#19 ふたりの夜明け
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薬物入りのコーラを飲んで意識不明になったベス、
搬送先の病院で目をさますと、かたわらにはエドが……
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朝日がカーテンの隙間から差し込んできた。
「ここは?」
病院のベッドで目を覚ましたべスは、かたわらで椅子に座りこんだまま眠っているエドに気づくと、自分がここにいるわけを思い出そうとした。
「エド、あなたが、助けてくれたのね……」
はっとしてエドが体を起こした。
「ああ、よかった!」彼の顔がくしゃくしゃになっている。
「わたし、あれから、気を失って……?」
「しゃべらなくていいよ。まだ、少し眠ったほうがいい」
「いま、何時なの?」
「ん? もうすぐ夜明けがくるね。きみは一晩じゅう眠っていたんだ。ドクターにきちんと処置してもらったから、心配しなくていい。薬の量が少なくて幸いだったよ」
「何か飲まされたのね?」
「そうだよ、あのコーラにはいっていたんだ。それにぼくに出されたコーヒーにもね……。ああ、ハロルドのやつは逮捕された。もう安心していい」
「じゃあ、事件は解決?」
「まだまだ取調べはこれからだけど、いずれ悪事は暴かれるよ。どうやら盗難された絵を売りさばく一味だったらしい。仲間もいたようで、いま頃はそいつらも逮捕されているはずだ。警察の話じゃ、彼はギャンブルで借金がかさんだあげく悪事に手を染めたようだ。なまじ絵の才能があったから、ふだんは贋作づくりに忙しかったらしい」
「じゃあ、本物の美は守られたのね……よかった」
「よかったっていうけど……きみは無謀すぎるよ!」
「ごめんなさい、エド」
思いもかけぬ素直なべスの言葉に、エドは驚いた。
「きみに何かあったら、ぼくは、どうしていいかわからなかったよ!」
「本当にごめんなさい。わたし……」
「もう何も言わなくていいから、とにかく今はもう少し眠るんだ。おやすみ、べス」
そう言うとエドはエリザベスの額にキスをした。すると彼女がびっくりしたような顔をしたので、思わずエドは謝った。
「ごめん。つい……」
「ううん、違うの……うれしいのよ」
「え?」
「キスしてくれるなんて思ってなかったから」
「怒ったんじゃないんだね?」
「まさか、うれしいのよ。あなたがそばにいてくれたから……」
「ぼくのほうこそ、きみの力になれたんならこんなにうれしいことはないよ」
ふたりはじっと見つめあった。
「エド……わたし……」
「黙って……ぼくに先に言わせて。初めて会ったときから、きみのことがずっと忘れられなかった」瞳に熱い思いがこもっている。「きみを愛してしまったんだ」
「ああ、エド……どうかお願い、もう一度キスして」
エドは顔を輝かせて、べスの額にキスしようとした。すると彼女がゆっくり首を振った。
「ちがうわ……額じゃなくて」そういって彼女は目を閉じた。
エドは胸を高鳴らせて彼女の唇にキスをした。
べスの唇が熱く応えた。
ふたりの唇はしばらく重ねあったままだった。
夜がすっかり明けようとしていた。
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