そこにあるけど、気づかないこと

愛おしい。

そういう感情を不意に思い出した。


いろいろなものが終わった。終わってしまった。時間は不可逆だから嘆いても仕方がないのだけれど、大きすぎる余韻に、なぜだかとても泣けてきた。


今ある幸せもいつか終わってしまうんだ。深い哀しみが心を覆う。全てのものはいつか必ず終わるなんて、とっくに知っているのにね。


ベランダに出て、夜風にあたる。肌寒い。静かに涙を落としていたら愛犬が側へ寄ってきた。なんて、愛おしいんだろう。


わたしたちは日々いろいろなものを忘れて生きている。夕焼けが綺麗なことも、風が心地よいことも、どうしようもなく大切な存在が近くにいることも。

終わってしまってから気がつくのではなんと遅いことか。いまこの瞬間の幸せをありのまま享受できないのではなんともったいないことか。


いつか終わってしまう哀しみは、いつかが来たときに感じてあげればいい。今はただ、溢れ出す涙にしあわせを添えて、過ぎ去ったものに敬愛を。


「恐れるな 愛おしい日々を」


この先も、ずっと探していたい。ずっと見つめていたい。

そこにあるけど、気づかないこと。

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