キャンディ

仕事を辞めた。

転職先もないというのに仕事を辞めた。

というより辞めてやった。人間関係の相性が悪く、私の精神が壊れる未来しか見えないので、先に辞めてやったのだ。


最後の通勤かなどと考えているが実際は心ここにあらずと言った感じで呆けていた。

ただ、これからどうすべきか、何に勤めるべきか、考えることはいくらでもある。

お先真っ暗な未来に考えるのを辞めているというのが現状なのだ。


そんなぼうっとしている私は駅のベンチで電車が止まるのを目視。

ああ、もう時間かと立ち上がると下車してきた如何にもなギャル風の女子高生がこけそうになっていた。

側にいた私はとっさに体が動いて彼女を支えていた。


その時、私は「しまった。」と心のなかで思った。


内面が顔にでないようニコリと愛想よく「大丈夫?」と声をかけると「あ、はい。あ、ありがとうございます。」と慌てながら返事をくれた。それでも女子高生の顔は少し暗めであった。

そんな彼女のことなど露知らず、電車は容赦なく進んでいった。

消えそうな声で電車を見送る女子高生。

電車内には同じ制服をきた女子高生が残っていたし、おそらく下車した彼女も本来はここで降りるつもりはなかったのだろう。

このまま立ち去ろとしたのだが、立ち去るに立ち去れない空気だった。なんというかこの子を一人にしておけないような…そんな感じだった。

大丈夫か確認を取るとさぼりたかったから問題ないと理由を付けてきた。

どう返すか考える間が欲しかったが、とっさに出たのは社会のルールに縛られた説教でしかなかった。私の返事にしゅんとする女子高生。


しゅんとさせるつもりはなかったのでなんとか気分を晴れやかにしてほしいと私は自分のご褒美といって買っていたキャンディを彼女に上げた。

唐突に表れたキャンディに戸惑う彼女。私は強引に彼女の手にキャンディを握らせた。

理由は知らないが彼女は出会った時から顔が少し暗かった。さらに暗くしてしまったお詫びとして受け取って欲しい…とは言うつもりはなかったが、受け取らなさそうなのでそれとなく理由をつけたら似たようなことを言ってしまった。


さすがにもう無理だと思い、私は彼女から離れることにする。

すると女子高生は離れる私に言ってきた。


「また会えますか!」と。


私はその瞬間にああ、遅かったと思いながらもやけになっていた。

瞬間に私は「もちろん」と答えを出していた。

その後私は内心を悟られぬようにしながら彼女との距離をとった。

出会った瞬間の後悔。


それは…私は女の子に恋しちゃうことだ。

ものすごい好みな子だった。

だが、私は決心したのだ。


もう恋はしないと。


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