第02話 渋い客と上客の違い

 周りを見渡すとより一層、喧騒が全体に広がっている。


 バカ騒ぎしている連中以外も、仲間で輪になっているグループが所々に垣間見れる。


 ここからハッキリと見えないが、何かが上に向かって飛び出しているようで幾筋の線が見える。更に、至る所でエフェクトが発生し、キラキラと色彩豊かに輝いている。


 「おおおー--っ!!」

 盛大な雄叫びが上がる。おそらく銀色に輝いてる所だろうか。


 「……幻想的な輝きだね……おそらく……ダイス・チャレンジだろうね」

 「……だね」

 レンの呟きに首肯して肯定する俺。


 「……お祭り騒ぎだなっ……あー、早くヤリてーっ!」

 昂ぶりを抑えながら言うカイ。


 ダイス・チャレンジ……結果によって、追加できるステータス値とスキルが変わってくる。当然、これから俺達もやるイベントである。


 丁度その時、キラキラオーラ全開の集団、それぞれの幼馴染の女の子達がガールズトークしながらだろうか人垣を抜けてきた。


 「ほぃ、ほぃ、やーほだよ。ハル~」

 「本当にこっちとは、流石ですー」

 「サクラ、すごっ」

 迷いなくここに辿り着いた先頭のサクラが得意満面で手を振りながら近付いて来た。


 俺達は、遠目で既に人混みを縫いながら近付いてきているのを視認していたので驚くことなく、笑顔を返しながら彼女達を向かい入れる。


 俺の所には、サクラ、ヒナタ、コトハ。

 カイの所には、アカリ、ミツキ、イチカ、ナナ。

 レンの所には、ヒヨリ、スズ。


 「ハル、レン、俺達は……あっちでやるわ」

 右奥を指しながらカイが伝えてきた。


 何をやるかと言うと、ダイス・チャレンジである。カイ、レンと話し合ったわけではないが、当然の如く、それぞれでするようだ。俺もそれに賛成なので頷く。


 「なら……そっちでやろうかな。ハル的に注意事項とか、ある?」


 レン達は、左側でやるらしい。それと注意事項かー、うーん、……これから俺達は、ダイス・チャレンジに挑むわけで、少しでも運を上げるべきだからね。


 「そもそも可能かどうか分からないけど……『幸運』50の俺達は、自分だけで振らずに、その値が一番高い人に手を添えてもらったりしてから振った方が良いかもね。気休めではあるけど」


 気休めも大切である。

 ステータスやスキルについては、各々、ゲーム知識がある訳だから口出しの必要なし。

 それが終わったら、頭の中で女神に完了した旨を伝える?念じると勇者召喚の場に転移してくれるらしい。そうだなー。うーん、あとは、


 1人だけ違うところに転移されたら痛過ぎるからなー……小説で良くあるパターン回避のため、

 「女神に転移される時に、お互いの手を握ってた方が良いかなー。念のため。……そんな感じ」


 「おう、わかった。じゃーそろそろ行くわ」

 「了解。一旦、お別れだね。じゃーね」


 「俺達は、ここを使うよ。それじゃー、世界レイヴィアで」


 カイとレン達がこの場を去るのを軽く見送る。


 俺達は、ここで良いよね。その他大勢の生徒達とも適度な距離があるので丁度良い。


 まず、3人の『幸運』値の確認からかなー。気になる。

 日頃の行いが影響しているのか分からないが、引きの強さは俺より良かったので、値は高いはず。


 「ハルー、ステータス教えて~」

 「気になりますねー」

 「負けない、ふんすッ」

 サクラの言葉にヒナタとコトハも同調。


 「了解っ!」

 当然、3人には教えるつもりだったので、躊躇なく上から順に値を言っていく。


 「ハルー、すごいよ~」

 「ええ、これは……予想以上ですねー」

 「ま、負けた……ガーン」

 

 「サクラ、ヒナタ、コトハも教えてっ」


 「ほぃ、ほーぃ、『ステータス・オープン』」

 「サクラ、口で言わなくても出来ますよー」

 「……ぐはぁッ!」


 「えー、ヒナタ……教えるの遅いよ」

 「さっきも伝えましたよー」

 「サクラ……ハズッ」


 「えー、いつ?……知らないもん」

 「いつでしょうかねー……おかしいですねー」

 「サクラ……興味がないことは……常に自動スルー」


 「えー、コトハ……ひど~~ぃ」

 「サクラ、早くもスキルをゲットですかー……それは、それは、フフッ」

 「ん、裏山」


 コトハもサクラ同様に知らなかったようだが……回避に成功したようだ。


 彼女達3人のいつもの掛け合いに緊張感の無さを感じながら、……口頭で飛び交う値を脳内にメモっていく。


 まずは、サクラから、

Status---------------------------------

名前:サクラ・ツキノキ(月野木 百桜)

種族:人族(♀、15歳)

階位:Lv.1


体力: 70(50)(0)

魔力:100(50)(0)


物攻: 60(40)(0)

物防: 50(40)(0)

魔攻: 90(40)(0)

魔防:130(40)(0)


知力:120(30)(0)

技巧:110(30)(0)

俊敏:100(30)(0)

幸運:130(20)

---------------------------------------


 身長は、160cm。

 髪型は、全体的にしっとり感有りのミディアムのぱっつん前髪で、毛先は、外ハネ、内ハネと遊んでいる。


 家がお隣さんで、親同士が親友だったため、お互いの家を赤ん坊の頃より行き来し、物心が付いた頃には、常に一緒に行動するようになっていた幼馴染のサクラ。


ステータスは、予想より有り、全体的にバランスが取れているように感じる。それに魔力系の項目が高いのかな。

そして、目的の『幸運』は、俺を遥かに凌駕する値である。


 次のヒナタは、

Status---------------------------------

名前:ヒナタ・シノノメ(東雲 緋七詩)

種族:人族(♀、15歳)

階位:Lv.1


体力: 60(50)(0)

魔力: 80(50)(0)


物攻: 50(40)(0)

物防: 50(40)(0)

魔攻: 80(40)(0)

魔防:110(40)(0)


知力:130(30)(0)

技巧:130(30)(0)

俊敏:110(30)(0)

幸運: 90(20)

---------------------------------------


 身長、166cm。

 髪型は、セミロングのローポニーテールからすっきりとした低めお団子で纏めてからの斜め前髪。


 幼稚園の桃組でサクラとコトハに出会い、仲良くなる。それ以来、小学校、中学校へ行ってからも常に3人で行動している。サクラ同様に幼馴染の一人でもあるヒナタ。


 サクラと比べるとステータスに多少の差があるが、誤差だろう。当然、俺より『幸運』が高い。


 最後に、常日頃から金目の物を拾ってしまう期待のコトハは、

Status---------------------------------

名前:コトハ・ハツキ(葉月 心音羽)

種族:人族(♀、15歳)

階位:Lv.1


体力: 50(50)(0)

魔力: 90(50)(0)


物攻: 70(40)(0)

物防: 50(40)(0)

魔攻: 90(40)(0)

魔防:120(40)(0)


知力:110(30)(0)

技巧: 80(30)(0)

俊敏: 80(30)(0)

幸運:220(20)

---------------------------------------


 身長は、155cm。

 髪型は、ショートボブのマルっとしたフワフワ感有りの柔らかい印象のアシメ前髪。


 サクラ、ヒナタの幼馴染であり、親友でもあるコトハ。俺とも当然、同様である。


 因みに、今の俺の髪型は、ロングで頭全体を7:3で分け、7側をフワフワ感有りのサイド三つ編み。

 サクラ、ヒナタ、コトハに好きなようにアレンジされてしまっている。弄られるのは嫌いでないので、なされるまま状態。偶に、何度もスタイルが変わる日もある。


 ステータスは、サクラ、ヒナタと大体同じだが、『幸運』値が俺の4倍以上ある。こればっかりは、やっぱり感が半端ない。


 そして、改めて、『幸運』値を比べてみる。


     俺: 50

   ヒナタ: 90

   サクラ:130

   コトハ:220


 俺の50は、彼女達と比べて低い。実際に目の当たりにすると残念感が半端ないが、少なくとも同値の存在であるカイとレンがいるので、精神衛生上……救われている。

 俺達が低いのか、俺達が普通で、目の前にいる3人が高いのか。おそらくは、後者だろう。


 スマホゲームのガチャで、狙いのキャラを次々に当てていく彼女達の姿を回想し納得してしまう。コトハは、サラッと毎度のコンプ……運営からすれば、渋い客である。


 因みに、彼女達と違い、俺は爆死が多かったので……上客である。


 ここにあるステータスが自身の能力の全てとは、全く思っていないが、能力の一つであることは間違いないなく……純然たる事実である。

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