第4話 乖離

私は緊張からか、体が氷の様に固まってしまっていた。

「あのあの。」

私の口はこの場をどう過ごせばいいのか分からずにパクパクと鯉のように動かすしか出来なかった。

しばらく公園は静まり返った。いや、もともと静かだった。私の心臓の音のせいか、やけにうるさい気がしていたが、人がいない公園が騒がしいはずなかった。

夕日も沈み、公園の街灯が灯る。

静寂を破ったのは水谷さんだった。


「なんで…声かけたの?」


そこには感情はなくただ私の行動が気になって訊いてきただけのように問いかけてきた。

「そ、それは…また会えたから。」

私の答えに水谷さんはふふと小悪魔じみた笑いをして乱れた前髪をかき上げる。

「立花さんって結構人懐っこいというかコミュニケーション能力が高いのね。羨ましいわ。」

「え? …それって。」

「私だったら駅で優しくしてもらったからって、べつに二回目あっても話しかけないかなって思っただけ。別に責めているわけじゃないのよ。ほら、いってしまえば赤の他人なわけだし、お互い素性が知れないじゃない。悪い人だったらって思わない?」


沈黙。

なんでだろう。説教されている気分になる。責めているわけじゃないと水谷さんは言うが、これはどう見ても説教だ。そして内容からしてきっと話しかけてほしくなかったということなのだろうか。駅の出来事は一時の優しさと言いたいのだろうか。


「正直に言うと、ひとめぼれしたんです。いや、惚れたと言うと語弊があるんですが、水谷さんの第一印象がかっこいい色気のある女性だなって思って、私もこういう人になりたいって思ったんです。一目見て思ったんです。私の憧れの人だって。だから、もう一度あって…そう、もう一度あってお姉さんのこともっと知りたいって思って。」

私の口に水谷さんの人差し指がくっつく。

それ以上言わないでとサインしているのか。


「だめよ。私、あなたが思っているような人間じゃないわ。」


「それでも、私があった水谷さんはかっこよくてかわいくて憧れる存在だと一目で」


「ごめんね」


水谷さんはそういうとゆっくりと公園から離れていった。

私はそこにただ立っているだけしか出来なかった。

なんでこんなことになったのか理解できないでいる。

頭が回らず、立つことでしか出来なかった。駅のような衝動で動くこともままならず、ただ水谷さんが離れているのを見ることしか出来なかった。




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