学生生活の終わり
「あ、お疲れ〜」
今でも忘れることはない。
その男は笑みを浮かべながら向こう正面から、話しかけてきた。5月中旬。自分が大学生活に少し馴染んできた頃、入学してから一ヶ月ほど経った時の出来事だった。
一限目を終えて二限目の教室へ向かうところへ入れ違うような状態で話しかけた彼は、確か同じ学部学科の人だった気がする。しかし、名前は覚えていなかった。
言い訳をさせてもらうならば、最近人と会いすぎて顔をまともに覚えていなかったのだ。出席番号の近い者に話しかけ、snsで#春から○○大で繋がった人と顔合わせをし、わけられたグループの人達と名前を教え合い。とにかく繋がりを作るために色々話しかけた結果、ほとんどの人たちの名前と顔がつながってなかった。
だから話しかけられた時パッと思いつかなかった自分は、とりあえず話しかけてきたということは少なくとも好感触なのだろうと思いフランクに挨拶を返そうと思い立った。
今考えれば本当に後悔している。よく考えればわかることであったのだ。
同じ学部学科であるのに、件の彼は、今から学部棟に向かうのである。しかも二限目は第二外国語であるため学部棟に用はない。
普通は、あり得ないのだ。
━━━━学年が違いでもしない限りは。
そして僕は、すれ違いざまにこう返した。
「うぃーーーっす(笑)」
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