第03話 ダイス・チャレンジ

 「俺の『幸運』50、……どう思う?」


 「ふつーだよ~」

 「可もなく不可もなくでしょうかー」

 「ん、そこそこ……ボチボチ」


 お、ふつーなのね。低いのは何となく嫌なので、取り敢えず、セーフかなー。そもそも、なぜ、普通って分かるんだろうか。

 平均ステータスが50って言う女神の忠言に倣っているだけかもしれない……うーん、悩ましい。


 そんな俺の心中を察してか、ヒナタが、

 「40~50がほとんどで……中には20、30の値の人もいましたよー。あとは、60ちょいが2人……70が1人だったでしょうか。……参考値としてですがー」


 サクラは、「うーん、どうしたの?」って感じで、言葉の意図を分かってない。でも、これはこれで……通常運転。コトハは、心得顔で成り行きを楽しんでいるようだ。


 ヒナタの内容から、少なくない人数のステータスを見ていることが分かる。

 ん?アカリやヒヨリ達と見せ合いっこでもしたのかなー。それとも、適当に周りの人達と情報交換を兼ねて『ステータス・オープン』してしまったか。いくらなんでも、それはしないか……。


 ここは、ストレートに聞いてみよう。

 「アカリやヒヨリ達とステータスの情報交換をしたの?」


 「アカリ達とは、してない……必要なし。ビシッ」

 答えようとしたヒナタより先にコトハが、短めの言葉で教えてくれた。


 「周りにいたその他大勢から、ステータスを教えて頂いたんですよー……皆さん、優しいですねー。あ、それと、私達のステータスは……晒してませんよーフフッ」

 コトハを補足するように、したり顔でヒナタが情報を付け足した。


 おお、なるほど。情報だけ抜いたと……流石だ。ヤリ手だー。

 普通のやり取りなら、見せたら次はそっちも見せろとなるはずだが、それを許さず、一方的に、さも当然とそれを為す3人に感心する。スゲーし、有難いが……恐ろしくある。


 取り敢えずは、俺の『幸運』値が普通で、サクラとヒナタが高め……コトハがぶっ飛びって感じかな。


 ステータス確認も簡単ではあるが一通り終わったので、

 「それじゃー、俺からダイス・チャレンジをやるね」

 

 「待ってた~」

 「楽しみですねー」

 「ワクワク」


 声には出さずに、頭の中でイメージしてみる。

 『ダイス・チャレンジ』。


Dice★Challenge------------------------

ダイスを振って、ポイントとゲットしよう!


 ①ステータス・ダイス (残り10回)

 ②スキル・ダイス   (残り10回)

---------------------------------------


 お、良かった。声に出さないくても問題なく光の帯に囲まれたメニューが目の前に表示された。気持ちゴージャス感が出てる。


 「聞いてた通り、ステータスとスキルの2種類があるな」


 「ほぇー」

 「10回ずつ……ですかー」

 「輝け、『幸運』50」


 彼女達の反応から、しっかりとメニュー画面が見えているようだ。

 サクラは、覗き込んでるし、……ヒナタは、ちょっと思案中?かな。それと俺の『幸運』50が早速、コトハによって貶された感はあるが、悪意がないのは分かってるので……気にせずスルーである。


 それよりも、項目をタップしてみる。お、ポップアップ表示。


 内容を順次、確認していく。


--------------------------------------------

 ①ステータス・ダイス (残り10回)

--------------------------------------------

 ⇒ダイスの出目が、ステータスポイントとして入手することが出来る

 ⇒入手したステータスポイントをステータスに割り振ることが出来る

   (注1)知力、技巧、俊敏は、上限100

   (注2)幸運は、対象外

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  【提供割合】

   ・金ダイス 5%(出目:200、300、400、600)

   ・銀ダイス 10%(出目:50、60、70、80、90、150)

   ・銅ダイス 85%(出目:10、12、14、16、18、30)

--------------------------------------------


 出現するダイスは、……3種類。

 金は4面ダイスで、銀と銅は6面ダイスかー。金が5%、銀が10%なので、提供割合的に銅ダイスが中心になりそうだな。

 特に『幸運』50の俺からしたら、最悪、10回全部が銅になる可能性を捨てきれないのが……怖い。


 ゲームなら、やり直しが出来るが、……これは現実……ヤバイな。


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 ②スキル・ダイス   (残り10回)

--------------------------------------------

 ⇒ダイスの出目が、スキルポイントとして入手することが出来る

 ⇒入手したスキルポイントでスキルを取得することが出来る

   (注意)レベルがあるスキルは、Lv.6まで取得可能

--------------------------------------------

  【提供割合】

   ・金ダイス 15%(出目:1000、2000、3000、4000)

   ・銀ダイス 35%(出目:100、150、200、250、300、350)

   ・銅ダイス 50%(出目:10、20、30、40、50、60)

--------------------------------------------


 ステータス・ダイスに比べ、スキル・ダイスの方は、そこまで絞ってないが……。

 俺の『幸運』50では、金が1回出るのも怪しいなー。うーん、銀は1回出そうな気もしないでもないが……2回とかは厳しいような気がする。


 スマホゲームでの爆死をここで再現をする訳にはいかないしなー。常日頃から爆死に縁のない彼女達からは、気負ったり、張り詰めた雰囲気は感じない。……羨ましい。


 ステータス・ダイスをタップして、次に進む。


 すると、1mほど前の空間に直径20cmほどのダイスが現れた。手前には丸い形の『開始』ボタンもある。


 このボタンを押すとダイスを振ることができるのね。


 うんうん、なるほど……。


 「ハルー、やらないの~」

 「ん?どうしましたー」

 「爆神……降臨?」


 当然のように爆死を繰り返す者……爆神。


 何気にコトハ……恐ろしいこと言ってる。それに、本当にそうなりそうなので声に出さないでほしい。


 「コトハ、ちょっと良い?……ここをタップしてみて」

 「ん、了解」


 己に自信がないのなら、それを成すことが出来る者に託すのもありだろう。取り敢えず、『幸運』値が俺達の中で一番高い、コトハの力を借りることにする。ゲームだったら他人任せにせず自身で挑むが、これはやり直しのきかない現実である。用心せねば……。


 コトハは、俺の側にコトコトとやって来て、立ち止まることなく、そのままの勢いで腕ごとボタンへ振り下ろした。


 「……ふんすッ」


 コトハの腕がボタンを通過する。


 「ん?……タップ……できない」

 怪訝な表情で言うコトハ。納得できないようで、諦めずに腕を振っている。


 サクラとヒナタもこの現象に興味があるようで、


 「私も、私も~」

 「面白そうですねー」

 俺の了承を得ず、サクラとヒナタも参戦してきた。


 まー、当然の結果だな。残念ではあるが想定内。他者には見えるが、触れることは出来ない仕様なのね。なるほど。

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