第112話 ティナ様のことをじっと見てたから
翌日から、アレンが王都に戻るまでの間、時間が許す限り私が馬に乗れるようになるための練習とエディの勉強を行うことになった。
「おはようございます」
「おはよう、エディ。毎朝こんなに早くに起きるんだ」
エディ
「こいつらの朝は早いので、それに合わせてやってます。アレン様は馬に乗れるようになられてますので、今日はわざわざお越し頂かなくてもよかったのですが……」
「ティナと一緒だからね。早起きくらいなんてことないよ」
アレンは、来た時は大あくびをしていたけど、今はしっかりと覚醒しているようだ。
「さあ、お二人とも馬が待ってますよ、エディにどうしたらいいか聞いて下さい」
アレンがいるので、当然ルーカスさんも一緒だ。朝から大変ですねって声かけたら、『仕事ですからと言いたいところですが、アレン様が王家を離れられたらめったに会うこともできなくなってしまいます。せっかくファビアンからこの役目を勝ち取ったのですから、一緒にいれる機会はできるだけ逃したくないですね』と言っていた。ちなみにファビアンさんは、アレンが王都からメルギルに引っ越すときに護衛としてついてくるみたい。ルーカスさんの方は往復でファビアンさんの方は片道だから、どちらを誰がやるかで賭けをやったんだって。二人とも一緒に来れたらよかったんだろうけど、王家の守りが手薄になったら問題だもんね。
ということで、私とアレンはエディから手順を聞いて馬房の掃除を始めた。
「馬は誰が掃除しているかちゃんと見ています。手抜きしたら言うこと聞いてくれないかもしれませんよ」
もちろん手抜きなんてするつもりはないけど、初めてやることだからうまくいかないことの方が多い。
そんな時はエディとルーカスさんが教えてくれて、何とか馬房の掃除を終わらせることができた。
「あとは、新しい
「よかった、これで午後の練習の時に言うことを聞いてくれたらいいんだけど……」
「きっと大丈夫です。こいつら掃除しているティナ様のことをじっと見てたから」
馬房に入った馬たちはこちらを向いてくれないけど大丈夫かな。気に入らないってことは無いよね?
「まあ、午後になったらわかるよ。それじゃエディ、朝食が終わったらボクの部屋に来て、早速勉強を始めよう」
「わ、わかりました。よろしくお願いします!」
朝食の後、屋敷の手伝いを頼まれたユッテと分かれてアレンの部屋へと向かう。アレンの部屋は同じ二階にあって、私の部屋よりも大きかった。
コンコン!
「ティナ様いらっしゃい。エディ君はまだですよ」
ルーカスさんがアレンの部屋に招き入れてくれた。
「ルーカスさん、ごめんなさい。アレンに付き合っていたら、お酒を買いに行く暇がないですよね?」
ルーカスさんは、メルギルで作られているあの美味しいお酒を買って帰るのを楽しみにしていたんだよね。
「馬房から帰るときにエディ君から聞いたのですが、何でも明日の午後は別の仕事があるとかで、馬の練習が休みになりました。その時にアレン様と一緒に街に下りようかと思っております」
ほぉー、それはいいことを聞いた。
馬の練習が無いのなら私の予定もないということだ。お屋敷の手伝いをしてもいいんだけど、私がうろうろとしていたらみんな気を使って仕事どころじゃなくなるんだよね……
「お邪魔じゃなかったら、私もご一緒していいでしょうか?」
「ですって、アレン様、
ルーカスさんは、紙を持ってソファーに座ろうとしているアレンに声をかけた。
「もちろん! こちらからティナを誘おうと思っていたんだ。大歓迎だよ!」
よかった。アレンがこちらにいるうちに、街の様子を見てみたいと思っていたんだ。
私はルーカスさんに『明日よろしくお願いします』と告げ、ソファーへと向かう。
「この部屋にはソファーがあるんだね」
「ティナの部屋にはないの?」
「私の部屋には置くスペースがないかな」
たぶんこの部屋はお客様用なんだと思う。ベッドも二つあるし、部屋自体もかなり広い。
「それじゃ、ボクが戻った後はティナの部屋で勉強を教えるわけにはいかないね」
一応机はあるけど、それ以前にエディは私の部屋に入れない。
「食堂を借りれるか聞いてみるよ」
「そうだね、朝食のあとなら邪魔にならないだろうしね」
コンコン!
「アレン様、エディ君が来たようです」
さてと、勉強の時間だ。ところで、何をどうやって教えたらいいんだろう……
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