Ⅴ・魔王の怒りと軟禁と2

「間もなく魔王様がブレイラ様を迎えにいらっしゃいます。それにあたってブレイラ様の出迎えは無用ですので、魔王様のご到着をこの部屋でお待ちください」

「え?」

「ブレイラ様を部屋から出さないように厳重に命じられています」

「ど、どうしてですかっ。誰がそんなこと」

「魔王様のご命令です。ですので、部屋から出すことはいくらブレイラ様の命令でも従うわけにはまいりません。では失礼しました」


 エルマリスはそう言うと部屋から出て行きました。

 扉を閉めた際にカチャリと施錠され、自分が本当に軟禁されたことを知ります。


「……どうしてハウストが。なんで……」


 わけが分かりません。

 どうしてハウストがこんな命令をしたのか。なぜアベルたちが処刑されなければならないのか。たしかに海賊行為は重罪ですが、誘拐が処刑の理由なら大きな誤解です。

 とりあえずアベルの処刑を何としても止めなければいけません。だって、私は誘拐されたわけではなく自分から海賊船に乗ったのです。それなのに、その所為で処刑されるなんて耐えられません。

 なんとかしなければと悩んでいると、少しして扉がノックされました。


「ブレイラ、俺だ」

「ハウスト!」


 パッと顔をあげました。

 聞こえてきたハウストの声に、重く張り詰めていた気持ちが一瞬で軽くなる。

 カチャリと扉が開かれ、思わず駆け出しました。


「ハウストっ、ハウスト!」


 彼の名前を呼び、私よりも一回り大きな体に抱きつく。

 ぎゅっとしがみ付くと体に馴染んだハウストの感触がして、不安で一杯だった心が安堵に包まれました。視界がじわりと滲み、今まで耐えてきたものが溢れだす。

 ハウストが来てくれました。これで大丈夫だと信じられるのです。


「ハウスト、会いたかったですっ」

「本当にそう思ってくれていたのか?」

「当たり前じゃないですか!」


 私はハウストの逞しい体躯に縋るように抱きつき、濡れた頬を彼の胸板に押し付けて、興奮のまま今まであったことを訴えます。


「イスラがクラーケンと海に消えてしまって、私は海賊とクラーケンを追ったんですっ。それなのに海賊は捕まってしまってっ……。でも違うんです! 海賊が私を誘拐したというのは誤解で、私は自分から海賊船に乗ったんです! お願いですっ、処刑をやめさせてください!! お願いですから、処刑なんてしないでくださいっ!!」


 そうお願いして、顔をあげて……愕然としました。

 今まで見たこともない顔でハウストは私を見下ろしていたのです。


「え、ハウスト……?」


 驚愕のあまり凝視する私に、ハウストは笑みを浮かべます。

 でも私を見つめる眼差しにいつもの優しい色はなく、まるで別人のようにすら見えました。

 背筋がゾッと冷たくなり、全身がカタカタと震えだす。

 思わず一歩後ずさると、離れたぶんだけ彼がゆっくりと近づいてくる。そう、傲慢さすら感じるほどの絶対的な威圧感を纏って。


「なぜ逃げる」

「逃げたつもりはっ……」


 そう答えながらも声は微かに震えていました。

 彼から伝わる怒りに体が竦んでしまう。

 おかしいです。だってハウストのことを愛しているのに、胸が不安と困惑、そして恐怖で一杯になってしまう。

 不意にハウストの手が伸ばされ、咄嗟に逃げようとしてしまいました。

 しかし腕を掴まれ、無理やり引き戻される。そして、冷酷に言葉が紡がれる。


「どうやら俺はお前を自由にし過ぎたようだ」


 息を飲みました。

 頭が真っ白になって、呆然と彼を見つめます。


「ハウスト、――――っ! うぅ、んっ」


 強引に唇を塞がれました。

 苦しさに顔を逸らそうとして、顎を掴まれてまた唇を塞がれます。

 なぜ、どうして、疑問が頭をぐるぐる巡りました。


「あ、まってっ、んんッ!」


 乱暴な口付けに怖くなって逃げようとするも、腰を抱かれて身を捩ることすらできません。

 怯えて奥に引っ込んだ舌を強引に絡められ、溢れる唾液すら吸われる。まるで口内を蹂躙するかのようでした。

 呼吸すら奪うような口付けに翻弄される中、ハウストが私の纏っているローブをたくしあげていく。


「やっ、ハウスト! やめて、ください!!」


 ローブの裾を太腿まで捲りあげられる。露わになった太腿を撫であげられ、そのまま大きな手でお尻を鷲掴まれます。

 突然のことに驚いて、パシンッ、と手を払いのけました。


「こんなの、いやです……っ!」


 唇を噛み締めてハウストを睨みつけました。

 でもハウストは払われた自分の手を見つめたかと思うと、不意に、私の腕を掴んで強引に引っ張りました。

 ガシャン!!!!

 テーブルのティーセットや煌びやかな雑貨が床に薙ぎ倒され、私の上半身をテーブルにうつ伏せにして押し付ける。まるでお尻を差し出すかのような格好で、あまりの羞恥に体が震えました。


「ハウスト、離してください! お願いですから、ああっ!」


 ローブの裾を捲くりあげられ、お尻だけが剥き出しにされます。

 起き上がって抵抗しようとしましたが、背後から背中を押さえつけられました。

 小振りのお尻をハウストの大きな手で揉まれ、指に割れ目をなぞられる。

 その感触に背筋がぶるりと震えました。奥の後孔は何度もハウストを受け入れてきた箇所で、体は気持ち良くなる場所だと知っているのです。あさましくも反応してしまう自分にテーブルに爪を立てました。


「ここに何人咥えこんだんだ?」

「な、なにを言ってるんですかっ!」

「船長には優しく抱いてもらえたのか? ここを使って海賊どもを何人慰めた?」


 ハウストは矢継ぎ早に質問しながら後孔に指を一本挿入してきました。

 濡らしていないそこに無理やり指を捩じ込まれてピリピリした痛みが走る。


「やっ、あっ、いたい……っ。……ハウスト、やめて……くだ、さいっ」

「海賊船に乗ればどういう目に遭うか分からないわけじゃないだろう? まさかお前がこんなに淫乱だったとは思わなかった」

「そんなことしていません! 私は、あなたしか!」

「どうだかな」


 ハウストが冷ややかに吐き捨てました。

 そこには軽蔑すら籠められているような気がして、悔しさと悲しさに唇を噛み締めました。

 後孔から指が引き抜かれ、次に冷たい液体が垂らされる。トロリと蕩けるような液体がお尻の割れ目を伝い、床にポタリポタリと零れました。

 最初は冷たかったそれなのに、すぐに皮膚に吸収されて、そこがじわじわと熱を持ち始める。

 噎せ返るような甘い花の香りが広がって、私の思考力を奪っていくようでした。


「ハウスト、そ、それは……?」

「決まっているだろう? お前のここは俺のだけでは物足りなくなっているんじゃないかと思ってな」

「アアッ! んんッ、あ……!」


 いきなり指を挿入されました。

 液体を中に塗り込めるように内壁を擦られます。

 たっぷりと塗り込められて指が抜かれると、体の異変は直ぐに訪れました。

 内壁に直接塗られた液体はあっという間に粘膜に吸収され、体の奥がじんじんと疼いて熱くなりだしたのです。でもそれだけではありません。


「あ、あ……っ、変です、これ……。ナカが、かゆ……い、あ……うぅ」


 痒いです。

 中の内壁がじわじわと甘痒くなって、それが次第に強くなっていくんです。

 どうしようもない甘痒さに襲われて体がガタガタと震えだしました。


「ハ、ハウスト、これ嫌ですっ。ああっ、変、へんですっ。……か、かゆいっ」


 痒みに刺激がほしくて、無意識に股をすりすりと擦り、お尻に力が入る。

 しかしそれは痒みを癒すことにはならず、後孔がヒクヒクと蠢くだけでした。


「どうした。尻が揺れているぞ」

「やっ、いわないで、くださいっ。ああっ!」


 ハウストの大きな手が尻を揉んだかと思うと、パチンッ、尻たぶを叩かれました。

 ピリッとした痛みに涙がじわりと浮かぶ。


「な、なにするんですかっ!」

「ああ、すまない。あんまり尻を揺らしていたからな。はしたないだろう? お仕置きが必要だ」


 バチン!

「やっ」悲鳴をあげ、叩かれてお尻が跳ねる。

 バチン! バチン! 叩かれる度に声が上がり、白い尻たぶは薄っすらと赤く腫れました。

 叩かれたお尻はぴりぴり痛いのに、それでも奥の熱い疼きが収まってくれることはありません。

 それどころか甘痒さは一掃増して、奥に刺激が欲しくなる。痒い内壁を激しく擦ってほしくなるのです。


「どうした、痛いのが好きなのか?」

「ち、違いますっ! うぅ、ハウスト……っ、もう、やめてくださいっ、もうっ……、もう嫌ですっ!」

「そうは見えないが」


 そう言ってハウストが指を一本後孔に挿入しました。


「はっ、ああ、んッ!」


 瞬間、ゾクリッとした快感が背筋を駆け上がる。

 指を入れられただけなのに達してしまいそうになりました。

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