第76話 経験者のティナとエリスが最適だな
「確かにティナもアレン様と同じように長い眠りについていた。目覚めた後のことについては、経験者のティナとエリスが最適だな」
お父さんもお母さんも、私とエリスが多くの時間をアレンの部屋で過ごしていることに理解を示してくれたようだ。
「そうなのです。おじさま、おばさま。アレン様は、毎日苦しい訓練をティナお姉さまの助けを借りながら続けられていると聞いております。二人はきっとその中で愛を
フリーデが目をうるうるさせて話しているけど、それってこの前一緒に読んだ王子様と騎士の女の子の恋愛小説の中の一文だよね。主人公とヒロインの名前を私たちに変えているけど。
「ティナのことは分かったわ、次はエリスね」
「わ、私ですか? ……私は、クライブ様がエルマー殿下の跡を継ごうと頑張っておられる姿を間近で拝見していて……自分自身が、どうしてこういう気持ちになるのかわからなくて……え、ちょっと、皆様。そのお顔は……うう、恥ずかしいです」
エリスの恥じらう姿ってレアだからね。みんなでニヤニヤと眺めてしまっていたよ。
「二人の気持ちはよくわかったが……コンラート、うちの家でアレン様を受け入れることができただろうか?」
「男爵家のままではダメだろうね」
「やはりそうか、それならティナには悪いがこの話は……」
「まあ、待て。お前の答え次第ではその点は何とかなる」
そう言って、コンラートさんはお父さんに爵位の件と領地移転の件を話した。
「そうか……爵位を頂けるのは嬉しいが、カチヤを離れないといけないのがな」
「ああ、今回の件でカチヤの重要性が増してしまったから、あの町はこれからは王家で直接管理することになる」
「私の手でと言いたいが、一度占領されているからそういうわけにもいかないよな」
コンラートさんは頷く。それに、もう一度カチヤが襲われたら、お父さんたちの命もどうなるかわからない。カチヤはいいところだったけど、死んでしまったら元も子もないよ。
「それでカチヤを離れた後、私たちはどこに行ったらいいんだ?」
「それはもうティナとアレン様が考えてくれているよ」
「ティナがアレン様と? ……そうだな、私たちよりも二人とその子供たちの方が長く生活するからその方がいいだろう」
こ、子供って……気が早すぎだよ。
私は『孫は何人見せてくれるんだい』と言うお父さんたちの言葉をはぐらかしながら、王様から東部と南部のどちらがいいか聞かれるけど、その中で南部の領地を選ぶように勧めた。
「わかった、かわいい孫のためだ。ティナの言う通りにしよう。それで、私はこれからどうしたらいいんだい?」
「ハーゲン、お前には明日、
なるほど、王様への返事はその場でしないといけないから、内示は明日行われるんだね。謁見の日よりもお父さんたちが早く着いたのはこのためだったんだ。そして、新しい爵位の授与式は別の日に改めてやるんだって、一か月ぐらい先だろうってコンラートさんが言っていた。ただ、その時にはカペル家主催のパーティーを王都で開かないといけないらしくて、そこでは当然のように舞踏会が開かれる……うう、それまでに踊れるようになっているか心配だよ。
それよりも、まずは明日だ。お父さんとお母さんから、アレンをカペル家の婿として迎い入れていいという許しをもらえたので、王様にクライブとエリスのことを話すことができる。もし王様が、明後日の謁見の時に私とクライブの婚姻のことをお父さんに話すつもりなら、明日のうちに王様とエルマー殿下にクライブの本当の気持ちを伝えないといけないし、エリスも王妃としての素養も持ち合わせていることを話して、私を王家に引き入れたいという考えを変えてもらわないといけない。
もちろんそのための準備はしてきた。ビアンカ王妃にもクラーラ皇太子妃にも、事情を話して協力してもらう約束は取り付けてある。二人とも、エリスの仕事ぶりと博識さは知っているからね、最初は驚かれたけど、すぐに分かってくれたよ。
それに、エリザベートちゃんを通じてギーセン伯爵にも顔を繋いでいる。準備ができたらすぐにでも、コンラートさんと一緒にエリスを養子にしてもらうお願いに行く予定だ。
だから、あとは王様とエルマー殿下に直訴するだけ。
さあ、明日は勝負の日だ。でも、今日はお父さんとお母さんに甘えちゃおう。カチヤを開放してから二か月ぶりに一緒にいることができるからね。そうだ、今日はお母さんと一緒に温泉に入っちゃおうかな。
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