第5話 ヘンな味のカレー
両親から二人暮らしの許可が出た翌日。
僕が大学内の食堂でカレーを食っていると
「おーい。山本大和くーん
飯のときぐらいスマホ置ーけよー。」
と、
友人の直井が後ろから声をかけてきた。
「うるせぇ。別にいいだろ。」
「ははは。隣いい?」
「おう。」
彼は、僕の返事を聞く前に座っていた。
直井はテニスサークルでちゃんとテニスをするような面白い奴で、
俺にやまやまというあだ名を付け、ゼミ全体に浸透させたこともある中々の変人だ。
「で?何をそんな必死に調べてんの?」
「部屋だよ。賃貸の。」
「へぇ。こんなタイミングで一人暮らしすんの?」
「ひとりじゃねぇ。美希とだよ。」
「美希って…!?女と!?
いつの間に彼女なんかできたんだよ。
しかも同棲するまで、隠してやがってー。
水臭ぇヤツ。」
「ちげぇし!俺の妹!!前に写真見しただろ。」
「あー。あのお前に、全然似てない妹ちゃんかー。春から大学生?」
「そう。それで二人で住めるような部屋探してんの。」
「へえ。このへんなの?」
「いや美希の大学はもうちょい遠くて、
だから一人暮らししたいって。」
「でも、女の子の1人は怖いから
お兄ちゃん一緒に住んで!ってわけか。
心強いねぇ。」
「いや。それがそうでもないらしくて。
おふくろに二人でほんとに大丈夫か
なんて聞かれたんだよなー。」
「……それって結構ヘンじゃね?」
「だよな。2人だから大丈夫なのに。」
俺と美希ならどこへでもやっていけるのに。
母さんは何を思ってそんなこと言ったんだろう。
まぁ結局、
あとになってその日にカレーの味を、僕は思い出して
吐き気がするほど悔やむことになるんだけど。
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