第10話  千春、親友咲子と再会

「あっ貴方! 双子だってよ。しかも男と女」

 双子が生まれたと知り千春の母、春子が号泣した。親にも言えない事情があったとは。過ちを犯した千春だけを責めるのはおかしい。親にも相談出来ない状況に追い込んだ親も悪い。春子は一徹をキッと睨んだ。

「貴方が厳し過ぎるのよ。たから千春は本当の事を言えなかったのよ」

「馬鹿な、ふしだら事をした娘をどう許せと言うんだ」

「それが厳格過ぎると言うのよ。もっと娘の気持ちを尊重してやれば相談してくれたはずよ。そうすればこんな事にならなかったのに」


「それにしても相手の男はなんて野郎だ。見つけて半殺しにしてやろうか」

「今更なにを言っているのよ。その相手の人も子供が出来た事を知らないのよ。もし知って俺の子だからなんて言ったら大変よ。そんな知らない男に孫を渡せますか」

 春子は手紙が届いてから居ても立ってもいられない様子だ。一徹も落ち着かない。怒りと安堵と入り混じって複雑だ。だが双子の孫が居ると知ってどうしようか迷っている。

 こんな時に打算的だが一徹は孫が跡を継いでくれるとふっと思った。

「貴方、この手紙を見て住所は書いてないけど切手の所にある消印に木更津とあるわ」

「なんだって千春は千葉に渡っていたのか。俺達は横浜や湘南などを中心に探したのに、まさか千葉に住んでしたとは。考えてみればフェリーを使えば千葉へ簡単に渡れた。盲点を突かれたな。よしじゃあ木更津に行って見よう」

「えっ勘当だといつも言っていたじゃない」

「そりゃあ従業員の手前、そう言わないと示しが付かないだろう」


 そして千春と小春、春樹は憧れの東京タワーに登った。展望台から見る東京の景色は沢山のビルが出来て戦後の焼け野原のような景色と一変し驚きと感動を覚えた。子供達は大喜びしている。そこに咲子と咲子の子供二人がやって来た。三年ぶりの再会である。二人は顔が合った瞬間抱き合って喜んだ。子供達はビックリしている。

「千春、久し振り元気そうで何より」

「咲子、貴女も元気そうで。あらぁ大きくなって可愛いわね。二人とも咲子に良く似ているわ。あれ? 旦那様は一緒じゃないの」

「うん、仕事が忙しくて。それに小春ちゃんと春樹くんに気を使って楽しんでおいでと送り出しくれたの」

「別に気を使わなくてもいいのに。それにしても優しい旦那さんね」

 東京タワーで楽しんだあと、お昼ご飯を六人で食べた。子供達はお子様ランチだ。乗物の器には日の丸の旗が立って居た。ハンバークとオムライスのセット。子供達は大喜びしている。そして小春と春樹は咲子の子供とすぐ仲良くなった。それを見て咲子は。

「この子達も大きくなって私達と同じく親友になれたら最高だね」

「本当ね、私もそうなって欲しい。そして咲子とは互いに白髪になっても行き来したいわね」

 千春にとっても子供達にとっても忘れられない最良の日となった。また再会を約束して別れた。


つづく


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