十ノ環・四大公爵会議2
「ブレイラっ」
背後から抱きしめられました。
私は小さく笑って、いたずらっぽく聞いてみる。
「あ、だから政務中だったのに出迎えてくれたんですか?」
「それもあるが、俺の妃を俺が迎えるのは当然だ」
「私はまだ妃ではありませんよ」
「時間の問題だ。ならば今そう呼んでも遅いか早いかの違いだろ?」
「そんな理屈聞いたことがありません。フェリクトール様が頭を痛めていたんじゃないですか?」
「……お前はどっちの味方だ」
「ふふふ、あなたとイスラの味方です」
うなじに顔を埋められ、軽い音をたてて吸われました。
じんっとした甘い熱が灯って振り返ると、唇に口付けが落とされる。
唇を触れ合わせながらハウストをちらりと見ると、彼の鳶色の瞳が爛々として少し怖いです。でもその瞳に映る私の瞳は熱に潤んで、彼に暴かれることを期待するそれ。
「ハウスト……、んっ……」
体の向きを正面に変えると、唇がしっとりと重なる。私も背伸びをして彼の首に両腕を回しました。
角度を変えて何度も重なる唇。食らうような口付けは背中が反れるほどで、腰を抱かれていなければ、私きっと引っ繰り返っていますよ。
「ハウスト、まって、ください……」
口付けの合間に訴えました。あなたの口付けは嬉しいけれど、ここは外です。
彼の唇に指を置いてお願いします。
「ここは外です。どうか中へ」
「心配するな。魔界にここを見下ろせる高殿はない」
「そういう問題ではありません」
ハウストの眉間に皺が寄りました。
そんな顔してもダメです。だから。
「お願いします。ハウスト」
そう言って彼の唇を指でなぞり、指越しにそっと口付けました。
私ができる精いっぱいのご機嫌取りです。
手練れの彼には足りなかったかと不安になりましたが。
「わああっ、ハウスト?!」
いきなり抱き上げられてびっくりしました。
ハウストの頭にしがみついて抗議してやります。
「こらっ、いきなり危ないじゃないですか」
「お前が悪い」
「人の所為にしてはいけません。だいたいどうして私が悪いんですかっ」
「それを分かっていないなら、やはりお前が悪い」
ハウストはきっぱり言うと私を抱いたまま歩きだす。
寝所に向かって大股でずんずん歩く様は性急で、なんだか恥ずかしくなってしまいます。
そしてベッドに降ろされると彼がそのまま覆い被さってきました。
「ハウスト……」
見上げるとハウストの端正な容貌が近くにあって、私をじっと見つめています。
手を伸ばせば触れる距離。それが嬉しくて笑いかけると、彼が優しく目を細めてくれました。
「ブレイラ、愛しているぞ」
「はい。私もあなたを、心から」
私が答えると距離が近くなり、唇に唇を重ねられました。
徐々に口付けが深くなり、同時に私のローブが乱されていく。
ハウストの大きな手が私の体の線をなぞりながら降りていき、ローブをゆっくりとたくし上げていきます。
するすると裾があがって、足、太ももまで彼の前に晒される。
何度も夜を共にしましたが、暴かれていく時はいつもドキドキして落ち着かない気持ちになります。
「あ……っ」
内腿に手を置かれて撫で上げられました。
背筋にぞくりとした甘い痺れが走り、彼を見つめると宥めるように口付けられる。
「ブレイラ、足を開けろ」
「いいですけど、ダメですっ……」
「なんだそれは」
ハウストが訳が分からないと眉間に皺を寄せました。
でも私は答えることができなくて、「……秘密です」と顔を背けました。
だって言える訳ないじゃないですか。まだ始まったばかりなのに、体に熱が灯ってしまっているなんて恥ずかしいです。
下半身の反応を見せたくなくて、太ももを擦り合わせるようにぎゅっと閉じる。
「ブレイラ?」
「…………」
無言で足は閉じたまま首を緩く横に振ります。
そんな私にハウストがくくっと喉奥で笑いました。
「いいぞ、気の済むまでそうしていろ」
「え?」
意外な言葉に顔を向けました。
目が合って嫌な予感に背筋が冷たくなる。だって、彼はなんとも楽しげな顔をしています。
「触ってくれと自分から言わせてやろう」
「えっ、ちょ、ちょっと待ってくださっ、わあああっ!」
体がひっくり返されて俯せにされたかと思うと、腰だけを高く上げさせられました。
まるでお尻を差し出すような恰好です。
「いきなり過ぎです! 待って、あ、やめてください!」
慌てて抵抗しようとしましたがローブの裾がひらりと捲られ、あろうことかハウストがローブの中に入ってきたのです。
「ハウスト?!」
さっきまでのうっとりするほどの格好良さや甘さはどこへ行ったんですか?!
ローブの中から追い出そうと前へ這って逃げようとしました。
でもその前に腰を鷲掴まれて引き戻されてしまう。
「や、やめっ、うぅっ、なんてことを……!」
あなた魔王でしょう! 稀代の賢帝とも称されるあなたが、ローブの中でもぞもぞとっ。こんなの絶対に魔界の、いいえ、三界中の人々に見せられません!!
「逃げるな」
「逃げないわけないでしょう! 離してくださいっ、やっ!」
隙をつかれて下着を下ろされました。
お尻を大きな手の平で包むように掴まれ、その奥にある後孔を曝される。
「ひあっ!」
後孔にふっと息を吹きかけられたかと思うと、ぬるりっと温く湿った感触。
背筋にぞくりとした甘い痺れが走って全身から力が抜けそうになる。
でもハウストはそこへの愛撫をやめてくれません。
それどころか舌先を捻じ込まれます。
「ああっ、待ってくださいっ! そんなっ……」
両腕で体を支えることもできなくなって、上半身がぺたりと崩れ落ちました。
しかし腰に腕を回され、そのまま背後にいるハウストへぐいっと引き寄せられます。
「んッ、ああ、あっ……!」
ぞくぞくとした甘い感覚が背筋を駆け上がり、後孔がぐずぐずに溶かされていくようでした。
しばらくしてようやく解放されるも、後ろを振り向けばローブの塊。中にはもちろんハウストです。
「ハウスト、いい加減に、出てきてくださいっ」
乱れた呼吸を整えながらハウストに抗議しました。
ローブの中でごそごそと、そんなの破廉恥です。
「だいたいそんな所に入ってなにが楽しいんですか」
呆れ混じりに言うと、ハウストがローブの裾を捲ってようやく出てきてくれました。
でも彼はローブの裾を持ったままで、またいつ入られるか分かったものではありません。私は俯せのまま捲られた裾をきちんと直し、改めてハウストを睨みました。
もちろん怒ってますと顕わにしてやります。少しは反省すべきなのです。
しかし。
「お前、よくひらひらさせているだろう」
「……まあ、そうですね。ローブですし、歩くとそうなりますね」
女官たちに用意される毎日の衣装はローブなど裾が広がっているものが多いです。
それがどうしたのかと疑問に思っていると、ふむっと頷いたハウストが真顔で答えてくれる。
「目の前をひらひらひらひらして歩かれる度に思っていたんだ。あの中に入ってみたいと」
「バカですか!」
思わず声を上げていました。
なんてこと言うんですか、この人は本当にっ!
「バカとは失礼だな。だが、男は本命を前にするとバカになるらしい」
「あ、あなたという人は」
顔が一瞬で熱くなりました。
嬉しいと思ってしまう自分が恥ずかしいです。
「……誤魔化されませんから」
「それは残念だ」
そう言いながらもまったく残念そうではありませんね。
それどころか俯せの私に覆い被さり、背後から耳に口付けられる。
「視界にお前の尻しか映らないというのも、なかなか悪いものではなかった。絶景だったぞ」
「今は不満ですか?」
「まさか、お前の羞恥に赤くなる顔はどれだけ見ていても飽きない。俺の好きな顔だ」
ハウストが耳元で低く囁きました。
その声色は甘く響いて、ずくんっと腰が重くなる。
私ばかり翻弄されているみたいでなんだか悔しいです。
「ブレイラ、足は……まだ開く気にならないか」
「知りません」
まだ怒っていますと背中で語ってシーツに頬を埋めました。
そんな私にハウストが目を細めます。
「意地を張るな」
「張ってません」
「そうか? お前は優しくされたいと望むくせに、強引にされるのも嫌いじゃないだろう」
「し、失礼なっ。わっ、う~ッ」
いきなり指を挿入されました。
指一本とはいえ、たっぷりと濡らされていたそこは難なく受け入れてしまう。
「あぅっ、……んっ」
なかを弄るように指を動かされ、俯せのまま握りしめた手に額を押し付ける。
最初は異物感と違和感しかないのに、慣れた体がしだいに快感を拾いだしてしまうのです。
「まって、あっ、ンンッ……」
弄られながらローブを脱がされて一糸纏わぬ姿にさせられる。背後から全て見られていると思うと、恥ずかしくて体温がじわりと上昇しました。
「ここがお前の好きなところだったな」
「あぅっ、うっ……」
くいっと指の腹でお腹の内側を刺激されました。
何度も抜き差しされて、弱い箇所に当たるたびに声が漏れてしまいます。
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