第08話 重要な称号確認

 「ん?ハルー、良いことでもあったの~」

 感が良いサクラが頭をコテンとしながら聞いてきた。表情に出てたかなー。


 「3つ目の称号に付随してるスキルが、中々良くてっ……顔に出てた?」


 「ふにゃ、出てないよー……何となくだよ~」

 「ハル、因みに、どんな称号なのですかー」

 「気になる」


 「誰にも言わないなら……ってか、ニマニマしているから、俺同様に3つ目の称号あるなー!どうだっ、怪しいぞ!」


 「あるよ~」

 「フフッ。ニマニマしていましたか……反省ですねー」

 「もっちロン」


 「誰にも言わないからー教えて~」

 「ええ、他言はしませんよー」

 「言わない……死んだ方がマシ」


 「コトハ、死ぬ必要はないからな!……その前に、言っていいからっ……親切丁寧に噛み砕いて教えてやれ、そういう相手には」


 彼女達が故意にバラスようなことをしないことぐらいは理解している。そんな彼女達から情報を引き出そうとすれば、当然、無理やりとなる。そうなると肉体的または精神的な攻めがあるだろう。もしかすると両方かもしれないが……。

 そんなことにはなってほしくないので、苦痛を感じる前に、俺の情報を引き渡してほしい。情報漏洩は嫌だが、彼女達が何かされる方がもっと嫌だからね。


 俺の思うところがしっかりと伝わっていないかもしれないから、今度、時間をとる必要があるな。


 取り敢えずは、話を3つ目の称号に戻して、


 「じゃー俺から……『多種生体を愛でる者』……多種多様な多くの生物を支配下に置き、愛でた者……生体をスキャンしたり、使役もしくは契約することができる?試してみないと実際のところは分からないが……」


 「おぎゃー」

 「あーあ、なるほど。生きもの系統ですか……納得せざるを得ないですねー」

 「ハルは……どこでもハル……乙」


 ん?3人から同時にディスられた感があるが……。3人共、虫が嫌いだしなー……イメージが良くなかったか。

 特にサクラの反応が過剰に思えるが、俺が原因だから何も言えん。生きものを捕まえては他人の服の中に入れることにハマってた多感な幼少期があった……一番の被害者は常日頃から側にいたサクラだ。今思えば、酷い話だが……。


 思い出してダメージを受けているサクラには悪いが、そのままほっといて、話を進めるため、ヒナタとコトハに視線を向ける。


 ヒナタとコトハも被害者ではあるが、サクラほどダメージを受けていないようだ。2人共、一度、サクラを見て同情しつつも……スルーして話を進めるのに賛成なようで視線を返してきた。


 更に、視線でコトハから了解を得たヒナタが、

 「では私ですねー……『以心伝心いしんでんしん』……生きもののようでー、そうでないものとの意思の疎通を成し遂げる……妖精が見えたり話せたり……仲良くなって力を借りたりー……でしょうか?イメージ的にはそんな感じですねー」


 うんうん、これは、あれーですね。


 「盆栽関係かな?」「たぶん……正解」

 コトハも俺と同様の帰結に至ったようだ。


 ヒナタの趣味に園芸があり、俺の部屋にもヒナタの盆栽コーナが設置されているほどに熱の入れようが半端ない。一方的にヒナタが話し掛けていたように見えていたが、実のところ、会話が成立していたってことであってるかな。称号になるくらだから間違いなく、そうなんだろう。


 うーん、奥深い……園芸もとい盆栽。


 「俺も妖精が見えたら良いのだが……敢えてスキルになるくらいだから、普通は見えないのだろうなー」


 「ヒナタ……羨ましい」

 「どうでしょうねー……でも、見えたら、嬉しいですねー」

 満足そうに微笑んでいるヒナタ。


 ヒナタが終わったので、次は私の番と……気持ち半歩ほど両足でシュタッと前に出るコトハ。気合十分である。


 「次、私……『ドール・コレクター』……数多の人形を作り、愛し倒したものに贈られる称号……人形を作りだす的な……たぶん、ゴーレムとかスケルトン?」


 うんうん、コトハ……人形好きだもんなー。

 市松人形や西洋人形、アニメや漫画のフィギアまで買うのではなく一から作ってるし、当然、ヒナタと同様にコトハの人形コーナも俺の部屋に設置されている。


 「ゴーレムやスケルトンが作れるって、夢があるなー」

 「フフッ。コトハらしい称号とスキルですねー」


 俺の3つ目の称号がヒナタとコトハの称号により、霞んできたようにも思えるが……。


 「ほにゃ~」

 お、サクラが復活したようだ。


 俺が原因だから、特段、優しく言葉を掛けよう。

 「サクラ、大丈夫か?」


 手が届くから、頭も撫でておく。


 「ほにゃー、もう、大丈夫~。……勝手におぞましい映像が脳内再生されて、ビックリしただけだからー」

 気持ち良さそうにしながら答えるサクラ。可哀そうに……。


 正しくトラウマだな。犯人は、幼き頃の俺。反省しつつ、サクラに称号を聞くことにする。


 「私は……『天真爛漫てんしんらんまん』……心の自由を体現しもの……言霊ことだまが使えるみたい?」


 「「「えっ?言霊?」」」

 ヒナタとコトハも俺同様に意味不明みたいだ。


 「言霊……言葉に力をのせるー的な……ヤツ?」


 「ふにゃ?」

 「ええ……サクラ本人が解っていないようですがー恐らくは」

 「摩訶不思議な力……サクラっぽい」


 言霊ことだま……発した言葉どおりの結果を現す力。

 例えば、大岩があって、それに「割れろ」って言ったら、割れる的な……大木があって、それに「爆っせろ」と言ったら、木っ端微塵になったり的な……。

 あとは、ムカつくヤツを見掛けて、「死ね」って言ったら、突如、パタって倒れてお亡くなりになったり的な……。


 「これは、要検証案件ですな」

 「ええ、これは……側にいる私達にも危険が及びそうですねー」

 「破壊王……爆誕」


 「破壊だけではないぞ……洗脳も有り得るかもしれない……」

 「ええ、十分、可能性はありますねー」

 「サクラ……監禁……ではなく捕獲」


 「えっ?……監禁はー嫌だよ~」


 「監禁は、たぶん冗談だが……出来るだけ最優先で、サクラの【言霊】を検証しよう」

 「サクラのためにも、私達のためにも……それが最善でしょうねー。検証した結果、そこまで効果がない可能性も低いですけど、ありますからねー」

 「ショボいスキルに……1票」


 ショボいスキルでなくても、サクラ自身が使いこなせなくて、効果もしくは威力を発揮できない場合もある。条件も色々あって、そもそも発動すら出来ない可能性だってある。

 名称だけで、ここまで皆をビビらせるスキルをゲットしているとは……サクラ、恐ろしい子である。


 「えっとー」

 「ん?サクラ、どうした?……さっきの監禁は、冗談だよ」


 モジモジはしていないから、小用でもお花摘みでもないな。


 「もう一つあって~」

 「ん?何が?【言霊】の効果とか用法か?」


 「んん、違くてっ。称号だよ~」

 「「「えー--っ?」」」


 ビックリしてるから、唖然?愕然?驚愕?……どれでも良いかー。頭が冴えている様で冴えてないのかなー。なんだろう、この状態……?


 女神がこの空間にいる全員に配ってる称号は、便利だが強力とまでは言えない。現地人からしたら「何を贅沢なっ!」と一喝されそうだが……。

 だが、俺達が個々でゲットした称号は、間違いなく強力だと思う。強者のデータを持ってないので、もしかしたら、強力でなくショボい可能性もありはするが……。


 取り敢えず、5つ目がないか先に確認してから4つ目の称号を教えてもらおう。うん、そうしよう。


 「……サクラ?」

 「ふにゃ?」

 「……因みに、5つ目の称号……は、ないよな?」


 俺の問い掛けの意図に気付き、現状復帰したヒナタとコトハもハッとして目を見開いている。2人と目が合ったので頷いて、サクラの返答を固唾を呑んで待つ。


 「みんな、真剣な表情になってーどうしたの?……えっと、5つ目は、ない、ないよ~4つだけだよ~」


 俺、ヒナタ、コトハの3人は、止めていた息を吐き出し、新たな空気を吸い込み……安堵した。


 「サクラ?……6つ目は?」

 「にゃい、ないよー……ハルーそんなことある訳、ないよ~」


 サクラが何を「バカなことを~」的な雰囲気で言ってるが、……一番ありそうで、あるんだよなー。本人の自覚はないようだけど。


 これで、サクラが称号4つ持ちであることが確定かなー。で、中身だよねー。


 「で、称号の中身はー?」

 軽い感じでサクラに聞いてみた。


 「えーっとー、……『夢見る少女』……夢の中で夢の世界を創りし者に贈られる称号……夢の世界から住人を連れて、くる?……誰か来るのかなー楽しみ~」


 連想したのが……一風変わったヌイグルミである。

 当然、俺の部屋にもサクラのコーナーがある。そこには、既存のヌイグルミをバラしてカスタマイズし直した……見たことが無い独創的なヌイグルミ達が所狭しとギューギューに置かれている。

 それぞれのヌイグルミには、それぞれの独創的な名前とストーリがあるらしい。教えてもらったけど……流石に覚えていない。


 「ヌイグルミ……の召喚?」

 「ええ、私も同感ですねー……ヌイグルミだと思いますよー」

 「タウタウ……五郎侍マサカリ之介……13世」

 俺に同調して、ヒナタとコトハも言い切る。もうヌイグルミで確定だろう。サクラと関係のないものが称号になろうはずがないからな。


 「ひぇっ?……わかんないよー。……あっ、コトハー、『13世』じゃないよー『13戦』だよー」

 否定をしないと言うことは、可能性はあるな。


 コトハが言っていたのが、学校にも連れて来ていたヌイグルミの名前で『タウタウ五郎侍マサカリ之介13戦』……らしい。非常に長いが、確かサクラの他のヌイグルミ達も同様の長さの名前持ちだったはず。


 「俺達の3つ目の称号……強力のような気がするなー。サクラは、4つだけどなっ」

 「強力なのは、界を渡ったことによって強化されるとか何とか……だったようなー……この場に辿り着いた時点では、3つ以上の称号持ちはそんなに居ないようなことも説明されていたようなー……」


 ん?そんな説明あったかなー。それよりもヒナタの記憶に残る説明内容が本当なら、この空間にいるほとんど者は、3つ目を持っていないってことになる。


 「なるほど……強化された称号かー……4つ持ちのサクラは、希少動物的な感じになるのかなー……」

 「ええ、おそらくはー……それに私達も同様な気がしますねー。フフッ」

 サクラとコトハのじゃれ合いを見ながら、ヒナタから抜けていた称号についての情報を補填し終えた。

 

 まあ、称号については、こんなもんかなー。お腹いっぱいです。

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