第2話 呪の言葉

ほんと優しいね!お兄ちゃんって!


美希すきなひとだからだよ。美希だから優しくしたいに決まってるだろ。

なんて、

口の中から出かかった言葉を、飲み込んだ。

「僕は、美希のお兄ちゃんだからね。」

自分で自分に呪いの言葉をかけた。

そんな僕とは裏腹に、美希はにこにこしていた。


僕は美希のお兄ちゃん


自分で十何年もそう、かけ続けてきた呪い。

自分で自分の首を絞める、僕が世界でいちばん嫌いな言葉だ。


「お兄ちゃん。

私出かけるから、戸締りよろしくねー。」

「どこ行くの?」

「れなとランチ。大学行ったら中々会えなくなるだろうしね。」

「そうだね。楽しんでおいで。」

「うん!いってきまーす。」

「行ってらっしゃい。」


だけど、こういうやりとりができるのは

やっぱり僕らが兄妹だからなんだろうか。



美希がいなくなってから

僕はそっと美希の歯ブラシを手に取った。


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