挿話・オレはゆうしゃ。パパはまおう……。


 ブレイラがけっこんする。

 けっこんは、ハウストとブレイラがふたりでするから、オレはひとりになる。


 でもそうじゃなかった!


 やった! ブレイラとおわかれない! よるもいっしょ! ずっと、ずっといっしょ!

 やった! やった!


「ハウストもイスラの親になってくれるのです。あなたの親が増えるんですよ」

「えっ……」


 ハウストが、オレの……『おや』?

 オレはしっている。『おや』は『ちちうえ』と『ははうえ』。えほんに、かいてあった。

 オレはしっている。ブレイラはちがうっていうけど、ブレイラは『ははうえ』。よる、だっこしてねむってくれる。おでこに、ちゅーもしてくれる。いいこいいこってなでてくれる。

 それじゃあ、ハウストが……『ちちうえ』?


「ハウストも……オレの? ブレイラだけじゃ、なくなる?」

「良かったですね。ね、イスラ?」


 ね? とブレイラがわらった。

 ふわりっ、てうれしそうにわらった。


「う、うんっ。わーい。や、やったー、やったー」


 オレも、いそいでよろこんだ。

 わーい、てした。

 だって、ブレイラはハウストとけっこんするの、うれしいんだ。

 …………どうしよう。

 ハウストをみあげた。

 ハウストもオレをみて、むむってかおをした。

 ハウストのことは、きらいじゃない。

 ブレイラがかなしいときは、えいってやっつけたかったけど、いまはブレイラうれしそうだから、きらいじゃない。


「何してるんですか。早く行きましょう」


 ブレイラが、よんでる。

 オレとハウストも、ブレイラといっしょに、ばしゃにのった。

 ブレイラは、オレとハウストをみてにこにこしている。うれしそうだ。

 

 でも。


 …………でもほんとうは、オレは、ブレイラだけでいい。

 ハウストはいやじゃないけど、すきだけど、『おや』はブレイラだけでいいんだ。

 オレは、ブレイラだけでいいんだ。

 ブレイラにいったら、かなしむかな?


 かなしいの、いやだから、ひみつ。

 ブレイラには、ひみつ。




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