カチヤ開放編
第12話 私は構いませんよ。いくらでもこの体を使ってください
馬車は暗くなった道を明かりを灯しながら進んでいく。
「ティナ様、夜に馬車で移動するのは
途中で馬を休ませる必要があるから、ずっと走るわけにはいかないみたいだけど、次の町まではまとまった休憩はとれないって言っていた。
(ユキちゃん、少しでも眠ったら)
(そうなんだけど……)
ハーゲンさんとアメリーさん……ううん、お父さんとお母さんを残しているから、心配で眠れそうにないよ。
ん、そういえば、
(あんた、昼間の路地で相手の男に乗り移っていたでしょう。あれって、いつからできるようになっていたの?)
(うーん、わかんない。でも、あの時はできると思ってやったら、あの男の人を思い通りに動かすことができたよ)
ぶっつけ本番だったんだ。それにしても人に乗り移るとか、ほんとにお化けじみてきたな。
(あんた、絶対に私には乗り移らないでよね)
(もちろん勝手にはやらないよ!)
「エリスも気を付けてね。こいつ人に乗り移ることができるみたいだから」
「守り神様ですか? ふふふ、私は構いませんよ。それがティナ様を守るために必要な事なら、いくらでもこの体を使ってください」
「ちょっ! そんなこと言ったら」
(いいの!)
(ダメ! あんたは男なんでしょ。女の子に入り込もうだなんて考えること自体許されないんだから!)
(はーい)
「よかった、ティナ様が落ち込まれていたらどうしようかと思っていました」
「ありがとうエリス。私は泣いているわけにはいかないの、お父さんもお母さんも自分の務めを果たすために頑張っているんだからね。でも、エリスは心配じゃないの?」
「うちの家族ですか?」
「うん」
「たぶん、大丈夫ですよ。うちの家族の逃げ足は超一流なんですよ」
「それじゃ、もう町を離れているのかな」
「私たちの家は情報を扱っていますから、こういう時こそ最後まで現地に残ると思います。そうしないといざというときに何もできなくなりますからね」
「最後までって……大丈夫なの?」
「だから、逃げ足は速いんですよ」
やっぱり、エリスの家族は忍者さんみたいだな。
(ユキちゃん、忍術教えてもらえるかもよ)
(そうだね……って、私の考え読むんじゃないわよ!)
(だってー、聞いて欲しそうだったから)
普段こいつは、私が伝えたいと思ったことにしか反応してこないんだけど、私にそれができていないということは……やっぱり自分の気持ちは隠せないな。
よし!
「ねえ、エリス。まだ眠れそうにないんだけど、よかったら話に付き合ってくれる。これから私に何ができるか知りたいの」
「はい! 喜んで!」
不安なのは自分に何ができるかわからないから。お父さんとお母さんが頑張っているんだから、私にも何か手伝えることがあるはずだ。
しばらくの間、私はエリスとデュークと一緒に今後のことについて話し合った。
あ、デュークというのは私に憑りついているあいつのことで、エリスがお名前がないと呼びにくいですよって言うから、私とエリスでいくつか候補を出してあいつにどの名前がいいか選ばせたらこれを選んだ。
なんで選んだのって聞いたら、ボクっぽいでしょって言うけど、姿が見えなんだから似合っているのかどうかわからないだよね。
それはともかく、エリスが『やっぱりそのお名前を選ばれましたか。デュークという名前はこの国の守護神様と同じなんですよ。守り神様にぴったりです!』って言うから、あいつが図に乗って仕方がなかったよ。
まあ、名前があった方が呼びやすいのは確かだからね、ちょっとのことは大目に見てやろう。
翌朝の早朝についた街道沿いの町は、情報屋からの知らせを受けていたようで早くも教皇国への準備を行っていた。
「騒がしいかもしれませんが、我が家でお休みください」
この町の代官さんの家で少しの間休ませてもらった私たちは、昼過ぎに王都へ向かって出発し、それから二日後王都へ到着した。
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