第八章・私の全部をあなたにあげます。きっとこの為に私はあなたの親になったのでしょう。2


「イスラ!? どうしたんですか、しっかりしてください!! 目を覚ましてください!!」


 必死に呼びかけても、イスラは気を失ったままもがき苦しんでいます。


「どうしてっ、どうして目覚めないんですか!? イスラ、お願いですから起きてください!!」

「フハハハハハハハッ!! 呼んでも無駄だ!! なぜならこの魔法陣は勇者の力を封じる為のもの! このガキが勇者である限り、ここで目が覚めることはない!!」

「そんなっ」


 魔法陣の光が更に強くなり、イスラの胸から紫色の光の玉が出現しました。

 小さな体から引き摺りだされるように出現したそれに、フェルベオの顔がニタリと歪む。


「出たっ、ついに出たぞ! これが勇者の力!! もうすぐだ、もうすぐこの忌々しき封印が解ける!! 私の力が甦る!!」


 先代魔王は少年の姿で出現した光を鷲掴む。

 ――――ゴクンッ……。大きな口を開けて丸のみしたのです。


「……やった、やったぞ……!! とうとう勇者の力を手に入れた!!!! 条件は整った、私はっ、私は神の力を得るのだ!!!!」

「な、なんてことをっ、あなたはイスラに何をしたのです!!」

「フハハハハハハハハハッ!! 黙って見ているがいい、これから起きる奇跡を!!!!」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!

 大地を揺るがす地響きの中、先代魔王が狂喜します。


「忌々しき封印から解き放たれる時がきた!! 私よ、甦れえええええ!!!!」


 精霊王の姿をした先代魔王が眩いほどの光に包まれ、飲み込まれました。

 しかし光に闇色の点がぽつりとついたかと思うと、それが瞬く間に広がって禍々しい闇色を放ちだす。

 そして。


「ああ久しぶりだ、私の体よ……」


 そして、闇の中から尚暗い闇が甦りました。

 長い黒髪にひょろりと長い体、痩せこけた頬。ニタリと歪んだ笑みを浮かべる姿は、どこまでも禍々しい負のオーラを漂わせている。

 そう、先代魔王です。

 先代魔王の足元には、今まで乗っ取っていた精霊王フェルベオが倒れていました。

 先代魔王は横たわったフェルベオを一瞥します。


「今までご苦労。やはり精霊王とはいえ子どもだな、乗っ取りは他愛ないものだった。――――さて」


 先代魔王が私を振り返りました。

 一歩一歩近づいてくる。逃げなければいけないのに体が竦んで動きません。叫びたいのに叫ぶこともできません。

 あまりの恐怖に硬直する私に、先代魔王が手を伸ばしてきます。

 痩せた指が私の顎を掬うように持ち上げ、吐息がかかるほどの距離まで顔を近づけられました。


「私がなぜお前をここで生かしていると思う?」

「え……」

「神になる条件は全て整っている。それは精霊王の力、魔王の力、勇者の力。そう、三界の王の力のことだ。先代精霊王を殺して得た精霊王の力、魔王は私自身、そして十年前は失敗したが、ようやく手に入れた勇者の力。これで三つ、神の条件である三界の王の力は手に入れた。……だがね、残念なことが一つあったんだよ」


 先代魔王は大袈裟に嘆きながらも、その目は爛々として私を射竦める。


「それは、この私をしても神自身にはなれぬという事。魔族や精霊族はその強い力ゆえに神の力を受けいれる器にはなれないんだよ。そう、無力な人間でないとね」

「それは、いったいどういう……」


 頭の中で警鐘が煩いほど鳴っています。

 嫌な予感がどんどん膨れ上がって、混乱と恐怖に心臓がどくどく脈打つ。


「喜びたまえ、人間よっ。人間の無力さには意味があったのだ! 神の器になるという意味が!!」

「っ、んんッ!」


 突然の口付けに驚愕しました。

 先代魔王は私に口付けたまま愉しげに目を細めます。


「っ、んぅっ」


 こくりっ。熱い塊のようなものを口移しで飲み込まされる。

 吐きだそうとするも口を塞がれ、熱い塊が喉を通り、お腹の奥でじわりと溶け込んでしまう。

 瞬間、火が着いたように体が熱くなりました。


「あっ、は……、あつ……っ、うぅ」


 全身から力が抜けて、イスラを抱き締めることもままならなくなる。

 私の腕からイスラが取り上げられ、「かえして」と追いかけた腕が掴まれました。

 先代魔王は取り上げたイスラを放り捨て、嘲笑を浮かべます。


「どうだ神の力は? その力を受け入れ、器として私のものになってもらう。ハハハッ、いい顔をしてくれるじゃないか。勇者の母君は好きモノと見える。そんなに遊んでほしいのか」

「は、はなし、なさい……っ。あっ」


 強く引き寄せられ、先代魔王の腕の中に落ちてしまう。

 抵抗したいのに、体内で熱が暴れ回っていて力が入りません。

 指先まで震えるほどの熱に意識が朦朧としてしまう。


「我が息子ハウストをこの体で陥落させたのか?」

「やめ、……あっちへ、いって、くだ……さい」


 遠ざけようと突っぱねた手が邪魔そうに払われ、力無く空回りします。

 体は脱力して動かすことすらままならず、先代魔王のするがままに触れられる。


「さわら、ないでくださ……いっ、いやですっ……あ」


 体を這い回っていた先代魔王の手が、ドレスの長いスカートをゆっくりとたくし上げ、手をスカートの中へ入れてきました。

 ふくらはぎから太腿を撫で回され、背筋がゾクリとする。それは快感の熱を伴なうもので、先代魔王はそれを嘲笑うように煽ってくるのです。


「あ、やめ……っ」

「何がやめろだ。こんなに体を熱くさせて、昂ぶってるじゃないか」

「うぅっ」


 悔しさに唇を噛み締めます。

 体内で暴れていた力の熱が、体を撫で回されることで快感へと擦り替わっていました。

 力の入らない足を開けさせられ、お尻を掴まれて強く揉まれる。

 痛いくらいのそれなのに、熱が灯った体は乱暴にされても感じてしまう。

 そして先代魔王の指が後孔に挿し入れられました。


「ああっ!」


 突然の挿入に仰け反り、続いて二本目の指が挿れられて堪らずに悲鳴をあげました。

 なんとか逃げようと後ずさるも、捕らえられてうつ伏せにされます。

 そして腰だけを高く上げさせられ、ドレスのスカートを捲られてお尻が無防備に晒される。お尻を丸出しにした格好のあまりの羞恥に這って逃げようとしましたが、逆に腰を抱かれて固定されました。

 私の意志を無視した行為は容赦なく、二本の指に奥まで犯されます。


「ああっ、だめですっ、だめ……! 中に入れないで……くだ、さいっ。あん、ンンッ!」


 抜いて、抜いてくださいっ、と首を横に振りました。

 しかしそれが叶うことはなく、二本の指で中を掻き回され、弱い所をめちゃくちゃに擦られてしまう。


「あっ、ああっ! いや、ですっ、……はッ、あ……んぅッ!」


 私をモノのように扱う手付きは粗暴なのに、熱をもった体はビクビクと反応してしまう。

 二本の指を激しく抜き挿しされ、強制的に高められる恥辱に唇を噛み締めました。


「自分で腰を振っている癖に嫌だとは笑わせる。ハウストに見せてやりたいくらいだ。奴にとってはこれ以上ないほどの屈辱だろう」

「うぅっ」


 ハウストの名前を耳にして涙がこみあげる。

 これ以上の恥辱と侮辱、屈辱はありません。


「もうすぐだ。お前を探しているハウストの気配が近づいてくるぞ?」


 気配に気付いた先代魔王が歪んだ笑みを浮かべました。

 その言葉に全身から血の気が引く。

 こんな姿、絶対に見られたくありません。


「は、離して、ください……っ、もうっ、はなして、くだ……さいっ!」


 後孔を指で犯されながらも、前に這いずって逃げようとする。

 しかし先代魔王は余興を楽しむかのように酷薄な笑みを浮かべるだけでした。


「いい姿だ。ほうら、もうすぐ来るぞ? 見せてやろうじゃないか」


 そう耳元で囁かれたのと、扉が開いたのは同時でした。



「ブレイラ!!!!」



 バンッ!! 扉が開き、ハウストとジェノキスが部屋に入ってきました。

 私を目にした途端、二人の闘気が爆発的に膨れあがります。

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