第5話 双子誕生🙌
働き始めて三か月が過ぎお腹も大きくなった。これではお客さんの前には出られない。女将もちろん承知で雇った。こうなるとは分かっている。裏方として風呂場の掃除など出来る仕事はなんとかこなした。給料もみんなと同じに働けないから半額の月二千五百円となった。食事と部屋代は支払わなくよいのが助かる。この頃の大学卒の初任給は八千七百円。高卒で五千九百円程度、都バス初乗り十円。蕎麦三十円、ラーメン四十円、珈琲五十円だ。千春は現金で三万、通帳に二十万あった。これは大変な金額だ。現在の金額に換算して三百万以上になるだろう。殆どが親から貰ったものだ。一人娘として大事に育てられた証拠だ。
それなのに許されない過ちを犯した。妊娠にしていなければ素直に親に従っただろう。もはや後戻り出来ない。預金通帳を見て親に感謝と詫びる気持ちが入り乱れている。
しかしこれでお産の費用はなんとかなるし何か合った時の為に出来るだけ使わないようにした。しかし子供が産まれてから大変だ。仕事を休んでいる間は無給。そして食事代と部屋代合わせて千円支払わなければならない。お産してから一月後働く予定だが子供を見ながら働く事になる。それでも月お産前と同じく五千円貰える。
しかし六カ月目に入り流石に客の前に出られなくなった。それから裏方の仕事に周った。相変わらず二人の先輩仲居は千春に辛く当たった。千春は何を言われてもハイハイと我慢して働いた。
やがて千春は双子を産んだ。しかも男と女だ。祝福してくれたのは女将夫妻と咲子だけだったが自分が望んで産んだ子は可愛いい。その娘に小春と息子は春樹と名付けた。だが双子の子育ては予想以上に大変だった。初めての母が二人を面倒見るのは並大抵ではない。産婦人科で聞いた育児支援を役場で相談した。生後三カ月目から預かってくれるという。ただではないが町の施設で私設の半額だ。千春は産休を三週間取って復帰した。その間、自費で赤ちゃんの世話するおばさんに預けて働いた。
同僚で年配の仲居は相変わらずきつくあたったが負けて堪るかと必死に働いた。千春は母になって強くなった。母は強し、と言われるが千春も例外ではなくお嬢様育ちの千春も一皮向けた感じだ。
つづく
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