第12話 閑話 モブにも掴みたい未来が
--< Side:ノブユキ(志村 信幸) >------
「おい、モブユキ、やったぞ、やったんだっ!」
俺の肩を揺らしながら興奮気味に言ってきたのは親友でありお調子者のマサルである。
「マサル、どうどう~……取り敢えず、落ち着けって!」
今、目の前で語ってるロリっ子が本当に女神ならば、マサル同様に俺も興奮を抑えることは難しく、容易に冷静さを失うことが出来る。今しばらく耐え、慎重に状況を判断せねば……。
先ずは、目の前の少し離れた所にあるステージに立つロリっ子こと女神メロをじっくりと観察する。
見れば見るほど、
実在し得ない存在。うんうん、間違いない。観察完了。
俺の鑑定結果をマサルに伝える。
「マサル、ここは俺達の桃源郷だっ!」
「本当か?!」
本人も分かってはいるが、この状況が間違いであることが怖いのであろう。再確認してきた。
「俺の鑑定結果に……間違いは、ないっ!」
間髪入れずに、言い切る。
「モブユキの『バストメーター』……半端ないからなー……信じるぞ?」
「ああ、とことん信じろっ!」
俺の『バストメーター』こと鑑定眼は、女子限定でおっぱいのサイズを弾き出すことが出来る。男子は試したことないのでわからん。それに試す気は……毛頭ない。
俺の『おっぱい眼』こと鑑定眼は、アンダーとトップのサイズを寸分の狂いなしに計れ……今まで一度も外したことがない。他校からも知人を通して依頼が来るくらいの優れものだ。
当然、そのことを知ってるマサルは、俺の鑑定眼のことを『バストメーター』と勝手に名付け、信望している節もあるのだが……今は、捨て置く。
「……い、異世界……きたぁあーーっ!」
喜びを爆発させるマサル。
マサル同様に騒いでる者もいるが、女神は気にすることなく説明を淡々と進めていく。事の重大さに気付いている者達は、その説明を聞き洩らさぬよう真剣に傾聴している。俺もそれに加わる。待ちに待った異世界……冒頭でシクる訳にはいかない。
それから暫くして、説明の終盤に差し掛かる。今のところ、想定内で問題はない。
ここからは、自分のステータスを確認しながら、聴くことにする。
Status---------------------------------
名前:ノブユキ・シムラ(志村 信幸)
種族:人族(♂、15歳)
階位:Lv.1
体力: 50(50)(0)
魔力: 30(50)(0)
物攻: 40(40)(0)
物防: 30(40)(0)
魔攻: 30(40)(0)
魔防: 20(40)(0)
知力:100(30)(0)
技巧: 70(30)(0)
俊敏: 60(30)(0)
幸運: 40(20)
---------------------------------------
村人の平均が50だから、ボチボチって感じ。
本来だったら、ヤバって思うかもしれないが、ステータス補填が2つ用意されている。
・女神からのプレゼント:ステータス画面でカッコに囲まれている値
・ダイス・チャレンジ :ステータス・ダイスでゲットできる値
それらを合算すれば、初期のレベル1の状態で、既に戦闘初心者並みになるのだから、そこまで心配する必要はない……と思いたい。楽観的観測は良くないが……。
強力なスキルは貰えないらしいが、何気に至れり尽くせりのような気する。
でも何かが……引っかかる。
あ、そうか。逆に、初期の状態で……ここまで女神に配慮して貰わないと生き永らえない世界ってことか。なるほど、なるほど。
情報を
んー、これは、思った以上に気を引き締めてかからないと……早々にヤバイことになるかもしれない。
取り敢えず、説明が終わったので、早速、マサルとステータスの情報交換をすることにした。
マサルが嬉しそうに言ってくる。
「ハハハ、ノブユキ、20があるな」
「いやいや、お前もだろっ!」
マサルのも、俺のステータスと似たり寄ったりだ。
あーだこーだとお互いのステータスをネタに足の引っ張り合いをしていると、
「おー、やってる、やってな。おバカとーく!」
「逆に、通常運転で安心するでござる」
自称愛されデブことシゲルと、令和遅れサムライことユウジが無遠慮に会話へ入ってきた。
まあ、いつもの流れだな。右手で軽めのハイタッチをシゲル、ユウジの順にしていく。
「で、どうだった?もうチェックはしたんだろう?」
挨拶も早々にガッツき気味に問い掛けるマサル。
当然、今度は4人でステータス情報の交換をする流れになる。
「お前達と一緒かー残念でならんが……それより、チートのゲット方法だな」
嫌味なく失礼なことを放り込んでくるシゲル。
「某もチートがほしいでござる」
「俺も、俺もっ!」
シゲルに同意しながら物欲しげに語るユウジ。そこに被せてくるマサル。
アニメ、漫画、小説の異世界もので当然の如く、主人公が得る『ぶっ壊れスキル』かー。女神の説明中、「女神様、チートを!」や「ぶっ壊れ、
説明の内容を思い浮かべながら、率直な見解を伝える。
「まず、想像しているチートは貰えない……と思う。女神の話では、全員のステータスの底上げと……ダイス・チャレンジでのステータスとスキル。チートスキルのゲットではなく、適正があるスキルの取得、だからなっ!」
「ノブユキもやっぱ、そう思うか、……チートなしかー」
「無念でござる」
「なしかー無しナシかー」
シゲルは大袈裟に天を仰ぎ、ユウジは肩を落とす。それに調子を合わせるマサル。
うーん、俺達にとってのチートは無いかもしれないが、これから行く世界の住人……現地人からしたら、初期ステータスで自分達を超えてくる存在……それは、化け物以外の何者でもないのかもしれない。
そう考えると、初期ステータスの底上げは……チートになる。『ぶっ壊れ』ではないが。
説明の端々に、努力すれば……どんなスキルでも手に入るとか言っていたような……。
あなた方次第で手に入るから……頑張れ的な感じかー。
どっちにしても、俺も右に同じく……初っ端に『ぶっ壊れ』が欲しかった。
無いものねだりしても致し方がない。それよりもダイス・チャレンジで、身近な明るい未来を掴みに行きたい。
自分と変わり映えしないステータスを自慢し合っている3人に声を掛ける。
「それより、ダイス・チャレンジしないか?誰から挑む?……それとも気にせず、バラバラでやる?」
会話を止め、お互いの表情を見合っている。男同士で見つめ合ってどうするんだとツッコみを入れようと思ったところで、
場が一瞬で……色鮮やかになる。
「ほぇー、ダイス・チャレンジするんだー。見てて良い?その前にステータスも教えて~」
「サクラ、見ず知らずの人に声を掛けたら危ないですよー。でも、興味はありますね……お願いできますかー」
「ん、検証大事……御用だ……全て吐け」
「美の女神、降臨」
「ははあー、でござる」
「まずは、このマサルのステータスから是非どうぞ、女神様」
シゲルは固まりつつも心の声を吐露って、ユウジは平伏。マサルは自分の名前を推すことを忘れず、流暢に対応。
まさに、三者三様だ。
それと、言葉に出さずに「お前達、あっちにホンマモンの女神いるからなっ!」ってツッコんでおいた。
でも、3人の言動は理解できる。
視界に入るだけで、鼓動が瞬く間に速くなっている。それほど、可憐で美しいのだ。
それもこんなに近距離で、有り得ないことが起きたのだ。シゲルが唖然としているのも納得できる。何より、マサルが神対応すぎて、尊敬してしまった。
目の前の3人は、同性の女子からも人気で憧れの的だ。
彼女達のことを知り合いの女子に聞いたら、妬みは一切ないそうだ……愛読しているファッション雑誌のモデル達を圧倒するほどの美……そもそも同じ人間でなく『別の生きもの』と認識していると言っていた。
それに、SNSに盗撮したであろう写真がアップされれば、あっと言う間にトレンド1位になってしまう。当然、3人それぞれ非公認ファンクラブが多数あり、一部は国外にもあると聞いたことがある。
一応、巷で言われている3人の『可愛さ』と『美しさ』の比率は、
(可愛さ) (美しさ)
月野木 百桜 5 : 5
東雲 緋七詩 2 : 8
葉月 心音羽 8 : 2
恥ずかしながら、甲乙付けることが出来ずに……ご多分に漏れず、皆と同じで3人推しである。
話が大分、逸れてしまったが……俺も喜んで、ステータス画面を表示して提供準備をするのであった。
気付けば、「俺も、俺も」と周りの男子が列を成して並び始めた。こんなチャンスを逃す手はない、並ぶが勝ちである。
暫くして、彼女達は、ある程度の人数で満足したようで、笑顔で去って行った。
後に残された俺達も満足だ。幸せな気持ちで満たされている。
それに皆、鼻腔が広がっている。残り香を堪能しているのだろう。卑しいとは言わない……それは本能であり、自然の摂理に近い所作のようなものだ……だから俺も自由に堪能する。
周りには、彼女達に見せることが出来なかった者達が、嘆き悲しんでいるが……鼻腔は広がっている。
脳内に焼き付けた彼女達の姿を思い返す……小顔でスラっとした手足、パッチリとした大きめの目にぷっくりした涙袋……美少女の体現かー。
確か、女神が転移時に、プレゼントしたステータス値と、ダイスで手に入れたステータス及びスキルを……現在の肉体と融合し、新たな肉体にしてくれるようなことを言っていた。
スキルによる影響は、主に髪や瞳の色が変わる色素変化。
ステータスによる影響は、主に顔面偏差値がアップする美容変化。
・超不細工 → 不細工
・不細工 → 普通
・普通 → 美人
・美人 → 超美人
まあ、全員に変化がある訳ではないようで、全く変わらない人……超絶アップする人……どれくらいアップもとい変化するかは、個々で違いあるらしい。
吉報としては、ダウンする者は、いないと言っていた。
当然、俺も少しは期待している。今の自分が嫌いとかではない……どちらかと言えば、気に入ってる方だ。
でも、「少しでも格好良くなれたら、嬉しいなー」などと夢想してしまう年頃だ。
お、呆けたいた3人……シゲル、ユウジが復活しつつあるようだ。
マサル以外は、まだダイス・チャレンジが残っている。彼女達と邂逅した幸運が少しでも残っている内に、振っておきたい。
語彙を強めにして声を掛ける。
「やるぞーっ!……ダイスっ!」
「あ、お……おっ!」
「……おーで、ござる」
まだ、たどたどしく不自然であるが、シゲル、ユウジの順で反応が返ってきた。
マサルは、ダイス・チャレンジの見本として実演したからかどうかは分からないが、お褒めの言葉を多めに貰っていた。その余韻に未だ浸っているようだ。羨ましい。
銀ダイスが数回出れば良いのだけど……やる前から少し緊張してきた。
「モブユキ、悪い……待たしたようだなっ!」
「誰から振るで……ござるか?」
現状復帰を果たした2人から声が掛かる。もう大丈夫なようだ。
やっぱり、こういうのは一人でするより、仲間とする方が楽しい。だから、陽気気味に応える。
「もちっ……俺からっ!」
金ダイスも来てほしい……欲が膨らみ過ぎてフラグが立つ前に、振ってしまおう。
そして、少しでも明るい未来を掴みたい。多くのものは望まない。でも少しは刺激のある生活も送りたい。
だって、望んで夢見た異世界に召喚されたのだから……少しくらい
横目に復活したマサルが……ガッツポーズで健闘を祈ってくれているようだ。
なんだかんだ言いながら応援してくれる仲間がいる。
マサル、シゲル、ユウジに見守られながら……手前にある丸い形の『開始』ボタンを押す。
ダイスが凄い勢いで大ジャンプして視界から消える。飛び上がったであろう方向を仰ぎ見ながら願う……
来い、俺の未来!
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