第8話 like you

直井は俺から何があったのかを、無理に聞き出そうとはしなかった。そりゃあんな事したら誰だって聞きづらいだろうけど。


少しづつ冷静になってきて、彼への申し訳なさがでてきた。俺がそんなことを考えてる間も直井は他愛もない話をしてくれた。


「お前さ、誰にもどうにもできないことがあったって言ってたろ。」

「う、うん。」

急に話が変わってびっくりした。

「俺、ちょーとだけ考えてみたんだけどさ、やっぱりよくわかんなかった。

例えばさ、まぁこれは昔の友達の話なんだけどな。」

そう言ってから直井は話し始めた。


「めっちゃ仲良い女友達が居たんだよ。

で、そいつが婚約者だって連れてきたのが女だったんだ。」

「…え」

俺は思わず声をもらした。

「俺もびっくりしたよ。

でも2人はただ普通に男女のソレと変わんなかったよ。ただ好きになった人が偶々同性だったんだろうなーって感じよ。」

同性同士の恋愛は、正直俺にはよくわからなかった。

でも、なんとなく自分と似たようなものを感じた。

「それでも婚約って、日本じゃ同性での結婚はできないんじゃ…。」

「あぁ。彼女はそれ俺に相談してくれたんだよ。俺カナダに親戚いてさ、カナダで同性婚できるのも知ってたから。移住権とかはどうしたのか知らないけど。…まぁとにかく…。何は言いたいかと言うと…

気が向いたら俺に話してみろよってこったな。」

言うと直井は俺の目を見てにかっと笑った。

その顔はなんだか美希と重なるものがあって、気づいたら口に出していた。

「俺、美希のことが好きだ。」

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