第二章

第12話 やまと

「何言ってんの、おにいちゃ…」

「もう 、その呼び方はさせないって言っただろ。」

美希の両腕を握る力が増した。

「お兄ちゃん!!痛いって!!

ごめんなさい!なんて呼べばいいの!!」

「………やまと。って呼んでよ…。」

「やまと。離してよ…!

ねぇ。やまと!!痛いから!」

美希が泣き出してしまった。

そこで僕はやっと正気に戻った。

「…あ。ごめんね。力強かったね。」

そう言って僕は美希の腕を離した。

美希は心底怯えていた。俯いてぷるぷる震えたまま何も言わない。

「怖がらせてごめん。」

「そんな怒ってるおにいちゃ…やまと、初めて見た。なんでキスなんか…。」

「それはこっちのセリフだよ。」

なんでほかの男とキスなんてするんだよ。


とはさすがに言えなかった。

美希は僕がなんで怒っているのか、よく分かっていないのだろう。

「今日から僕はもう、美希のお兄ちゃんじゃないからね。」

そう言って、額に軽いキスを落としてから

僕は自分の部屋に引っ込んだ。

美希は顔を赤くしながら呆然としていた。

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