学園旅行〜スパダリ最高か〜
「あれ? レイヴン?」
帰ってきたクレア達の中にいつの間にか合流しているレイヴン。
それに先生も……。
一緒に帰ってきたんだ。
あれ? ラティスさんがいない。
「あの女なら、レイヴン先生が追い払ってくれたわよ」
私が不思議そうにしていたからか、クレアが教えてくれた。
あの女って……。
「追い払ったとは人聞きが悪いな。他のグループのガイドの仕事押し付けてきただけだ」
押し付けたんだ。
来るもの拒まずでプレイボーイのレイヴンがそんなことするなんて、ちょっと意外。
「たまにはまともな事するじゃないか、駄犬」
「そうだろうそうだろう、って誰が駄犬だジオルドこのヤロー!!」
仲がいいなぁ、相変わらず。
もはやじゃれてるようにしか見えないのよね、この2人。
「肉も無事に買えたし、昼食作ろう。何したらいい?」
そうか、マローは料理できないのよね。
普段忘れがちだけどこの人も貴族だったわ。
「ヒメとジオルド様で野菜を切ってくれる? メルヴェラとラウルで食器の準備。私は肉を炒めるから、マローはお湯沸かして。アステルは【カレルの実】が溶けやすくなるよううに粉末状に砕いてて」
クレアがテキパキと分担を言い渡していく。
「ジオルド君、よろしくお願いしますね」
「あぁ、頼む」
ジオルド君なら剣の扱いも上手いし包丁さばきも期待できそう!!
──と、思っていた私がバカだった。
「っ!!」
また切った。
「大丈夫ですか? ジオルド君」
私はもう5枚目の絆創膏をジオルド君の指に貼る。
もう貼る指が無いぞ。
包丁さばきを期待していたジオルド君は、ものっすごい包丁の扱いが下手だった。
誤算だったわ……。
まさか一つも野菜を切り終わる事なく全指がダメになるだなんて……。
「お前、すごいな。こんな難しいことをそんなに素早く……」
「前の世界では自炊してましたしね」
「……苦労したんだな」
憐れむような目で見ないで欲しいな、この貴族様め。
「お前ら、まだ切ってんのか?」
隣の調理場でサンドウィッチを作っていたレイヴンと先生が様子を見にきた。
こんなことならこっちもサンドウィッチみたいな簡単なのにすればよかったな……。
そう思いながらチラリとレイヴン達の出来上がったものを見る。
「!!」
何あれ!!
サラダを切って挟んだだけじゃない……だと!?
マッシュされた卵だってちゃんと挟まってるし、何あれローストビーフ!?
肉を焼いた跡があるってことはこんな短時間で作ったの!?
しかも別でサラダまでちゃんと用意してあるとか……。
え、これ本当にレイヴンと先生で?
私が脳内で大混乱を起こしていると先生がジオルド君の隣に立って
「貸してみろ」
と言ってジオルド君の包丁を取り上げた。
え、先生包丁使えるの!?
純粋培養100%で、生まれながらの大貴族である先生が!?
そう思っているのは私だけでは内容で、クレア達も先生のその行動に釘付けになっている。
私たち皆、そんな疑いの眼差しで見ていたのに……。
トントントントン……。
一定のリズムを刻みながら、玉ねぎを切っていく先生。
え、まじで?
すごすぎる……。
細さも均等だし何より早い……!!
嫁……!!
何この意外性の塊。
カッコ良すぎるでしょ!!
好き……!!
にしても、先生とこうして並んでキッチンに立つだなんて……。
新婚夫婦みたい……!!
「……カンザキ」
「ひゃ!?」
「視線がうるさい」
「なんでこっち見ずに言うんですかぁっ!!」
話しかけられたのは嬉しいけど!!
視線をください!!
「はぁ……できたぞ。あとは自分たちでできるな。レイヴン、食事をして見回りに行くぞ」
「おう!! いやー、お前がいてくれてよかったわ!! 俺1人だったらジオルドの二の舞だったからな!!」
「はぁ……。片付けは任せる」
そんな話をしながら、先生は自分たちのサンドウィッチが乗った皿とサラダを持ってからテントの方へと歩いて行った。
……無理。
先生がスパダリすぎて無理。
私は無事、昇天した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます