セイレ騎士団会議の最中で


「待たせた」


 会議室にはすでにレオンティウス様、レイヴン、グレイル隊長、ガレル隊長と、諜報に出ているマーサ隊長以外の隊長が揃っており、それに加えてジゼル先生、パルテ先生、アステア先生までもが顔を揃えていた。


 私が先生について部屋へと入った瞬間、隊長達、そして先生方が私に向かって頭を下げた。

 王族という立場で会議に出席する以上仕方がないとしても、なんだか居心地が悪い。


「各隊、準備状況はどうだ?」

 先生が騎士団長の席へと腰を下ろすと、お前もこっちへこいと言わんばかりに隣に用意された椅子をぽんぽんと叩く。

 うちの推し、可愛すぎか。


「一番隊はすぐにでも出られるわ。戦闘時の連携も確認できているし、皆それぞれの家族ともしっかりと過ごしてきたようだしね」


 最前線となるであろう【ミレの丘】へと赴く一番隊は、より危険に晒されることになる。

 生きて帰ってくる保証だってないんだ。

 きっと家族や大切な人たちと、しっかりと話をしてきたのだろう。

 まぁ、誰一人として死なせる気はないけど、ね。


「二番隊も準備はできてるぞ。一班は一番隊の後方支援。二班はグローリアス学園とセイレ城で戦う五番隊の戦闘支援に回す予定だ。学園に残ったAクラス、Sクラスの生徒達はうちが預かる。魔法が戦闘向きのマローとセレーネ、そして……メルヴェラは、二班と共に五番隊の後方支援に。他の連中は、アステア先生達治療班の手伝いに回ってもらう予定だ」


 淡々と報告をするレイヴンだけど、教え子達を戦いの中に置くのは、内心胸が張り裂ける思いだろう。

 特にメルヴィはレイヴンの一番大切な家族だ。

 【マメプリ】ではメルヴェラが死ぬことをきっかけに闇落ちするほどに、彼女を大切にしている。

 そんな彼女を戦地へと送るのは、苦渋の選択だっただろう。


「わかった。生徒達を頼んだ。アステア先生も、彼らのことを頼みます」

 先生の言葉に、アステア先生はにっこりと笑って頷いた。


「三番隊も、街の守りに着く準備はできています。配置は、一応グレミア側であるパントモルツ領、そしてその先の、中央圏へと続くクロスフォード領をメインに配置するつもりです」


 クロスフォード領……。

 コルト村のことが少しだけ心配だ。

 きっと、大丈夫だと思うけれど……。でも、あそこは一度魔術師が侵入して井戸に空間魔法を使っていたし、何より聖女であるクレアが生まれた村だもの。できれば戦力をもう少し置いておきたいけれど……。


「五番隊もグローリアス学園と城を中心に守りにつく用意はできています。学園に残った騎士科の生徒達にも、比較的後方でジゼル先生の指示に従って戦いに参加するよう指示を出しています」

 ジオルド君……アステル……。

 騎士科である以上、剣で勝負になるんだものね。

 後方とはいえ、危険は大きい。


「……わかった。騎士科の生徒達のことはジゼル先生、よろしくお願いします」

「もちろんです。誰一人として、死なせません」

 鋭い瞳と声が力強い。


「皆、ご苦労。あとは──」

 バタンッ!!

「クロスフォード騎士団長!!」

 先生の言葉を遮って騒々しく部屋の扉を叩き開けたのは、四番隊隊長マーサ・カリスト隊長。


「どうした!!」

「大変です!! グレミア公国が侵攻準備に入った模様です!!」


「っ!?」

 息を切らしながら放たれた言葉に息を呑む。


 ついに……!!


 その時──。


 キラリラリン、キラリラリン──。

「!?」


 私の頭の中にタスカさんの通信機のやたらメルヘンな着信音が大きく響いた。

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