戦いとトラウマ
タンッ──、タンッ──!!
風魔法を施した足で、私と一番隊は森を駆け抜ける。
私たちが通った後にはグレミア公国の刺客であっただろうたくさんのオークの死骸。
これだけの量が一気に押し寄せてくるとさすがに手間取るけれど、大きな怪我人も出ることなくここまで来ることができた。
この森を抜けて少し走れば、ミレの丘だ。
「!! 待って!!」
「!?」
レオンティウス様の制止に動かし続けていた足を止める私たち。
そしてその潜めるように蠢く気配に気づいた。
「囲まれてる……!!」
おそらく魔術師隊だろう。
全く気づかなかった……!!
こちらの二番隊魔法師団はすでにもう少し後方から狙いを定めているようだけれど、その背後にもさらに魔術師がいるようだ。
いわば、敵と味方、グレミアとセイレの超豪華なミルフィーユ状態、か。
って……冗談言ってる場合じゃない!!
「はぁぁぁぁあっ!!」
パシュンパシュンパシュンパシュン──!!
水魔法で全方向へ水砲を放つと、それらは思ったよりも近くに姿を現した。
さすが、隠匿魔法が得意なグレミア公国。
この距離まで気づかれずに近づいているなんて……。
木々の間から出てくるたくさんの魔術師達。
よくこれだけの人数隠れてられたなと思うほどの大所帯に、息をのみ剣を構えるセイレの騎士達。
そして──。
「雷よ!!」
半詠唱魔法……!!
「っ……!!」
降り注ぐ雷の矢を咄嗟の防御魔法で防ぐ。
「っぶなぁ……!!」
雷魔法にたくさんうたれた経験があるとはいえ、あれはかなり痛い。
できれば当たりたくないものだ。
それに、いくら私が施した防御魔法があるとはいえ、無事に済むわけがない。
あちらも魔法強化をしているのだから。
「っ!! くるわよ!! 二番隊!! 騎士達の強化を!!」
レオンティウス様の指示が飛んですぐ、後衛の二番隊の魔術師達が一斉に詠唱を始め、騎士達に自分の得意属性の魔法を付与していく。
魔法剣は扱いがかなり特殊で難しく、今のところ私と先生しか使えないが、他者が付与することで魔法剣を使えない騎士でも扱うことができる。
まぁ、魔術師はその間ずっと魔法を付与し続けないといけないし、訓練無しで魔法が付与された武器を扱うのは難しいものがあるのだけれど。
そこは先生がきっちり訓練してくれていたので問題はない。
にしても──。
「多いわね」
「はい」
ミレの丘から次々と集まってくる魔術師と騎士達。
グレミアの人間が主だけれど、それだけでこんなに集まるはずがない。
おそらく周辺国の人間も出動しているのだろう。
更には奥の方からオークまでもが湧き出してくる始末。
多勢に無勢。
ミルフィーユ状態で囲まれた私たちに、激しい魔法の嵐が襲いかかる。
周りの騎士達が次々と攻撃を受け、傷ついていく様に、私も回復魔法をかけながら、手加減せずに倒せばいいオークをメインに狙いを定めて剣を振る。
「はぁぁぁぁっ!!」
「グアァァァァッ!!」
次々と倒れていくオークだけれど、それでもどんどん湧いてくる。
「っ、こんな場所で時間食ってる場合じゃないのに……!!」
だけどここをどうにかしないと、グローリアスに多くの侵入者を許すことになる。
地道に戦うしか──!!
私がリリン──、と音を立てて再び愛刀を構えたその時。
「炎よ!!」
「っ!!」
誰かが使った炎魔法。
それは上級のもので、あたりは一面火の海と化した。
「っ……!! 火が……!!」
あっという間に炎の中に閉じ込められた私とレオンティウス様達一番隊。
あぁ、ダメだ。
これは。
この光景は……あの日と同じ……。
遠く記憶の中で王妃の叫び声が木霊する。
だんだんと呼吸が浅くなり、私は胸を押さえて跪いた。
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