第7話 連戦連勝

 ジョンはアポロの弓でガルグイユを倒し、さらにジャンヌの傷を治した。

 

 4匹目の敵は熊のジャンだった。  

 フランス民話の熊のジャンは、熊と人間の母親との間に生まれた毛深い男児で、乱暴により退学処分をうけ、鍛冶師の弟子となり、鉄杖を自作する。旅の途中、特技を持つ者たち仲間にくわわり、その三・四人組は、不思議な城に居座るが、出現した敵(小人や悪魔)に仲間たちは敗北し、主人公は勝利する。次いで地底の世界に降ることとなり、主人公のみ到着する。主人公は地底の老婆(妖精)に知恵を授かり、杖などで戦い、悪魔、巨人などを倒し、地下城で三人の王女を救出する。裏切る仲間に置き去りにされた主人公は、脱出し、王女らとの再会を果たすが、職人のふりをして現れ、王の試練を突破して王女のひとりと結婚する、などが典型的な要素である。


 世界一般の類話でも同じような展開が見られる。日本民話の会編『決定版 世界の民話事典』の説明では、熊息子ジャンは「動物の血を引く子ども」の一種で、彼らは力が強く知恵もあり、時には動物の言葉を解す等で英雄になる。民話において熊息子ジャンは、熊と人間の母親との間に生まれ、生まれつき大変な怪力で、それがために家を追い出される。途中で目利き・腕利き・耳利き・早足といったような異常な能力を持つ三人の男たちを仲間にして、化物を退治し、三人の娘を助け出すが、仲間に裏切られて娘たちを奪われる。しかし、最後には仲間の悪事を暴き、一番美しい娘と結婚する。


「おねぇちゃん、そんな奴やめて僕と結婚しちゃいなよ。ジャンとジャンヌって名前似てるよね?」

 熊のジャンはジョンを指さした。

「断る!!」

 嫉妬の塊と化したジャンはジョンに襲いかかった。

 ジャンヌはハルパーでジャンを串刺しにして、喰った。地獄に着いてから飯を食っていなかった。


 5匹目の敵はタラスクって怪物だった。

 巨大な竜、それは半獣半魚で、牛よりも肥え、馬よりも長大で、その顔面は獅子のごとく、鋭い歯は剣のごとく、たてがみは馬のごとく、切り立つ背中は斧のごとく、にょきにょき生えた鱗は錐のごとく、六本の脚は熊の爪のごとく、一本の尾は蛇のごとく、二つに分れた甲羅はそれぞれ亀のごとくであった。

 タラスクは毒の霧を口から吐いた。

 ジャンヌは息苦しさを覚えた。くっ、くせーなコイツ!

 ジョンがアポロの弓を放った。が、外れてジャンヌの尻に刺さってしまった。

「いてぇな!タコッ!ん?」

 イボ痔がなんとなく治ったような?

 タラスクは、フランス南部タラスコン市に発祥する伝説上の竜あるいは怪物。


 同市が開拓以前だったローヌ川沿いの森林地に、出没しては人害を及ぼしたタラスクという竜を、中東聖地より訪れていた聖女マルタが鎮め、退治に成功したという12世紀の伝説がある。伝説は発祥地のフランス南部プロヴァンス地方のみならず、広くスペインなどにも伝搬している。怪物も、もとは中東小アジア(現今のトルコ)で生まれたとされる。


 知名度の高い『黄金伝説』(13世紀)版「聖女マルタ伝」や異本に当該の竜退治説話が所収され、鑑文学にも記載がみられる。竜であるが、半獣半魚でもあると『黄金伝説』に説かれ、偽マルケラ版『聖女マルタ伝』によれば獅子のような頭、一対の亀の甲羅、熊爪の足六本、蛇様の尾をもっていた。

 

 この六本足の甲羅の怪物という概念が、やがて典型的な図像となるが、ゴシック様式初期の美術では、かならずしもその形をとってはおらず、かつて甲羅型の早期例とみなされたもの(教会の彫刻)も、のちに14世紀の作と改められた。伝説の舞台タラスコン市では、その紋章や代用貨幣にタラスクを表しているが、早期の例だと竜形で、15世紀頃の市章に甲羅型の典型が現れる。そして15世紀の手写本の挿絵や、16–17世紀において、この典型型の定着がみられる。聖女マルタは、タラスクが市民を捕食していたところに遭遇したと伝説にあり、図像でも人を呑み込む姿で書かれる例が多い。


 タラスクの伝説は、フランス南部プロヴァンス地方に、12世紀初頭、あるいは12世紀末に発祥したものと考えられている。中世のいくつかの文献のなかに、とくに『黄金伝説』所収の聖女マルタ伝があるが、これは12世紀中葉~13世紀中葉の主な4種の中世ラテン語文献のなかでももっとも短文で、然して”もっとも影響の大きかった"聖女マルタ伝とされる。


 黄金伝説に所収されるマルタとタラスクの伝説によれば、昔、フランス南部プロヴァンス地方の、アルル市とアヴィニョン市の間のローヌ川沿いにあるネルルク(「黒い森」)という地(現今のタラスコン市一帯)に、タラスコヌスという竜が川に潜み、渡河しようとする人や船を襲っていた。この竜は、半獣半魚、牡牛より太く、馬より長く、"角のごとく鋭い剣のような歯"を持っていた。


 タラスコヌスは小アジアのガラティアに発生した生物で、聖書の巨獣レヴィアタンとガラティアのオナクス(あるいはオナコ、ボナコ等とも表記される)が交配して生まれた雑種であるとされる。


 そこで民衆は、イエス・キリストの知己を得ている聖女マルタに対処を要請し、聖女はタラスクがまさに人を食らおうとしている場面に邂逅した。聖水をふりかけただけでタラスクはおとなしくなり、帯を首にくくりつけて市中に連れて行き、町人は石や槍を投じてこれを殺した。


 ⛪ジャンヌとジョンは教会を見つけた。中には聖水の入った瓶が入っていた。「もしかしたら、マルタがタラスクに飲ませたってゆー聖水かも知れない」と、ジョン。

 教会の外に出るとデカい口を開けてタラスクが待ち受けていた。

「バカそうな面だ」

 ジョンは笑った。

 ジャンヌが聖水の瓶をタラスクの口に投げ入れた。

 タラスクは気持ちよさそうに眠っている。

 ジャンヌはハルパーでタラスクをズバッ!ズバッ!と斬り捨てた。


 6匹目はペルーダって怪物だった。

 蛇頭蛇尾で、丸い胴体に緑色の長い体毛が生え、なかには有毒の刺がいくつもまぎれていた。洪水をおこし(または口から火焔を吹くことで)作物を枯らして飢饉を及ぼし、家畜や人間を食らい、獣も人も尾で打ち殺した。ついに、アニェル(「子羊」)と呼ばれる淑徳の乙女を餌食にしようとしたところ、その婚約者の剣で急所の尾を裂かれ退治された。

 フランスの資料によれば、蛇(あるいは竜)のような頭と尾を持ち、牡牛ほどの大きさで、体形は卵型、緑色の長い毛で覆われ、その合間から、刺されば致死性の(猛毒の)鋭い棘が突出」し、亀のような横幅のある足をしていた。


 同族の仲間として タラスクというタラスコン市やボーケール市に名高い幻獣が挙げられると、コルドニエ=デトリーは意見している。他にも、これらをひっくるめて「ドラゴン」の一種に指定する解説が見られる。


 民間伝承によれば、ヴリュはノアの箱舟には乗船させられなかったものの、大洪水を生き残ったのだという。


 後世になると、中世フランスのユイヌ川の岸辺に住み、近辺の村落を荒らし、ラ・フェルテ=ベルナール市街までにも襲来して、同市の防壁など役にたたなかったという。竜蛇のような尻尾を振り回せば、人間も動物も打ち殺せた。羊用の囲い、すなわち牧柵内を襲っては、中の家畜(羊)をことごとく食らってしまう。


 追い立てられると、ヴリュはユイヌ川に入り、これを氾濫させて洪水をおこし、作物に甚大な被害がもたらされて飢饉がおきた。ボルヘスは、怪物が火焔を発して作物を枯死させたとしているが、これは「火焔放射の口で作物に火をつける」というロワの描写と一致する。


 人間も襲い食い殺し、特に児童や若い女性を狙うのだった。だが、町きっての淑女(その名も「子羊」を意味するアニェル)を捕え食おうとしたところ、娘の婚約者がやってきて剣で尾を切り裂き、そこが弱点だったことからヴリュは即死した。怪物が倒された場所はイヴレ=レヴェックの橋だと伝わっている。この勝利は、のち長らくラ・フェルテ=ベルナールやコネレの町で祝され、 民衆は怪物をはく製にしたか、エンバーミング(防腐処理保存)したと伝えられている。


「ジャンヌ!コイツを倒したら俺のものになってくれ!」

「ジョンは何か勘違いをしてる。アタイはアンタを男として好きだと思ったことは一度もない」

「ガビーン……」

 ジョンはショックのあまりに顎が外れたようだ。

 遠距離だからハルパーじゃ無理だ。動けずにいるジョンからアポロの弓を奪って、力いっぱい引いた。

 ヒュュッー🏹

 矢がペルーダに命中、ペルーダは爆死した。

 ジョンのときとは攻撃力がかなり違う。

「この弓矢もアタイの方が好きなんだ」

 ジャンヌはジョンの顎を元通りにしてやった。 

「アギャァーッ!」

「男の子でしょ、泣かないの」

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