Ⅴ・魔王の怒りと軟禁と4

「どうした、嫌なんじゃなかったのか?」

「い、いわないで、くだ……さいっ。うっ」

「いい格好だなブレイラ。海賊どもにもこうして腰と尻を振ったのか?」

「そんなの、してま……せんっ。あッ、……そんな、ことっ、……ンあっ、あっ、……ああッ」

「その割には、ここは男を咥えられれば相手は誰でもいいようだが」

「ひぁっ、ああっ……!」


 グイッとハウストの腰が奥を突きました。

 いきなり襲ってきた衝撃に背中が反り返り、びくびくと体が震えてしまう。

 身悶える私をハウストは愉しそうに見下ろします。

 そして私の片足を持ち上げて横向きの体勢にしたかと思うと、また一気に突き上げました。


「アアッ! あっ、あっ、あっ、やめ……ああッ!」


 今度は呼吸する間もない激しい抽挿が繰り返される。

 しがみ付いているテーブルがガタガタと揺れています。

 やがてハウストの動きが一層激しさを増していき、彼の限界も近い。


「っ、出すぞっ……」

「んッ、ああッ! あぅぅ……」


 奥に熱い迸りが叩きつけられました。ナカでじわりと広がる感覚に背筋が震える。

 これでようやく抜いてもらえると安堵したのに、それは直ぐに打ち砕かれました。


「あっ、また……っ」


 ハウストは達したばかりなのに挿れたままで硬さを取り戻したのです。

 驚いていると腕が掴まれて体を起こされます。


「ああっ、う、うごかさないでくださいっ……!」


 慌てて腕を突っぱねて逃げようとしましたが、挿入されたままではそれも叶いません。

 それどころか強引にテーブルから起こされたと思うと抱きかかえられました。


「やっ! あッ、うぅっ! な、なにするんですかっ……、おろしてください! おろして……、ああっ」


 挿入されたまま足を広げて抱えられ、ハウストが窓辺へと歩いていきます。


「あッ、んッ、うぅッ……、あるかないで……くだ、さいっ。やっ……あ、あっ」


 ハウストが歩くたびに震動で怒張の先端が奥にあたり、自重で深々と沈み込んでいきます。

 ハウストの肩にしがみついて体を浮かそうとするも、それを嘲笑うようにハウストに抱えた体を揺すられました。


「あぅっ、あッ、あ……!」


 視界に映る私の足が動きに合わせてゆらゆら揺れています。

 その頼りなさと惨めさに比べ、ハウストの鍛えられた体躯は私を抱き上げたまま歩いてもびくともしません。圧倒的な力で支配され、なすすべなく屈服させられたのです。

 自分で歩くことさえ許されず、挿入されて抱えられたまま窓辺に連れて行かれました。


「ブレイラ、見るといい。お前が来たがっていた海だ。第三国の海も美しいが、モルカナの海も美しいぞ」

「い、いやですっ。この場所は……、ハウストっ……!」


 この部屋の窓辺は海に面したものですが、城の周りには賑やかな港町が広がっています。

 遠く離れているとはいえ、こんなはしたない格好で港の活気が伝わる窓辺にいたくありません。


「我儘を言うな。せっかく海を見せているというのに」

「やっ、ああッ、あっ、ああっ!」


 強く突き上げられ、思わずハウストに抱き付きました。

 突かれるたびに嬌声を上げる私をハウストは喉奥で笑います。

 ハウストは私の頬に口付けると、怒張が抜かれてようやく体を降ろしてもらえました。

 しかし解放されるわけではありません。

 支えを失った体が崩れ落ちる前に腰を引き寄せられ、ハウストに背中を向けるように窓辺に立たされました。

 窓に両手をつかされ、散々犯されたお尻をハウストに突きだす格好を取らされる。


「ハウスト、まって、……あぅっ」


 立たされたことで、後孔からハウストの白濁が零れて太腿を伝い落ちました。

 ハウストの指がそれを掬ってまた後孔に塗りつける。


「んぅっ、うッ……」

「垂れているぞ? 俺を愛しているというなら、全部飲み込んでもらいたいものだ」


 嘲るように言われて唇を噛みしめました。

 悲しくて、悔しくて仕方ありませんでした。

 だって、なに一つ伝わらないのです。

 こんなに愛しているのに、ハウストに信じてもらえない。こんなに悲しくて悔しいことはありませんでした。

 後どれくらいこの時間が続くのでしょうか。私は気絶することすら許されず、ハウストの気が済むまであられもない嬌声をあげつづけました。






 目が覚めると、視界に映ったのは見慣れぬ天井でした。

 私は部屋のベッドに裸で寝ていました。いえ、寝ていたというより気を失っていたといった方が正しいでしょう。ハウストに散々抱かれ、解放されたと同時に意識を手放したのです。

 ハウストに抱かれていた時はまだ青空が広がっていたのに、夕暮れを過ぎた空には月が浮かんでいました。

 あれから何時間経ったのでしょうか。室内を見回し、ハウストがいないことを確かめる。きっと政務に出ているのですね。

 私はベッドで横になったまま薄暗い部屋をぼんやり見つめていました。

 体力は尽き果てて、指一つ動かすのも億劫です。体中が痛くて、散々犯されたお尻は熱を持ってジンジンしている。あの液体による痒みは収まってくれたようでしたが、擦られた内壁が少しヒリヒリしています。

 今は何も考えたくありませんでした。私の意志など無視された行為は、まるでハウストの玩具になったようなそれだったのです。


「――――失礼します。ブレイラ様、お目覚めですか? お夕食をお持ちしました」


 ふと、扉の外から声がかけられました。エルマリスです。

 返事をするのも億劫です。でも返事をしなければ部屋に入ってきてしまいます。今は誰にも会いたくありません。


「……食事はいりません。食べたくありません」

「いいえ、それでは困ります。湯浴みの支度も整えますので失礼します」


 きっぱりと断られて慌てました。

 床にはサファイアのローブが脱ぎ捨てられたままの状態で放置され、テーブルにあったティーセットも散乱しています。ベッドの白いシーツも乱れきっていて他人に見せられる状態ではないのです。


「ああ待ってっ、待ってください! 今ちゃんとしますからっ」

「掃除なら侍女がいたします。新しい召し物も持ってまいりました」

「いえ、お願いですから、もう少し待っててくださいっ……!」


 ベッドから起き上がろうとしましたが、体の節々に痛みが走ってうっと息を飲む。

 しかし慎重に床に足を下ろし、ガウンを羽織ってなんとか立ち上がりました。


「うぅ……っ」


 よろよろ歩きながら床に落ちているローブを拾い、ベッドのシーツを剥がして丸め、床に散乱しているティーセットを片付ける。

 いつもならものの数分でできる片付けがちっとも進みません。動くたびに体が悲鳴をあげるのです。


「ブレイラ様、失礼ですがお部屋に入らせていただきます。身の回りのお世話はこちらで致しますので」


 そう言ってとうとうエルマリスが部屋の扉を開けてしまいました。

 私は一瞬で真っ赤になって、床のティーカップを拾ったままおろおろしてしまう。

 この部屋の惨状は、誰が見ても行為の激しさを察してしまえるものだったのです。

 長時間ハウストと部屋にいたので何をしていたか知られているのは分かっていますが、かといって進んで晒したいものでもありません。


「こ、これはっ、あのっ……」


 私はひどく動揺してしまいましたが、エルマリスは淡々としていました。

 いえ、エルマリスだけではありません。一緒にいた侍女たちも、部屋の惨状をちらりと確認しただけで表情一つ動かしません。


「急いで部屋の片付けと食事の支度を。ブレイラ様には体を清めていただき、新しい召し物に着替えていただきなさい」


 エルマリスが侍女たちに指示しました。

 侍女たちはそれぞれ手分けして動きだし、私は二人の侍女に手伝われながら湯浴みをさせられます。

 目隠しの衝立が立てられ、部屋に造られた湯浴み場で湯に浸かったまま丁寧に体を洗われました。

 素肌のあちらこちらが強く吸われて青痣が出来ていましたが、侍女は見てみぬ振りをして淡々と体を洗ってくれます。湯浴みから上がると、真珠色のローブに着替えさせられました。


「お着替え終わりました」

「ありがとうございました」


 礼を言うと衝立が片付けられます。

 湯浴みと着替えをしている間に部屋は元通りの状態になり、ベッドのシーツ交換が終わっていました。


「……すみません。さっきは恥ずかしいところを見せました」

「気にしていません。寵姫様は夜伽がお役目ではないですか。魔王様をお慰めすることは大事なお勤めですから」


 エルマリスは淡々と答えました。

 その言葉に唇を噛みしめる。不思議ですね。その言葉は間違いではないのに、複雑な寂しさを覚えて胸がしめつけられるのです。

 しかも言葉の端々に侮蔑が混じっているのは気の所為ではありません。きっと自覚の足りなさを責めているのでしょう。

 何も言い返せないままテーブルに促されました。

 テーブルには一人分の豪華な食事が並べられています。

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