他言無用です


「突然呼び出してしまってごめんなさい。皆にはどうしても話しておきたくて──」


 放課後、私はメルヴィ、クレア、マロー、ラウル、セレーネさん、そして騎士科のアステル、ジオルド君を城へと呼び出した。

 普段グローリアス学園の生徒は近づくことを許されていない王城に、皆あたりを見回しながら落ち着かない様子。


「い、いや、別に良いけどさ、ここ来ても良かったのか?」

 マローが視線をキョロキョロと不審な動きをさせながら顔を強張らせる。

「大丈夫です。家主の私がここに呼んだんですから」

 マイホームというにはあまりにも大きな我が家だけれど、自分の家に友達を呼ぶのは初めてで、私もなんだか緊張する。

 とはいえ、我が家と呼べるほど私もまだこの城の中を全て把握しているわけではないのだけれど。


 ここでなければと思ったのだ。

 あの話をするのならば──。


「なんだぁ? お前らも呼ばれたのか?」

「マロー!?」

「兄貴!? なんでここに……」

 レイヴン、レオンティウス様、それにグレイル隊長とジャン、セスター、フロルさん。

 彼らにも聞いて欲しくて、先生に頼んで連れて来てもらった。


「すみません、皆さん。戦いの準備で忙しいのに。どうしても、ここにいる皆には私の口から先に話しておきたかったので……。とりあえず、どうぞこちらへ」

 私は彼らを城の中へと促した。

 城で働く文官たちが、私に気づいて頭を下げていく。


 皆を引き連れ、入ってすぐの階段を上がり、奥へと進む。

 長い廊下の先の大きな扉を押し開けると、長く赤い絨毯。

 先にあるのは存在感抜群の王座。

 昨日来た時と、そして、記憶の中と同じ。


 ここだ。

 ここで私は、父母を亡くした──。


「先生やレイヴン、レオンティウス様はここにはよく来たことあったんですか?」

「俺は赤ん坊の頃に王と王妃への報告に連れてこられたらしいけど、覚えてないな」

 とレイヴン。

「私は……婚約の顔合わせの時に」

 そうか、あの日──先生もここに来たんだ。


「レオンティウスは何度もここに来たことあるんだろう? お前たち従兄妹だし」

 レイヴンの言葉にレオンティウス様の顔が強張ったのを、私は見逃さなかった。


「え、えぇ……まぁ……」

「レオンティウス様?」

 私がそっと声をかけると、レオンティウス様は眉をへの字に曲げてから誤魔化すように笑った。

「あんたとよくここで“かくれんぼ”したから、勝手知ったる、よ。ここでどこに隠れれば見つからないかも──ね……」

 切なげに伏せられた瞳が揺れる。

 私はそれを気にしながらも改めて王座の前で彼らに向き合う。


「まず、ここで聞いたことは全て、他言無用です」

 その言葉に皆一様に息をのみ、私は続けた。


「王と王妃の件です。マローたちには言ったことがあったので、今回私が姫君だとわかった時疑問に思ったことでしょう。ヒメ・カンザキの父母は既に死んでいる。ならば──そのヒメ・カンザキである姫君の父母も……と」

 私の言葉に友人たちは顔を強張らせた。


「お、おいまさか……」

 事情を知る先生たちは苦々しく俯き、グレイル隊長たち知らない者は驚きに目を見開き膠着する。


「はい。──王と王妃──私の父母は……17年前、私が3歳の時に亡くなりました──」

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