第3話 金を稼ぐのは大変だ
次の日、俺は再びユグルに舞い戻った。
今日は皮を持たなかった。よく見たら全て腐っていたからだ。
代わりに頑張って集めたキノコを持ってきた。
キノコは山に大量に生えている。
門の前で、守衛がまた足止めしてきた。
「おお、グラルド。今日はなんだ?」
「キノコ売りに来た。見て分かるだろ」
「キノコ……?なんか見たこと無いやつばかりだな。旨いのか?」
「旨いぞ。いるか?」
「いや……いい。通っていいぞ。キノコならニョキー持って来いよ。売れ筋だからな」
「このやり取り毎回するのか?」
「仕事だからな……」
守衛は相変わらずいいやつだった。
キノコを買ってくれそうな店を探す。
干したキノコや虫や木の根っこみたいなものを並べている怪しい店を見つけた。
店の中では、おばさんが暇そうに通りを眺めていた。
「おばさん、このキノコ買ってくれ」
「なんだいこんな大量に。あたしゃキノコには飽々してるんだよ。もううんざりだね。どいつもこいつも頭の中はキノコばかり。ちぎり捨ててやりたいくらいさ」
「何の話だ?買うのか?買わないのか?」
「どれどれ……ああ、これは……毒キノコばかりじゃないかい。バカなのかいあんた」
「そんなはずはない。俺は全部食べたことがあるからな」
「そりゃあんたがおかしいんだよ。腹がバカなんだ」
「……食えるキノコはないのか?」
「ちょっとはあるけどねえ……」
「食えるやつだけでいい。買ってくれ」
「お兄ちゃんイケメンだから買ってもいいけど全部で10バルよ」
「それでいい」
10バルとキノコを交換した。
何に使う気か知らないが、おばさんは毒キノコも一緒も引き取ってくれた。
俺は10バルを握りしめて本屋に向かった。
「紙は売ってるか?」
「紙ですか!?あるにはありますが……」
「出してくれ。欲しいんだ」
「こちらの巻物ですが、一つ26000バルですよ。紙なんて買ってどうするんです?」
「高いな。もっと安いのはないのか?予算は10バルだ」
「帰ってください」
「そこをなんとか頼む」
本屋は徹底的に無視を決め込んだ。
驚いたことに、日本の感覚が全く通用しない。
俺はなによりもまず、この世界を知らなくてはならないらしい。
十八年もこの世界で生活して、今更そんなことに気づかされるとは。
※1バル=1円くらいです。
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