第02話 勇者、召喚の間に到着
--( in 王都.王城.王立魔術研究所地下5階 )--------
えっ!……終わり?
転移に浮遊感を感じることは無く、心構えした分……肩透かしを食らう格好になってしまった。
サクラ、ヒナタ、コトハは、転移前の状態で依然、俺にしがみ付いている。
「どうやら、着いたみたいだよ……ほらっね」
兎にも角にも無事に転移したことを3人に伝える。そして、早く、眼前の光景を目にしてほしくて
すると、3人それぞれの力が徐々に
「「「えっ!」」」
3人同時にビックリしたようだ。
「あわーわわぁわー」
「き、キレイー」
「すごっ」
若干一名は、言語変換に支障をきたしているようだが、予想通りの反応で嬉しくもある。
忘れずに、同感であることを言葉にする。
「……ああ、これは凄いな」
広さでも唖然とさせる巨大な人工的な空間……帰りによく立ち寄るコンビニ横の11階建てマンションがいくつもすっぽりと入りそうなほどである。まあ、同じ階層のマンションでも大きさは
先ほどまで3人にホールドされて身動き出来なかったが……解除されたので、自由を堪能しながら見渡してみる。
地面は、緻密な幾何学模様が色とりどりの光で描かれ……ボワンッボワンッと脈打っている。
拳大の光の粒子が至る所から突如生まれ、上へ消えていく。
状況から推測するに勇者召喚用の魔法陣で、間違いないだろう。
脈打つ中で一番大きな魔法陣の全体を視界に収めることは……当然叶わないが、円に近い多角形のように思える。その外縁をフードを被った者達が一定間隔で点在している。……陣同様に光を纏ってるため、妖美で美しく映る。
地面だけでも凄いが、俺達の周囲の空間全体で幾重にも描かれている。合ってるかは分からないが言葉は知っている。ゲームでよく見聞きしていた、
立体……多重展開……魔法陣。
只々、美しい。その光の共演の中に俺達は佇んでいる。
そして、いくつものグループが俺達同様に魅了されている様が見て取れる。
纏わりつく光の粒子と戯れているサクラと目が合う。
「「おっ!(あっ!)」」
お互いの姿にビックリしてしてしまう。
「……ハル、サクラ……どうしまたー」
「ん?」
「ハルがー」
「あっ!……これは、これはー」
「……最高っ」
周囲の光景に目が奪われていたため、変化した互いの姿に気づけていなかった。彼女達の反応からして、俺も同様かもしれないが……サクラの美人度合が上がってる気がする。
ヒナタとコトハも確認のため凝視する。すると、2人の頬が見る見るうちに朱色に染まっていく。うーん、恥ずかしがるのは止めてもらいたい……こっちも恥ずかしくなるから。
熟視した結果、彼女達3人共に、美人度合が更に上がっていることが分かった。これは、女神が言ってた新たな肉体への融合に伴う影響だろう。間違いない。
・サクラ: 綺麗さ、華やかさマシマシ
・ヒナタ: 綺麗さ、透明さマシマシ
・コトハ: 綺麗さ、可愛さマシマシ
嬉しくなって、何度も3人を見てしまう。魔法陣の光は、輝く強さも量にも波があるため、しっかり、じっくりと見ることが出来ないのが悔しい。ちゃんとした明るいところに行ったら、満足するまで見てやろうと誓う。
「テヘヘっ……ハルー恥ずかしいよ~」
「そんなに見られたらー……」
「なら、私だけを見れば良い」
「コトハーそれは、ないよ~」
「独占はダメですよー」
「問題ない……ふんすッ」
「そんなに恥ずかしいの?……普段から意外と見てる気がするけど……」
「ハルがーキレイすぎるから~」
「ええ、想像以上でしたねー」
「ん、凄い」
「えっ!きれいーぇ?」
予想外の激白に声が
「ほにょ、恰好いいけどー美人だよ~」
「ええ、美人ですねーフフッ」
「美少女」
えーーですよ。マジかー。正直、少しは格好良さがアップすれば嬉しいかなとは思ってたけど……彼女達同様に美人度合が上がっているとは……。
鏡がなくて直に確認できないのが、もどかしい。
「あっ!ハルー」
また、何かに気付いた様子のサクラ。
「ん?どうしたーサクラ」
「髪の色もー変わってるよ~」
「えっ!マジでっ!」
黒髪、気に入っていたのに……即、指である程度の量の髪を摘まみ……光量が強くなった瞬間に、
「おっ!マジかー……これはー白色でキラキラしているような……何色だ、これっ!」
「あ、ピンクだ~」
「私は、水色でしょうかー……青系統なのは間違いなさそうですがー」
「
4人で改めて確認したところ、それぞれの色は、
・俺 : シルバー
・サクラ: ピンク
・ヒナタ: ブルー
・コトハ: バイオレット
光量が安定していないので正しくはないと思うが、そこまで外れていないはずだ。
あーだこーだと4人で
鎧を着た騎士然とした者がマントを翻しながら身軽に駆けていく。そして、俺達から少し奥にいるグループのところに辿り着いた。そこに居る者達が嫌がってる素振りはないようなので。少し安堵する。
他のグループのとこにも同様に騎士然とした者達が次々に駆けていく。
何をしているだろうと
――ザッザザッ、ザッ
騎士然として者が凄いスピードで駆けてきた。
「勇者様、よくお越し下さいました。歓迎いたします」
お、言葉が普通に分かる。問題なく【言語理解】が働いてくれてる証左だ。
4mほど手前で止まり、居住まいを正す騎士然。俺達の目を順番にしっかりと見つめながら、優雅な所作で短めの挨拶と共に軽めの一礼をし……更に、言葉を続ける。
「私、ドリトニア王国、近衛騎士団第三部隊副長リネン・ユーカレドと申します。勇者様を地下施設より、地上にある
銀髪のセミロングをゆるフワっとポニーテールで纏めている。それに光の粒子で煌いていて綺麗だ。同様に眼もキラキラとしていて、ついつい見入ってしまう。異世界、レベルたけーよ。
「よしなに」
相手の雰囲気に流されて、普段使わない言葉をチョイスしてしまった。しまったと思ったが……時すでに遅し。
「ぶっふぅーっ、ハルー、ナイスーっ」
「ハル、時代劇ではないのですよー。フフフッ」
「緊張してる?……ぐふっ!」
2人に笑われてしまったが、1人は心配してくれたようだ。コトハ、ありがと。そして、サクラとヒナタは、けしからん。いやいや、コトハも最後、笑いを噴き出したの聞こえたぞ……けしからん。
笑いを堪えようとしているリネンと目が合う。サっと目をそらされてしまった。
ガーンである。コトハを抱き寄せ、ギューッとする。コトハもギュっと返してくる。心が癒される。
すぐさま、サクラとヒナタも抱き付いてきたが、イヤイヤをしながら、振りほどく。そんなじゃれ合いを続けていると、
「おッホン!えっとですね……見目麗しき勇者様方の触れ合いを見守りたい気持ちは多分にありますが、……そろそろ移動をお願いしてもよろしいでしょうか」
こめかみに青筋が浮かべ、目がマジになったリネンから諫められる。ぷっくりとした涙袋から柔らかい印象があったため、ギャップでより一層怖い。もしかしたら、そんなに怒ってないのかもしれないが……。
「「「イエッサーっ!!」」」
今度は、全員で言葉のチョイスを間違えた。
リネンにクスっとされてしまったが、悪い気はしない。
俺達4人はそそくさとリネンに連れられ、この地下の大空間を後にするのであった。
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