第04話 綺麗なガラス玉こと鑑定玉②
「因み、私のは、……こんな感じですね」
エレナの手を取り払い、代わりに鑑定玉へ手を添えるリネン。
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名前:リネン・ユーカレド
種族:人族(♀、21歳)
階位:Lv.182 :D4
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エレナよりも色どりが増え、赤と緑色の大きめの波が交互に波打ち、更に水色の小波が追い掛けている。楽しそうに見える。
合い間に白と淡い水色のマーブルカラーの波紋も見て取れる。
「見ての通りですが、火魔法と風魔法が得意ですね。それと、重宝していますが次点で水魔法……。
あとは、えっとですねーこのマーブル色の波紋が氷魔法で、最近、適正として現れたばかりで……まだ何も掴めてない現状ですね。早く使えるようになれば良いのですが……」
眼前で繰り広げられている光の共演を掻い摘みながらリネン自身が説明し、思いも添える。
それにしてもエレナに比べてレベル、高っ。
ヒナタが俺達4人の思いを代弁する。
「リネンさんのレベルは、エレナさんと比べると……非常に高いように思うのですが?」
「文官のエレナと比べるとそうかもしれませんね。私が所属する近衛騎士団第三部隊では、気持ち高い程度だと……私よりレベルが高い部下や同僚も多くいますから」
ん?……部下の方がレベルが上?……普通に考えたら部下の方が戦闘能力が上ってことになるが……。
「ふぁいっ、ふぁいっ!ランクも部下の方が上?」
「そこ、気になる」
オブラートに包まず、サクラが単刀直入に聞き、コトハも同調する。それに対して見守る俺とヒナタ。
「ランクは……所属する部隊で、隊長の次ですね。
うーん、そうですね……えっと、レベルアップ時のステータス上昇幅は、皆それぞれ違いがあります。
私は、部下や同僚と比べそれが高いようで……レベルは皆より低いかもしれませんが、ステータスは同等かそれ以上になるのかと。……やはり、気になりますよね。フフフッ」
リネンは、嫌な顔をせずにサクラとコトハの意図を汲み取りながら応え、更に嬉しそうに話を続ける。
「……勇者である皆さまは、おそらく……私よりレベルアップ時のステータス上昇幅が高いはずです。保証は致しかねますがねー、フフフッ」
初期ステータスの有り難味が増すなー……ダイス・チャレンジ、あーざす。
それと、女神からのサービスポイントも……。
もとより大切だとは考えていたがリネンの言葉から、より重要性がアップ。
まあ、ダイスの結果も良かった俺達4人には悪くない情報で、レベルアップ時の楽しみに繋がる。
「えーと、……それでは、誰からやりますか?」
エレナが記録用紙をトントンしながら、俺達に尋ねる。
先程からウズウズしていたサクラが真っ先に手を差し伸べることは分かっていたので、その手を優しく掴んで阻止する。
「ほぇ?」
俺の手でガードされてしまい、サクラが驚嘆する。
もしかしたら、俺とヒナタのステータスは同じくらいかもしれないが……サクラとコトハは、間違いなく俺より高いはずだ。
このようなお披露目会的な展開では、俺、ヒナタ、サクラ、コトハの順が妥当だと思う。盛り下がるより、当然、尻上がりに盛り上がる方が良い。
少なくとも最初にサクラ、コトハはない……俺が最後でもガッカリ感がでて悲しくなる可能性が高いので、ダメだ。
何れにせよ……、
「俺からーやります。……その次は、ヒナタ、サクラ、コトハの順で」
「ふぇーっ?」
「ええ、当然ですねー。フフッ」
「主役は最後、ふんすッ」
再び驚嘆するサクラ。頷いて賛同するヒナタ。『我が意を得たり』と、したり顔になるコトハ。
リネンが目の前に鑑定玉を置き直す。
実演してくれたエレナとリネンに倣い……両手で優しく上から添える。
手の奥から気持ち良い温かみを感じる。
そして、眼下のガラス玉からは同様に光点が生まれ……次第に溢れ出す。
色とりどりの光の波が、チャップチャップと楽しそうに遊んでいる。
適正がある魔法は、既に取得済みなので……さざ波や波紋はない。
あるのは、小波……中波……大波。
まずは、ゲットしたはずの魔法スキル……火、水、風、土、雷、影が波としてしっかりと具現化しているか、頭の中で突き合わせていく。
……問題ないようだ。
「ハルー、きれー……きれーだよ~」
「このマーブル色からして……雷ですかねー」
「影……デカっ」
楽しみながら感想を述べるサクラ、ヒナタ、コトハ。
「えっ!ええっ……」
「えっ、リネン?!こんなことってありえますの?適正があり過ぎですわーっ」
ふと視線をあげた先に、固まっているリネンがいる。あわあわしながらエレナが肩を掴んで揺さぶっているが応答がないようだ。
まあ、トップバッターとしては、予想以上の反応で
「ふー、任務完了っと」
気持ちが楽になり、心の声が漏れてしまった。
再起動したリネンとエレナがあーだこーだと認識のすり合わせをしている。
「えっと、召喚直後で6属性は、過去にあったかしら?」
「ありませんわっ。我が国で……過去最高が……5属性だったはずですわっ」
「ハルさんの魔法適正は、基本属性の火、水、風、土、……上位属性の雷」
「そして、特異属性の影ですわね」
「うーん、勇者様が凄いのか、ハルさんが凄いのか……」
「勿論、両方ですわ。勇者様であるハルさんが凄いのですわ」
「エレナ、言い得て妙ーですね。フフッ」
「お褒めに預かり光栄ですわ。フフフッ。」
目の前で褒められるのは気恥ずかしく、こそばゆいので止めてもらいたいのだが……。
「リネンさん、ハルのランクは~?」
リネンとエレナの会話が下火になった頃合いを見計らって、尋ねるサクラ。
サクラ、ナイスーアシスト。うん、俺も気になってたんだよねー。有り難い、突っ込みだ。
エレナのG2で問題なくゴブリンを対処できる。ならば、俺のG4は、どれほどのものなのか。ドキドキですな。
「ランクを見てなかったですね」
「ハルさんですから凄いこと間違いないですわよ」
「凄いことが事前に分かっていれば、驚くことなかれですね。フフッ」
「リネンったら、フフフッ」
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名前:ハル・カミシナ
種族:人族(♂、15歳)
階位:Lv.1 :G4
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(魔法適正)小波:火、風、土
中波:水、雷
大波:影
「それでは、失礼して、……えっ、えーーっ!」
「えっ!レベル1で、……私より上……ですわ」
2人は、二度見をした後、目を合わせてから居住まいを正して、
「えっと、ごッホン。ハルさんのG4ですね。私の経験上から言わせて頂くので、あくまで……目安として受け取って下さいね。
えっと、そうですねー、強さ的には……一般兵士のレベル40~50くらいでしょうか。
もしくは、戦闘に慣れ始めた兵士と言った方が伝わり易いでしょうか……しかもレベル1の状態なので何とも言い難いですが」
一旦、話を区切り、エレナの首肯を視線で確認するリネン。そして、
「だからと言って、その兵士達と良い勝負が出来るとは思えません。ステータスが全く同じ者と戦ったとしても戦闘経験の差が如実に表れるので……勝つのは厳しいかと。
スキル戦もあるので……更に厳しくなるかと。
逆に、ハルさんが経験に関係なく扱うことができる強力なスキルを持っていた場合は、話が変わりますが」
言葉を切り、全員の目を見てから再度、俺の目をじっと見つめ直すリネン。
「これは私の勝手な見立てですが……、
おそらくハルさんの歩き方や佇まいから見て、戦闘経験があるような……武を
なので、ハルさんにおいては、話が更に二転三転してしまい……スキル抜きの戦闘なら同等のランクか、それ以上の兵士であっても勝つ可能がありますよ。フフフッ」
そんなことまで分かるとは……。でも手合わせは、楽しみだな。
「実際に見ないと分かりませんが……」
最後に推測なのでと言葉を添えるリネン。
「最年少で副長の地位を勝ち取ったリネンの言葉なら、誰もが信じますわ」
リネンの言葉を後押しするエレナ。
なるほど……エレナからの情報により、リネンが凄い人であろう可能性が浮上。取り敢えず、記憶にメモっておく。
そして、エレナが俺の結果を用紙に記録し終えたようで、
「えーと、次は……?」
サクラ、ヒナタ、コトハを順に見ながら尋ねる。
俺は、そっと鑑定玉から両手を退けて、場を空ける。そこへサクラが体ごと両手を伸ばしてくるが、
「ふぇっ?」
案の定、ヒナタにガードされ……届かず。悲しい声だけが、届く。
「サクラ、これだけは譲れませんよー……次は、私ですー」
「サクラ、我慢……主役は最後」
「私はー最後なの~?」
「サクラは主役ではないから、3番目」
「ふぇっ?」
コトハに弄られ、涙目になるサクラ。
まあ、そうなるわな。
いつもの3人のやり取りに安堵しつつ、鑑定を静かに見守ることにする。
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名前:ヒナタ・シノノメ
種族:人族(♀、15歳)
階位:Lv.1 :G4
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(魔法適正)小波:火、水、土
中波:風、氷
大波:聖
「基本4属性と、上位属性が氷で、……特異属性の聖もあるなんて」
「リネンっ!……ランクも凄いことになってるわよ」
「えっ、ハルさんと同じーっ!」
「もう、ひぇーですわ」
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名前:サクラ・ツキノキ
種族:人族(♀、15歳)
階位:Lv.1 :G5
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(魔法適正)小波:水、風、土
中波:火、雷
大波:光
「上位が雷で、……」
「特異属性は……光ですわね」
「当然のように上位と特異があるので怖いのですが……」
「それ、同感ですわ」
「えっと、ランクは、……更に上のG5」
「……私、勇者様の能力の高さに……感覚が麻痺してきましたわ」
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名前:コトハ・ハツキ
種族:人族(♀、15歳)
階位:Lv.1 :F1
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(魔法適正)小波:火、水、土
中波:土、氷
大波:闇
「当然のように上位は、氷」
「特異は、闇ですわね」
「おそらく、流れ的には、……見たいようで見たくないような」
「リネン、最後ですのよ、目を細めてもダメですわよ」
「いざっ、……更に上の……F1」
「……やっぱり、心構えしていても凄まじい衝撃でしたわね」
目頭を押さえ、疲労回復に勤しむ2人の姿から哀愁を感じてしまう。
周りの少し離れて等間隔に配置されているテーブルからもざわめきが聞こえる。もしかすると同様の会話が飛び交っているのかもしれない。ある程度の距離があるので内容までは分からないが……。
良い意味で盛り上がってるようなので何よりだ。
ホール全体に広がる楽しそうな雰囲気の中……本人登録、完了かな。
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