内緒−ずっと仲良く− (現代ファンタジー)
女の子は最近お母さんに怒られてばかり。
「遊んだらしっかり片付けなさい」
「ほら、またここの物を動かしたままでしょう」
そんなことを言われても、女の子には身に覚えの無い事ばかり。
「お母さん、これ、私じゃないよ」そう言っても「あなた以外に誰がいるの?」と聞く耳を持ちません。
女の子はとうとう泣きだしてしまいました。
遊んだ後はいつもしっかり片付けるし、物をむやみに動かしたりしないのに。
どうして私のやった事じゃないのに私が怒られるの?女の子は悲しくなりました。
泣きつかれた後、思ったのです。
私が片付けをした後にまた散らかしている人がいるのだと。女の子はどうしても、犯人を見つけ出したかった。お母さんに「私じゃなくてこの人が犯人だよ」と言いたかったのです。
次の日から、女の子の犯人探しが始まります。
女の子は今までどんな時に部屋が散らかっていたか考えてみる事にしました。あの出来事はどんな時に起こっていたでしょうか。いつも、お母さんのいない時に起こっていなかったっけ。
女の子は、早速、部屋を荒らす犯人探しをする為に動き出します。
お母さんがいない時に起こるので、お母さんが買い物に出掛けてから行動開始です。
でも、どう探せば良いのか見当もつきません。とりあえず、いつものように着せ替え人形で遊んでみることにしました。他のおもちゃは出さず、おもちゃ箱の中です。
いつもと同じようにしていれば、何かが起こるかもしれません。
なるべくいつもと同じように、でも、しっかり周りの音に耳を傾けて。
ずっと遊んでいた女の子ですが、何も変化が無いので、一旦遊びは中止です。
お腹が空いた女の子は、おやつとジュースを取りに台所へ。着せ替え人形を床に置き、そのまま部屋を出ました。
お母さんが今日のおやつにと準備していたポテトチップスと、冷蔵庫に入っていたぶどうジュースを両手に持ち、女の子は部屋に戻ります。
戻ると、女の子はビックリしました。
なんと部屋の一面におもちゃが散乱していたのです。女の子が遊んでいたのは人形のみで、他のおもちゃは出していません。きっとこれも、普段から部屋を散らかしている犯人の仕業です。
女の子が部屋を出ていたほんの数分の間に散らかしたのです。
部屋の窓には鍵がかかっているし、玄関も鍵を閉めています。こんな状態で人が入って来れるはずありません。
女の子はこわい気持ちを抑えて声を上げます。
「ねえ、誰が部屋を汚くしてるの?」
女の子の声に反応するものはありません。
立ち尽くしていた女の子でしたが、散らかった部屋の片付けを始めました。このままではまたお母さんに怒られてしまいます。目にはどんどん涙が溜まっていき、その涙
は、女の子が遊んでいた人形へと落ちました。
女の子がその人形を手で拭おうとした、その時でした。
「どうしてないてるの?」
人形が話かけてきたのです。女の子はビックリして拭おうとした手を引っ込めてしまいます。
「そういえば、きのうもないてたね」
人形の言葉に、女の子は俯きました。
「片付けをしても、部屋がすぐ汚くなって、お母さんに怒られるの」
その言葉に、今度はビックリするのは人形の方でした。
「そうだったの?」
「うん」
女の子は身に覚えの無いことでお母さんに怒られるのがとても辛く、そして相談出来る相手もいなかった為か、話していて涙が止まりません。
「ごめんね。わたしたちがかってにうごいていたからだね」
人形の言葉に、女の子は顔を上げました。
「いつもはこからでてればずっとあそんでもらえるとおもってたの。かってにはこからでちゃってごめんね」
しょんぼりした人形の言葉に、女の子の涙は引っ込んでしまいました。
「じゃあ、犯人はおもちゃ達だったんだ!」
それから女の子は、みんなに片付けの後はじっとしているように言いました。
その代わり、おもちゃ箱を新しくしました。
今までは一つの大きな箱に無造作に入れられていたおもちゃ達。でも今の女の子は、おもちゃ達が動くことを知っています。
きっと、おもちゃ箱は真っ暗でぎゅうぎゅう詰めで辛かったに違いありません。
いくつかの箱を用意し、ぬいぐるみ、人形など種類で入れる箱を分けます。そして更に、箱にはふかふかの布を入れました。これでみんな気持ちよく過ごせるはずです。
もちろん女の子は「もし出ちゃっても、ちゃんと戻ること」も約束しました。
女の子のそんな変化をお母さんは不思議そうに見ていました。
片付けのことはもちろん、なんだか前よりもおもちゃ達を大事にしているように見えるからです。
「何か心境の変化でもあったの?」
お母さんにはもちろん言えません。
もともと部屋を散らかしていたのがおもちゃ達だったことも、おもちゃ達が寂しくて出てきてしまったことも。それにおもちゃ達とも約束しています。
「内緒!」
お母さんには内緒だよって。
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