第10話 一葉落つる
「お兄ちゃん!いい部屋だね!」
「うん。ちょっと頑張っちゃった!」
美希と僕は新居に来ていた。
新居。
同棲。
そんな言葉一つ一つが、恋人のようで
愛しくてたまらないけれど、
僕は今日から美希のことをそういう風に見るのは止めようと思う。
勿論、止めようとして止めれるものじゃない。そうできるならこれまでもそうしてただろう。
でも直井が僕の自殺を止めてくれた日、
自分がどうしてこんなに美希に執着しているのか分かった気がする。
僕は昔から両親と距離を感じていた。
家族みんなでの暮らしは、ごくごく普通なのに僕は両親に壁を作られているようながして仕方がなかった。
でも美希だけはいつも僕に純粋無垢な笑顔を向けてくれた。何がそんなに嬉しいのかわからないけど、いつも笑っている子だった。
つまり、僕は寂しかったんだ。
そして今までの人生でその寂しさを埋めてくれるのは、美希ただ1人だった。
でも直井は
いつでも話を聞くって、
どんな相談でも乗るって、
お前のためならなんでもするって言ってくれたんだ。
赤の他人だぞ。普通そんなことあるのか。
直井は本当にイイ奴なんだと思った。
これからも多少辛いこともあるかもしれないけど、直井が居てくれれば、俺は美希と普通の兄弟になれるのかもしれない。
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