第11話 千春の両親が千葉へ向かう
一方、一徹と春子は酒造りを従業員に任せ千葉に向かった。手紙の消印を頼りに木更津に着いた。だが木更津と消印があっても木更津に住んでいるとは限らない。千葉市内かも知れないし別の町かも知れない。
「ねぇ貴方。ただ漠然と探したって分からないわよ。一体どこを探すのよ」
「まず郵便消印のある木更津市を中心に旅館を片っ端から聞いて行こう。それで明日は町役場に行き秋沢千春という名前が住民票に載ってないか聞くとしよう」
「なるほど役所なら分るわよね」
だが木更津周辺には居ないようだ。この頃はまだ個人情報というものはなく。親であればたいていは開示してくれた。翌日二人は富津方面に向かった。ともかく旅館となれば温泉地か市街地、或いは海辺近くの旅館が有力だと富津の役場に思い向いた。だが其処にも居なかった。そして三日目、富山町(現 南富津市)に来た。
「あのこちらに秋沢千春という者が住民登録しているでしょうか」
「貴方がたとどう言うご関係ですか」
「あっはい娘です。確か八年ほど前から旅館で働いていると思いますが」
「分りました。それでは申請書を書いて暫くお待ち下さい」
「春子よ、此処にも居なかったら館山まで行きそれ駄目なら帰ろう」
「そんな私は諦めないわよ。きっと近くに住んでいるはずよ」
暫くする職員がやって来た。
「お待たせしました。え~と秋沢千春さん二十七歳の方なら住んでいますね。お子さんが二人と」
「え~~本当ですか。良かった子供も二人居るはずです。で住所は」
「この住所だと海辺にある小端屋旅館ですね」
「そうですか、いゃあ本当にありがとうございました。それでその旅館までバスは出ていますか」
「はい出でますが一日に四本しかないので」
「係長、それなら今からそっち方面に行くので乗せて行ってあげましょうか」
「えっそれは有り難い。是非ともお願います」
それから三十分ほどして小端屋旅館に到着した。時刻はまだ夕方に早い四時を少し過ぎた頃。二人は緊張している。約七年ぶりの再会だ。だが心配もある。会いたくないと言われるかも知れない。
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