第7話 威信の影に
傭兵達と寄せ集め部隊を率いて戦況をひっくり返した立役者である私の婚約者の熱が下がり、傷が癒えはじめた頃に、隣国との戦争は終わった。
国は、第一王子殿下が率いる部隊が、敵を駆逐したと、発表した。第一王子率いる精鋭部隊は、派手に出迎えられ、王都を凱旋した。
傷だらけになって帰ってきた私の婚約者や、彼と一緒に戦った傭兵達や寄せ集め部隊の活躍は、葬り去られてしまった。私の婚約者は影の立役者よりも、哀しい立場となった。残念ながら歴史書にも残らない。後世の人が、私の婚約者と、一緒に戦った仲間たちの功績を讃えてくれることはないと思うと、悲しかった。
父と私の婚約者は、それどころではないらしかった。
「王家の威信は大切だからね」
戦地で何があったかを知る者達に、父と私の婚約者は、沈黙を約束させた。王家の顔に泥を塗ったら命はないのだ。
「僕の母のように、毒殺されてしまうよ。僕は、一緒に戦って、生き残った君たちが、死んでしまうのは嫌だ。死んだ仲間たちのためにも、君たちには生き延びて欲しい」
私の婚約者と一緒に戦った者達は、彼の言葉に、沈黙を誓ってくれた。父は、私の婚約者は、人たらしだと言った。
随分な言い草だが、父の言ったことも間違いではない。時々見舞いに来てくれる姿を見ると、そう思う。
父もそれなりに人望はある。傭兵達は、仲間を失ったにも関わらず、父を相手に契約をしてくれている。
「入婿してくる誰かと、契約するための準備だろう」
商人の父は、ケチだが、金の使い所は心得ている。怪我を負った傭兵達の治療費を支払ったのは父だ。私はそんな父を誇りに思っている。父には内緒だ。
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