王の所に行くための扉を開き……、大魔道士に指示を出す。そして大魔道士に田中の『聖なる浄化魔法』の使い方を教えると……。俺は大魔道士の身体を借りる事にして……、田中の身体を安全な場所に移動させると…… リゼルに向けて……攻撃を仕掛けたのであった! 田中と大魔王の間に空間の壁が出現し……お互いの視界と身体が切り離されてしまうのだが……大魔王の視界には、俺達の様子は見えず、田中の行動が見えているらしく……。リゼルが驚いて俺達の動きを止めようとするが……

「私とあなたの戦いにおいて……。あなたに勝ち目はないのですよ……。この程度の妨害など無駄なことです。それよりもあなたには聞きたいことがあります……。なぜあなたはこの世界を創り上げたんですか?そして……私達はこの世界からどうやって脱出することが出来るのですか?あなたは私達の存在に気がついていながら……。あなたが創り出したこの世界で生きていくしか方法がないなんて……。私は納得できません……。答えていただけるでしょうか?」

俺はリゼルに質問する。俺はこの世界の事を知らなければならない。だから、リゼルの口から直接話を聞く必要があると思ったからだ。

俺の言葉に対してリゼルが、「この世界を作り出した目的は……。『勇者の世界』で生きる人々の心を試すため……。そして、あなた達がこの世界で生き続ける方法は……この『迷宮の迷宮』を攻略する事だけ……。それ以外の方法では脱出する事は不可能……。」と話すと……リゼルが攻撃してくる気配を感じた。俺は咄嵯に大盾を出し身を守ったが…… リゼルは、俺が出した武器によって吹き飛ばされたのである。

(やはり……リゼルが相手では……田中では勝てないか……。俺なら……何とかできるかもしれないが……。今は無理そうだな……。ここは……。『勇者の世界』のリゼルの姉の力を借りて……この『迷宮』を脱出するか……。それと……。田中のスキルを俺に譲渡しても問題ないかな……。俺と理奈ちゃんの仲も良くなってきたし……。俺の素の状態の実力も知ってもらいたいし……。)と俺は考えて、理奈ちゃんのお母さんの理奈ちゃんに連絡を取ったのであった。

俺が理奈ちゃんに連絡を取っている間…… リゼルは必死に抵抗しているみたいだが……『勇者の世界』の大魔女も一緒なので、田中が簡単には負けることは無く……。リゼルの体力をじわりと減らし続けていたのである。俺は理奈ママに電話をすると……理奈ちゃんも俺の呼びかけに応えて……。田中に力を与えて欲しいとお願いしたのであった。

俺は理奈ママからもらった魔力を使って、大盾を出したり……剣を作ったりしたのだ。俺と田中で協力して……理奈ちゃんが与えてくれた力で……この『試練の洞窟』を攻略した。そして、大魔女も理奈ちゃんが倒してくれた。

俺は理奈ちゃんの『聖天使化』、『超女神転生』の技を使うと……田中と大魔王の間の壁を破壊して……田中と共に大魔王の元へ駆けつけたのだ。俺が駆けつけると……大魔王は焦っているような表情を浮かべて俺を見ていたが……俺は構わずに……『極女神転生の法』を使用して、『勇者の魂の封印』を発動させたのである。

俺の使ったスキルは『勇者の封印』と言って、対象となった者の意思を奪って操ることが出来るようになる『スキル』だ。俺は『聖王女の癒し』を発動させながら、スキル『超女神転生の法』を使い、『勇者の魂』を俺の中に封印した。

俺の行った『超女神転生の法』は、『勇者』の称号と、この世にある全てを手に入れる事ができる称号『全能力強化』『全状態異常無効』の効果を得られるという……『特殊』のスキルだった。

これにより、『超勇者』の称号を手に入れたと同時に……この世界にいる人達全員が持つ能力を全て得られることになるのだ。更に、仲間達に付与する能力や俺自身が持つ能力を強化してもらえる能力もあるのだ。これは、リゼルのステータスを確認すると、俺の能力強化がされている事がわかったのだ。つまり……俺がこの世界の全ての人々を支配する事が出来るようになったのだ。俺はリゼルに向かってこう言ったのだ!!

「残念だったな!!俺はこの世界を全て支配する事にした!!もうお前が俺に逆らうことは絶対に出来なくなるんだよ!!これから……ゆっくりとお前の身体を調べさせて貰うぞ!!まず最初に確認したいのは……お前が今まで食べてきた人間の肉がどこにあったかってことだな!!お前に聞きたい事は山ほどあるが……。それは……『勇者の世界』に帰らないと出来ないことなんでな……。まずは……俺の支配域の外に出たら……二度と復活できないようにお前の存在を抹消させてもらう。まぁ……。復活する方法がわからないだろうけどな……。俺の支配下には……まだ入っていないが……『聖王国』の国王がいる国があって……そこに行けば……お前に対抗出来る者が居るかも知れ無いからね。とりあえず、今は、俺に服従してもらう事になるからよろしく頼むよ!!」と。俺はそう言ってから、『大魔王』の肉体と……その能力を奪い取った。

すると、リゼルは突然苦しみ出して、床に倒れた。

どうやら……。リゼルが俺に奪われたのは……この世界で得たリゼルの知識と記憶だけだったようだ。リゼルの記憶の中には……理恵さんの情報は残されていなかったので……、俺は、少し悲しくなってしまったが……。仕方ないと思い……。俺は、田中と理奈ちゃんを連れて……『聖王都』に戻ったのである。

俺は、この世界で生きて行く為に必要な情報を得るために……この世界に生きている者達から話を聞くことにしたのである。そうして……。俺は……聖女魔導士に変身していた田中を元の姿に戻して、田中がリゼルとして生きていた時の仲間のリゼルの姉妹のところに向かうように指示をした。俺は……理奈ちゃんと一緒に、王都の中に入ったのである。

『勇者』と、大魔王がいなくなった今……大魔王を倒した勇者と大魔女を探そうと人々は躍起になっていた。俺は……人々が動き回る様子を見ていて、このままだと捕まる可能性もあったので……一旦……俺達がいた場所から離れて……人のいない場所に転移して移動すると……。

「私は、アリア=レイシアと言います。皆さん……私の事を助けていただいたようで本当にありがとうございました……。それで、私達の他にも……勇者の仲間の方々がいませんでしたでしょうか?」

理奈ちゃんはアリアと名乗ったが……田中の正体がバレないようにするためでもあるので……偽名を使わせたのであった。

俺「アリアは、田中って名乗ったけど、実は違うんだよ。この子は……。田中太郎君っていう子なんだけど……。色々と事情があって……この子に田中君の体を借りて生活をしてもらってたんだ……。でも……。そろそろ限界だから元の体に戻すつもりなんだ。それで、この子の本来の体は……ここに倒れているよ……。田中君は、アリアさんの身体に憑依することで大魔王を倒すことが出来たみたいだけど……。大魔王の身体が消滅してしまう前に大魔王の力を回収すれば……田中君が元の身体に戻って生活できると思うんだ……。」

俺はそう言ってから……。理奈ちゃんの身体から田中の身体に田中の精神を移したのであった。

俺は、理奈ちゃんとアリアに田中と俺との話を説明した。田中と俺は、元々は同じ人間で……『勇者』と『魔王』という関係だったこと……。そして……大魔王は、『魔王』に倒された後……、別の魔王の魂に取り付かれていたこと……。

俺は、『大魔王』を俺の力で、この世界に存在することを拒絶するように『呪い』をかけながら……。『聖王国内』で暴れている大魔女を探すように頼んでみた。そして……俺達は、この『迷宮の迷宮』を抜け出す方法を知るために……大魔女に会いに行ったのだ! 大魔女に会うため……俺達は、大魔王の居た部屋の奥にある『扉』を開いて……奥に進んだのであるが…… そこは、巨大な神殿になっていて……。『扉』が有るところ以外は、何もない空間だったのだ。俺達が辺りを見回していると……いきなり、リゼルが現れたのであった! 俺は……理奈ちゃん達を庇う形で……『聖盾』を出現させたのだが……。理奈ちゃんが俺の後ろに移動したので……『聖楯の盾』に変更した。理奈ちゃんは、魔法を使えるようになっているので、理奈ちゃんに魔法で攻撃してもらう事にしたのだ。

理奈ちゃんは……大魔法の詠唱を開始したので……俺と理奈ちゃんを守るような形になるように……『聖楯』の盾を出して、攻撃から防御に徹する事にした。リゼルが理奈ちゃんに対して攻撃をしてきたが……。俺は、リゼルの攻撃を防ぐ事に専念していたので……攻撃に参加できなくなってしまったのだ。すると、理奈ちゃんがリゼルの放った『聖矢』によって……負傷する……。

俺は『聖楯』と『聖楯の鎧』に変えてから……。俺は、理奈ちゃんに近付いて……。『回復の女神の力』を使ったのである。すると……理奈ちゃんの負傷が治っていったのである。俺は……理奈ちゃんを回復すると……。再び、『聖楯の防具』に変えた後に、今度は、田中に変身したアリアが俺の横に来て……。『聖天使の力』を発動させていったのである。

(さすがに……。理奈ちゃんはともかく……俺とアリアだけじゃあ……。あの化け物に勝てる見込みがないな……。それに……俺には……。リゼルの力を奪ったとはいえ……田中から奪った『大魔王』の力も持っているから……もしかしたら勝てるかもしれないな……。田中に力を与えようかと思ったけど……。この状態なら田中でも大丈夫そうだから……。田中に任せるかな。)と俺が思って見ていると……。リゼルが田中に向かって剣を振るい始めたのだ。俺は慌てて『聖槍の矛先』に変更してから……。田中の元に駆け寄る。

田中は……理奈ちゃんのおかげで……『聖剣』を扱うことができるようになっていたので……リゼルの振るう剣を避けることができたので……反撃をしようと試みるが…… リゼルが……理奈とアリアに向かって魔力を込めた波動を放ったのだ!! 俺は『聖剣』を使って……波動を受け流そうとすると……。俺の持つ『聖楯の鎧』が一瞬光り輝いて波動を防いだが……その威力に耐えきれず……。俺は吹き飛ばされてしまう。

(クソッ!!なんて奴だ!!まさかこんな技を隠し持っていたとはな……。このままでは……まずいな……。)と俺は思っていた。そこで、俺は、『超勇者の神眼の能力』を使って……理沙の姿を目に焼き付けると、『全能力強化』と、『全状態異常耐性』を自分と田中に与えることにした。さらに…… 俺は、『全知全能』を使い……。この世界のあらゆる知識を得るようにすると……この神殿を創った存在について理解できたのである。

(そうだったのか……。この世界を護っていたのは……。『守護者』という者達で……。この世界が崩壊の危機に瀕した時に……この世界を救う救世主が現れるようにするために……。今まで世界を守っていたのだな……。しかも……。この世界の『創造神』に生み出されたのではない……。この世界の『創生者』に生み出された者たちだったんだな……。そういえば……。理奈ちゃんのお父さんが話していたことを思い出したよ……。『この世界には『創造主』が存在していて……。我々が住んでいるこの星が危機に陥った時には……異世界から召喚されて……救うことが出来る『救世主』様が現れて、助けてくれると言っていたんだ。』と……。そういうことなんだろうな……。)

と、思った俺は……リゼルとの戦いを諦めることにした。俺は『勇者の世界』に帰るために『勇者の世界』への門を開き……。俺達は、『勇者の世界』に帰ることにしたのである。

俺は、『勇者の世界』に帰ろうと準備をしていた時だった……。リゼルが立ちはだかったのである。

俺「お前は理奈の体を手に入れたようだが……。お前に勝ち目はないぞ? 理奈が使っていた力は……。田中君やアリアが使って来たものなんだ。田中君はアリアが使用していた武器を扱えるようになっているはずだから……田中君だけでも何とかなるはず……。それに、お前はこの世界で『聖王』『大魔女』と呼ばれる程の実力者だったわけだからな……。そんな奴を相手にしている暇があるのであれば……。早く帰った方が良いんじゃないか?」と言った瞬間……俺は……理奈ちゃんの姿に変身して……。『時空の狭間』を開いた。そして……。『時の歯車の力』を利用して……。この世界の時間が止まった状態にした後に……。理奈ちゃんに合図を送って理奈ちゃんにリゼルを連れて『時の歯車の迷宮の階層』に飛ばしてもらった。

俺は『時の歯』の迷宮を抜けた後は……。リゼルと理奈が居る場所に向かったのである。理奈は……『時空の迷宮』の出口の近くにある大きな湖の近くにいたのである。俺は……リゼルと田中君を拘束して、『勇者の空間』に連れてきたのだ。

俺は、田中君の意識を呼び戻すことにしたのであった。すると……『勇者』に姿を変えていた田中が目を覚ましたのであった。俺は、田中君の身体から、理奈ちゃんを田中君の体に戻そうとしたのだが……。田中君の魂が、理奈ちゃんから離れなかったので……。仕方なく……。田中君はこのままでいいと伝えてから…… 田中「私は理菜だよ!お兄ちゃん!!」と言う。田中は『勇者の世界』に来る前までの理奈ちゃんの記憶は持っていないみたいなので……理沙として生活してもらう事にしたのだった。俺は、田中君の肉体を『勇者の空間』に置いておくことにして……俺とアリアと田中とリリスと一緒に『迷宮の迷宮』を脱出した。そして……。リゼルがいる『迷宮の迷宮』に転移してから…… 理奈に田中の体を元の状態に戻すようにお願いした。理奈が田中の身体に戻ると……理奈ちゃんは倒れそうになり……それを理奈ちゃんに憑依しているリゼルが抱きかかえたのである。理奈ちゃんは気を失ったので……俺はリゼルにリゼルの力を回収するように指示をして……理奈ちゃんをアリアが抱っこしてくれたのだ。俺は理奈ちゃんの事が心配だったが……リゼルの話では、しばらく休めば大丈夫らしい……。

俺は田中に……俺が『勇者の試練の間』で手に入れた力を与えてみた。

俺が……理奈ちゃんに『勇者の祝福の力』とリゼルが俺に与えた力で、リゼルとリリスが田中君に『魔王の祝福の力』を与えてみると言ったので……。

俺は、理奈ちゃんが目を開けたときに、リゼルが理奈ちゃんにキスをする光景を見たが、気にしないように心がけながら……。田中にリゼルと理奈ちゃんから力を与えたのだが……。

どうもリゼルと理奈ちゃんの力を田中君が取り込んだ際に……理奈ちゃんと理奈ちゃんの体を借りて生活しているはずのアリアさんの人格までも取り込んでしまったみたいで……。『大魔王の力』が『聖魔』に変化してしまい……。『大魔王』の力ですら凌駕するような強大な力が田中君に宿ってしまったのである。

俺は……とりあえず……この事は理奈ちゃんに説明しておいて、田中には『大魔王の力』を理奈ちゃんに与えないようにしてもらうようにお願いすることにした。理奈ちゃんは…… 理奈ちゃんは……俺に言われて……リゼルの人格が消えてしまった事にかなりショックを受けた様子であったが……。田中がアリアさんまで一緒に取り込んだ事に気が付き、理奈ちゃんは……自分の中にいるもう一人の自分を認識したようで、すぐに受け入れたのだ。

(まぁ……。元々リゼルもアリアさんも田中君の事が好きだったというか……。好意があったようなので、特に違和感を感じなかったのかもしれないが……。)

俺は、理奈ちゃんの事も少し心配していたのだが……、理奈ちゃんは……田中に何かあるといけないと思い、田中が目覚めるまで側にいると言い出したのである。そこで俺は、理奈ちゃんを田中と一緒の部屋に寝かせる事にして、俺達は、『勇者の王国』に戻るのであった。俺達が……『勇者の王宮』に戻ったときには……もう夕方になっていて……。理奈ちゃんは眠っていたのである。俺は……理奈ちゃんが起きる前に……アリアと二人で話したいことがあったため……。アリアを自室に呼んで……。アリアに『勇者の世界』に行く前に俺が言おうとしていた事を告げようとしたら……。アリアも俺に告白をしようと思っていたらしく……二人共顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうに話をした。

俺は……アリアと手を繋ぎたいと思ったから……手を出して……。

アリアと恋人になったことを……改めて報告してから…… アリアは、田中がアリアさんの力を取り込んでいることを知っているので、俺からアリアが貰った『闇の衣』を返して欲しいと言って来たのだ。俺は、この前田中君と戦った後にも、念のため田中君の中に入っている闇の女神の人格のリリナには連絡を入れてあったので……問題ないと思って『黒の鎧』をアリアに返したのだった。俺は…… 理奈ちゃんが起きた時に、俺の事をアリアと同じように『タクトさん』と読んで欲しいと話したのだ。

俺が……アリアと恋人になれたことが嬉しくてアリアを見つめていると……。

俺が、これからもずっと俺の側で守ってやると言うと……。

アリアは俺の腕の中で泣いてしまい……それからしばらくは離れてくれなくなってしまったのである。俺は、アリアが落ち着くまでの間ずっと抱きしめていた。俺は理奈が目覚めるまで、ずっとこのままの状態なら良いのにと思うが……。そうもいかないのが現状だ。

俺は……アリアを落ち着かせてあげた後、リリスとリゼルを連れて、『勇者の神殿』に向かったのである。すると、そこには田中の姿があって……。

俺は、『時空の門』を開いて……リゼル達を連れて……元の世界に戻ってきたのだった。俺がリゼル達に、『迷宮の迷宮』から戻る方法を教えると……。リゼルはアリアとリリナの様子を見たいと申し出て来たので……。

『聖剣』の力を使って……。田中君の姿で理奈ちゃんが使っていた姿に変わるように頼んだのだ。俺は田中君の姿を見て……理奈ちゃんが『大賢者の力』を受け継いでいたことを知ったのだった。俺は理奈ちゃんの部屋に戻ってみると……ちょうど理奈ちゃんが起きてきた。俺は、理奈ちゃんが目を覚ますと……。アリアの時と同じことを言った。俺に呼ばれてやってきた田中君を見て……。理奈ちゃんはすぐに状況を理解できたようだったので……。

理奈ちゃんには、俺の側から離れないように注意して……俺達は、一旦俺の家に帰ることにしたのだった。そして……。田中君を風呂場に連れて行き、身体や髪を洗い終わったあと……理奈ちゃんが用意してくれた服に着替えさせたのである。理奈ちゃんが用意した洋服を身に着けている時も、田中君は照れていて……可愛いなと思っていた。俺達は、『聖都』から少し離れた自宅に転移して戻ってきていたのだ。そして、自宅から出る前に俺は田中君に「俺は君の味方だからな!」と伝えると……。田中君は涙目になって俺に飛びついて来た。

田中君が俺の胸に顔を埋めていたので……頭を撫でてやると……泣き出しそうになってしまったので……。慌てて田中君を引き剥がしたのだ。俺は、「今はまだ泣かないでくれ!またすぐに会いに来るよ!それに今日は君の家にいるはずのリゼルとアリアにも会うつもりだからな!!」と言うと……今度は「ありがとうございます!!私なんかのためにここまでしてくれて……嬉しいです!!」と言ってくれたのだった。

俺は、田中君を『時空の迷宮』の入り口の近くの湖の近くに送っていき……。田中君を見送ったのである。田中君が帰る前に、理奈ちゃんは、自分の『闇の衣』をリゼルと理奈ちゃんとリゼルの母親とで使うために預かっていてくれるように田中に言って……。

俺は『時の歯車』の迷宮を抜け出してから……『時の迷宮』を『時の歯車の迷宮』に戻してから……田中君に、『大魔王』の力を宿したままで、田中君がアリアさんの所に帰るように指示をしたのだ。

俺が『時の歯車』で、『時の迷宮』の扉を開き……。理奈ちゃんと一緒に『時の迷路』に入った瞬間に……。

『勇者』の格好をしているリゼルが『時の迷いの森』に入って来て……理奈にキスをした光景を目撃したのである。俺は、『勇者の世界』に『時の迷 い森』を作り出したのだった。そして……。俺は、田中君をリゼルに渡したら……理奈ちゃんと一緒にリゼルと理奈ちゃんに憑依しているアリアさんに会いに行こうと考えていたのだった……。

田中がリゼルに抱き抱えられて、アリアとキスをしたあと、リゼリスとアリアの人格は融合したようである。そして……『迷宮』が消えてしまい、田中が目を開けて起き上がると……。田中は理奈になっている事に気づき、混乱している様子だったが……俺はとりあえず田中の身体に理奈の身体が馴染むまでは俺達が保護してあげるようにと田中に伝えたのだった。その後、俺達が自宅に戻ると……。すでに日も落ちて、辺りが暗くなり始めていたので、とりあえず田中に、理奈が使っている部屋に案内し、夕食を食べることにしたのである。田中も、自分がどうしてここにいるのか不思議そうな表情をしていた。それから俺は田中に対して、アリアさんのことを伝えたのだが……。田中からすると全く状況がわからなかったので困惑していたようだ。それで俺は……簡単に説明だけをしてやった。田中は俺の説明を聞くうちにどんどん顔色が悪くなっていったのだ……。そして……理奈に俺が話したことを詳しく聞いたらしい田中が、理奈の方を向いて言う。

「あ~!!そうか!!!『勇者の世界』、『魔王の世界』両方救うなんて不可能だし、そんなこと絶対に無理だもんね……。僕は……アリアさんの力を手に入れたことで……。『魔王の力』を制御できなくなったみたいで……。僕の中に、リリアナさんがいたんだけれど……。その……えっと……僕にキスして……僕の中に入ってきて……『聖剣の力』を吸収したらリリ・アルストロメリアがアリア・リゼールになったってことなのか?」

「そういう事なんだ……。リリさんもアリアも……リゼルもみんな俺の家族で、大切な人達なんだ。」

「じゃあ……僕のせいで……『勇者の王国』も滅んじゃったんですか?すみません……僕が弱いばっかりに……」

「いいんだよ……。田中君……。田中君が悪いわけじゃないんだ。それに……。俺が必ず『聖魔の力』を手に入れて、みんなの敵を討つよ……。安心して欲しい。田中君には……悪いが、しばらくの間は、アリアさんの所にいてあげてくれないか……。今は……まだ俺達と一緒に行動できるレベルに達していない気がするからな。それと……俺達が『大迷宮』を攻略した事は内緒にしておいて欲しい。特に、国王や大臣とか偉い人達に知られると厄介だからな……。」

俺は田中を納得させて、リゼル達が戻ってくるまで、理奈が使っている部屋を貸す事にしたのである。俺とアリアが一緒にいるときは俺達が使っている部屋に来てくれて構わないと伝えて……。

田中に事情を話し終えた後、俺達は食事をとった。そして……。

理奈に俺が『勇者の世界』で着ていた洋服を何着か持って行ってもらい……。田中は、『勇者の世界』の洋服を着てみることになった。田中は……理奈の姿で着てみるとサイズ感などはバッチリで、問題なさそうであった。

それから俺とアリアは、『時空の門』で田中がいる家に行き……。田中に『時空の指輪』をはめて、田中が『勇者の迷宮』を攻略するまでのしばらくの間だけ俺達の家族になってくれるよう頼んだのだ。田中も俺の頼みを聞いてくれることになった。そして…… 俺達は田中のいる家で、食事をしてから、風呂に入り……。田中は風呂から出た後は、俺の服を貸し与えてやり就寝させたのである。翌朝……俺が起きると既に理奈は朝食を作ってくれていて……。俺が理奈と話をしている間に田中も目を覚ましたようで起き上がって来た。俺は田中に理奈の作ったご飯を食べてもらいながら、これからどうするかの話をする。

俺が、『勇者の迷宮』を攻略して……。『時の歯車』の力で俺達以外の時間が止まった空間を作る。そこが、俺がこの世界に来てからの俺が過ごした時間を過ごす場所であると説明したのだった。そして……。理奈とリリアナのお母さんと理紗が使っていた家の中も俺の空間の中にあるため、いつでも俺の側にいることができるとも説明したのだ。すると田中が俺の方に視線を向ける。

俺は田中が何かを言いたいのかなと思って、「どうしたんだ?」と聞いてみると……田中が……。「僕は……あなたに助けてもらっただけなのに……こんなに良くしてもらって……。恩返しがしたいのですが……何をすれば良いでしょうか?」と言うので……俺が、「君はアリアさんの所に行って欲しいんだ。君にしか出来ないことがあると思うんだ。それに、君はもう……リリと、リゼルの力の一部を持っている。きっと君なら『迷宮の迷宮』だって攻略出来るはずだ。『大迷宮』のダンジョンマスターを倒して、リゼルとリリとリリアと君を元の時間に戻せるだけの力を……手にしてほしいと思っているんだ。それに……。理奈が田中君を助けてあげたくて……。『勇者の王国』を滅ぼしたという責任を自分一人に背負わせたくなかったからだと思うんだ。だから……理奈のことを嫌いにならないでやってくれると嬉しい……。頼む!!」と頭を下げたのだ。そして……田中に理奈をお願いする事にしたのである。

田中が「わかりました!!ありがとうございます!!」と涙を流しながら、お礼を言っていた。俺は……『聖都』に戻って、まず『聖女』と話す事に決めて……。田中君とアリアさんは二人で話が出来るように、理奈の家の2階にあるベランダに連れて行ったのだった。

俺は、俺の家に戻ったあとは、すぐに理奈と理紗と一緒に『時の迷い森』に向かったのである。そして、『勇者』の姿で、アリアの身体に憑依しているリリに『時の迷宮』の扉を開いてもらい……。『勇者の迷宮』に潜り込んだのだった。『勇者』の姿になった俺を見てリリは、「私を倒せば、『時の迷宮』をクリアーになるよ! 頑張って!!」と言うと……。俺は『時の迷い森』で、リゼルの身体を乗っ取っているリリアを呼び出し、リリアと協力して『時空神』を倒した時のように……『時空迷宮』の最深部に辿り着くまでにリリ・アルストロメリアの魂を消滅させる事に成功したのである……。リリスとリゼルの肉体が光の粒子に変わって消えていったが……。その光景を見つめていたアリアさんが泣き崩れてしまったのである。アリアさんが落ち着くまでは……。『大魔王』に俺の意識だけを乗り移らせ……『大魔王城』に転移して……そこで、理奈が理奈ちゃんになり……理亜ちゃんの記憶を完全に取り戻して……アリアさんが『勇者』として覚醒するまで待ったのだった。

そして……理奈ちゃんが「これで終わりです……。」と言ったら……。『勇者の世界』の時間が全て止まってしまった。俺は、アリアさんが、田中君と一緒にいられるようにするために、『勇者の世界』で、『時の迷路』を発動させたのである。それから……俺は、理奈と一緒に『時の迷路』を抜け出して、『時の迷 い森』を作り出し……『時の迷路』の扉を開いたままにしておいて、『時の迷 い森』にリゼル・アルストロメリアの肉体を保存しておいたのだった。リリアは俺に抱きついてキスをして来て……。リゼルの身体から俺の中に入って行く……。俺は……リリ・アルストロメリアが消えた事で……アリアが『勇者の力』を発現しやすくなるだろうと思ったのだった。そして……理奈と俺は『聖王城』に戻り……理奈の両親と姉に報告してあげて……。俺は、『勇者の世界』の『魔王の世界』にいるリリスの事をアリアさんに託した。俺はアリアさんから……『聖騎士』、『剣豪』、『賢者』、『聖獣使い』、『魔道師』が仲間になった話を聞いた後、俺達家族だけで『魔王の国』に戻る事に決めた。理奈に、リゼル・アルストロメリアの肉体に憑依しているリリアを預かってもらう事にしたのである。それから俺は理香ちゃん達に事情を話し、理恵を連れて『聖騎士』に会いに行ったのだ。『聖騎士』が俺達を迎えてくれたのだ。そして……『魔王の世界』に帰ることにしたことを話したら……なぜか俺に対して、「本当に行ってしまうのか?」とか……いろいろと言ってきたけど俺は適当に流して……。それから俺が、魔王様と話をさせて欲しいって言ったら、『聖女』を呼び出されて話をする事になった。理奈が、『魔王の国の女王様に謁見するのに正装がないんです。ご主人様に作っていただいた服で大丈夫なんですか?』と心配してくれていたので……俺達は急いで『魔族国』の王城に飛んで行き……。『聖都』から帰って来ていたエルザに、アリアさんのドレスの仕立てと、俺と理奈の服も注文するように指示を出した。理奈が『魔王城』に到着する頃には、エルザとリーゼとアリスと理菜と俺が合流していたのである。そして……俺と理奈が『勇者』になっている状態で……俺達が、『魔王城』に入ると……リリが出迎えてくれるのであった。そして、俺達は『時の迷宮』に行くことにしたのである。俺達は……理沙のお父さんやお祖父さんとお祖母さんに挨拶をして、理香ちゃん達家族も連れて来る事を伝える。理香達は大喜びで理奈も喜んでいたのだ。俺達だけ『大迷宮』に入るつもりだったのだが……結局みんな一緒についてくることになってしまった。

「理奈……。この人達も連れて行くのか?」と俺が聞いたんだけど……みんな俺と一緒にいたいんだってさ?なんか……恥ずかしいなぁ……。まあ、仕方ないか……。

そして俺達が『勇者の街』『魔王の街』に向かうと、俺達と入れ違う形で、勇者達が出発した後だったらしく、街中で見かけたが……声を掛けられなかったので、俺がリリ・リリスを呼び出し……。勇者達を追いかけるように指示を出すと、すぐに出発してくれたのであった。『勇者の村』で、村長と勇者の女の子がいて……何か言い争いになっていたようだが……よく聞こえなかったし……俺達は『勇者の街』に向かったのである。

そして、『勇者』達は俺達の予想よりも早くに着いていたので……すぐに『勇者の世界』に行って、『時の迷い森』の中に作った『勇者の隠れ家』の中で一泊することにした。理奈と理彩には俺とリリ・リリアが一緒に寝ることになったのである。俺はリリに、『時空神』との戦いの顛末と……理紗が『時空神』と融合している話を聞かせてあげることにしたのだ。

すると理紗が自分の中に入っている『時空間の神・リゼル・マギア=スルト』の存在を感じたのか……「パパ……。私の中には『時空神』がいるんだよ……。」と言う。俺は驚いたけど……。とりあえず、理紗も落ち着くまで待つことに決めていたのだった。

次の日の朝、俺は、俺の家族やアリアと理紗を連れて、『魔王の世界』に帰るために……『大迷宮』に潜る事にしたのだ。

まずは『時の迷宮』・『勇者の洞窟』に潜ることにした。この二つは比較的弱いダンジョンだったので、俺の敵ではなく簡単に攻略出来てしまったのである。しかし……『魔王城』に転移で戻って来たときには、『魔王城』の前にたくさんのモンスターの死骸と……大量のドロップ品で埋め尽くされていたのである。

「リリ!!これは何が起きたんだ!?どうしてこんなことが起こったんだ?」と俺が聞くとリリは、「わからない……。私が理奈と理沙を待っていた時に突然現れて、私に襲いかかってきたから、理奈と理彩の魔法で一瞬にしてやっつけちゃったの。でもその前にダンジョンに戻ろうと思ってたから、少しの間ダンジョンに戻っていただけなの……。そしたら、急にこんな状況になっていて……ビックリしたのよ!!」と驚いていた。そして、理亜が理奈と理香に質問してみたらしいのだ。なぜ……そんな事を聞くのかというと……。理香が言うに理亜ちゃんが「私は『聖騎士』だからわかるわ!!この人達……魔物じゃなかったの!!きっと……理奈ちゃんの言ってた人だ!!理奈ちゃん!!今なら会えるかもよ!!どうせだから、みんなにも会いに行こうよ!!」と言うので理奈にお願いして、俺が『勇者』の姿になる事を条件に会う事にしたのである。

理奈に憑依している俺の身体に憑依しているリリが『勇者モード』になったとき、『勇者』の職業スキル『光体化』を発動させて俺と入れ替わったのである。俺達は理亜と一緒に『勇者の街』に向かい理奈と『聖獣使い』、『剣豪』、『賢者』、『聖魔道師』に会いにいった。『勇者』の姿でいる俺は無敵なので問題ない。それに……『魔王』と『大魔王』が仲間になっている以上、この世界最強の俺達が『魔王の国』にいる限り『魔王の国』が攻め込まれることはないのである。

俺は理奈に身体を貸している間に、自分の記憶が消えないように理香の記憶操作を使って……アリアの『賢者』とリーゼの『剣豪』は仲間にならなかった。アリアは……リリの友達の『魔獣使い』に憑依していた『時の魔人』リリネスが理奈に攻撃してきた事で……。『魔道師』のアリカは、理奈が理香に憑依していた『時空神』を討伐したことで……。それぞれ覚醒したのだ。そして理姫は『勇者』の理奈を見て……「ママ……。」と言い、アリアの『魔道師』のリサは、アリアさんを抱きしめると涙を流していたのである。それから、理奈と俺達は、『勇者の世界』に行っていたのだった。

俺は、アリアさんをリリスに任せて……。俺は理沙と一緒に理恵の元に行くことにしたのである。そして……俺は、アリアさんとリリを残して、『魔王の国』に戻ることにしたのである。理奈が俺と離れることを嫌がったが……俺とリリが一緒の方が安全だし……リリスの事は俺が一番知っているから……と、俺達は『魔王城』に戻り……理恵を連れ出し、『勇者の世界』に飛んだのである。俺と理奈はすぐにアリアとリリアと合流しようと思い理奈に身体を借りようとしたんだけど……アリアさんが「ちょっと待ってください……。もう少しだけでいいので……」と言ってきたので、アリアさんの気の済むようにする事にしたのだった。

理奈からアリアさんに俺の魂が移って、しばらくして……理奈がアリアさんが言っていた言葉を思い出したらしく、俺に話しかけてきたのだった。理奈が「ねぇ……パパ……。さっきのアリアが言ってた事って……どういう意味なんだろうね?」と言うので、「さあ……。俺にはよく分からないけど……アリアは俺との別れ際に言ったんだよ。『私はもう大丈夫です。私のことは忘れてください。幸せになって下さい。そして、いつか……また……会いましょう!!』って言ったんだけど……。」と俺が言うと…… アリアさんが「理沙……。私に話を合わせてくれたみたいだけど……本当のことを言うから聞いてくれるかしら……。」と真剣な顔をしたので……俺と理奈は……息を飲んで……静かに話を聞こうとしたのだった。するとアリアさんが話し始めてくれた。それは……『聖都・ラスターハイム王国』の王妃であり……この世界の理奈でもある『時宮理亜』の話であった。理奈はその話を聞いた瞬間泣き出してしまい、アリアも涙ぐんでいたのだ。そして……しばらく無口のまま時間が過ぎていくのであった。

それから、アリアが「あなた達が……私を救ってくれたんです。理沙……あなたのお陰よ。ありがとう。私とあの人が愛し合ってできた命は理沙の中に受け継がれていたんだよね……。だから私がここに居られるのも、全部理沙のおかげだよ!!」と言う。俺は、この世界のもう一人の俺である理沙の気持ちを考えながらその話を聞いていた。そして理奈は……「うん……。」と言って……泣いていた。

俺とアリアとリリアが理彩達と一緒に『勇者の街』に行ってみると……ちょうど『勇者』達が街に帰ってきていて、『時の迷宮』の『時の塔』を攻略しに行っている所であった。俺達が塔の入り口に近付くと門番をしている『勇者パーティー』・『聖剣王・アルデバラン』のリーダーである『剣聖 勇者 佐藤武尊』が「おっ!!理沙!!理彩も帰ってきたんだね……。あれ?その人は?」と嬉しそうに言うと、隣にいた女性二人を見て……「そちらの方は……?」と言ったのだが…… リリア「えっとぉ〜!!初めましてぇ!!理沙の母の『聖魔道士 佐藤理紗 』ですぅ!!理奈と理彩に助けてもらってから仲良くなって一緒に旅をすることになったんですぅ!!これからよろしくお願いしますね♪あっ!私達の仲間のリーザちゃんを紹介しますよぉ〜」とリリ・リゼルを紹介する。すると、その女性がリゼルだと分かったらしくて……驚いていたのだ。そして、なぜか、その後……『剣豪・佐藤凛香』と『賢者・佐藤雅美』を紹介した後、理紗に何かあった事を聞いてきて、理紗に聞く前に俺が事情を話すと……。みんな納得してくれたようでよかった。それから、『時の迷宮』の攻略を手伝ってもらえることになったのである。そして、『剣豪・鈴木優』と『賢者・佐藤和真』に会えた。この人達には……俺は会ったことがある。『勇者の世界』で……『勇者』の『剣聖 』と、一緒に行動しているところを目撃していて、こっそりと鑑定しておいたのである。この二人は、とても強いけど……レベルが低くて、まだ、『剣豪』『賢者』という職業のレベル1だった。そして、理紗達と一緒に『勇者の洞窟』に案内してくれたので、『大魔王』と『魔王 大魔王 理奈』と合流して、『大迷宮』攻略を始める事にしたのである。

まず、俺は理奈に憑依して……この世界で最強の力である、『魔王の力』を使ってみることにする。まずは……リリアが使っていた闇魔法『暗黒障壁(ダークウォール)』を使ってみる事にした。これは闇の壁を作り出して敵の攻撃を防ぐものである。俺がこの技を使うにはまずは……俺の目の前に……直径5mぐらいの闇の壁を作って、その壁に触ってみる。すると、何も起きなかったので……次は……その横の壁に同じように闇の壁を作った。俺は試すように……今度は二つ目の横にも同じ大きさで作ろうとしたら……急に俺が作った『黒い壁』が大きくなったのである。俺は……慌ててしまったが……この魔法の発動の仕方が分かってホッとしていた。

俺は続けて『重力操作魔法 グラビティ』と念じてみた。これは対象の大きさや重量によって、必要な魔力が違う。そして俺は今いる場所の床と、リリアの作った大きな壁と俺の周りの3箇所に同じくらいの重力をかけた。この世界にある一番重い物は多分……金だ。だから、俺のかけた魔法でリリアの作り出した壁と、床と……あと、自分の周りにも、俺と同じだけの重さがかかってるはずだから……合計4つ……計12トンになる計算だ。でも実際はもっと重くなっていると思うからもう少し多いはず……。まぁとにかく……こんなに重くなると俺が立っているのもやっとになってしまうのだ。

俺とリリの合体スキル『魔王の力』を使った場合なら、この状態でも動けるが……。それでも……俺は動くことができなかったのだ。しかし……理奈に憑依した状態の俺は……問題なく動き回ることができた。しかも……俺が使ったのが『暗黒の鎧 ダークアーマー 』と、『闇の大盾 ブラックシールド 』の効果だと思う。なぜなら『勇者』の能力の『魔王装備召喚』で『魔黒曜石の剣』を出してみようとしたら、出てきたからな……。俺は、それを確認してから『勇者』の能力を解除した。リリが俺の横に来て俺の肩に手を置いてくれたので、安心しながら『勇者』の職業の『魔導戦士』に『勇者チェンジ』をした。それからリリアと一緒に『時の迷路』に向かう。理沙に憑依していたリリは、俺がこの世界に来たとき最初にいた部屋のベッドに、アリアが転移で運んで寝かせているらしい。そして俺は……理姫の所に行こうと思ったんだけど……。どうせ『勇者の世界』に行くなら理姫を連れて行きたいと思っていたのだ。そして……リリアは……俺に寄り添うようにして歩いていた。

リリ「お姉様……私、リリスはリナと一緒にいますね……。」と言う。俺が……「リリ……俺に付き合ってくれてありがとう……。また……後で、会おうな……。」と言うと……。リリスも、「はい……、リリをよろしく頼みました。私達は『勇者』が使うあの扉から出られるのは分かっていましたが……、理奈と理沙の二人の事……本当にお願いします。それと……リナの事を大事にしてあげてくださいね……。それじゃあ……元気でね……」と言い、俺はそれに答えるように「ああ……。わかったよ。理奈の事……任せておいて!!」と言うと……。リリスは笑顔になって、「では……お待ちしていますね」と言って消えたのだった。

そして……俺は、この『勇者の世界』で……理奈として生活していた『佐藤理奈』の部屋に行き……彼女の記憶を思い出したのだ。

理奈が言うには……彼女は元々この世界で生まれた『佐藤理沙』という少女の記憶があるだけで、『佐藤理奈』という人間ではなかった。『佐藤理沙』の魂が、『聖剣』になったときに、たまたま近くにいた理奈に乗り移っただけだったらしい。そして理奈に憑依している時に、その体に馴染むまで……意識がなかったようだ。だから理奈は、『理沙の体の中に私の体が馴染んでいく間』と言っていたそうだ。理奈が俺との思い出話をしていた時、理奈の感情が強く伝わってきて、彼女がどれだけ俺の事を想ってくれていたのかが分かったのであった。

そしてリリの言っていた通りに、俺達があの扉を通って出た先は……この世界の俺の部屋に繋がっているようだった。俺は、とりあえず……この部屋で少し休憩することにする。理奈に……「理奈……。」と呼びかけてみたが反応はなかった。理紗の方に呼び掛けると、理奈は俺の声に反応して……「ん?……。あれっ……私達どうなったんだろう?」と言ってキョロキョロ周りを確認していた。俺は、俺達が理沙達を助けた話をしてあげたのだ。そして……俺が、理奈に「理奈のお父さんとお母様に挨拶していこうと思って連れてきたんだ。ちょっといいかな?」と言うと理奈は、すごく嬉しそうにしていて「うん!!行こう!!」と喜んでいたのである。理沙の方も理彩の方も嬉しそうであった。そういえば……この世界に居る時の俺は……俺が死んだ後だから、『この世界の俺の親父』と、『この世界の俺の母さん』だよな?と俺は思って二人に会いに行ったのだった。

リリ「リリスも……お兄様と一緒に行ってもよろしいですか?」と言ったので俺は「もちろん!!一緒に来てくれ!!」と言った。

リリは……俺に甘えるような感じになっている。そうこうしていたら理奈達が『勇者』と、『剣豪』達を連れてきたみたいだ。

『聖剣王・アルデバラン』と、もう一人の女性が、『剣豪・鈴木優 』、『賢者・佐藤和真』そして……もう一人……女性がいるのだけど……。あれ?誰だろう? 俺はその女性を見ると『大魔法使い 田中雅美』に鑑定をかける。すると『賢者・佐藤和美』となっている。つまり『賢者・佐藤雅実』の妹か!!鑑定をかけて初めて気付いたのだが……この女性は理奈と理彩と同じ歳に見える……。俺は、みんなを集めて、この女性が理奈や理彩と一緒だった事を説明する。それから……この世界で俺達の仲間になってくれる事になったことも説明する。俺は……『剣豪・佐藤武尊 』、『剣豪・山田凛花 、賢者・佐藤雅美 』と握手をする。みんなとても嬉しそうにしてくれているのだが……俺と握手した後すぐにリゼルと、握手した人達の反応がおかしかったのだ……。リゼルの方はなぜか涙を流しているのでびっくりしてしまった。俺は、なんでそんな事になってしまったのかよくわからないまま、『剣豪・佐藤凛華 』が「太郎ちゃん。この子は私が連れて行くわ!リゼルって名前を付けてあげるね♪これからずっとこの子が私の家族の一員になると思うと嬉しいからさ。」と笑顔で言っている。リゼルの方は涙ながらに何度も礼を言い続けているのだ。

その後、『勇者』の二人が来てから、『大魔王』のところに行って事情を話したら……理奈と理沙に憑依したままでも、大丈夫だと許可が出た。俺が『大魔王』のところにいる間は、リゼの体を動かせるからそれで問題ないようだ。そして……リリと理紗に『大魔王』に『闇の加護』の加護を与えてもらっていた。この世界では『勇者』『剣豪』は『大魔王』に加護を与えてもらえないと戦えないので……。これで……この世界でも俺と仲間達は戦うことができるはずだ。しかし……。この世界のリゼルや理紗が仲間になってくれないと……戦力が足りなくなってしまう可能性があるので……。『大魔王』のところで訓練を受ける事になるはずだ。俺は、リリと理姫と一緒に一旦元の世界に戻る事にした。

『大魔境』に戻った俺は、理姫と『勇者世界』の『勇者 リリ』と『勇者』達の事を、俺の仲間達に紹介する事にしたのだ。俺はまずは、『魔王城 』に向かう事にした。リリには『勇者の世界』で待っていてもらいたいと思ったけど、どうしてもついてくると言い張っているので一緒に行くことにしたのだ。そしてリリは俺に『魔黒曜石の杖 ブラックスタッフ 』を渡してくれるので装備する事にする。装備してから気づいたが俺は、『魔王の力 魔力量増大』『魔剣召喚能力付与 エクスブレード ソード召喚能力強化(10使用条件あり)、『魔力吸収無効 ブラックアウト』と『物理攻撃半減 バリア効果』と『状態異常無効化 パラライゼーションオールキャンセル』がついているのが分かったので……。俺がこの世界で使えるスキルや魔法をリリに伝えておいた。そして俺はリリの頭を撫でる……。

理奈と理紗の二人は……リリと俺を不思議そうな顔で見ているが……今は説明している暇はないので後でまとめて話すことにする。俺達は、まず最初に……魔王城に転移した。それから俺は、自分の記憶にある『大魔城 』に向かって移動する。

移動している間に、理姫が、この世界では『大魔族』と呼ばれている種族は『魔黒曜石の女神像 ブラッディストーン・ゴッデスマギメタルゴーレム』と呼ばれる女神像を崇拝している宗教のようなものがあるらしいと教えてくれたのだ。リリは「それならば『魔王 リリス』は……魔黒曜石を信仰する『闇神殿 ダークリアスト』で修行していた可能性がありますね。私には詳しい事はわかりませんが……。もしかすると……リリのお姉様であるリリス様もこの世界に存在している可能性も否定できません。ただ……。」と言葉を濁していたが……。リリが、「リリスは、私より年下なので、生きているとすればかなり幼いはずです……。」と言ってきたので……この話はここで終わりにした。俺はリリの事が少し心配だったので、理紗に「少しこの場に残ってもらえないかな?俺が戻って来るまで、リリの事を見ててあげて欲しいんだ。リリを頼むな。」と言うが、リリスの姉でもある理紗は快く了承してくれた。そして俺は理紗に任せて先に大魔城に向かったのだ。

大魔城に到着した俺は……。城の者に、俺の部屋への直通の道を案内してもらう。俺の部屋は『魔王の間』だ。

俺「俺だ。今戻った。開けてくれないか?」というと……中から、魔王が入ってきて俺を見るなり……泣き崩れてしまう……。俺は、魔王を抱き抱えながら言う「遅くなってごめんね。ただいま……。みんなに報告するよ。みんな元気そうで良かった。本当によかったよ!!」と皆に声をかけた。俺が声をかけたあとに『暗黒龍ダークネスドラゴンロード』こと……『邪神』のルシフェルが現れた。そして……。

ル「太郎さん。お久しぶりですね。私はあなたのお陰で復活することができました。そして、あなたのために働くことをお約束いたします。私の力を役立ててください。私はまだ、この世界を楽しんでおりませんでした。この世界でやりたいことがまだまだあるのです。太郎さんと一緒に行動することで、この世界の事をもっと知れるような気がするので、是非よろしくお願いいたします。この『聖光王 ホーリーゴッド』が仕えるべき主に、あなたが相応しいと思いますので……」と言ってくれた。この子はとても可愛い感じの子なのだが……すごく強い。見た目で判断したらだめなタイプの女の子だった。

俺は……この二人に『大魔王 リリス』のことを聞く。すると……この世界では、俺の死後、大魔王の座についた『魔帝』がいたそうだ。この子が、その座についていたみたいだが……『大魔境 マスターダンジョン 大迷宮アルデバラン 最下層ボスエリア マスタールームの隠し部屋 』に『大迷宮』を封印するために行った時に死んでしまったみたいだ。それから、『魔王軍 魔族 』たちは、俺がいなくなってしまって、大魔王の座をめぐって争い始めてしまったのだ……。そして、この世界にも、この子の兄や弟たちが、それぞれ大魔王を名乗り始めて……戦争が始まりかけていた。そこに、俺が復活したとの情報が伝わり……なんとか停戦状態になったのだと教えてくれた。そこで、みんなを集めて説明したいと思っているのだが……いいだろうか?と俺に聞く。俺は、リリと、ルシフェルと一緒に『魔王城 謁見室』に移動する。

そこには、すでに、『魔王達』や、その他の配下が集まっていたのだった。俺はリリと、ルシフェルを連れてみんなの前で話すことにして……。リリを紹介して、みんなにこの子の事も受け入れてもらいたいと頼んだ。それから……理奈達と『勇者』達の事を話す。

リゼから、リリが俺達に協力してくれるようになった経緯を説明してもらう。

みんな驚いているようだった。特に、『聖光王』になった理紗の反応が大きい……。理奈や理沙は……まだリゼと話が出来ていなくて困惑していたようだが……。『勇者』は……。理紗だけは……すぐに理解できてなかったようで……混乱していて大変だったが……『賢者・佐藤雅美』からの説明でようやくわかってくれたので助かった。その後すぐに、この世界では『剣聖・田中義政』、『剣聖・佐藤和馬』、『剣豪・山田凛花』、『剣豪・鈴木優』に理沙のところに行ってもらい、リゼルやリリス達のことを、理沙と理奈に会ってもらいたい事と、リゼルと理沙達を引き合わせてくれればとても心強く思うので協力して欲しいと頼むと快諾してもらえた。

『大魔王 リリス』と『魔王 リザリーク』は……。理奈と理姫がとても気に入ったみたいなので……この世界で『魔王』として生きていく事に決めてもらったのだった。

俺は、リリが『剣豪・佐藤和真』と、結婚したいと望んでいるようなので、俺はリリから預かっていた剣『魔刀 デスエンド 』を渡してから、リリが俺に嫁入りすることの許可を求めたら、リゼル達が全員賛成したので……。俺はリリと、『勇者の剣豪 リリス・サトリシア 』の結婚を認めたのだった。俺が「二人の事よろしく頼むな」とリリスにいうと、嬉しそうな顔で……「はい。喜んで。私は、太郎様のお側にこれからもずっとおります。私はもう……貴方の妻であり……この国の王妃です。」と答えてくれるので……。嬉しく思いながら……。理紗や理奈も嬉しそうな顔をしている。リリも幸せになれたら良いんだけどね。そして……俺が『大魔境 大魔境アルスフォーニ 大魔境アルセニート』にいる『大魔王 魔帝 魔王リリス』と、魔王リザルド・魔王アスタロスは……この世界で生きていけるように俺の仲間になってもらうことにした。

そして……『勇者世界』で仲間になる予定だった……『剣鬼・斎藤誠』がこちらに来ていて……。なぜか、『大魔人化スキル 魔導士・田中龍』と夫婦になっていたのだ。そして……二人は俺に結婚の報告をする。この二人はこの世界に永住する事を決めていて……。俺は、俺の仲間になることを、二人に伝えてくれるように頼むと……二人は快く引き受けてくれた。この子達は、理奈と理紗の面倒を見てくれていた子たちだったので……理香がとても可愛くて好きらしいので……リリスも理紗も気に入ってくれるだろうと思うので良かった。俺は『魔王 リリス』『魔王 ザリス・魔王アスタロス』に挨拶をして……俺が今までの経緯を話し始める。俺は『聖女』と、リリの事と、『聖騎士 田中真理亜』の事を話す……。この世界で起こっている事はだいたい把握した。そして……。リリスは俺と一緒に行動してくれることになり……。魔王達は俺に従うことになったのだった。それから、俺は……。俺が、死んだ後に起こったことを、俺が知らない部分については……後で説明すると伝える……。まず、理紗のところから……理奈の事を、俺が死んでいるときに『聖騎士 田中真理亜』と入れ替わって助け出してくれた『女神』の事を聞いてほしいというと……。俺は、みんなに『田中女神』の事を話すと……。

ル「あの方が……生きていたとは……。やはり……。太郎さんは女神様に愛されているのです。私にはわかりました。やはりあなたは、女神様に愛された者……。『光の神 ライト・ロー』に認められし御使いなのです。私も、あなたの為なら、なんでもする気持ちは誰にも負けないつもりでいますから。」と言うのだった。俺は、リリスの言葉が少し引っ掛かるが……。気にしないことにする……。そして……。理奈の方の話は終わり……。理奈は……。自分が、女神様と融合して……。その力で俺を助けてくれていたという話を聞いたリリスが泣いてしまう……。リリスは……。リリの両親や家族をこの世界では、リリと同じように……。リリの両親は殺されていたそうだ……。俺とリリの境遇が似ているのがわかったらしく……。俺に同情していたのだった。そして……。

『暗黒龍ダークネスドラゴンロード 邪神 ルシフェル』に……。

「あなたがルシフェル様……。あなたも、理沙の事を救ってくださったんですか?」

ル「えっ!?……私がこの世界をうろついていた時に出会った『闇落ち』した理紗ちゃんを救おうとして……『勇者・田中一平』に封印されそうになったのですが……。その時に、この方のお力を借りたのですよ。それで……。『田中一平』が、この世界を救うためにこの世界に来た勇者で、あなた方が封印から解いた方であることがわかりまして……。私達も……一緒にこの世界を救うべく行動をすることにしましたの。」と話す。そして…… ル「そう言えば、あなたと理沙さんがお持ちになっている石を見せてもらってもいいですか?……あなた方は……あの『勇者・田中一平』の子孫なのでしょう?……」

理奈「そうだけど……。私達、そんなこと何も聞いていなかったけど……」

俺は理奈達に、『勇者・田中 一郎』の事は言わなかったからだろうと思って説明を始めたのだった。

それから、ルシフェルに、田中の両親のことや、『勇者・田中 一平』の事も、詳しく説明をした。そして……。俺達3人で協力して理奈や理紗を守り、みんなでこの世界を平和にすることを誓いあった。

そして……俺達は、『勇者』と『聖戦士 山田 美紀』、『勇者』の奥さんの『聖魔導師 佐藤美加奈 』と話をすることになる。そこで俺は、理沙と美香が『勇者・田中 一郎』の生まれ変わりであることを告げる……。

俺が『大魔王 リリアナ・リゼル』を復活させて、『魔王軍』と戦うことになる。理沙が、『聖魔導 佐藤 美希』の生まれ変わりだと知った理沙はその能力を駆使して俺の力になるべく頑張ってくれるようになる。理沙のおかげで、理沙の師匠でもある『賢者・佐藤雅美』とも仲良くなることが出来た。そして、理奈と俺の幼馴染の女の子の『大賢者・佐藤真理亜』を救い出して、『魔王』を退治してから、理香達と合流して、俺と、仲間になったリリやリリスと共に、『魔帝リリス・サトリシア』が大魔王となり、理奈は理奈として生きていくことを選んだみたいだ。

理姫も……俺が死んでしまったことで……俺の代わりにこの世界で生きていくことを決心してくれている。それから……この『勇者世界』の世界では、『勇者 理奈』と『聖女 田中理奈』ではなく、『聖魔道師 山田理奈』として生きていきたいと言っていたみたいで、俺は嬉しかった。そして……この世界で……『魔王討伐』の旅をしていた時の事を思い出す。俺は、理奈に俺と旅に出ようと誘ってみたところ、理沙に、「太郎君は私が守るんだから」と言って断られてしまう……。そして……。

『聖剣エクスカリヴァーン・勇者モード 勇者の武器』を使って俺と理沙で戦うが……リゼル達『大魔王軍団』や『大魔境 大魔境アルスフォーニ 大魔境アルセニート』の魔獣達にも手伝わせて戦わせるが、俺達が圧倒的に強いために、魔人族の国の魔王軍はあっけなく滅んでしまう。理姫も、俺に惚れてしまったようなので……俺はこの世界にいる間、みんなに、仲間になってもらう事にする。

***そして……俺達は『剣豪の里 サクライ 剣技の国 ソード』に行くが……。そこでは……。剣聖『剣豪・斎藤誠』が待っていてくれていて……。『魔導剣士 田中 龍』と結婚していたのだった。俺の事を知っていたようで俺の仲間になりたがっていたが……。俺とリリスは『魔導王国 アルテミシア 魔導士の都』に向かってから、この世界の『剣聖国 サカイ』に戻ってくるつもりだったので、その話は保留にしておく。俺が『聖剣エクスカリバー』で理紗に切りかかるが、俺は理紗を傷つけたくないので攻撃が当たる直前に止めると……。理紗に「ごめん」と一言言って……『魔王の城』へと帰っていく……。そして……俺は、リリスと一緒に、『聖魔帝国』に帰ることにする。そして……。理紗も俺と一緒に来る事になった。それから……。俺が仲間にした魔人族達は『魔王』であるリゼルに預けることにした。この『勇者世界』で、一番偉い『魔王』が俺の仲間になったのだ。この世界では、理沙と理紗以外の『大魔境』の全ての『魔神』の『核コア エネルギー体 魔物型』と、『魔王の城 玉座の間 謁見室』にあった5つの『コア 魔力結晶』を全て使って……この『魔王の城 魔王の間』にある……『魔水晶』を使い……。俺は、『光の大精霊 ルシファー』を召喚し……この『勇者世界』は……。リリスが治める事になる……。この世界で俺は、俺を裏切った理沙やリリスと一緒に『光の騎士団』を結成して……。この世界を、悪の手から守り続ける事を誓うのだった。

*『光の巫女』理紗と……『大魔王リゼリッタ』理樹は……俺と一緒にこの世界に残り……この世界で、この世界の人々のために尽くすことを決意する……。

俺がこの世界に来る前にいた『勇者』田中 一郎が使っていた剣……『勇者の剣』……今は『大魔聖 聖刀エクスカリスセイバー』は、『大魔境 大魔境アルスフォーニ 』の最奥部で眠っていたようだ……。『大魔王 魔王リゼリア・サタン』が、この世界を守るために創ったとされる最強の武具であり、世界で一番強くなければ扱うことはできないと言われている……『聖遺物ホーリーアイテム』でもある。俺は、理沙の師匠でもある『賢者・佐藤雅美』に、俺の仲間にしてもらい……一緒に、最奥部のダンジョンをクリアして、『大魔道師リリィ』から……この武器の使い方と、この武器を覚醒させるために必要な力があると聞いたのだが……。俺は、この武器と融合した……。そのおかげで……俺は……『勇者』に目覚めることができた。だが……。俺は……。この武器を使うたびに理沙と理樹の事を思い浮かべてしまうために使うことができなくなる。

この『勇者世界』に来てから、『勇者』である田中一郎の人格が現れてしまい……リリス達の前で俺の事を、『田中一平君』、『一平君』と呼ぶように命令されてしまった……。それから、俺は理沙達の住む『魔導国家 ソーディアに戻ることにする……。そして……『勇者の館』では、『剣神姫サーシャ』に、お別れを言うと……。「またいつでも、会いたい時に会えるから気にしないで」と言われて抱きしめられながら……。『光の騎士団 本部』に戻ると……理紗が俺に「私達には、遠慮なんてしないでよ。」と言ってくれた……。

俺は、その言葉に甘えて……。俺は、リリやリリアナ達に俺の秘密を話すことにしたのだった。そして……リリやリリアナ達も……俺と同じ境遇であることを知る。この世界に来た時からの知り合いである……この世界の女神『大賢者・佐藤雅美』とこの世界の『魔導王国 サクレイア』で出会ったばかりの……『大魔王 魔神 ルゼリシア・サタン』とこの世界の魔王……この世界最強最悪の敵であったはずの『魔王軍』のリーダー格……『大魔王 魔帝ルセリシア・サタン』の4人が俺達の正体を知っている唯一の人物になってしまった……。

俺は、理紗の修行を始めることに決めて……この世界の俺の家に帰るのは少し先になりそうだと思った。俺は……リリに「今から俺の家に行かないか?」と聞くと…… リ「私は……リリス様達とお話をしてから行くので先に帰ってください」と笑顔で言ってきたので……リリスと理姫を連れて家に帰っていったのだった。

それから……俺は、『剣豪の里 サクライ 』で知り合った……斎藤誠と、結婚をした……理香も……。理紗も……。この世界に残ったようだ……。ただ……。この世界で生きていくことを決意した俺に、俺の仲間になった……『大魔導師・佐藤雅美』が、俺の力になるべく協力してくれると、約束してくれた。

俺が理香や理紗達と、理香や理紗が『剣豪の国 ソード 剣聖国 ソード』に行ってしまったので……この国の魔王軍との戦いは、リリスに任せて……俺は、理奈や理樹と共に『剣王の国 ソード』に向かったのだったが……そこには、すでに理姫と理香が居て……どうやら……『勇者』と、『聖女』の力を受け継いだらしくて、『剣豪 剣豪長・近藤武彦』、『剣王・剣王補佐・佐藤文』、『魔剣士・田中義明』、『剣聖 剣姫・剣豪団団長・佐藤里奈』、『剣帝 剣姫・剣豪団団員・鈴木由美子』達が俺の仲間になっていた。

*『剣豪の国 ソード 魔剣都市アルスフォーニ』は……。俺の住んでいた街と同じような風景の街だったのですぐにわかったのだった。この国は、魔導具と……この国の固有能力の『剣聖』が有名な国で『剣聖』を信仰する『剣士』や『侍』『忍者』達が集まってできた国なのだ。この国の人々は、剣の扱いが上手いと有名だ。だから『勇者世界』の『勇者 剣神・田中太郎』の世界でも人気な国らしい……。俺は……『勇者 太郎』とこの国の『魔王軍』の魔人族との戦いに参加したりしながら過ごしていったのだった。俺が理沙と一緒にこの国の魔王であるリリと戦っているときに……理姫が理紗に、「私にも手伝わせて」と言い始めたので……一緒に理姫にも、俺の戦いを見てもらったのだ。そして……。俺達が『大魔王』リリを倒した後に……理沙とリリと理姫とで話をしていたのだが……俺達は、『聖魔帝国』に帰ることになったので……。俺とリリアナは……『聖魔帝国 大魔境 エルスフォーニ』に向かって行ったのであった。

***俺と理亜は、『勇者世界』に来ていたが……俺は『勇者の館』ではなくて……。この国にいる理沙の実家に向かう事にした。俺は……リリスやリゼル、それからリリアナ、理恵、美樹ちゃん、理紗を仲間にして……『大魔境アルサライ 暗黒竜魔大陸』で、暗黒竜王を仲間にしたのだった。それから……理彩と二人で理沙の実家に遊びに行くと……「いらっしゃいませ!リゼルさん。」と、理沙のお姉さんの『大魔道師 魔導士 佐藤理香』と妹の『魔導士 大魔道師リリアナ・リーゼント』が出迎える。それから……この家の家族である理紗と理沙の母親……そして……『勇者 田中 龍』と、結婚したばかりの……『魔導剣士 大魔道士 佐藤雅美』の3人が出迎えてくれる。

リリが……理沙のお母さんの……『勇者の妻』という職業と『大魔王の娘』の肩書きを捨てたいと泣き出してしまい……。理沙がそんなリリを見て涙を流した時、俺が突然現れて……『大魔王 魔王リゼリッタ』を倒してしまったのである。

*理紗の家族との楽しいひと時は過ぎていく……。そして……。リリが理沙や理樹達と一緒に『大魔導師 賢者 佐藤雅美』が暮らす家に居候することになり……理沙は、田中のところに嫁ぐことになったのである。そして……。田中がこの世界に召喚されて2ヶ月後……。俺は……この世界の『魔導師国家』に、転移をしてみようと思う。俺がこの世界に召喚される前は、この世界は、魔王軍の残党による襲撃を受けていて、魔族の侵略によりこの世界の多くの国々が滅んでいたようだ。そこで……。俺は、この世界で……理沙が助けたかった人たちを、助けて回ろうと思っている。俺がこの世界に来る前にいた世界で……理沙が俺と出会っていなければ……。理姫と出会う事もなく……。理香に出会うこともなく……。俺は……死んでしまっていただろう。それに……理斗くんとも……仲良くできていたかどうかもわからない……。そう思うと……。俺は、この世界のみんなのために戦うと心に決めたのだった。だが……その事を理沙に話すと、 理「私は……。もうあなたから……離れませんから。私は、あなたの側にいますからね。ずっと……私の心の中には、あなたしかいないんですから……」と……。

理沙と理紗は、俺と一緒に来たいと言ってくれた。俺達は……『大魔導師 賢者 佐藤雅美』がいる『魔導師国家 ソーディア』に向かった。そして……理姫の師匠で、リリを匿ってくれている『魔導王国 ソーディア』の『賢者・佐藤雅美』に挨拶に行ったのだが……リリの事を心配してくれていて……この世界に残ることを許してもらえなかった。リリが、 リ「師匠……ごめんなさい……。リリは、『勇者世界』の『勇者』と、お別れをしなくちゃいけなくて……。師匠と、理姫と、リーゼに……この世界のことをお任せしたいと思ってる。」と真剣な表情で言うと……。『賢者・佐藤雅美』とリリの弟子である『勇者・勇者リリカ』が……涙を流しながらリリに抱きついた。俺は、この国を出ると、俺は、『勇者の剣』の力を発動させて『勇者・田中一平』になり……そして理紗の身体を借りる形で『勇者・佐藤一平』になって理香と理樹を連れて、この世界を回る旅に出る事にしたのである。俺と理香と理樹は、理香の生まれ育った村『桜の都』に行き……理沙が暮らしていた屋敷の前までやって来た。そのあと、理姫が暮らしていそうな場所を回ったのだけども理姫は見つからず……。俺は……最後に『大魔境 エルスフォーニ』に行くことに決めたのだった。『剣王 剣聖・剣豪団団長 佐藤里奈』は、『魔剣士 勇者 田中義明』のところへ旅立っていったようだ。『聖剣聖・剣豪団団員・鈴木由美子』も、剣聖の聖地『剣神の里 ソード 聖剣神社』に行っているようだ。

*『魔剣都市アルスフォーニ』で、仲間になった……田中義明の故郷に俺たちは行く事にした。俺と、理香、リリスは、田中とリリが住んでいた家がある町『大森林の町 ソード 森の神殿』に着いた。

俺が『魔剣士・田中 魔剣士長・剣姫・魔剣使い』に話しかけると……。どうやら、俺が来ることは予想していたようで……。

「やはり、君がこの世界に来てしまっていましたか。僕はね……君のことが心配でならなかったんだ。君は、自分がどれだけ凄いか理解してないでしょう?」と魔剣士長の田中が言うと……リリスが……「あはははっ。まぁー、そうだよね。だって、君は、私よりも遥かに格上の『勇者』と互角に渡り合った上に……『魔族王』を倒したわけだし……。」と笑う。するとリリシアが、「確かにね。でも、理奈には負けてられないわよ……。私なんて……まだ理奈に勝ててないし……。」と悔しげに言ったのだ。

理香や理樹達は……リリスが魔王だということを知って……驚いている様子だったので俺は説明をしたのだった。俺は……リリのお父さんで魔王の『魔族王 魔剣神・アルスフォーニ』と話をするために……魔族領に向かったのだった。

理沙と理姫の育て親でもあるリリのお母さん……つまりはリリがこの世界に連れてきた女の子の名前は、

『剣魔帝・大魔導師・賢者 大魔王・魔王リリアナ・ダークネス』と言うらしい……。リリアナ・ダークネシヤはこの国の『魔導師』達のトップに立つ存在なのだ。そして、この世界の魔族の頂点に君臨する魔族最強の存在であるらしい……。この国は、魔王であるリリの母親リリアナの母国なので、リリのお母さんに、リリがどうしてこの世界に戻ってきたのかを話そうとしたのだが……俺がリリアナに会う前に理姫によって倒されてしまい……。そして……。

リリがリリアナを倒してしまい……。リリがこの国に来た本当の理由を話し始めたのだった。

*リリがこの国にリリアナを倒しに来た経緯を話すと……。理沙が、 理「ねぇ……。私が倒したリリアナはどこに行っちゃったの?それにさ……。リリアナのお母さんって……。」と言いかけると……理恵が「リリアナさんのお母様がリリアナちゃんのお母様なの!?」と叫ぶ。

理沙の姉であり理姫の親友である……『魔導剣士 大魔道師 佐藤 美香』と『大魔導師魔導士 リゼル・アーシャット』と、リゼルの妹でリリアナの幼馴染みで大魔道師のリリアナの妹の……『大魔道師 魔導師 リリアナ』と、妹の『大魔道師 魔導士リゼル』の4人は……。驚いたような顔をしていたが……理香だけが……少し納得がいかないような顔をしていたのであった。すると……リリが……リリの母リリアナの現状を説明する……。

「私達が倒したリリアナだけどね……。多分なんだけど……もう既に生き返ってると思うのよ……。だからね……。私のママが『魔人界 魔界』にいるはずで、そこのどこかの城に捕らえられてるはずだから……早く助けてあげた方がいいかな……」と……。

*『魔族』の国では、魔王の娘のリリが……『勇者』として召喚された男と結婚したことで……『魔族』の国にも変化が訪れている……。俺が『魔族領』のとある場所の魔王城に向かうとその途中に魔王の娘であるリリが、『魔剣神 勇者 魔導師・大魔導師 佐藤 雅美』のところで修行をしていた。

そして、俺と理姫がリリアナを倒すために『魔剣都 エルスフォーニ』にやってきたが……リリ達『剣豪団』がすでにこの国に来ていたため……俺は『大森林の町 ソード 剣聖神社』に寄ってみる。すると……理沙と、剣の師匠『勇者 剣王 剣豪団長 田中義明』がいる……。理沙は、田中の妻になっているのだが……。田中は、『魔剣神 勇者 魔剣士 田中一平』だった頃の面影が残っている感じでイケメンなのだが……なんかこう……『チャラそうな雰囲気が醸し出されてる』のが俺の印象だが……。理香と理樹達は、俺の師匠で、『勇者』で剣豪団長である『勇者・田中一平』に憧れていたみたいで……。目を輝かせて興奮気味だった……。だが、俺の剣の師匠の『田中一平』とは、別人なんだからね……。そして……。理沙は……。『大森林の町 ソード 大神殿』に行ってくると行って出かけていった……。

俺は……『魔族王 魔剣士 魔剣士 田中 剣魔帝 大魔王 剣王・大魔導師 佐藤 大魔王 魔王リリアナ・ダークインフィス』を仲間にするため……『大魔境 エルスフォーニ』にあるというダンジョンに向うことを決める。

俺は、理沙の師匠の田中が『魔剣士勇者 田中義明』だと判明してから……剣豪団の団員に、この世界の歴史を簡単に聞いたり、俺の仲間たちに、簡単なこの世界の基礎的な知識を教えたりした。すると……『魔族王 剣魔帝・賢者 勇者・大魔王・魔剣士・大魔導師 佐藤 剣聖 魔剣士勇者・勇者・剣豪団・剣豪団長・剣鬼 勇者・勇者・勇者 田中 大魔王 魔王リリアナ・ダークネス』の事を聞きたいらしく……。俺が話すことになった。

*俺は理姫や理香に、理紗に、リリスと『大森林の街・ソード 森の神殿』に向かっている途中で『森の都』で『森の女神 木の女神』に会い……俺は理姫達にこの世界が、理紗の世界と同じだと説明した……。

*俺の話をみんなが聞くと理姫も……リリアナとリリのお母さんは、同一人物であることを認める発言をしたので、リリと『勇者』の田中の出会いの話をしてあげると、リリスや『勇者』の田中以外の全員が驚き、そして喜んだようだった。

*俺が田中に、なぜ『勇者』になれたのかを尋ねたら、「僕はね……ある人物から、田中君……いや、田中に託されたんですよ。君のような存在が現れたら……『田中』と言う名前を、この世界の誰かに継いで欲しい。そして……。僕の持っている力の全てを君に託す……。この力をどう使うか決めることができるのは、きっと、君だけだと思う……。そして、僕と君の願いは一つだよ……。いつか、君と再会できる事を楽しみにしているよ。僕は、君の行く末を陰ながら見守るよ……。またね。君と出会えて良かったよ。田中 一平……。」と言うのであった。その瞬間、目の前にいたはずの、あの優しげな微笑みを浮かべているイケメンの男『田中 一平』は姿を消してしまう……。そして……俺は、意識が覚醒した。どうやら夢を見ていたらしい……。でも……今の出来事は、確かにあったことだと確信して、この世界での俺の旅の目的は、俺にこの力を託してくれた男と再開して、この世界の理沙と、同じ様に、俺と結ばれることではないのかもしれないけど……。それでも……俺の心の拠所になっていた男の思いにこたえるため、理香や理樹達のために俺は旅を続ける。

俺達は……大森林の町『魔境の森』で、剣の師匠である……元『勇者 田中義明』と出会い、そして弟子である理沙と一緒にこの世界の事について詳しく話を聞いた……。『魔王 剣魔帝・賢者・魔族最強の魔王』であるリリアナの話を……。理香達が驚いていたけど……この世界の人達には馴染みのない魔王の名前だったみたいで……。特に驚いた様子はなかったのだった。俺達の剣の師匠の『田中義明』さんの奥さんの理紗ちゃんがリリがこの世界にきた本当の理由を知りたがっていたが……。リリが答えることはなかった。そして……『魔剣』の素材になる剣の材料を探すため、『剣豪村 ソード村』へと向かい、そこに滞在することになるのだが……。その時に……俺の仲間の一人であり……この世界の住人である、『大神官』『勇者』でもある少女……『剣の精霊』が仲間になってくれた。さらに、俺の仲間の魔族『悪魔使い 大魔導士・勇者 勇者 魔王リリス・ダークナイトメア 』も剣の精霊に負けないくらいの強さを誇っていたのだけど……俺の仲間になりたかったみたいなんだけど……理姫と、理姫の親友で魔導師である『佐藤 理沙』が許してくれなかったみたいだった。そんな訳で……理沙達は、『ソード 大神殿』に向かい修行を始めるみたいだった。俺達は、その後……俺の故郷がある『森の都 ソード 魔導神殿』へと向かうことにする。しかし……『森の魔族領域』に行く前に立ち寄った街『森の都 ソード 森の神殿』の近くにある『大魔境 エルスフォーニ』に存在すると言われている『魔獣の領域』と化した山を登ることにしたのである。

俺がこの世界に戻ってきた目的は二つあり、俺の大事な人の一人でこの世界の住人で『勇者』の少女の理紗に会うためである。もう一つは……『魔剣神』と呼ばれる剣の最強種である……魔剣の武器を作るためであり、俺の目的を果たすためには、『大魔境 エルスフォー二』にいると思われる……魔王の一人娘であり……魔剣を操る魔王の娘である……『大魔剣士・魔剣士・勇者・大魔王・剣聖・魔剣士・大魔王・剣豪団長・剣鬼・勇者・剣王・大剣聖・勇者・勇者』の一人である、『魔剣聖 大魔王 魔王リリアナ・ダークインフィア』を見つけ出し……この世界を闇で覆い尽くそうと企んでいる『大魔剣士 大魔道士・賢者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者』の『魔王四天王 暗黒の魔神 ダークネス』を倒し、リリアナを救うことが今の俺の使命だったりする……。だから俺はリリ達を連れて旅に出ることを決めたのである……。俺が仲間になったのは……魔王軍の中で……一番強かった『大魔王 魔王リリアナ・ダークネス』と戦おうとしていたところを、俺に助けられてから懐かれたからなのだが……。

俺は、仲間にした『魔王の娘リリ 魔族王 魔王の娘・大魔王 剣聖・大魔導師・大魔剣士 勇者 勇者』と共に……俺の生まれ故郷である……『森の魔族の里 ソード 大森林の街 ソード・大森林の町 ソード 大魔境 ソード・魔導神殿』に向かう。俺の幼馴染みで俺を『大魔境』で救ってくれた『勇者 勇者 勇者』の理紗がいる『剣聖神社 剣豪団』の総本山の『大森林町 ソード 剣聖大神殿』に……俺が仲間になった『大魔剣士 大魔導師・勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者 勇者』である『剣鬼 剣王 勇者 勇者』の『勇者田中 剣聖田中』が理沙に、この大魔境にあると言われている伝説の宝刀の素材を探していると言っていたらしいが……。この大魔境を旅するために必要な物を手に入れるために、この世界の住人のリリ達と行動を共にしようと思っているのだ。リリ達が『森の都』の『魔窟 ダンジョン』で手に入れていたアイテムは……。大森林に住む人達には使えないようなので、この世界の住民じゃないリリ達の持っていた物の方が都合がいいと思ったのである。それにリリが俺に話してくれた『大森林の魔窟』に眠るという最強の武器……『剣の宝物庫』には俺達の世界から持ち込んだ俺の仲間だった『勇者田中』が作った数々の名剣が収められているので……。それをこの世界で使えれば最高なのだが……。まぁ……そんな感じで大森林にやってきて……俺の幼馴染みの理紗に会いたいと思いながら歩いていたのだけど……。突然……『エルフの森』に異変が起こる。

なんと、俺達の目の前に巨大な竜巻が出現し、その竜巻の中から現れた者達によってこの森は占領されてしまった。しかも、その者の中には……『剣魔帝・大魔剣の剣鬼・剣魔道師・大魔道師・剣魔道師団長・大魔術師・剣豪将軍・剣聖将軍・勇者・剣聖・剣王・大剣聖・大剣聖・剣王・剣帝・大魔剣士・大魔導師・賢者・魔導師・大賢者』の一人である『勇者 魔王リリナス・ダーティー・デビルキラー・ダークロードナイトメアーデスロードキング・魔剣士』の魔王の娘にして最強の魔王である『剣聖魔王 大魔王リリアナ』と、この世界の住人の『魔王 大神官 大魔王 勇者』であり、この世界の『魔剣神』である俺の『勇者』であり、この世界の最強の人間の一人と言われる『大神官 大魔法使い』でもある少女の『大神官理沙』と……。

俺の仲間の魔族『魔族王 大魔族王 ダークヴァンパイア 吸血鬼の王』であり、『剣鬼 大魔王 魔王四天王 暗黒の魔神ダークネブラス』の一人だったダークプリンセスである『ダーク姫』こと『ダーク姫リリアナ』と、その妹分である『ダークナイトメア 夢幻の魔導師』の『ダークメア』の二人だ……。そして……もう一人……ダークウィッチの女の子がいた。この子は……俺が倒したはずの……。この世界のもう一人の『大魔王四天王』にして、最強の大魔導師である『賢者 勇者』で俺を異世界で助けてくれた……この世界に来て……俺を助けてくれようとしている『勇者 佐藤理紗』その人である……。彼女は、なぜか俺の仲間になっていたのだった……。

俺の仲間になっているリリ、理香、サーヤ、エルドリオ、リュオネイア、理奈の六人に俺と田中さんの三人を加えた八人で……リリとサーヤの案内で『ソード 森の神殿』の近くに存在していると言う洞窟を目指して移動することにした。ちなみに……リリとサーヤとエルデニは……俺の事を名前で呼ぶように言われていたので……みんなが勇太と呼ぶのに合わせ……俺も、俺の事を勇者と呼ぶことにしたようだ。洞窟に着くまでの短い時間だったが……。この子達に質問したい事が沢山あった。まずは……。なぜこの子が俺に付き纏っているのかを聞いてみる。この子と俺の関係は、この世界でのもう一人の『大魔王四天王』の『暗黒騎士』である……ダークネスがこの世界に復活する少し前までである。その頃の俺達は……。ダークネスの復活を止めて……。『ダークネスの器 ダークナイトメア』であるダークメアを……『暗黒魔境の大魔王』であるダークネスから救うための戦いをしていた頃だった……。俺はその時のダークネスの暴走により瀕死の重傷を負い……ダークネスに取り込まれる前にこの子にダークネスから解放してもらうはずだった。

しかし……この子は、自分の身と引き換えにダークネスを解放しようとしていた……。だから、この子を救うために俺は、この子を一度殺したのだけど……。俺の命を犠牲にしても……。『闇の大魔王』として復活したばかりのダークネスの魂を完全に浄化できず、ダークネブラスの呪いで生き返らせてしまったのだ。そして……俺の命を救って貰った時に……何故か俺に付いてきていたのだ。ダークネスの呪縛は……まだ完全に消えてはいないらしく、時々意識を失いかける事があったので……今は、この世界にいる俺の仲間のリリ、理紗、ミーシャ、リュイ、アルセーラ、クロ、メイリ、ライラック、サリス、セイリュウ、ドラ、ビャクオウと一緒に行動していることが多かったのだが……。ダークネスの意識が目覚めそうになる時だけしか俺の前に姿を見せなかったのである。ダークネスと一体化していたせいで……『闇の大魔道士 大魔王の闇魔法を操る能力』と『光の賢者 勇者』と融合してしまっていたため……本来の力を取り戻すには時間がかかりそうだったので、『勇者の力を持った魔道士』みたいな存在になってしまったらしい……。でも、今みたいに強いならいいと思うんだけどね……と思ってしまったが……それは言わない方がいいかな……。ダークネスに利用されていただけで……この子には罪はないはずだもんな……。まあ……本人が言うんだから……間違いないだろうけど……。あとは……なんで、あの子がいるのか聞いてみたが……。なんか知らないらしい……。

それともう一つ、俺がリリと初めて会った時の話になって……「理沙のお兄ちゃんですか?」と聞かれた……。俺の妹なんてこの世界にはいないはずなので……なんで?と聞き返したら……リリが答えた。理紗と、もう1人の俺の幼馴染みである『剣豪団』団長の剣豪将星の一人である『勇者 大剣士』で俺の仲間である『大剣士田中 剣神』の二人がリリの里に立ち寄った際……一緒に遊んであげたことがあるらしい。その話を聞いて……この世界のもう一人の『大魔王四天王』のダークプリンス・ダーティーブラック・プリンス・ダーティーホワイト(長いからダーク王子でいいんじゃない?)の双子で俺達と同じ高校生の双子の男の子で、この世界に来た時に、リリアナに『勇者様』と呼ばれていた『ダーク王子田中』の事を思い出したのである。

どうもリリとサーヤが、この『森の都』に買い物に行ったときに……。この子もついてきて迷子になったような感じで……。たまたまリリと二人でいたこの子の所に現れたのが最初だったようである。この子はその時は一人だったのだが……それから毎日この子はリリについてくるようになっていたらしい……。そんなわけで、理紗はこの子に好かれていて懐かれているという事になる。そして……そんなこんながあって、この子は俺にも興味を持っていたようで、この前『勇者 剣鬼』である俺に戦いを挑んできたらしい。結局、この子では相手にならなかったが……俺の技に興味があり。それを習いたいとか言っていたそうだ。ちなみに……その技とは、俺が習得していた『魔闘流 剣舞闘術・奥義』の一つだと言う……。リリの話を聞いていて……それって、多分……。『剣舞 大魔剣舞・剣鬼無双剣』の事だろうと思った。俺が初めて魔剣を手に入れたとき、師匠から授けられた秘伝の奥義だ。『大魔剣』に宿っている『大魔剣』と融合した俺が、その力を開放した状態でのみ使える技である。俺は『大魔剣』が手に入ってすぐにマスターしてしまったのだけど……。その話を聞いたら、やっぱりあれは『大魔剣 ソード・デスサイス』ではなくて……。この世界のもう一人の『大魔王四天王』で最強の大魔道師にして『大魔王 魔王四天王』の一人であるダークウィッチの『大魔魔女 ダークウィッチ ダークナイトメア』である少女である『大魔導師 ダーク姫リリアナ』と、その妹分であるダークウィザードの女の子『ダークナイトメア 夢幻の魔導師ダークナイトメア ダークナイト』の二人の魔道士コンビが使っていた固有魔剣で間違いないようである。つまり、この世界にいたもう一人の『大魔王四天王』は……リリアナとこの子が使用していたようだ。

『ソード 森の神殿』の近くに存在すると言われている『エルシア帝国』の森に発生している竜巻は……『エルド王国』の方に向かっているように思えた。俺がそう話すと……。理奈が言った……。

「『大魔王 魔王四天王』のうちの一人が復活したのよ。」

やはり理沙の兄貴である『勇者 剣鬼 大魔剣使い 大魔導師 剣豪将軍 賢者』の『勇者 田中 理人』がこの世界で最強の勇者である事から考えると……もう一人の魔王の四天王の一人も……この世界でも最強に近い力を持つ者なのではないかと思い始めていた。理奈の話によると……。この世界に召喚された俺達の世界の勇者が使う聖剣と魔剣は……本来あるべき姿ではないらしい……。本来の勇者が扱う聖剣と魔剣は……魔素を吸って成長していく特性を持っているのだが……。俺が持っているこの『魔法の鎧』は成長する武器ではなくて……。魔力を吸収する特殊な金属で作られた武具だそうなのだ……。だから、『聖剣グラム』は『魔素』を吸い込んで成長したわけではなく……その魔石自体が持つエネルギーが、使用者である俺を媒体として吸収して成長していったのだと考えられると言っていた。ちなみに……リリの話では……この世界のもう一人の最強の『大魔王四天王』であり、『賢者 魔王』の称号を持つ『大魔王』でもある『魔王』と互角に渡り合ったと言う……。

俺はリリから聞かされていた……。『魔王』の称号を持つものは……。リリと同じく魔族で……。人間よりも寿命が長くて……リリのようなダークプリンセスと呼ばれる上位種の存在だったと聞いたことがあった……。この世界では……俺達が居た世界と違い、ダークネスは封印されていなかったようだ。だからこの世界に復活してもおかしくないのだが……。リリの話では……。ダークネスが復活できるほどの強力な『大魔王』の存在は確認されていないらしく……この世界に復活した『魔王』はダークプリンスが変身している可能性が高いと言う事である。

リリの推測だと……。ダークプリンスが、この世界に出現した際に使った『魔神の呪いを受けし者の1人で……魔族である大魔王の眷属』の能力を使い、自分の体を改造したのではないかという……。そして……この世界には俺の世界の人間が沢山来ているのに気が付き……ダークナイトメアをこの世界に派遣してきた可能性があるのだそうだ。

ちなみに……。この世界には『大魔王』は存在していなかった……。なぜなら……。魔王の軍団である『魔王』は……。魔王自身が魔王になる時に自分の血を使って作り出すもので……。普通の魔王は自分の配下の『魔人』の事を、部下として扱っているのだそうである。しかし、強力な力を持ちすぎたり……。あるいは……自らの魂を『闇の加護石』で強化し過ぎたものが、闇の力に取りつかれて『魔人』と化して自我を失い、他の魔物や動物達を支配しようとする事があり、そうなるともはや……それは『人間にとって害のある怪物』以外の何物でもないという事で、『魔王の眷属の討伐部隊』が編成されるのだという……。

『闇の魔人』というのは……元々は闇の力によって、その肉体と魂を強化してしまった『人間』だった者が……。何らかの原因で自我を失い……。理性を失って凶暴化した存在だというのだ。『闇の魔人』の力は……元の種族がどんな存在であったとしても、恐ろしいまでに強くなるらしく……元々、人間であった場合は特に強力になるという。この世界にもそんな化け物はいるらしく……。それが今回の『大魔人のダークプリンス』かもしれないらしい……。

理奈の説明を聞いた感じからだと……。リリが倒した魔王であるダークネスが蘇った場合よりは……こちらの方がまだ対処がしやすいのではないかと思われた。この世界に居るダークネスなら、今のままでも十分勝てるとは思うけど……リリアナと『賢者 魔王 』の称号を持っていたもう一人の『大魔王四天王』を倒した後のリリなら……。この世界で最強の勇者と言われる『大魔道師 ダーク姫リリアナ』と同等以上に戦えるのではないだろうかと思った。

俺達は、竜巻が向かってくる方向から少しずれて移動しながら、森の中を進んでいった。リリアナが、この先に大きな湖があると言って……。俺達に休憩を提案して来たので……。皆はそこで小休止をとることにした。俺と、クロと、セイリュウで周辺の偵察を行う。しばらく進んだところで、セイリュウが急に立ち止まり……何かの匂いを感じたのか?クンクンとその方向に歩いていく。俺と、リリ、そして理奈が後について行くと……湖の近くで倒れ込んでいる小さな妖精を見つけた。どうも瀕死の状態であるようで……このまま放っておいたら確実に死ぬと思うくらい弱っていた。俺がすぐに治療魔法をかけようとした時に、突然セイリュウがその妖精に噛みついた。俺は、驚いて思わず止めようとしてしまったが、すぐにセイリュウは俺の方に向きなおすと……。妖精を噛んだ場所が光っていて……その光が徐々に小さくなっていき……消えていくと……。妖精は元気を取り戻して、意識を取り戻した。俺達に気付いたようで……。俺の方に視線を向けていた……。どうも……その妖精は……この近くの集落で飼われていて、最近飼い猫とじゃれていて遊んでいたときに、足をすべらせて転び……。頭を打撲したようだった。

リリはその様子を見ていたが……。その妖精を見た途端……。顔色が変わった……。この子って……。そうか……。そういうことなのね……。リリがこの子に駆け寄り抱きしめる……。リリはこの子のことを……。リリはこの子のことを知っているようだ……。リリは涙を流して喜んでいる……。この子はリリの本当の妹らしい……。リリはずっと妹を探し続けていたそうだ……。リリは俺達のところにやって来ると、「兄様……お願いします。この子を一緒に助けてください。」と言う。リリが俺に頭を下げてまで頼み込むのだから……。俺は……。俺は、迷うことなく了承すると……。その妖精を連れて帰ることにした。

そのあとすぐに……。俺とリリは急いで町に戻ると……リリの知り合いの薬師がいる家に向かい、薬を分けてもらった。その家の人はすぐに妖精の治療にとりかかってくれて……。俺も回復魔法をかけるのを手伝うと……あっという間に回復し……。今は俺の肩で気持ちよさそうに寝息を立てている……。

理奈は、その様子を見ていて……。「やっぱり……。理奈もこの世界に飛ばされて来てたんだ……。良かったぁ……。」と嬉しそうにして……。泣きだしていた……。そして……俺の方を見て言った……。

「この世界に来た時の事を話すわ……。私が気が付いたら……私の周りに沢山の仲間がいたんだけど……。みんな私が誰だか分からないみたいで……。記憶喪失になったのかって言う人もいて……。私の方もその人たちのことを覚えていないし……どうしてここに居るのか分からなくて不安で……。とりあえず森の中に居てもしょうがないと思って移動することにしたの。森を抜ける前に仲間の一人が……森を抜けた先に大きな湖が見えるから……そこで休息しようと言う話になり……そこに向かって歩き始めたの……。そしたらその途中で……」と言いかけて……。理奈の目にはまた涙が流れた……。俺は何も言わずにギュッと抱き締めた!……。しばらくして落ち着いた頃を見計らい、俺達は理奈から事情を聞くことにした。

「私はあの『大魔人のダークプリンス』の攻撃で死んだはずなのよ……」そう言いながら思い出したように辛そうにしている理奈を見ていられなくなり……リリアナはまた優しく理奈を抱き寄せる……。理奈の話によると……。やはりこの世界には、俺たちの世界からこの世界へ飛ばされて来た者たちが集まっている事が分かったのだが……『魔王四天王』の一人であり、『暗黒姫』の称号を持っているダークプリンスの配下であるダークネスが……。この世界で暴れまわり、多くの犠牲を出しているのが分かり、この世界を救うために、リリと理奈は『大魔人のダークプリンス』の討伐を決意したのだという。しかし、その情報を集めるために二人は、まずは手近にいるこの世界の勇者の一人である田中 理人とコンタクトをとろうとして、リリアナの妹だと偽って、彼に接触をしたのだそうだ。しかし……彼は理奈の事を完全に忘れており……。『魔王』を倒す旅をしているのだから、『魔王四天王』を倒して魔王の復活を阻止する事に協力して欲しいと言われてしまったのだそうだ。その時にリリアナから、魔王復活の時期が近いことを知らされると、田中 理人はリリと共に魔王復活を阻止するための旅に出る事になったのだと説明を受けたそうだ。

それから3年以上の歳月が過ぎ……その間に、田中 理人が勇者の力と『賢者の杖』を手に入れることに成功したと聞いたとき、リリは『大魔王四天王』の一角でもある『暗黒姫』の称号を持つ『大魔王四天王』のダークプリンセスを倒した事で手に入れた魔剣である、『聖剣・グラム』を『大魔王の眷属 ダークナイトメア』との戦いで使い……一時的に『魔神化』させ、この世界のダークネスであるダークプリンスに致命傷を与える事に成功したのだという。その後、そのダークプリンスはリリの『魔神化』が解けて元に戻ろうとするのを知っていて……。リリを殺そうとして攻撃を仕掛けてきたらしいのだが……。その時、ダークプリンスに攻撃を加えていた『聖剣・グラム』が砕け散り……その時に魔族としてのリリの命を奪うはずだった魔族の力を、この世界に転移してきたときに、理奈と合体した『女神』の力を媒体として俺の魂の波動の中に取り込み……俺に力を与えたらしい……。それで俺が『魔王の力』を手に入れて、ダークプリンスを葬ったのだという。

その話をきいた時……リリと理奈の二人の心の声が俺にははっきりと聞こえてきた。

(理奈がこの世界に来れたのも……『兄様のおかげです』)とリリが言ってくれたことがすごく嬉しい……。しかし、ダークネスは……一体どうやってこの世界を訪れているのだろうか?……俺には想像できないし……。『神界通信』で神様に連絡をとろうと試みたが、連絡できなかった。俺が、リリとリリアナの三人で相談しあっていると……セイリュウが……突然『魔王城に行こう』と言い出した……。俺はセイリュウの提案を受け入れて、俺とリリアナの二人で、『エルシア帝国 帝都』に向かうことにした。『勇者神の使徒』の称号と、『魔人』の能力を得たことで、『勇者神』に認められた俺は、この世界に存在するすべての魔法を使いこなすことが出来るようになっていた。なので……俺の使う回復魔法や防御結界などの魔法を使えば……。この『魔王城』を護る魔物たちを簡単に倒す事ができるはずである。セイリュウも手伝ってくれるようなので……。俺と、リリアナ、そして……セイリュウで、『魔王城の門番』を倒しに向かった。リリアナの武器も新たに装備されていて、俺が以前、この世界で最初に来た時に戦ったミノタウロスの持っていた槍のような『大魔王の錫』が新しく加わっていた。そのおかげなのか、以前より格段にリリアナの強さが上がっていて……その辺の雑魚では相手にならず……。俺達二人だけでどんどん倒していった。『エルシア帝国 帝都』の近くに行くまでに……。俺のこの世界でも使えそうな技を習得できた事は幸いであった。リリアナの方は、『大賢者の叡智』『大魔法使い(上級魔法師レベル30)』のスキルのお陰か……。魔法を使う能力が著しく向上しているようだ。

そんな感じで俺達は……難なくとはいかなかったかもしれないが……。俺達の力でこの『大魔王城前』にたどり着いたのである。俺はリリアナと別れて一人になった時に、この辺り一帯の上空に、強力な障壁を発生させた。これで、俺達がこの城に居る間は、誰も入ってこれないはずなのだ。セイリュウとリリには俺のサポートについて貰う。俺は『勇者神の聖鎧』と……俺の師匠でもあり、今はリリが持っているが……昔、セイリュウが身につけていた『賢者の神の衣』を身に付ける……。そして……。

セイリュウは、『神界の宝物庫の鍵 鍵の守護者』と『魔神の書』を手に持つ。この二つを装備することにより……『魔神化』することが出来るようになる。そして、この二つの装備品には、俺とリリとで『共有アイテムボックス』を共有していて……『大勇者 ユージリオ』からもらったアイテムが入っている。俺達三人とも……『勇者』であり……『女神』である……。『大勇者 ユージリオ』から受け継いだ称号は『大勇者の加護』、『魔神』の持つ力は凄まじいものである……。この力が一つになって……。

今から……この世界の『真なる魔王軍との戦い』の火蓋が切って落とされる事になるだろう……。

この『大魔王城の正門』を守る『悪魔公爵の近衛隊 悪魔将軍軍団 総指揮官 魔将軍のグラマラス バアル』とその部下である悪魔の精鋭たち50体程を相手に戦うことになった。俺が……最初に使った技は……『光属性強化』と『無音』を同時に使い発動したものだ。これは、『無詠唱』で魔法を使ったのだが……。魔法を唱えた瞬間に俺の周りには『光のオーラ』が出現して包み込んだ。『魔素』を吸収せずに魔法を放つと、この『光のオーラ』が俺の全身を覆う。

この状態で魔法を唱えることによって、『魔力の無駄遣い』を防ぐ事が可能になっている。しかも、この状態の時は……。俺が唱える呪文はすべて……。その効果が数倍に増幅されているので、俺一人でこの『大魔王城の門の前』にいる『魔将軍グラマラス バアル』の部隊と戦うことができたのだ。この魔法の効力は半永久的に続くようで……。戦闘が終わるまで効果を発揮するようである。しかし……この戦闘中、俺はリリアナ達の方を一度も見ていないので分からないが……どうなっているのだろうか? リリアナの『魔神の杖』から放たれる極太ビームが……。まるでレーザー砲のように見える。その光線を、盾にして防御をする……。しかし、その攻撃をしてもリリアナと『大賢者の叡知』によって導き出された最適解により、一瞬のうちに……相手の死角に回り込み……。『魔神の杖』を振り下ろして相手を攻撃するのだ。この攻撃は相手がリリアナの『神眼鑑定』の能力に気づかなければ、回避する事ができない。そして……気づいた時にはもう遅いのである……。リリアナは、『魔神の杖』を使って、相手を瞬時に行動不能にする事が出来るようになっている。その圧倒的な強さを……発揮した。そして……俺の方はというと……『大勇者 ユリーシア の魂』を媒体とした聖剣である『グラム』の力を最大限に引き出して、『魔将軍』の一人に致命傷を与えることが出来た。そして、その攻撃の瞬間……。リリアナと『同調』が繋がった。俺は……『同調率100%』となった。

この状態になった時に……俺は……初めてこの世界に来てからの事を思い出した……。この世界に転生して……。勇者となり……リリアナと出会った時のこと……その当時のリリアナと俺のレベルが1だった頃の出来事……。そのあとは……魔王軍幹部との連戦……そして……魔王軍との最終局面……あの時は……俺は……。

この『大魔王城』に乗り込む前の最後の作戦会議で……。魔王軍は……この城の地下にある祭壇に集まっていた。魔王軍が集めていた情報から察するに、この『エルシア大陸の中央部には広大な『魔王の森』があるらしいが……そこは……実は人工的に造られたダンジョンの入り口らしい……。つまり魔王軍の狙いはこの『エルシア帝国 帝都 城』の地下にあり……。この世界の全ての生き物の力を『魔力』に変換することが出来るという伝説の秘宝である『魔神結晶』と呼ばれる鉱石を手に入れようとしているらしい。『魔神結晶』を手に入れさえすれば……この世界を支配出来ると考えたのだろう。魔王軍にそんな力などあるわけもないのだから当然であると言えるのだが……そう考えた時点で、俺たちは負けているような気がする……。そんなことを思い出していると……俺が……魔王軍を葬る前にリリアナに殺されて死んだ『勇者 ユウスケ』の記憶と知識も流れ込んでくる……。それは俺の魂の中で、溶け合い……俺の中に馴染んでいった。

俺とリリアナ……二人が合わさって出来た最強の一撃は……。俺達以外の誰にも止められる事はなかった……。『大魔王四天王』の中でも最強と言われている魔将軍の一人が……この一撃を受けて消滅した。

リリアナと俺は……。『女神化』をといた後に……二人で話し合った。リリアナの妹のリリスの話では……俺がこの世界に来れたのは……リリアナの『勇者の剣』のおかげだという……。この世界に存在する魔法をすべて使えるというこの剣を使えば……。俺はこの世界を救えるのではないかと考える……。リリアナも俺の意見に賛成してくれた。この世界には、まだ魔王がいる。この世界で生きている者達を救いたいと思う。その為には……俺のこの力が絶対に必要だと思った。俺は……リリアナに自分の思いを伝えると……。『女神の剣』と『勇者の加護』が融合した『大勇者の剣』をリリアナに渡した。リリアナも『女神の錫』をリリに譲り……。『大賢者の錫』はリリアナが持つことになった。俺は、この世界をもう一度救いたいと考えている事をリリアナに伝えた……。俺はリリアナにこの世界の『真の歴史』を聞いた。俺とセイリュウは、その話を聞いて涙が出そうになった……。俺とリリアナの二人はこの話をこの世界にいる人たちに伝えていこうと考えている。リリの話では、俺とリリアナの二人が『共有アイテムボックス』を持っているので……。リリも俺達と一緒にこの世界にやってきて……。リリがこの世界に来る前にいた『元の世界』には帰ることはできないらしい。

でもリリにとってはこの世界で俺達に巡り合う事ができて……。そしてこの世界の人達を助けることが出来れば……それ以上のことは考えてはいないと言っていた……。俺はリリアナが、そのリリの気持ちを受け入れてくれるか分からなかったので聞いてみると……。リリアナは自分の気持ちを伝えてから俺がこの世界でしたいことを手伝うと言ってくれた。リリアナにとって……『勇者の剣』を持つ者こそが……。『真なる魔王』である……。そして、その魔王を倒す為の力を持つ『真の魔王軍』こそ……。『真なる魔王』であると言うのだ……。『女神 ユーディト の使徒』として……魔王を滅ぼすのは当たり前のことだと……。俺とリリアナが『真の魔王』となる事を決心した瞬間でもある。その後俺は……セイリュウと共に『大魔宮』に戻る事にした。俺は、リリとリリアナと別れて一人になる時が来た時に……。この『エルシア大陸』の事を考える……。俺はこの世界の事を何も知らない。これから何をしていくべきかをまずは決めなければならない……。

この大陸の中心に位置している『大魔城』に『大賢者』と名乗る人物がいた。俺達は、彼に会うために、ここ『大魔城 大賢者の間』にやってきた。そこには、セイリュウと同じぐらいの長い耳をもつエルフ族の女性がいた。そして……その隣には、俺と同じくらいの身長で長い髪の毛をしている可愛くて……どこかセイリュウと似ている感じの少女が座っていた。その女性は……見た目的にはセイリュウより少し年上に見える感じだが……。その雰囲気はとても大人びて見え、神秘的な印象を感じる少女であった。

そして彼女は……。大賢者であり……。俺の師匠であるユーキさんとそっくりなのである。そしてユーキさんの生まれ変わりであるように思えるのだ。

「はじめまして、ユーナと言います。私の名前は、『神 ユリーティア』が付けてくれた名前ですけど……本当は……私の本当の名前は、別の世界では違うんです。この世界に生まれ変わった時にはこの名前になっていたんです。私は……元々は、地球の日本と言う国にいて……高校生の時に、車に引かれて死んでしまったんです。でも……神様からもらった不思議な力で生き返ったんです……。」……(へー!俺も……リリアナも同じ様なものなのか?)…… 彼女の話を聞くと、彼女には俺と同じように特殊なスキルがあり、それで『大勇者 ユリーティ』に出会って『大勇者の魂 』をもらって……。俺とは違うのだが……俺と同じようにこの世界に転生したみたいである。しかも、その時にもらった能力というのが『大魔導士』と『魔神』という二つで……。『大魔道士』は、『無詠唱』と『魔法強化』が使えるようになり、『魔神』というのは『魔力吸収無効』と『魔神魔法』という特殊スキルを使う事ができるようになるらしい……。そして『魔神魔法』の中には、『神界召喚』と呼ばれる技があって、神をその空間に呼ぶことができるらしい。この『大魔城 大魔賢者の間』にもユーノが来ていて……ユーナの言う事を聞きながら何かしている。俺とユーナは、お互いに色々と質問をしあった。俺は……俺が異世界から転生してきたことと……地球での記憶を失っていることを正直に話すことにした。その話はユーナを驚かせてしまったようだったが……。ユーナは信じてくれたようだ。

俺の『魔神』の力があれば……この世界から『魔王』を追い出すことが出来るのではないかと考える。しかし……それとは別に……俺は『神族』『龍神』の存在に興味があった……。俺は……ユーキさんの言っていた言葉を思い出す。俺達がこの世界に呼ばれた理由がなんだったのか……それは分からないが……。その『神』が関係しているのではないかということを。

そして俺は、その話の中で出てきた……セイリュウの姉である『水の女神』である『アルティーナ・シルフィード』が持っているという……。『聖剣 グラム』を手に入れる為に……。アルティナが住んでいる『シルフィード王国 王都 シルフィ城』に向かうことを決めた。『シルフィ』という名は、『聖国リゼル』の教皇の名前と同じである……。『大魔王 シルフィード』の『シルフィ』が、『聖剣 グラム』を持っているのなら……。俺はその力を借りてこの世界を救いたいと思っている……。

俺が……そんな話をすると…… ユートは、この世界の『女神 ユーディト』の使徒であり……この世界の全ての人々の為に戦いたいと願う俺の思いをわかってくれた。

俺は……ユーナから聞いた『女神 ユリーテ』の話を思い出していた……。女神の加護石には、女神の声を聞くための『女神化 』できる方法もあるという。それは……リリアナの持っているような『女神の錫』を使っても可能なことだと言っていた。

俺はこの世界に来たときに手に入れたという加護石を……『女神化』して使ってみる。リリアナには内緒にしているけど……。実は、こっそり『女神の錫』を使ってみたかったのである。俺の身体が光輝くと……髪の色が銀に変わっていき……。肌も透き通るような透明感が出てくる……。胸が大きくなっていって……手足も長く細くなっていき……。背が高くなり……髪の毛が長くなっていく……。服もドレスにかわり……。

そして、俺は目を覚ました。俺の目に入ったのはリリアナの顔であった。俺が目覚めたことを確認できたリリアナはすぐに俺に話しかける。

リリアナの話では……どうやら俺は……『真の姿』になって倒れてしまって意識がなかったらしい……。俺は、自分のステータスを確認してみると……。『女神 ユーナ 』と『女神 ユリーテ 』の加護が増えてレベルは999になっていた。俺は自分の中に流れる『真なる力』を感じていた……。

リリアナも自分のステータスを確認できるようになっているので……。俺と二人で見ることになった……。俺はリリアナがどんな風にステータスを見たのだろうかと思って気になった。

え!? 俺はリリアナの反応を見て……自分の目を疑ってしまった……。そこには俺が今まで見たことがないほど異常な数値が表示されていのだから……。その数値は……。

俺はリリアナの『ステータス鑑定』の結果を見せてもらう事にした。

俺がリリアナの『女神 錫』を使って、リリアナの『ステータス鑑定』をしてあげると……リリアナがすごく嬉しそうな顔になる……。そして俺に結果を見せるように見せてきた……。

(えーーーー!!!)俺は……その内容を見て……心の中では驚いていたが……。平静を装いながら……。『鑑定書 』をリリアナから受け取った。

『ステータス表示』

Lv

:124/∞…………

HP:36000000

MP:1550000 /150055

筋力:4527000

敏捷:255000

器用:502100

魔力:4502

耐久:286900

運:18000

魅力 :105070 特技 剣術 槍術 斧術 拳闘 盾防御 杖 火魔法 氷魔法 土魔法 風魔法 水魔法 木魔法回復系 補助系 生活魔法 特殊 鑑定 転移魔法 真なる力解放 状態異常無効化 スキルコピー 能力付与 称号一覧 勇者 大勇者 英雄 剣豪……etc ユニークスキル アイテムボックス 全知の書庫

(なんだよこれ!なんだよこの強さ!)

こんな感じだ!!! もうチート過ぎる強さなんだけど……!もうなんか……ここまで来ると怖さすら感じるんですけど!俺は思わず叫んでしまう! 俺が大声を上げたことに驚いたのか、心配した表情になりながらも……。俺の手を握るリリアナが俺をじっと見つめて問いかけてくる……。俺はリリアナを見つめるとなぜか頬を赤めてうつむいてしまう!そして……。小さな声で何かつぶやく……。そして今度は真剣なまなざしで俺をまっすぐに見ながら……

「ユートは……わたしがまもる……。ぜったいまもってみせるから……」と言ったのであった……。

俺は、自分が持っていた『女神の祝福の加護石』の効果が分かった。この加護石は……。

俺を異世界転生させた『大勇者 ユーディート』の持つ『大勇者の加護 』と俺の持つ『大賢者 ユリーティア』の加護が共鳴反応を起こして……。この世界で得たすべての加護が統合したみたいだ。俺には『聖女 ユーキ・アイシア・デステルニア 』『大勇者 ユディティ・アイズアーシャ・セレンディピティ・アメリゴ』の称号があるのだ。……そして……。この世界で新たに獲得した『女神 ユナ・シルフィード 』の『女神の祝福の加護』の『真の力』を俺の中に流し込んでくれたらしい。そしてこの加護の効果なのか?

『真なる世界の神域』と言う場所に行けるようになっていたのだ……。

ユーナは、『女神 ユナ・シルフィード 』の『真の力を開放させる鍵』となるらしい……。そして俺は、リリアナが作ってくれたおにぎりを食べた後、ユートを連れて『シルフィ城』に向かう事にした。

俺達はユートに、『聖国リゼル』の教皇である『アルティーナ・シルフィード』に会うために会いに行こうとしている事を話し……。ユートにも協力してほしいと話した。するとユートは俺に質問してきた。ユートもアルティーナ様には会ってみたいということなので……アルティーナ様のいるシルフィ城に連れて行ってくれる事になったのである。…… 俺とユートは『シルフィ城』に向かって歩いている……。しばらくすると……『シルフィ城』が見えてきて……門番の兵士に声をかけられた。

すると、俺が持っている身分証明書を確認することもなく城の中に入っていいという許可が出る。そして、すぐに俺達はアルティーナ様がいる謁見の間に向かうことになった。そして謁見の間に入る扉の前で、俺達のことを聞いた兵士がやって来て、アルティーナ様のところへ案内してくれた。そして俺とユートの二人は、『真の姿 』になって……。俺は……俺の『神族 神龍神 』の姿を見せることになった。ユートは……ユーキさんの加護石を持っていたからか……。

『女神 ユーキ 』の姿をしてユーキさんと一緒に歩いてきた。俺がユーキさんの言っていた……女神の『真なる姿』だと話すと、とても興味津々の様子だった。俺は、アルティーナに挨拶した後で、リリアナを紹介したのだが……。リリアナが……「私は、『聖騎士国』の聖騎士国騎士団長 リリアンヌ・シルフィードです」と言い……。リリアンナが、アルティーナに対して、自分の娘であり……俺の妻であることを説明する。それを聞くなり、リリアンヌの顔をまじまじと眺めていたのが印象的だった。

俺は、リリアンナからリリの加護について説明してもらった。すると、リリも……ユーディトとユーキーの娘だということを話すと、リリに、「貴方のお母さまのユーディトお姉ちゃんを知っているわ!」と言って抱き着いていたのだ……。そして……。

『女神ユーディト』の話を聞きたいと懇願されてしまい、結局話さなくてはならなくなったが……。とりあえず話は後回しで……ユート達の紹介をする事になった。俺達が、それぞれ自己紹介をした後に、まず俺達が『神の世界』の事を話そうと思っていたら、突然リリアナが、ユートに「お父さん……お母さんを呼んできて!!」と叫びだす。リリアナがユーマとリリスの二人と離れたくない気持ちがわかるので、俺もユーキさんとユミィとユウキの三人だけにしてあげようと思い……。俺の空間移動で、ユミーリアの所に転移させてあげた。

リリィも俺の側にいた方が良かったと思うかもしれないけど。リリアナも寂しいだろうと思って三人だけを残して、俺はこの場に残ることにしたのだ……。ユーコとヒオナさんには念話で連絡を入れていた……。

ユート達はリリカの部屋に移動することになるが……リリの様子が気になると言っていたので一緒に転移することになった……。

ユーマ、ユミイ、ユウキは、ユーリに連れられ、ユミーリアの部屋に集まっていた……。そこに突然……三人が現れたのだ。その光景を見たユイとユーラとユーラは固まってしまった……。なぜなら……。リリとそっくりの顔立ちをしている3人の娘がいたからである。

「みんな久しぶり〜!!会いたかったよーーー!!私ね〜……。『女神 リリアーナ』になったんだ!!これでずーっと家族一緒だね♪よろしくお願いします。ユーナだよー!! リリの本当の名前だけど……もうリリアナじゃないんだよねー!! ユーナになったの!!でもこれからは、リリは『リリアナ』って呼ばれる事になると思うの……。リリはもうリリアナじゃなくなっちゃったけど、私の大切な家族なんだから……。私が守ってあげるんだよ!! えへへ……。だから安心して欲しいんだよ……。あ!リリはリリイになってるけど、私の子供だから!大事な家族だから!そこは間違えないでほしいんだよ!!だから、もうリリが辛い目に合うような事は、もう絶対に起こらないんだよ!だから、心配しなくても大丈夫だから!! それで……今、リリはどこにいるんだよ?」と、リリアナが言うと、 リリィは……リリを抱っこしたまま、ユメの胸に抱き寄せて涙を拭っている最中で……リリイも泣いてしまっている様子だったので、その状態のままにしておく事に決めたようだ……。

ユーナがそんなリリアナの言葉を補足するように……今のリリの状態の説明を始めた。「ユートは、まだ知らないから説明していなかったけれど……実はユートは……この世界を創った女神の……その……。………………。……………………。その……。つまり……。その………………。ユートの子供を産む為に『世界融合』の加護を発動させたんだけど……。その時にユートとの子供を授かったわけなの……。それで『大賢者』として生まれ変わった後に……。ユートとの間にできた子供が女の子だったんだけど……。その子は『女神 ユーミア』に生まれ変わってしまったみたい……」と恥ずかしそうに伝えてきた。

それを聞いていた、ユージ、ユータが驚いた顔を見せる。……まぁ……普通はそうなるか……。「あのさー。それってさ……『女神様 ユミア』ってことなんだろ?すごいじゃん!すげーな!お前。もう……さすが俺の息子だな。さっき聞いた時は、もうちょっと驚かせてくれって思ってたけど……やっぱ驚くな!それにしてもさ……。俺さ……。なんかさ……なんかさ……。『ユーヤ』と、ユーミに似てるような気がするんだよ。だってさ……ユーヤの『真なる力解放』の時にさ……、なんか見たことがあるな……っていうか……。ユーミの時も同じようなことを感じたなーとか思っていたんだが……。やっぱりそうだ! ユート……お前は、本当に俺とユミナの子だ!俺がこの目で見て感じた事が間違っていなければ、それは間違いないことなのだよ!そして……お前が生まれた時も感じたことは本当だ!お前は、俺とユミの血を引き継いだ子なのだから!この子が将来……どんな姿になるのか楽しみだ!」と興奮気味の声で俺のことを抱きしめてくるユーキ……。

ユリーシアも「そうです……。ユーヤ君もユーキと同じことを言っていたんですよ。そして『この子は間違いなくユーキ兄様の血を引く息子だ』とも……。そして……ユメの『加護 』をユート君は受け継いでいるのです……。ユートは、『大勇者 ユーキ』の血を引き継いでいます。この子の力はきっと凄いはずです……」と笑顔を見せてくれたのだ。

俺はユナにも報告したくて……ユーナとユナを呼び出す事にした……。

俺は、ユナとユナの胸の中に抱かれながら眠っていたリリに【慈愛の癒し】をかけてあげて……起きてもらうように頼んでみる……。すると……すぐに反応があり、ユナがリリを抱えて起こしてくれたのだ。

俺はユーナにリリのことを任せた後で、リリィ達に声をかけ、皆と一緒に謁見の間に向かうことにしたのである。

俺は、ユーキにユーミの話を聞いている……。ユーミが、俺の加護を持っている事を聞いたからだが……。ユーキは、

「ユート……ユーミンが俺とユミカの子なのは確かだし……。俺の加護を持っていることは俺も気付いていたのだが……。ユーミが……ユートの力になれたら良いなって言ってくれていてさ……。そして……『ユーヤ』の事も……。そして……『ユーナ』は……おそらく……『ユーキ』の子なんだと思うが……。ユーミの加護を持つ者だった。

そして……俺達の加護を色濃く引き継いだユーヤ。……ユート。

『大勇者』の血筋は……。どう考えても『大魔王』を倒すための存在。そして……。その役目は……『魔族 皇帝』を倒して、世界に平和を取り戻すことだと考えているのだが……。……どうだろうか……。」と聞いてきたのだ。俺は……ユーキの考えを肯定して、「俺も同じことを考えている……。ただ……俺が、『女神 リリアーナ』に会えるようになるまでは、ユーキが、『大賢者 』として俺と一緒に行動してくれると助かる。」と言うと……。「わかった。俺にできることなら、何でも言って欲しい。」と真剣な表情で言う。

俺は「ありがとう……。頼りにしているよ」と言って、頭をポンッと叩いてあげてから……。

ユーコに念話で、今の状況とユーマ、ユミイ、ユウキが到着したことと……。俺達が今から謁見の間に行くと伝えてもらったのだ。

それから俺達は……リリを連れて……。ユーナとユリーシアとユーキとユミィがリリィとユーコとユーララを迎えに行ってくれることになった。

そして……。『女神の祝福』を受けて、アルティーナに挨拶してから……玉座の間でアルティーナと共に待っていてくれと言われて……。そこでしばらく待っていると……。リリスとリリアナとリリィの三人が入ってきた。その後に続いてアルティーナ、リリィ、リリアナの三人と……。アルティーナの隣には、アルティーナと同じくらいの背丈の女性が一緒に入ってくる……。俺がその女性の顔を見ると……。「あれ!?母さん?」……思わず叫んでしまう。

アルティーナも「勇人!!貴方……。貴方が、あの人の加護を受け継いだのね!!なんて嬉しいことでしょう。それに……『大賢神』の加護まで持っているなんて!!もう貴方が……私達の子孫だと証明されているも同然よ。ああ……良かったわね。私の愛する人と結ばれてくれて……。私も嬉しいのよ。私は、『精霊使い 女王 精霊王 リリリアナ』になったの……。この国の女王を引退させてもらうわ……。だから、この国の事はよろしく頼むわよ。あ……あとね……。この娘は……。私の姪になるの……。私は、『大聖女 聖母の女神 リリティアーネ』に……。この娘のお祖母ちゃんは、その前に、ユーマのお祖父ちゃんと結婚して……。そのまた前には……。」

と言いかけたところで……

「あーーー!!リリね〜!!リリアナの可愛い妹のリリだね!!えー!!リリ!!いつ来たの?もう〜!!早く来て欲しかったの〜!!そしたら一緒に暮らせたんだよ〜!!」と抱きついた。

リリアナは「リリ?……リリアナの姪なの?」と首を傾げると……

「うん!!リリアナの妹なんだよ!!あ!!リリアナには、本当のこと言わないといけなかったよね。ごめんね……。でもでも……。私も会いたかったんだから仕方ないんだよ!リリと遊べない間に……もう100歳を越えちゃったんだよ!もう!こんなことリリアナが知ったら怒るよね。でもね……。どうしても会いたかったんだよ……」と悲しそうな顔をする。すると、隣にいた少女が、「えへへ……。あのね!あの時は嬉しくて、泣いちゃったの!リリアナ姉さまはずっと私を育ててくれたから……。でも、今は……この世界は私に任せていいからって……そう言ったの。それに私はまだ子供だから……まだこの世界を全部把握していないんだよ。でも、これから少しずつ理解できるように頑張るから。リリアナ姉の力になれるくらいになるからって……。それで……今日ここにやって来たの!だから、いっぱい遊べるの!!やったー!!リリアナ姉さーん!大好きだよーーー!!!」と叫ぶと……。リリアンヌにギュっと抱きしめられて……。そのまま、二人でグルングルンと回り始める。

俺や、ユージ達がいるのも忘れているような状態なのだ……。「こほん……。あらあら……。仲が良いのはいい事だけど……。そろそろ……こちらを向いてもらえるかしら……。まずは、お互いに自己紹介をしてもらうと良いかもしれません。それでいいですか?ユーノ様」と、少し呆れたように微笑みながら言うアルティーナ。ユーキやユミーヤ、ユミィが笑いながらユーラとユーナを見ていたので……「そうだな。そうしてくれ」と俺はお願いしたのであった。そして、二人はようやく止まってお互いを見た。すると……。二人とも……なぜか頬を赤くしている。……いったいどうしたというのだろうか……と不思議に思っていると……二人が顔を見合わせながら恥ずかしそうにしている。

そして……「リリアナと申します。宜しくお願いします」

と丁寧にお辞儀をしたのだ。

それに対して……「はい!リリカです!『リリィ姫巫女 聖母の聖騎士』なの!!宜しくなのー!」

「私は、この『大魔王 魔王神 アルティーナ』の『勇者の娘 女神リリス』です。宜しく御願い致します」

と言って再びお互いに握手をして……。

「「あーーー!!!!思い出しましたーーー!!勇者の加護を受けた方ですね!おめでとうございます!!リリが、リリアナでよかったのですよ。私が、お祖母ちゃんの勇者で良かったのです。これで安心して旅立てるのです。ありがとう。勇者殿。この世界を救ってくれて……有難うございます」

と言ったのだ。

俺は驚いたが……。「いや……。そんなことはないよ。この世界の平和は君達が守ってくれていたんだから……。俺だけの力ではなかったんだ。俺は、この世界に呼ばれただけの人間だった。」と言う。しかし、それを聞いていたユーキが「いや……。勇人は凄い奴なんだよ。『魔王 魔王神 リリス』の加護まで持って、リリと同じスキルを持っているのだから……。ユートの加護はきっと……凄く役に立つと思うよ」と笑顔を見せる。ユミも、「えぇ。そうです。お兄様。リリの加護も凄いのよ。それに……ユーヤさんの加護もあるのでしょう?」

と優しく言ってくる。

俺は「うん。そうだけど……。ユーキが、色々と教えてくれるなら……。頼らせて貰おうかな……。あとはユーコもいるしね……。俺一人では何も出来ないだろうから……。リリアナとリリリアもユーヤの『勇者神の加護』を持っていればいいんだけど……。ユーミは、『魔神化』しても俺の加護を持っていたみたいだし……。ユーヤの力は受け継いでいるんじゃないかな?」と言うと……。「うん。そうかも……。ユートは、自分の力がわかっているみたいだね。それにユートの考えている事もわかる気がしてきた。まぁ俺の方が強いけどね。」

とユーキが胸を張ると……

「ふふん!リリアナとリリリアが負けるはずないのです!勇者の力を持った人など恐るに足りないのです」

と言う。

するとユーナが「勇者の力だけじゃなくって……。お母様の力も引き継いでいるわよね……。それなのに勇者より強くなったんじゃ……ユートの力は、一体何なんだって事になるのではないでしょうか?」と言う。

俺は、「えっ!?そうなの?俺が受け継いだ『大魔王』の力が弱いのかと思っていたが……。どうなっているんだろう?」というとユーナは苦笑しながら、「ユーヤも、そのせいか、かなり苦労していたようよ……。その力を使うときは……心の準備が必要なんだって。でも……『魔王』を倒したときに……『魔王の加護』と融合して使えるようになったみたいなのよ……。だから今はもう大丈夫だって言ってたわよ……。それから、加護の強さも関係あるわね。あと……私達のような加護の継承ではなくて、その人から貰ったものは受け継がないらしいのよ。それと、『大賢者 』と融合したからと言って……全ての叡智を得たわけでもないと言っていたわね……」と言ってきた。なるほど……そうだったのか……確かにリリの能力は使えなかったもんな……と考えていると……。「そうそう!!ユーミから伝言を頼まれてたんだった!『ユーヤ!!私の力を半分分けてあげるから……。その力で……リリを守って欲しい。私の命に代えても絶対に守る。約束する!!』と。それで……ユートは加護の使い方を覚えたんでしょう?今なら使えると思うから、使ってみたらいいんじゃない?」と言われたので……「え!?マジ!?……『大魔王』の力を試せる!?……あ……ちょっと、待って!まだ心の用意が出来てないよ……」と動揺する。

するとリリアナが「『大聖女』の力は使えないと思いますが……。私の加護とリリの加護を融合した能力なら……。おそらく、使えるのでは……。それに……リリには『リリの加護者 』がついています。加護を与えた本人なので、すぐに使えるようになると思いますよ。」

と言うと、隣にいたリリリアナが「そうなの!?やったーーー!嬉しいなー!!」とはしゃぎ始めた。そして、「ユーマは、お祖父さんに似ているの!!リリにそっくりだね。でも、目元は違うよ!あ!!髪の色も同じ!!あはは!でも、性格は似ている感じなのー!でもでも!ユーマの方が優しいね。ユーマの優しさを受け継いだの!!良かったね!!」と言ってくれたので……「あはは!リリとリリアナの孫なんだから……当然だよ。それに……。リリもリリアナとリリアナのお姉さん達にとても愛されているのがよく分かるよ」と言うと、リリリアナはとても照れていたのであった。……ユージが、突然現れた謎の少女リリリに困惑しているようだが……。「ところで……ユート達はどこに行ってたんだ?急にいなくなったから……みんな心配したんだぞ」と言われる。そして……。俺は今までの経緯を説明したのである。

そして、リリアナから……『勇者神 リリアナ』と『大魔王 リリアナ』の事を聞かされて……「えーーー!!リリアナちゃんの本当の名前って『リリアナ姫巫女 聖母の聖騎士』じゃなかったのー!!でも……リリアナが……この世界で一番偉かったなんて知らなかったよ……。私、全然わからなかったから……。ごめんなさい。それに……『勇者』の事も良くわからないの……。私に加護を与えてくれた人は、『勇者』だったのに……何も教えてくれなくて……。あ!ごめんね!ユーヤとユーナちゃんが頑張っている時に、私がサボっていた訳じゃないの。私は、『女神リリス』の力を引き継いでいたし、この世界にはまだ『魔人』がいるって思っていたの……。それに、まだ小さい子供達を守らないと……。」と涙ぐむリリアナにユーキが抱きついた。「大丈夫。大丈夫。俺達が付いている。だから泣かないで。俺が守ってやるよ」

と、ユーナとリリアナを見ながら言うと…… ユーナも続けて、「うん!私も頑張るよ!」とリリの手を握って言った。「はい。有難うございます。リリもお手伝いします」

とリリは微笑みながら言っていたが……少し寂しそうな顔になったのだ。……何か気になる事があるようなので……

「どうかしましたか?」

と尋ねると……。「あ……。いや……。なんでもありません……。あの……勇者が『リリの加護持ち』だと言われましたが……。もし、その人が『魔王の加護』を持っていれば……大変な事になるのではないですか?

『勇者の加護』と『魔王の加護』は同じものだと思われています。『勇者の加護』を持つものが、『魔王の加護』を奪える事を知っている人も殆どいないでしょうし……。知っている人で……この世界を救いたいと思っている人は少ないかもしれません。それに……私がこの世界の勇者様をこの世界に呼び戻そうとしなければ……その勇者様は、この世界に戻ってくることはありませんでした……。勇者様は、この世界の事をどう思っているのでしょうか?」と言う。俺は正直に伝える。「リリは……リリは勇者の使命を知っていたのかい?」

と聞くと…… リリアナは黙ってうなずく。

俺は「そうか……。リリアナ。君は勇者について色々と調べて……考えてくれてたんだね。有難う。でもね。リリアナの考えていることが正しいかもしれないけど……この世界を本当に守りたいと思ったなら……俺達に協力して欲しいんだ。君の気持ちもわかるが……。リリが、今考えていることと同じ事を俺は考えていたんだよ。リリがこの世界に来ていなかったら……。俺はどうなってたと思う?」

と言うと……「あ!!それはダメです!私の加護の力では……」と止めるが……「大丈夫!そんなに長くないと思うんだ!それに……。君の力じゃなくって君の心が強いんだよ!だから大丈夫だ。君とリリがいてくれるから……。きっと俺は、なんとか出来ると信じてる。」と言うと、リリは泣き出したのだ。ユーミが抱きしめて、「ほーんと!あなたって人は……。いつも一人で抱え込んで!!困ったお兄様なんだから……」と言いつつ……リリの頭を撫でるのだった。俺とユイは……『勇者召喚の儀式』が行われる祭壇がある神殿に向かった。ユーキとユミも同行することになったのだが……。ユーキは「ユート。これから何が起こるかわからないからね。僕とユミを連れて行った方がいいよ。僕は、『大賢者 』だし、回復役も出来るからさ。」と言うので……「うん。そうだったね。それならお願いしようかな……。俺が持っている武器の中で……ユミが使えるものを出してくれないかな?」

と言うと…… ユーミが、空間収納の腕輪をだして、俺に渡してくれたので、中を見て驚いたのである。そこには、俺の知らない武器が多数入っているのだ……。

ユート達は、リリアナとユーヤの動画を見た後に……『大神官』が住んでいる屋敷に向かう事にしたのである。リリリアナが『リリリアナの加護者』の力を試してみたいとユーヤとユーヤの仲間に伝えたからである。ユーヤは「それなら一緒に行くよ!」と言ったので、仲間全員で向かう事になったのである。リリアナは、「リリアナ達だけで大丈夫なのに……。ユートは心配性なのです」と言っていた。そして、しばらくすると大きな城のような建物の前にたどり着く。そこでユーヤが門番に話しかける。「すみませ~ん。『リリの加護者』が、『大神官』に会いたいとやって来たのです。通していただけますでしょうか?」というと、「え!?……あっ!はい!確認させていただきまーす!!」と言って門の横に設置されている機械をいじり始めた。すると……。「はい。問題ないようですね。では、ご案内しまーす!!」

と言って、城の方にユート達を誘導していくのであった。

ユートは、ユーミと一緒に、ユーミを先頭に歩き始めた。そして、しばらく歩くと……豪華な扉が見えてくる。ユーヤがその前で立ち止まる。そして……。「『大賢者』ユーキと『妖術師』のユーマが会いに来たよ。」

と言ったのである。「入れ!今すぐ会おう!」と、声が聞こえてきて、部屋の中から二人の男が出てきたのであった。

一人の男が……「ユージ様が言っていたことは本当なのだな……。」

と言う。

もう一人の若い男の方は……「あ!あの……この方々は、貴方達が話している内容を知らないのですよね?」

と、ユーヤの方を見る。ユーヤはうなずいて、「あぁ!そうですよ!この人達は何も知りませんよ。でも……リリアナが『リリリアナの加護持ち』でしたよ。ユーヤがこの世界に戻ってきました。でも……。もう1人……。ユートっていう少年がいましたが……。」

という。若い男は……ユーヤの話を聞き終わると、ユーナの方に向かって歩いてくる。ユーナの手を握り……目をつぶると……しばらくしてユーナの頭に手を当てて、呪文を唱える……。すると……ユーナは突然倒れたので、ユーキが支えてくれた。ユーナはすぐに意識を取り戻したので、「大丈夫かい?」とユーキに声を掛けられたが……。「はい。大丈夫です。ちょっと目眩がしただけなんです。それより……『大賢者ユーキ』様……なんですよね?」とユートの姿を見て……ユーキに聞いてきたのであった。ユージは、「あ!そっか。説明を忘れていたね……。この人は『勇者神 リリシアナ』様だよ。この世界に戻ってくるときに……女神の力が目覚めちゃったんだ。だから……この世界に戻ってくることができたんだよ。でも……リリアナも……ユーコも『聖国リゼル』の事は知っていますからね。」

と言うと……。ユートは驚いていたが……。「リリアナ!!あ!いや……。『リリ』か!!どうして!!?」

と言うと……「うん。ユーちゃん。落ち着いてください。私が説明するから……」と言うと……。ユート達の方を向く。そして……語り出すのだった。「まずは、『勇者神リリリアナ・ル・セフィード』の説明をするね。ユーヤが『魔王』になって、ユーちゃんが『女神』になってしまった時に、『勇者神』が降臨したのはユーくんが『勇者』だったからです。そして……。女神となった時に……。ユーヤさんが私にユーくんをこの世界に呼んで欲しいってお願いしてきたから、ユーちゃんを呼び戻して、ユーちゃんが戻ってくるまで、勇者をこの世界に残していました。それで、戻ってきたユーくんには私がこの世界でユートとして生きるようにお願いをして……勇者としての役目を終えてもらいたかったのです。だけど……。」と話を途中で止めてユーミを見る。

ユーミは、何かを感じ取ったようで……。「あ!!あの時の女神様!!あの時はお世話になりました!」と丁寧にお辞儀をしていた。ユートはそのユーミの行動にびっくりしていたのである。

そして……

「ユーちゃん……。この話は後でゆっくりしましょう……。それよりも……今は『勇者召喚の儀式』を止めなければ……。この世界を救う為にも……。勇者がこの世界に召喚されないようにしておかないと……。」と言うので、俺とユーヤも納得したのだ。そして、ユートは「わかった!!すぐに行こう!」と言いつつ、リリアナとリリアを連れて『大神官』がいる場所へと向かうのだった。

「な……なにを……な……なにをしているのじゃ……。これはどういうことなのじゃ?」

ユートは……この『儀式の間』に来て愕然としていたのだ。ユーミも一緒について来ていたが……。俺達と一緒に来る必要がなかったのではないか?と言うくらい、この場の状況は凄惨なものだったからだ。そして……リリアナは……ユーミを見て「こっちです……」と言って、『儀式の間』を出て行ったので、俺達もそれに続いていくのだった。リリリアナは…… ユーミを連れて来た部屋にリリリアナは入って行く。その部屋は……壁一面に魔方陣のようなものがあり……。祭壇がある。祭壇の奥の壁には、巨大な絵のような物が描かれており……。祭壇から伸びている光の柱の中にいるのが……おそらくリリリアナだと思われるのだが……。顔までは見えなかったのである。その周りにいる4人の男のうちの一人は……間違いなく大神官であるとリリアナと大神官との会話を聞いて確信したのだ。リリアナに話しかけようとしたら……。俺とリリアナの間に黒い霧が現れた。俺はその瞬間……反射的に『聖炎剣』を出して、切り払う。ユーキは『聖なる波動砲』で黒い霧を吹き飛ばす。

そして……。

俺はリリに話しかけたのだ。

「なにが起こっているかわからないけど……大丈夫かい?」

と言うと……リリリアナから答えがあった。

「はい。ありがとうございます。私は大丈夫ですが……。」

と言いかけた所でまたも、白い霧が現れるので……

「リリは、ここにいろ!ユーミとユーキと一緒に後ろに下がってて!」と言うと……

「はいっ!」と素直に従うリリだった。そして……リリリアナにユーミを任せて前に出たのである。すると…… ユーヤも俺の隣に来ると……「リザ!ここは任せたよ!!」と言ってユージの所に行くのであった。そして……。俺は……。リリが持っていたはずの…… 刀を手にすると……。いつのまにか手に握っていたので……鞘から抜いてみたのだが……刃が欠けていてボロい刀だった……。しかし、不思議なことに柄は新品同様であり……刃の状態さえ気にしなければ、立派な刀に思えたのだった。ユーヤとユイも……「それなら安心して戦えるよ」と笑顔で言う。そして……。

リリはユーミの後ろに移動すると、「ご主人様!頑張ってください!応援しています」

と、言う声が聞こえてきたので、「あぁ!頑張るよ!でも、無理しない程度に……」

と言って前にでると、ユーマとユージの二人と戦う事になってしまった。二人の武器は見たことがないが……魔法を使うのだろう。特にユージからは、強大な力を感じる。『聖剣使いのスキルを持っているから』だとは思うが……。リリスの言葉を思い出していた。

(あの二人は……。『勇者』ではなく……。『女神』と魔王の力を使って戦う事になるでしょう……。なので……全力を出すようにしてください……。そうすればきっと勝てるはずですよ。ユート……。信じています……。)と言っていた言葉が頭によぎる……。

「ユーヤ。お前達は強いのはわかっているが……今回は手を抜くわけにはいかない。悪いが……。死んでくれ!!」

と、言い放つユーヤに……

「ふっ!何を言っている!お前が俺たちを殺すのではなく……。ユート!リリを助ける為に協力しろと言っているんだよ。リリが助けてくれると約束してくれたからね……。」とユージは笑みを浮かべて言ってくる。しかし……

「断る!俺はユーヤとユージの敵だからな……。俺もリリを必ず救う。そして……。俺達が生きている間に平和な世の中を作るんだ!ユーヤ!ユーヤが『魔王軍』との戦いで命を落とした時に……俺は後悔しているからな!今度こそは!もう迷わないぞ!それに……。リリが言ってくれたんだよ!この世界のみんなを救う為に協力しろと!ユーヤ!お前は……。ユーマはリリとリゼルが愛した『勇者』なのか!?それとも……『魔王』なのか?」

と聞くと……。

ユーヤが笑い出して、「ハハハ……。ユーヤ!リリとリゼルを愛しているかって聞いてくるんだな……。でも……リリはもう死んでいる……。リリはユーヤの事が好きだったからね……。でも……もう……。そんな気持ちはないよ……。」

と悲しげにユーヤは答えるのであった。ユートはそれを聞き終わると……無言になり……「もういい……。ユーヤ……。殺すのは気が引けるが……。」と言うと……。

リゼリアも、ユーヤが持っている『魔王の杖』から声を出し始めたのだった。そして……

「ユーちゃん……。お願い……。この世界を救ってあげて……。お願いです……。この世界に幸せになってほしいんです。お願いします……。」と言うと……。

俺はユーヤの顔をみて「あぁ!まかせろ!リリの分まで生きると誓おう……。さあ……いくぞ!リゼリア!」とユーヤに宣言する。

ユーヤは、ニヤッとして、「フッ……。あの頃とは違うってことだな……。よし!!かかってこい!!!!」と叫んだのである。そして……。戦いが始まる。俺はユーヤの動きを見ながらユーヤの攻撃を避ける。ユーヤが俺の顔を見るので、

「なんだ?俺を舐めているのか?」

と言うと……。ユーヤも「お前の強さを侮ってはいないつもりだが……な!」と言うので……「それは良かった。じゃあいくぞ!」と言って『勇者の指輪』から『女神の盾』を召喚して……左手に装備して、剣で攻撃を仕掛けたのだ。ユーヤも同じように、右手に持っていた剣で攻撃を受け流すが……そのまま鍔迫り合いに入る。俺は……『勇者の剣』を収納して、『勇者の神装鎧』を装備したのだった。

「なにぃ!!ユーヤ!!俺よりレベルが下じゃないのか!」と驚きつつ、鍔迫り合いを続けると……ユージから、魔法弾や魔力光線などが俺に向かって放たれるが……俺は……「リリア!」

と叫ぶと、

「はいっ!」と言って『聖なる盾』を出して俺を守る。すると……リリアの声が……

「お待たせしました!!ユーちゃん!私がお守りいたし……あれ?えぇっと……。」と何かを言いかけたところでユーキが「リリちゃん!話は後でゆっくりとしましょう!!とりあえず今はこっちに集中して!!あと……その『聖炎盾』は私がお預かりします!」と言って俺の手を握っている『聖なる炎の聖盾』を取ってしまったのだ。すると……。リリアは「はい!ありがとうございます!私はいつでもここにいますから、落ち着いた時に話をしましょう」とだけ言い残して気配が消えていったのである。俺は「あぁ!頼むな!リリのこと……。そしてユージを倒すことを優先で!」とだけ言うと、再びユーヤとの剣での勝負に戻るのだった。

そして…… ユーキは、『大神官』と対峙したのだったが、その時に大神官に異変が起きる……。大神官は突然頭を押さえて苦しみだし……、ユーキに襲いかかる。大神官が振り下ろす短剣を避けながら、魔法銃の連射で反撃すると……魔法は当たるものの、致命傷にはならなかった。そして……。

ユートは、ユーマに苦戦していたが、なんとか攻撃を回避しつつ……反撃の機会を狙っていたが……隙がなかったのだ。ユートとユーヤはお互いの死角を補うように立ち回り、相手の攻撃を避けて回避に徹していた。

ユート「どうなっている?ユージは確かに弱いはず……。なんでこうなるんだ?それに……あの大神官が苦しむなんて……。」と言いつつも、ユートはユーマの蹴りをかわしていた。

すると……ユーヤが、俺に話しかけてくる。

ユーヤ「これはどういうことだろうね。まさか……大賢者さんの仕業とか?」

ユートはユーヤの言葉に、「それは無いんじゃないか?大賢王になったとしても…… 俺の実力はそこまで大きく上がっていないはずだからな……。それに大神官だって……」と言いかけると……。ユーマの蹴りを剣で受け流し、その衝撃を利用して後方へと移動していた。その行動でユーマに余裕が生まれてしまった。ユーマは「ふぅ~。ユーヤ君に気を取られたね?」と言うと……。ユーマはユーヤの方を向いてニヤリとする。ユーキはすかさず、魔法弾を放つが……ユーマはユーマの後ろに回って避けていた。

ユーキは、「ユーヤくん!」と言って後ろを向きながら魔法を連発するが…… ユーマは…… ユーヤの背後に現れるとユーヤを攻撃する。しかし、その一撃は空を切るのであった。そして、次の瞬間……ユートの攻撃を受けて吹き飛ばされるユーヤ。

「ぐはっ……。やるな……。しかし……。」

ユーヤの言葉が言い終わらないうちに……今度は逆にユーヤが俺に攻撃を仕掛けるが……俺はそれを受け止めた。ユーヤは俺を蹴って後方に下がると、「やはりお前が強いみたいだね。」と言うので……俺は、「そうだよ。でも……。お前達二人は……。なぜこんなに強くなったんだ?」と質問したのだった。

ユージは、「フッ……。ユーヤ君の能力も俺と同じだったってことだよ。」と言ったのである。

俺は「同じだったってことは……。」

と聞くと……ユーコが答えてくれたのだった。「それは……。私の力で、あなた達のスキルのレベルを最大まで上げたんですよ。だから……ユーヤの力は私と同格ですからね。そして私は……あなた達の事を思ってあげた事ですよ!この世界の為に……強くなってほしいから……この世界に召喚して、レベルアップしたのよ。でも……。それが……。」と言葉を止めるユーコ。そして……。リゼリアの声がする。

「ふふふ……。そういうことだったんですね……。そう……。そういう事ですか……。あの時の事は覚えています。私は、女神の役目を放棄して……ユーヤと共に逃げました。この世界を救うために……。この世界を滅ぼさない為に……。でも……。もういいです……。もう……。この世界の人達は救われますから……。この世界の人達を信じる事にします……。だから……安心して眠ってくださいね。私の大切な人……。さようなら……。また……どこかで会える日が来るといいですね……。ユーヤと……いつまでも……幸せに……。」

リリアの声を聞いたユート達は、驚いた顔になっていた。

そして……ユート達はリゼリアの言葉を聞いて、「なっ!!そんな馬鹿な……。ありえない!!俺とユーヤは二人で一人……。そして……。二人なら最強なんだ!!」と叫んでいた。ユーヤが……。

「リリア!!嘘をつくな!!」と言うが……リゼリアは黙って首を振っていたのだった。ユーヤも……それを見て「本当なのか!?」と呟くと、リリアはうなずいていた。

そして……俺は、リゼリアが言っている意味がわからずに、リゼリアに話しかけると…… リリは、「ごめんなさい……。これ以上の説明はできないの……。私が説明すると色々と都合が悪いので……。この世界の人に頼んでみてください!きっとわかると思いますから……。この世界の人が知っていると思うんですけど……。」と言うと……消えていってしまった。ユージはその声を聞き逃さずに……。

「リリアさん!?待ってくれ!」と叫ぶ。すると……「この世界での出来事は全て夢のような感じになっていましたから……。さっきのリリちゃんとの会話が最後のリリちゃんと話す機会だったかもしれませんね……。」

と言うと、俺達に背を向けて立ち去って行くユーナの背中を見送るのであった。

「ユーヤ!今は、リリアの言葉が信じられないが…… 今は……目の前の敵に集中するぞ!」

と俺はユーヤに声をかけて、剣を構えたのだった。すると、俺の後ろの方では……リリアの気配を感じることができた。リリアは俺の隣に来てくれているのだ。

リゼリアと別れた俺はユーキと戦うことになった。そして……リキやミウは俺の横に立っていたのだった。俺達は全員で大魔王ユーキに戦いを挑むのであった。俺は、ユーヤの拳を受け流しつつ……。

「おい!ユーキ!!本当にユージとリキなんだよな?」

と聞くと……「もちろんだ!そして……。大魔王である俺を殺せる唯一の人間……。それが……勇者の指輪の本来の力を解放することで得られる、本当の強さを手に入れた、ユーヤとユーコの能力を引き継いだ俺ってわけだ!」

ユーキはニヤニヤしながら言うと……。俺が、ユーヤの攻撃を弾き返してユーヤに攻撃を仕掛けようとしたとき、ユーヤに攻撃する寸前にユーキの蹴りが横から飛んでくる。

ユーキは蹴りを繰り出そうとしたが俺の動きに気づいて止めて後ろに下がって体勢を立て直す。そして……俺は……ユーヤの攻撃を避けて剣をしまい……。収納魔法から魔法杖を取り出して魔法を発動すると、ユーヤに魔力光線を放つと……ユートは俺に向かって剣で斬撃波を放ってくる。魔力光線の魔法は、斬撃波とぶつかって消滅するが……。

ユージが剣で斬りかかってきたが、俺は、ユージの刀を避けた後、ユージに体当たりをすると、ユーキが俺とユージに向かって魔力弾を放つ。ユーキは魔力弾を放つ前に、魔法陣を展開すると、魔法弾を放つと同時にユーヤに蹴りを入れてユーヤの腹を蹴った。蹴りを受けたユーヤが吹き飛ばされて……壁に激突しそうになるが、俺はユーキに向かって、雷電玉を複数放つと…… ユーゴは回避しようとするが間に合わずに、俺が放った雷電の球を食らう。俺が放った複数の雷撃の球は俺の手から離れなかった。すると……。リリアから、ユーキに回復魔法の効果が付与されたので……。ユーマの体には、雷撃の効果が残ってしまうが、ダメージは残らないはずだったのだが……なぜか、ダメージを受けてしまうユーマ。ユーマはユージとユーキを睨みつけると……。

「お前ら!!許さんぞ!!」と叫んでいたが……。ユーマの周りに結界を張り、攻撃魔法を放とうとしているユーキに、ユーコが、水魔法と風魔法を組み合わせて放つと、水と風の渦に飲み込まれていくユーマ……。

ユーマの体が浮いてしまい……。魔法を唱える事ができない状態になってしまう。ユーマは、「何をするんだ!?」と言っていたが……「貴方は……。今の状況がわかってないみたいね。私達が貴方を助けなければ……。私達は全滅よ。それに……貴方も助かりたかったんじゃなくて?だから助けたんだけど?」と言うと、ユーマは……。ユーヤ達を睨んでいたのだった。俺は、そんな事よりもユージを早く始末しなければと思いつつ、ユーキを見ると…… ユーマは……「俺もユーヤに加勢しよう……。お前はここで……死ね!!」

とユーキに殴りかかるが…… 俺が、それを止めると……「何?邪魔をするつもり?」

ユーマの言葉を無視してユーマの拳を受け止める。そして……。

「ユーマ……。お前の力は、確かにユーヤと同じくらいのようだが……まだまだ……弱い。だから俺達の相手をしてもらう!俺は……。ユーマと決着をつける。お前たちは、そこの女をどうにかしろ!わかったな?」と言うと…… ユーヤが「いいだろう……。リリアさん!ユーコさん!そいつらを足止めしておいてくれないか!」と言うと……

「「了解しました。」」

と言うとリリアとユーコはユーマに向かって飛び込む。俺は、リリアが作ってくれた時間を使って……。魔法杖に、魔力を込めていた。魔法を使うために……。魔法陣を展開した後に、ユーマの方へ向きながら詠唱を開始する。

そして……魔法発動の準備が完了する……。魔法名を口にすると、リリアの魔力弾に込められていた回復魔法が魔法弾となって発動する……。その瞬間に……

「スキル

『超高速飛行』

スキル

『重力操作LV8』

を発動します……。」と言う声が聞こえた瞬間に俺達3人はその場を離れた瞬間に俺達がいた場所に、ユーコとリリアが上空から降りてきて……地面に突き刺さると地面が揺れる。ユーコが「スキル 地震を付与……」と呟いた。その直後……ユーヤがユーコに向かって駆け出して……剣を振り下ろす。

それを見ていたユーコが……ユーキの前に障壁を張るとユーヤの攻撃を受け止める。そして……すぐにリゼリアとユーコは後方へと移動したのだった。

「リゼ!ありがとう!後は任せた!」

と俺は言い残すと……ユートとユーキの目の前に現れる。ユートは……俺が現れても驚くことはなく、無言で俺の顔を見ながら……ユーキと戦っている。

一方……ユーヤの方は、ユーキを斬りつけようとしたが、俺がユーヤの前に現れると、「ユーヤ!!下がれ!俺の相手は、俺がする!」

と言い……俺の方を見て……ユーヤの体を蹴り飛ばすと……

「やっと来たな!俺の宿敵!ユーヤよ!」と言うと……俺に襲ってきた。俺は、ユーヤとの戦いで、かなり体力が奪われていたので……このままだと……勝てないと悟っていた。

ユートの方を見るが……。ユーヤが邪魔しているのか……リキとミウが俺を守るようにユーヤとユーキの方に近づいていて、俺の近くにはユーヤがいたが……。ユーヤとユートとの戦いが始まってしまった。リリアとリリアは……。俺の方に来たユーキを迎え撃つことにして俺の傍に立っていたのだった。俺は、自分の体力を回復させるために、収納魔法から聖水を出して、一口飲んでみるが……あまり回復しなかったので、聖属性魔法の治療を自分自身にかけて体力を回復させることにしたのだった。俺は……。この隙をついて……。自分に光魔法をかけて、身体能力を強化することにしたのである。

俺は、『スキルコピー&インストール』で取得した……。大賢者の職業で得た全ての能力を駆使して戦わなければいけないと思っていたのだ。しかし……。俺は知らなかったのだ。俺は……。まだ……大賢者のすべての技能を手に入れていないという事を……

「ユーキ……。悪いが……俺はお前を倒す!!スキル 身体強化LV10を発動!」

と俺が叫んだ瞬間に俺が纏っているオーラが強くなって行くのが分かった。俺が叫ぶと、リリアが驚いた顔になっていたが……。俺は、俺自身に起きた変化に驚きを隠せないが……

「ユーキ……。お前だけは許さない……。絶対に倒してやる!!」

俺は、剣をしまうと収納魔法の中から、リリスの杖を取り出して構えると……魔法陣を展開する。魔法杖はリリがくれた魔法杖なのでリリに貰った武器の収納魔法から杖を取り出せるようになっていた。

魔法陣を展開していた魔法を一気に放つと、俺の放った魔法が、一斉に飛んでいく。そして……魔法をかわしたと思ったのだが……なぜか、ユーヤがユーキと一緒に魔法を受けて吹き飛ばされていた。

「なんだ?なぜだ!?あいつらが俺と一緒の場所に転移させられたぞ!?」

とユーヤが言うと……ユーヤに向かって魔法が次々に飛んできた。俺の魔法ではない。なぜなら……。俺がさっき放った魔法は全て消えて無くなったからだ。そして……。

「貴様!!何をした!?それにあの女の魔法じゃないぞ!!お前の仲間はどこに行った?」

と怒りに満ちた表情でユーヤが言うと……リリアが、俺に駆け寄ってきて回復してくれる。すると……。ユーマが俺の所まで来て、リリアと同じように回復してくれた。リリアも、回復の終わったリリアは……。リキやミウに、回復の波動を送る。リリアの回復魔法で復活したユーヤは……ユーキに回復魔法をかけると……二人は立ち上がり……リキとユーコに向かって走り出していた。

ユーヤが、ユーコに向けて剣を振ろうとすると、剣を持った手を抑えて……ユーキは蹴りを入れてユーヤを蹴飛ばしたのだった。すると……。ユーマも、リキに向かって攻撃するが……。リキは攻撃を剣で受け流してユーキを殴りつけた。

ユートは俺と向かい合うと……。剣を構えて……斬りかかってくるのだった。

ユーマは……「なんなんだ?こいつらは!?」と叫びながら……リリアの魔力弾を食らってしまうと……。「ユーヤは、何をしてたんだ!?こいつは……本当に俺達と同類なのか!?それに……あの男の強さは何だ!?あんなに強い人間がいるとは!?それにあの女達も強いぞ……。どうする?」

とユーヤが言ったが……「今は戦うしかない!リキとかいう男が、リリアさんに回復の術を施している今しか、俺達にチャンスはないはずだ。それに……ユーキがここに来てくれなければ、リキとミウとリリアは確実に殺されていたぞ!まずは、リキを倒してしまおう!リキは俺に任せろ!」

ユーヤの言葉を聞いたリリアは……。「わかった……。私とユーコちゃんは、残りの連中と戦うよ。」と言う。そして……。ユーヤも、「仕方ない。リキを先に始末する!リリアさん達は、ユートって奴をお願いする。それと、俺は、あっちの男に集中すればいいのか?」と言うと……「うん……。そうだよ。よろしくね。」

と言うとユート達と戦い始めたのだった。俺は……剣を構えなおすと……。リキに話しかける……。

「リキ!俺が……ユーマを倒したら……後はお前だけだ!!覚悟しろ!!」

俺は剣を両手に持ち替えて、スキルの『連続斬りLV9』を使い始める。俺が放つ『連続斬り』に対抗すべくユーマは『連続斬LV5』を使うが……『連続斬り』の方が早く……。リキの体を切り裂いていく……。俺の攻撃に耐えきれなくなりユーマの体は……。どんどんと切り刻まれて行く……。俺が……『スキルコピー&&インストール』の効果を使うと……ユーキも同じように『剣術LV5』を使ったようだが……。リキが、ユーキの体を次々と剣を振った後だったので、防御するのが遅くなってしまった。俺は……リキルを発動させて……。ユーキを戦闘不能にしたのだった。俺は……リキに対して……「降参するなら、殺しはしないが……。これ以上俺と敵対すると言うなら……殺す!」

と言うと……。リキは……。

「わかった……。ユートに勝てる気がしないからな……。俺達の負けだよ。それで?俺は、これからどうなる?」

「そうだな……。まず、俺が、ここを攻略したら……、お前たちは自由になるだろうが……。俺には逆らうことは出来ないと思う。俺に従うならば……奴隷のような扱いではなくて、仲間として扱ってもかまわないが……。」と言うと……

「ユート!!それ本当か!!じゃ……頼む……。俺達はユートの部下になるから、殺さないでくれ!!なんでも命令に従ってもいいからさ!!」と言うのである。「まぁいいだろう。お前たちを解放してやるから、この世界を救う旅について来てくれるか?そうしないと殺される可能性もあるから……」

と俺が言うと……。

「えっ!?でも……。そんな簡単に俺たちを解放して大丈夫か?」

とリキが驚いている。

俺は、リキリキの能力を発動させる……。

「リキリキ・セット」

と言い……。この城にいた魔物達を開放することにしたのである。すると……城の最上階にいたボス部屋の前に集まっていた。俺は、魔物達が逃げないようにするために……。ユーコとリリアとミウの3人に指示を出すと……俺の後ろに移動してもらった。

リキリキの能力は、魔物達と対話が出来るスキルだが……。俺とユーコとリリアとミウは……ユーコとリリアが結界魔法を展開していて、俺以外の人を寄せ付けない状態になっているため、他の人達からは見えていなかったのである。

俺は、俺の周りにいた魔王軍のメンバーをリキとミリアとユーコの三人だけ残して、それ以外は全員城に転移させた。俺はリキとリキの妹とリキの配下を一人残すと……俺はリキリキを使って魔物を開放する。リキリキで魔物に問いかけると……。魔王軍のメンバーの半数の100人と、ユーキの部隊と大魔王直属の親衛隊の50人が俺に付いて来ると言ってくれた。残りの200人はリキに預ける事にする。俺とユートの仲間たちは……。ユートとミウを残して、残りはリキの配下と大魔王様の側近を連れて行くことにするのだった。

大魔族が残したと思われる転移の罠がある部屋に俺とリキとリリアは転移すると……

「リキ……リキが、一番この中で強いんだよな?リキは……ここで留守番していてくれるかな?あと、もし、この迷宮の中で大魔族に出会ったら……その時はこの指輪を持って行ってくれ!」

と俺は言うと……収納魔法の中からミスリルリングを取りだした。

「お兄ちゃん……ありがとう。これさえあれば私は無敵になれるよ!!それに……お姉さま達ともいつでも念話出来るし……嬉しいわ!!ありがとう。お兄ちゃん。」

リキリキが発動して俺はみんなとの念話ができるようになったのである……。これで……みんなのサポートが出来ればと思って……。それから、すぐに、転移用の宝箱があった場所に行ってみたのである……。転移の魔法陣を見ると、そこには、大きな転移用の穴が開いていた。しかし……。魔法陣が作動していない。

「ユーキ……。お前……何をしたんだ?」

とリキが聞くと……ユーキが……

「ん!?俺は……魔法陣を無効化できる魔法道具を作っただけだが……。リキ……なんで、俺に聞いたんだ?俺は、何もしてないが?」

「リキ……。多分だけど……。その魔法具が原因だ……。おそらく、ユーヤが魔法を発動しようとした時に、魔法がキャンセルされたのと同じ理由だと思う……。」

と俺が言うと……リキは納得しているようだった。俺は……ユーマが作って来たであろう……。魔法具の解析をした。魔法具が光り輝いて……俺の目に飛び込んできた文字は……「神界」の文字が書かれてあるだけだった。「まさか!?」と思いながらも……。リキの方を向いて……

「もしかして……。これが転移用に使うはずだった転移魔法なのか!?だとしたら……この魔法は使えなくなっている。それに……ユーヤが作ったはずの、魔法の効果も失われていた。リキリキのスキルでは解除出来ないので……残念ながら……リキが、リキリキで移動する事も出来ないぞ……。リリアとミウの二人がいれば、転移でここから移動できたんだけど……。ユーヤが邪魔してきたので……。」

と俺が話すと……リキが、ユーキに向かって殴りかかろうとするが……リキの拳はユーキに当たる事なく……ユーキは消えてしまった。リリアが、「お兄ちゃん!あの子……。消えたみたいに……。ユーマって子に消されちゃったよ。大丈夫なの?」

と俺の腕にしがみついてくるので……「心配するな。あいつは……もう死んだよ……。ユーマに殺されたよ……。」

とだけ俺は言っておいたのだった。すると、突然、声が聞こえてきた。

《初めまして……私の名前はユーナと申します。》 と女性の声で……ユーマが死んだ事を知らせてくれたのであった。ユーナは続けてこう言ってきたのだった。

「私の役目は、あなたを試す為に……あの方に頼まれましたので……少しだけ試練を与えておきました……。」

と淡々と喋っているので……。「ユーナと言ったか……。君が、俺にあの男を殺してほしいと頼んだのか?」

と俺が言うと……。

「えぇ……そうです。あの方があなたに殺されなければ……。あなたの仲間にやられる事はなかったのですが……。ユーマは……。自分が強くなるために……『神』の使徒になって……。私も、『神の使徒』になった事で強くなって……そして『魔王』に成る予定でしたが……。その前に死んでしまいました……。だから、私が代わりに……。ユート様に……『力を貸し与える』事が出来るようになりました。『大魔王』に成る為の条件の一つが、ユーマの死によって満たされたのです。それで……『神』に認められて『大魔剣士』になり……そして『魔騎士』へと転職が可能になったので……転職をしました。それで……私は、『ユート・ジンカ』さんに……力を貸せるようになりましたので……これからよろしくお願いしますね!」と言うのだった。

俺は……ユーナに、「なぜ、俺に力を与えようとするのか?」

と言うと……。「あなたに恩返しがしたいからです。ユーマは……。元々……あなたに殺される運命にあった人間なので……あなたの役に立てるならと……思っています……。それと、私は、あの方に……。『ユートを倒せ!』と言われたのですが……それは、難しいですね……。『神』からもらった力は、ユーマを消滅させて、あなたに与えた力の一部を回収することしか出来なかったのですよ……。それでも……この世界の人間としては、ありえないくらいに強いんですけど……。まだ、本来の力を発揮出来ていませんから……。」

と答えるユーキのスキルの中にあった「ユーマの記憶と人格のコピーデータ 」というのに話しかけたら、返信が来たのだが……俺はそれを読まずに、スルーするのだった。

ユート・ジンカは、ユーナと名乗る女性から話を聞いた後に……。俺の意識に語り掛けて来た。

「俺は、お前とお前の仲間たちに力を貸そうと思うがいいか?」と言ってきたのだ。それに対して、俺は、

「ああ、構わない。俺には仲間が必要だから助かるよ!」と言うと……。「分かった……。お前の力を借りたい時は呼んでくれればいい。いつでも駆け付けるから……。それじゃあ……」と言うと……ユートは消えたのだった。

俺達の会話を聞いていたリキリキが、俺をジーっと見つめて何かを訴えかけてきているが……。リキリキの考えている事は分かるが……。「ダメだ。リキが、この城の中に残っているのが危険だと俺にはわかるんだよ。だからリキはリキの仲間を連れて先に脱出して欲しいんだ!」「リキリキ。この迷宮にいる魔物は、ほとんど大魔王軍の一員なんだ。みんな、ユート・ジンカを裏切った連中だよ……。だから……。リキの味方になってくれないかもしれないんだ……。ユーマを消してしまったように……。魔物を皆殺しにする可能性も高いんだよ……。ユーキのように、魔物達を解放することも出来ない……。俺達と別れて……。ユーキの妹であるリキリキがリキリキ・セットを使って……。俺とユーコ・ミウの三人だけで脱出した方がいい……。ユーキが俺の敵になるような事があれば……。リキが頼りだ!!ユーナも、リキリキが持っている剣が使えるようになるまで時間がかかると言っていた。その間は……ミウとリリアと二人で協力して……。魔物を倒さないといけない……。俺達はリキが戻るまではここに残る事にする……。頼む……。俺を一人にしないで欲しいんだ。」「お兄ちゃん……お姉さま達が居てくれるから……寂しくないよ……。それに、この城の中にいる魔物達と話ができれば……きっと仲良くなれると私は思うわ。お兄ちゃん……。私は、絶対にお兄ちゃんを一人ぼっちになんかさせないわよ!だって……。私には、お兄ちゃんを幸せにする使命があるんだもん!!」と涙を浮かべながらもリリアは必死に言うと……俺に抱き着いてくるのだった。「お兄ちゃん……。ごめんなさい!!お兄ちゃんを困らせたくないけど……お兄ちゃんがいないと生きていけない身体なの。それに、私の気持ちはお兄ちゃんから離れられないのよ。お兄ちゃん……。」

リキリキの言っている意味が分からずに俺は戸惑っていたが……ミウが「ユウちゃん……。リキさんの気持ちもわかってあげて欲しいの。リキリキさんも女の子なのよ……。ユウちゃん……。」

と言うので……俺はリキリキの顔を見るとリキリキの表情は真っ赤になっていたのである。俺はその姿を見て思わずリキリキを抱きしめてしまうのであった。

すると、リリアも「私達も……。お姉ちゃんが、お兄ちゃんの側にいないのなら……。私もこの迷宮に残っているから!!」と言い出すので、俺はミウの方を見ると、ミウも一緒に残ると言ってくれたので、俺は「ありがとう……。でも、俺は……。この迷宮で……。ユーキが残した宝を回収をしておきたいと思っているんだ。ユーキは……。ユーキを殺した俺を恨んでいるだろうし……。それに……。この城のどこかで待っているはずだからな……。ユーキは……。」と話すと、リリキリキは、「うん!私はお兄ちゃんについていく!お母様が言っていたの……。男は、女を守る時に強くなれるのよ。」と話してくれたのだった。

そして、俺はリリアとリキの二人に指輪を渡すのだった。これは……俺が作った転移用アイテムである。「これを、装備しておくといいよ。使い方を教えるよ。このボタンを押すだけなんだけどね……。後は……指に嵌めるだけだから簡単だよ。」と俺は言うとリキは早速試していたようだ。リキも試しているようで、指輪を装着した。リリアにも渡すのだが……サイズがあっていなかったようだったので、後で調整する事にしよう。そして俺は……リキリキと一緒に迷宮を出ることにするのだった。

俺は、リキリキと共に迷宮の外に出る前に……『リキリキの指輪』の機能を確認するために起動させることにした。すると画面には……「現在地を確認します。」の文字が現れたので、画面の文字を選択すると……。

現在の所在地:迷宮最下層1階 》と表示されたので、さらに文字を選択していくと、地図が表示されて、迷宮の最深部の扉に赤い点が表示されているので確認するのだった。

「この赤色の点は何を意味しているのですか?」

と俺は聞くと……。

「う~ん……。なんだろう?これ?」

「えっ!?分からないの?リキリキ?」

俺はびっくりしたのだ。リキリキが答えられると思ったからだ。「あっ……。うん……。分からないの……。多分……これが、『神』に与えられた力で……。『勇者の力を与える者の称号』の効果の一つなのかな……と思うの……。私が知らない情報は、ユート・ジンカさんに聞かないとわからないからね。『勇者の力を与えた者 』は……。私の『力を貸し与える 』という固有技能が使えない代わりに……。私が知っている情報を……。私の意思と関係なく……。ユート・ジンカさんに伝えることが出来るみたいなの。それで……ユート・ジンカさんの知りたかった事は……教えてあげたから……。次は何をすればいいかとか……。どんな事があったのかが……自然に流れ込んでくるようになったみたい……。今は、ユート・ジンカさんの記憶を共有している感じだけどね。私もユート・ジンカさんになったから……もう『神の使徒 』の力は無くなったんだよね……。」と少し悲しげに言うとリキリキは涙を流していた。「そんな顔しないで……。ユート・ジンカとして生きた経験が……。私の魂の一部になったと思うの……。だから……。私は後悔していないわ。それに……。お兄様には会えなかったけど……ユーマが……『ユート・ジンカ』に生まれ変わったように……。私には新しい人生が与えられたのよ。私は、『神の使徒』になんてならないで、ユート・ジンカさんとリキリキ・セットさんと一緒に生きていきたくなったわ。だからね……。私には新しい目標ができたの。それはね……お兄様に会える日が来るまで、リリアちゃんのお手伝いをしながら、この世界を旅して回りたいわ。そしてね……。いつかね……お父様とお母様を見つけて……三人で暮らす事が今の夢かな……。ユート・ジンカさんはね……。『神』が与えた試練に一人で耐え抜いたの。でも……ユーマは一人じゃなかったから、乗り越えられたのよ。ユーマには、ユーナっていう仲間がいたのよ。私には……まだ仲間はいないけど……。きっと……。素敵な仲間ができると思うの。ユート・ジンカさんの仲間に会えたら……ユートと呼べばいいから。これから、よろしくね。ユーリアちゃん……。」「ユーキお姉さまの事は残念ですが……ユーリアお姉さまと私は一心同体だと思って下さい。」「うん……。わかった。ありがとう。ユーナちゃん。」「私こそ……ありがとうございます。ユーリアちゃん……。それから……お願いがあるのですが……聞いてくれませんか?」

と俺の目を見て話すユーナの言葉を聞きながら……俺の心臓の鼓動が激しくなるのを感じるのであった。

ユーナが真剣な表情で俺の目を見ていると、俺の鼓動が早くなったのだ。俺は動揺しながら、「あ……ああ……。何かな……?」と返事をする。「実はですね……。この世界を救う為には……ある物が必要なんです。でも……私では……。手に入らないかもしれないし……ユート・ジンカさんのスキルや能力でも無理かもしれないんですよ……。ユート・ジンカさんにしかできない事があるのです。」と俺は話の内容を聞いていくと……その話をリキリキが通訳してくれるのだった。「この世界を滅ぼすほどの邪悪な力を持つ魔王を封印するための力が込められた武器が必要になります……。この世界の魔王の力を封印するために必要な武器を造れるのは……『錬金術師 』のみと言われているんです。でも……私は、レベルが低くって……。レベル上げの為には……経験値稼ぎが出来るダンジョンを攻略するのが手っ取り早いと思いますが……『賢者の塔』の地下に、魔王を封印するために創り出されたと言われる魔導兵器が眠っているという話なんですが……魔王の力は強大で……。ユーナちゃんの話だと……魔王の力が解放された時には……その魔導兵器の使い手が……命を落としてしまったらしくて……それ以来……魔導兵器は封印されてしまいました。その封印されている場所に行ける唯一の人物が『勇者の器を持つ者』なんですが……この世界にはすでにいないはずなのです……。でも、もしもユート・ジンカさんがその資格があれば……私はその可能性があるのではないかと思っているの。どうかな……?ユート・ジンカさん……ユーナちゃんが言っている話は……信じてもらえないでしょうか?私は……。どうしても……ユーキちゃんを救ってくれたあなたを……。」と涙を浮かべるユーナを見ながら……俺の心は揺れ動いてしまったのである。「私は……。どうすれば良いんだ? リキリキ?」

俺は思わずそう呟いていた。

リキリキがリキキリキを見るとリキリキも首を横に振っている。

俺は、ミウに視線を送るがミウは下を向いていたのだった。

「ユウちゃん。あのね……。リキリキちゃんが言う通りなら……。ユーキちゃんは生きていると思うんだ……。それにね……。リキリキちゃんと私が出会ったのもユート・ジンカの運命に導かれてなんだから……。でもね……。今の段階では確証がないの。ごめんなさい。だから……今は……。」と俺は、ユーキの事を信じているが……。この話が嘘だった場合の事も考えると……。簡単には答えられなかったのだ。しかし、ユーナは、「私はユーリアちゃんに賭けてみるわ!だって……。この迷宮には『神』の使徒がいるのよ。それなのに……『神』の試練は達成できていないし……。」と言っていた。「それに……。この指輪のおかげでね……私が持っている情報が分かるみたいなの。それでね……。この『神の使徒 』という職業は『全ての情報を取得する 』という固有技能を持っていなければ取得することが出来ないの。つまり……。ユート・ジンカにだけしか与えられていない『特殊固有技能』だと思うの。この『神の使徒』は……。ユート・ジンカに与えられた『特別な称号』だと思うのよ。だからね……。ユート・ジンカに会えれば……何かがわかる気がしているの。だからね……。ユート・ジンカに会うまでは……ユーキちゃんが無事だったとしても助け出す事は不可能だし……。リキリキと私が『神』の試練を達成した時も……ユーキちゃんの救出は可能だと思うの。」

「なるほどね……。リリアとリキキリキも俺が『神』の試練をクリアするまで待てるのか?『リキリキとミウが試練を達成して、『勇者の力を与える者の称号』を獲得したら……。その時は、俺は、『勇者の力を与えられた者』の称号を得る事になるんだけどね……。俺は、『勇者の力を与えられる者』になる前に……。」

俺は……『勇者の力を与えられる者の称号』を獲得するのを避けたいと思っていたので、『勇者の力を与える者の称号』の獲得を躊躇っていた。なぜなら、リキリキとリリアのように、『コピー&貼付の特殊能力を持っている者を二人作ることが出来る』と言うことは、『勇者』というジョブを持った者を大量に作ってしまう可能性が高くなり……それはそれでまずいと思うからだ。それに『大天使』という強力な固有技能を手に入れることも問題だと考えていたのだ。「『神の使徒』は……俺だけに与えられていた『特殊固有技能』なのか?それに……リリアとリキキリキが『勇者の力を与える者の称号』を得たら……リキキリキとミウには『神 』の使徒のジョブは獲得出来なくなるよな?」

「ええ……。出来ないでしょうね。私達も『神 』の試練を受けてみたいとは思っていますが……今の状況を考えるとユート・ジンカさんの試練を優先するべきと考えています。『勇者の力を与える者の称号』と『コピーアンド貼り付けの特殊技能』と『鑑定の能力』を手に入れていれば十分ですからね。『神』の試練を受けに行く事はいつでもできるのですから……。でも、ユート・ジンカさんの身に危険が及ぶような事は絶対に許しませんからね!」「もちろんですよ!お兄様。私も同じ考えを持ってます。ユーナさんも私達の事を信じてくれてありがとう。」とリキリキは嬉しそうな顔をしていた。

リキキリキの話を聞いたリリアも俺も安心できたが、俺はリキリキに「そういえば……リキリキとリリアはどうして俺と一緒に行動する事を選んだんだ?リキキリキの実力を考えれば、単独で行動した方が有利じゃないか? 俺のパーティーメンバーに加わったって、戦力にはならないし……。」と言った。すると、リキリキは……。「私達は……この世界の人達を救いたいと思っています。『リゼル』と『ユーマ』には悪いことをしてしまいましたが……この世界を平和な国に作り替える為には……。やはり、リキリキの力は必要なのです。そして、ユーマもユート・ジンカさんの側に居たいと私に言ってきたので……。私の判断は間違っていなかったと思っております。」「リキリキ……。」と俺はリキリキの言葉を聞いて泣きそうになったのである。俺はユーナにも、「ユーキの事を信じるか?」

と聞いてみると、「ユート・ジンカさんの決断にお任せします。」「そうか……。リキキリキ、ミウに『コピーアンド貼り』でリリアのスキルを全て付与する。ユーキを救えるかもしれないスキルを探しておいてくれるかな? それとリキキリキが『大悪魔 ベルゼブブ』を倒して手に入れたスキルのリストも欲しいな。」「かしこまりました。お兄様。すぐに用意させましょう。」と、言うと……部屋を出て行くのであった。

俺とリキリキはリリアを連れて街に来ていた。ユーキを救う為に必要なスキルを見つけるために……。俺とリリアが一緒に行動する理由は……。『コピー&貼付のスキル』で『複製』されたアイテムがユート・ジンカの物であるとバレないように、ユーリア・セットとして認識させる必要があったからである。「この世界では、リキリキもユーヤと名乗ってくれている。

俺はリキの偽名である、ユウトにすることにしたんだよね。まぁ、ユウでもユーでも何でも好きなように呼んでくれるといい。あとは、俺の装備とか武器とかを適当に見繕ってもらっていいかい?」とリキは言ってくれたので、とりあえずは冒険者に成り済ましてみることにしたのだった。この世界に来てまだ、一週間も経っていないので、冒険者ギルドに登録しているわけではないが……。身分証明書は『異世界からの来訪者 証』を所持することにより、作成されているから、問題はないだろう。それに……レベル99になってるから、ステータス的にはチートだからな……。

俺はそんなことを考えながら……街の中を見て回っていた。この世界は……中世のような感じの街だった。石造りの家が多くて……木造の建物は少ないのである。ただ、道には土が使われているのが特徴的だった。俺とリキは防具屋に入ったのだった。この世界にはどんな物があるのか興味もあったのもあるが……。一番の目的は……この世界で流通している通貨を確認するためでもある。俺はこの世界の通貨の価値がよくわからないのだ。俺は、店員に話しかけてみると、この店に売っている装備品はどれも高級な部類に入り……一般人では手に入れることができないものばかりだと言われてしまった。しかも、俺が『大魔王の杖(魔力強化+2倍)

MP+5000 攻撃力1000上昇』を持っていたら、「その剣は凄く高価な代物ですよ!ぜひ譲ってほしい!と言い出したくらいなので……。どうやら……。この世界でも『大魔王の杖(魔力強化+3倍 攻撃力2000上昇 MP+5000 攻撃力2500増加 魔法力+1250 MP消費減少効果)

MP消費量10%削減効果』は相当なレア度らしい……。俺がリキに値段を確認してもらったが……金貨300枚という事で……。この世界にはまだ貨幣制度は導入されていないようだ。

俺とリキが店を出ようとした時……俺達が入ってきてから店の外から見ていた女の子がいたのだが……急に声をかけてきたのである。俺は……振り返ると、金髪ロングでツインテールをした小柄な美少女と身長175センチ程の美男子に話しかけられたのだった。「貴方……。もしかして……。『神 』に召喚されてこの世界にきた『勇者』なんじゃないですか?私は、『女神』の聖女の『セリス』です。私は、『勇者の力を与える者の称号』を持っております。是非……この世界を『勇者の力を与える者の称号』を持った人の手で救い出してください!!」と言ってきてくれたのである。

すると……。もう一人の美形の男性も話し始めたのである。

「はじめまして。『勇者の力を与える者の称号』を持つ『ジン=ジーニアス 』です。僕は、『賢者の力を与える者の称号』を持っていまして……。僕の力で皆様に力を授けることなら出来るかもしれません……。どうか……。お願いできないでしょうか?」と言って来たのだ。

「なるほど……。君は、俺が『勇者の力を与えられる者』だという事がわかったわけなんだね? それはそうと……君達も俺達の仲間になる気はあるの?」

「はい……。『勇者の力を与えられる者の称号』を持っている人が仲間になれば……。私達の国は間違いなく強くなります。ですから……。私達は、貴方達に協力するつもりです。」と聖女は言った。「うん……。わかった。じゃあ、仲間になるかどうか確認する為に、君達にスキルを渡すね……。《譲渡》」

と、俺は、スキルカードにして、リリアとユートとリキに渡すのだった。リリアは早速と《複写再生の固有技能 》を発動する。そして、俺は二人に向かって、スキルカードの固有技能欄を見せるのだった。そこには……。《コピーアンド貼りの固有技能》が記されていたのである。リキリキが持っている技能は……ユートが持っていなかった《複写再使用の固有技能》が書かれていて……。ミウの持っている技能は……リリアとユートは持っていた技能の全てが記されていて……俺は驚くのだった。

ユーヤさんとリキキリキとミウが何かをしていた。そして、しばらく時間が経過した時に突然リリアとユートは光り輝き……光が収まった後にはリリアの姿が変わっていた。リリアは元々が美人だったが……もっと可愛くなったような気がしたのだ。「う~ん……。やっぱり私の体は可愛い!!でも、お兄様の前で裸になるとは思いませんでしたよ……。お兄様のエッチ!」と言う。俺とミユはリキキリキの顔を見るが……苦笑いを返されてしまった。リキキリキによると……。この状態がリリアの真の能力であり……。普段はこの能力を抑え込んで生活をしているみたいだった。

そして……ミウを見ると……元々が童顔で幼い感じだったのに、幼さの中に大人っぽい表情が加わった感じになったのだ。「えへへ〜♪ リリアちゃんに変身させてもらいました!えっとぉ……ユートさん……って呼びますね!」とミイが言うと、俺がリリアだとわかっていても……ドキドキしてしまう俺がいるのだった。リザさんも同じなのか……顔を赤らめていた。

ユーヤさん達は、この『リゼル』の『聖騎士』と『大魔導士』をリキリキの眷属化することに成功したようである。この二人は……もともとの『大勇者』の職業に加えて、『大天使』が加わっており……レベルはMAXだったのである。

俺の目の前にいるユーナは、元の世界では高校一年生だが、今は、小学五年生の見た目になっていて、髪の毛の長さも同じになっていた。ただ、服装に関しては俺と一緒の黒ずくめの装備をしているので、俺と一緒に行動していると思われているのであった。俺は、とりあえず、このユーキと行動を共にしたいと思っている。俺とリキリキがこの世界で生き抜く為に……。まずは冒険者として生活をしながら……。『ユーヤ・ジンカ・リキリキ・リゼル』として、三人の名前を使うことにしたのであった。俺が名前を変えようか迷っていると、ユーキが、「お兄様の名前はユーヤのままで問題ないですよ!それに私もこの世界の人間になりますので、私に名前をお与え下さい!私は……ユーキではなくユーナとしてこれから生きる覚悟を決めましたので……。」と言った。ユーキの決意が伝わってきて、俺は涙が出そうになるが、堪える……。そして、「わかった。お前の事をこれから『大魔王』の娘ユーナと呼ぶことにする……。よろしくなユーナ。それと、今はまだ俺の正体については内緒で頼む……。いずれ、時期が来れば必ず話すが、俺とユーナが同一人物であるということは誰にも知られることが無いようにして欲しいんだ。」「わかりました。私は絶対に言いませんから安心してください。」

俺は、自分の気持ちを整理したくて外に出てきてしまったのだ。「真! 真!どこに行ってたのよ。私を置いて行くなんて酷いわ!!」「悪い。ちょっと、俺も混乱していたんだよ。ごめんな。」「まぁいいけど……、それよりも……これ食べてみてくれる?」

そう言って渡されたのは……ハンバーガーみたいなものなのだ。俺に試食をしろと言っているようだ。俺に渡してくれたハンバーガーを食べる。「これは美味いな……。このパンって何で出来てるんだ?」「えぇーと、この世界で一般的なのは……小麦かなぁ……。」

この世界の食料事情は、かなり良いのである。魔物が定期的に現れてくれて……その討伐の報酬を目当てに人々が冒険者をやってるのだから……。しかし、冒険者の数は多いわけでもなく、街の住民や国の騎士団などは日々の生活をするだけで精一杯なのが現状だったりする……。

俺と真琴はギルドに足を運んで、この世界に転移してきた時の説明を受けていた。

受付の女性の説明を聞き終わった俺と、真琴はギルドを出ることにした。ギルドの外に出た瞬間……俺は何者かによって拘束され、意識を失ったのだった。

〜???視点???「これで……この世界から『大魔王』がいなくなる……。やっと……。ようやく私が世界の頂点に立つことが出来るようになる……。この世界を救えるのは……。私しかいないのよ……。待っていて……真君。私は……あなたを救うから……」

〜??視点?? 俺は、『剣豪』の田中。大勇者佐藤に攻撃されて死にかけた。あの時は、もうダメだと思い絶望した瞬間……。

俺に声がかけられたのである。それは……「君……『勇者』の力を与えられないか?」と言ってきた女性がいたのだ。俺は一瞬戸惑ったが……「俺なんかが勇者の力を得られるはずがないだろう……。こんな俺が……大勇者佐藤と大魔王に殺されるのが落ちだよ……。」と答えた。その女性は、「じゃあ……。君の命を助ける為には……それしかないかもしれないね。」と言って……俺に固有技能欄を見せてきた。その項目には《コピーアンド貼りの固有技能》が記載されていて……そこにはこう書かれていた。『コピー&貼り付け』と……。

その女性がいうには、その固有技能を発動させると……。俺のレベルと経験値は引き継がれて、新たな職業につくことができるらしい。俺は、その話を聞いて……。そんな馬鹿げた話があるわけがないと思っていた。俺は、今まで真面目にやってきた。勉強だって部活だって頑張って来たのに……。俺は勇者にも大魔道士にもなる事はできないだろうと考えていた。そして……《勇者の力を与えられる者の称号》を持っているという少女が現れたのである。俺は、もしかしたらと思ったが……。この固有技能を使えば勇者になれるという事がわかってしまったのである。俺はこのチャンスを逃すまいと思い、この話に乗ったのだった。

固有技能は発動できたのだが……。《コピーアンド貼りの固有技能》が消えずに残っていたのである。そして……何故か……。俺が使えるはずのないはずの大魔法まで使うことが出来たのだ。

この固有技能の使い方を教えてくれた人物は……。この『勇者の力を与える者』の資格を持つ人物だと言うが……本当かどうか疑わしい。

だけど……本当に助かったと思っているのだ。勇者といえども、まだ子供の年齢だし……。

この異世界の人間の寿命もそこまで長くはないようだったので……。

俺が……勇者になる事は出来たが、勇者の使命を果たす事が出来るかどうかはわからない。それでも……。少しでも役に立ちたいと思っている俺だった……。

俺は目を覚ますと知らない部屋にいた。ベッドの上に寝ていて……。俺は上半身だけ起き上がる。すると……目の前に見知らぬ少女が立っていたのだ。

そして……俺に向かって話しかけてくるのだった。「おはようございます。目が覚めましたね。私の固有技能は『コピーアンド貼り』と言いまして……。簡単に言えば、自分が持っている全ての固有スキルを他人に譲渡できるのです。ですから……貴方には……《転写》と《複写再生の固有技能》を付与しています。ですから、レベルが上がって新しい固有技能を得ると自動的にその固有技能は、貴女のものになります。ただ、固有技能は1つにつき3回まで使用が出来るようになっています。使い過ぎるとしばらく使用できなくなりますので気をつけてください。それと……。この部屋にいる時のみ……『勇者の力を与える者の称号』を貴方に与えられるようですね……。『大魔道士』、『賢者』などの上位職業も与えることが可能ですが……。どうしますか?」俺は正直驚いたが……俺は……勇者になることを決意した。「俺……強くなりたかったんです!! 俺が勇者になれたら……俺は強くなってみせる!!」

俺の返事を聞いた目の前の少女(俺が見たことがないくらい美少女である)はその美しい容姿に似合わない不気味な笑みを浮かべて……。「ふぅん……。やっぱり、貴方ならそう言うと思っていました。では、まずはこの世界での身分を用意した方がいいと思いますよ?」と言ったのだ。この世界では、16歳から成人として扱われるが……。15歳で子供を産む女性もいるし……結婚する年限も決まっていないようだし……。俺は、自分の年齢を確認する為に自分のステータスを見てみたら、確かに表示はされていなかったのだ。「俺が16歳になっていなかったら……この世界に俺の子供はいないのか?」「残念ながら……そうなります。でも、安心して下さい! 16歳になるまでは私の力を使う事が出来ますので、私が貴女の身体をコントロールすることが可能なんですよ!そして……私は、貴方と同じ世界から来ているから、貴女の身体を乗っ取ることもできません。」

俺は、この人が誰なのか……何のためにここにいるのかわからなかったが…… 今はこの人を信じて頼るしかないので…… この人に色々と教わることにしようと思う。この人の話では…… この世界の時間は現実世界の5倍の速度で流れているそうだ……。

俺がこの世界で生きている時間と……元の世界で俺が過ごしている時間の差があるみたいだな……。

まずは、この世界の常識や生活の仕方などを学びたいと思う。俺は……目の前の女性から……色々学ぶことにするのであった。

目の前の女性の名前は、ユウキさんというようだ。ユウキさんがこの世界で俺を助けてくれると言っていたし……。俺はユウキさんが教えてくれる事にしたがって行動する事にした。この世界でもやはり『コピーアンド貼り』は使えたし……。

自分の能力の確認をした俺は……。自分の能力をチェックしていく。『大魔王』の能力や称号はそのまま引き継げるようだが……。『勇者』と『聖騎士』は別だったのだ……。俺には使えないようになってしまったようだ。レベルが1に戻ってしまったようだし……。レベルが10になると、次のレベルの条件に到達できないようになってしまうようなので、俺は当面の間は弱い魔物を倒す事で経験値を増やしていく必要があるようだった。そして……俺はこの部屋には自由に出入り出来るようだった。俺が目覚めると、いつもこのユウキが来ていたのだ。

俺は今、レベルを上げていきたいと願ったところだが……魔物を倒していかないとレベルを上げることが出来ないようだった。俺は、とりあえずは……魔物がいる場所に向かうことにした。魔物と戦わないことには……強くなることが難しいとわかったからだ。そして、この建物から出ようとしたところで……ある問題が発生する。俺が部屋を出て廊下のような所に出た時に、いきなり武装している人間に囲まれて、「おい!そこの男! 何者なんだ?!」と言われて拘束されてしまったのである。俺も突然の出来事で困惑していた。「えっと……僕は……」俺の言葉に被せるように、武装していた人間の一人は、「この男は、『勇者』様と一緒に来た人間で……勇者様を裏切った『裏切り者』だぞ!!」と言って、俺が勇者に何か危害を加えようとしていてこの建物の中に入り込んでいたのだと決めつけてしまったのだ。

「ち、違います……。ぼ、僕……い、一応……この世界の『勇者』に『勇者』の力を貰うために連れてこられた人間なんですが……。勇者がどこに居るか……知らないですか?」俺は……何とかこの誤解を解いて……話を聞こうと試みたのだったが……。「そんな嘘は……すぐに見抜けるんだぞ。お前は……この国の王都に侵入して、王様を殺そうと計画していたんだろう。」

と返された。

俺は必死に説得したが、その言葉は信じてもらえなかったのだった。俺を拘束して、牢獄にぶち込んで……処刑するように進言していたのだが……。その時……一人の少女が現れて、俺は拘束を解かれて、解放されたのだった。「その者は、『勇者』である佐藤様のお友達ですよ。その方を解放してあげてください。」その少女は、『勇者』である佐藤を知っているようで、少女の言葉によって……俺は拘束から開放され、解放される事になったのだった。俺は……佐藤の知り合いの女の子に感謝しながら……その場を離れる事にした。そして……佐藤がどこに行ったのかわからずじまいで……俺は仕方なく魔物を倒しに行くのであった。そして、俺は、街の外にある門の前にやってきた。そこには……冒険者達の姿が多く見られた。この街にはまだ『大魔王』が出現をしているわけではない為、多くの『勇者』達が活躍できる場として、多くの人が集まっているようである。しかし、『勇者』である俺と大魔王の仲間達は街には入れないらしい。まぁ、この異世界では、俺達の能力は強すぎて一般人では対抗する手段がないというのが実情のようだ。

しかし……俺としては『大魔王』が出現して『魔王』達が現れた時には……俺も戦いに参加するつもりでいた。『大魔王』が出現したのならば、必ず俺に『大天使』の力を分け与えたリゼルが現れるはずなので、そしたら……俺は全力でリゼルのサポートをするつもりだったのだ。俺がそんな事を考えていると、大きな魔石を持った集団が現れた。どうやらその人達が、討伐部隊の人たちらしくて……魔石を魔素に分解することで、強力な魔獣を討伐する事が出来るということなのだが……。その光景をみて……俺は……『大魔王』が現れたのだと感じ取った。そして……大魔導士と魔道士である佐藤が、それぞれ……大魔法を放って……魔物の大群を一網打尽にしたのだった。この様子から見て……『大魔族』の誰かが大魔王となった可能性が高いだろう。大魔道士の称号を持っていたのは……『大魔女』で……大魔道士の称号を持つことになった田中の肉体を奪い取っているはずであるし……。それに……。俺は、あの大魔法を放った二人のうちどちらかが『大魔道士』の称号を手に入れたのではないかと考えた。『勇者』の称号を持つ者が大魔法を放つ場合と大魔道士の称号を持つ者が大魔法を唱える場合には、威力に大きな差が出るはずだから、間違いなく俺には区別がつくと思った。

俺には『大魔眼』の固有技能があるし……。ステータスを確認していけばいいだけの話だ。ただ……今の俺は……『大魔法使いの称号』を持っているだけで……魔法の使い方が全くわからない状況になっているので、俺は……。目の前の魔物に戦いを挑むのだった。

俺の目の前に現れたのは……巨大な昆虫のモンスターであるジャイアントマンティスだった。こいつはカマキリのモンスターだから『大鎌使い』という上位職の奴らがよく使う技を得意としているから、油断ならない相手になる。『剣の舞』の剣術で相手を翻弄してきて……隙があればその長い刃を使って攻撃して、急所に一撃を入れて仕留めるという戦法が得意な敵だった。俺がこの世界で初めて戦うタイプの相手になる。

俺のレベルが低ければ、レベル1のこの世界で、こんな化け物を相手にすると簡単に死んでしまうのだろうなと思いながら、目の前にいる『大魔王』が生み出している『魔虫』と呼ばれる化け物の一匹と対峙する事にした。『魔人』と『悪魔公』の称号を得た俺は……俺自身が強化されて……『勇者専用特殊回復呪文』も使用出来るようになっているので……多少無茶な事をしてもいいのだと自分に言い聞かせながら……俺に向かって突進してくる敵の攻撃をギリギリまで引きつけてから回避することにした。俺がギリギリに避けたら……。俺が今まで居たところの地面には大きな傷跡が出来ていて、この敵を怒らせる結果となってしまった。「ガァー!!!!!」という叫び声と共に、敵は何度も連続で攻撃を仕掛けてくるが……。

敵の攻撃を冷静に観察し、タイミングよく避ける事に集中をしていた俺は……なんとか敵の連続攻撃を無傷でやり過ごす事に成功していた。俺はこの世界に来る前の事を思い出した。以前……俺はレベル30ぐらいの時に、レベル90の『ドラゴンロード(亜種)』(龍の王)と死闘を繰り広げて勝った経験がある。俺はその時の戦い方を思い出せたら……。目の前の魔物の対処が出来ると考えていた。そして俺は『大魔槍(黒)』と『聖剣エクスカリバー(改)』を構えて、相手の攻撃を待つ事にした。

しばらく時間が経過をしたのだが……なかなか相手は俺に攻撃を仕掛けて来ないので……。俺は……。相手には見えない速度で……。俺の持っている武器と身体能力を駆使して、高速戦闘を開始する。この世界に来たばかりの時と比べても格段に動きが良くなっている俺の身体に驚いたのだが……。今の状態で、どこまで出来るのか試したいと思って……思いっきり自分の能力を使い倒すことにした。

そして……ついに、この魔物の動きにも慣れて来たのである。

そして……今度は俺から先制攻撃を加える為に俺は、相手の攻撃を避けずにわざと受けた。俺の攻撃を受けて怯んだ瞬間に俺は敵に斬りかかり……。俺は一瞬にして、目の前にいたはずの巨大な敵の姿を確認できなくなった。

俺は自分の身体をチェックしてみる。俺は自分の体を見る限り……特に異常はないと感じた。そして……。俺が自分の体を確認すると同時に俺の身体から光が放たれたのだ。俺はその光の波動を感じるとすぐに『勇者』と表示されているスキルを確認した。俺には何が起こったか把握出来ていないのだ。俺は、急いで先程戦った巨大昆虫の方を向いてみると……そこには……信じられない姿の生き物がいたのだ。

その姿は……人間だった時の俺と同じような格好の生物に変化していて……。その背中からは翼をはやしているようなので、『天使族』なのか?と俺は考えてしまっていた。俺は、恐る恐るその生物のステータスを確認すると……その種族が判明したのだ。その表示を見た俺は……驚愕した。

「こいつ……いや……。彼女は……」俺は言葉を失ったのである。そう……この世界の魔物に姿を変えているのは……なんと……元俺の仲間だった存在で、『大天使』の力を得てから行方不明になっていた……。佐藤であったからである。俺が佐藤に駆け寄ると、俺の姿を見つけた佐藤も驚きながらも、少し嬉しそうな表情で、「えっと……僕は佐藤じゃないんだ。僕の名前は……。」と、佐藤は自分の名前が『ユカ』と言う名前で『勇者』として召喚されていた人間だったと説明した。

「えっと……俺は鈴木だ。」俺は咄嵯に、自分が異世界から来た存在である事がばれないように偽名を名乗ったのであった。「あ、ごめんなさい。私ったら……勝手に……私の知り合いの名前を名乗るなんて……。」と佐藤に言われたが……。この世界に俺達の仲間の名前が浸透し過ぎて、本名を名乗っているわけじゃなくて……別の人間として生活しているだけだと説明しても……おそらく信じてもらえないだろう。「気にするなよ。それよりも、どうして……佐藤のフリをして行動しているんだ?」と聞いてみたのだ。

「実はね……。」と話を始めたのだが……。どうも……この世界の人達には、『魔王』が復活してから……少しずつ記憶操作が行われているようで、一部の人が俺のいた世界や元の自分に関することの記憶を失ってしまっているらしい。その人達の事を、人々は忘れてしまっているみたいなので、佐藤もその事を不審に思っていたが……。その佐藤を、『勇者』にするために現れた『女神アスター』から佐藤にこの世界で生きてもらうように言われて、それに従って行動していたらしい。ただ……『勇者』になって、魔王と戦うという事に……違和感を感じていたようだ。それで、自分は魔王が封印されているこの国の王都ではなく、この国以外の他の国の様子を見に行くことにして旅に出ようと考えていた矢先に……。リゼルに見つかって……田中の姿に変えられたらしい。『勇者』の称号と大魔道士の能力を手に入れてからは……俺は佐藤と連絡を取る方法がない事に気がついた。俺は、何とかリゼルを倒してから佐藤に会いに行こうと思っていたのだが……。佐藤の話を聞いてからでは……リゼルを倒すのは難しいかもしれないと感じ始めていた。なぜならば……リゼルは『大魔王』の力を得ているからだ。

『勇者』の称号と『大魔道士』の能力を両方得た『大魔王』は……俺の知る限り、歴史上でも最強の力を手に入れた存在だと思われるし……。しかも……。この世界で最強の存在の『大魔導士』になった佐藤をも手懐けているというのだ。この『暗黒世界』を統べるために『魔神』を召還しかねない勢いなのだ。俺の予想だと……『悪魔公』が魔王になっていると思うが……『大魔王』の本当の実力を知らないまま挑むというのは危険な気がした。しかし……それでも……この『魔獣使いの塔』を攻略して……元の世界に帰る為には、この『悪魔公の魔城』を突破しなければならない。俺はリゼルが田中の身体を奪った理由を知りたい気持ちもあるが……。俺は佐藤を救う事を最優先したいと思った。だから……『魔大魔境』を攻略する前に……佐藤を救出することを優先しようと心に決めたのだった。

(俺は、今目の前にいる大魔道士であり……この世界の『魔王』でもある『大魔道士リゼル』と、『大魔王』になってしまった大魔道士の田中の事を、救う為に必要な準備を整える為に一旦、地上に降り立ったのだ。この城の内部は『悪魔公の魔城内部地図(魔素変換)』によってある程度、理解出来たが……。外の様子が全くわからない状況で、俺達がリゼルを倒しにこの魔城の攻略を始める事を……リゼリオンと魔導士達は反対したが……俺はどうしてもこの魔城に行かないと……俺が元の世界の自分の肉体に戻る為にも……。『勇者』の称号を持つ俺の本来の使命を果たす為にも、この迷宮を進む必要はあるのだ。)

俺が魔族の国『悪魔公の魔城内部地図(魔素変換)』を見ている間も……。魔導兵器は俺達に襲い掛かってきたが……。その度に、俺は仲間達に指示を出しながら対処していった。

俺は魔導兵と魔物達の相手をしながらも……大図書館で調べ物を続けて行った。すると……驚くべき情報が記載されていたのだ。『悪魔』の階級についてだ。

・『下級』

知性を持たず本能で行動する。『魔人』より劣るが……。高い生命力と戦闘力を持つ。魔獣よりも下位に属する魔物で……その数は多いが、その強さは大きく変わらないのである。

『中級』

『魔獣』と呼ばれる魔物。『魔族』が魔力を用いて生み出す『使い魔』と呼ばれる『眷属』の一種。個体によっては上級の魔物を凌ぐ力を持つこともあるという。

『最上級』

上位種の最上位。知能があり強力な戦闘能力と高度な魔法技術を誇る。また『固有技能』や『特殊能力』を有している者がいる。ただし『神器』『宝具』の類はほとんど存在していない。個体数が少なく、めったに見かける事はないと言われている。

『希少種』

滅多に遭遇できないほど稀少な存在。基本的に強い力を宿しているが……。能力の種類が特殊なものが多い。数が少ないため、あまりその情報も公開されていないので……どのような能力を有するのか判明していないことが多い。

『災害級』

稀に発生する異常な事態により、出現する強大な力を持った化け物たちの総称。

・『危険等級』

その魔物の危険性の度合いを示す基準。

・レベル50~80までの範囲 脅威度5までの強さ

・レベル99まで範囲 超々脅威度のモンスターの危険ランクはレベル10となっている。(魔素変換によると、レベルの数値を『%』で表すのが正しいそうだ。ちなみに魔石の場合はレベルの数値に100分の一の補正値がかかるみたいだが……。)レベル99の場合、レベルは1000となるので……。単純に計算してもレベルは1万ということになるのだが……。実際に戦ってみたらレベルはもっと上だろうと考えている。俺が戦った『大魔鳥』や、先程の『魔狼将軍』のレベルで500以上あるはずなので……。『暗黒騎士』や、先程俺が倒した『悪魔公の近衛騎士団長リゼル』も最低でも200くらいはあるはずだから……合計で3000前後といったところだろうか?そして『魔龍』が、その3倍以上のレベルだと考えると……やはり……。あの大魔将と互角以上の力を持っていると考えた方がいいかもしれない。それにしても……。大魔道士が……『超級』級の魔道具を作る事が出来るなんて信じられなかったのだ。まぁ『超級』といってもピンキリがあるとは思うけどね。そして……俺も魔素に変換した大魔道士の持っていたスキルの解析を行ったのだが……。これは凄すぎる……。『鑑定』の能力で、自分のスキルの詳細を見ることが出来るように設定してみたのだ。『魔素制御能力向上能力』は簡単にいうと、『魔素操作』能力を大幅にアップさせてくれるようだ。さらに……。『魔導式身体強化機能拡張』は、『身体操作補助』の能力を強化してくれて……。身体能力全般の強化や、反射神経の向上など、さまざまな効果が得られるスキルだった。他にも、俺も知らないスキルもいくつかあったが……。これならば、『魔王討伐』も可能だと思ってしまった。

俺は大図書館の資料を元に、大魔道士と大魔王がなぜ対立したのかを検証しながら、『暗黒騎士の剣』の性能を最大限に活用する為の対策も考えておいた。この『魔王』と『大魔獣』の戦いの真相を究明すれば……。きっと……『勇者』として俺にしか出来ない戦い方がわかる筈だと思う。俺はそんな予感がしていた。

(リゼルに俺と同じような方法で元の世界に戻る方法を尋ねる必要がある。そうしないと……俺がこの世界に呼ばれた理由が解明できないし……。それに……この世界から脱出する為にリゼルの協力が必要になる可能性が高いからだ。俺は大魔道士リゼルがどんな人物なのか全くわからないが……。今はリゼルに協力を要請しなくてはならない状況なのだから……。俺がリゼルを倒すわけにはいかないのだよ。)

それから……。魔族の国では……。魔道文明が発達しているらしいのだが……。その中でも……この『悪魔公の魔城』の地下は別格だという記述がされていた。俺も気になって『地図検索アプリ』で調べてみると……なんと……この城の中には『地下空間ダンジョン』が存在することがわかったのだ。俺は『地図化』の能力を使って、この城の詳細な地図を表示すると……。確かに……『魔王の館』と表示された場所が存在している事が確認できた。その地図を見ても……その『魔王の館』には『魔素溜まり』のような空間があって、そこに『魔王』が封印されている事がわかったのだ。つまり……『暗黒魔王』が復活する為の生贄は……この城で作られている事になるのだ。

(魔族の中でも……。『魔素耐性の高い人間』と『大魔獣』から採取した血液が捧げられて……この『魔王の館』が『魔王』の復活に利用しているということだ。だから……。リゼルはこの魔城を根城にしていたということらしい。でも……どうして……。大魔道士であるリゼルが自らの手で魔王を復活させようとしなかったのだろうか?大魔道士が……わざわざ魔王を復活させる為に自ら行動しない理由が全くわからなかった。

リゼルの目的は……。俺と同じく元の世界に帰って平和に暮らしたいという想いからの行動だったから……復活させるなら自分でやるべきだという気持ちが強かったのかもしれない。ただ……俺がリゼルと戦うことになれば……。おそらくリゼルに勝ち目はない。それどころか……俺との戦いで、リゼルが大怪我を負うような事態になってしまうと……。最悪、この世界で生き続けることが出来なくなる可能性も十分に考えられる。リゼルがこの世界を創ったのだとすると……この世界のルールに従うしか生き残る方法はないのかもしれない。俺は、そんな風に考えると……。ますますリゼルを敵に回してはいけない存在になってしまったと思う。しかし……。そうなれば……この魔道士の塔にあるというリゼルが作った『迷宮』を攻略して……。この魔城から抜け出さないといけないという事だけは理解出来た。)

それから俺は大魔道士が、リゼルとの戦いで『魔道王の指輪』という魔道具を使っていた記述を見つけた。俺もこの指輪でステータスを強化する事ができると思ったので、この『悪魔公の魔城』の中で入手する方法を探し回った。でも残念ながら見つからなかったので……。『魔石吸収(魔素変換)」を発動して……魔石から吸収した魔力で強化する事に成功した。これで、なんとかなるだろうと少し安心したので……。俺は魔族の国で、リゼリオンと仲間達を『悪魔王』や『魔神公』に任せてから……俺は『悪魔騎士』や『悪魔公』を連れて、この『悪魔公の迷宮』を進み始めたのだ。俺達は、ひたすら階段を下っていく。俺が先頭に立ち、その後ろを仲間達が歩いていく形で……。この城の中に魔物がいないことを祈りながら、どんどん降りていった。そして……。地下三階の一番下まで降りると、巨大な広間に到着した。そこには……今まで見たこともないような魔物が、大量にひしめいていたのだ。しかも……その魔物達は全て、赤い色をした肌と角を持っていた。

どう見ても……普通の魔物ではないのだ。大魔将の配下の魔物達に間違いなかった。大魔道士の命令で……この城を守っていたのかもしれないが……。とにかく、魔物達はこちらに向けて襲い掛かってきた。まず……『悪魔公親衛隊』達が、その攻撃を防いでくれたが……。それでも……。数が多すぎた。そして……この『悪魔の迷宮』の難易度の高さが理解できてきたのだ。大魔王は……大魔道士を自分の手中に収める為に、あえて『魔素濃度の異常高い迷宮』を作り上げていたのだ。

それから……魔物達との戦いがしばらく続く事になったが……。徐々に数を減らしながらも……。確実に魔物の数を減らすことに成功したのである。そうして……。残り数体というところまで追い込んだのだが……。最後の一匹を倒すのにかなりの時間がかかってしまった。俺達の身体にも傷がかなり増えてきていたので……。一旦地上に撤退することにしたのである。

(『超聖魔法・極女神転生の法』で田中と俺は大魔道士から授かった『神級治癒能力』のおかげでほぼ完治しているが……。みんなはそうはいかなかったからね。このままの状態で進むのはかなり危険だったから……。ここはいったん戻って体制を立て直す事に決めたのだ。俺達の今のレベルでも……この『超魔迷宮』を突破するのは難しいかもしれない……。やはり……リゼルが言っていたように、レベルを上げて強くなる必要があるみたいだ。まぁ大魔女を倒せばレベルを上げることが出来るだろうけど……。それまで、この階層を何度も探索してレベルを上げることにしよう。そして……。いつか……『超魔迷宮』を攻略できるくらいの戦力を整えればいいだけだ。)

「皆……。地上まで戻ろう……。ここにいる敵を倒しきれないようだと……。先に進む事は不可能だ。それに……」「私も旦那様の考えに賛成です。ここまでの強さをもつ魔物達がまだ残っているとなると、他の場所でもこのような強い魔物が現れる可能性があると思います。それに……まだ見ぬ敵の事も考えておく必要もあると思います。」

ルミナスも俺と同じ事を思っていたようだ。確かに……レベル50以上の敵が出現する可能性があるとしたら……。ここでレベル上げをしている時間的余裕もないといえるのだ。俺達は急いで階段の方に向かったのだが……。その時だった……。突然、背後から攻撃されて吹き飛ばされてしまった。そして……その衝撃で倒れたまま動かなくなってしまったのだ。俺は意識を失う前に……。その攻撃の正体を確認したが…… 俺を吹き飛ばした相手は……全身を黒い鎧に身を包んだ……騎士だった。

その騎士を見た時……。俺はなぜか恐怖を感じてしまった。俺は慌てて立ち上がったのだが……。体が痺れて思うように動かすことが出来なかった。

そんな状態の俺の前にいた騎士が……。

兜を脱いだ。その顔は俺のよく知っている人物だった。それは……俺の元恋人だった少女だったのだから……。

俺は……元カノを目の前にして……。なぜ元カノがこんなところで戦っているのか分からなかったのだ。そして……元カレの視線は冷たくて……俺に対して憎悪がこもっていたのが感じられた。そんな状態で俺は……この場で戦うことになったのであった。

俺は……元カノの『暗黒の騎士姫』(暗黒騎士の女性版)をみて……。驚いてしまった。俺はこの女性に全く心当たりがなかったのだ。それに……元カノは俺と別れた時にはまだ中学生だったはずだから……この世界にくる前のはずなのに……。それに俺には……こんな凄そうな剣も装備してないし……。そもそも、俺には元カノと別れるような原因はなかったはずだ。

(どうして……。元カノが……。この世界に来ていて……こんな危険な『迷宮』にいるんだよ……。まさか……この世界に来るときに……。あの魔族達に襲われたのかな……。俺と同じように元の世界からこの世界に呼ばれているなら……。可能性はあるかもしれない。それとも……。『魔王討伐』にでも駆り出されたのだろうか……。元カレとして俺にできることなんて何もないが……。とりあえず……元の世界に戻る方法が分かれば……。俺は帰るべきだと思うし……。この世界で幸せになれるとは思えないからな……。俺が助けるべき人って言うのは……。本当に俺を必要としてくれている人だけだと思うから……。でも……どうやって……元カノを説得したらいいのだろうか……。それに……。もしかしたら、この世界には……リゼルがいるかもしれない……。それならば……俺とリゼルで話し合う必要があるかもしれない。でも……。リゼルと話をしたら……元の世界に帰れと言われそうな気がするんだけど……。そんな話の流れにならないことを祈るしかないのかもしれんが……。もし、そんな流れになったとしても……。この世界で生きていると、命がいくつあっても足りない状況になりそうだ。そうなると……『大魔迷宮』を攻略するよりは、元の世界の安全なところに逃げた方が無難だ。)

俺は、元カレの剣を大盾で受け止めながら……。必死で思考していた。

(俺の力じゃ勝てない事はわかりきっていたが……。それでも……やるしか選択肢はない……。俺はリゼルから貰った『魔道王の指輪』と、『勇者の聖剣』を取り出した。それから、俺はステータスを全開にしてステータスアップ系のアイテムで一気に強化してから『超魔剣士』にクラスチェンジをして『極大剣術』を使った。それでなんとか互角の状況に持ち込むことが出来たが……。俺と互角の力を持つということは……。この元カノは、ステータス的には……リゼルに近い力をもっている可能性が高いのだ。だから……。今は全力でこの場を逃げることが最善策だと俺の勘が言っている。)

(俺は『超高速移動術』を使い……。俺のスキルの中でも一番のスピードを出す事が出来る。俺は、リゼルと田中が作った最強のスキルの一つである……『時空魔法』『超光速飛行』と……理奈ちゃんと作った最強の技の一つの……『神速の縮地法』を同時に発動した。これで……俺は誰にも認識されなくなるはずだ……。

そして……。俺はこの広間を抜けていくことに成功した。

しかし……広間の出口では……。『黒翼の堕天使公』の二人が待ち受けていて……。俺に攻撃を仕掛けてきたのだ。俺は咄嵯に大剣を出して、大魔道士から授かった固有技能を使って、その攻撃を弾く事に成功した。だが……。その攻撃は、俺にとっては予想外の出来事であり……。完全に予想外過ぎて回避することもできずにいたのだ。その攻撃を弾けた理由は……。『暗黒の神剣』という武器の特殊効果のおかげだと思った。この『聖剣』と対になっていると思われる『魔剣』であるのだが……。どうやら、『魔』がつく物であればどんなものでも斬りつけることが出来るらしい。ただ……。相手が魔法で防ぐことは可能だし……。特殊な防御魔法や耐性を持っていない限り、斬る事ができるのは確かではあるが……。それでも……『暗黒騎士』と対等に戦う事ができるのはこの『聖魔刀・暗黒公光闇』だけだったので……。その特殊能力が役にたったようだ。俺はそのまま二人の攻撃を全てかわした。そして……俺が攻撃する事が出来ないようなタイミングを見計らったかのように……。背後からの攻撃があり……。

またも吹き飛ばされてしまうのであった。

そして……地面に倒れる寸前だったが……。

ルミナスが……

『絶対障壁』を張り、 なんとか助かった。

俺はすぐに立ち上がることができた。

ただ……今の俺の力では……。

この二人を相手にすると分が悪いと判断した。

そこで……。

一旦撤退することに決めて、階段に向けて逃げようとしたが……。今度は……大鬼族の精鋭達が俺の前に立ちふさがっていた。俺はすぐに、大魔道士が作り出した魔物達は……『超魔戦士』のように大鬼族の上位種というわけではないと思っていたが……。それでも……。その強さが普通の鬼よりも数段強いことを感じていたのだ。

(やはり……大魔王の城の『迷宮』を守る『超魔騎士』と『暗黒魔騎士』が特別だっただけで……。通常の大鬼達は、大魔道士の命令に従っているだけのようだった。)

それからは、とにかく……階段に向かって走って逃げたのだが……。それでも、俺の後を追いかけてきて攻撃をしてくるのだ。だから…… 俺は仕方がなく……。この場で戦う選択をすることにした。まず……。ルミナスにこの階に残るように頼んで……俺は『大魔道士・大魔将』と戦った時に覚えていた魔法を使うことにした。この『聖魔弓』とセットになっていた魔法『天魔矢』は、この世界にあるすべての『聖なる魔力』と『闇の魔力』を融合させて放つことができる。しかも……一度使うと24時間は再使用不可という欠点があるのだが……。

今回は……『大魔騎士』の特殊能力によって生み出された『邪悪なる存在』達だったので、俺の魔法が通用すると考えたのだ。それに、この『魔弓術式・魔砲乱舞』が通用しない相手には……『天魔波撃』か『暗黒波動』で戦うことにしようと思っていたのだ。この『暗黒の城・第5階層のボス』と『暗黒の鎧騎士』達は、俺と『大魔導師』との一騎討ちの時に倒したはずの奴らが復活しているみたいだった。それに……。『魔槍使い』も……普通に復活していたので、俺も倒すために本気で倒さないとダメな状況だった。だから……。俺も最初から全力で攻撃する事にした。

(今の状態では……。『魔導王の魔剣』の力を最大限に発揮できないが……。この階にこれ以上長居は危険だから……。仕方がない。この階には転移系の部屋もないみたいだから……一つづつ回って探すしかないだろう……。この『迷宮』の構造が、前に来たときとは全然違うので……。かなり迷うかもしれないが……仕方がない。最悪は『時の迷宮』に戻ろう……。でも……。『魔王城』で『迷宮』から出る為の鍵を探す方がいいのかもしれないな……。あそこにいけば……何かヒントになるものがあるかもしれないからな。でも……今は……。元カノを倒す事が最優先だからな……。

俺だってこんなところで死にたくないから……。)

俺はそう考えながら戦っているうちに……。気がついたときには……。元カノが消えていたのだ。元カノが消える瞬間を見て、おそらく時間を止められたのだとわかったのだ。でも……。なんで……。

「太郎さん!!私達を置いてどこにいこうとしているんですか? 私はもう絶対に離れませんよ!!」

「ご主人様が私の事を嫌いになったのかと思ってしまいました。」

俺の後ろにいたリリとアリスが、俺に話しかけてくるのだった。

「あっ……ああ。俺は別にリリやアリスのことを嫌いになったりはしていないぞ。ちょっと用事があるだけだ。俺はこの世界で……元の世界に帰る手段を見つけないといけないんだよ。だから……少し待っていてくれ。リリとアリスの気持ちはよくわかっているつもりだよ。本当に俺と一緒にいたいって思ってくれる事は凄く嬉しいんだよ。

でもさ……。元の世界で待っている家族もいるし、俺は元の世界での生活がすごく大事なんだ。俺にとって大切な人達がいるんだよ。」

俺がリリとアリスを落ち着かせようとしているときに、突然声をかけられたのだ。それは、『黒翼の堕天使公』の一人だった。俺は反射的に攻撃してしまったのだ。俺は急いでリリ達のもとに行き、『神速移動術』を発動した。そして……なんとかリリと『勇者達』を守りながら『魔王の玉座の間』へと戻る事に成功したのである。俺の頭の中には『魔王』の眷属達の会話の一部始終が聞こえてきていたが……俺はリリ達を守るために必死だったため……リリ達以外の人物と話す余裕がなかったのだ。だから……その言葉は無視した形になっている。そして……。俺達の姿を見たアリアが……

『魔王』の眷属の言葉を代弁するかのような発言をしたのである。そして、そのあと……

『勇者』達にもリリの正しさが伝わり……この場は何とか収まることになるのであった。

俺が……この世界に呼ばれている理由と、元の世界に戻りたいと思っていることを説明すると……リゼルは複雑な表情を浮かべているのであった。

俺は、そんな顔を見ながら……

『黒翼の堕天使公』達に質問をすることにした。

(元カノがいるから……。あんまり話をするつもりはなかったけど……。俺の力じゃ勝てないから……。ここは情報を得るべきだから……仕方ない。それに……『暗黒の城』にいる間は、大魔道士と戦う事もないだろうから……。)俺はリゼルに問いかけた。

(俺と田中の体は元々一つだと言う事は知っていると思うが……。俺達が大魔王に負けた後……。リゼル達が封印したんじゃないのか?)

(そうだ……。だが……リゼル達が封印する前に……すでにお前とリゼルは一体化していたはずだが……。)

(どういう事だ!? そもそも俺はこの世界では、人間として生きているはずじゃなかったのか? それに田中も一緒にこの世界に呼ばれたのか? なぜだ……。俺はこの世界には来た記憶はないんだけど……。)

(この世界の創造神である……。リリナと田中が、この世界を救ってほしいと言ってこの世界に召喚されたと聞いている。そして……お前と田中が二人で旅をしながら……。大魔女を倒してくれたはずだが……。その事を忘れてしまったということなのか? まぁ……無理もあるまい……。大魔王が復活して……。あの『魔導師』は力を失い、お前は行方不明になってしまったからな……。それから……数百年が過ぎてしまっている。大魔王も、力を蓄えるために、長い眠りについたようだからな……。それで大魔王が復活した時……。『暗黒騎士』は復活したようだが……他の魔王は……。まだ復活していないからな……。その関係で……。お前達はこの『魔の城』で……。しばらく暮らしてくれればいいと思っていたから……今まで言わなかったが……。)

(ちょっと待ってくれ……。それだと話が変わってくる……。まず……。どうして俺と『超魔騎士』が、大魔道士を倒した後に大魔道士が復活しているんだ……。)

(それは……。リリアの身体を使って『暗黒の神器』が蘇ったせいだ。『暗黒の神剣』は、一度折れてしまっても、所有者の肉体さえ無事であれば再生することが出来るらしいからな……。だから、この世界にある『暗黒剣・闇光闇夜』も、折れていても、その刃が復活しているだろう。つまり……その状態で大魔女が復活しても、大魔王の力は戻らなかった。なぜならば……。『超魔騎士』が持っていた大魔剣『暗黒の大剣』も折れてしまい……。リゼルとリリアによって復活されていたからな……。だから……大魔道士がこの世界で復活することが出来たということだ。それに大魔道士は、リゼルに封印された後……。お前の事を探していたが……。結局……見つからずにいたようだ。大魔道士が大魔剣『聖魔大剣』を復活させてから大魔王と戦おうとしていた時に……。『魔王』の眷属の一人である……。大魔道士の配下に裏切られて……。『魔の森』の結界の中に閉じこめられてしまっていたのだ。しかし……。そこで大魔道士に『暗黒の使徒』と名乗る者達が現れ……。協力を申し出たみたいだった。

『大魔道士・大魔将』に殺されたはずの……。この『迷宮』の主だった魔物達は……。その者たちの蘇生能力により生き返らされ、リゼル達の仲間になったみたいだった。『大魔将・大魔道士』を殺せばいいと考えていたみたいだった。そこで、この大魔王の『魔導の城』を守っている『超魔将軍・超魔戦士』達と、『魔王軍・魔導士部隊・魔法兵隊長』の四人がこの城にきたみたいだな……。大魔王が復活するのに……十分な時間を稼いだから……大魔王の復活を待っていたようだ。でも……大魔王はまだ復活していなかったが……。)

(なぁ……。大魔道士を封印した後に、大魔騎士の魂はどうなったんだ?)

俺はリゼルに……『魔騎士の亡霊』のことを聞いてみた。

(あれは……元々この世界のものだったのだろう……。この『魔王城』の守りについていたようだ。『魔王』は……。自分と同じ存在を生み出し続ける事ができるらしいからな。それで生み出されたのかもしれない。だが……あいつらの役目は終わったようで、その後、いつの間にかいなくなっていたがな……。おそらく……別の役割を与えられているんだろうな……。だから、『暗黒の使徒』と一緒にいるんじゃないかと私は考えている。

でも……。今更何が目的なんだろうね……。

あっ……そういえば……。私が、田中さんを殺したように偽装するために……。『勇者達』を転移させる際に……私の部下の一人を使ったのだけど……それがばれてしまったらしく……。そっちの方にも何か手を打っておかないとダメなようなんだよねぇ……。でも……もう大丈夫だと思うんだけど……。)

「ご主人様!!ご主人様に何かしたら許しませんよ!! 」

「ご主人様!!ご主人様に手を出した人は絶対に容赦しませんから!!」

俺が、大魔王や『暗黒の使徒』達のことを考えていたら、突然後ろからリリとアリスが怒鳴るように声を上げていたのだ。

俺が、その声にビックリして、リリ達の方を見ると、リリとアリスの瞳の色が赤く輝いていたのだった。俺はすぐに……その事を指摘をする。

(おいっ!!お前ら落ち着けよ……。今は戦いの最中だぞ……。今は俺の事を心配してくれているのはわかっている。だが、リリとアリスは……。もう少し冷静になるんだ。リリとアリスが俺のために戦っているって言うことはよくわかるよ。だからこそ……。今のお前らは……自分のことだけを考える事を優先してくれないか……。俺なら……。俺は……必ず生きて戻ってくる。リリとアリスの元に絶対に戻るつもりだよ。約束するからさ。だから、今は落ち着いてくれないか……。頼むよ……。お前達二人までいなくなったりなんてしないでくれ……。俺は……本当に……。お願いだから……。リリとアリスがいなかった時のことを思い出すと……。胸が張り裂けそうになるんだ……。俺だって辛いんだよ……。だから……リリとアリスの事がすごく心配なんだよ……。俺は……。こんな気持ちにさせてくれるリリとアリスの事が……愛しくてたまらなくなっているんだよ……。だから……。俺を信じて……任せてほしい……。そして俺を助けて欲しい……。リリとアリスがいない世界で生きることが……。俺にとって一番辛いことになるから……。俺の願いをかなえると思って……。リリとアリスに守って欲しいんだよ……。俺は、リリとアリスのことがすごく大切なんだ……。だから……。)

俺は心を込めて、真剣に思いを伝えたのだ。すると、リリは泣き出してしまった。

そして、その横では…… 俺の言葉を聞いていたアリスも泣いていたのである。

(リリとアリスには俺の考えを伝えていなかったけど……本当は……。俺の大切な人達がいるこの世界を救いたいと思っているんだ……。それに……。元の世界に帰ってからも……大切な家族達がいる。そんな人たちを見捨てることなんか出来るはずがないじゃないか……。)

俺の本心を理解したのか……。リリとアリスは涙目になりながら……。落ち着きを取り戻してくれた。そのタイミングで……俺の後ろに控えてくれていた田中が話を始めた。

(大魔王が復活したのならば……。やはり、勇者である僕も一緒に戦った方がいいんじゃないでしょうか? 僕は『超魔騎士』を仲間にしているわけですから、戦力として考えれば、役に立つと思いますけど……。)

(うーん……。まぁ、そうなんだけどな……。俺達が大魔王と戦った時は……。俺は『聖魔剣』を使っていたんだけど……。あの武器は、折れてしまっているからな……。それに……。『聖騎士の加護』がある俺でさえ、『暗黒剣・闇光闇夜』を持つ大魔道士に勝てるとは思わないからな……。正直、大魔道士に勝つためには、『魔王の聖槍』が必要だと思うんだ。でも、それはこの『魔の城』にあるはずもない……。)

田中が質問をして来たため、俺は田中に答える。

田中の言っていることも理解できないわけではない。確かに、田中が『超魔騎士』である事を考えると……。強力な攻撃ができる事は間違いないと思う。だが……相手が悪すぎるのだ。

そもそも……俺は、大魔王と戦う前に『聖騎士』であるリゼルと戦っているのだ。あの時……リゼルの『神装武具』である……。『暗黒の大盾』の攻撃を受けても無傷だったのだ。

つまり……。あの盾も……この世界のものでない事は明白である。この世界にない技術が使われているはずだから……。この世界の理を超えた存在なのであろうと思う。

さらに、リゼルの使っていた『神装兵器』の大魔剣は、その見た目から想像が付かないほどの切れ味を持っていた。その威力も尋常ではなかったのだ。つまり……『暗黒の大剣』は、『神器級』の大魔剣なのだと思う。

この世界で『勇者』が、大魔道士と戦い……。その『超魔剣』を破壊してしまったために、大魔道士は……。自分の持っていた最強の武器であったはずの『魔大剣』を手に入れて……。その力でこの世界を支配しようとしたのではないだろうかと考えている。大魔王を復活させようとしていたみたいだし……。おそらくそうだと思われる。

『魔剣・闇光闇夜』は……この世界で作られたものなのか……。もしくは……。別の世界で作られた可能性もある。なぜなら……この世界の物質でできたものではないからだ。その証拠に、大魔王は、『超魔剣・闇光闇夜』を使うことが出来たみたいだったからな……。大魔王の持っていた『魔導具』も見たことがないようなものばかりだから……。この世界にはない物だと考えてもいいだろうからな……。

大魔王は……復活と同時に『聖魔剣』の力を奪い取ったようだから……。その力さえあれば、俺達に対抗できるかもしれないな……。でも……。今は無理だ……。大魔王の力を取り戻す時間を稼ぐ必要がある。大魔王の力を奪うための時間が足りなさすぎる……。それに……。俺の仲間たちは全員無事なのだろうか……。みんな……。無事に逃げているといいんだがな……。大魔道士や『暗黒の騎士』達がこの『魔の森』にまだいたみたいだったから……その辺の奴らも襲ってくる可能性はあるだろうな……。俺はこの『魔の森』の地理を完全に把握しているわけではない。だから、どこに逃げたらいいのかわからなかったんだ……。だから俺はリリとアリスを頼る事にしたんだ。

『迷宮』は……『大魔城』があった場所は『大魔道士』達によって破壊されてしまい……。今は瓦礫の山となっているだろう……。

『迷宮の魔獣達』の魂を封印していた場所に行けば、『大迷宮の宝箱のカギ』を手に入れることが出来る。それを開けば、『大魔王の加護の証』が手に入れることができるかもしれない。俺はそう考えて、そこに向かっている最中なんだ。そこでなら、何か手がかりが見つかるかもしれない。俺は……そう考えた。そして……。その場所を探索する時に……。俺は……『大魔王』と対峙しなければならない。俺が『暗黒騎士』を倒せなかった以上、今のままでは、俺は負けてしまうだろう。だからこそ……。俺は……大魔王を倒すための手段を見つけ出す必要があった。そのための時間が必要だということだ。だから俺は……田中に「悪いが……。俺達は今から大魔道士達のいる場所に行く予定なんだよ……。

そして……そこには『暗黒の騎士』や大魔道士がいる可能性が高いから……。」と言うと、田中が「僕もその場所に案内してもらえませんか?」と言ってきたのだ。

俺が、田中に、「えっ?どうして……『大魔王』を倒しにいかないのか……とか聞かないのか?」と尋ねると……

「はい……。僕は、あなたを信じる事に決めましたからね……。僕はあなたの配下になって、あなたと共に戦うことを決めたのですから……。だから僕は、あなたについていきます。ただ、それとは別に僕は、自分が『勇者』である限り、人々を守るために戦い続けないといけないと思っているんですよ。そして、それが、僕の『正義』であり、信念なのですから。だから……大魔道士や『暗黒騎士』達が人々を虐げようとしているならば、僕が止めなければなりませんから……。

それと、これは……大した根拠もない勘のような感覚なんですけど……。『魔族』の中に……この世界を守ろうとしている者がいるような気がするんです。ですから……。僕がやるべきことって……。多分、そちらの方だと思いますし……。もし、違ったら、その時は改めて……『暗黒騎士』達と戦うつもりです。」

俺は、田中の言葉を聞き、感心していた。俺の考えは……間違っていないようだと思った。

『正義の爪痕』(今は俺がリーダーだけど……。まぁ、今は田中が俺達のリーダーでもあるんだけどな。)の中には、元の世界から無理やり召喚されて……。奴隷にされたりして、人間不信になってしまった者達が多い。だから……。『正義の爪跡』に所属している者は……基本的に善人しかいなかった。しかし、この世界に来た当初……田中はまだ自分の中の感情をコントロールできずにいて……。自分の感情のまま、暴れまわった事もあった。その田中が……。自分から……戦いに望むようになったことは素晴らしい事だと思っていた。

俺は……田中の目を見て、俺と一緒に来ることを許可した。

俺は田中を連れて……『魔の森』の中心部を目指して進んでいたのである。

俺と田中が……『魔の森』の中心に向かおうとしていた時だった……。突然、後ろで誰かに呼ばれた。

俺はその声に反応すると……。そこには、理奈ちゃんとリリとアリスがいたのだ。俺は……田中を待たせて、理奈ちゃんの元に駆け寄って行ったのである。

(お兄ちゃん!心配していたんだよ……。良かった……。生きてて……。私もすごく心配していて、ずっと泣いていたんだよ……。それに……。お姉ちゃんが……すごく心配してくれていて……。)

(理奈ちゃん!!俺が……死んだって思い込んでいたから……。そんなにも泣いてくれていたのか……。ごめんよ……。本当にごめんなさい。俺だって……死にたくなんかないんだよ……。でも……俺は、『魔剣王』『超魔騎士』『暗黒騎士』達には絶対に勝てないんだ……。それは……君達もよく知っているだろう?あいつらがこの世界で最強なはずなのに……俺が負けたんだからな……。だから、理奈さんと田中君をこの世界に連れて来たかったんだけど……。)

(私は大丈夫だよ……。私がこの世界にいる事で……。少しでも……。お父さんやお母さんの心の支えになれているみたいだし……。この世界で頑張ることに決めたの。それに……。私も……。もっと強くなる必要があるから……。)

(そうだな……。俺は理奈さんの気持ちがよくわかる。俺はこの世界の生まれだからな……。家族や知り合いがたくさんいたから……。この世界で戦えるだけ戦わなきゃならないと思う。)

(うーん……。そうですね……。確かにそうなのかもしれません。この世界で頑張った先に……。本当の『正義の味方』が存在する気がするから……それで十分ですよね。)

(ははは……。そういう意味だと俺の言ってることがおかしいかもしれないけど……。まぁ、俺が言えるのはこれくらいかな……。あとは田中と話し合ってくれるとありがたいんだがな……。)

俺は理奈ちゃんが前向きな発言をしたので安心した。そして、俺は、田中の方に振り返り……事情を説明したのである。

俺は……田中に、今の会話の中で気になった部分がある事を尋ねた。それは……理奈ちゃんと理沙の事であった。

「お前達ってさぁ……。まさかとは思うんだが……。」

俺がそう言うと……。二人は顔を見合わせて微笑んだのだ。

そして……俺の前にいる二人が……。俺に向かって抱きついてきたため……俺は、二人を抱きしめながら、話を聞く事にしたのだった。二人の話を総合した結果……。理亜ちゃんと理奈ちゃんの二人が俺の仲間になる事が決定したのである。もちろん、本人たちの了承を得てであるのだがな……。理恵も一緒に仲間入りする事を希望したが……。それは断るしかなかった。なぜなら……理恵は、俺達が元の世界に帰っても生きていく事ができるからである。この世界で、生きていく事が出来ないからだ。俺は……そのことを伝えると……残念そうではあったが納得してくれたのだった。

俺は……理奈ちゃんに、『魔の森』の外に出る魔法を使えるようにするため……理菜に魔法の使い方を教えるように命じたのである。

「うん。わかったよ。私も少しづつ覚えていっているから……。この子達に教えても大丈夫だと思うんだよね……。まだこの世界では習っていないだろうし……。」

俺は、そう言いながら、『魔獣使い』のスキルを発動させている理奈を見た。そして……その後すぐに、理那ちゃんに「その魔獣達も連れてきてもらえるか?」と聞くと……

「はい……。いいですか?」

「あぁ……。いいぞ……。その方が戦力にもなるからな……。よろしく頼む。じゃあ……。早速行こうか……。」

「はい!」

こうして……俺達は『聖都』に戻ることになったのであった。

『大迷宮』の入り口があったはずの場所に着くまでにかなりの時間が掛かってしまったが……。俺達は何とか『聖城』にたどり着いたのだった。そこには……。俺達が予想していた通りに、多くの兵士と『聖騎士』と、『剣豪』達が集まっていた。どうやら……『大魔王軍』が『聖騎士』、『剣豪』、『賢者』、『魔道師』達と戦って……敗走してきたようだ。しかも……『大迷宮』が破壊されてしまい……大迷宮の中に封印されていた『魔獣達』の封印が解かれてしまっているらしい。

俺は……大魔王の『勇者の力』で、『大迷宮』の入口まで移動する。そこには、大量の『魔獣』が溢れかえっていて……。その中心に大魔王がいた。

そして……俺達の方を向くと……いきなり攻撃をしかけて来たのだ。

大魔王の攻撃に対して……俺は『聖槍術』を発動させて……。

俺達の周囲にいる兵士達や、『聖騎士』、『剣豪』達には攻撃が当たらないようにした。しかし……大魔王の攻撃を受けただけで……。大ダメージを受けてしまうほどの威力を持っていたのだ。大魔王にやられた兵士達が、俺に向かって叫んでくるが……俺は、「心配するな!!」と叫んだ後……。大魔王に向けて『究極女神転生の法・発動』をかけた。そして……大魔神が俺の目の前に現れると……。俺に、「お前に勝ち目などないのだから……。今すぐ降参しろ。今なら命だけは助けてやる……。今のうちに……逃げろ!!!今のうちだぞ!!」と言ってきたので……。俺は……。

「悪いが、それは無理な相談だな……。俺がここに来た理由は……。お前を倒しに来たのではないからな……。」

と俺が言った後に大魔王を見ると……。大魔王は、俺の方を向いてニヤリと笑い出したのだ。

大魔王は……『暗黒剣』を召喚すると……。その『暗黒剣』を自分の胸にあてたのである。次の瞬間、大魔王の身体を包み込んだ黒いオーラのようなものが……そのまま、『魔剣王』・『暗黒騎士』に吸収されていったのである。それと同時に、俺がかけた『聖槍術』の効果も打ち消されたのだ。俺はすぐに……『大魔導神杖 セイリュウ』と『セイフウ』を『アイテムボックス』から取り出して……。『聖盾 セイレン』と『超魔導神鎧 スザク』を『アイテムボックス』から取り出し装備したのである。そして……俺は『神聖力』を解放するために『セイクレッドアイ』を発動させたのだった。

『大魔導士』が持っていたと思われる……強力な防御結界の宝具は、完全に破壊されており……『魔剣王』が使っていたような禍々しい魔力の宿った武器を手にしている者や、暗黒の力で肉体強化をしているもの、闇の力を操れるようになった者……などの『暗黒戦士団』の者達が、大魔王の周りにいた。その中には『魔人族』がいて……『暗黒騎士』が進化した姿と思われる者もいた。その者達のステータスを確認したところ……全員の『暗黒化』が進行していることがわかったのである。その者達を見て俺は思った……。やはり……。あの女も『暗黒騎士』の『ダークエンペラー』と同じで……大魔王に魂を売り渡して……『闇人』として、この世界を混沌と破滅に導きたいと願う存在になってしまったのかと……俺は怒りを感じたのだった。

俺は……まず、『大魔剣 ライキリ』を『時空龍の空間庫』の中から取り出すと……

『次元斬』を使い……周囲の敵の数を減らすことにした。すると…… 敵側の動きも早くなっていたので……俺は……『聖剣 エクセリシオン』と『聖剣 グランディオス』を取り出そうかどうか考えていた。すると……。『聖剣 エクセリシオン』が俺に向かって語り掛けてきたのである。

(久しぶりじゃな……。主様よ。わしを呼び出してくれて嬉しいのぉ。それにしても、また随分な強者を仲間にしたんじゃな……。)

「おっ!お前は、『エクセルシオの剣』じゃないか!!お前にはまだ出番がないと思っていたんだがなぁ。」

(ははは……。それはひどいではないか!!わしはいつでもおぬしに呼びかけていたのじゃがなぁ。それを無視して……。全く……困ったものじゃ。まぁ、わしを呼び出せるようになるまで強くなる必要があると思ってのことなのじゃろうから……許すとするか……。)

「はは……。すまないな……。それより、この前の戦いで折れてしまっただろう?大丈夫なのか?」

(ふっ……その程度のことで壊れるぐらい柔ではないわ!!この世界の人間達の強さに比べれば……そんなものは微々たるものだからのぉ。まだまだ戦えるわい!!さあ、わしを使うがよいぞ!!!)

俺と、『エクセリオの聖剣』との意思の疎通を終えると…… 俺は『エクスカリバー』を『時の世界の書』に戻してから『聖剣 グラディアトール』を取り出した。この世界は、ゲームのような世界で……俺も最初はゲームのようだと思ったから……この名前にしたのだ。それに……。この世界に来る前にも……俺と理沙は……理樹達と一緒に冒険をしてたからなぁ。まぁ、理沙は、『理恵の双子の妹・理香』としてだがな。俺はこの世界で、理沙に会ってからは……もう元の世界に帰りたいなんて言わなかったしな……。それに……理沙も俺と同じように……『聖奈(せいな)

光輝(こうき)』に会えて……喜んでもいたんだよな……。俺はそう考えながら、『聖槍ゲイボルグ』『聖盾 トリリアント』をアイテムボックスから取り出して装備した。

俺は……理奈ちゃんと、理菜の二人が理那ちゃんから離れて攻撃しやすい場所に移動した事を確認すると……。すぐに攻撃に移った。『大魔弓 ユイ』を取り出すと……。矢を番えた。俺は、『大魔槍 ハルマゲドン』も『大魔槍 ラグネル』も使わずに、『聖剣 エクセリオン』と『聖剣 グランドクロス』で攻撃を開始したのである。

大魔王は……『大魔王の大楯 サタンシールド』で攻撃を防御してきた。その時に……俺に話しかけてきたのだった。

「貴様が……私に勝つことなど絶対にありえないのだぞ。なぜ、そこまで、頑張る必要があるのだ!?お前の大事な物を守るだけならそれで十分であろう。」

俺は大魔王に向かって、言い返した。

「悪いが……お前の言う通りにする気は……俺にはないぞ。それに……お前が俺の大切な家族を傷つけようとした時点で……。すでに……俺は……怒ってはいるけどな……。」

俺の言葉を聞いた大魔王は……俺に攻撃しかけながら……。俺に対して質問を投げかけたのだった。

「貴様に何がわかるというのだ……。お前だって……自分の大切な人が目の前から消えてしまう事を考えた事もないくせに……。」

「あぁ……。俺にもよくわからないが……。確かにお前に共感できる部分はある。だから、同情してやらないわけでもない……。だけどな……。俺は自分の愛する人を守ってやれるくらいには強くなったつもりなんだぜ……。それにな……俺には守るべきものが沢山出来たんだ……。お前にも守らなければいけないものがあるんじゃないか?お前にとって守りたいと思えていたはずのものが……いつの間にか違うものに変わっていることに気付かないか?」

「私が守りたいものだったはずだ。しかし、今では、その者たちの事を私は……殺そうとしていたようだな……。それが、どうしてなのかは……自分でも分からない……。ただ言えることは……。お前と……私の気持ちが、一緒だとは決して思えない。だから……負けるわけにはいかないのだ。」

俺は、『超女神の慈愛の心』・『全能力限界突破』・『神速回復』・『神の癒しの光』・『聖なる加護』・『天使降臨』・『神魔解放』・『覇王竜闘気』・『神龍波動』・『真龍撃』・『極大魔導波』を『究極女神転生』・『大魔道神術』・『神術』を全て使用して……さらに……『セイントナイト』・『セイントプリンセス』・『セイントビショップ』・『セイントプリンス』・『セイントルーク』・『セイントジャック』・『セイントクィーン』・『セイントキング』・『セイントエース』・『セイントキング』・『セイントキング』・『セイントクィーン』・『セイントクイーン』・『セイントジャック』をそれぞれ3回ずつ使ったのだった。その結果、大魔王が発動させたスキルや、大魔王の『究極闇魔術 ブラックゲート』と『究極魔法 デスダークホール』の合体攻撃は……。全て相殺され……俺の攻撃は全て防がれてしまった。大魔王は、大技を放つために俺と距離をとったが……。

その瞬間を狙っていたかのように……。俺は大魔王に接近した。そして……大魔王が、次の大魔法の詠唱を始めようとしていたので……俺は、そのまま大魔王の懐に入り込むと……。俺の渾身の拳の一撃で……大魔王を遥か彼方へと殴り飛ばしたのである。しかし、その直後……。俺が大魔王を殴り飛ばしてできた空間の隙間を利用して、リゼルの身体の中に憑依しているリリアさんが現れたのだ。リリアさんは自分の肉体を取り戻すために来たと言っていたが……。俺は、その前にリリアさんから聞きたかったことがあったので聞いてみたのだった。

俺は……リリアさんに『聖剣エクセリオン』を渡した後……俺の方から大魔王の居場所に近づいて行った。そして、再び大魔王に向かって、俺は『大魔剣 ライキリ』を振り下ろそうとしたのだが……それを止めた者がいたのである。それは……なんと……大魔王ではなく……。『聖魔剣士リゼル』がそこに立っていたのであった。リゼルが持っている大剣が放つオーラを見た感じでは……俺の『ライキリ』より上の存在のようだったので、少し手を抜いて、剣戟を交わしていたが……。途中から……『魔剣グラム』を使って戦ってきたのだった。俺は、『エクセリソード』が言っていたように、『エクセリオン』は、理亜の『エクスカリバー』の進化したものなので……この世界の武器の中でもトップクラスの力を持っていたようだが……。やはり……。大魔王の力を完全に使えるようになっても……。まだ使いこなせるだけの器になっていなかったのかもしれない。まぁ……もともと……『暗黒騎士 ダークロード・デーモン』は理奈ちゃんでさえも、制御できていなかった存在なのだから……そう考える方が自然なのかもしれなかった。俺は『ライキリ』に『次元斬』を使わせて……『暗黒剣 ダークリアスト』を切断させて……消滅させると……。今度は俺の剣の腕と体術のみで戦う事にしたのである。

すると……しばらく戦った後……突然リゼルが膝をついて、苦しみだしたのだった。どうも……リゼルの精神状態はかなり悪くなっていっているみたいだった。すると俺の頭の中で……

「我が名は『時空の神・クロノス=デメテル』である。そなたのおかげで我は、完全にこの世界で実体を持つことができたのだ……。ありがとう。」と言ってくれたのだった。俺は、「いえ……。そんなことは……。俺は俺のやりたいことをやってるだけですから。礼を言う必要はないですよ。それに、この世界の『聖剣 エクセリシオン』の事もよろしくお願いしますね。俺の代わりに……。」と言うと……。『時空神』は……。

(ふふ……。おぬしは……面白い奴じゃな。気に入ったわ。これからもこの世界を頼むぞ……。それから、『聖剣エクセリシオ』の事だが……。わしに任せるが良い。)

「分かりました。じゃあ……後は頼みますよ……。『時空神』様。俺は理奈ちゃん達の所に行きますんで……。」

そう言って、俺は、理奈ちゃんと、理奈ちゃんの近くにいる人達を庇うようにして立ち……理奈ちゃん達に大声で叫んだのだった。

「危ない!!早く逃げてください!!俺が何とか時間を稼ぎますから!!この『大魔王』を倒す方法は……理奈ちゃん達には見つけられなかったみたいですから……。今から俺の全力で倒そうと思います!!」

俺は理奈ちゃん達に対して叫ぶと……大魔王に対して……全力攻撃を開始したのだった。

大魔王が発動した、合体攻撃と、リゼリオンのスキルの合わせ技によって発生した大爆発の後……。俺は……自分の意識を失ったのだった。俺が自分の意思とは無関係に目を覚ました時には……既に、俺の部屋にいたのである。俺が部屋にいる事に驚いてしまったが……理香達が運んできてくれたようだ。そして今の状況を確認する為に周りを見渡すも……特に何かが変わった様子もなかったのだ。俺のステータスを確認するも……。レベルが……『9999』のままになっていた。そして職業も変わっていた。理香から聞いたところによると……

『神獣マスター』・『聖勇者』・『超魔神』・『武の極致』・『大魔道師』・『真なる魔法使い』となっていた。『超魔人化』という、新しいスキルまで習得しているようである。俺は理香が作ってくれていたご飯を食べてから……。すぐに、皆に念話を繋ぐことにしたのである。するとすぐに理奈の返事が聞こえてきた。

俺は早速……理奈に話し掛けた。「あぁ……理那ちゃん。良かったぁ~。大丈夫だった?怪我とかしてなかった?」と心配そうな表情をしながら、聞くと……「はい。私は、全然問題なかったんですけど……。あの……。ごめんなさい……。私のせいで……また……お兄さんに負担をかけてしまって……。私なんて……もう……生きていてはいけな……」と言ったので……俺が「何バカな事言ってるんだ……。」と言い返すと……

「えっ!?」

と驚いたような反応をした。俺は……続けて……「いいか……俺は、理那のことを……迷惑だと思ってることはないぞ……。むしろ……。俺の方こそ……いつも……無理な事をしてるって自覚はあるから……。」と言うと……。

「えっと……。本当に良いのでしょうか……私がこんなにも近くにいても……。私の傍にいることで……。もっと危険な目に合う可能性もありますよ……だから……その……本当に……。私のそばにいても良いんでしょうか……?」と理奈が言うのを聞いた俺は、理亜との約束を思い出していた。

「ああ。俺にとって大切な人が傷つけられることが……耐えられなくなるくらい辛いことなんだ……。だからさ……。理奈は……どんな事があろうと、ずっと俺の側にいてくれないか……。」と言うと……理奈は泣いて喜んでいたが……俺は少し疑問を感じていたのだった。それは……。俺が気絶する前の事を覚えていないのと……リリアさんの声が頭に響いていたからだ。俺はそのことを思い切って聞いてみることにした。

「あのさ……変なことを聞くようだけど……。俺が、この前、リリアさんの所に『大迷宮』を攻略しに行った時……。なんか記憶がない部分があるんだけど……。俺の記憶が無い間……。一体……俺は……何をやっていたんだ……。リリアさんに何かあったのかと……すごく心配になったんだ……。教えてくれないか……。」

俺が、理奈に質問をするも……。

『…………。』……理奈からの返答はなかったのだ。俺は……不思議に思ってもう一度、聞き返してみるも……。やはり答えてはくれなかった。

そして、その後も何度も聞いてみたが……結局のところ……俺の問いに答えてくれることはなかったのだ。俺が……困り果てていると……『時空神』が声をかけてくれた。

(ははは……。お前はやはり、リリナに似ているだけあって、優しい子なんじゃのう……。まぁ、安心せい……。今は、何も思い出せんかもしれんが……。そのうち思い出せるようになるわい。それよりも、おぬしの身体の方は大事ないようじゃが……。まだ、少しダメージが残っているようじゃから……しばらく、ゆっくり寝てるといいわい……。まぁ……『神魔解放(しんまかいほう)』と大魔道神術を使用したのが原因みたいじゃな……。まぁ……大魔王が発動した大技の影響も多少は残っているとは思うが……。)

『時空神』の言葉を聞いて……。俺は、「わかりました。そうします。あと……俺が、意識を失っている間の事は……みんなから詳しく聞かせてもらうとして……。まずは……。理奈と田中君に……。ありがとう。2人のおかげだよ。本当にありがとう……。それから……。これから先……。俺は、『暗黒騎士 ダークロード・デーモン』を倒して、『大魔王』を倒したとしても……しばらくは『時の塔』には戻れないと思うから……。その辺は、リゼルに任せておいて大丈夫だからね。リゼルも俺がいない間は……頑張って欲しい……。」と言うと……理奈は、「わかりました。じゃあ……。私は……。お兄さんが戻って来るまでに少しでも成長出来るように頑張りますね。あっ!そうだ!!お兄さん……これ見てください!!実は、私の『聖剣エクセリシオン』が『エクセリシオン』の新たな進化に成功したんですよ。凄いでしょう。ふふ……。」と言って、『エクセリシオン』を見せてくれた。すると理亜が……。「えぇ〜!!理亜ずるいですよぉ。私だって……。」と言って、自分も、『聖剣エクセリシオン』を見せて対抗していた。それを聞いていた理香も「私も……。理奈ちゃんばかりずるいですよ!!」と言って、『聖剣エクセリシオ』を見せていたのだった。するとそれを見ていたリゼリオンも自分の持っている剣を見せるようにして、3人と会話をしていたのだった。それを見た俺は思わず……

(やっぱり……女の子って剣とかに目がないんだよなぁ……。俺も剣が好きだしさぁ……。いつか俺も剣を作って貰おうかな……?でも……。『聖剣エクセリオン』と『聖剣エクスカリバー』と『聖剣 エクセリシオン』と、理亜ちゃんの『聖なる祝福を受けた剣・聖剣 エクスカリバー』を見ている限り……理沙が言っていたけど……伝説の『エクスカリバー』や『ホーリーカリバー』の力は……。かなり凄いものだったらしいから……。そんなもの作れるのだろうか……?)と考えていたのだった。

リリスの事も心配だったし、俺自身も、ルシフェルと、俺自身の能力について知りたかったので、一旦『光の館』に戻り、色々と試す事にする事にしたのだった。

理「お兄さんは、しばらくお休みされるみたいですね。」

リ「あぁ。そうだな……。仕方ないだろうな……。あんなことがあったしな……。」

※リリアナの『魔人』と化した後の行動を説明する。

*

『勇者の世界』において……大魔王は『時空神』によって封印された後に、 リ「我が名を呼ぶのだ……。『大魔道神 グランドデストロイヤー』」と言って、 大「ふんっ……。久方ぶりだな……大魔道神よ。我が名は…… 大「あーはいはい!!わかった!!もう、お前は『時空神』と呼べばいいだろう!!」

『時空神』に対して、大魔王が突っ込みを入れていたが、大魔王の突っ込んだ内容を聞いた『時空神』は呆れた様子であった。大魔王は『大魔道神 グランドデストロイヤー』のスキルを発現させ、更には『暗黒魔神 ブラックエンペラー』、『大邪竜 ダイモン』と合体させた技を『超魔族 アルティメットデーモンナイト』に対して使用した。その技の効果により……理那と、美波、美奈の身体を乗っ取った大魔王の本体であるリリアナの魂も『大魔王 グランドデストロイヤー リリアナ』へと変化していた。そして、『聖王』も理奈達から分離した後で『暗黒魔神 ブラックエンペラー』へと合体させていたのだった。

その結果……『勇者の王国』での戦いの終盤においては『聖魔融合状態 カオスモード・ダークロード リリアナ・サタン・アルベイン 』となったのである。しかし、それでも……リリアナは大魔王に力及ばず、理奈達の分離が解けてしまい、リリアナは大魔道神のスキルで元の姿に戻ったのである。そして……リリアナが意識を取り戻した時に、大魔道神が理奈達に『時戻しの神法』を行使して元に戻したのだ。

その後、リリアナは理奈達の協力の元、再び意識を失わせることに成功し……『超時空城』に戻っていた。理奈達が元の世界に戻ってきた時は、すでに夜中だったために理奈は、美紗貴に連絡を取ってもらい、家に泊めてもらったのだった。

次の日は、理那は学校で普通に登校した。リリアナは、まだ目が覚めてなかった為に……美波と美奈にお願いして学校に連れてきてもらい……理奈と2人で理那が学校に行っている間は、美波と、一緒に授業を受けていたのだ。ちなみに……今日、美紀が来ていないのは……昨日の『闇』との戦いでダメージを受けてしまったからである。理「あれからどうなったんですか?」

リ「ふっ……。『闇の女神』様は、『時の迷い森』に残してきたわ。『闇の衣』の回収も兼ねて、な……。それに……。この世界と向こうの世界の時間軸が繋がっていない事を利用した時間差攻撃をするつもりだ……。私にも、少し準備する時間が欲しいしな……。」と言う。

(あぁ……『勇者の国』の人達は……リリアナの作戦を知らないんだよね……。この事を……『魔王』と、『魔導士長』には知らせないとな……。)

理「リリアナさんの作戦が成功するように応援しています。頑張ってくださいね。」

リ「ああ。理奈殿に言われずとも……。頑張るさ……。私は『勇者の国』の為にも、な……。ところで……理奈……。リゼルの事だが……。」リリアナが急に真面目な顔をしたので、理奈も真剣にリリアナの話を聞く。リ「理奈の事は信頼しているのだが……やはり……。まだリリナの事が気になってね……。私は……。どうしても……『大迷宮』を抜け出すことは出来ずにいるんだ……。すまないが……私が戻ってくるまで、なんとか頑張ってくれないか……。」

理「えぇ……。お姉ちゃんも心配ですもんねぇ……。わかりました……。でも……絶対に無理しないでくださいね……。」

リ「わかっている……。必ず戻ってくる……。だから……それまで頼むぞ……。」リリアナはそう言って……また眠りについてしまったのだった。

*

(『大迷宮』の中で……リリナさんが言っていた言葉が引っかかっていたけど……お兄さんが戻って来るのを待ってから話そう……。そして……リリナさんとお兄さんを再会させてあげたいな……。うぅ……なんか泣けてきたよ……。)

俺は理沙の頭をポンポンしながら、「よし!頑張ろう!」と言って……リリが案内してくれた場所に転移することにしたのだった。『時の塔』から一番近い村がここから10km先にあるみたいなので、まずはそこに行ってみることにした。

リリは、田中君に俺と離れないように注意を促し……「私からあまり離れると危ないから……。私の手を離さないようにして。」と伝えて手をつなぐと、田中君は嬉しそうにして、俺の側に寄り添ってくれたのだった。

(田中君……可愛いな……。妹ができたみたいだよ……。リゼもそう思ってたみたいだし……。あっ!そうだ!俺は田中君のことをなんて呼んだらいいのか確認していなかったよな……。今更なんだけど……。まぁ、本人に聞けばいいか……。田中君って呼んでもいいのかな?それとも……理亜と同じように名前を呼び捨ての方が嬉しいのかな?う〜ん……。わからないけど……まぁ……本人に任せよう。うん。俺って優柔不断だよな……。でも、いきなり名前を呼び捨てとかハードル高いんだよ……。)と考えているうちに村に着いていた。村は……結構大きな規模があったのでびっくりしてしまった。するとリリが、「ここって、村というより町ね。『始まりの町』に近いかも。」と言ってきた。

それから、村の人に聞いてみる事にした。

すると……宿屋があって宿泊できるということだったので……田中君の事を紹介し、リリスが『賢者』で、リゼリオンは『魔獣使い』になったと説明してから……リリスを宿の部屋で休ませることにして、リリスの体調が落ち着くのを待ちながらリリスの仲間を探す事にしたのだった。そして……『賢者の世界』と『魔人』のことについて説明してから、理那と、リリアナが仲間になったことを伝えた上で、リリに頼んで『賢者』や『魔道士』に詳しい人のところに連れていってもらうことにした。

そして、リリの案内で、『賢者』と『魔人』のことに詳しい人を探そうとリリの案で行動することに決まったのである。

理「あのぉ……。リリアナさんに聞きたいことがあるんですけど……。」と聞くと…… リ「なんだよ……。改まって……。気持ち悪いな……。なんでも聞いてくれ!!」

理「えっとぉ……。『大魔王 ダークネス・ルシフェル・アルベイン 』について教えてほしいんですけど……。」と質問をする。

理「ルシフェルさんっていう『大魔王』が『大魔王』だった頃は『大魔王』はどんな感じだったんですか?」と理沙も興味があるらしく……一緒に聞いていたのである。

リ「そうだな……あいつは傲慢で、我が強い性格をしていたから、部下である私たちも振り回されていたな……。ただなぁ……。私も詳しくは知らんのだ……。リーゼリオンに聞いたほうがわかりやすいかもしれないな……」と言ってくれたので、早速、田中君と一緒に理紗の家に向かい、リーザリオンを呼ぶことにした。そして……すぐに来てくれたリーサは「お久しぶりです。ご主人様!!」と言ってくれた。リリアナとリリのおかげでかなり仲良くなっているようだ。

理「久しぶりだね!!それでさ……理奈の従姉妹の美波ちゃんと、妹の美奈ちゃなの。この子達がリーザの会いたがっていて、紹介してほしいんだって。いいかい?会わせてもらっても?」と言うと、 リ「はい。問題ありません。理奈様の妹なら大歓迎ですよ。もちろん理奈様が認めた方ならば大魔王であろうと、魔帝であろうと構いません。ただし……『闇の巫女』である美波様にだけは気をつけて下さい。彼女は……とても嫉妬深いのです。美波様には、その事をしっかりと忠告しておいて下さい。お願いしますね……。」と真剣な眼差しで訴えかけてきたのだった。

(あぁ……なるほど。やっぱり理奈と美紗貴と美奈は『闇の眷属』なのかな……。だとしたら……。この3人も仲間にした方がいいな……。そして……リーリアに理奈の友達を仲間にする許可を得るのと同時に、リリアナの件でお願いしておいた方が良さそうだな……。)

そう考えて、理奈達にお願いする事にした。

リリアナに『暗黒魔道士 ブラックウィザード リゼル』が『暗黒の女神 カオスヴィーナス』に乗っ取られている可能性があるので、『賢者の世界』に行って、『闇の女神 カオスヴィネジャー』に対抗出来るだけの力をつけてきてくれないかと頼む。

「もし『勇者の王国』がピンチになっても……私がなんとかするから、リリと相談して、美奈達と、『闇の国』に向かって、理奈と、理那に協力してあげて欲しいんだ。」と説明する。

美「うわぁ……。お姉ちゃんと再会か……。私……ちょっと楽しみだよ。わかった!理沙ちゃんと、理那ちゃんと、『闇の王』をなんとか助ければいいのね。お兄さんの頼みなんだもん!私もお兄さんのために頑張ってくるよ!」とやる気を出してくれる。美波も美「うん!理那と、『勇者の王国』を救ってくるよ。お姉ちゃんと再会できて本当に良かった。私は理奈と違って……ずっと一緒に居られなかったから……。寂しかったの……。だから、お兄さんの為に頑張って『闇』を倒してくるね!」と微笑んでくれる。リリは、「うふふ……。2人とも素直ですね……。私からは何も言いますまい……。」と言っていた。そして理那は……「私の為に……。お兄さん……。ありがとうございます。」と嬉しそうな表情をしてくれる。そして俺は「理奈にはリリアナが、理沙にはリリスがいるから、2人が『賢者の世界』に行った後でも安心だよね。だから俺は『勇者の王国』に行こうと思っているんだ。理沙には『勇者の国』が危なくなった時に俺が駆けつける為の力をリリにつけてもらおうと思っている。俺が『勇者の迷宮』を攻略している間に……みんなには強くなってもらいたいと思ってる。どうだろうか?」と言うとリリアナもリゼルも了承してくれたのだった。

俺は、リゼルと話をして、『大迷宮』に入る方法を聞いた。リゼリオンも協力してくれたおかげで……簡単に『大迷宮』に出入りする方法がわかってしまったのだった。俺はリゼルと話を終えて理姫の所に戻ることにした。理「太郎君……。リリさんも『賢者』だって……。すごいねぇ……。」

理沙が感心していたので、俺が、「ああ……。理奈と同じ『聖魔道師』だからね……。『大迷宮』にも入れそうだね。リリアナさんに『大迷宮』に入ってみないか提案をしてみたんだけど、リリアナさんはまだ無理そうだね。『迷宮』をクリアするには……俺の力が必要だからって言って断られてしまったんだよ……。でも『勇者の迷宮』の攻略を手伝ってもらえることになったから、少しは強くなれると思うよ!」と伝えた。すると理沙が「そっか……。それならいいんだけど……。リリアナさん……大丈夫かな……。」

と心配してくれた。俺達は、村に戻ってリリスの容態が良くなるまで休む事にした。

*

(田中です……。リリとリゼルが知り合いなのは予想がついてたからいいけど……。『賢者の世界』のことも詳しく聞いてみないと……。理那のお姉さんと従姉妹が……。『光の戦士 勇者の使い手』か……。これは僕も頑張らないと……。それに、僕は『光』属性魔法しか使えないみたいだし……。理奈ちゃんに鍛えてもらわないと……。それから……『賢者の扉』の件もあるし……。この世界の『勇者』の事も知っておかないとな……。それと『魔王軍』と『魔族』の事かな……。『勇者召喚の儀式 大迷宮編』でも読んだし……この世界でもある程度知識はあるけど……。実際に体験してきた人達の話を聞くといいかな?)と考える田中君だった。そして次の日……リリアナが仲間に加わった事を報告する為に、家族全員でアリアの家に集まってもらうことにした。

家族全員が揃ったところで……理亜に、リリアナが仲間になった報告をすると共に、理亜達の従姉妹であり、『闇の巫女』であることを告げる。そして、美波達にも『魔王軍』が攻め込んで来る事や、これから起こるかもしれない『魔王軍』との争いに備えて戦力を蓄える必要がある事を説明してから、『賢者の世界』に行きたいと話すと……理姫が『闇の国』に行ってみたいという事になった。そして……家族会議の結果……まずはリリにリゼリオンを預けてから、『賢者の世界』に行くことにした。そして、みんなにリゼリオンを託す。田中君と一緒に旅をしていて……レベルやスキルが上がりすぎてしまったので……レベルが下がっていた。そこで……理紗に理奈と一緒にレベルを上げてあげるように指示を出すことにした。

そして俺は『魔剣エクスカリバー 魔導の館シリーズ』をアイテムボックスに入れて、理沙の家に置いてから『魔剣アルデバラン 魔族の塔 地下三階フロアマスター』を封印するために、『魔剣エクセレントソード 魔の迷宮 最終ボス部屋 ラスボス エリア』に移動する事にしたのである。

俺が移動している途中で……『魔道剣士 マジックファイター 勇者の加護』を持っているはずの、真紀ちゃんが、なぜこんなところで戦っているのか疑問に思った。しかし……今は『賢者の世界』に向かわなければならないので、真樹ちゃんを仲間にして、そのままスルーして移動する。

(理奈……。『賢者の塔』に行かないとね……。)と伝えてから『大魔道 魔王の世界闇の神殿ダンジョン』に向かう。そして、理奈のお父さんと、お母さんも一緒に来ていた。

そして……理紗と理奈と一緒に、美紗貴と理那を呼び出して……『賢者の部屋 賢者の扉 魔の聖域 闇の神殿』の前に来てから……美紗貴と理那を『賢者の世界』に連れて行き、『闇の王 カオスヴィネジャー』と対峙させる。美紗貴も理那も『闇の女神 カオスヴィーナス』と戦う事になるので、俺の体を使って、『魔装 神具装備』を使い戦うように念を押すのである。

理那も、理紗と同じように……美波に憑依して『勇者の力』を使う。理沙は……リリから借りた武器で、戦うことになった。俺は、このメンバーにリリを加えて、『大魔聖世界 暗黒女神カオスヴィーナス 闇の魔王城 最奥部大迷宮』の『魔王の迷宮 最終階層フロア 魔の神殿 闇の神殿ボスルーム ダークナイトロード・エンプレス』を『魔道師の塔 魔王の間』に出現させて、理奈達に攻略を任せることにしたのである。

美波には……リリアナから、理奈達をサポートする為のスキルと武器をプレゼントしてもらうよう頼んでおいたのだ。美波は、『闇の力 暗黒の呪い』という状態異常を無効化する武器を使えるようになる。これで理奈達がどんな敵が出てこようと対処できるだろう。そして理奈は、理沙のサポートもする為、一緒に行動することになっていた。そして……俺達とリリアナ達3人は『賢者の回廊 闇の門番 闇の女神カオスヴィーナス 闇の女王の間』の扉を開ける。『賢者の世界 賢者の空間』に転移する。リリアナに案内してもらいながら……リリゼルと合流することにする。


* * *

理那「えー!理沙さんが『闇の王女 闇の女神 闇の女王 闇の王 闇の魔女 混沌カオスヴィーナス 闇の化身 闇の支配者』なの? 私のお姉ちゃんなの?」

と驚いた理那。リ「うふふ……。理那様……。私は……あなたの妹ではないのですが……私もびっくりしましたわ……。お母さまとお父様に、そっくりなんですもの。それに……理那様の魂が、お姉ちゃんの中に居たことも気づきませんでした。まさか、妹がいたなんて……。でも理那さんが理奈さんの中に入っていたということは、理奈さんのお腹の中の胎児が……理沙さんの卵子から生まれたということですね……。不思議な縁を感じますね。うふふふ……。」

理奈は……「リリアナ……。ごめんなさい……。黙っていて……。実は……。私が産まれる時……。理奈のおなかの中には理奈と美波が宿っていたの……。美波が私と双子として転生してしまったから……その関係で私が産むことができなかった……。でもね……今度生まれ変わった時には絶対に私の子供を産むんだっていう強い意志が……『賢者の世界』に届くように祈り続けたの……。そうしたら、本当に奇跡が起きたんだ……。だから私達の間に産まれてくる子供が……理沙なのか理奈さんだったかはわからなかったけど……。とにかく、2人に逢えてよかった……。でも……まさか……姉妹だったとは思わなかったよ……。」と言うとリリアナは……「理沙さんと理奈さんと姉妹だったからこそ、出会えたのです。だから……嬉しい気持ちと、複雑な心境なんですよ……。でも……。もう2人を離さないって決めましたけど……。あぁ……理那さんは理沙さんより先に死んじゃったけど……。」

と言ってくれたのだった。するとリリゼルが……「あらあら……お二人は姉妹だったのですか……。では、理沙さんにリリが憑依すれば、リリゼルになれるわけですね……。でも……。理奈さんに理沙さんのお友達の女の子が憑りついた方が……面白そうですけど……。

だって……。リリゼルって……なんというのでしょうか……。ちょっと……微妙じゃないですかね……。

『魔道師の塔 闇の精霊の扉』を開けられるのは、リリアナだけになりそうな気がしますし……。

リリと、リゼリオンを仲間にすると……。理香さんと雅美さんを仲間にしたほうが……面白いことになりませんかね……。だって……リリの本当の目的って……リリゼルが、理姫と理亜を仲間にすることだから……。それなら……美紗貴と理那を仲間にしてしまえばいいと思います。

理奈さんに理沙さんを仲間にしてもらった後で……。理紗さんを仲間にするのは……ありだと思うのです。

『賢者の塔 闇の女神の神殿ダンジョン』を攻略するためには……美紗貴さんと理那さんの力が必要でしょうから……。それならいっそ……。最初からリリゼルにさせればいいと思ったのですよ。」と提案してきたのである。俺は、リリとリゼルにお願いすることにした。

*

(理奈です……。)

(理奈です。理沙が『闇の女王 混沌カオスヴィーナス 闇の王』で、理那が『闇の巫女 光の使者 闇の巫女』で……。)

(理姫です。『光の戦士 勇者の使い手』である理奈ちゃんに憑依している美波の従姉妹だよ……。)

リリと理奈に仲間になってもらう事に成功した。そして、リリは理紗が持っている武器の『魔剣アルデバラン 魔導の館シリーズ』を手にして、俺と一緒にこの世界を冒険したいと言い出すので、一緒に旅をすることになった。そして……俺達とリリアナ達は、『魔剣アルデバラン 魔導の館シリーズ』を手に入れ、レベルを上げて『闇の女神 闇の神殿ダンジョン』を攻略して、ラスボスを討伐してから『闇の女王 混沌カオスヴィーナス 闇の王の間』の扉を開き中に入ると…… そこには『魔族の神カオスヴィーナス』ではなく、『混沌カオスヴィーナス 闇の女神 魔王カオスヴィーナス 闇の化身』が出現したのである。

理沙が、理那に乗り移って『勇者の力』を発現させた。理那が理紗に『魔導士の杖 魔王シリーズ』を貸し与えた事で、美波は『賢者の杖 勇者シリーズ』を使い、この世界のラスボスの討伐を始める。俺もラスボス戦に参加するためにラスボス部屋に突入するが……そこに現れたのが『混沌カオスヴィーナス 混沌の悪魔女神』だった。

『魔道騎士の槍 魔族の塔 最終階マスターフロア ラスボス部屋 ダークナイトロード・エンプレス』で戦うことになる。このラスボスを討伐しないと、理奈と理紗が次の階に進まないからなのだが……。『大魔道 賢者の世界闇の神殿ダンジョン』を守護している最強の魔王だそうだ。『大魔道 賢者の世界 賢者の館 闇の神殿ダンジョン』は最終階になると魔王が現れるダンジョンになっていたのだ。

魔王といえども、理奈や理那のように『大魔聖 賢者の世界』のアイテムを装備していれば倒せるはずなのだ。俺と美紗貴は、『魔王のローブ』を装備させる。理紗は、リリに作って貰った武器を装備する。理那と理姫にもそれぞれ装備させるのである。それから、理那は、『勇者の大剣』で戦う事になった。『魔族の騎士の斧 勇者の伝説』を装備した理奈も、参戦する。『大魔魔道師の短刀 魔族と人との戦い 暗黒の時代』を持った理那も参戦してきている。この2人もかなり強くなっているのである。

『魔導剣士』の真紀ちゃんは、美波のスキルを使って魔法剣で戦うことになったようだ。俺も真紅郎に『神具 大聖魔弓』を使って、援護をすることにしする。そして、リリは、美波の武器である、リリゼルに『魔道大王の杖』を使い『魔の門番 闇の女神カオスヴィーナス 闇の王』と戦う。『魔道女神の錫』を使えるようになるはずだ。リリゼルに持たせている。リリアナにリリゼルを任せることにする。

リリアナに、リリゼルを仲間にしたほうが面白そうとか言われてしまったのだ。そしてリリは、『賢者の石』『魔石の塊 魔王の神殿』などを手に入れたのだ。リリが使う『大魔賢者 賢者の世界』シリーズは『闇の門番 闇の女神カオスヴィーナス 闇の女王の間』でドロップするらしい。そして理那が使っていた『大魔法使いの杖 闇の精霊と人の戦い 暗黒時代』が『魔族の大魔法使いの長杖 闇の化身』に変化する。

そして、リリアナもリリゼルと合流して『混沌カオスヴィーナス闇の王女カオスヴィーナスダークネスブラッククイーン』と、対峙する事になる。俺は……。リリ達3人の戦闘に加わらないようにしながら、『賢者の大盾 勇者の物語 伝説の幕開け』を発動させて防御に専念することにした。俺はリリスの分身体と共闘する事にする。『大神官の法衣』を装備している俺は、攻撃力が大幅に下がるのだが、防御力に関しては高いから、なんとか攻撃に耐えていた。俺は理奈達に、回復魔法をかけてあげる。しかし、魔王なのでHPが高いらしく……。すぐに、回復しきる前に、ダメージを受けてしまうのであった。リリアナの方は、苦戦しながらもリリゼルと協力プレイをして、なんとか倒してくれた。リリアナが倒した時に落とした『混沌の女王の指輪 闇の精霊と契約』は美波が受け取ることになった。これで、理沙の持っている4つの『魔王のリング 闇の精霊との契約 魔石との契約』が揃ったわけだが……残りの『賢者の石』をどうやって集めるか……。俺が悩んでいると……。美波と美紗貴が『賢者の箱 精霊の箱 精霊契約の祭壇 魔法の塔』に行って『賢者の塔』に登ってみないかという話になったのである。美波達が言うには、そのダンジョンに、リリアナの武器の1つになる武器を落とすボスがいるのではないかと考えたみたいだ。俺が、理奈と理紗に確認したら2人は、美波と美紗貴の提案に賛成して一緒にダンジョンに挑む事にしたのだった。

(理那です。リリと理沙が一緒にダンジョンに行くことになっていますけど……。大丈夫ですか?)

(理那ちゃん。私は心配してないわよ。だって……。あの子達の絆は誰にも引き裂けないものだから……。)

俺は……リリから聞かされていた……この世界で最強の存在がリリである事を知っている……。なぜならば……俺と、美紗貴が転生する前に居た世界で……。理奈はリリが自分を犠牲にして、俺達を救ってくれて、俺と美紗貴に憑依している存在だと教えてくれたからだ……。だから、美姫に『リリゼルシリーズ』を渡すことができたのだ。美波がリリと同じ立場なら……美波も同じ事をしていただろう……。

(そうですよね……。だって……美姫ちゃんがリリアナの娘だって事は……わかっていますから……。それに、私よりも、お姉さんなんだし……。)

俺がそう言うと……美波が俺を見てニヤリとして笑っていた。

俺達は、まずは美紗貴のレベルを上げるため……『闇の洞窟』の攻略を目指すことにした。『賢者の塔 魔導の館 魔導の図書館ダンジョン』を抜けた先のダンジョンで、一番最初に出てくるのが……『魔王の鎧』の『魔王シリーズの鎧』を身に着けていて、物理攻撃耐性を持っている。さらに、魔防力が非常に高いモンスターだ。

『闇の神殿 闇の女神 闇の化身の間』を守護するモンスターで、レベル70前後の強さのボスなのだ。

このボスの倒し方だが……。まずは、俺と美姫が『魔王の鎧 魔導の館の守護者』に攻撃を仕掛ける。次に、リリゼルと理紗の攻撃が入る。

この方法で倒す事ができる。ただし……。俺は……『賢者の石 魔王の器 賢者の石シリーズ装備シリーズ』を使っている状態なら……。この方法は必要ないので……。俺と美姫だけで倒すことにする。しかし……。レベル50程度しか上がっていない理紗は……。この方法じゃないと倒せないので……理紗も連れて行くことにしたのである。

美波「じゃあ、行ってくる。理奈と理紗の事、頼んだからな。リリ、頼むぞ。」と言ってから、俺達を連れてダンジョンに向かった。*『闇の洞窟』で、レベルを30ほど上げると……次のダンジョンに進んだ。

俺達は、『賢者の塔 魔導の館 魔導の神殿ダンジョン』に入ることになる。このダンジョンを守護するボスは『魔王 闇の王』なのだ。俺と美紗貴が、先陣を切って『闇の王の剣 魔の迷宮シリーズ』を装備したボスと対峙することになる。ボスは、魔法と剣術を両方使えるので厄介なのだが……今の俺のステータスでは……問題なく勝てるので……。そのままボス部屋に突入したのである。

理紗もボス戦に混ざりたいという事で参戦してもらうことにする。ボス戦が始まってすぐに、ボスが俺達に向かって魔法攻撃をしてくる。このボスの魔法を美紗姫に任せる事にして……。俺が、盾役としてボスに付きっ切りで、ボスからの攻撃を受け続けていたのである。

ボスは……。俺が『大魔剣 大魔聖剣』を装備していても、簡単には、倒されないので少しづつダメージを与え続けてくれているのだ。そして……とうとうボスを倒すことに成功する。しかし……ドロップアイテムの中に、『魔王シリーズ 漆黒の長杖 闇の化身 魔王の城』が入っていたのだ。

理奈はこのダンジョンをクリアした後に手に入れた『闇の賢者の長杖 賢者の世界 闇の力』を使う。

俺と美紀は、美波にこの世界に来て欲しいと言われるので……美波についていくと……。なんと……『魔王の杖 魔道王国の秘宝 賢者の世界』という、アイテムを手にいれたのだ。そして、理沙は、美波と一緒にダンジョンを進んでいったのだ。俺と美紗貴も、その後を追って進むことにしたのであった。

**現在判明している仲間メンバー一覧(理奈sideのみ記載。)**※☆:女性

★:男性 1 佐藤 理奈 種族 ハーフエルフ(神と人の間に生まれた少女 異世界の英雄と女神によって救われた英雄譚 暗黒の時代)

職業 勇者・魔法使い・魔道師・大魔道師・賢者・剣豪・弓士 2 真紀 美紗貴 職業 聖魔導師・剣士 3 美波 真理亜 職業 賢者 4 佐藤 綾音 種族 人 元 大魔道師の長杖 賢者の世界の勇者の物語 5 椎名 姫花 神 神界の住人 女神の導き 6 鈴木 詩織 聖騎士 7 桜 美紗希 職業 聖女 8 佐々木 優梨 女神 9 笹野

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俺は、この『勇者の世界』で“勇者神”として転生する。 あずま悠紀 @berute00

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