たからばこ

顎歌

誇りたち

埃まみれの宝箱。


久々に、開けた。


ごちゃごちゃに入ったキーホルダーや小さな時の写真。


幼稚な自分が無邪気に友達と笑い合っていた。


幼稚だったから、何にも気付かないで

笑っていられたんだろうな。


初恋のあの子は、元気にしているだろうか?


もう、ほとんど連絡を取らなくなったアイツは、今も笑っているだろうか?


忘れていたくせにこんな時だけ愛おしくなってしまうんだ。


今の自分を見たら、この写真の中の自分は

絶望するだろうな。


過去に逃げる哀れな自分を嫌いになった。


でも、汚れた目だから分かる。


ここに詰まっている物は、埃を被っているけれど、ちゃんとまだ、あの頃にあった。


友達からの手紙を大切に閉まっていた

あの頃の自分だけどこかへ行ってしまった。


何でこんなに苦しいんだろう。


何でこんなにあの頃が愛おしいんだろう。


あの頃は、今が輝いて見えたのに。


なぜ、ちゃんと見ていてくれた

友達に気付かなかったんだろう。



アイツと撮った写真。


初恋のあの子の手紙。


記念に買ったキーホルダー。


届きそうだった青空。


全部が愛おしくて溢れてしまうんだよ。


なんで、こんな号哭ばかり出てくるんだよ。


笑っちゃうぜ。



宝箱の中に、一滴の花が咲いたのも

気付かないまま、その誇りに蓋を閉じた。

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たからばこ 顎歌 @agoro

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