第9話 正体 〜二人の秘密バレる瞬間(とき)

それから、数ヶ月が過ぎた、ある日の事だった。

ふと、一瞬、眼鏡を外した瞬間、事件は起きた。



「おいっ!あの子!」

「マジかよ!同じ学校だったのかよ!」

「つーか、しかもアイツ比羅瀬じゃん!」

「俺等、アイツとヤったって事かよ!」

「うわ〜…マジふざけんなし!騙された!」

「2つの顔持ってたって事?魔性の女じゃん!」



身体の関係を持っていた二人に正体を見られるのだった





次の日、いつも通り登校した私。



パラパラ…


上から紙が降って来る。


私は紙を手に取る。



「…なっ…!…嘘…!…これ…」



私は目を疑った。


その紙には、重大発表と記されていた。


重大ニュースの速報のように、まるで大スクープの週刊誌と思わせるかのような記事だった。



『比羅瀬 友花は魔性の女!?俺達は騙されていた!』




そう書いてある紙と共に、私の写真が貼ってあり色々と書いてあった。


写真も一部合成してあるも、嘘のない事実なコメント内容に反論は出来ない。



私は冷たい視線が痛い程、体中に刺さり、陰口がコソコソと嫌でも聞こえてくる。


一気に学校中を敵に回した瞬間だった。


だけど、ここで逃げるわけにはいかず、紙をビリビリと引き千切るかのように破り捨てた。


チクチク刺さる視線を感じながら教室へと向かう。


勿論、教室までの間、視線は痛い程刺さっていた。


教室に入ると今まで以上の孤独感を感じていた。




一方。


俺は屋上にいた。




「良い根性してるね」


「あっ!瑞!だって騙されていたのも同然じゃん!アイツ、もう1つの顔持ってたんだぜ?」


「でも満足させて貰ったんでしょう?彼女とHしちゃったんでしょう?」


「…それは…」


「でも、“それ”と“これ”とは違うし!騙していたの事実じゃん!」



グイッと二人の胸倉を掴む。



「そうだとしても、やって良い事といけない事ぐらいあんだろ!?」


「み、瑞?」

「何か…瑞、怒ってる?」


「怒りたくもなるだろっ!?つーか…今の俺も似たようなご身分でさ~…バラ巻いた紙、全て拾えよっ!回収しろっ!でないとタダじゃ済ませねーぞ!」


「そんな事無理に…」



ガシャン


二人を金網に押し付ける。



「俺の女の命掛かってんだよ…!何かあったら責任取れんのかっ!?」


「えっ…?」

「俺の女…?」

「つまり…それって…」


「わりぃかよ!?ご察しの通り…比羅瀬 友花は俺の女だけど!?紙、全部回収しねーと…どうなるかマジ知らねーぞ!分かったかっ!」


「いや…」


「へぇー…じゃあ…街中、裸で歩いてもらって良いか?お前ら。それとも裸で、宙吊りされたいか?裸でスカイダイビングでもやる?何でも良いけど?」


「いやいやいや…」


「流石に…それは…しかも裸って…」


「それぐらいの覚悟が必要なくらい彼女にとっては辛い過去あんだよ!何も知らねーくせに!さあ、どうする?」


「わ、分かった!」

「か、回収するから!」


「全部回収したら俺の所に持って来い!いいなっ!」


「え、ええっ!?」


「じゃあ裸で…」


「わ、分かった!」



二人を離すと二人は足早に去った。





ガシャン


金網を強く殴るようにする。




「全く…!ふざけんなよっ!」



しかし、ゆっくりもしてられない。


アイツは学校に登校して教室に行っている頃ではないか?



俺は屋上を後に教室へと急いだ。




私が教室に入ると、すぐに男子生徒が言ってきた。




「信じらんねーー。もう1つの顔で男誑(たぶら)かしてたんだ!」


「真面目な顔して実は男とヤってて経験ありってわけだ」


「ねえ、ねえ、俺達も相手してよ」

「満足させてくれんだろ?」



「………………」



「ここで制服脱いで俺達に、もう一人の姿で相手してくんない?」


「どんな色気で俺達を興奮させてくれんの?比羅瀬」



「………………」



私は教室を出ようとしたが、道を塞がれた。



「別に逃げなくても良いじゃん!」

「そうそう。初めてじゃないんだし」



グイッと肩を抱き寄せられ眼鏡を外され投げ捨てられると踏み潰された。



「………………」



ドンッと壁に押し付けられた。



「や、辞め…は、離し…」


「どんだけの男騙してきたんだよ?比羅瀬」

「相当なやり手?」

「マジ、眼鏡掛けてる時と雰囲気、全然違うんだけど?」



「………………」



スッと私を押さえていた男子が離れた。



「場所考えた方が良いよ」

「瑞!」



「………………」



「つーか、邪魔!そこ退けよ!」


「退くわけないじゃん!教室は勉強する所でしょう?」


「そんなのはどうだって良いんだよ!比羅瀬が騙し…」



グイッと胸倉を摑んだ。



「な、何すんだよ!つーか、何!?離せっ!」


「騙してたから何?あー、そうかもしれないね?だからって……正体バレたら急変かよ!」



ドキン…

もう一人の零次が、お出ましだ。



「そうもなるっしょ?騙してたんだぜ?」


「…騙してたねぇ〜…つーかさ、それ彼女だけじゃないんだよねぇ〜」


「は?いやいや、比羅瀬以外いないっしょ?」


「そうそう。コイツ真面目な素振り見せてて騙してたのも同然だぜ?」



ドンッと壁に一人の男子生徒を押し付ける零次の姿。



「俺も同じ類でさ?」

「えっ…?」


「つーかさ、気付けよ!みんなが知ってる俺、今、違う事くらい」


「いや…お前は容姿、そのままじゃん!でも、比羅瀬は容姿から違……」




ドンッ

壁を思い切り殴る零次の姿。




「眼鏡掛けてるか、掛けてないかの違いだろ?」


「いや…変わり過ぎだろ?別人じゃん!」


「女は変わんだよ!恋愛して綺麗になっていくのが当たり前だろ?コイツも色々あったんだよ!何も知らねーくせに、比羅瀬 友花を変な目で見んのは辞めろ!」



「………………」



「納得いかないね。色々な男を、この顔で騙してたわけだし!学校の比羅瀬を知らないからヤれるんだろ!?」


「あーそうかよ…つまりそれって顔だけで人選んでるってわけだ。じゃあさ、お前のメチャクチャタイプな女に告白されたら?しかも自分も好きだった。しかも本気(マジ)恋の相手なら?」


「そりゃ嬉しいに決まってんじゃん!」


「じゃあ、その女が実は遊び人だったら?そんな事知らない自分がいたら?」


「えっ…?」




俺は、バラ巻かれた紙を手に取る。



「ここに書いてあるのは確かに事実だよ!でもな、仕方なかったんだよ!本気で好きだった男に告って、相手から本気じゃなかったなんて言われてみろよ!関係持った直後、その言われ様だ!」



「零次…辞め…」



「言わなきゃ、伝わんねーだろ!」


「…零次…」



グイッと私の手を掴み手を繋いだ状態で零次は話を続ける。




「俺は痛い程、分かったよ!コイツの気持ちがな!好きだから告白してきては、関係持った直後、本彼いたとか本彼女(カノ)いたなんて、カッコイイから、美人だから、可愛いからって言い寄ってくる。俺達は、そう利用される為に生まれてきたんじゃねーんだよっ!」



「………………」



「俺もコイツもプライベートを分けてきた身分なんだよ!異性を信じられない俺達だったんだからな!イジメるなら俺も一緒だ!騙していたのは俺も変わんねーからな!無邪気にみんなに良い顔してモテていた俺と、今、みんなの前にいる、もう一人の俺。どっちも俺なんだからな!」



「…零次…」



「クラス委員が騙してたって…有り得なくね?」


「俺達、今日まで騙されてたって事だよな?」




「………………」



「二人共事情あったんでしょう?」


「そ、そうだよ!比羅瀬さんも、瑞君も傷付けられたから、そうせざるを得なかったって事なんだよね?」


「おい、おい!お前ら騙されてた奴等に肩持つわけ?」


「だって、好きな人から裏切られたって事でしょう?本気に好きになった相手が実は、そういう相手なんて知らなくて付き合って関係持ったら豹変って…酷いと思う」


「女の子なら尚更、気付けられたら恋愛したくなくなるよ。男の子は、関係持つのは簡単だよ!だけど…女の子は妊娠とかして責任取ってくれないとかなったら…」



クラス中に色々な意見が飛び交う。



「男女問わず騙したり騙されたりある日常だよ。人間、良い人ばかりじゃないんだし!」




「……………」



「比羅瀬さんも、瑞君も辛い過去あって今を至っているんだよ」




私達は、クラス委員を辞めると言う話をしたものの、継続となった。




「なあ、紙揃った?」

「いや…足りない…」

「マジ?」

「どうするよ?」




そんな中。



「ん?」



紙を拾う男の人。



「…正に…原石…」



私達の学校を見つめる男の人の姿。



「ここの学校の子か…。……ん?…ここは……」





その後、私の学校生活はガラリと変わった。


しばらくは、変な目で見る輩が多かったのは事実。


その為、零次が用心棒みたいにベッタリ。


クラス委員は、一応、継続となりクラスはより深まった。







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