【2】前篇

それはどうも俺に原因があるみたいである。というのも……この子は俺のことをまるで敵を見るかのような目つきで睨みつけてきているからである。


そこでまずはこの子のことを少しでも理解しようと思い、話しかけようとするのだが、その子はなぜか怯えたような表情をして、なぜか震え始めていた。なので俺はそのことに気がつかないふりをしながらその子の頭を撫でたり……抱きしめながら……優しく話してみることにした。すると、その子の緊張が徐々に解れていき、その子は段々と落ちついてきたのであった。


だがその途端に、その子が急に飛び跳ねるかのように動き出したので……その様子に俺もついつい笑ってしまい、その瞬間その女の子は俺に対して怒った顔をしはじめた。その表情を見た俺はなぜか……その表情になぜか可愛らしさを覚えてしまい……なぜか心が癒された気分になったのだ。……だがそんなことを考えていることなどその子に伝わるはずもなく……俺はいきなり首筋を舐められたのである。……そして、なぜかその瞬間俺の体の中の血液が一瞬で沸騰するかのように熱くなった感覚が俺を襲った。……俺はなんでそうなったのかがまったく理解できずに、自分の体のことが怖くなってしまっていた。そして、その事が怖くて俺はその子から離れようとしたが、なぜか離れることができなくなってしまって……なぜかこの子の体を弄びたいという欲求が湧き上がってくるのだった。


俺の理性はまだ残っている。だが……なぜかその欲求を抑えることができず、俺はその子の首元に再び噛み付いたのである。その瞬間その子は今まで以上にビクンと跳ねて……俺に対して怒ってはいるものの……なぜかとても可愛いと感じてしまっている自分に対して恐怖を抱いていたのである。だが……それでもなぜか……俺は自分がしたいと思っている行動をする事ができて……満足していたのであった。


そこで俺はあることに気がついた。俺はなぜこの子を弄ぼうとしたのかを。俺はこの子に一目惚れをしたのだ。だが俺は……そんな事をしても嫌われるだけだということを分かっているから我慢をしていた。なのに俺はなぜか、その我慢が出来なくなってしまったのであった。俺はこの子に対してそういう気持ちを抱いてしまっている自分に困惑しつつ、とりあえずこれ以上の事をしたら本格的に殺されてしまうと分かったため、とりあえずその事は一旦忘れて……この子と話をすることにしたのである。だが、その会話の最中に俺はこの子がレイラであることを思い出し、この子はなぜだか分からないが俺に対して好意を持ってくれているということを知った。だが俺にはその気持ちに答えることができなかった。なぜなら俺にはもう好きな人がいるのだ。だから、もしその人に告白してフラれた場合……この世界に留まることが出来なくなってしまうからだ。


だがそこで、なぜだかさっきまでレイのことをいじめたいとは思っていたけど……なぜか今は違うことを思っていることに気づく……。そしてその原因が何なのかを考えるうちに俺はその理由を思いついたのだ。だが……その事を俺は信じたくなくて、その考えを否定したかったが、一度気がついてしまった俺は……否定することができなかった。……だが、それを認めてしまったら俺の人生は狂ってしまう。……俺はそれが嫌で……どうにか認めないようにしようと考えたのだ……。


俺はこの子のことが好きではあるのだけれど……今俺が好きになっている人の事をどうしても好きになってしまい……その人から拒絶されてしまったら俺はこの世界で生きて行く自信が持てなかった。そして俺はそんな弱い自分が許せなかったが、それならばせめてその人と結ばれるまで頑張ろうと思っていたのであった。


そんな事を考えていたせいで俺の体はレイに抱きつかれて反応を示してしまい、レイはそのことに気づいたようで俺のことを抱き寄せてから耳元に息を吹きかけてくる。そんなレイの態度を見て俺はレイのことを受け入れようと思ったが……レイが本当にレイラなら受け入れたらレイナとの約束を破ることになるのではないかとも考えたが……俺はそんなのは関係ないと思ってしまうぐらいレイの事を求めていたのだった。そして俺はその事を誤魔化すためにレイと話をしようとしていたら、レイが急に立ち上がって家の外に出ようとし始めたので、俺が追いかけようとすると……急に体が動かなくなった。どうやら何かに拘束されているようだ。そこでふと上を見上げると、そこに居たのは結人だったのであった。そしてその瞬間俺の心が恐怖に支配され、このまま殺されるのかとさえ思った。そして俺はなんとか抵抗しようとしたがやはり全く動けず……そして俺の目の前に黒い何かが迫ってきていて……。……だがその直前でその黒っぽいものが消えたのであった。


「久遠……頼む……」


俺の声に反応するように久遠の気配が俺の近くに現れた。


「久遠ちゃん……どうしてここに? さっきは真也君とレイちゃんが急に出て行った後にレイちゃんも消えちゃって……でも、まさかレイちゃんがここにいたなんてね。さて……どうしてそんな格好しているの?」


真矢ちゃんの言葉を聞いた後、レイが俺のことを見てニヤリと笑っていた。


「私は久遠くんの言う通りにしただけよ。私はレイちゃんには何もしていないわ。」


レイはいつもと口調を変えて俺に言ってきたのである。その声を聞いて……俺はなぜかそのレイの姿を見て興奮してしまい、その感情を抑えることができなくなっていた。


「あ……えっと……そ、その……なにをしているんだい?」


俺の問いを聞いたレイナは笑いながら、「ちょっとね……私、久しぶりに男の子が相手だから、すごく楽しい事になりそうで、少しテンションがおかしくなっているかも……。それより……あなたが……あのレイちゃんだよね……。レイちゃんと……戦えるかもしれない……。……あ、もちろん戦うとかじゃないけど、ちょっと遊んであげたい……。」と言いながら真央は楽しそうに笑い続けていた。


「レイ……お願い……。俺を救ってくれ……。」


その言葉を言った直後にレイが飛びかかってきたので、すぐに俺は結界を張って攻撃を防ぐ事に成功したのだが……。その瞬間、何故か急にレイが俺のことを押し倒そうとし始めて……俺は慌てて結界を強くしたが、なぜか急にそのレイの攻撃に耐えられなくなり結界にひびが入ってしまったのである。そこでレイが急に俺から離れたため俺はその隙に急いでレイラのところに近づき、俺はそのまま抱き上げてレイラを連れて家から出るのであった。……そして俺はその家を視界に入れながら、この世界に転移した時に見た光景とレイの服装を思い出していた。俺は……確かにその服を見たことがあったのだ。


『ねぇ……真也君……なんで私は裸にされ……ってあれ……なんかこれ変じゃ無い?』


俺の脳内に聞き慣れた女性の声が聞こえたような気がしたのだ。そしてそれと同時にその女性が全裸の状態になっているという幻覚を見た。俺は……その状況に対して恐怖を感じていた。なぜなら俺の知っているレイはこんなに可愛らしい顔をしていて、胸が大きく、性格も優しい少女であり、俺はそのレイに一目惚れしたのだ。……しかし今の状況はどう見ても俺が愛していた人物とは違うのである。だから、もしかすると俺の好きな人はレイではなくレイに似た別人である可能性があるのである。


だが……俺の記憶にあるレイの姿に間違いは無いはずである。では、なぜそんな記憶を持っているのかという事になる。俺はレイに出会ってレイの事が大好きになっていたはずなのに……そんな記憶が俺の中には存在していなかったのだ。俺はそんな混乱状態に陥り、俺は目の前にいるレイが一体誰なのかが分からずにいると……突然そのレイが、なぜか俺の頬にビンタをしてきたのである。


俺は何が起きたのか理解できずにいたが、その痛みを感じた事で俺はようやく冷静になることができた。だが、俺はなぜかレイに抱きしめられていて、俺もレイのことを抱きしめ返そうとしたところでレイは俺から体を離してしまったのである。俺にはそのレイの行動が意味が分からないが、俺の目の前にいる女性は……俺がこの世で一番愛しているはずの人なのだと気づいていた。その事実に俺の頭の中が更に混乱しそうになったのだが、その前に俺はレイに殴られて気絶する事になったのであった。……そして俺は目が覚めた。……そして俺はなぜか服を着ており、レイの方も着替えたような感じで普段の制服姿に戻っていたため……俺は安堵していた。そして……俺が起きてからずっと俺のことを心配し続けているレイに対して俺は優しく話しかけると、レイはいきなり泣き始めてしまい……レイが泣き止むまでは俺はレイを抱き寄せる事ぐらいしかできなかったのである。そしてレイが落ち着くと、レイがいきなり俺に向かって謝り始めた。その行動に俺は困惑しながらも……レイに優しくしてあげることだけは心がけておこうと思うのであった。そしてその後俺はこの世界の現状について説明を始める。まずはこの世界の状況を説明することにしたのだ。だがそこでレイは自分の体を確認しているのか分からないけど……レイが急に手を動かしたりしながら自分の体を弄んでいる様子を見て俺は恥ずかしくなって、レイが体を隠そうとする様子に興奮をしてしまったのである。そんな事を考えてはいたがなんとか理性でその興奮を抑え込んで俺は話し出したのだ。


だが、俺はなぜか急に眠くなってきた事に気づく……。……そこでなぜか結人がこちらに来ていて俺のことをじっと見てきたため、俺はこの場で寝てはいけないと思いつつ意識を失ってしまったのだ……。


俺は夢を見ていた……。それは、どこか遠くへ旅立った親友と一緒に楽しく話をしているという不思議な光景であった。ただなぜか俺はその友人の名前が思い出せず、そのことに違和感を覚えた。


「ねぇ、レイナ……。君はこれから何をするつもりなんだい?」


「うーん……そうだね……まぁいろいろやりたいことがあるかな。まずはこの世界の謎を解くことだし、あとはまあいろいろとやるつもりだよ。それにしてもやっぱりあなたにはこの事を伝えておきたかったんだけど、あなたには伝えておくべき事だったのだけど、伝える手段が無かったから……だから、あなたの事を絶対に忘れないとかそういう事は言わない。けど、あなたとはまたいつか必ず会う事ができると信じてる。そしてその時は……私の力を使って……一緒に世界を平和にしよ!」


俺はこの世界がどういうものなのかを理解し始めていた。俺の能力は『あらゆる現象の解明』だ。そしてレイの能力が、恐らくはレイの願いによって発現したものであろうことは想像がついたのだ。だがなぜ、俺はこんなにもはっきりと夢の内容を思い浮かべることができるのか……。


そして、この夢の最後に出てきた『あなたとはまたいつか必ず会うことができると確信してる。』という言葉に引っかかっていたのだ……。その言い方が……どうしてもレイと会った事があるかのような表現で俺には疑問を覚えてしまっていた。そんな事を考えていると今度は結人とレイが話し始めた。「結斗……。君はまだ何かやるべき事が残っているんじゃないかな? もう既に私はあなたに伝えたけれど……君自身の力で成し遂げるといいよ。」


俺に言っている内容と違いすぎるのが妙だと思いつつも俺も「うん。」と答えたのである。すると2人の会話の内容に変化があり、俺はその内容を聞き逃さないように注意をした。


「ありがとうレイナ。じゃあ行ってくるよ。それとさっきのは僕も覚えてるよ。でも、僕にとってその言葉は君自身で見つけるものであってほしいと思っている。だからその言葉については何も答えない。だから、この言葉は僕の口からじゃないんだ……。でも、いつか会えるって思っているならそれでいいのかな。」


2人はしばらく何かを話していたが俺が急に目を開けると、そこは結人たちが住んでいる家の中にいたのであった。そこで、結人たちは心配そうに俺の事を見ていることに気づき、俺が急に起き上がって大丈夫なのだろうかと思っていたようだ。そこで結人も俺のところに来るために動こうとすると、レイラが俺のところに駆け寄ってきた。俺は、そんな俺を心配してくれて、そばを離れずにいてくれたレイラを優しく撫でながら……俺はレイと結人に「おはよう」と言うと……レイは嬉しそうな顔をしてくれたが、逆に結人はなぜかとても悲しそうな表情をしながら俺の事を見つめてきていた。……そこで、結人の表情の変化を見て俺もやっと今の状況が普通ではないことに気づくのである。……なぜなら……結人の体が半透明になっているからだ。その光景に俺が驚きながらも……俺自身も今の状態がかなり危ないことは分かっていた。だから……俺の頭の中には様々な選択肢が出ていたのだ。……このまま死んでしまう。


それとも死ぬ前にどうにかしてみんなを元の世界に転移させて……俺はその世界で死んでいくのもアリだろう。でもそうすれば俺がこの世界に残る事になってしまう。だから、俺としては……元の世界に帰れる可能性がある以上はそちらに残って……最後の希望として、この世界に残りたいと思ったのだ。……俺のせいで誰かが死んでいたとしたら……嫌だ。


でも、今の状況を解決する方法は正直なところ全くわからない。だが、俺が今までやってきた事を考えれば……何かしらの方法を思いつく事が出来るはずだと自分に言い聞かせた。


俺はとりあえず今の自分ができることをやってみようと考え、結人が消えないようにするためには、おそらくは時間が足りないということも分かっている。なぜならば……結人の体がどんどん透けていっているからであった。そのため、俺が考えようとした時にはもう遅く……結人は俺に向かって、笑顔を浮かべながら、「……さよなら、また、会いましょう」と言い残すと……この世から完全に消滅してしまったのであった。


俺は……その光景を目の当たりにしながら……自分の愚かさに呆れていた。結局俺は自分の事ばかりしか考えられていなかったのだという事に……俺は後悔の念しか出てこなかったのである。俺のためにこの異世界に連れてこられた挙句に……最後は命を犠牲にしてしまった友に何の言葉をかけてあげられなかった自分を情けなく思う気持ちでいっぱいになっていた。そしてそんな事を思って落ち込んでいると……レイもいつの間にかこの場を離れていて、どうやら俺にだけ聞こえる声で話しかけてきたようなのだ。


『ごめんなさい。私には何もできない。……ただ一つ言えることはある。それは、君の能力で出来るかもしれないってことだ。君の能力は全ての謎を解ける力だと私は信じているから……だから頑張ってほしい。』……その声は確かに聞こえたが……その声はいつものような明るい口調ではなかった。だがその一言を聞いた俺は少し元気づけられて、俺も結人を消させないためには全力を出すしかないと思い、まずは現状を把握する必要があると感じたのだ。……だがその前に……俺は俺自身のステータスを確認することにする。俺はステータス画面を開くと、やはりそこには……あの表示があった。だが俺はそのことに違和感を感じた。そのスキルの名前は『真矢』……ではなく、『真耶』となっている。俺はその名前が気になって、試しにその名前に触れてみると……突然俺は白い光に包まれてしまったのである。


だがすぐにその光が収まると……そこには、黒いドレスに身を包んだ少女が立っていた。その少女の姿に驚いていると、彼女は突然こちらに向かって抱きついてきたのだ。その行為に俺は驚くことしかできずに固まっていると……突然彼女の顔は涙と鼻水に塗れた酷い状態になり始めた。そしてその泣き声はとても大きなものであった。ただ、そんな状態にも関わらず、なぜかこの子には不思議な魅力を感じていて……何故か俺は彼女に対して強く出ることができずにいた。


そしてしばらくすると泣き疲れてしまったのか、彼女が俺の胸の中で寝始めた。その事に気づき俺は起こそうと肩に手をかけた瞬間になぜか俺も眠くなってしまいそのまま眠ってしまったのである。そして目が覚めると、レイの家のリビングで目を覚ましたのであった。そして俺が目覚めたことにレイと結人が気づいたようで、俺は2人に話しかけるのだが……俺の声を聞いて結人が大号泣を始めたため、結人の方を抱きしめて慰めるのに時間を費やしてしまい……。


それからしばらくしてようやく落ち着きを取り戻したのである。その後、レイと俺と結人の3人でこれからの話をする事にした。俺達はこの世界で暮らして行く事を決めるのだが、この世界ではお金を稼ぐことが非常に困難だということに俺が気づくと……。……レイがお金に関しては気にしない方がいいと提案してきたのだ。だが、レイに頼りきりになるのは良くないと思って、俺達がこれからどうやって生活して行くのかを考えるため、俺達にはある程度の知識が必要だと考えた。だが、この世界にはどんな物があるのかが分からず、困り果てていたのである。その状況で、レイに俺は自分のスキルの事を話した。俺の能力を使えば……俺の知っている物を再現できる可能性があることを思い出したためだ。だがレイは俺の能力のことについて詳しく聞いてくることはなかった。


ただ、レイは俺の能力を使う時に必ず対価が必要なのではないかという仮説を立てていたため、それを実行に移すのであれば……準備をしておかなければならないということを言っていたのだ。


俺の能力には……対価が必要となるものがあるのか……。そして俺の能力で何を作れるのかをレイに確認してもらうと……。……どうやら俺がイメージをしっかりできれば何でも作ることが可能なのではないか?……という答えが返ってきた。ただ、レイもどのような対価を支払うことになるかが予想できないと言っていた。


そしてレイも、その能力で作るものによっては何かを代用する必要がありそうだということで……俺もいろいろと考えてみた結果……ある事に思い当たった。それは……レイラだ。……この世界の住人の体の一部を貰うことで……この世界に存在する物を作り出すことができるのではないかと俺は思ったのだ。


だがレイはその考えについて否定的に思っていたが、最終的にはレイ自身がレイラに頼んでくれることになったのだ。


レイラにそのことを頼む時、レイは「あなたはそれでいいの?」と言った後にレイは悲しそうな表情をしていたが、俺はレイラの力になりたいと伝えると、レイラが俺を優しく包み込んでくれたのだった。そのことで俺は嬉しさで一杯になった。そしてレイも俺を優しく見つめながら……「……本当にありがとう」と俺に感謝を伝えてくれたのである。


レイと俺はその話が終わったあと、結人にこの世界での通貨の価値を確認してもらう。すると、結人が驚いたように、この国の硬貨は、銅貨、銀貨、金貨となっていて……日本円に直すと、銅貨が100枚=1000円相当、銀貨が1万円相当、金貨が10万円相当の価値となるということを教えてくれた。つまりは俺の感覚でいえば銅貨が10円程度。銀貨が100~千円、そして金貨が一万といった具合になる。その貨幣の取引レートも教えてくれる。……そして俺が今持っているもので一番高そうなものが、魔鉱石で出来た剣なのだが、これが金貨30枚ほどの値段が付くらしい。……この世界の通貨で考えると、およそ3000万円の代物であるが……。


そこで俺はこの国を出てからどうするかを考えていた。なぜならば、結人の件で俺もまだ心の整理ができておらず、さらにこの世界に来たのに何も成し遂げられないまま帰るというのはあまりにも情けないと思ったからだ。だが、今のままでは確実に元の世界に帰るための方法を見つけられずに、ここで野垂れ死にしてしまう可能性が高いと判断をしたのであった。だから、俺はまだ諦めないつもりでいた。


俺はこの先どのように行動していけば良いかを結人に相談をすると、結人はこの世界のことをよく知らない俺に色々なことを説明し始める。……だが俺の理解力が乏しく、ほとんど頭に入らなかったが、それでも俺はこの世界をどうにかするためには結人と行動を共にしなければならいと思っていたのである。そのため、結人にはこの世界で生き残るための手段を学ぶためにも一緒に旅をすることを決め、俺の決意が固いことが分かると、嬉しそうに笑顔を浮かべて、「それなら、僕の師匠を紹介するね」と言って、俺とレイに説明をし始めた。その言葉を聞いてレイが俺のそばを離れてしまったため、レイがいないと寂しいのだと思い……慌てて俺も結人の話を聞き始めた。……どうやら俺の事を気遣ってくれていたようだが……。


俺と結人の話がひと段落ついた頃を見計らい、リリアと結人のお爺さんが近づいてきて、結人がリリア達の家に戻ると言うので俺もその事についていく。結人もこの国に長居をするつもりはないらしく、とりあえず自分の故郷に行ってみるつもりだと言うので、俺もそれに同行したいと結人に告げると、結人が俺と一緒に行くことを許可してくれたのであった。そのことで俺は内心ホッとしたのだ。なぜならば、俺は、結人がいなくなってからこの世界に残ってしまう事がとても怖かったからである。……だが、この国に残るよりもこの世界で生き抜くためには誰かの協力が必要だったため、結人を頼りたいと考えていたのだ。だから俺は、その気持ちを素直に伝えることにした。すると、リリアとリーゼロッテが俺の頭をそっと撫で始めてくれた。俺はその事で涙目になっていたのだろう……。だが、そんな事などお構いなしの様子で俺達は歩き出した。


その道中で、レイとレイラが仲が良いことが改めて分かり……2人とも俺達の前では決して泣かなかったのだが……どうやらレイはずっとレイラに対して申し訳なく思っているようだったが、レイは優しいからなのか、「私の方が謝らなければいけないわ……」と言って謝罪していた。そして2人で仲良く会話をしている光景を見ていて俺は安心感を感じていた。


そのあと、俺達は王都の外にある森に向かうことになり、そこに到着すると、レイが結人を召喚した魔法陣を展開し、そこに手を当てた後……結人がこの異世界に来るときに現れた扉が現れる。俺がそのことに驚いていると……。結人が俺に説明をしてくれると、どうやら結人がこちらにくるときも同じようにこの空間を経由してきたのでこの魔法を使えるのだというのだ。俺はそのことに驚きを隠せずにいたのだが、この魔法で移動できる場所はかなり限定されているようで……この国の外に出ることは不可能だという。……だが俺は結人に頼み、一度俺が以前住んでいた世界に戻り、俺の家に帰りたいことを伝えると、快く承諾してくれて、俺は久しぶりに実家に帰ることができたのだった。……この事についてはまた後日話すことにする……。そして……この世界のことをある程度学んだ後、俺は家族に会いに行きたいことを再び伝えた後、俺は元の世界でも使っていた自分の部屋に向かい、そこで着替えを行った後、俺の部屋に置いてあった自分の持ち物を全て持ち出して……俺は結人達とともに、リーゼの故郷の村に転移することにしたのである。俺は、この村で結人のご両親の話を聞いていたので少し心配になって……すぐに結人に結人がご両親にちゃんと説明しなかった理由を聞いたところ……実は結人のご両親は、既に他界しており……しかも結人が失踪した後、かなりひどい状態だったというのだ……。


結人から聞いた話を俺は聞き、すぐに俺は結人に結人がどうしてこちらの世界で生きて行くことを決めたのかを聞くと……結人が、自分の両親を助けられなかった罪滅ぼしのために、こちらの世界の人達を助けることに決めて、そのために俺の力が必要だと伝えてくれたのだ。……確かに俺もあの出来事は未だに忘れられるものではない。それに、あんな理不尽な事が起こった原因を突き止めてやりたいとも思っていたのだ。そして……結人のお父さんとお母さんも……もし俺の力で助けられる可能性があるのならば……。


俺はその事を思い出して、俺はまず結人のご両親が暮らしているという村に向かうことに決めたのである。


それからしばらくすると……ようやく目的の場所にたどり着く。


俺はその村の景色を眺めながら結人の背中についていき……ようやく到着すると、結人が俺に挨拶をした後に、俺を結人の自宅に連れて行ってくれることになったのだ。……俺は結人に案内された家にたどり着き、インターホンを押して結人がドアを開ける。そのあとに俺も家の中に入ろうとした時……俺の前に突然女性が立っていた。……この女性に見覚えがあるような気がするが……。俺が戸惑って居るとその女性が口を開いたのであった。


「……真也さん!?︎……まさか……あの時の……。」……俺の名前を呼ばれた瞬間に俺は思い当たる節があったのだ。そして俺は目の前の女性の顔を見るが、間違いなく俺はこの人物のことを知っている……。そして……この人が結人の母親だと分かったのである。……そうか……。やっぱり……あの時から……この世界に来てしまったのか……。


「……やはり……。私の勘違いじゃ無かったんですね……。良かった……。本当によかった……!本当に……本当に無事でよかった……!」……その人は俺を抱き締めてきた。その行為で俺は思わず涙を流してしまい……結人の前では恥ずかしいと思いつつも……我慢することはできなかった。俺と結人の母との感動の再会を結人は優しく見守ってくれていた。


それからしばらくして落ち着いた後に俺は結人のお母さんが作ってくれていたご飯をいただいたが……俺が作ったものとは比べものにならないくらい美味しく、本当にこの人が結人を育てた母親なのだと思い、俺は尊敬したのだ。俺はその後……結人のご両親のことや結人のことについて聞こうとしたとき……俺は意識を失ってしまったのであった。


俺が次に目が覚めた時、俺は結人の家で寝ている状態で、隣にはレイと結人がいて、レイが優しく俺の手を握ってくれており、俺は目をゆっくりと開けていく。


「……うっ……ここは……?……レイ……?」


「シンヤさん……お目覚めになりましたね……? ここがどこかお分かりですか?」「……結人とレイがいるし……おそらく結人が暮らしていた世界の家だと思うけど……もしかして……結人はもう帰ってしまった?」


「はい。ですが私が結人を召喚しました。そして私と結人との繋がりを利用して……。それとシンヤさんに話さなければならないことがあるのです。私は……この世界では結人と結ばれることはありません」


「それは一体どう言うこと?」


レイの言葉に疑問を感じたので聞いてみると……俺に真実を教えてくれるようだ。


俺とレイがこの世界の外に行くための手段を探すため、結人が協力してくれたこと……。そしてレイラを元の世界に帰すために結人の能力が必要だった事……。結人のご両親が亡くなってしまい、残されたのはこの家だけだったため、今は俺の家に結人が一時的に住んでいることを俺に伝え、俺が起きない間ずっと結人に看病をしてもらったのだと伝える。俺はその事を聞いて心底安堵をしていたのだ。だがその時に俺はあることに気づいたのであった。


結人は既に元の世界に帰ってしまっていて……もう会うことができないという事実を突きつけられて俺は愕然としたのだ。だがそれでも……俺がこれから何をしていくべきかがはっきりした。


俺は今すぐにでも結人との思い出の地である王都に向かい、結人と一緒に行動しなければいけないと考えたのだ。そのためには今すぐ準備をする必要があったのだが……ここで1つ大きな問題が発生したのである。


「シンヤ。あなたには悪いけれど……あなたが元居た世界に戻る事は出来ないわ」


その言葉を告げられて動揺してしまい……レイの顔をじっと見つめるが、レイはその言葉は嘘ではなく本当のことだということを告げてくれた。


どうやら俺の力が足りないことが原因で……俺は元の世界に帰ることができなくなってしまったのだった。そのせいで俺は絶望に打ちひしがれ、その事をレイから教えてもらった時は、レイが俺を気遣って嘘をついたのではないかと疑い、レイに対して酷い事を言ってしまうが……レイが涙を浮かべている姿を見て、自分がとんでもない失礼なことをした事に気づくと……俺は自分の愚かさを痛感していたのだった。


「そうか……。俺は元の世界に戻れないのか……。」……そう言って自分の無力さに苛まれてしまう。……俺のせいだ……。俺のせいで……。そんな事を考えていたが……。


そんな時、レイラが俺のそばに来てくれたのだ。


その事に感謝の気持ちを込めて、レイラを見てみると……どうやら彼女は俺に対して励ましの声をかけてくれている様子であった。俺はレイラに励まされ、少しだけ立ち直ると、改めてこの世界で俺が何をすべきかを改めて考え始めるのである。……そしてレイから話を聞いた俺は……王都に行きたいと話すとレイは結人もこの世界に戻って来るかもしれないと言うことで一緒に行くことを勧めてきたのである。その申し出に甘えることにして俺は結人がこの世界を訪れている理由を聞くと……どうやら俺と同じように異世界の武器を取り返しに来たのだというのだった。その事で結人が戻ってきたときに会えなくなってしまうことに不安を感じてしまったが、俺のこの世界の家族のために……結人の両親を救い出すことができればと強く思ったのだった。


「……とりあえず今日はこれで休んだ方がいいと思います。この世界ではかなり長い間戦っていたようでしたから……体力を回復させてから……王都に向かうべきでしょう……」……レイに言われた通りに俺は体を安静にして、この世界に帰ってきた後でどれだけの間この世界で戦闘を続けていたのかを考えてみるが……その日は疲労困ぱいで、俺はいつの間にか深い眠りに落ちてしまっていたのである。


翌朝……俺が起きると既に結人は起きていて……俺のことをずっと見ていてくれたようで俺が目を覚ますと、結人に心配をかけたようで謝った後、俺は体を動かそうとしていたが、思うように体が動かなかったのである。その様子を見かねて結人が回復魔法を使い始めてくれて……どうにか動くようにまでなったのである。


そして動けるようになった後はすぐに俺は外に出て行き、まずはこの世界の現状を把握する必要があると思った俺は……レイの案内で村の周りを探索することにしたのだった。


俺はレイの先導のもと、この世界について説明を受けていたのだが……この村には特にめぼしい物はなさそうなので俺は落胆してしまう。


俺の予想だと、この村にある建物になら、俺達がいた世界への扉を開くための手がかりがありそうな気がしてたのだ。俺はレイに質問してみることにしたが……レイも知らないという答えで返される。


それから俺達は村に何も無いのでこの村の周辺について調べるために移動しようとしたが……その時にレイがこの村は昔魔物の襲撃にあって……それが原因で廃村にされているという話を聞き……この村がなぜ無人なのかという疑問は解消されたのである。その話を聞いていた俺だったが、ふとした瞬間に違和感を覚えて周囲を注意深く観察してみると……。その瞬間、地面の下から何者かが出てくるのを確認すると……すぐに結人の前に庇うように立ち、剣を構えながら、そっと地面に手を当てると地中にいる何かに向かって声をかけることにした。


『そこの誰か!俺達に敵対する意思はない!! 出てきてくれると嬉しい!!』


俺がそう叫ぶとその何者かが姿を現し……俺達を驚かしてきたのだ。そしてその姿を見た途端に俺は思わず驚きのあまり固まってしまっていたが、それも当然だろう……。なぜならば……その相手はこの世界の人間ではなかったのだから……。俺はその光景を目にすると思わず息を飲み込んでしまい……動揺を隠しきれなかったのである。だがそれと同時にこの世界がどういうところかも分かった気がした。


「お前がここにきた理由は……この世界の人間が作り出した武器を取り返すためか?」「あぁ……。そうだが……君はいったい?」と問いかけられ……俺は一瞬迷ったが、正直にこの世界に呼ばれてこの世界の敵と戦うためにこちらの世界に戻ってきた事を告げると、その者はしばらく俺の事を観察した後、この村の周辺に結界が張られていることに気づく……。


その結界を解くために……彼はこの村の付近に出没していたのだと話したのだ。


それからお互いに話し合い、この村の周囲の地形に詳しい彼のおかげでこの村の周囲にどのような物が存在しているかがわかったのだ。彼が話してくれた話の内容によれば、ここには様々な素材が存在し、その中には強力な魔力を帯びた金属が存在するようだ。その事をレイにも教えると、どうやらこの村の周辺の地下にそういったものがあると聞き……この場所を調べるために移動したのだ。


それからしばらくの間……俺はその者達と協力して行動することになる。俺はその者達と行動を共にしている内に……彼らが本当に味方であることを認識したが、俺にはその人達に警戒心を抱かせないようにするために彼らの話を聞いていくと、どうやら彼らは本当にこの世界の平和を願っており、俺に協力をしてくれることになったのである。


それから俺と結人はこの村の付近にある山々の調査をすることになった。この山の付近には強い力を持つモンスターが多く生息しているらしく、俺が今まで遭遇した事がない種類の魔物が数多く存在していることがわかってきたのだ。だがその一方で俺の勘が告げており、そこに結人の故郷の世界につながる場所が存在をしているような感覚がするようになっていた。俺がこの場を調べたいと思う一方で結人の方はレイがこの世界のことについて教えている。結人の世界にはこんな感じの世界がいくつも存在しており、この世界に来ている結人の同郷の者の目的は同じであり、結人の世界では異世界に行くための技術をすでに持っているということを教えていた。そして、もし結人の同郷の者が元の世界に戻ることができなくても、別の世界の人間が結人と一緒に行動をしてくれれば結人が元の世界に帰れるようになるのだと話して……。レイの話によると、結人はどうやら俺の知っている結人とは違った性格になっているようだったので、結人が元の世界の人間に会いたいと話してくれた時は俺の胸は痛むと同時に、その事が分かってよかったと思っていたのである。……その後……俺は結人と相談をした結果、俺とレイはこの辺りを調査してから、結人が調査をしていた場所へと向かうことに決めたのだった。その事を決めた後は……その者達に別れの挨拶をして、俺達はレイが言っていた地下へ続く道を探す事にしたのである。


それから数日間かけてようやくレイが教えてくれなかった地下への入り口を発見することが出来たのだ。その事に喜んだのもつ束の間……。俺はその中に入ることを躊躇してしまっていたのである。というのも、その場所に存在していた扉には鍵が掛かっており、扉を開こうと試すが……一向に開く気配がなく……仕方なく、俺はレイの方を見て助けを求める。


その視線を受けてレイは扉を開ける方法を考えて、そして閃いたのがこの扉を守護している魔獣の封印を解けばいいと話す。そして、その方法とは……その封印を解除するためには特殊な道具が必要なのであると言い出したのである。それは俺の持つ剣でも可能だとは言うが、どうも俺にはそれが嘘だと感じたので俺はその剣は使えないと告げると、ならば仕方ないと俺に対して協力をしてくれると言ってくれた。……そして俺が協力を申し出ると、どうやら結人の世界の技術で作られた物を使っても構わないと言われたのである。……そこで俺は自分の世界の物を召喚しようと試みるが……なぜか俺の体は反応しなかったので、結局俺の使えるのはこの剣だけだという事になった。


そして俺が使うと決まった後、俺はその刀身に手を触れると……その剣の力が俺の中へと流れ込み……その事に驚いてしまった。しかし、俺はそんなことを気にしている余裕はないのでその扉をどうにかできないかと考えたのだが……俺の考えは思い浮かばず……レイに聞くが、レイの話では……俺の持っているその剣でも……無理だという。俺はレイの言葉に衝撃を受けながら、レイに質問を続けると、どうやらレイの言うその特殊というのは特別な能力を持った武器の事だと説明してくれて……その能力は使用者の力によって変わるらしい……。その事を知った俺は……どうしようもない状況に歯噛みする他ないのであった。


だが俺はレイにこの世界の人間でもなく、ましてや俺達と違う世界の住人である結人にこの世界を守る為に戦って欲しいとは言えないと思い、この扉を開けられないことを伝えると……結人が俺を慰めてくれたのである。……その言葉を聞いた瞬間、俺はこの世界のために戦ってくれるという決意を固めてくれた結人に嬉しさを感じながら、その思いを無駄にしないようにと強く思ったのだった。


それからしばらくしてから……結人がその剣を持って行くと話を始めると、俺達はそれについて行こうとするが、レイが俺達を止めて結人を1人で行かせるように言ったのである。その理由としてはレイが調べた結果によると……結人はこの世界の出身者で、その武器を扱える可能性があり……俺の剣はその資格を持たない人間が持つとただの鉄くずに変わるので……俺の事は足手まといにしかならないと判断したからだと言うのだ。……その話を聞いた俺はレイの言葉が正しいと思って結人に全てを任せることにしたのである。それから俺はその武器が使えなくなった時の事を考えて、結人の故郷の世界への転移に必要なものを手に入れようと結人に話しかけたが……どうやら俺が考えていたよりずっと早く必要な物が手に入る可能性があると結人に言われ……レイと共に結人の故郷への道を探し始めることにした。……その数日後……。俺達のもとには信じられないことに結人の故郷の世界に続くゲートが出現するのであった。


俺と結人が一緒にいる間に訪れた街の中で俺は久遠とリリアに結人の世界の料理を出す屋台を出させて……俺達の世界の食べ物を食べてもらおうかと思ったが、その時になって久遠が結人の世界の食材をどこで仕入れればいいのか分からないことに気づき……困った末に、俺が持っていたアイテムの中に調味料がある事を思い出して……それを取り出してみると……なんと醤油だったのだ。


俺と久遠、結人が出会った時から既に久遠の手荷物として俺の手元に残っていたもので、久遠がいつも大切にしていたものだと言っていた。……それを久しぶりに手に取った時に……ふとこの世界に戻ってくる時に聞いた声が脳裏に浮かんだのでその時にこの調味料の名前を聞いていなかった事を思い出すと……久遠は「この瓶に入っている茶色いものが……私の大好きな醤油なんです」と言ったのである。その事から俺達は、久遠が結人の世界で生まれ育ったのではないかという考えがよぎってしまった。


結人の話によれば、異世界に渡る時に何かの事故で別の世界を跨いでしまうことがあるという。俺はそのことを考えると……その時に何らかの理由で、久遠とリリアがこの世界に渡ってきてしまったのではないかと推測をする。そして、俺がそんな考え事をしていた時……リリアさんに呼ばれ……どうしたのだろうかと思っていると……俺が持っているその黒い液体の事を聞かれた。俺はその液体が……醤油というものだと教えると、リリアさんはすごく驚いた様子を見せると……それから……その醤油というものを譲ってもらえないかと言われる。


それから俺達4人は久遠が持っている調味料の在庫を確認するために……この世界のどこかにあるはずの店を探すことにする。俺は醤油以外に久遠が使っている砂糖などを持っている事を告げてから結人の世界の事を少しでも知ろうと考え……結人の世界の事を尋ねようとするが……久遠は首を横に振ってしまい……この世界の事を聞いてくれるようにと頼んで来たので、俺と結人は……久遠の故郷の事を聞こうと心に決める。


そして、俺達がこの世界に戻ってきた日に……久遠の様子がおかしかったのが気になっていた俺はその事を聞いてみると……その答えが返ってきた。その話によれば……この世界の時間の流れはこちらの世界よりも早いようで、向こうにいた頃ではもう何十年も前になっているようだった。……その事実を知り、改めて時間の恐ろしさを感じたが……それでもまだ俺には確認しなければならない事がある。そう……それは……俺と結人がこの世界に帰ってきたのと同時に聞こえてきたあの男の声が誰のものなのか? である。その問いを投げかけた所、結人は……俺達と一緒にいた男の人だと言われ……その人物の名前を尋ねると結人は知らないと答えた。……その後、俺は結人の様子を見る限りでは結人の方にも同じようにあの変な声が聞こえるような素振りを見せてはおらず、どうしたらその現象が起きていたのかを考え始めたのだ。そして……ある可能性を考えたが、結人の方はわからないと答えるだけでそれ以上のことは分からなかったのだ。


それからしばらく時間が経つ間に俺は醤油を久遠に託した後……リリアさんの店で買ってきた服を見て回っている内に、俺が異世界に持ってこれたのはこの剣だけであり……それ以外の物は全て持っていない事を思い知らされた。そして、異世界で使っていた俺が元の世界から持ってきたアイテムも、この世界に来た時には既に失われていて……今俺の体の中には存在しないようだ……。そのため、この剣でどうにかする方法しかないのだが……この世界に転移できるかどうかすらも不明なので、本当にどうすればいいのか途方に暮れてしまいそうになる。


しかし、そんな時に……俺は思い出したのである。……その昔に見た不思議な夢のことを……。確か……俺はあの場所で誰かと戦っていたはずだ。そこで俺は剣を使って戦ったはずなのだが……なぜだか……戦いが終わった後に俺が立っていた場所の近くにあった建物のような物が跡形もなくなくなっていた気がしてならないのだ。そして……それから少しだけ時間が経った後……俺はまた同じ夢を見る……。それは……あの男が目の前に現れる夢だ。


俺の夢に現れたその男は……何やら魔法を発動しようとしている様子であり……それがどんな魔法かは不明だが、それがどのような結果になるかを予測する事が出来たので、俺は止めようとした。しかしその瞬間に目が覚め……そして再び眠りについた後……やはり俺が夢に見た場所の近くに、あの建物が存在しており、俺はその光景を見て確信を得る事が出来たのだ。……だが、それから数日の間……俺は何も進展がないままに過ごしていると……リリアが街で買い物をしていた最中に、久遠が持っていた道具袋を紛失してしまったと騒ぎ出してしまって大変になった。……それで、俺は久遠に自分の剣を渡した後に……街を探す事にしたが、久遠の方も久遠でリリアと一緒に探す事になったのである。それから数時間の間探し回った後に、ようやく見つける事ができて……俺もようやく安心できたのであった。……ちなみにその道具入れはどうやら魔獣を倒す事で手に入るドロップ品の素材で作られているらしく……中に入っていた物はかなり貴重である事が判明したので俺はそれを久遠に手渡す事にすると……どうやらその道具袋の中には……結人と俺が最初に見つけた物の他にもう一つ、俺達の世界から持ち込まれた物が入っており……その中には結人の母親の写真が入っていたのである。


そして俺達は久遠が持っていた調味料や砂糖などの食料類と俺達が作った服やアクセサリーを久遠が持っていた鞄に入れていき……結人が持っている俺の剣は結人が持っていくという事に決めた。俺はそれに賛成をして結人に預けたのだった。その途中で久遠は結人に俺と結人が持っているスキルの事は隠しているのでどうか秘密にしておいて欲しいと言ってくれて、俺がそれに承諾すると共に結人が俺に何か言おうとする前に久遠がその言葉を制止させたので……何か訳があるんだろうと察した。そして俺は結人に何も言うなと釘を刺してから久遠に感謝をしつつ久遠の頭を撫でたのである。そのあと、久遠に何かあればすぐ駆けつけると伝えてから別れることになった。その別れ際、俺はこの世界に戻れるように結人に頼み……その結人も快くうなずいてくれたので俺は嬉しくなって思わず笑みを浮かべながら……結人の頬にキスをしたのであった。


俺と久遠とレイが合流した後は俺が以前まで滞在していた宿屋に全員が集まり話し合いを始める。それからまずはこれから先について話を進めていき……久遠の両親がいるとされる町へと移動を開始するのであった。そして俺達はこの町を出て、目的となる町にたどり着くまでの間にある町で必要なものを買いそろえながら進み……ついに目的の町のすぐ近くに到着する。その町から目的地の町までの間に特に問題が起きることもなく到着した俺達は、この世界の情報収集を始めることにした。その結果、この世界の人達からは……この世界の外にあると言われている、他の世界についてはあまり知られておらず、その世界の存在自体も知っている人がごく少数であるらしい。


そして……久遠が住んでいた町ではどうやら最近、行方不明が多発しており……その理由は分かっていないらしい。さらに久遠の両親についてもその件が原因でいなくなっている可能性があるという事も判明した。


俺達がこの世界に来て最初に訪れた街でも行方不明者が増え始め、最近では……街の住人のほとんどが消えてしまったそうだ。その街の住民も……この街のようにどこかに移動してしまったのではないかという噂が立ち始めている。俺がリリアさんと一緒にいる時も、街の人にはそんな噂が流れており、俺もそのような話は聞いていた。


そして久遠に聞いたところ、久遠の住んでいた町にある山奥には、かつて神が住むとされた巨大な樹が生えていたが……現在はもう存在しないという話だった。……ただ……俺が見た夢の中で見た建物は確かにその場所にあり……俺はそこに向かった。そしてその場所は夢で見た通りの姿を保っていたが……俺が夢の中の場所に実際に訪れてみると、そこに存在していたはずの建物が存在していなかったのだ。そして……夢の中ではあったはずの建物があったと思われる場所も地面ごと綺麗さっぱりなくなっており、俺が呆然と立ち尽くしていた時に結人の方で動きがあり、結人がこの世界の人から話を聞き込みをすると言っていたのである。


その後……俺は夢で見たままの場所である場所を見つける事に成功したが、その場所はもうすでになくなっていた。俺が夢に見たものと同じ景色を見た俺は結人が話してくれるであろう事を待つのだった。……そう。あの夢の真相を知るために……。そういえば俺がここに来た時に聞こえた謎の声が一体誰なのかが気になるが、結人はその声が誰のものなのかはわからずじまいで……リリアさんに聞いてみるも知らないと言う。リリアさんと一緒だったあの人なのかと思いながらも俺は結人の方をじっと見つめる。すると俺の視線に気づいたのか結人は首を横に振ってから……俺がどうしてこの世界にいるのだと尋ねたが結人は首を横に振るだけで……それ以上のことは教えてくれなかった。


その後、久遠が持っていた道具を結人に渡し……俺は久遠と一緒に結人の後を追い、リリアは1人で行動することにしたようだった。そして……しばらく時間が経った後、久遠がこの世界で買った装備を身に付けた俺達と合流して結人の方と合流することになったので俺は2人を待っていた。それからすぐに結人は情報を集めることが出来たようで、この世界ではある儀式が行われたらしく……その際に多くの住民が消えたという。


その内容は、この世界を統べる神の召喚の儀式であり……それがどういう形で実現されるのかは不明だが……それはもうこの世界に存在しているらしい。ただしその儀式を執り行う事が出来る人間もおらず……実行できる者はどこにもいなかったようである。


そして……その神の力を授かった人物がいるという噂が流れているそうで……俺が聞いた噂によれば……それは魔王と呼ばれる人物であり、そいつはこの世界を支配しようと考えているようで……そのための準備として……魔物を大量に生み出しているという話を聞いた。俺はそれを聞いてこの世界に来る際に出会った結人を襲った奴らは魔王のせいなのかと考え始めたが、それよりも……この世界に来ているはずの勇者がどこにも見当たらない事に違和感を覚え始める。俺はその話をしてくれた結人の友達と思しき人に声をかけると同時に、その人は急に震え始めた。そして、「……あんた、あの魔王と知り合いじゃないだろうな?」と俺に向かって言ってきたのだ。


その言葉を聞いて俺達は……結人の友人に何があったのかを聞こうとしたが、結人の友人の体は突然光輝き始める。その光の強さに目を瞑ってしまった俺達が再び目を開くと……そこには、先程までは存在しなかった女性がいたのだ。「ふぅ……。やっほー!! 私だよ! 結人にこの世界の説明をしていた者だけど……。どう? こうやって会うのは初めてかなぁ!?」


俺達の目の前に現れたのは……黒髪の女性だった。この世界の人が着るような服装をしているのだが……。俺の目から見ると、この世界の人とは思えないような容姿をしており、とても美しい人だった。その女性の年齢だが……。おそらく二十歳前後の外見であり、その女性は結人の隣に立ってからこちらを見るなりいきなり抱きつき始めて、そのまま俺の顔を見てから顔を赤らめると「あ、あのね……。実はね……。私もあなたに助けてもらった事があるんだよ……。」と言ったのだ。俺にはその意味がわからなかったのでその女性がなぜこんなにも興奮しながら俺に抱きついているのかわからずに困っていると……「真也くんの彼女になる予定の久遠と言います……。私の事を助けていただいてありがとうございます……。それで……。できれば……。お名前を教えてもらえませんか……。」「んー。別にいいけどねぇ。私はね……クレアって呼ばれてるよぉ!」「じゃあ……久遠は……クレア様と呼ぶ事にしますね。……あの……。失礼ですけれど、その服に付いているマークみたいなものはなんでしょうか……。」久遠が不思議そうな表情をしながらクレアと名乗ったその女性の胸元を指差す。……ちなみにだが……この場にはなぜかレイも居て……そのレイはクレアに会えた事を心の底から喜んでいるように感じられたのである。それから、久遠の言葉を聞いた結人と久遠とリリアの3人が驚いたように俺の方に振り返ったが、俺はとりあえずは説明をせずに黙っておくことにした。


それから、俺達5人と結人とクレアは合流した後にある宿屋で部屋を取り休む事にする。……ちなみにではあるが、俺はレイに結人がここに来た時にしたようにキスをし、レイが俺のキスに嬉しそうにしているのを久遠と結人が微笑まし気に見ている光景を目にして……なんだかもやもやした気持ちになりながら俺達はそれぞれの部屋へと入る。そして俺は部屋に荷物を置いた後に宿屋の中にあった食事スペースへと向かうと結人もまた同じように向かってきていて……久遠は結人に連れ添うようにしてついて行ったので俺達と結人の友人だけがその場に残った。


俺達は結人がこの世界に来て以来、一緒にいたその男性を……『ジン』と呼んでおり、ジンはその呼び方に対しては特に文句を言うことはなかったが、この世界の住人は全員の名前を呼ぶときは呼び捨てにすると決めたのである。


ジンと久遠達はどうやら知り合いらしいが久遠は覚えていないらしく……その事に久遠はかなりショックを受けていたが、久遠の記憶がない事は今となってはあまり関係のない話だった。


そして……久遠が結人に俺達がこの世界にやって来た時の話を始めようとした時だった。俺が夢で見た内容を話す前に……。俺には伝えておくべきことがあり、俺の話を聞いて欲しいと告げることにした。それは……。レイについてだ。……俺は夢の中に出てきた女性のことを……結人にだけ話すことに決める。……そして俺がその夢の内容を語ると、レイの正体を知っている結人が反応し始め……結人は驚きながらも納得し、結人が知っているであろう情報を俺達に教えてくれたのである。


その後……その話が一段落してから今度は久遠の番だと言わんばかりにそれぞれが話を始めたため久遠は自分の事を話し始め……俺はその話を聞きながら、俺自身が久遠の事を忘れていた事を思い出してしまう……。そういえば俺が久遠に対してどう接していたのかも忘れてしまったことを思い出したのである。……そして久遠と俺はお互いに惹かれ合っていたが、久遠が告白してくるよりも先に結人と再会してしまったために……お互いに恋人関係ではなくなっていたので久遠と結ばれることはないと思っていた。


だがしかし……俺はその記憶をなくしており、そのせいで俺は自分が久遠の事をどう思っていたのかというのがわからなくなってしまったのだ。だから俺は自分の意思を確認する意味も込めて……結人に久遠との関係を確認してみると……やはりというべきか、結人は否定をしたのであった。そして、その会話が終わってからは久遠の昔話が始まったので俺と結人はその話を静かに聞くことにする。


俺の頭の中で浮かんでくる疑問の数々を頭の片隅にしまいこみながら、俺は久遠の話を聞いた。そして……そんな久遠が今までどのように過ごしていたのかを知る。俺はそれをただただ……懐かしい気分で聞き続けるのだった。


俺と久遠と結人はそれぞれ、夢で見た内容を話した後にそれぞれがどんな状況下に置かれているかを話し合い、情報を共有すると結人は何かに気付いたかのように……「……やっぱりおかしいよね。だってさ、魔王が召喚されたって言うならさ、魔物の数もかなり増えててもおかしくないはずなのに……まだそれほどの数の魔物を見かけてないしさ……。僕としてはその話が正しいと思うんだけど……。真也は違うの?」と結人が尋ねてくるので俺は少し悩んだ後に……「……正直に言ってしまえば、俺はこの世界の人達から話を聞いたわけじゃないからな……。結人のようにはいかない。……俺の推測では、勇者が行方不明になってるからだと思うぞ。魔王と勇者ってのは本来なら対になっている存在のはずだからな……。それに……あの夢を見た時は、確か魔物がこの世界を支配していたよな?……だけど実際は……この世界を支配しているのは人間って可能性もあるってことだな……。」と答えると、それに合わせて久遠と結人は真剣な眼差しを俺に向け始めた。俺はそれに対して、その可能性が高いかもしれないということを伝えると……リリアさんと連絡を取るべく俺は部屋に戻るのだった。



* * *


私は1人でこの世界を歩き回っている時にとある建物を見つける……。その建物はこの街のギルドと呼ばれていて……私は中に入らずともその建物の入り口の前で立ち止まり建物の中を覗く。すると……私のような獣人ではなく人間と思われる種族の男性がたくさんおり、彼らは皆楽し気な雰囲気に包まれているように見え、この雰囲気を感じ取った私の心臓が早くなる。


(この世界の人族はみんなこうなのかしらね?……私の村に住んでいた者達も人間だけど……私を見るなり嫌そうな表情をして私を避けるような奴ばかりだったわね……。)そう思いつつも私はその男共の中に混ざるべくその建物を覗き込むのだが……。その時だった……。「お前!! そこどけ!! 痛ぇじゃねえか!!」と怒声を上げながら私の前に立ちふさがり邪魔してきたのだ。


「……」


私が何も答えずにその男の顔をじっと見つめ始めると……男は「何見てきてんだ!! 俺が誰か知ってんのか!! この糞野郎が!! 」といきなり私の肩を掴み、強引に引っ張ってくるので……。私は力任せに振り払う。その反動で私は尻餅をつき、それを見た周りの人々はその出来事を見てざわつき始める。その騒ぎを聞きつけた受付の人間は急いでその場に現れ、そして……騒ぎの元凶は私に詰め寄るとその人物の名前を叫び始めたのだ。


「……おい。てめえ。ふざけんじゃねぇよ。……てめぇみたいな汚物には俺が誰なのかは関係ないよな。……いいだろう……。この俺がてめぇの目の前でゴミを掃除してくれる!! いい加減にしねぇとこの俺を怒らせることになるぞ!!……この……俺の……」


そいつが言葉を続けようとするその途中で、私がその男に向けて蹴りを入れると……。


「っ!!?? いてーーーー!! 」その男が大声をあげ始め……。


「……うるさい……。騒ぐくらいならもっとうまくやって欲しいものだわね。それにしても、あなた達って本当に耳障りね……。」


それから、私がそう告げ終わると同時に、私は……私を取り囲む集団の人数がどんどん減っていく光景を見ながら……心の底から喜びをあらわにしながら……。


「……あら、……これって……楽しい……。でも、……まだまだ……これからが本番ね。」


私は笑みを浮かべながらその騒動を静観することにした。


**


「久遠……。……お前、何がしたいんだよ。こんなことしてまであいつを……。……久遠……、……いいや、……クレア……!……クレア……ッ!…………なんでだ……! クレア!!!!」


俺は、クレアを呼ぼうとした時に、久遠の身体に憑依している事を思い出し……必死でその名前を呼ぶ。すると久遠の体から突然クレアが姿を現し、俺の体に抱き着いた。そしてクレアは嬉しそうな表情で、「もう……どうしたのぉ? 真也くん。私に会えてそんなに嬉しかったのかなぁ?」と言ってきて……。クレアは俺の胸元を撫でるようにして触り始め……そして、クレアは頬を俺にすり寄せ始めてきたのである。


その行動で俺はさらに混乱してしまうが、とりあえずはその手を離すように指示をしようとしたところで、後ろにいた結人が慌てて俺達の所へと近づいてくると……そのまま結人は……クレアを引き剥がしてくれた。そして俺はその結人の対応を不思議に思っていると……


「真也……。……ちょっとごめんね……。」と言い、結人が突然俺を抱きしめたのである。その事に驚いてしまった俺は……「なっ……!? 急になんだ……!?……結人?」と驚きつつ、結人に話しかけたが結人は返事をすることなく、俺を強く強く、抱きしめ続けてくれたのだった。その事に少し戸惑いを覚えたものの……結人に甘えるかのように体を預けることにしたのである。するとしばらくしてから結人は俺をゆっくりと放すと……。


俺は、その事に寂しさを覚えつつも……結人と目が合い、微笑む。……そんな微笑ましい光景を見続けていたクレアは、俺に近づいてきて、結人がそうした時と同じように俺を抱きしめて……


「ふぅ……。なんか落ち着く……。このままこうしてても良いかも……!」と言ったので……


「それは駄目に決まってるだろ。……久遠の体がどうなってるかわかんないのに……。勝手に変なことしないでくれよ……。……結人もだぞ?……それで、久遠の事はどうなったんだ……?」と言うと、


「久遠ちゃんのこと?あっちは大丈夫だよぉ〜。今は寝てるだけだもん。ま、起きたらすぐ元に戻っちゃうけどねぇ……。だから安心しなさい!……それよりも、真也くんが私のことをいっぱい考えててくれたことがわかって嬉しいんだよね〜……。」と言ってきたため俺は恥ずかしくなり……。それを誤魔化そうと……。「べ、別に俺はただクレアのことを思ってただけっていうかさ……ほ、本当は今すぐ会いたかったんだけど、久遠に俺の記憶のことを頼まないと行けなかったんだよ……。それにさ、……結人が久遠を気絶させたせいで俺は心配してたんだけど……。どうして俺が久遠を心配したら結人は俺に怒ってたんだ?」と言うと、結人が困ったような顔で俺を見始めたため……「……結人?」と言うと……。


結人が少し言いにくそうな感じではあったが、それでも結人自身にも考えがあるのか俺に話し始め……。


「えっとさ、……多分だけど、……僕が怒られた理由はね、……僕がクレアさんのことを知ってる理由が原因だと思うよ。僕はクレアさんと会う前……つまり久遠が記憶を失う前の世界で……ある事があったらしいんだよ……。それが、どういうことだったのかわからないけど、僕にとってはすごく重要なことがあって……。僕も詳しくは分からないんだけど、……その時、僕の記憶は消されちゃってたみたいで……。だからその事で怒られちゃってたんじゃないかな……。それと、久遠に何かあったのかと思って、すぐにクレアさんに電話をしたかったんだ。久遠の体のこともそうだし、真也の様子とか、あとはクレアさんとの話の内容とか……。いろいろ聞きたいことはたくさんあるしね……。でも……クレアさんの連絡先も知らないし……真也の番号すらも覚えてない状態でさ、どうやってクレアさんに電話をかければいいのかが全然わかんなくってさ……。それが原因であんなふうになってたんだよね……。だから、僕もごめん……。真也は悪くはないんだけど……。僕の言い方が良くなかったから、怒らせてるんだってわかったから……。ほんと、悪気はなかったから許して欲しい……。」と言ってきた。それを聞いて俺は結人を許したのだが……。そこで結人は再び口を開くと……。「それと……さっき、僕達が話してる時に真也と久遠が2人でどこかに行こうとしていたことがあったでしょ? その時から気になってる事があるんだけど、真也と久遠って……付き合ってるの……? いや、それじゃなくても良いんだ。僕と結衣とはどんな関係なのかな……? 真也は……。……って、その前にまずはこの世界では……恋人同士だったりするのかな……? そうじゃなくてもいい。僕にとって大事な話なのかもしれない。でも、聞いてもいいのか、聞かないほうがいいのか……。分からなくてさ……。」と尋ねてくるので、俺はそれに「あぁ……。結人には全部教えておきたいから……全て話すよ。」と言うと、結人は俺と久遠との関係を聞き始め……それからしばらく時間が経った頃、俺はようやく全てを話し終えたのであった。


すると、俺が話を終え、久遠との思い出を全て話し終えてから……結人は少し複雑そうな表情をしながら、俺の瞳の奥を覗き込むように見つめると……、「……うん。大体話は理解できた……。……そうか……。じゃあ……この世界でも……僕と真也は……友達で……仲間で、そして……。」


そこまで言った後、結人は俺の事をまた抱きしめ始める。そして……「ありがとう。本当に……本当に……。こんなに大事に想ってくれてて……嬉しかった……。」と言うと俺から離れ、クレアに向かって手を差し出すと……クレアは結人をしっかりと掴み、「よろしくお願いしますね……。これからは私が、私達の世界があなたを守りますから。あなたは……絶対に私が守りますから……。あなたに、この世界で生きていく権利を与えましょう。あなたが幸せに暮らせる世界にしましょう。この私が……。」と言い放つ。そして、俺がその意味を考え始めた頃にクレアと結人が突然光に包まれ始めたので、驚く。するとその瞬間、突然部屋のドアが開かれてレイナが現れ、


「な、何やってるんですか!? 早くここから離れて!! もう、この空間は維持できません!! 結人とレイナちゃんと久遠さんとで外に出て下さい!! はやく!! 」と言うので、レイナの手を掴んだところで……。俺は意識を失った。


目を覚ました俺は辺りを確認すると、俺達は既に部屋の中にいて、レイナ達の姿は無く、俺とクレアの二人だけが残されていたのである。そんな状況の中クレアが突然立ち上がり、「ふぅーーー。……これで良かったわね。まさかあのタイミングで呼ばれるなんて思いもしませんでしたが。でも……。あなたならきっと助けに来てくれると信じていました。本当に嬉しかったですよ……。」と言ったので、「え?……あぁ。その……あれはたまたま近くにいただけというか……。なんだろう……。その、ごめ……」


「謝らないでください。むしろ私は感謝していますから。それよりも、お話をする前にあなたにお伝えしておく事があります。私達の目的のためには、あなたの力が必要なのです。ですから、……その力を貸してくれますか?」と言うので俺は「……俺にできる事があるんだったら。……その目的を教えてくれないか?」と言うと、クレアは「……それはまだ言えないですね。もう少しだけ待っていて欲しいです。……でもいずれ必ず説明しますから。信じてください。私のことを。私はずっと昔からあなたを見守ってきた存在なのですから。約束しますよ。……それと……その、いきなりですけど私と手を繋いでくれませんか?」と言うので、俺はクレアと握手をする。


すると、急に俺は頭痛が走り始め……そして、なぜか俺は自分の家の前に立っていたのである。するとそこには、制服姿のままの久遠がおり……俺はそんな久遠を心配すると……久遠はそんな俺の手を突然握ってくる。そして、久遠が泣き始めてしまうので俺はどうすればいいのかがまったく分からず、戸惑ってしまう……。しかし、久遠が俺に突然キスをしてきて……そのまま抱き着いたのである。


その突然の出来事に驚きつつ、なんとかして引き剥がそうとすると、いつの間にかいなくなっていたはずの久遠が再び俺の家に帰ってきており……そんな久遠は突然久遠と全く同じ姿をした女の子に変貌する。……その姿が誰かに似すぎていたため俺は思わず……「……誰だよ、お前……。俺の知ってる久遠じゃないだろ……。なんなんだよ……。一体俺になにが起こったっていうんだよ……。」と言い放ってしまったのだった。


その後、再び気がついた時……何故か俺達は結人と久遠が寝ている寝室へと戻っており……。クレアも俺も無事だったのだと分かると、安心感と共に力が抜けてしまったのかその場に座り込んでしまうと……。「あらあら……。大丈夫ですか? 疲れていたのかもしれませんね……。さすがにあの時のことはびっくりしましたよ。」と言うクレアに対し、「そりゃそうだろ……。あの状況でどうしたらよかったのかもわからなかったんだし……。それより、結局あの後はどうなったんだ? それに……。あっちで会った久遠は……どうなったんだ? 」と尋ねると……。クレアはその質問に答えずに微笑んだまま「それよりも……。少しお休みしてください。少しだけ……眠っていけばいいと思いますよ。」と言ってきたので、俺がそれに従おうとすると、クレアが耳元で「今、久遠さんには別の部屋に居て貰っています……。真也さんの今の状況は……私しか知らなくていいことだと判断していますので……。だから、……久遠さんには内緒にしておいてください。久遠さんにだけは知られたくないんですよ……。だって、……久遠さんはもう……。……だから今は……ゆっくりと休んで……。久遠さんと結人さんに、私の本当の名前を明かせば……。全てが変わるでしょうから。それが終わった時には……ゆっくりお話しさせてもらいますよ。」と言うと……。俺に薬のような物を口に入れてくる。それを飲んだ瞬間、急激に瞼が重くなり、俺は深い眠りに落ちていって…… 次に目覚めた時に俺は家のリビングのソファーで横になっていたのである。……その日は休日であり……。クレアが朝早くから買い物に行きたいと言っていたので付き添うことになったのだが、クレアの服装はいつもと違って……まるでコスプレをしているかのような雰囲気だったのだ。そんな彼女に連れられやってきた場所は大きな百貨店で、その中をしばらく歩くと彼女がとある店にたどり着くと……「……ここでちょっと待っていてもらえないでしょうか? 」と言うと彼女は店の中に入っていったのである。


しばらくして戻ってきたクレアの手には大量の衣服や靴などが入ったバッグを持っており、俺は「なあクレア……。それ全部俺に買ってくれたやつなのか……? 」と聞くと、クレアは笑顔で「はい! そうですよ。あなたが普段身につける物を一式買い揃えましたからね……。さあ行きましょう? 」と言うので俺はクレアと一緒に歩いていく。……その後も色々な店を回り、クレアと昼食を食べるために近くのファミレスに入る事にしたのだが、クレアがメニューを見ながら真剣に悩んでいる様子を見て……。


俺はクレアが頼んだものと同じものにしようと思い注文をした。その瞬間、「え? 良いんですか? 私が選んだやつで? 遠慮しないでも良いんですよ? 」と言うので俺は……。「いや、別に構わないけど……。俺はクレアが何を頼むのか気になっててさ……。それで、決まったのか? 」「そうですか……。それならいいんですが……。では私はこれを……。それと……ドリンクバーで飲み物を取って来てもらえますか? お願いしますね。」と言ってきたので俺はそれに承諾し席を離れていった。


俺はクレアの頼みに従い、コーヒーを持って戻ってくると……。俺は、目の前の料理に手を付けようとし始めていたクレアを見て……「……ん。なんだ? これ。……クレアは俺のこと見てるだけだし……。食べないの……か……な……。……んぐっ!? 」と口にした直後、俺の顔は一瞬で青ざめていき……。そして……俺の手からはコーヒーがこぼれ落ちる。そしてクレアの手に握られていたフォークには先程までクレアが使っていたサラダに使われていたドレッシングが大量に付着しており……。クレアがその手を俺の方に向けてきたので……「おい! 何すんだよ!! 俺の口に何入れたんだよ!! 吐き出せ!! すぐに!! 」と必死に訴えるが、クレアは笑いながら……。「あはは……。やっぱり真也さんは優しいですね。……私があなたの事を食べてしまうと思ったんでしょう? 大丈夫ですよ。あなたを殺すつもりなんて無いですから。安心してくださいね。」と言うと……。俺が食べたであろう野菜に大量についてしまっていた赤いシミのようなものを手に取り、舐め始めると……クレアは「……ん。おいしい。これがあなたの血……。あなたの体液なんですかね……。んん……じゅるり……」と言うのである。


「なにを言ってるんだ!! お前は……いったいなにし……」


そこまで言ったところで突然意識が途切れ始めると……。またも俺は見覚えのある部屋にいた。そしてそこにはクレアがおり、俺はクレアがなにをするつもりなのかは知らないが……それでも、嫌な予感しかしないのでクレアを全力で止めようとするが……そこで目が覚めたのである。そして起き上がる前に目を開けると見慣れた天井が見える。……それはつまり夢ではないということである。……俺はあの時感じた恐怖心が未だに消えていなかった……。あの時感じたものが一体なんであったのかは全く分からなかったが、あの時はとにかく早く逃げなければと思わされる程の危機感を感じたのだ。……だがそのおかげだろうか……。今の状況に対しての耐性が付いたような気がする。俺はそんなことを思いながらも……今が何時ごろなのか確認するために時計を見ると時刻は朝の8時過ぎだった。……そんな時、玄関のチャイムが鳴る音がしたので俺は急いで玄関へ向かい扉を開く。


「おはようございます。……あれ? 真也さん?……どうされたんですか? 顔色が悪いですが……。どこか体調でも優れないところがあったりしますか?」と久遠が心配そうな顔をして言うのだが……。俺は、「大丈夫だよ。心配してくれてありがとうな。それより、今日は学校が無いけどどうしてこんなに早い時間にここに来たんだ?」と言う。


「えっと……実は……。……昨日のお昼にレイナちゃんから連絡がありまして、明日一緒に遊ばないかと誘っていただいたので……。それで待ち合わせの時間を決めようと思いお電話をさせていただこうと思っていたんですが、その時にレイナが熱を出してしまったようで……。だから私は看病をしないといけないので……。申し訳ございません。折角の機会だったんですけど……。本当にごめんなさい……。」と言う久遠に「そうか……。それなら仕方ないか……。まぁいつでも遊べるから気にしなくていいぞ。じゃあとりあえず今日のところは……。」と言いつつ俺はふと思う。久遠も今日暇なのではないか……と。なので、久遠にも予定を聞くと、久遠は特に用事もないため俺の家に来ることに。


「すみません……。せっかくお休みだったのに……。お仕事の邪魔になりませんか?……その、もし良ければ真也さんが働いているところを見学してみたいのですけれど……。迷惑でしょうか? 」という久遠の申し出により、久遠には俺のバイト先で俺と一緒に過ごしてもらうことになったのである。ちなみに今日からしばらくは忙しくなってしまうので俺の仕事場にそのまま直行することになったのだった。


「それにしても……久遠って本当に綺麗な髪だよな。サラサラだし、それにこの艶……。俺なんかより絶対にケアしているだろうな……。」と俺が呟くと、「あはは……。私なんかよりも真也さんの髪の毛の方が素敵ですよ? とても真っ直ぐですし……。それにすごくさらさらしていて触り心地が良いですよ?……それに、私のこの髪の毛は少し癖があるのもありますからね。あまり好きじゃないんです。だから、そんな私の頭を撫でていただけると嬉しいんですよ。」と言う久遠に……「……そっか。そう言われると嬉しくなるよ。ありがとな。それなら今度お礼に……。俺が使っているヘアパックを使ってもいいかな?……最近少し肌荒れしてきててさ……。」と言うと、久遠が「本当ですか?……では、楽しみにしてます。私、頑張りますよ! あっ!真也さん。着いたらまずどうすれば良いですか? 」と言ってくるので俺は……。「そういえば、久遠にはまだ説明してなかったんだったな。俺達のバイト先に来るのは初めてだからわからないことが多いかもだけど、俺についてきてくれればいいから。多分、久遠が見たことあるのって……。お客としてうちのカフェに来てくれた時くらいしかないはずだからさ。その時にどんな仕事をしていたのかを覚えていればきっと大丈夫だと思うから。それに、お客さんに俺達がどういう風に見られてるのか知ってもらうのも良いかと思って……。まあ、いつも通り接客してるだけだし、そこまで身構えなくてもいいんだけどね。」と言うと……「はい。ではそのようにさせていただきますね。」と言うのだった。


それから程なくして、俺達はバイト先の『花鳥風月』に到着したので俺は中に入り、従業員の休憩室に向かうと、そこには既に他の3人が待っていた。俺は皆に事情を説明すると……「わかったわ。……それじゃあ、これからは私があなたたちの代わりに店長をやるわね。……そうね。私が指示を出す時は敬語を使わないでいくからね。よろしくね。それと……レイナは今日は大事をとって休ませておくわ。後、真也君が今日はシフトから外れる代わりに私が代わりに出るわね。……それで良いかしら? 」と言う透華に俺は「ああ。分かった。……それじゃあ俺は久遠と2人で仕事を始めさせてもらうよ。」と言う。すると……レイナの母である美優が……。「ねえ、私と交代してくれても良かったのに。……だって私がここにいてもすることないでしょ? だったら真也君の方に行って少しでも力になれたらなって思ったんだけど……。ダメ? 」「うーん……。正直言って……今はやめておいた方が良いかもしれない……。今からやろうとしていることは……俺がやったとしてもうまくいく保証がないんだ……。ただでさえ人手が少ないのに更に減らせない……。」と言うと、「……そう……。ごめんね……。無理言って……。」と言って部屋から出て行ってしまった。……さっきまでは、母さんのことをなんとかしたいと思っていた。だけど今は、自分の無能さを改めて思い知らされた気分になった……。


久遠は母さんの後ろ姿を見て心配そうな表情を浮かべている。そして……。俺が俯いている時……。「あ!真也くんが来てる!今日は何するの!?……そうだ!あのね……。あの時はありがと。すっごく嬉しかったよ……。それと……これ、見て!……わたしが作ったクッキーなんだ。美味しいんだよ〜!」と、満面の笑みで話しかけてきたレイナに「えっと……、ありがとう……。……それと、その……。今日は、俺と、久遠は、ここで働く事になったから、レイナとは会えないけど……。また別の日に会えると思う。それまでは……その……。俺と久遠がついてるから……。安心してほしい……。あと、俺はもう帰ることにするけど、久遠はしばらくここに残ることにしたらしいから……。何か困ったことがあったら助けてあげてほしい……。お願い……。」と頼むと、俺は足早にここから出ていく。


「……大丈夫ですよ。レイナさん。……私は真也さんから、あなたを助けるよう頼まれましたから。あなたの事を守る責任がありますから。」と久遠が言いながら……。「大丈夫ですからね。……でも……。どうして真也さんは、あなたと距離を置いているんですか?……私といるときの真也さんはもっと……。」と言う久遠に対して、「……うん。……でも……わたしが……。いけないの。わたしは……お母さんに迷惑をかけてばっかりで……。本当はこんなところにいちゃいけなかったの……。」と泣き始めるのであった。


俺は家に帰ってすぐに着替えを始めると、そのまま急いで学校へと向かう。だがその途中で俺を呼ぶ声が聞こえたので俺はその方向に振り向くと……。そこには久遠がおり、久遠はなぜか慌てたような様子だった。「真也さん!!……お話がありますのでついてきて下さい……。早く……急いで……急いでください……。間に合わなくなってしまいます……」と言われてしまった俺は、「ちょっと待ってくれ……。急ぐのはわかるけど、俺は学校にいかないといけないし……。そんな時間も無いんだ……。悪いけど、後にしてくれないか?」と答えるのだが……久遠は首を横に振るだけだったので……仕方ないので「久遠、そんなに強く引っ張られたら危ないし……。その、色々とマズいんだが……。」と注意したのだが全く聞いてくれない。……久遠の様子に少し恐怖心を抱きながらも久遠に引かれるようにして走っていく。すると、俺達はあっという間に学校に辿り着くのだが……そこで久遠は足を止めたのだ。


久遠はそのまま俺の事を連れて行き、俺達は職員室にたどり着くのだが、久遠はその前に先生と話をしていたらしく、久遠は俺を連れ、俺が普段授業を受けている教室へと向かい始めた。その間俺は一言も発せずに久遠にされるがままになっていた。久遠が俺の手を引きどんどん進んで行くのを見ているうちに俺の頭にはある考えが浮かんでいて、その答えが当たっているならば、この状況がいかにまずいものであるのか理解してしまう。久遠は恐らく……。この学校で一番強い能力を持っている生徒で……。そして、そんな奴を俺が連れて行っているとなると……この先どうなるのかなんて火を見るよりも明らかだったからだ。


そして……久遠は俺とレイナがいつも授業を受けている部屋の前にたどり着いたところで俺に向かって……「さぁ、着きましたよ……。」と言い、扉を勢いよく開け放つと……そこに広がっていたのは俺が想像していた通りの光景で……。中にはレイナ、クレア先輩に美紀。それと……。俺のクラスメイトである蓮司に、美咲の姿があったのだった。


〜・ 俺と久遠は部屋にいる全員に注目されていたが……俺達の視線はお互いにぶつかり合った。そのせいか部屋の空気はより一層重くなり、皆の緊張感が伝わってくるほどだった。俺は久遠に連れてこられるなり……、いきなり現れたかと思えば、この部屋の中で一番強いであろう久遠は……俺のクラスの同級生の蓮司の腕を掴む。その瞬間、部屋の雰囲気は一気に変わってしまった。皆が動揺しており、状況を理解しようとしている中で……ただ一人だけ冷静に事態を見ている人がいた……。そう……。それが俺の目の前に立っている男であり……。俺に視線を送ってきていた。


「おい。お前、一体何してんだよ。こいつは俺たちの仲間なんだぞ!早く解放しろよ!」と俺と久遠の関係を知らないはずのクラスメイトの男が久遠に向かって叫ぶ。しかし、久遠はそいつの事を気に留めず、掴んでいる手を引っ張り……。俺のことを無理やり立ち上がらせると俺にだけ聞こえる声で「すみませんが……この場を少しの間私に譲ってくれますか?……お願いします。」と言っ……た? 突然、久遠にそう言われた俺は混乱してしまい……「……え? どういうことだよ? 俺には全く話が読めな……」と言い終わるまでに、久遠がさらに力を込める。すると……。俺は久遠に無理矢理立たされてしまって……。……その時だ……。俺に助けを求めるような表情を浮かべながらこちらを見てくるクラスメイトの男と目が合う。


「いや……なんの冗談だよ? さっきまでの真剣な雰囲気どこ行ったんだよ……。って言うか離せよ……。俺は関係ないって……。俺は本当に関係な……。」と言う男の言葉を遮って……久遠は……。「私はこの方を解放するつもりなど毛頭ございません……。私が求めているのは……。真也さんだけです……。あなたは黙っていて貰います……。あなたには……私が用があるんですから……。だから邪魔をしないでください……。」と低い声で言った。その言葉を聞いた男は……「……ッ。」と言って俯いてしまう……。その姿を見て俺は……。「あ……。久遠!……頼む! 俺の話を聞いて欲しい……。その人を解放して欲しいんだ……。」と俺は久遠に対して言うが……。久遠は俺の頼みを聞き入れてくれることはなかった。


それからしばらくして……俺に久遠をどうにかすることは不可能だと思い知らされた俺は……。「分かったよ……。じゃあ……俺はこれで……。」と諦め、久遠に連れて行かれるがままに歩き出した時だった。俺は久遠に手を引っ張られて体勢を崩す。そして、次の久遠の言葉に耳を疑ってしまうことになる……。「……真也さんはここで見ていてください……。貴方は私の大切な友達です……。私はこれから……あることを試しにいきます……。もし私が戻ってこれなかったとしても……。」そう言うと……俺の手を強く握り……。俺が何かを言い返す間もなく、どこかへと消えてしまった。……それから数分経っただろうか……。すると……教室の中から悲鳴が上がり、俺は嫌でも何が起きているのかを察知することになる……。


俺は慌てて中に入るが……そこには信じられないようなものが映っており、その光景を見た俺は驚きのあまり絶句することしか出来なかった。それは何故かと言うと……。


そこにはボロボロになって地面に横たわっている久遠と……その久遠の体を拘束している謎の仮面をつけた人が居て……。……俺は……そんな姿を見て、今から何をしようとしているのかを察知してしまう……。だが、そんなことを考えていても……。俺にはもうどうすることも出来ない。……久遠を助けようとして動いても、俺の力ではこの状況をどうすることも出来ずに終わってしまう……。そして……。俺はただ呆然とその場に立ち尽くしていることしか出来なくなってしまうのであった……。……そして俺は……そのまま、ただひたすら時間が過ぎるのを待つ事になってしまう。そして気がつけば日が落ちてしまい……。外では夜が始まろうとしていて……もう……どうしようもなかった……。俺は……レイナの家での出来事を思い出して絶望に打ちひしがれており……。何も考えることが出来なかった……。〜・ あれからどれだけ時間が経過しただろう。時間の感覚が全く分からないほど頭が真っ白になっていたが……それでも何とか正気を取り戻して辺りを確認するように目を配る。すると……。俺の横にいた久遠は姿を消しており……。教室の中には意識のある者はいなかった……。その様子を見届けると俺の視界に誰かが入ってきた……。その人は仮面をつけており、俺の事を見ながら……「さぁ……来いよ、……レイナ……。レイナの大事な真也くんを取り返しに行くんだろ?」と言った後、俺に向かって手を伸ばしてくる。……俺はその手を掴み、「待ってくれ!久遠は!?久遠のところに連れて行ってくれ!!俺があいつを助ける!!」と言うのだが……そいつは何も言わずに、俺の手を引く。


俺の願いは聞き届けられることは無く……。そいつに連れられて行く最中、教室の方を見ると……。久遠の体がふらつき始め……倒れ込む姿が見えたのだった……。そして俺は、教室から出て行く際に、最後に……俺に向かって「……真也さん。どうか……私を信じてください……。必ず……。レイナさんは……助け出します……。真也さんと再び会えると信じてます……。」と声がした……。


〜・ そして俺は仮面の男と久遠が消えた場所に向かって走っていたのだが……、そこで見たものは……信じたくない現実だった……。久遠は力なく壁に寄りかかりながら座っているが、……そこにはレイナと、美紀もいたのだ……。俺は久遠の安否をすぐに確認しなければいけないと思ったのだが……久遠の体には一切外傷がなく、呼吸は正常だったので、ひとまず安心する事ができた。俺は久遠の元に近寄ろうとした時にレイナに呼び止められ、その瞬間レイナは「お姉ちゃん!」と泣きながら抱きつく。俺はそんなレイナを見て心苦しくなるのだが、久遠の事が心配なのですぐに久遠の元へ向かう。


「おい!大丈夫か?……久遠!」と声をかけると久遠は顔を上げ、「お待ちしてました……。真也さん……。さぁ……行きましょうか。私達が向かうべきところに……。……さぁ、真也さんの大切な人を……。取り戻すのです……。さぁ……立ち上がって下さい。真也さん……。私もすぐ向かいますので……。私に全てを委ねて……任せて頂けませんか? 真也さんにしかできない仕事があるはずです……。さぁ……。真也さん、お願いします……。早くしないと、また間に合わなくなってしまいますよ……。」と言い、立ち上がらせようとしてくる。しかし、俺はまだ自分の状況を完全に把握できていない。だから「ちょっ、待って!久遠は一体何をするつもりなんだよ!俺は一体何が起こっているのかが理解できなくて!俺の大切なものが何なのかすらもよく分かってないし……。」と言いかけるが……。久遠が立ち上がりながら俺に言い放つ「真也さん……。私はあなたを愛しています。私に出来ることは全てやってきました。さぁ、もう時間がないんです……。急いで下さい。お願いします……。真也さんならきっとやれると思います……。私の愛しい人……。さぁ、行きましょう……。真也さん。」その一言で俺はハッとし……。俺は立ち上がったのだった。そして俺は久遠と一緒に走り始めるのだった。


〜・ それからしばらく走った後……俺たちの目の前に大きな門が現れる。「これは……?」俺が呟くと同時に、その巨大な門はゆっくりと開いていく。その門の先には……誰もいなかった……。だが俺は直感的にここに……何かあるのだと思い、門を抜けようとする……。その時、後ろから声がかかる「あ、ちょっと!あんた誰だよ?こんな所に急に現れてさぁ……。俺に黙って入らせる訳にはいかないんだが。」その言葉を聞いて振り返った俺だったが……そこには知らない男が1人だけいた。俺はこの場が何処か分からなかったが……、この男が俺を引き止めようとしている事だけは分かった。だから「あの!ここがどこなのかを教えて欲しいんだけど!」と聞くのだが、男は答えず……、俺の腕をつかんで無理やり進ませようとした時だ。俺はその男の手を無理やり離させ「い、いてっ……。何すんだよ!」と叫ぶが……男は構わず……今度は俺の腕を引っ張ろうとするが……。「あなた達!ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ!」と言い、男が俺を離すとそこに……女性が立っていた。「なんだよ……。俺に話しかけてきたのはこいつじゃないか!」と男は女性に怒るが……、女性は男を無視して、こちらに向かってきた。そして……。俺にだけ聞こえるような声で俺だけに聞こえるように「君、さっきも話したけど……ここは一般人が入ってくる場所じゃないよ。……君は今、どうやって入ったか分かるかな? まぁ……分かっていると思うけど……普通の手段じゃ入れないからね? だからここから先に行くにはそれなりの手続きをしてもらわないと困るんだよ。」と小声で話すと、「じゃあ、その人がその許可証を持ってれば入れてくれるのか?」と俺は尋ねると、彼女は首を振り……。「ううん、そう言うわけでもないの。その人はただの通行人だと思うから、いくら頼まれても無理なの。ごめんなさいね。それに……貴方にも色々と事情はあるでしょうからね。でも貴方にはその権利がなくても、この子なら入れるよ。さぁ、どうぞ。」と俺と男の手を離させて、男の頭を鷲掴みにし……そのままどこかへ連れていこうとする。


「は、放せー!!なんなんだよお前らは!! な、なんなんだこいつは!?……ッ。い、痛い……。頭が……割れそうだ……。助けてくれ……。頼む……なんでもするから……。」という悲鳴を上げる男に俺は「おい!大丈夫なのかよ!? てめぇ!!何する気なんだ!!」と言うと女が「あ、そうそう。忘れてた。この子の事についてだったよね。


実は彼は……とある研究所で働いていた科学者だったの。……それが……突然暴走してしまって、研究員を殺して脱走してきたみたいなの。だから今は記憶が無くなってしまっているらしいの。


だから彼の記憶を取り戻す手伝いをしてくれないかしら? 貴方が一緒にいると記憶が戻りやすくなるみたいだからさ。」


と、淡々と話した後に「……と言うことで、よろしくね?……貴方は今からこの人と……ここで働いてくれるのよね?」と言いながら、男の頭から手を話す。「そ、そうなのか……。え?俺が今からここで働くのか?……よくわからないまま働かされるなんて……」と言ってると「あら?貴方が嫌だって言っても強制的に連れて行くつもりだったのだけど……仕方ないわ。それじゃあさようr……。んぐ……。な、何を!?」と言った直後だった。俺が咄嵯に手を伸ばして女性の服の袖を掴む。「ま、待ってくれ!!……そんな簡単に人の命を奪って欲しくないんだ……。……俺は……。俺は……。俺が助けるって決めた!!……もう……誰かを失うのは……。俺のせいで人が傷つく姿を見たくないんだよ!!俺は誰かの命を奪うことはしたくないんだ!……そんな事をしてまで……俺は……あいつを取り戻したいとは思わない……。だから俺は、俺は行かない!!」と、俺は涙を流しながら必死に訴えかけ……俺は女性の顔を見ながら見つめ合う……。


〜・ 真也さんの覚悟は固いものだった……。だから私が何を言おうと、私の行動を止めることはできないだろう。それは分かってはいたのだが……やはり辛い……。「……そう。やっぱり……貴方達は似てる。2人とも同じ事をいうのね……。分かったよ。……私からは何もしない。……その人を返してもらうだけだよ。だから、その人も連れてきて。私は何も出来ないんだからさ……。……じゃあ、私は戻るよ。後は勝手に頑張ってくれたまえ……。」と言いながら女性は立ち去っていく……。真也さんはその姿を見てほっとしている。だが……私は違う。今の私には何もすることはできないのだ……。……そして……また私には何もできないことで苦しむ事になる。〜・ 私は立ち去っていく女の姿を見ながらも……。真也さんとこれからのことを相談しなければ……と思い、声をかけようとしたが……。真也さんはすぐに私に向かって「行くぞ!!俺達の大切なものを取り返しに!!」と言いながら、私の腕を引っ張って行く。私には……真也さんの言葉が聞こえているはずなのに……。体が動かず……声が出せなかった。そしてそのまま門を抜けて……見知らぬ建物に入って行く……。


〜・


「ちょ、待ってくれよ!!……な、何だよ……ここ……。本当にこんな所に入らなきゃいけないのかよ……?」男は怯えながら……女性に問いかけたのだが……彼女は答えることなく……。その不気味な屋敷へと入って行く……。


中に入ると薄暗く……壁にかけられた絵は……気味が悪い。私はこの空気に当てられながらも真也さんの方に視線を移すと……。真也さんは何やら……壁に飾られた何かのエンブレムのようなものを手に取って眺めていた……。すると……急に明かりが灯り始め……。辺りが明るくなった瞬間……。私は思わず真也さんの元に駆け寄っていた……。真也さんも私の行動に驚きつつも、「大丈夫か?」と心配してくれた。私は涙目になりつつ「真也さん……。よかったです……。真也さんが無事で……。」


「ありがとう。それより久遠こそ……大丈夫か?怪我は?」と真也さんは私の身体を心配してくれた。


私は首を振って、大丈夫であることを伝えると、真也さんは少し考え込んでいた。おそらく、どうやってこの施設から脱出するか考えているのだろう……。だが……恐らくだが脱出できる確率は低いだろう。この施設はどう見ても軍事用の施設のように思える。だとすればここの構造に詳しい者が居なければ容易に逃げ出す事はできないはずだ……。そして何より……。この人は一体誰なんだろうか……私達は……この施設のどこかにいるであろう人物を捜すことにしたが…… 一体誰がここに居るというのだろうか……。私は不安を覚えずにはいられなかった……。そして、私達はこの謎の人物が待っている部屋へたどり着く……。


〜・ 真紅郎に言われて気がついた事がある……。あの女の人とのやりとりの中で……。久遠が狙われる理由が分かるかもしれないって……。でも、今はまだその時じゃないと……俺は直感的に感じ取っていたが……とりあえず俺は久遠を守るように前に出つつ部屋の扉を開ける。するとそこには……。俺と同い年くらいの男とその隣に立つ綺麗な女性……。それと白衣を着た研究者のような男が3人ほど立っていた。


「ふっ……。ようやくお客人が来たようだな。初めまして。俺の名前は【神崎 竜】だ。君達をここまで案内したのは……。そうだな。久遠と話をしたかったからさ。そして、俺が久遠を狙っていた理由は……まぁ……君にはわかるだろ?……君は俺に似ている。まるで自分の意思を貫く為だけに生きて来た俺を見ているような感覚だ……。だからこそ……。俺はお前が欲しいと思った。だからお前は久遠と一緒に来い。……いいね?」と男……いや、兄貴が俺の前まで来て話しかけてくる。「ふざけんじゃねぇよ!お前みたいな自己中の奴なんかに……。てめぇ!俺がてめぇに負けるとでも言いたいのか!!……絶対に俺は諦めない!俺には俺を支えてくれる仲間がいるんだ!!俺はもう1人じゃない!!だから俺は……お前に屈する訳にはいかないんだ!」


俺の怒号に兄貴以外の人達は驚いた表情を見せるが……すぐに平静を取り戻す。すると女性と科学者達が「はぁ……。やっぱりダメだったのね……。貴方達も……その人の説得は難しいと思いますよ。この人の信念はとても固くて……。どんなに言葉を並べても曲げられないんですよ。」と女性と男性が溜息をつく……。


「……貴方達に聞いてもいいですか?どうして貴方達はこの人の勧誘を諦めてしまったんですか?確かにこの人の実力なら……。貴方達を軽くあしらえる事は分かっていましたよね?」俺はその疑問をぶつけてみると……。「えぇ。勿論ですとも。貴方なら私達程度では勝てませんからね。しかし……。」そう言った直後に女性の方を見ると「この子の強さが貴方達よりも強かっただけですよ? だから説得しても無駄だったわけですね。」と答えた……。


〜・ 真也さんの怒りに満ちた言葉が私を突き刺していく……。そう……真也さんと兄は似ていた。ただその怒り方が違っていただけで、真也さんの場合は……周りが見えなくなるほどの強い感情なのだ。それは真也さんにとっては……譲れないものなんだ……。そして私は……それを理解できていなかったのかも知れない。真也さんの言葉を聞いて私はそう思った。「そうか……じゃあ話は早いな。さっきから何を言っているのか全く分からないんだよね……。」と女性が言うと同時に……。私の意識は遠くなっていく……。〜・……目の前にいたはずの少女は倒れこみそうになるが、咄嵯に反応して、倒れる前になんとかキャッチすることができた。「はぁ……。やっぱりダメでしたね。……さすが私の娘と言うべきでしょうか……。やはり、貴方が彼女を連れてきた事は失敗だったのでしょうね。私はこの子の為に……。」そう呟くと男はその場から立ち去っていく……。「はっ……。なんだそりゃあ……。あんたらの目的は久遠だろうが……。……なんでこいつを連れて行かなかったんだよ!!」真也の怒号が響く。


だが……。男も女性の後ろ姿を睨みつけていたのだが…… やがて、真也の方を見て……「あははは……。そんなにこの子のことが大事かね?それならばこの子に聞き給えよ。私は知らないからね。」そう言うなり、男性は久遠を抱えたまま何処かへと歩いていく……。


「あーあ。また失敗したのかい?仕方がないね。まぁ……。君の頑張りが無駄になることを祈るばかりだよ。じゃあ……。後は任せたよ。」と言って女性と科学者たちも立ち去っていく。


俺はその場に立ち尽くしていたが……しばらくすると我を取り戻し、久遠を抱えて急いで屋敷を抜け出す……。「うぅ……。ごめんなさい。私のせいで真也さんまで巻き込まれてしまって……。」と謝ってくるが、俺も冷静になれていないせいで……上手く対応できない……。「いや、そんなこと気にしてる場合じゃないぞ!?それより……。今のうちに逃げるしか……。」「……いえ。逃げましょう……。今は、とにかく時間が必要なのです……。私がこの人の相手になります。その間に……お願いします……。私ではこの人に勝つことはできない……。この人と戦っていて思いました。この人は……私以上に、誰かを失う事を恐れています……。それに……。私が戦うのを止めようとしましたが……私にも、まだ分かりませんが、この人が私と同じだとしたら……私はその気持ちが分かるような気がするのです……。だから……私にはまだ……戦わせてください……。」と言って立ち上がる。「待ってくれよ!!じゃあ久遠だけじゃなく、久遠も居なくなったら……。また、1人ぼっちになっちゃうじゃないかよ!!それだけはダメだ!!」


「ふふふ……。相変わらず優しいですね、真也さんは……。……大丈夫ですよ。私は必ず、生きてまた真也さんの所に帰ってきます。……これは私の覚悟です。信じてくれとは言いませんが……それでも、真也さんには私の意思を伝えておくべきだと思いまして……。なのでどうか、お願い致します。……待っていてください。私の帰りを待っていて頂けませんか?」と俺に向かって頭を下げてきたのであった……。


〜・ 俺はこの国に来て、一番辛い思いをしているかもしれない……。だって……レイナが……あんな事を言われるなんて……。でも、ここで引き下がったらレイナの立場が危ういだろうな。だから俺はこの屋敷を出る事に決めたのだが……どう考えてもこの建物に出口は無いだろう……。


それにあの人が俺に敵意を向ける以上、俺もあの人に対する態度を改めなければならないだろう。……まず、ここから出る為には、この人が持っている鍵がどうしても必要になるはずだ。


俺もあの人の真似をして壁に掛けてあったエンブレムを手に取ってみる。エンブレムの裏側には文字が書いてあり……【No.424】と書かれていた。おそらくこれがこの部屋のパスワードなのかもしれないな……。そして俺は壁を調べ始めると……扉が開き、「あら?……もう起きてしまったんですか?」という声が聞こえると……俺は反射的に構えた。すると、白衣の男は俺に対してこう言ってきたのだ。「そんな怖い顔しないでよ。別に君と戦うつもりはないよ。……さぁ入ってくれたまえ。久遠のことはもう知っているからね。安心してくれ。そして、君は……僕の研究に興味を持ったんだろ?僕としては君には興味があるんだ。君は何か不思議な力を持っているみたいだしね。だから久遠の代わりに連れていこうと思っている。」と言って手招きしてきたので……。


とりあえず俺は、久遠をベッドに寝かせると……警戒しつつついて行くことにする。……部屋に入ると、俺と同い年くらいの男とその後ろに2人の女性がいた。


どうやらこの男の名前は神崎竜と言い……俺に話を持ちかけてきたが……断ったことで怒らせてしまったらしい……。そして俺と竜とのやり取りを女性と科学者たちが見守っていたらしく……女性からは俺が竜の兄に似ているから諦めてくれないんだろうと指摘されてしまうが……よく分からない……。


どうも竜という男も自分に似た存在が気になっているような発言をしていた事から……恐らく俺と竜は似ているのだろうと推測できる。ただその事実を認める訳にはいかないし、認めたところで俺には関係ないと切り捨てる。


だが俺はある意味間違っていたのかもしれない。俺は久遠を守りたいだけであって、自分の強さなどは二の次なのだ。だからこそ、久遠は守る対象であり、自分が久遠の代わりに犠牲になる事は本望である。


そして俺は久遠を助けにこの施設に来たため……久遠を置いて帰ることは出来ないと答える。しかし女性は「そうですか……。それは良かったです。これでようやく、久遠さんと会えなくなりますからね……。」と答えた瞬間、俺は怒りを覚えてしまい怒鳴ってしまった……。……レイナが連れ去られたという現実を受け止めることが出来ず……思わず叫んでしまったが……俺は冷静を取り戻すと……。この人達についていけば久遠に危害が及ばないと踏んだ。そしてレイナを助けるには、ここに来るしかなかったと伝える。


俺の言葉を聞いた後に科学者の女性と科学者の男性から説明を受けたが……俺はレイナを救うためにその計画に乗ることを決めた。その作戦に俺が役に立つとは思えないが、久遠が俺を誘ったということは、その計画の協力者として必要な人材ということなんだろう。ただ俺自身に戦闘力が皆無に近いことから、俺は竜と一緒にその作戦に参加することを承諾するのであった。


「それじゃあよろしく頼むよ?……そうだね、それじゃあまずはこの服を貸してあげるよ。これを着れば君の力を誤魔化すことができるだろうからね。それじゃあ着替えが終わったなら行こうか?」そう言って俺に何かを渡してくるので……それを着て外に出ることになった。


〜・ 俺は今……白い空間の中にいる……。


ここは一体どこなんだと周りを見渡すと……そこには黒い髪と瞳を持つ青年の姿があった。「やぁ……。久しぶりだね。」と青年が話しかけてきたので……俺は驚きつつも……挨拶を返すと……。その返事を聞いて嬉しかったのか……満面の笑みを浮かべている。……そして少しの間、話をすると……。今度は別の話題に移る……。


「君ってさ……結構面白い奴だよな……。まあ、いいか。それでなんだけど……君のこれからについて、話そうと思ってね……。君はまだ、その能力の扱い方が分からないんじゃないかい?だからそれをどうにかしないと、まともに動けないよ?」


俺は、確かに何も出来なかったのを思い出す……。あの時俺は無様だったと自分でも思っていた。あの時の自分には余裕が無く……周りが見えなくなっていたからだ……。ただそれでも……。今、この場においては、あの時に感じた恐怖が嘘のように消えていた……。それは何故か……。あの時は必死で考えていなかったけど……。今なら分かる気がする。……それは、俺が久遠を助けたかったからだ……。俺が守れなかった分も含めて……。「うん……。どうしたんだい?そんな真剣そうな顔をしてさ……。そんな顔は久遠に見せるもんじゃないぜ?あいつが惚れてる男がそんな顔をしちゃダメだと思うな。……あぁ……そっか……。分かった。久遠の事だろう。全く……。なんでそんなにお節介焼くんだよ……。まぁでも、お前みたいなのも嫌いじゃない。むしろ好きだぜ……。」…………好き。その言葉を聞いて……なんでこんな感情を抱いたかは俺にはわからないが……なぜか胸のあたりがきゅっとなったような気がするが……今はそれよりも聞きたかったことを聞きたかった。……俺はレイナを救うことが出来るんだろうか……。この青年の力を借りることが出来ればいいのだが……。……そんなことを考えていたら、突然視界が真っ暗になってしまった……。


「……おい。……おい!大丈夫か!?」……あれ、俺は何をやってたんだっけ……確か、俺は神崎と名乗る男に……研究棟とか言うところまで来ていたはずだ……。だが、俺が目を覚ますとそこは見慣れない景色が広がり始めていた。


そして目の前に白衣の女性が立っており、「おはようございます、シンヤさん……。あなたには本当に感謝してますわ……。私もあの子を失いたくなかったんですもの……。そして、私はあなたを利用しなければなりません。それがあなたの望む形かどうかは分かりませんけれどね……。」と言われてしまうが、俺は特に驚くことはなかった。レイナを連れて行かれたことは許せなかったし助けられるのならばそうしたいとは思ったが、俺はもうあの人の力には頼れない。それに俺の力がレイナのために使えなくてもレイナは俺を必要としてくれるはずなんだ。だからもう……俺は迷わない。「ありがとうございました。……そしてごめんなさい……。でも俺は、久遠を助けないといけないんです。だから行かせてもらいます。俺はレイナが好きだから。そして俺は強くなってもう一度ここに戻ってきます!」と白衣の女性に頭を下げると……「あら……。あらあら……ふふふ。あの子が夢中になるのもわかるかもしれませんね……。わかりました、行ってらっしゃいませ。私の大切な親友をどうか救ってあげてくださいね。そしてまた会いましょう。私の大切な『友達』さん……。」と優しく俺のことを抱きしめながら……頭を撫でてくれた。そして俺はその場から走り出し、部屋を出て行く。


〜・ 〜・ 私は……『久遠』。久遠=レイナ。


私の生まれた世界は地球という場所で……私達家族は普通の生活を送っていた……。そしてあの日がくるまでは……。あの日の事は絶対に忘れない……。


私が中学生になった頃に……お母さんは交通事故で亡くなってしまい……それからは、お父さんは毎日仕事で帰ってくる時間が遅かった。だけどその事で文句を言うつもりはなかった……。だって……私が中学に入った時からお父さんの仕事の量が増えたせいでもあるんだと思うから……。


でもその日から、お父さんの様子が変わっていった……。家に帰ってきてもずっと机に向かって仕事をしているし、ご飯もろくにとっていないようだった。心配になって「お父さん……大丈夫?」と聞くが……「……ああ。……ちょっと、疲れてるだけだから……。心配かけて悪かったな。」と言って、私の事をぎゅっとしてくれるが、明らかに無理しているのが分かっていた……。


そんな生活が何週間も続くと、ある日、学校から帰って来ていつも通りに玄関を開けると、見知らぬ靴が脱いであった。……どうしよう……。泥棒……?そんな不安を覚えながらもリビングに入ると、そこにいた人を見て、私は驚いた。なぜなら、そこにいたのは……昔よく遊んでくれた……『お兄ちゃん』がいたのだから……。どうしてここにいるの……?という疑問が浮かんだが、とりあえず私は「お久しぶりです。えっと……お元気でしたか?というより……どうなされたのですか……その格好……」と言うと、彼はいきなり私を抱きしめてきた……。「良かった……。やっと見つけた。久遠……。俺は、あの事故の時、意識を失ってて……久遠がどんな思いをしていたのか分からなかったんだ……。すまない……。」とお兄ちゃんに言われて……私は嬉しくて涙が出そうになるが……ここで泣くわけにはいかないと思いぐっと我慢すると、「そうだったんだ……。ごめんね……。迷惑をかけてしまって……。」と伝えると、お兄ちゃんは首を横に振り「久遠は謝らなくていいよ。久遠は何も悪くないし、それに、これからは俺達が守ってあげるからさ。だから一緒に暮らそう?父さんのことは安心してくれていいからさ。母さんには俺からも連絡入れておくからさ。」と微笑みかけられたが、まだ会ったこともない人なのですぐに返事をすることができなかった。すると突然ドアが開かれて「竜?誰その子?ってまさか……。その子なの?あんたが言ってた妹っていうのは?!ちょっ、離しなさいよ!!」と言い出した。この人が……お母さんなのかな……?という疑問を抱きながら「あ、えと……はじめまして……。久遠です……。よろしくお願いします……。」と挨拶をするが、お母さんらしき人は「へぇ……。なかなかかわいいじゃん。……気に入ったわ。この子はあたしの娘にしたいくらいだよ……。まあとりあえず座らせなよ?あんた。お茶いれてくるからさ。」と言って台所の方へと歩いて行った……。


その後ろ姿を見ていると……「あの人は俺の母さんだ。一応、今は俺の彼女……みたいなもんかな?あははははは。久遠のお母さんとも仲が良いんだよ。それでさっきの話の続きだ。久遠がこの家に来れば俺も楽ができる。……どうだい?悪い話じゃないだろう?」と言われる。正直に言えばとても嬉しい。……だけど、こんな形で決めてしまってはいけない気がしたから「私は、この家で暮らしたいけど……。お父さんはなんて言うだろう?お父さんも寂しい思いしてたみたいだし、私はやっぱりお父さんと暮らしてあげたいな……。」と告げるが、彼は笑い出すと「なんだ、そんな事かい?それなら俺に任せてくれよ。きっとなんとかなるさ。それよりさ……。さっさと帰ろうか?……今日から久遠は俺たちの家族になるんだからね……。あ、もちろん久遠の父さんは賛成してくれるよ?だって久遠のこと大好きなんだからね。」と言われてしまい、さらに顔が赤くなってしまうが……。


その後は私を家に連れて行き、私はそこで生活をしていくことになったのである。……そして翌日になり、お昼頃になると、インターホンが鳴ったので出てみる。するとそこにはお兄ちゃんと知らない女性がおり、女性は私を見ると、いきなり抱きついて「久遠ちゃーん!!会いたかった〜!!!私ね!あなたに会うために生まれてきたのかもしれないよ!いや!絶対そうよ!だから……結婚しましょう?」と言われてしまう。


突然の事過ぎて何も反応ができないが、それでもなんとか言葉を返そうとすると……


「おい。俺の妻に勝手に手を出してもらっても困るんだが……それにお前とは付き合う気も無い。」


と、言いながら男性が入ってくる。そして私は、この人のことを見たことがあると思ったが、どこで見たか思い出せない。そして、私は2人に連れられ、お父さんの部屋へと向かうことになる。そしてお父さんの前に立ち、私は頭を下げ、こう伝えた。「久遠です。久遠=レイナです。今までお世話になりました……。本当にありがとうございました。そして、こんな形になってしまい申し訳ありません……。ですが、お父さんと一緒に過ごした時間は、とても幸せでした。私を産んでくれてありがとうございました。そして……。」とそこまで言うと、お父さんは「……久遠か……。大きくなったな……。お前には本当にすまないことをしてしまったと思っている。そして、久遠……。ありがとう……。こんな俺についてきてくれてありがとう。久遠には、もっと良い人生を歩ませるはずだったが……それも叶わなかった……。でもせめて……幸せになれ……!」と言ってくれた。私も泣きそうになるが……堪えると「……うん!分かった!幸せになるから!……そして……お父さん、お母さん……また会えるよね……?」


その問いかけには誰も答えることができなかった。だが、3人でまたいつかどこかで会いたいと願いながら別れを告げた後、私たちはそれぞれの家に帰ったのであった。


〜・ 〜・ 俺があの時出会った『レイナ』さんは、間違いなくレイナであり……久遠だった……。


久遠に記憶があるかどうかはわからないが、久遠はレイナであることには変わりはない。


そして、あの後……あの人は、久遠との生活はうまくいくと俺が思っていることを伝えたら……俺のことを褒めてくれた……。そして……「久遠のお父さんも……久遠がレイナであることを喜んでいますわ……。でも……あの子の記憶に何があったのかしら……。もしかしたらあの子の体に宿っている魂に問題があるのかも……。……いえ、そんなことを考えるのは止めにしましょう……。まずは……あの子達を助けないとね……。」と言っていたが……俺も何か力になりたいと思う……。


俺は神崎さんに連れられて研究棟という場所に来ていて、そこではたくさんの研究者達が働いており……様々な機械が置かれており……部屋は薄暗く、窓が無いのに不思議と明るかったりしている……。俺はそんな中、白衣を着た男と神崎さんに案内されるまま歩いているのだが……「ここが君をテストするための部屋になる。ここで、あの子がどうやって生まれたのか。なぜあの子があの能力を持っているのかなどを実験で確認することになると思うから。」と、神崎さんが説明をしてくれるが、あまり理解はできないのでとりあえず俺は、「わかりました……。」とだけ答えた……。すると、男はこちらを見て「はぁ……。あなたは何なんですか?この研究所のことを全くと言っていいほど知りませんが……。一体どこから現れたんです?この世界ではあり得ない髪の色に目つき……それにその体の大きさ……。」と聞かれたから、俺は「あ、はい……。俺がどこから来たのかは言えないのですが……その……久遠と同じ存在です……。俺はレイナ……久遠の彼氏で……。その……。久遠を救うために……ここに……。その……。久遠は……。」と必死に久遠の現状を説明しようとすると……「あぁ、そういえば自己紹介がまだだったな。私の名前は……そうだな……。この研究所の最高責任者だ。一応名前も教えておくよ。『クロエ』というんだ。よろしく頼むよ。……ところで……。君のことはなんて呼べばいいんだい?レイナとかじゃ呼びにくいだろ?……まあいいか……。君はレイジと呼ぶことにしよう。私のことは気軽に博士と呼んでくれたらいい。」と言われてしまったのであった。……とりあえず……久遠を救う方法を聞く為に、俺の知っていることを話そうとは思うが……この人は信じてくれるだろうか……。


その事を考えながらも、俺は話を続ける。


「俺が……レイジでお願いします……。それで……ですね……。その……。実は久遠を……。助けて欲しいと思っていて……。どうしたらいいですか?」と、正直に話を始めると……クロエ博士という人は「ほう……。やはり君は久遠が何者かを知っているようだね。それに……私の考えていることもお見通しのようだ。まあ……私の考えが正しいかどうかを確認するために、いくつか質問させてもらってもいいかな? あ、もちろん協力してくれなくても構わない。だが……久遠の運命を変える為には必要だと私は思っていてね……。」と真剣な表情をしていた。……俺はそんな様子のこの人を見て少し怖くなると同時に……。この人を信じたい気持ちにもなった。だから「分かりました……。」と答えることにしたのである。


「よし、ありがとう。早速だが……。質問をするよ。久遠はどんな姿で生まれた? それと、どうして久遠に『天音(アマネ)』なんて名前がつけられた? 」と、俺に質問を投げかけてくる。俺は「は、はい……。俺達は双子で生まれるはずではなかったみたいです……。」と、伝えてから俺とレイナは久遠がレイナとして生まれる前に死んでしまい、『転生者(てんせいしゃ)』と呼ばれる人になることによって生まれ変わったということを説明した。


そして久遠がレイナとして生を受け、その時に前世の記憶を思い出し、そして久遠という名前になった事を伝えると……


「……なるほど。確かにそれは間違いないのだろう。だが久遠は『天音レイナ』という少女ではない。この世界で生きていた人物の生まれ変わりである事は事実なのだな?それならなぜ……。いや、今は考えるのはやめよう……。それにしても……なるほど……。そうか……。それで、久遠が天性の能力を持っている理由は……おそらくだが生まれた時の状態だと思われる。


そして久遠という名前は、おそらく天音レイナと天宮光聖の名を合わせたものだと思う。だから君もその名前を名乗っているんだよな? それなら納得がいく。」


と言われてしまい……。俺も驚いていた。まさかそこまで分かってしまうとは思っていなかったからだ……。俺が唖然としていると……


「驚くことはないよ。私はこの世界の全ての情報をデータとして記録し、保管してる。……それが、私の力なんだ……。それ故に……。久遠が生まれてきたときから久遠のことを見ていたよ……。」と俺に言ってきたのだ。


俺が何も返せないでいると……「そして久遠がどうして能力を持ったまま産まれたのか。その理由は……。久遠は『異世界からの転生者であるレイナと、そのレイナをこの世界に連れてきた光の聖女である久遠の遺伝子を持つ存在』なんじゃないかと考えている。これは仮説に過ぎないから間違っている可能性もある。……ただ……。この世界に転生できる者は一人までだと言われている……。


だから……。君たちは……。特別な存在である可能性が高く、さらに……。私の研究していた……ある理論とも一致している。その理論というのが……。君たちもわかっているはずだ……。


君たちが久遠と融合したときに……その力が覚醒した……。そう、あの力のことだ。」


そう言われてしまうと……もう俺は言葉を発することが出来なくなってしまった。すると、「あ、ごめんごめん。別に君を責めているわけじゃないんだ。


私が君たちに謝りたかったこと……そして感謝したいことがあったのは覚えているか? 」と、俺の目を見ながら話しかけてきたので……「あ……。そう言えば言っていましたね……。すみません……。思い出しました……。俺と……レイナが……合体技をやったときのことですか? あのときは……ありがとうございました……。そのおかげで……俺は生きています……。あの……そのあとレイナを治すこともできないって言ってたような気がしたんですけど……。」と聞き返した。俺が言うとクロエ博士は少し悲しげな顔をしながらこう言った。


「……うん。あれが私の最後の希望だった。久遠の身体を治療できれば久遠の病気を治すことができたのだが……残念ながら久遠の体に寄生している悪魔を倒すことができないのならば、あの子は確実に死ぬ……。あの子を救う手立てが……私には思いつかなかった。」


その言葉をきいた瞬間……俺は怒りを感じた。俺はその感情を抑えることができず、クロエさんに対して怒鳴ってしまった。


「なんでだよ!あの子はまだ生きてるんだろ!なのに……救えないなんて!あの子を! 死なすなんて! 俺はそんなの間違っといると思います!あの子を助けたくてここまで来たんだ!あんたに頼らなくたってなんとかするよ!……レイナが今どこでどうなってんのか知らねえけど……。きっと生きていると思うから……。レイナを助けるまでは……。諦めないから!俺にだって何かできることはあると思うんだ……。レイナを救えたらまたここに戻ってきます……。レイナを助けてからも……。必ずここに戻って来ますから!」と言ってしまった……。そして俺は言いたいことをすべて言ったので冷静になって……


「……なんかすいませんでした……。失礼な言い方をしちゃったかもしれないですね……。レイナを……久遠を救うために……俺は頑張りたいと思っているだけで……。でも、レイナを救い出してからでもここに戻るつもりはありますから。レイナはどこに行けば見つけることができるのか教えてくれませんかね……。お願いします……。俺の命に代えてもこの願いをかなえて欲しいです。お願いします……。」と必死に伝えようとする。すると、「うーん……。まあレイナを君に預けても大丈夫そうだな……。分かった……。では……約束しよう。久遠は私と、君の大事な女性(ひと)に任せなさい。久遠は私と光の女神の魂で生み出した子だから……私の血と女神の血を継ぐ存在。私の最高傑作。久遠はレイナを宿すために生まれた。久遠が君の大事な女性と融合することによりレイナが蘇ることになっているから、君達の愛の力で彼女を目覚めさせてあげるんだ。その方が彼女の力になるからね。……レイナが見つかる場所はね……この世界のどこにあるかも分からないんだ。」


俺はその言葉を聞いて絶句してしまった。なぜなら、レイナは死んだのにレイナがいる場所を探す必要があるからだ。レイナが死んだことは知っていたから覚悟していたが、いざレイナを見つける方法があると言われて俺は戸惑っていた。


「あぁ……レイナちゃんがどうなったのかは分かっている……。久遠は私の子供のようなもの。……だからこそ私は……。レイナがどうなろうとも……。私は……。」


その声を聞いた俺は、俺はその先を言うことができなかった。レイナのことを心配していない親はいないのだから。……そう思ったからだ。だから俺は「その……。クロエ博士の気持ちも分かります……。」とだけ答えた。クロエ博士は少し悲しそうな顔をした後で「そう言ってもらえるとありがたいよ……。それで……だ。君はこれからこの世界とは違う世界に行ってもらうことになるんだ。


君と融合したことで久遠に何が起きているかを探りにいってもらわないといけない……。もちろん、久遠がどうなろうが……。久遠と一体化しているのがレイナちゃんである以上……。久遠の意識は消え去る。それでも久遠の中にいるレイナの魂が消滅するわけではないから、私はこの研究を完成させるために彼女を見守る必要がある……。だが……。今はレイナが見つからない状況。それ故……。この世界でできる最善の方法を取らせてもらったということだ……。久遠のことは、私がどうにかする……。安心して欲しい……。だがレイナの行方も気になるところだな……。久遠が君たちと融合したのも……久遠の中にあった『天聖の力』がレイナに反応して融合した可能性がある。だが……なぜ天音のレイナではなく久遠が選ばれたのだろうか……。そのことも調べなければならないな……。」と言ったのだ。俺はそれを聞き、「わかりました……。」と答えると……。俺は光に包まれてどこかに連れていかれるのだった。


そして光の中で俺は考えていた……。


俺は光と共に転移していた。すると、俺はいつの間にか真っ白な空間に立っており……周りを見ると、目の前に小さな女の子が立っていることに俺は気づく。その子は俺が見下ろす形で見るほど小さくて、髪の色は銀色をしていた。


「初めまして。私は久遠の中にある『天聖』の意思よ。私はあなたと話がしたかったの。よろしくね。……早速だけど、どうしてあなたはこの世界に来ることができたのか分かる?」と言われたので俺は答える。


「久遠は、お前が生み出し俺達が融合した存在。だから俺が久遠と分離すればここに来ることもできるんじゃないのか?久遠から分離できるなんて考えていなかったけど……。そういうものじゃないのかな?それに……ここはどういう所なんだ?俺達はさっきまで研究所みたいなところで話をしていたと思ったんだけど……。今は全然違う場所に飛ばされたようだからな……。……一体何がどうなっているんだ?それに、なぜお前がここに居るんだ?……どうして久遠じゃなくて、俺と話しがしたいっていうんだよ?俺はこの世界に来られた理由を知りたいよ……。久遠は俺と融合したことで……。何か変わったみたいだし……。そもそも……どうして俺がこっちに来たかが分からないよ……。……本当に……わけがわかんねえな……。」と言うと……久遠が少し驚いた表情でこう言ってきた。


「久遠の中の私とあなたが完全に分離できたから、私と話すことができる。だから久遠から分離してきてるってことはわかってるよね?……久遠の中から分離して、こちらに来ているということは……。つまり、この世界を行き来できるようになったということだよ。私と融合して久遠がどんな存在になったのかという質問に私は「私の娘」と伝えたと思うけど……。それはあくまで、レイナちゃんとの繋がりを考えてそう伝えていたの。そして……その通り。久遠は私の血を受け継ぐ者よ。そのせいで……久遠は特殊な能力を持って産まれてきてしまった……。久遠は私の『スキル創造』を持っている……。これはね……。レイナちゃんの能力でもあるの……。『真也と融合することによって』……ね。レイナちゃんと久遠はお互いの存在を認知してなかったはずなんだけど……。どうしてこんな事が起きたのだろうかと……。それは……私にも分からないの。それに……。レイナちゃんと完全に同化できているなら……なぜレイナの気配が感じ取れないの?それは……。レイナが死んでしまっているからなの……。」


久遠が言った事に俺はとても驚くことになる……。俺はすぐに聞き返すが……。「えっ……ちょっと待ってくれ……。久遠と融合したレイナって……レイナの事なのか!?︎それに……死んだだと……?まさか……俺のせいで……。俺がもっと早く助け出してやれていれば……。」俺の言葉を聞いた少女は……「いい加減にして!」と言いながら怒鳴ってくる。俺がその言葉を聞いて呆然としながら見ていると、「あのねぇ……。あなたが責任を感じる必要はないって言ってるでしょ?レイナと一体化したことによりレイナの意識とあなたの記憶と力が融合した。それが久遠。レイナはあなたを助けるために……自らを犠牲にした。でも……レイナちゃんが死ぬことはなかった。なぜならあの子は、レイナちゃん自身が選んだから……。自分の命を懸けるだけの力が欲しいって願ったの……。でも、そんな願いは久遠として具現化したから叶ったの。レイナが望んでいなかったとしてもね……。久遠はレイナを死なせること無く生きられる体となった。でも……レイナちゃんは死んじゃったの……。もう生き返らないの……。久遠はあの子の分まで……頑張らないといけないんだから……。いつまでも落ち込んでたら駄目でしょ?レイナちゃんはあの時……自分で決断したの。その結果……レイナの死と引き換えにあなたを助けることができているのよ。だからあなたが気に病むことは……無いの……。」と言ったので俺は……「……俺を救おうと……してくれてたんだな……。レイナってば……いつも無理しすぎだよ……。ごめんな……。俺なんかのために……。レイナの犠牲で救われたからって……俺は幸せにはなれねえな……。レイナがいないなら……。俺に生きている意味は無いよ……。でも……レイナが生きていることを……教えてくれてありがとな……。でも……。レイナは生きているのか?」


俺は涙ぐみながら、俺に教えてくれた子に聞いた。その答えを聞くと俺は少しほっとする。だがその答えは「ううん。レイナちゃんは久遠の中に存在するの。でもね……。今は……眠っている状態よ。レイナちゃんは……まだ完全に目覚めていないの。レイナちゃんは、自分が何者なのか思い出そうとしている最中だからね……。レイナちゃんが目を覚ますまでに……私が色々と手を打つ必要があるから……。あなたに協力して貰わないといけないの……。久遠とレイナちゃんが融合してから……久遠の中にあった天聖の力とあなたの魂は、融合したことにより融合され……久遠の中に天聖が取り込まれて消えていった……。それであなたと融合したことによって久遠に『真也の天聖の力の残滓(ざんし)』、『レイナの魔力』、久遠自身の『天聖の力とレイナの魔力』が加わったから、私の『固有スキル』が使えたの。……そして……久遠も固有スキルを持っていた。それは……『未来予測』『スキル付与』。そしてもう一つが……。『スキル複製』なの。だから私は久遠の体を媒体にしなくても、固有能力が使えるし……。他人のスキルを手に入れることも可能になったの。それで、久遠の体に私が宿っていたことで久遠も『真耶のスキルを使用できるようになっていて、さらに……。『スキル複製』を使って『真央と融合』すれば……。真央のスキルを使うことだって可能なの。久遠はね……。レイナちゃんのおかげで色々なことができるようになったの。だから私はレイナちゃんを起こさないように、レイナちゃんから分離した後……あなたの所に行こうとしていたんだけどね……。私が分離できる時間が短くて、分離できなかったの。久遠と私が融合するには……レイナちゃんが眠る前に久遠の中に入った時に、私がレイナちゃんと久遠に力を与えないといけなくて……。久遠の中に入ってからレイナちゃんが寝ちゃったら分離できなくなって久遠と離れられなくなるから、なかなか分離できないでいたの。……それでもあなたは来ることができたんだから、レイナちゃんはすごいよ。本当に……私じゃレイナちゃんのように強くなれない……。あなた達二人を見ていて思ったよ……。やっぱり……。レイナちゃんがいなくなったのは辛いけど……でも私は久遠のことを応援してあげるよ。久遠なら……大丈夫だと思うから……。私は……いつでも久遠の側にいるから。久遠のことを信じてるよ……。頑張って欲しいな。」と、少女は言った。そして俺は「久遠は……俺が助けてやりたい。……だが……今すぐどうしたら良いのか分からないよ……。俺の力は借りなくていい……。お前の力でなんとかできるのか?」と言うと……「あなたの力が必要ないわけないでしょ……。だからこうしてあなたに会いに来たんだよ?あなたに……やってもらいたいことがあるの……。あなたにしかできないことだからね。だから……協力して欲しいな……。


そして……私にもできることがあれば何でもやるから……。私達は友達でしょ?助け合うのは当たり前じゃない。」


俺の言葉を聞いた女の子は……真剣な表情をしながら、俺の顔をジッと見つめてくる……。その瞳はとても綺麗な紫色をしていて吸い込まれてしまいそうなくらい輝いているように見える。その目を見ると……。俺は何も言うことができずにいた……。


俺はレイナが生きていて……俺がここにいるから、俺に協力してくれるらしい。俺とこの子、レイナの意思である久遠との対話が終わり、レイナが無事であることと久遠がどうなっているのかを確認すると……。俺は久遠との話を終わらせるために声をかける。


「そろそろいいか?俺達はお前達に話があってここに来たんだよ。まずは俺が聞きたいんだが……どうして久遠の中から俺がこの世界に来たのか、俺の体は元に戻っているのか、この世界の人達はどうして俺の姿を見て驚かないのか教えてくれないか?」


俺はそう言った後しばらく待ったが……。久遠は何の返事もしないので久遠の顔を見てみると……何やら驚いて固まっているようで何も喋らず俺達の会話を聞いていなかったような感じだ。


俺はそんな様子になっている久遠に話しかける。


「おい久遠!聞いているのか!?︎」


すると我に帰ったかのように久遠が「は、はい!?︎ごめんなさい……。少しボーっとしていました……。何の話でしたっけ?何かお話しをされているとは思うのですが……。聞こえていなかったみたいです……。申し訳ありません……。ええっとですね……。まずは私が何故あなたがこちらの世界に呼ばれたのかについては私にも分かりません……。おそらくは私の中にある天界の力によってこの世界に連れてこられたのでしょう。この世界に天界人の魂を呼び寄せるなんて……普通では有り得ない事なのですが……。しかしあなたには『真耶とレイナの力』と、あなた自身が持っている『スキル』がある……。それに……。あなた自身もレイナと融合することによって『レイナの真意の器』を持っている。それによってあなたの存在がこの世界に受け入れられたんだと思います……。そして……あなたの体が元通りになった理由は、おそらくは私と同じでレイナちゃんの体にある『天聖の力』の影響かと……。それに……私の中に残っていた『アルデバラン』の生き残りメンバーの力が……レイナちゃんと融合したことにより久遠として形を成したときに一緒に消滅したのかもしれません……。そして……今のあなたには……元の世界でも『アルデバランの魔王』として、そして……あなたと融合したことで『勇者の天聖の加護』が加わっているからこそ……。あなたの存在が認められたのではないでしょうか……。レイナちゃんは死んでしまったけれど……。でもレイナちゃんのおかげであなたの力はより高まっているはず……。それ故にレイナちゃんの力の一部があなたの中に残っているのだと思われます。ただ……。あなたの存在は……。元々、異質なものだったのかもしれない……。あなたという存在は……もともと『異世界人』であった可能性があります……。あなたにレイナちゃんと融合していた時の記憶が無いのであれば尚更……。あなたは、元々……違う場所に住んでいたのだと私は推測しています……。だからあなたは……この世界に召喚されて……。すぐに死んだ……。そんなところですかね……。それと……この国の王族についてなのですが……。私はこの国で生まれて、生まれた頃から王族に忠誠を誓って生きてきました。だからこそ知っている情報しか話すことができませんが……。あなたの体の中にレイナちゃんがいたことにより、この国の王族は皆レイナちゃんと融合したあなたの味方になってくれています。そして、王族だけではなく……。この国の国民全員があなたの味方になり、力を貸してくれているようです……。『レイナの民』としてね……。」と、久遠が答えたので俺は、気になったことを聞くことにする。


「レイナと融合したからってなんで俺をこの国のみんなが味方をしてくれているんだ?俺がこの世界に来てからレイナを殺したのに……。この国はなぜ……俺を憎まなかったんだ?」と俺は聞いた。


すると久遠が、「おそらくは……レイナさんを蘇らせるためにレイナさんのスキルを使用しようとしていることに、この世界の人達はレイナさんの意思を感じ取り……レイナさんの魂の転生者である真也君を助けようとしてくれたんだと思う……。だから……きっと……。」


久遠の話を聞いた俺は「なるほど……。そういうことなのか。じゃあ……。俺は……やっぱり死んでいるのか?」と、聞くと久遠は黙って俺を見つめた後にこう答えた。


「えぇ……。その可能性はあると思います……。私の中のレイナちゃんが……。そう教えてくれたから……。真也さんは、本当は生きているけど……私のせいで死んでしまって……そのせいでレイナちゃんも……」と、泣き出してしまったので……


「泣くなよ……。大丈夫だから……。もう気にしてないから……。俺だってレイナを一人で逝かせてしまったから……。俺も同じだ……。お前だけが悪かったわけじゃない……。お前だけが悪いわけではないよ……。俺も、お前を一人ぼっちにして置いて行ってしまったから……。お前と一緒だよ……。お互い様さ……。レイナが死んだのは……俺の弱さが招いたことだ……。だから俺達は……同じだ……。」


と……俺は泣いている久遠の背中を撫でながら言った。その言葉を聞き……久遠が「うん……。ありがとう……。真也君……。」と言った後、涙を手で拭った。久遠が落ち着いたので、久遠に聞きたかった事を色々と聞いてみることにした。


まず……俺達がレイナの体を生き返らすためには、どうしたらいいのか?と、俺は質問をした。久遠は少し考えた後に、俺が生き返る時に使ったスキルを使う必要があると教えてくれたので、俺は久遠の体に触れて「レイナ……レイナ……レイナ……。聞こえるか?お前の声が聞こえたら……。返事をしてくれ。」


すると、レイナが目を覚まして起き上がったのだった。そして……レイナと久遠はしばらく見つめあった後に抱き合って喜び合ったのだった。その様子を見ていた俺に、久遠が「……あなたのおかげで……。私はまた……レイナちゃんと会えたよ……。あなたの力になれて良かった。レイナちゃんの意識はまだあるけど……。体は……あなたが作った『レイナの死体の人形』で……。レイナちゃんはあなたと一緒にいた頃の私の姿をしているから、まだ慣れてなくてね……。もう少し……時間がかかりそうだから、その間はこの姿のままでもいいかな?この姿をずっと続けていくと……。私の中で眠っているレイナちゃんが寂しいと思ってしまうから……。私はレイナちゃんとの約束を守っているから……。大丈夫よ……。私はこれからはレイナちゃんのために……生きていくわ。」と久遠から言われたので……


「……ああ……。レイナが安心できるならそれで構わない。俺が生きている間ならいつでもこの体にいつでも戻って来れるから、好きなときに戻って来てくれよ。でも……。レイナと俺がいない間に、勝手に俺の体を乗っ取るようなことはするなよ。……久遠と俺は……『運命共同体』なんだから……。もし……レイナが寂しかったら俺の方に来ることも許可してやるから……。俺の体の時以外は、この姿でいなくてもいいんじゃないか?お前達二人は……。俺の大切な仲間なんだ……。二人とも……絶対に離れないようにしろよ。俺達は『三人』で一つの『チーム』だろ?俺達は……三人揃うまでは、何度死にかけたって諦めないから……。」


久遠に俺はそう言うと久遠は微笑んでくれたのだった。久遠の返事を聞き……俺はレイナとの『約束』を果たしたと心の底から思うことができたのであった。それからしばらく経った後に……


「あのね……。私も久遠と同じように……真也の事が好きだから……久遠と同じ立場だけど……。それでも良ければ私と結婚してください!」と、俺に告白してきたので俺は嬉しくなったが……少し疑問に思ったことがあった。


「久遠とレイナは同一人物なのに……何が違うんだろう?まぁいっか……。久遠が俺のことをどう思っているのか知らないが……『久遠と俺』の問題だからな……。久遠……どうした?俺のことを見て……。何かおかしな事でもあるのか?久遠に聞きたいことがあるから答えてくれるか?……お前は……。今、『幸せか?』って……聞けば分かるな。答えを聞かせて欲しい……。答え次第で……。お前とは付き合えない……。……お前の気持ちには答えられないんだ……。」と言うと、久遠が目に涙を浮かべた後に、「そうよね……。真也は優しい人だから……。私はあなたの優しさを利用した最低な人間なのかもしれない……。だからあなたに好かれる資格はないのかもしれない……。でも、真也の側に居続ける為に……。あなたの隣に立つためならば私は……。どんな汚いことでも平気で行うし……あなたのことを騙すような嘘をつくだろうと思う……。こんなに卑怯で……ずるくて……自分勝手な女なんて……。真也は私を許せないと思うけれど……私はあなたが好き。私はあなたを愛さずにはいられなかったの……。」と言い出した。そして……涙を流した久遠は、「私は……。あなたを愛しています。どうか……お願いします……。」


俺と目が合った後に、久遠が泣きそうな顔でこちらを見てきたので、俺は「はぁ……。……そんなに辛そうな顔をしてこっちを見ないでくれ……。そんな目で見られたら……。俺は断れないだろ……。」


久遠があまりにも泣き出しそうで辛そうな顔だったので、俺は困り果てていた。すると……俺と目が合ったレイナが久遠に向かって……「ねぇ久遠ちゃん。私のことは……気にしないでいいから……。あなたは真也君のことが大好きなんでしょう?あなたの恋は実らないけれど……。私はあなたの事が好きで親友だから、私が代わりにこの人の側にいるわ。あなたが……真也を好きになってよかったと思えるように精一杯この人に尽くすわ。あなたが幸せに生きられるように私は真也を支えていくから……、だから……あなたの分もこの人を愛して欲しい。私はあなたの事を応援しています……。だから、もう泣かないで……。真也に迷惑をかける前に泣き止むのよ。私だって……久遠ちゃんの味方だからね……。あなたは私にとって大切な親友で家族のような存在だから……私はこの人と……真也を支えるわ。久遠ちゃん。私はこの人が大切だから。あなたを不幸にするような選択はしたくない。だから……この話はなかったことにしましょう。ごめんなさい……。久遠ちゃんがそこまでこの人のことを想っていたことに気がつけなかった私が悪いから……。」


レイナの言葉を聞いた久遠が「違うの!レイナちゃん!!私が悪いの……。レイナちゃんは何も悪くない……。全部私が悪いのよ……。私さえ……。こんな感情を持っていなかったら……あなたを悲しませずに済んだんだから……。私のこの想いを……捨てるから……。お願いだから……私を許して……。私なんか……死んだ方がマシだから……。あなたに……申し訳なさすぎるから……。」と再び泣いてしまったので…… 俺はレイナの目線を確認してから「久遠。レイナが言っているのに俺達が何も話さないのはおかしいから、俺は口を挟むぞ。……俺はレイナを選んだが、俺をレイナが選んでくれた理由はお前の知っているとおりだよ。レイナの事は俺の大事な仲間だと思っているから……。だからさっき言った言葉の意味を理解してくれよ……。久遠。お前は勘違いをしている。俺がレイナを選んだ理由は……お前のこともレイナと同じくらいに大切だからだぞ……。レイナを選ぶ時に悩んだが……俺はお前とレイナの両方を選びたかった。それが出来ないなら俺はどちらも選ばないって決めていたから……だから……俺がお前のことを嫌いになることなど有り得ないから……。それに……。俺はお前にも幸せになる権利はあると思っている……。」と……俺は言ったのだが……。


「ふーん。そっか……。やっぱりね……。私はわかってたけど……。久遠ちゃんも大変ね……。久遠ちゃん。気にすることないからね。久遠ちゃんはこれから私の体の中で生きて、私とレイナちゃんと一緒に暮らしていけばいいわよ。……久遠ちゃんとならきっと上手くやれるから、私と仲良くしてね……。」とレイナは笑った後に、そう言うと、久遠が急に苦しみ始めたのだった。そして……しばらくして収まったのか久遠が落ち着いてから、俺はレイナ達に俺の体が死んでしまった理由を聞くと、久遠が自分のせいだと……言い出して俺に説明し始めた。そして……俺は久遠に自分の体の蘇生方法を教えたので……俺はすぐに真也達の所に戻り……俺が持っているアイテムの中から『死者の魂の書』という本を出した後に、久遠の肉体を作るために使った。俺は『俺の死体』を使って『死体操作』を発動したのだった。そして……


「これで終わりだな……。……久遠、後はレイナと相談して決めてくれ。」


久遠にそう告げた後で、俺は久遠の方に振り向いた。


すると久遠が「えっ?どういうことなの?」と不思議そうにしているので俺は


「俺が死んだ後の話をしたよな?俺の体の中には久遠の死体があったはずだ。その体を俺の死体が復活させるときに、俺の遺体が俺の体に戻るわけがないから俺の体に『久遠の死体』が入ることになる。つまり、久遠と俺は一つになったってことだな。まあ、簡単に言うと……この体は元々久遠のものだったから、俺は自由に扱えるようになったってところかな?レイナ、お前の体は久遠に渡したんだ。それで……久遠が生き返ることができるなら俺は文句は言わない。だが、俺はもうレイナのいない世界では生きることはできないから……。俺はこれからも生き続けるためには……。俺とレイナがこの世界で生きていけるようになる為には……。……久遠。お前の体に宿ってもらう。俺がお前と一つになっている間は……。お前の『心』は……久遠の『心』の中にあるって事になると思う。久遠の心の中に入っていくのは少し怖かったが……。俺は久遠のことを……信頼しているから……お前に体を預けた。


だから、もしお前にレイナの体を蘇らせる能力がなかった場合は、俺はこの世界に未練はないが、もし俺を生きながらえることができるのであれば……久遠。……俺を救ってくれないか?久遠が生きたいと強く願うのであれば、久遠の体に入るが……、そうでなければ俺は死ぬだろうな。……久遠は……俺と『約束』できるか?もし約束できるなら、俺はもう一度レイナに会いたいし、お前を幸せにしてやりたい。どうだ?俺との『約束』ができるか?もし約束するならば……。俺は……俺の全てを差し出そう。俺の魂を久遠にあげよう。だから、俺は俺の意思ではなく久遠の心に身を委ねる。そして俺は、久遠が生き続ける限り、俺は久遠の中に留まり続けるだろう……。久遠。お前には二つの道しかないんだ。


俺と『約束』するか?それともレイナを助けられずにそのまま朽ち果てていくかのどちらかになる。俺はお前を信じているが……。お前の決断次第なんだ。」と……俺はそう言うと久遠は俺を見つめた後に、涙を流した。すると…… 久遠は俺に「ありがとうございます。真也さん……。私が間違っていました。私があなたと初めて出会った時から、ずっとあなたのことをお慕い申しておりました。真也さんと私の願いが叶うことをお許しください……。私を……私を真也さんのそばに置いて下さい……。真也さんに私の全てを捧げます。ですから……真也様、私の体で私を幸せにすると誓って下さい……。」と言い出したので、俺は、「久遠……。お前にそんな事を言われてしまうとな……。俺はお前のことを守りきれなかった男なのに……。それでも……。俺を選んでくれるのならば、喜んで俺の命をかけて、必ず守ると誓いたいと思う。……だから、久遠……。もう泣くな……。お前を泣かせたくはない。笑っていて欲しい。それが無理ならば、お前は泣き顔でも構わないから。」と言い出した後で、「……さぁ、レイナの所にいこう……。久遠。俺はお前に全てを託す……。レイナのことを任せたからな。俺と『約束』してくれるのか?」と言うと……


「はい。『私と真也の運命の赤い糸は繋がっています』から。大丈夫ですよ……。」と答えた後に、久遠は笑みを見せた。俺は久遠が泣き止むと、レイナの元に向かうことにした。


久遠が俺に寄り添いながら俺と共にレイナのいる場所に戻ると、既にそこにはレイナが待っていてくれた。俺がレイナの方に向かいながらレイナに向かって「ただいま……。」と笑顔で言うと、レイナはとても嬉しそうな顔をしてくれた後に……俺達の元に駆け寄ってきた。俺はレイナが抱き着いて来ると思ったのだが、その考えはすぐに裏切られてしまった。


なんと……俺の前に立ったのは……久遠だった……。


久遠は、レイナの変わり果てている姿を見て驚いた表情を浮かべていたが、しばらくレイナをじっと見つめていた後にレイナに向かって……「久しぶりね。久しぶりで嬉しいけど……あなたがこんな姿になってしまったことが悲しくてならないわ……。ごめんなさいね。私は……久しぶりとは言えないかもしれないけれど……。私はレイナよ。あなたが知っている久遠の意識の中に私はあるけど……今の私ではないわ。だから私は今の姿のレイナとして自己紹介するわね。あなたとは初めましてだけど……よろしくね……。私はあなたを愛しています……。」と微笑んだ。


それに対して、レイナは「……久遠、ごめんなさい。久遠、私に気遣わせないために……。ありがとう……。」とだけ言い出すと、久遠の胸に飛び込んで泣いてしまったのだった。


そして俺は、久遠から事情を聞いている間中、リセにレイラを呼びに行かせていたので……。ようやくレイラも来てくれた。


そして……久遠はレイラに事情を話し始めたのだった。……その後で俺は、レイナから話を聞き始める。そして……。レイナの記憶は俺と久遠に受け継がれたようだ。そして、久遠は「私が覚えているのはこれだけよ……。あとはわからないの……。ごめんなさい……。真也……。私はあなたのことが好き……。お願いします。私の体で幸せになって欲しい……。そして、いつか私にも幸せが訪れるように見守っていて……。私は真也のために……精一杯生きるから……。真也に……私は救われたから……。今度は私が……。」と言い出し始めて……。俺は、そんなことを言う久遠に対して……抱きしめてキスをした。久遠が驚いている間に俺は唇を離すと、俺は「俺はお前と……レイナと一緒に幸せになりたい。だから、俺がレイナを幸せにする。俺もレイナがいなかったら……。俺はきっと……。死んでも死ななくても同じになっていたと思う……。レイナと久遠のおかげだ……。俺はレイナのことが好きなんだ。レイナがいなくなった後に久遠が俺を支えてくれるようになってから久遠が大好きになっていったんだ……。だから……久遠。俺と結婚してくれませんか?」と言った後に俺は久遠に手を伸ばす。


すると……久遠が涙を流し始めながら、手を取ろうとしたところで、レイナが俺の頬にビンタしてきた。


「レイナ!何をするんだ!?」


俺は、そう言いながらもレイナの顔を見ると……レイナが涙をこぼしていた。


「レイナ、俺は久遠にプロポーズして結婚を申し込んだだけだぞ。」


俺は困惑していると……


「久遠が困っているでしょ。久遠、この男は本当に馬鹿で……救いようのない奴だから……苦労かけるだろうけど……頑張って欲しいわ……。この男のことを……頼むから……。それに……真也……。私もレイナなのよ……。この体で、私も生きているんだよ。真也……。久遠にプロポーズするのは良いよ。私とだって結婚の話をしたことあったじゃない。だから……それはいいよ。でも、どうして私とじゃなくて……久遠なのよ!!私も久遠と同じ女なのよ!!」とレイナが怒りだす。そして……俺を睨みつけるとレイナが殴りかかってくる。


俺が殴られた後で俺は「落ち着けって……。レイナが生きていたことを久遠は喜んだんだからそれでいいだろ。それとも、お前はまだ自分が久遠の立場だった時に……死んだはずの人間が自分の目の前に現れたらどう思うか考えたことがないのか?」と言うとレイナは黙ってしまったのである。


俺はレイナが落ち着いたのを見届けてから「俺も、レイナと久遠の両方と結婚したかったからさ……。俺は、レイナが俺に惚れていると思ってるんだけど……。違ったのか?俺もレイナのこと好きになったのがつい最近で良くわかっていなかったが……。多分……。俺にとって、初めて会った時の……綺麗なお姉さんってイメージが強かったのかな……。」と言うとレイナがまた怒りだしそうだったので


「いや、俺が言いたかったのは、別にそういう意味ではなくて……。あのさ……確かに俺のことを好きでいてくれたんなら申し訳ないが、俺は今までずっとレイナに守られてきたと思っているから、俺の中で、まだレイナに対する想いの強さが違うというか……。まあ……俺は、どちらかと言えば、レイナよりは久遠の方が好きではあるな……。レイナと俺が初めて出会った時は、久遠が既にレイナに成り代わっていたし……。久遠のことは最初から知ってはいたが……実際に会う前から……久遠は俺のことを知っているのは知っていたけど……。レイナに助けてもらったり、一緒に戦ったりと色々な経験を積んできた。レイナの事も、久遠のおかげで、ちゃんと知ることが出来てると思うから……。久遠に命を賭けてくれと言われれば……。俺は、すぐにその願いに応えるだろう。俺には……。そのぐらい大事な女性だから……。」と言う。


俺の告白にレイナが照れながら、嬉しそうにしているので……俺は、もう一度「俺の気持ちだ……。改めて俺と久遠と結婚してくれないか?」と言うと……レイナは


「真也……。分かったわ……。あなたに私の全てを任せる……。私は、私の人生を捧げるわ。」と言い、俺達は婚約することになったのだ。それを見た久遠がレイカの元に向かおうとしたが……。レイナは、「ちょっと待って!!真也……。あなたに聞きたいことがあるわ。」と言うのであった。


そして……レイナの話は……あの男と、リゼの父親が、あの男がこの国でやろうとしていることを止めたいために……協力して欲しいということだったが、レイナの話だと……レイナ自身は、もうあまり動けないとのことだった。だから、リリアにレイナを託したいとのことなので……レイナの意思を尊重して……リリアの元に連れて行ったのだ。


リゼの方だが……リリアはリセに預けることにした。


それからしばらくしてリリアとリセは城に向かって戻ってきたのだが、俺は……あの男と話をすることにしたのだった。そして、俺とあの男で話を始める。


あの男は俺が思っていたよりも遥かに頭が切れていた。そして何よりも凄いのが……。俺は、こいつを殺すことは出来ないと感じた。こいつは強い上に狡猾で卑怯だったからだ。俺はそんな奴を見逃せるはずがないのだが、俺の考えを読んだのかあいつが口を開いた。


「君は私を捕まえて裁きの場に引きずっていくのが目的なのかな?残念だけど私は捕まるつもりは無いよ。私はね。ただ、この世界を変えるために必要な駒が手に入ったからね。今は君達と戦うつもりはないよ。」


俺がその言葉を聞いた後に、「その言い方は……つまり……。」と聞くと


「うん。私の目的はただ一つだけさ。この世界に革命を起こすことさ。私達の敵はね。私達に恨みを持つ人間達だよ。私はただ……。その邪魔な連中を排除するだけなんだ。……私の力があれば簡単なことだしね。」と笑みを見せる。


俺はその笑みを見ながら「お前の目的など知ったことではない!!お前は……絶対にここで倒す。俺がこの世界で……平和に暮らせるようにするためには……。お前は……ここで必ず倒す。」と言い放った後、あの男が俺に向かって攻撃してくるので、戦闘が始まった。まずはお互いに様子を見ていたが……相手が本気を出してくるのを感じた俺は……。相手の動きに合わせて、俺は、相手と同じように攻撃を仕掛けて相殺する戦法を何度も行い、俺は、あの男の攻撃を少しずつ読み始めていた。俺は……徐々に相手を追い詰め始めるとあの男は、少しだけ後ろに下がり……「……ふっ、やはり君と私とは……根本的に違うみたいだな。仕方が無いね。……本当はね。私は君と殺し合うのも嫌いではないが……君の言う通り、私には時間が無ければ仲間がいるわけでもない。私はね。ある人と……契約しているんだ。私はね。自分の目的の為であれば……例え私を倒そうとしている人物と戦わなければいけなくなっても構わないのさ。」と余裕を見せているようだった。俺は、「どういう意味だ!?」と聞いた後に……目の前の男に対して攻撃を仕掛けたが、その攻撃を防がれてしまい……「君の攻撃は……正直、まだまだ甘いよ。でも……そうだな……。」と男が言うと……突然俺の前に、レイナと瓜二つの姿が現れた。俺は驚いて……


「レイナ!!」と叫んでしまうとレイナにそっくりな人物は笑いながら「そうよ。レイナ本人よ。私もね。あの人の眷属なのよ。だから……あなたの考えている事は分かるのよ。あなたはこの私に対して……。私が死んで悲しんではいたけど……私が死ぬなんて微塵も考えていなかったんでしょ?そんな甘ちゃんで……どうしようもないあなたを私が導いてあげないといけないのよね。真也、あなたに教えてあげる……。私が死んでも……あなたが私を忘れないならそれで良いと思っていた。でも……私は、あなたのことが心配になってね。あなたのことがどうしても忘れられなくなってしまったのよ。だからね……。あの人と契約したわ。あなたのお手伝いをすることを条件にしてね。あなたのそばでずっと見守っていて欲しいっていう約束で……あなたに会えるようにしてもらったのよ。」


俺はレイナの言った内容を聞いて……「そんなのは無理だ。レイナが生きていたとしても……レイナの寿命を延ばすことは不可能だろう?」と言った。すると、レイナは俺に近づいてくると「それはどうかしらね。真也がそう思っているだけで……私はできると思ってるんだけど。だから……あなたも覚悟を決めた方がいいと思うのよ。……まぁ。今の真也には難しいかもしれないわね。だから……とりあえず今は……レイナのことを頼んだわよ。」と言って消えてしまったのである。俺は……しばらくレイナの言葉の意味を考え続けていた。


あの男が何か言っているようだったが、俺には、どうでもよかった。レイナが消えたことにショックを受けていたからだ。俺は「レイナ……。レイナ!!どこにいったんだ!!」と泣き叫んだが返事はなかったのだった。それから俺はしばらくレイナの名前を呼び続けたが、反応がなく……あの男を殴りつけて、レイナのことで頭がいっぱいになった状態で、そのまま戦うと、俺は、簡単に負けてしまう。


俺に勝ち誇ったような態度を見せていたが、俺は……「レイナがいないんじゃ……もうお前には用はない。死ね。」と言って、俺が全力を出して剣を振るうと……あいつの右腕が切り落とされてしまう。俺の姿を見て驚いた表情をしていたが……すぐに冷静さを取り戻していた。俺は、あの男が動揺した一瞬を狙って、すぐに距離を詰めると今度は右足を切り落としてやった。そのあとすぐに左足も切り落とすとあの男は地面の上で苦しんでいた。「……ぐぅ。貴様。……一体何をした?私はこんなにもあっさりとやられるような人間ではないはずなのだが……。何故……だ?それに……。その剣は……聖武器か?」とあいつが俺が使っているレイナの愛刀である白百合を見て呟いていたが、どうやらレイナのことを思い出していたようだ。そして、あの男が地面に転がっていた時……あの女から念話が飛んできて……。俺は、あの男が逃げようとしていることに気づき、あの男に斬りかかるが、俺は、またあの少女に阻まれてしまい、俺は、逃げるあの男を追うことが出来なかったのだった。俺はあの少女と戦おうとするが……レイナがもういない以上、勝てる気がしなかった。俺がもうあきらめようとしたとき、俺の目が捉えたのは……レイナが俺のところに来ているところであった。


俺は……目の前の人物が本当にレイナなのか確かめるために、レイナに向かって声をかけた。「……お前はレイナ……なのか?どうしてここにいるんだ?」と言うと、彼女は、優しい笑みを浮かべて


「やっと気がついたのね。まぁ。私はあなたのよく知っているレイナそのものだけど、あの子は、もうこの世にはいないの。そして今ここに居る私は、あなたのために、一時的に魂を貸しているだけの存在よ。レイナが亡くなって、まだショックが大きいと思うけど……。これからが本番よ。私と一緒にレイナを助けて……。」と真剣な眼差しを俺に向けてきた。


俺はレイナの顔を見てレイナが間違いなく俺に力を貸してくれようとしていることを理解すると、レイナにお願いをして……。レイナはレイナの姿から俺の妻であるレイカの体に変化したのであった。


レイナに俺は、「ありがとう。助かる。お前の力が必要だ。頼む……。」と言うとレイナは微笑み、俺達はあの男の後を追った。


それから俺達は……レイナにあの男を追いかけるように頼むと、俺もあの男を追っていたが、あの男との距離は中々縮まらなかったのだ。しかし、俺は諦めずに走り続けると、レイナが「待って!真也!」と叫んでいたので俺は止まるとそこには……一人の少年がいたのだ。


俺は、レイナにその少年について尋ねると、俺と会ったときにすでにあの男に殺されていた子だということが分かったのだ。俺はその子の遺体に手をかざすと……その子に命の火を与える。それからレイナがその男の子を連れていき……しばらくしてレイナと男の子の二人が戻ってきて……俺とあの男の決着がつく前にその戦いは終わってしまう。俺が怒りで我を忘れて暴れ出そうとすると、俺とあの男の間に立ちふさがった人物がいたのだった。


俺がその人を見ると……俺と同じような顔をしており……。俺よりも背が高く体格も良いので、年下だと思うのだが、まるで歴戦の強者の貫禄を持っているような感じだった。その男は「おぬしも相当に強いとは思うのだが、この世界で一番強い人間は……こ奴だ。この世界で最強の力を持っておるのは、こ奴だ。この世界で最強と言われているわしでもこの世界での最強にはなれんからな……。それ程までにこいつは強く、恐ろしいほどに賢く、卑怯な手も厭わん奴なんだよ。だからこそ、わしはこいつの側におることを選んだんだ。」と言っていたのだった。


俺はその話を聞いても納得できなかったのだが、こいつがレイナによく似た少女に「……レイナちゃん。ちょっと待っていてくださいね。」と言っている言葉を聞いてさらに俺は頭に血が上ってしまうが…… レイナにそっくりな女の子は「はい。」と答えており、俺とレイナに似ている女の子が話している間……レイナの体を借りた女性は俺に「大丈夫だよ!あの人は、あなたの事を大切に思ってくれているから……。それに……。あの人とは仲良くして欲しいんだよね。」と言われたので俺はレイナに説得されてしまい、俺は……その男性と会話することにしたのである。


まず俺はその男の人に、なぜあの男に加担しているのかを聞くと、あの男がこの世界を平和にするためという目的で行動していて、それが達成された時にあの男は、自分の力を全て使い果たして……あの男は死んでしまうのだというのだ。そのため、あの男は、この世界に混乱と争いをもたらしてまで自分が生きるための道を模索していて……その結果として自分の仲間にしてしまった者達がいるのだというのだった。俺はそんな話をされても信じられなかったので、その男が俺達に対して攻撃を仕掛けてきて……レイナが「私が相手するよ!!」と攻撃してくるが……レイナの攻撃をその男が防いでしまい、俺は慌てて攻撃するのだがそれも簡単に防がれてしまい俺は焦ってしまったが…… あの男とその男性が何か話し始めて……俺は、あの男に警戒心を持ち始めるが、そんなことを知らない男性は俺のほうを向いて、「お主の気持ちは良く分かる。だが、安心せい。この世界はいずれ変わる日が来るはずだ。その日まではワシと共に行動するのじゃ!!あの方とあのお方が目指す先は……。あの方に従えば……必ず成し遂げることができる!!あの方も、あのお方の目的を果たさない限り、死ねない存在になっているのでな。だから、共に行くぞ。」と言ってくるので、俺は渋々と承諾したが、それでもやはり俺は信用出来なかった。そんなことを考えていると……突然空から巨大な光の柱が落ちてくると、そこに一人の少女が降り立ってきたのである。


そして、その女性も俺に近づいてきて……「真也、ごめんなさいね。あなたに黙って……。あなたは私の言う事を聞かずに勝手に動いてしまうかもしれないと思ったので……。私も本当はあなたと一緒にあの人の手伝いをしたいのですが、それは許されなかったのですよ。なので……あなたを行かせる代わりに……あなたにはこの人を一緒に行ってもらいます。そして……真也。その女性があなたの前に現れたときにあなたの体は、一時的にその女性のものに変化していると思います。ですが……。あなたの意識がある状態ですし、あなたに危険が及ばないように、その女性からの許可が出ればあなたはこの体を使うことができるようになりました。」とレイナから言われたのである。


俺とレイナに似た人が戦闘を始めたのを見つめていた俺だったが……俺はレイナにそっくりの女性がレイナにそっくりの少女のことを見守るようにしてみていることに気づいて……俺は「あんたが俺にレイナの体を貸してくれるなら、あいつに俺が負けるようなことがあっても俺は負けないようにサポートしてくれ……。」と言って俺は……俺にレイナの魂を貸そうとしている少女の肩に手を置いたのであった。


それから俺は……レイナに瓜二つの女性の魂が俺に入ってきたことによって、俺はレイナの姿に変身することが出来て……レイナにそっくりな少女と俺に魂を貸してくれた人と一緒に俺は……あの男が逃げようとしているところを追跡することが出来たのだった。俺はその途中でその少女に、あの男が逃げた理由を説明する。


そのあとすぐに俺は……男に追いつき、俺は、男を殺そうとすると……。


俺は、男が持っている刀を見て……あることに気づく。その男が俺に向かってその男の愛刀を投げてきたが……俺はそれを難なく受け止めることに成功する。その刀には……。俺の妻のレイナの家紋が刻まれていたからだ。


そのことに気がついた瞬間に、あの男の首を斬り落としたのであった。そして、レイナが……その刀を見て、「この刀は……。あの人が愛用していた刀じゃない……。それに……。この家紋……。まさか!?どうしてこんな所にあの家の者が……。それにどうして……?あの子は……?」と呟いていたのである。


俺はレイナにどうしてここにレイナの家族がいるのかを尋ねると、彼女は俺のことを不思議そうな目で俺のことを見ながら……レイナが俺に質問してきた内容について詳しく答えてくれたのだ。俺が、その刀を持っていたことに関しては、「どうしてその刀を手に出来たのかは分からないけど……あの子があなたに託したんでしょうね。……それにしても……。どうしてあの家系のものが……こんなところにいるのかしら?まぁいいわ。今はあの子たちを保護しましょうか。あっちは大丈夫だろうしね。」と言うとレイナは俺ともう一人の少女を引き連れて……城に戻るのであった。


俺は城に帰ってくると……俺はリリアさんやレイカさん、そして、久遠君たちに説明するために一度みんなで集まり話し合いを行うことになったのである。レイナは、あの男を追いかけに行った後、レイナは……俺達にレイナの体のことを説明し始めた。


どうやらレイナの話だと、あの女が、レイナを生き返らせた際にレイナの肉体を完全に蘇らせることは出来なかったみたいで、レイナの精神だけはかろうじて蘇生させることに成功したが……どうやらあの女でも完全な死者の蘇生は不可能だということだったのだ。そのためレイナは……一時的にレイナの身体を貸してもらいレイナの意思を伝えることができるということらしいのだ。つまりは今の俺の状態とほとんど変わらない状態ということだ。……だけど……そのレイナの体に俺が入ることが出来るというのはどういう意味なのだろうかと思っていると、レイナは……。「この体が使える間は……。私の姿になることはできないの。それに……あの子に許可されている範囲しか使えない。それにね。私があの子の体に居れる時間はかなり限られていてね。長くても10分程度かな。それ以降は私があの子の中に入れなくなるの。」と言うのだ。それからレイナが俺と話をしたかった理由を話し始めたのだった。


レイナが言うには……俺に話しておきたいことがあるのだそうだ。俺とあの男との戦闘の最中に俺はあの男に殺される可能性があったが……レイナの姿になった俺の姿を見たあの男はなぜか戦うことをやめたので、俺とあの男の戦闘が終わっても俺達は戦いを続けることはなかったのだ。俺はその理由を知りたかったが……俺とあの男の戦いに割って入った人物があの男の代わりにあの男と戦ったため、レイナから話を聞かせてもらうことはできなかったのである。


レイナからの説明が終わると……俺はあの男と戦っていた時に現れた謎の女性と、俺がレイナの体の中に入る前に、俺達の前に突然現れた少女のことが気にかかっており……あの男はあの女の関係者なのだから……おそらくは俺達が召喚される前からこの世界を知っている人間だということが分かった。俺と、レイナにそっくりな人は……これから先にある場所で待ち合わせることを告げて去っていき、俺は……レイナと別れたのだった。俺はあの男を殺したときに、俺の武器にレイナの家紋が刻んであったことを思い出し……そのことを尋ねてみると「……あれがあなたの剣の鞘よ。あなたの使っている魔器もあの刀と同じ作りになっていたんだけど……あなたはそのことに気がついていなかったのかしら?」と言ってレイナの家紋が入った刀を取り出して……「この紋章はね……あの人が残した遺産の一つなの。だから私はあの人を探し続けていたのよ。あなたには悪いとは思うけれどね……。あの人とあなたは、私と同じような存在だから……どうしても放っておけなかったの。それに……。あの人は私の大好きな人だったの……。それにね……。私はあの人と過ごした日々は……楽しかったから……。」と言って、あの男のことをレイナが愛していたことを教えてくれた。……レイナとの話し合いが終わった後、俺は……あのレイナの双子の妹に俺がこの世界に来た時に初めて会ったときの事を思い出す。「あなたの名前は何というのですか?」とレイナの妹はレイナに対して問いかけており、俺は「この世界に転生させられた俺の娘だよ。この娘もあの人の血を受け継いでいて、あの人の加護を受けて生まれてきている。」と言われたのだった。……そして、レイナの妹からレイナの名前を聞いた俺は……俺があの人に加護を与えられていたことを聞いて驚きながらもレイナからあの人に加護を与えられた経緯などを教えてもらったのである。……俺は、あの人が、この世界を自分の世界にする為には、まずは俺のような人間に、自分の力を貸すことが必要だと分かって、あの人は、自分の子供達の中から……レイナを俺の元に送ることを決めたようだ。俺はそんなことを聞きながら……レイナと別れると俺に体を返してもらえたのだった。そして、その後……久遠君は俺にレイカさんの事を頼んで、この世界に来るときに通った転移魔法でどこかに行ってしまったのである。俺も……あの人が使っていたという移動方法を使えば、あの男が逃げ込んだ場所に行くことはできるのだが、俺にそんな力はないと思っていたが、レイナからある魔法を使うことを許可されたのである。


レイナは俺の魂の封印を解く魔法を使う許可を得たと言ってくれたのだが……俺はレイナの許可が出るまでは使わないようにとレイナにお願いをする。そして俺はあの人が使用していたと思われる魔法の使い手である……レイナにあの男のことについて聞いてみた。俺が知っているあの男よりも強くなっていたような感じだったが、それでも俺に勝てる可能性は低いと考えていた。……しかし、あの男の持っている力はそれだけではなかったようで、俺はその男のもう一つの能力に俺は驚いていた。……そして俺はあの男の力に対抗するために、俺にレイナが授けてくれたこの世界の理を知るための本と、スキルを使って新たな魔法を習得したのである。その魔法を発動すると俺はレイナの姿になれるようになると同時に、俺は俺自身にも制限を掛けられるようになって、あの人が作った魔道具で俺の能力を抑え込むことができるようになったのであった。そうすることで、あの男がどんな行動をしようと俺は自由に行動することができるようになり、レイナが俺の体に入っていなくても俺がレイナの姿をしている間はレイナの身体を借りている状態の状態になるのであった。


俺はレイナの姿になってからすぐにレイナと一緒にリリアさん達の所に向かい、事情を説明し始める。リリアさんと久遠君とレイカさんは、俺とあの男が戦闘をしている間にあの男と戦闘をしていた二人の女性の事を心配していたが……俺にあの男が渡した武器を見せたら納得してくれて、レイナからその女性がレイナの姉だと言う事を知った久遠君とレイカさんとリリアさんはとても喜んでいた。リリアさんはあの男を殺すことができなくて残念だったと言っているが、俺には……あの男を倒す方法が見当たらなかったため……俺の負けだと思った。だが、リリアさん達はその男を倒して欲しいとは言っていないと言っていた。


そして俺は……みんなで一度集まって話し合うことになったが……レイナにレイナの体を貸してもらっていたのは10分程度でそれ以上時間が経つと俺はまたレイナの姿になれなくなってしまうとレイナから言われていた。レイナはレイナとして俺と話し合っていたが……途中からレイナはレイナに戻り、それからレイナは、この場から立ち去るために準備をし始める。


それからレイナは自分の妹がレイナの妹と、もう一人……俺達にこの国の王女だと教えてくれた女性を連れて俺の目の前に現れたのだ。俺にあの人のことを託してレイナは去っていったのだった。レイナが去った後に、リリアが、俺とレイナの会話について俺に尋ねてきたのである。俺が、レイナの質問に答えるとリリアと、久遠は驚いていたが……二人は何かを察したらしく……リシアは、「レイナ様はこの国を救った救世主であり……この国に平和をもたらしてくれたお方でもあるのだぞ!そんなことも知らずにあの男はお前達を襲ったというのか!!……許せん……。絶対にあの男は殺さなければいけないな。それに……あの男は私の親友であるミレアまでも襲おうとしてきたのだ……。絶対に生かしては置けない奴なのだ。だからあの男は私が殺してやるんだ……。」と言う。それからリリアさんと久遠君はリシアを止めようとした。リシアの気持ちはよく分かるし俺も同じ思いであるのだが、リリアさん達は俺とレイナの会話をまだ理解できていないため……二人が止めに入ろうとしたときに俺がリシアを説得することにして、まずは落ち着かせることにした。そして、この城を出て行くという俺の意見に賛成をしたのは、久遠とリリアだった。俺は二人を危険な目に遭わせるのは嫌だったので、反対するようにと言ったが……二人とも俺の事を気遣ってくれた。それに加えて、この城の人達も俺達が出て行った方が安全だと賛成してくれた。俺はリリスに俺の分身を作ってくれるように頼み。それからは……この国を出るまでに俺が出来ることを考えることにした。それから俺はあの男を倒した時の事を思い返してみて、レイナの双子の姉妹に渡された刀の事が少しだけ引っかかっていたが……俺はレイナにこの世界で最強の剣士にしてもらうために、俺に修行をつけてもらうことをお願いすることにした。そして……俺は、レイナに俺の体を返してもらって、俺は再びこの世界に来ることが出来たときと同じ場所に転移したのだった。


俺は今……あの人が残しておいてくれていた屋敷に向かっている途中だった。その屋敷には誰もいないはずだったが、何故か誰かが住んでいる気配を感じ取ったのである。そして……俺が中に入るとそこには一人の少女がいた。


俺は突然現れた少女を見て驚きを隠せないでいたが……その女の子から話を聞くことができた。どうやら、その女の子の名前はレイナと言い、レイナの姿はレイナの双子の妹のレイナとそっくりなのだが……性格が違うため見分けがつくようだ。……それに、レイナとレイナの双子の妹レイナと、もう1人の少女は別人であるということらしい。俺はレイナの話を聞いて……この世界にはまだこのレイナの他にもレイナという少女が生きているということが分かった。俺はこのレイナと、もう一人のレイナを会わせてみようと思い……俺は、俺達を助けてくれた少女レイナと会う約束をしたのだった。そして、俺はレイナが待っている場所に向かおうとしたが……このレイナから俺は一つ聞きたいことがあったので、レイナにそのことを尋ねてみるとレイナは俺のことを信用できる相手だと言って俺に協力してくれることを了承する。そして、レイナは……俺にあることを尋ねてくる。俺は、俺自身の力を使いこなせるようにはなったのかということを聞かれて……俺には、その言葉の意味が分からないが、俺は、自分自身がどんな存在になったのかを知っている。だから、この世界に戻ってきた時に、俺はこの世界の事を何も知らなかったはずなのに、まるで知っていたかのように知識があり、俺が持っているこの力の正体が一体何なのかを知りたいとも思ったが……俺はそのことについては何も聞かないことにしていた。なぜならば……そのことを聞いたとしても俺は、俺の力のことをよく知らないのに、そんな状態でこの世界に存在しているのは危ないと、そう考えたからだ。俺の力がどのようなもので……これからどんなことが起きるのかは予想ができない。だが……そのことは、俺がこの世界に来てからの俺の生活で色々と学んできたことなので、俺はそれを無駄にしたくなかったのである。だからこそ、この力を制御できるようになってこの世界の人たちのために使うことが大事なのではないかと考えたのであった。


そして、俺達が合流したときにレイナに俺は自分が持っている力とこの力の使い道を教える。するとレイナは「私のお兄ちゃんも同じような事言ってたね……。」と言っており、レイナに俺の体の中に眠っている力を引き出す方法を教わったのだった。その方法とは……レイナが持っている武器で俺を刺すという行為だ。俺としてはその方法で俺に封印されていた俺が眠っていた力を取り出すことができるとは思ってはいなかった。そして、実際に……俺が試しにやってみたが俺の意識はあるのに、なぜか俺自身が動くことができなかった。俺はどうしてかわからないがレイナが嘘を言っているような様子ではなかったために……レイナの言葉が真実だと感じたのだ。そして、俺がそう考えている間に、レイナが俺に対して……ある質問を投げかけてくる。


レイナは俺のことを見つめて、ある事を問いかけてきたのであった。それは……俺がレイナの姉であるあの人と戦っているときに使った魔法のことだった。俺が魔法を使えたのはレイナのおかげであると俺が言うと、あのレイナが俺のことを見透かすように俺の目を見てきたのだ。そして……あの人は自分の姉と妹に殺されたと言っていたのだが、俺はその言葉を信じていない。……だって、そうでもしないと辻妻が合わなくなってしまう。それに俺はあの人が死んだところは見たわけでもない。……レイナはその俺の考えに気がついており、レイナはあの人の死体は見ておらず。レイナ自身もその現場にいたわけではなく。その場には居合わせてはいなかったのだと言う。だから、レイナにはあの人にもう一度あって……確かめたかったのだと、彼女は言う。俺は彼女の言葉から……俺の心の中でレイナの言おうとしている言葉を推測できた。俺がこのレイナの姿になって、このレイナの世界に来た理由はレイナの姉のあの人を救いだすためであると、レイナがそう言いたのではないだろうか?俺は……その事を確認すると、やはりそのとおりで俺の目的までわかっていてくれたようだ。


俺はそれからレイナと一緒にその屋敷を後にしたのだった。そして俺は……その途中で、レイナから俺の姿に変身するときに必要なものを教えてもらい。俺はその準備をすることにする。それから、俺達は俺の泊まっていた宿に向かっていく。俺達は、そこで一晩休むことになる。そして次の日……俺と久遠、レイカ、リリアの4人は……昨日の夜のうちに俺達の仲間に集まってもらった場所に集まってもらうことにした。だが、その時にはリリスが仲間達の全員を連れて来てくれたので、これで全員が集まることが出来る。それから俺はみんなに、リリアと久遠とレイカを紹介していく。


久遠は久遠とレイナの妹レイナのことを紹介した後……俺からリリアについての紹介を頼むと、みんながリリアを見ているとリリアが恥ずかしがりながらも、自分の事をみんなに説明をしてくれているようだった。久遠は俺に、このリリアという女性について俺に尋ねてきたのである。リリアは俺達と初めて出会ったときは盗賊に襲われていた所を助け出したのだが、リリアが自分を助けた理由を聞いた時に、リリアは自分の過去を俺達に話し始めてくれることになったのだ。それからは……俺はリリアの話を聞き始めた。


そして、俺は、あの時、あの人の手を握って、あの人の目を見ながら、「俺のこの手を……貴方に預けます……。」と言った。俺には……リリアの話を聞く限り……俺達を助けてくれたのは偶然ではないように思えたのだ。そして……俺は、この世界に戻れるように俺がリリスと交わした契約が果たされたのかを確認した。だが、俺はあの時からすでにリリスと契約をしていたことを思い出したのである。俺はその事実を知って驚いた。


そして、この世界の時間にして一年という月日が経った頃……ようやく俺と久遠は再会する。俺は、このリシアに転移をした。この世界に戻ってきたときには……俺の事を待っている者がいるのは分かっていたが……このリレミーやこの国を救わなければならないと思ったのである。リリアも一緒に来ると言って俺に付いてくると言ってきてくれていた。だが、俺はリリスに俺がリリスに言った言葉の意味を説明してから、リリスと別れた。


そして、俺がこの世界に来る前の時間に、リリスと再会した俺は、俺はあの人から託されたことを果たすため。リリスを元の場所に戻してあげたのである。だが……俺はその後、レイナという少女に俺の中にある力が引き出された時に俺の中の俺という人格は完全に消滅してしまい、俺の意識はあるが体が動かせないという状態になったのだった。そして……それからの俺はこの世界で俺が目覚めるまでの間に起きていたことを知らないまま過ごしていくことになる。


それからは、レイナの話を聞くために俺達が転移をした場所は、レイナがあの人達と戦った場所である。そこには、レイナはレイナの姉であるあの人の死体は見ていないがあの人の遺体の傍に剣があったそうだ。俺は、それを聞いて確信した。俺がその遺体を見たわけではないが、レイナは嘘をついているわけではなかったのだと。俺はそのことをレイナに話す。すると、どうしたのだろうか?急にリディアさんとリリアが俺のことを睨みつけてくる。一体なぜなんだろうと思っているとレイナは慌てて俺のことを庇ってくれていた。そのおかげで、俺は殺されなくて済んだのかもしれないな。


その後はレイナがあの人に聞いたことや……この世界のことを教えてもらったこと。それと……あの人がどのように戦ったのかも教えてくれた。だが……その時のあの人の状態はあまりいいものではなかったらしいが……。それから、あの人が使っていた武器がどういうものだったのかもレイナは知っていたので俺に話してくれた。その話を聞いているときに……なぜか、リディアさんの様子が少しだけおかしかったが、その様子についてはよく分からなかったので俺は気にしないようにしておいたのであった。


「私は……私の名前は…………」


「あぁ!!分かった!お前は、お前の名前は……ルチアなんだな?」


俺は今にも泣きそうな顔をしていたその人に向かって……そう声をかける。その言葉を口にしたときの彼女の反応はとても分かりやすく動揺しているように見えた。


そして、俺は彼女が持っていた剣を見て……この人は、この世界を救うために必死に戦い続けていて、俺のことを待っていたのだということを感じ取る。その剣は、この世界が危機に陥る前……まだ、この世界にいた頃に……俺は一度、その人物と出会ったことがある。だが、この人はもういない。俺はその剣のことも……そして、この人が持っていた杖も知っている。


その剣はレイナに似ていたが、この人は……俺にその杖を託してくれた人だった。


「そうだよ……思い出してくれるのは嬉しいけど……その……今はそれよりも……この世界がどうしてこうなったのかが……わからないの……それで……その……。」


彼女は涙声でそう言うと俺に話しかけてきた。俺もこの状況をなんとかしないとと思っていたのだが……目の前の彼女もどうにかしないといけないし……。それに、この人もあの人と同じだっていうことは……おそらく、レイナと一緒だと思うんだよな……。俺はそんなことを思いながらこの人が言っていたことに耳を傾ける。


彼女はこの世界に起きた異変の話をしてくれたのであった。俺はその内容を聞いていくにつれて驚きを隠せなかった。なぜならば……俺は……その出来事について何も知らない。そして……レイナはこのことを知らないような感じがしていたのだ。そして……この世界にいる人々のほとんどが俺達が出会ったときよりも以前に記憶が消されている。それも意図的に消されているのだと、彼女はそう口にすると俺のほうをまっすぐ見つめて口を開いたのである。


俺は……彼女の言葉を聞いて……俺達があの遺跡で見つけた資料と、リディアから見せられた映像のことを考えると……あの遺跡の地下に封印されていた奴がこの世界に解き放たれたのは間違いないだろうとそう考えていた。そう考えなければ、今のこの状況は理解が出来ないからだ。そう考えた後に、レイナからレイカが俺達と一緒に来たいと言い出すまでは……この場に残ると言っていたので、俺もレイカが残るなら……と思い。俺達はこの場所に残り、レイカを一人残していくのはよくないと、そう判断して俺は残ることに決めた。レイナは、自分が持っている力を使えば俺と同じように時間を遡ることが可能なので、レイカを一人で残すことがなくなるし……レイカのことも心配だったのだ……。


そして、リシアはこの世界の様子を見に行くと言って……俺達はレイナが泊まっている宿屋で、彼女と別れることにした。リレアとレイナはリシアと一緒に行動することにしたみたいだ。


俺はこれからどうしようかと考えているときに、久遠がこんなことを言うのだ……。


久遠が突然俺に、こんな提案をしてくるのだ。久遠の提案とは……あのリディアとかいう女を俺の奴隷にしてほしいという話だった。

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