私と彼の1週間ー4日目ー素直な二人でー
「ちょっ!! シリル君!? 痛いですってば!!」
引きずるようにして連れてこられたのは、夏の若葉生い茂る聖域。
キラキラとした水晶が太陽の光に反射し、より一層キラキラと光り輝いてとても眩しい。
「っ、すまない……!!」
我にかえったようにパッと手を離し私に向かって謝るシリル君。
「いきなりどうしたんですか? エリーゼは?」
「……あれは置いてきた。私が一緒に食べると約束したのは君だ。エリーゼじゃない」
無表情ながら真剣に私の目を見て続けるシリル君から、目を離すことができない。
「……君に嫌な思いをさせてしまったことは謝る。すまなかった」
言いながら綺麗に頭を下げるシリル君。
心配で追いかけてきてくれたの?
その事実に胸がキュッと締め付けられ、心がぽかぽかと暖かくなる。
私、チョロいな。
自分でもそう思うけど、仕方ない。
だって好きなんだもん。
未だ頭を上げようとしない生真面目なシリル君に、私はふにゃりと笑ってから「顔をあげてください」と促した。
ゆっくりと顔をあげ、アイスブルーの瞳が浮上する。
少し伏せられた瞳は、申し訳なさそうにしたまま私を映さない。
なんだこれ……かわいいな。
「シリル君。私も、あのまま逃げてしまってごめんなさい。その……。……少し、悲しくなったんです」
ぽろりと自然にこぼれ落ちていく言の葉に、シリル君は静かに耳を傾けてくれた。
「シリル君は私のものではないのに、なぜか私の居場所を取られたような気がして……。勝手に悲しくなって、勝手に嫉妬して、勝手に怒って……、それで、逃げてしまいました。ごめんなさい」
今は同い年だからなのかなんなのか、自然と遠慮なく素直に気持ちを打ち明けられる。
自分の負の感情も全て、シリル君には言えてしまうことに自分でも驚きながら、私は彼の両手を取った。
ぴくりと小さく反応を示した両手は、それでも逃げることなく私の手に握られたまま、シリル君と視線が交わる。
そして私の大好きな彼の冬色の瞳が大きく揺れた。
「仲直り、してくれますか?」
私が彼の顔を覗き込みながらたずねると、頬を染めふいっと視線を横に逸らしシリル君が小さく頷いた。
「そもそも、喧嘩とかじゃ……ない」
その可愛らしい呟きに私はふにゃりと笑顔を返す。
「そうだ、シリル君、お昼は?」
「まだに決まってるだろう。すぐに君を追いかけてきたんだから」
「じゃ、ここで食べちゃいましょ」
「は?」
私は彼の手を引いて大きな木の下まで行くと、二人並んで木の根元へと腰をおろした。
夏風に気気が揺れて、それに合わせて木陰も揺らめく。
じんわりとした暑さも、涼風の通るこの木陰では全く気にならない。
「はい、シリル君」
私は腕にかけていた紙袋からサンドウィッチが入ったケースを一つ取り出し、彼に手渡す。
「それは君のだろう。ちゃんと食べろ」
「あぁ、それはですね……」
私は苦笑いを浮かべながら、紙袋の中から先ほどシリル君に手渡したものと同じケースを取り出す。
ケースの中にはどちらも美味しそうな色をした具材で彩られたサンドウィッチがきちんと揃って並んでいる。
「学園の意思は、ここまで見抜いていたんですかねぇ。ほら、水筒まで2つ」
そう言って袋の底に並んで入っている水筒を見せると、シリル君が「はぁー……」と深く息をつき私を見て眉を下げ笑った。
「まったく、学園の意思には頭が上がらないな」
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