そして私は笑顔で嘘をつく
今が朝なのか夜なのかわからない。
ただ自然と目が覚めた。
暗く冷たい牢獄の中。
「っ……」
痛めつけられた全身がジクジクと痛み、私は顔を歪める。
血は止まったものの、痛みは眠っても取れてはくれない。
「ヒメ?」
目元を擦りながら、クレアが声をかける。
「モミ子、おはようございます。」
「だからモミ子じゃないって何回言えば……それより、キズ、痛むの?」
「治癒魔法のおかげで痛みはないですよ」
私は安心させるように、笑顔で嘘をつく。
治癒魔法の効かない私には、今は自分の演技力と忍耐力だけが頼りだ。
何度か試したが、この牢は昨日縛られた縄と同じく、魔力遮断の魔法がかけられているようだ。
攻撃系の魔法は全て無効になった。
無害魔法認識されたであろう折り鶴が飛んで行ってくれたことは不幸中の幸いだ。
あとは無事に、あの人の元にたどり着いてくれたら……。
「おや、起きているじゃないか、お嬢さん方」
蛇のように絡みつく、低く粘っこい声が牢に響き、眉を顰める。
「……おはようございます」
「ほぉ、まだ元気があるようだ。さぁ、今日はどうやって躾けてあげようか?」
「お手柔らかに、です」
「ふん、可愛くないことを。まぁいい。それも今のうちだ」
男が指を動かすと魔力遮断の縄がひとりでに私を縛り上げ、私は男に引きずられるようにして牢から出された。
「ヒメ!!」
牢の格子を両手で掴みクレアが叫ぶ。
「大丈夫です。いい子にしていてくださいね、モミ子」
──そして今日の“しつけ”が始まった。
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