第10話 お兄さん

ある日の放課後。



「カッコイイ♪」

「本当♪」

「きゃあ♪こっち向いた♪」



女子生徒達が騒ぐ。




「ヤケに騒々しいな」と、零次。


「そうだね?」と、私。



私達は、正門を出る。




「あっ!原石ちゃん、み〜っつけ♪」



私に抱きつく男の人。



「きゃあ!や、辞めて下さい!」




バコッ


私に抱きついた相手が打たれた。




「人の女に馴れ馴れしく触んなっ!」




ドキッ

零次の一言に胸が大きく跳ねる。



「お前は〜、実の兄の頭を打つか~?」

「知るか!」



私は二人を交互に何度も見る。



「…お…お兄…さん…?」




《弟もカッコ良ければ兄もカッコイイわけだ》




「何の用だ!?」

「彼女、貸して♪」

「ここ最近、そればっか!口説いんだよ!」

「良いじゃん!」


「良くねーよ!」


「ねえ、何?どうしたの?話しが見えないんだけど?私に用事?」 


「お前は気にしなくて良い!」

「いや…気になるじゃん!」

「彼女、物分かりいいね〜♪」


「絶対に駄目だ!帰るぞ!」




グイッと私の手を掴み去り始める。



「零次く〜ん♪」

「キモい!辞めろ!クソ兄貴!」



私は2人の兄弟喧嘩のような騒々しいやり取りを見ながら、私達3人は帰る。




兄・瑞 真那渡(みずき まなと)。20歳。


モデルや芸能関係の仕事をしている。



弟と同じで無邪気系だけど、チャラついてる感じの人だ。


お調子者に近い。


そんな兄弟は余程目立っているのだろう?


見る人、すれ違う人が振り返るのだった。。





ある日の放課後。



「ねえ、零次」

「何?」

「どうして私をお兄さんから遠ざけるの?」


「当たり前の事だ!お前も知ってるだろう?兄貴の仕事」


「それは…」


「モデルだとか、芸能関係とか…兄貴は業界で働いている。確かに売れれば、大儲けだ。まあ、言い方悪いけど…。でも、先輩、後輩の上下関係は厳しいし、マスコミも、ろくな人間いないんだ!異性関係とか全部曝(さら)け出される!下手すりゃ、ありもしない事も書かれる!」



「…それは…そうだろうけど…」


「俺は嫌だけど?まあ、お前が興味あるとかなら業界入りすれば?」


「私は…別に…」


「…もし…業界入りするとなれば、多分、俺は、お前の事信じたくても信じられない部分が出てくると思う。売れさせる為なら色々な手使われるし。しまいには、干されるかもな」


「…あんたが言うとリアルに聞こえるんだけど…」


「それだけ業界は厳しい場所。新しい奴は次々に現れる。売れる為なら自分自身を色々犠牲にする。それが業界に関係なく今の世の中だと俺は思うけど?お金の為ならな」



「………………」



「でも、これだけは分かって欲しい。俺の本音だ」


「えっ…?」




グイッと後頭部を押すとキスをされた。


至近距離にある零次の顔にドキドキと加速する。



「お前の事は、誰にも触れさせたくねーし、俺だけの女でいて欲しいんだ」


「…零次…」


「それだけは…分かって欲しい」


「…うん…」





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