短編

クエルア

舞台役者

『現代OLの日常』


見られている気がする。いや、見られている。


ゆうみ『そんなことないよ』


明確に認識をしているわけではない。見られている。そうとしか形容しようのないこの感覚は、自分で言葉に落としこむことは不可能であった。


ゆうみ『ううん、うちのとこはブラックじゃないから大丈夫』


光が当たっているとその感覚は弱くなり、また反対に暗くなるとその視線は強く感じた。今は夜のはずだから当然日の光はなく。

頭上から立っている光は部屋の明かりだろう。


ゆうみ『うん、もう寝るね。バイバイ』


手首を大袈裟に動かして電話を切る仕草をする。


ゆうみ『さて明日も仕事かあ』


シャワーも浴びてご飯も食べてパジャマを来た彼女は、ワンルームのベッドの上でそう独りごちねばならない。

布団に潜り手元のリモコンで照明のスイッチを切る。真っ暗になったその空間。瞳には、ひな壇に並べられたパイプ椅子に座る人々の視線と、三脚に乗った大きなカメラがうつった。



【ゆうみ】はアッと声を出したはずであったが。



意思とは関係なしにきびきびと体は動き始め、小道具を片付け始めた。

そしてゾロゾロと知らない人々が……































役者がキャラクターを演じている時、それはもう一つの人格たりえるのだろうか。深淵に覗かれていることを知った彼女は、深淵から光を覗く。







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