第4話 懐かしの我が家は酒臭そう

 途方にくれて歩いていると、懐かしい場所にたどり着いた。


 我が聖誕の地と言っても過言ではない娼館だ。

 それに、この暗く湿っぽい空気の裏通り。

 まさに故郷だ。


 ついでなので、パルマの家を見物しに行った。

 パルマの家はそのままの形で残っていたが、今は別の誰かが住んでいるようだ。

 しばらく見ていると赤ら顔の男が出てきていきなり怒鳴りつけてきた。


 「だあっしゃ!おめえ!なに人の家見てんら!しばくぞ!」


 男は酔っぱらっているようだった。

 もう二度と育った家に足を踏み入れることはないだろう。

 本当に懐かしい空気だ。


 パルマの家を通りすぎてそのまま裏通りを進むと、川のほとりに人集りを見つけた。


 見物人に混じって見てみると、台の上に人が並んで立っているのが見えた。

 縛られた半裸のおじさんがいっぱい並んでいる光景はなんだかおかしかった。


 「おい、これは何してるんだ?何かのショーか?楽しそうだな」

 「奴隷市に決まってるだろ。どこの田舎者だよ」

 「千葉だよ。文句あるのか?」

 「いや、よくわからねえけどよ、これから競りなんだから邪魔しないでくれ」

 「こんなおじさん買ってどうするんだ?」

 「働かせるんだよ。うるせえな!」


 男が怒鳴った。

 騒ぎを聞きつけて髭面の男が駆け寄ってきた。


 「お前ら、さっきからうるさいぞ。商売の邪魔をするならうせろ」


 髭面の男は、腰に下げた剣に手をかけながら威圧的にそう言った。


 「あのおじさん達がお前の商品なのか?」

 「そうだ。何か問題でも?」

 「売られるのはおじさんなのになぜお前が儲かるんだ?おじさんに金をやるべきだろ」

 「ふざけてるのか、おい。ガキだからって容赦しないぞ」

 「あのおじさん達はお前に売られることに納得してるのか?まさか同意もなく売ってないよな」

 「あいつらは戦利品だ!そんなもの必要ない!」

 「そうか。それじゃあお前の同意もいらないんだな」


 俺は髭面の男の顔面を殴り付けて、首根っこを掴んで持ち上げた。


 「俺の戦利品だ。10バルで売るぞ」


 客達はドン引きして後退りした。

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