第7話 千春26歳 仲居頭となる。
それから月日は流れ千春は二十六才になった。仲居の仕事をして五年目、先輩仲居は一人辞め新しい仲居が一人入った。今では小端屋旅館になくてはならない存在だ。双子はたいした病気もせずにすくすくと育った。小春と春樹が四歳くらいになると旅館の掃除やお客さんの靴磨きをして女将にお利口ねと、お菓子や洋服を買ってくれる事もあった。女将夫婦には子供が居ないから孫のように可愛がってくれる。子育てに夢中だったのか月日はあっという間に流れて一番古株の仲居は結婚して辞めて行き代わりにまた新しい仲居が入って来た。千春は仲居頭となった。
やがて月日は流れ小春と春樹は六歳なり今年の春、小学校に入学する予定だ。
「小春、春樹もうすぐ小学校に入るんだね。ごめんね、お金が無くて幼稚園に入れてやれず」
「いいのアタシなんとも思っていない。でも入学式にはお母さんしか来られないのよね」
「それってお父さんも居て欲しかったの」
「でも仕方ないよね。死んじゃったんだから」
「……ううん。お母さんだけでごめんね」
「お母さん、いつもごめんねと言うのは止めてよ。僕もお母さんの苦労は分っているから」
二人共も母親思いの良い子のようだ。千春にとっても親を気遣う子供は可愛い。本当に良く育ってくれたようだ。千晴の苦労も報われるというもの。
振り返ってみれば先輩にあたる仲井の二人は辞めて今は新しい仲居が二人入り千春は仲居頭になり入った頃を思いだしていた。最初は虐めに近い感じでいびられた。だから新しい仲居にはそんな思いはさせたくない。親切に教えてやった。二人の仲居にも慕われるようになり明るい職場となった。
つづく
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