VSマーサ&ガレル
「表へ出やがれ、です」
そう言って私が彼らを引き連れて来たのは騎士団の訓練場。
到着するなりに誰からも見られないようにと隠匿魔法をかけていくレイヴンと先生。
まさか隊長達が小娘一人にぼろ負けする様を他の騎士達に見せるわけにはいかないからだ。
「どうしましょう、誰からいきます?」
私は目の前で戸惑う大人達に笑顔を向けると、グレイル隊長とジャン、セスター、フロルさんが揃って首を横にブンブンと振った。
どうやら私と戦うのは嫌らしい。
「カンザキ。マーサ・カリスト隊長とガレル・ボーロ隊長両名、同時に相手にするといい。時間がもったいない。グレイル達は君の力をよく知っているだろうしな」
君ならいけるだろう、そう付け加えると腕を組んで高みの見物をする気満々の先生に、私は「もちろんです」と答えると、一歩前に足を踏み出した。
目の前には戸惑いの表情で私と対峙するマーサ隊長とガレル隊長。
「仕方がない。王族であるというならば、怪我をせぬ程度にその力を見せてみなされ」
口調は丁寧になったものの、侮りは消え切らないガレル隊長。
普通の学生にしか見えない私は、彼らにとては王族、かもしれないものなのだろう。
「いいえ。お二人の方からいっぺんにかかってきてください。私から一人ずつに向かっていくのは──正直面倒なので」
一人ずつで時間を食うのはもったいないし面倒だ。
そうわざと挑発するように言ってみれば、それが効いたのかガレル隊長はその巨体に見合った大剣を、マーサ隊長は隠密で使うであろう細く短い双剣をするりと構えた。
「怪我をされても、知りません──ぞっ!!」
先に大地を蹴ったのはガレル隊長。
それに続いてマーサ隊長が宙に向かって飛び上がった。
「なるほど。一人は地から、1人は宙から。いい作戦ではあるけれど、残念──」
私は2人がこちらにくるよりも早く愛刀を引き抜くと、それに風魔法を纏わせる。
そして右手で持った刀で正面から振り下ろされた大剣を受け止め、左手は宙から迫り来るマーサ隊長へと向け、指を鉄炮の形にすると、水魔法を使ってそれを指先からぶっ放した。
プシュンプシュンプシュンッ!!
「魔法剣、だと!?」
「くっ、別属性魔法の同時使用!?」
「遅いんですよ、お二人とも。──必殺!! ヒメちゃんオリジナル水鉄砲!!」」
私は指の銃口をマーサ隊長へと向け、水鉄砲を放ち続ける。
プシュンプシュンプシュンッ──!!
威力も強く速さのある水の玉を避けるのに精一杯で、こちらに近づいてくることができない様子のマーサ隊長。
うんうん、さすが隊長。
一応は避けられているようで何より。
その間も右手ではガレル隊長の大剣をいなし続け、彼の顔にも疲労の色が浮かんでいる。
「いや、ネーミングセンス……」
「レイヴン聞こえてますよー!!」
レイヴンのツッコミに言葉を返しながらも腕を止めることはない。
弱い?
いや、弱いわけではない。
強い?
いや、強いわけでもない。
体力や場数がある分、他の騎士よりははるかに強いのだろう。
でも──……。
「そろそろいいですか──……ね!!」
私は一気に風魔法付与の刀でガレル隊長を吹き飛ばすと、同時に自身にも風魔法を纏わせ、地を蹴りふわりと宙を舞った──!!
「っ!!」
「どうも、です」
まさか上がってくるとは思っていなかったのだろう、すぐ目の前に現れた私の顔に表情を凍らせるマーサ隊長。
私は素早く自身の愛刀で彼女の双剣を払い落とすと、片手を大地に向け、土魔法を放った。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
大きな音を立てて大地が割れ、地面を突き破って巨大な緑の植物が顔を出す。何本ものその植物は、マーサ隊長とガレル隊長へと向かい、瞬時に2人を縛り上げた。
「くっ……!!」
「嘘……だろう……?」
信じらない、と言った様子の2人を前に、私は冷笑を浮かべた。
「ほらね? 私の方が、強い」
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