タスカと人質
キラリラリン、キラリラリン──。
「!? グレミア公国のタスカさんからの通信です!!」
「っ!! 繋げるか?」
「はいっ!!」
私はすぐに通信コンパクトを取り出すと通信を繋げる。
するとコンパクトの鏡の部分に右頬に大きな傷跡を持つ赤い髪の美丈夫の顔が映し出された。
「タスカさん!!」
「おう、姫さん。すまんな、突然」
数日ぶりのタスカさん、どこかやつれたようにも見える。
「侵攻のこと、ですね?」
「あぁ。さすがセイレの諜報部隊か。もう情報が行ってたんだな。その通り。グレミア公国騎士団および魔術師団は、明日、セイレ王国に侵攻する──」
「明日!?」
そんなすぐに……。
「それは本当か?」
先生が鏡の中のタスカさんとの会話のため私の方へと顔を寄せる。
近っ!!
先生の……先生のご尊顔が……!!
「
「!!」
予想通り。
やはり最前線となるのは村や街ではない。
中央圏、グローリアス学園からミレの丘の間だ。
そこでふとタスカサンの首元に黒い首輪がついていることに気づいた。
「タスカさん、それは?」
「……あぁ……、これ、な、……爆弾だ」
「!? 爆弾!?」
なんてものを……!!
「騎士団全員と、その人質にされている家族も同じものをつけられた。魔法でつけられてるから専門知識のない俺たちにゃ解けねぇ。命令に背いて逃げればドカンだ」
「そんな……」
なんてひどい……。
騎士団は戦争反対派であるラスタ公子側だから、裏切り防止につけられたのか。
なんとかしてあげたいけれど……。
「魔法か……。なら、俺の専門だな」
「レイヴン!!」
言いながら先生とは反対側からコンパクトを覗き込むレイヴン。
「
「おう。俺がお前らの爆弾の解呪をしてやる」
「!!」
「できるの!?」
「俺を誰だと思ってんだ? 天才魔術師団長様だぞ? 三流のかけた魔法の解呪なんて、余裕だ」
ニヤリと笑って私にウインクするレイヴンが、なんだか頼もしく感じる。
「レイヴン、お願いします。タスカさん達を助けて」
敵国の騎士団だとしても死なせたくない。助けたい。
「おう、任せとけ。おいタスカ・グレモア。騎士団全員に伝えろ。決して手加減はするなってな」
「!? だが──」
「いいんだよ。決して逆らわず、解呪できるまでは疑いを持たれないようにしろ。ただし、殺さない程度にな。俺がすぐにお前らも、お前らの家族も解呪してやる。外れたらその時は──お前らは自由だ。っつーことで──」
レイヴンは再び私の方へと視線を向けると、真剣な顔で続けた。
「俺の麗しの姫君。戦闘中、国を一瞬離れる許可をいただけますか?」
琥珀色の綺麗な瞳が私をまっすぐに捉え、命令を待っている。
「はい。レイヴン・シード。戦闘中の国外への離脱を許します。必ず、あなたも無事に帰ってきてください」
「おうっ」
レイヴンならきっとやってくれる。
彼を信じよう。
「お前ら……。すまん。頼む」
「はい!! タスカさん、お気をつけて。こちらは大丈夫ですから」
レイヴン一人が一瞬抜けたとして揺らぐようなセイレ王国魔術師団ではない。
なんとかなるはずだ。
「あぁ。生きて、また会おう、姫さん」
そこで通信はプツリと切れた。
「……」
しん、と静まり返った会議室。
「変更事項を確認する!! レイヴンは開戦後すぐにグレミア公国へと向かい、任務間ん量後、こちらのグレミアの騎士の爆弾魔法解呪を!! 他は予定通り。各隊に通達せよ!! 明日日没とともに戦争が始まる!!」
「はっ!!」
先生の号令に慌ただしく席を立ち各隊へと走っていく彼ら。
ついに始まる。
どくどくと大きな音を立てる鼓動に、私は強く拳を握りしめた。
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