第20話 茶会の行方③
「それで、ジョン。その侍従の見た目はどうでした? それと、侍女たちが帰ったのは侍従と入れ替わりになる形だったのでは?」
ゼノンの質問に、ジョンはうーんと
「お、おう。えーと確か……若くて、わりと背は高かったかな。でも細身だから兵士には向いてなさそうだったな。髪と目はどっちも赤で、あんまし特徴ねえ顔だったんだよなぁ……。」
しん、とその場が静まり返った。
沈黙を破ったのは、アランに対する優しさをかなぐり捨てたラウラだ。
「えー、それってそのまんまさっきの襲撃犯じゃないですか?」
ラウラの指摘にうんうんとエドワードも頷く。
「どう聞いてもさっきの犯人にそっくりな見た目だよねぇ? もしかしてはじめっからあの犯人は、ラティーシャ公爵子息が狙いだったんじゃないですかぁ?」
明らかにアランを馬鹿にしたエドワードの態度に、慌てたようにロベルトが彼の袖をひく。
「で、でででも、まだそうと決まったわけじゃないし……、」
何せ相手は公爵家。あまり見下した態度をとってはまずいと言いたいのだろう。
(さすがロベルト、そのあたりのことはよく気がつくわね。……まあ、もうゼノンもラウラもちっともそんなこと気にしてなさそうだけど。)
相手がアランでは敬意を持ち続けるのも難しいものがある。
彼らのようすを見ながら、難しい表情でカインが眉間をおさえた。
「……とはいえ、ラティーシャ公爵家が何らかの関わりがあることは確かだろうな。」
(十中八九、ジョンの見た侍従は襲撃犯でしょうしね。)
お茶会の参加者やゼノンたちからむけられる眼差しに耐えかねたのか、椅子から勢いよく立ち上がったアランは大声で
「ええい、貴様ら、言いがかりをつけるのもいい加減にしろ!! 俺様は被害者だぞ!?」
そのまま扉にむかって足音も荒く歩き始めるアランに、優雅に小首をかしげたゼノンが問うた。
「おや、どちらへ?」
「決まってるだろ! こんなところにいつまでもいられるか!! 俺様は帰らせてもらう!!」
くるりとこちらを振り向き、顔を真っ赤に染めて叫んだアランの肩を、ぽんぽんとジョンが優しく叩いた。
「あー、そりゃムリだな。」
「はぁ!? ムリって何故だ!?」
自分の意見が通ると思って疑わないアランにジョンは現実を告げた。
「だってお前さんの乗って来た馬車、もう帰ってるぜ?」
……と。
「帰った!? 帰っただと!? ありえん、この俺様がいないのに、なぜ勝手に馬車が出たんだ!?」
かっと脂肪に埋もれた目を見開き、わなわなと震えるアランに、ジョンは肩をすくめた。
「いやさ、侍従と入れ替わりに侍女たちは帰ったって言ったろ? 何か、門番が身分を証明してくれって侍従に言ってるところにちょうど侍女さんたちが来て証言したんだよ。」
で、そのまんま帰った、と告げたジョンに身を乗り出したアランが食ってかかる。
「俺様の世話が必要だろうが!」
「あ、それ。あとはこの侍従がアラン様のお世話するからって言ってそのまんま馬車に乗ってさっさと帰っちまったぜ?」
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